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鏡の世界の迷子の旅路 無断転載

195小閑者:2017/09/18(月) 20:25:16
 恭也が八神家に来た当初、“目的と手段”の話題でかなり明確な基準を自分の中に備えている様だったので少々違和感を感じたのだが。

「管理局側に何かを隠そうとしていたんじゃないかしら。
 恭也君、他に何かメッセージを伝えようとしていなかった?」
「…そうか、それなら辻褄は合う。不用意だったんじゃないかと思っていたが、管理局側でも流派への拘りを見せていれば隠せるはずだ」
「何だよ、一人で納得してないでさっさと言えよ!」
「開戦時に、あいつが正式に流派を名乗ったんだ」
「…え?」
「永全不動・八門一派・御神真刀流・小太刀二刀術 八神恭也」

 シャマルの口から零れた声にシグナムが砂漠で聞いた恭也の名乗りを口にした。

 この世界の剣術であればその戦技に魔法は組み込まれていない。だからこそ、恭也は名乗りを上げる事が不自然にならないように、流派の戦い方に拘る者として魔法を一切使わなかった。
 魔法を使わざるを得ないほど追い詰められてからは、流派の技こそ振るっていても、御神流の剣士として振る舞う事無く、軽口を重ねて見せた。

「…そう。誓いと警告ね」

 戦闘に直接携わらないシャマルも、剣士が流派を名乗る意味を取り違える事は無かった。
 ヴィータもザフィーラも無言のまま時が流れる。
 静寂を打ち破るようにシャマルが再び口を開く。

「誓いについては、良かった、って言うべきかしら。それとも残念ね、かしら?」
「勿論“残念”だ。この言葉は主はやてに宛てた内容ではないだろうが、それでも出来る事ならご報告したい言葉だった」
「そうね。はやてちゃん、一生懸命隠そうとしてるけど、やっぱり恭也君が居なくなって寂しく思っているもの」
「“管理局に所属しても八神として在り続ける”
 あいつが態々戦場に出向いて来たのは、その宣言をするためだけと言っても過言ではなかったんだな」

 流派を名乗るのは、嘘偽りが無いことを自分の流派の名誉に掛けて宣言する事。
 恭也はシグナムと戦う事が避けられなくなる事を知りながら、ただ2つのメッセージを伝えるためだけに、細い糸を渡る様な戦いに身を投じたのだ。

 “八神”である、と。はやての味方で在り続ける、と。

 文字通り、恭也が命懸けで伝えてきたその1つ目のメッセージを、今一番その言葉を欲しているであろうはやてに届けられない。
 自分たちという存在こそが、はやてに害を齎しいるのではないかという考えが浮かんでしまう。
 そして、恭也が名乗りに込めたもう1つの意味。それは先程脳裏を過ぎった否定したい考えを指摘するかのような内容。4人共が正確に読み取り、しかし、口にする事で認めたくない内容。

 八神として、はやてのために、ヴォルケンリッターを止める。

 それは名乗ることで誰しもが連想する表面上の意味と重なる、スパイとしてではない、事実上の敵対宣言だ。
 誰も恭也が寝返ったとは思っていないし、決して肯定している訳ではないだろうが今更犯罪行為を理由に中止を呼びかけてくるとも思っていない。つまり、こちらの言葉の裏には警告が込められているのだ。

 『ヴォルケンリッターの行動、あるいは存在そのものに、はやてに致命的な不利益を齎す可能性がある』と。

 ただし、それも有力ではあっても可能性でしかない段階だ。絶対の確証を得れば、形振り構わず八神家に押し掛けている筈だからだ。


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