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渋谷駅周辺【繁華街区域】

1群集:2015/05/02(土) 15:58:25
【場所】
渋谷駅前とその周辺


【説明】

震災前とほぼ変わらぬ活気ある渋谷の街並み。
待ち合わせ場所としてずっと親しまれてきたハチ公の像も、健在。
朝には出勤、午後には学生、夜にはサラリーマンが行きかう東京の顔の町。

人も亜人も、ここにはたくさんの人生がある。

休日ともなれば、109に集うダークエルフのギャルや、センター街でストリートファッションに身を包んだ獣人も見れるだろう。
もちろん、人間も、往時と変わらず雑多なオシャレに身を包む。

夜ともなればチームやヤクザも現れる可能性があるので、念のため注意。


【時間】
基本的に昼。

2モチ:2015/05/20(水) 19:23:43
何時もと変わらぬにぎやかな風景が其処にある。
人間や亜人が行き交う駅前の忠犬の像の傍らに、ちょっとした人だかりが出来上ろうとしていた。
数人の人間、どうやらリンケイ所属の者らしい。
彼らが、何かを囲んでいた。
昼間から何事かと足を止める人々の視線の先にちらりと映るのは、真っ白な…。

「そう、それで…僕は今日この辺りの花壇の整備に来たんです。ほ、本当ですよっ。ほら!スコップに、新しい種も持ってます!」

そう、真っ白な兎だ。
どっからどう見ても兎だった。

「あ、違いますっ!迷子とかじゃないです!!」

兎が必死に何かを訴えているが、周囲の反応はどうにも違っている様だ。
(かわいそうに…親はどこに…)
そんな声も聞こえてきたりして。兎を取り囲むリンケイの者達もどうしたものかと首を捻っていた。

「し、信じてくださいっ。僕子供じゃないですし!ニシシンジュクの三本筋の左の四番目の角の右の坂を下って右に曲がった左のおじいちゃんに頼まれてここの花壇の整備に来たんです!」

やたら細かい住所なのは仕方のない事。
西新宿といえば、大きなスラム街がある場所であり地区によってはちゃんとした住所も設けられていないのだ。
かつてはそんな事はなかったのだろうが…兎はその過去の記録をあまりよく知らない。
兎が述べている事は事実なのだが、どうにも人間の子供サイズの兎の亜人が一人でいる事自体が人間の目には不自然に見えるらしい。

到着するや否や、見事に職務質問が始まったわけである。

「ええと、ええと…!」

兎、困っていた。

3ライラ:2015/05/22(金) 21:51:43
「……おっおー……!」

渋谷に降り立った娘っこが一人。
デカい鞄を袈裟に掛け、人通りの多い交差点をキラキラまなこで眺める。

「相変わらず人が多いなー!
 っと、感動してる場合じゃなかったや、えーっとっとー。」

今日はちょっとした用事で来たのを忘れそうになった。
オーバーオールに作った内ポケットから地図を取り出そうとがさごそ漁っていると、ふと視界の端に人だかりを見つけて。
とりあえず地図は後にして、のこのこと人だかりに近づいて行き。
ちょっと、ちょっとごめんよ〜、と分け入って行く。
そこに居たリンケイのうち一人に顔見知りを発見して、背後からてんてん、とその背を叩く。

「おっちゃん、どうしたの〜?
 ……って、あ! おモチさんだ! 何なに、なんかやらかした?」

話しかけて初めて、そこに居るうさぎさんの姿を確認して、テンションが上がった娘っこ。
実際に面識がある訳では無いのだけれど、自分達の界隈では(可愛さ的意味でも)有名兎さんであって。
よもやそのうさぎさんが迷子に間違えられているなど考えもしなかった。
リンケイの人達の間を通っておモチさんに近づき。

「こーんにっちわ! あたし発明家してるライラっていいますよー!
 今日はここらで何かの修理?」

なんて、明るい笑顔で馴れ馴れしく話しかけてみた。

4モチ:2015/05/23(土) 00:21:01
困り果てた兎はオロオロするばかりである。
まさか。まさか迷子と勘違いされるなんて。
西新宿エリアに居るリンケイの者達はある程度は兎の事も認識していてくれた為、そんな事思ってもみなかったのだ。
兎は改めて、このトキオコロニーがとっても広い場所だという事を認識した。

「えっと、僕…!」

僕が子供じゃない事は是非西新宿のリンケイさんたちに聞いてください!と、半泣きで訴えかけた、その時である。

兎を取り囲むリンケイの一人が、誰かに呼びかけられて振り返る。
その直後に、視界に飛び込む娘の姿。
おモチさん、と呼びかけられれば驚いたのか(これまでの経緯にあまりにショックで)垂れ気味だった耳がぴんと立った。

「えっ?!僕は何もしてません!!!迷子でもないのですっ!」

無邪気な娘の声にぴしりと反論。
近付いて、明るい笑顔を向ける娘。
どうやらこの娘は自分の事を知っているらしい。何故彼女が知っているかなんて理由はサッパリわからなかったのだが。
心底驚く兎の紅い瞳が見開いた。

いや、まて。
もしかして、もしかすると…。
これは、まさか。

兎は確信する。

彼女こそが今の自分の状況を救ってくれる救世主なのだと!

「発明家のライラさんっ!!こんにちは!!僕は今日、三本筋の左の四番目の角の右の坂を下って右に曲がった左のおじいちゃんに頼まれてここの花壇の整備に来たんですっ!」

兎の瞳にはすでにライラが救世主にしか見えて居ない様だ。
必死に救いを請おうと、必死に必死に事情を説明しようとしていた。

「スコップと新しい種も持ってるんです!でも、でも…このリンケイさんたちが、僕の事を…迷子だって言うんですっ」

しょんぼりと、耳が垂れた。

「お願いですっ、助けてくださいっ…!僕、迷子じゃないですし…!子供でもないんですっ…!!」

其れを証明して欲しいと兎の瞳が必死に訴えていた。
彼の熱い想いは果たして彼女に届くのだろうか…。

5ライラ:2015/05/23(土) 00:52:42
実はこの迷子うさぎがさぁ、などと言うおっちゃんの言葉にも耳を傾けつつ。
何もしていないと言うおモチさん、その慌てた様子にはは〜ん、と腕組み。

「……なるほどね〜、そりゃこんな可愛いうさぎさんが一人でいたら、迷子って思うよね〜。」

おモチさんからの必死の説明を全て聞けば、そりゃそうだろうとばかりにうんうん、頷いて。
大丈夫だよ〜、と、ぴんとたった耳と耳の間あたりをふわふわ撫でよう。
……ふわふわ。
……ふわふわ。
……はっ! 思わず夢中になって撫でまわしてしまった!
んん、と咳払い一つ、おっちゃんに向き合って。

「取り敢えずおっちゃん、このうさぎさん、おモチさんっていう修理屋さんでね、迷子じゃないのは保障するよ!
 えっと、ほら、ショーイチさんだっけ、お友達の、西新宿辺りの人、あの人に聞いてみてよ。
 あの人だったら知ってるはずだから!」

などと兎さんの身分証明の手伝いをしている少女風貌もまた、一人でいたら迷子と間違われかねない外見であったり。
一人だけでも知り合いが居て本当に良かった、ヘタしたら二人して迷子で保護される所だ。

「あっ、そうだ、そっちのお兄さん達! あたし初台近くでものつくりの店出してるライラって言います!
 オルゴールからロケットランチャーまで、相談次第で何でも作るから、よろしくね!」

これ幸いとばかりに、おっちゃん以外の初対面のリンケイの人達に名刺を配る。
『何でも発明家 ライラ・ライラック』
怪しめの肩書と妙にまるっとした字体の名前、店の場所のマップが書いてある名刺を次々に渡していき。
一通り渡し終えたら、今度はおモチさんに向き直る。

「……ねぇねぇ、おモチさんはこう言うの持ってないの?」

そう聞きながら、おモチさんにも名刺を差し出した。

6モチ:2015/05/24(日) 01:31:39
不意に伸ばされたライラの手が兎の頭を優しく撫でる。

もふもふ。
もふもふ。
もふもふ。

おそらく、ふわふわとした手触りがライラの手に伝わっただろう。
真っ白な毛並は獣そのものだ。
はっと我に返るライラに対し、兎は…

…兎は随分と安心したらしい。
表情が何処かほっこりしていた。
大丈夫。優しく撫でてくれるひとは大好きです!

ライラがリンケイのおじさんへ説明をしてくれている様を見遣り、紅い瞳が嬉しそうに瞬いた。
彼女の説明を受けて、事情は理解してくれたらしい。
実際の所、ライラと名乗った娘もまた迷子なのではないのかという意見がちらほらと聴こえてきたりしていた。
…が、リンケイのおじ様方は互いの顔を見合わせて頷きあっている。
一先ず二人(否、一人と一匹?)揃っての保護は免れた様である。

「あ、ありが…」

うれしくなった兎はライラへとお礼を述べようとした、のだが彼女の素早い営業活動に続くはずの言葉が飲み込まれてしまった。
何という無駄の無い動きだろうか。
ちょっと感動してしまった兎である。

「こ、こういうの…?」

兎は小首を傾げる。
ライラから差し出された名刺を受け取り、ああ、と頷いた。

「えっと、えっと…、じ、実は…僕……名刺とか、持ってなくて…。も、貰うのも初めてで…」

そもそも兎は身分を証明するものすら持ち合わせていない。
今の今まで名刺を交換する様な事が無かったのだ。

「…や、やっぱり、持っていた方が良いのかなぁ??」

きょとりと小首を傾げた。

7ライラ:2015/05/24(日) 15:18:44
ああ、なんてふわふわ、良い毛並み。
これは時間を忘れてしまいそうだ。
思わず撫で続けてしまっていたけど、ほっこりな表情を見せてくれたうさぎさんに和みの笑顔。

なんとかリンケイのおっちゃん含め、他の人達も納得してくれた様子。
思いがけずに宣伝もしっかり出来て満足満足。
両腰に手を当てて満面の笑みだ。
うさぎさんの言葉を遮ってしまったのには気付いており、何々? と小首を傾げ。

「そうそう、名刺、無いよりある方がこういう時便利かなって。」

それでも、怪しんで信じてくれない人は信じてくれないのだけれど。
一応許可を取って店も出しているので、最終手段として証明書も持ち歩いていたり。
自分も自分で勘違いされやすい外見なので、こういう手はいくつあっても足りない位で。

「お、初めてなんだね! まぁでもそっか、あたし達技術者はあまり使わないよね〜。
 ……一応、もってる事をお勧めする、かな? ほら、こういう時の為に。」

と、リンケイのおっちゃん達に視線を巡らし。
ね〜、と苦笑い混じりに小首を傾げる。
そんな事をしていれば、はた、と思いだし瞬いた。

「あ、そう言えば花壇の整備、だっけ?」

先程聞いたうさぎさんの目的を思い起こせば、辺りを見回し。
とりあえず事も済んだと言う事で、人混みも薄れてきたみたい。
それでも、迷子騒動でちょっと時間は取られてしまったろうし、よかったら手伝おうか? とお手伝いを申し出て。

9モチ:2015/05/25(月) 01:10:49
ライラに視線を向けられたリンケイのおじ様方が、大きく頷いた。

『兎さんよ、そのナリじゃ勘違いされる事も多いだろうから、身分証明の代わりにでも持ってみたらどうだね』

などと言われ。
兎、暫し考えた後に決意した。

「わ、わかりましたっ!ぼ、僕も…発明家のライラさんみたいに、立派な名刺を今度つくってみる事にしますっ!!えっと、えっと、改めて…発明家のライラさんっ、ありがとうございますっっ!!」

助けてもらったお礼も含めて、兎は深々と頭を下げた。
貰った名刺は一生大事にしよう!!家に帰ったらアルバムに綴じる事を兎は心の中で誓った。

ライラが花壇の事に触れれば、兎の耳と背筋がぴんと伸びた。

「はっっっ!!!」

一瞬花壇の事を忘れていたなんてそんなまさか。
否、人間ほど賢い頭ではないのは事実ではあるのだが。

「そうですっ!僕、おじいちゃんに頼まれて新しい花の種を持ってきたんですっ!!」

持ってきていた荷物の中から新しい花の種の袋を取り出してみせて。
随分と時間をとられてしまった事にまたショックを受けたりもして。
そんな中でのライラの手伝いの申し出に、ションボリしかかっていた兎のテンションがぐーんと上がった。
紅い目がキラキラと輝いた。

「ほ、本当ですかっ!!???あっ、でも、それだと発明家のライラさんの時間を取ってしまいます…っ」

オロオロする兎に、事を見守っていたリンケイのおじ様が『しゃあねぇなあ、俺も手伝ってやっからよぉ』と、兎とライラの頭をわしわしと撫でた。
実に面倒見の良いおじ様である。
兎はとても感動して、うれしくなってぴょんぴょん飛び跳ねた。

「わあい!わあい!うれしいですっ!!すっごく、すっごく助かりますっ!!!おじいちゃん(花壇整備の依頼者)も喜んでくれますっ!!」

今日はテンションが上がったり下がったりと忙しい一日である。
ちょっと大変だったけど、今日はとっても素敵な一日!
兎は心の底からうれしく思っていた。

「えっと、えっと、まずは、しおれた花は全部千切って、それからそれから…」

それから種をまくだけの簡単なお仕事。
花壇の広さは、幅は50メートル程だろうか。兎にとってはとても広い大きさだった。

「み、みんなでやればきっと楽しいですっ!」

ピョンピョン。
兎が嬉しそうに跳ねていた。

10ライラ:2015/05/25(月) 23:15:15

「よーっし! じゃあおモチさん、名刺が出来たら絶対ちょうだいね!」

リンケイのおっちゃん達にも説得されて、ついに覚悟を決めたうさぎさん。
ぐぐー、っとサムズアップしてのお約束だ!
楽しみにしてるよっ、とにっこり笑顔を浮かべて。
まさかあげた名刺が宝物レベルの待遇を受けるとは予想だにしていないけれど。
花壇の事を想い出した?らしいうさぎさんが見せてくれた種をじっくり眺め。

「おお〜! もう夏になるもんね、夏っぽい感じになるのかな?」

テンションの上げ下げの激しいうさぎさんに内心キュンキュンとしつつも、えっへんとばかりに胸を張り。

「まっかせてよ! 用事はあるけど、特に時間が決まってる訳じゃないからさ?
 ここであったも何かの縁、だっけ?」

怪力では無いけれど、力が無い訳ではないし。
一緒に手伝ってくれると言うおっちゃんに撫でて貰えれば、くすぐったそうにはにかんだ。
おっちゃんイケメン!さっすがー! 等と調子良くおだておだて。
跳ねて喜ぶうさぎさんに、頑張ろうね〜、とガッツポーズだ。

「よっしよっし、それじゃあおモチさんの指揮のもと、花壇整備作戦開始だー!
 あっ、おモチさん、あたしの事は、ライラ、で良いからね? これからは友達だから!」

なんて、あげた親指を自分に向けての、急で勝手な友達発言。
そうした後に、おモチさんの指示を受けながら、ふんふんほうほうと興味深げに相槌打って、作業を進めて行こう。
……意外と、楽しい! 表情が生き生きとする。

11モチ:2015/05/27(水) 16:34:28
「お、お友達…!!!」

兎の耳がぴーんと立った。
まさか、お友達が出来るだなんて。思ってもみなかった兎はそれはもう心底驚いていた。

「ぼ、ぼくお友達になっても良いのですかっ!?う、う、うれしいですっ!!」

ピョンピョンと飛び跳ねた後。

「ら……
ライラさんっ」

照れながら名前を呼んだ。
家に帰ったらライラさんというお友達が出来た事を、育ての親達の遺影に報告しよう。絶対に。
兎は心の中で誓った。

「この種は夏のお花の種だっておじいちゃんが言ってました!夏になると沢山きれいなお花が咲くそうですっ!!」

楽しみだな〜、とウキウキしながら兎は種を撒いていた。
兎と娘とリンケイ所属のおやじが揃って花壇に手を加える様は何処か懐かしい、田舎の光景の様である。
道行く人々が微笑ましそうに視線を向けていく。

三人(否、二人と一匹)で進めた作業は順調に進んでゆく。
一人での作業はやはり無謀だったのかもしれない、と改めて兎は二人に感謝しかなかった。
作業の傍ら、兎はふと気になっていたことをライラへと問いかける。

「ライラさんは発明家、なんですよね??ど、どんな発明…してるの…?」

発明家と聞いて実はずっと聞きたくてウズウズしていたらしい。
あっ!迷惑でしたら答えなくても大丈夫ですからっ!と慌てて付け加えて。

さてさて。
1時間と少しが経過した頃合いだろうか。
リンケイ所属のおじ様が花壇全体を見渡して、額に滲む汗をぬぐった。

『おーっし。こんなもんで完成じゃねぇかい?見てみろぉ、随分と綺麗になったぞー』

その声に兎が満足げに頷いた。

「はいっ!!これで作業も殆ど終わりですっ!!おじさん、ライラさん、本っ当に助かりましたっ!!」

ぺこー、っとお辞儀をする兎。

「ええっと、あとは水を撒くだけなんですが…その…あの、僕ホースとか、忘れてきちゃって…。ライラさん、何か良い方法無いでしょうか…」

困ったな〜。と、頭を抱えた。
お水は駅前の水道をお借りする事になっている、のだが。
花壇より少々距離がある。
兎はちょっぴり期待していた。発明家のすんごい発明があったら、良いな、なんて。

12ライラ:2015/05/27(水) 21:28:22
「そっ、お友達!
 勿論大歓迎だよー、友達は多ければ多いほど、ね!」

飛び跳ねるおモチさんに名前を呼んで貰えれば、にっこり笑顔を浮かべて。

「はい、おモチさん!」

そう返す。
あたしからの呼び名はこれでいいのかな? と小首を傾げ。
おモチさんの説明にふんふん、と頷き頷き。
綺麗なお花、楽しみだねぇ〜、とうきうき気分が伝染中。
二人と一匹して、手や顏を土まみれにしながらも、楽しく楽しく作業を進め。
渋谷の人混みとか考えられない程、ほのぼのとした雰囲気がその場に流れていた。
うさぎさんからの質問に、付け加えられた言葉には、迷惑なんかじゃないよー! と胸を張り。

「どんな? どんな、か〜。
 例えば、昔の記録とかを見て面白そうなのがあったら、今使える技術で再現する〜、とかもしてるよ!
 あと自己流だけど、からくり仕掛けっぽいのとか、機械仕掛けでも割と何でもかなぁ。
 ……ただ、そのせいでね、自分で作った物以外はなんにもわかんないんだよねぇ……。」

あはは、と苦笑い。
どういう物かを自分で再現が出来てしまうだけに、元々の仕組みがまったく分からない物すらあるから。

「だから、おモチさんはすごいな〜、って。
 色んな物修理できちゃうでしょ?」

可愛いうさぎの修理屋さんで名高いおモチさんの存在は、ある種の憧れの対象でもあり。
自作の者以外はむしろ壊してしまう物だから、尚更の事だった。

話しをしながらも作業を続けた後、リンケイのおっちゃんの言葉に数歩下がって全体を眺めてみる。

「おっおー! うーん、いいね〜、達成感!
 ありがとうねおっちゃん、今度何かサービスするよ!」

自分も自分で満足気に頷いて。
手伝ってくれたおっちゃんには爽やかに笑いながらサムズアップだ。
お辞儀のおモチさんに、いえいえとんでもない、とばかりにぺこぺこお辞儀返し。

「お、それだったらいいのがあるよ! こ、こんなことも、あろうかとー!」

一度言ってみたかった、技術者として憧れの言葉がこんな時に使えようとは!
頭を抱えるうさぎさんの言葉に、鞄の中から一本のホースらしきものを取り出した。
長さは1メートル程で、片方には散水用レバー付きノズルが付いた、妙にしわくちゃな外見はしているけど。

「今日行く先のお客さんが庭師をしててね? 再現をお願いされた幾つかの道具のうち一つなので。
 え、っと、蛇口蛇口、はー……、あった、あれか!」

ちょっと待っててね、と兎さんに言い置いて、蛇口に走り寄る娘っこ。
蛇口にホースの片方を括りつけて、そのまま蛇口をひねる。
そうすると、ホースに水が満たされていく毎に、しわくちゃが伸びて、長さが伸びる伸びる、花壇まで楽々届くほどどんどん伸びる。
ホースの先端を手に花壇まで戻ってくれば、ノズル部分をうさぎさんに、はい、と手渡して。

13モチ:2015/05/29(金) 17:02:32
「そうですよねっ!お友達は沢山いるのが一番ですっ!!」

うんうん、と何度も頷いて。
おモチさん、と呼ばれれば。
お餅ではないのだけれど…と言いかけるも、折角できたお友達なので好きに呼んで頂く事にした。

ライラの発明の話には興味深々で目を輝かせて耳を傾ける兎である。
ライラにとっては兎がうらやましい、という事なのであるが…兎は兎で何でも再現出来てしまうというライラがとても素晴らしい才能に思えていた。

「再現出来ちゃうなんてすごいですー!!自分で何かを作れるって本当に凄い事ですよっ!中々できない事ですっ」

修理できる兎が凄いなんて言われれば、兎は盛大に照れた。
褒められるのは随分と久しく何だかとてもむずかゆい。

「えへへ…そ、そう言ってもらえるとすごく嬉しいです…」

てれてれ。
毛深くて決して紅潮している様には見えないのだが、一応は紅潮しているらしい頬を短い両手で隠してみたりしつつ。

「ライラさん、何回も壊して、組み立てたりしていけばきっと設計がわかると思いますっ!」

だから落ち込む事ないですよっ、と兎なりに必死にフォローしようと。

水撒き用のホースを忘れた兎が抱いた小さな期待にライラは見事に応えてくれたわけで。
兎はうれしくてまた飛び跳ねた。

「凄いですライラさんっ!これも再現されたんですねっ!」

元々の形を知らない兎は其れが妙にしわくちゃである事にも違和感は抱かなかったようだ。
ライラからノズル部分を受け取り、先を花壇に向ける。
レバーを握れば、散水できる仕組みではあるのだが兎の小さな手では人間が扱う様にはいかなかったらしい。

ブッバーーー!!!

水は何とか放出できたが勢いでホースが暴れ、つるりと手からノズルが離れてしまった。

「わーーー!!!」

暴れるホースが花壇だけでなく、兎と、更に傍に控えていたライラとリンケイのおやじにまで水を降り掛ける大参事である。

す、すごい!!
ニワシ(庭師)という人が扱う物はこんなにも活きが良いものだったなんて!!!
色んな衝撃を兎は受けていた。

ぶーん

暴れる、ホースがまき散らす水がキラキラと小さな虹を生み出していた。

14ライラ:2015/05/29(金) 21:03:09
どうやら、大丈夫そう、とした!
いつか訂正されれば、その時に直す事だろうと思う。

「え、えへへ、そ、そうかなぁ、そうやって真っ直ぐ褒めて貰えると、なんか照れくさいね……!」

いつもは結構暑苦しいおじさん関係のお客が多いだけに、こうして純な反応を貰えると何ともむずがゆくなってしまう。
同じ様に頬に手を当て、照れに照れているちびっこ二人、それを眺めているであろうおっちゃんも交えて、なんとも和みを含んだ光景に。

「むむむ、壊した時に部品が駄目になっちゃう事も多くてねぇ……。
 そだ、今度おモチさんの仕事見学させてよ!」

フォローを受けて、前向きな気持ちにはなったけれど、やはりそこが問題で。
思い付いた見学と言う発想に、これ名案、とばかりに胸の前で両手を打ち合わせ。
それで、修理とかのコツを見せて頂きたい。
どうかな? と首を傾げて尋ね。

「ふっふっふ、水に反応して伸縮する素材を見つけるのに苦労したんだよ〜!
 って、うわっぷっ!?」

顧客の層的に様々な素材を持ってきて貰えるおかげで、割と再現は容易かった。
と言うドヤ顏をしようとする前に、うさぎさんの手から飛び出て暴れるシャワーをしっかり浴びた。
レバーが固定状態になったからだろう、それこそロデオみたいにぶんぶかと大暴れするホースが作り出す虹に、おお〜、と感動の声をあげて。
初夏の暑い日だから、ずぶ濡れ位でもむしろ気持ちがいい……。
とか思ってるとそろそろ被害が通行人の人達にも広がってしまうから、急いで走り寄り、拾い上げた。

「ふー! いやぁ、きもちいいね!」

額辺りの水滴を拭い去りながら朗らかに笑い。
ちょっとだけ水の勢いを弱めて、改めてはい、とおモチさんに渡そう。
多分、今度は大丈夫、なはず、きっと。

15モチ:2015/05/30(土) 00:05:33
照れあう娘と兎に、状況を見守っていたリンケイのおやじは束の間の平和を感じていた。
レッドラインの外じゃ、日々生きるか死ぬかの二択の世界が広がるというのに。

仕事を見学したいの申し出に兎は驚いて飛び上がった。

「えっ!僕の仕事を…!!ぼ、僕の仕事でよければ…っ!!」

一人でもくもくと作業するよりは、ずっと良いと兎は思ったのだ。
申し出には喜んで応じた。

「ほわー!素材集めも凄く大変なんですね…ッ。とても勉強になりますっ!」

水に反応して伸縮する素材があった事にも驚くし、それを見事に再現してみせたライラの腕にも脱帽だった。
発明家ってすごいんだなぁ!!

ぶんぶん暴れるホースに、あちゃー、と声を漏らしたのはリンケイのおやじだ。

『オイオイオイ、ずぶ濡れになっちまったぞお!!兎さん、お前さんにゃあ水の勢いが強すぎたみてえだなあ!!』

がっはっは。
おやじが盛大に笑い声をあげた。
暴れるホースが生み出した偶然の産物である虹を見遣り、おお!虹じゃねえか!などと語るおやじも心底この状況を楽しんでいる様だった。
一方の兎はオロオロするばかりだったが、ライラが素早く拾い上げる姿を見てほっと一息をついた。

「ううう、おじさん、ライラさんも皆びちょびちょになってしまいました…」

しょんぼり。
びしょ濡れになってしまった為…この兎、若干毛のボリュームが落ちて一層小柄になってしまった。
ぷるぷると首を振って水気を少し飛ばしつつ、ごめんなさい…と、呟くも。
その言葉に反して、ライラもおやじもどこか楽しそうでちょっぴりほっとした兎だった。
てっきり叱られるのではないかと心穏やかではなかったのである。

再び手渡されたノズルに、ドキドキしながら小さな手が確りと握った。
今度は絶対に手放さないぞっ!ホースめっ!暴れさせてやらないぞ!などと誓いを立てて、いざ。

シャーーー…

大丈夫。
今度はちゃんと散水する事が出来ました。
ふふん、と暴れホースを制した兎はちょっぴり得意気である。

ライラが再現したこの園芸用に適した道具はとても使いやすく、最初こそはホースに弄ばれた兎ではあったが、小さな子供にでも簡単に扱える代物だった。
その使い勝手に兎は改めて発明ってすごいんだなあと驚くばかりである。

程無くして水は無事に花壇全体に行き渡り、残された作業も遂に終了である。
後はこのホースをライラに返せば良い。
そう思ってせっせとホースを巻き取ろうとする兎だったが…

ドテッ

「みぎゃ」

ホースに躓いて盛大に転倒してしまった!
ぽーんと手から離れたノズル部分が、どうしてだかうまい具合にライラの方へと飛んだ。

16ライラ:2015/05/30(土) 23:25:30
こうした平和な時間を作ってくれる人達が居るのも忘れられない。
今ここにいるリンケイのおっちゃんだってその一人だ。
自分もその手伝いが出来ているなら、と願うばかり。

「おお、やったあ! お願いします!
 出来るだけ邪魔しない様にするから、ね……!」

快く頷いてくれたうさぎさんに、万歳ポーズで一度跳び上がった。
出来るだけ、と言いつつも、ここは何とかそこはどうなるのとか、興味に基づいて聞きまくってしまうだろうけど。

「上の技術と下の技術がいい感じに混ざってきたおかげかもね〜。
 それぞれだけが持っていたり発達してたりする技術だったし!」

全ては偉大な先人たちのお蔭でもある、とやはり照れ気味に。

「結構暑い中で、汗まみれ土まみれだったし、むしろ丁度いいくらい!
 思いがけず虹も見れたし、いい気分だよ〜。」

そう、ノズル部分を渡しながらにこにこ笑顔は絶やさずに。
今度こそ無事に散水を始められた様子を、ぐ、と密かに小さくガッツポーズを作りながら見守って。
これにて、無事にお仕事完了!
ホースを巻き取ろうとしてくれるおモチさんに、慌てて気を付けて! と声を掛けようとしたその瞬間。
遅かった。
見事にホースに躓いて転倒するうさぎさん。
その手から飛び出したノズル部分をキャッチしようとするも、急な出来事だったので掴もうとした手をすり抜けて、額にゴンっ、とヒットした。

「うおおおおおお……」

まさに鈍痛、いや、そこまでのダメージは無いのだけれど、鈍い衝撃だった。
少しの間蹲って呻いてから、ふはぁ、と立ち上がり復活。
慌てておモチさんに駆け寄って抱っこの要領で助け起こしたい。

「お、おモチさん、大丈夫……!?」

17モチ:2015/06/01(月) 17:37:31
地上にあった技術と地下にあった技術についてのライラの言葉に、兎の耳がぴんと立った。

それぞれが融合してきたという事実を目の当たりにした兎は深く関心していた。
均衡を保っていた筈の二つの存在が、震災により交わる。
世界がこうなってから、ようやく二つの存在が一つになるべくして歩み始めたという具合だろうか。
ライラの持つ技術もこの先の未来にきっと役立つものなのだろう。
勿論、兎自身がもつ修理していくという事も大事ではあるのだが…。
兎にはこの先きっとライラは素晴らしい技術者になっていくんだろうと思えていた。

「ライラさんの発明のお役に立てるように僕も頑張りますっ!!」

実際は修理の工程を見せるしかできないのだけれど。
兎なりに、友の手助けをできるならば、との願いを込めて。

「う…う〜!痛いです…」

派手に転んだ兎と、ぽーんと綺麗に弧を描いて飛んだノズル部分が見事にヒットしてしまったライラ。
その姿を見守っていたリンケイのおやじの口から、あちゃー、と漏れたのも仕方のない事。
兎と娘の悶絶する声が互いから零れ、おやじが思わず笑いそうになったのを必死に堪えていたのは内緒の話だ。

両脇を支えられて立ち上がらせていただくその姿はまさに子供だった。
でも子供ではありません。
痛かったけど泣いたりはしません。

「だ、だいじょうぶです…ら、ライラさんこそ、すみません。まさか…」

額にクリーンヒットするなんて。兎さんちゃんと見ていた模様。
必死に笑いを堪えながらリンケイのおやじが一人と一匹の傍へと歩み寄り互いの頭をぽんぽんと優しく撫でた。

『全く…平和すぎてムズムズしやがるぜ。大丈夫か、お前さんたち?』

放り出されていたホースはさりげなくおやじが束ねてくれていた。
束ねたホースを、おやじがライラへと差し出す。

『怪我はねえかい?…んん?嬢ちゃん、ちょっとばかりコブが出来てらあ。後で冷やしとけよぉ?』
「わわっ!ライラさん本当ですっ…!!僕はほら、毛皮が丈夫なので大丈夫ですっ!!」

一人と一匹に特に大きな怪我(ライラの額のコブが痣になって残らない事だけは心配だったが)が無い事を確認したおやじはうむ、と大きく頷いた。

『やれやれ。泥ッ泥じゃねえかよお前さんたち。ほらほら、何時までも濡れたまんまじゃ風邪ひいちまうからよ。巡回がてらお前さんたちの地区まで送ってやっからよ。兎さんよ、あんたは風呂へ直行しな。
嬢ちゃんは、デコを冷やしてから風呂な』

気付けば時刻はおやつの時間をとうにすぎていた。
日が落ちるにはまだ時間があるが、ずぶ濡れのままだと小さな一人と一匹の健康に良くない。
おやじなりの気遣いだった。

18ライラ:2015/06/01(月) 20:50:54
「えへへ〜、ありがとうね! 勿論あたしも、何か教えられそうな事があったらなんだって教えるよ!」

物を直すと言う行動は、何よりその物自体を理解しようとする心が必要なはず。
自分の発明も、根っこは物の理解から始める訳で、技術者としての心は同じ様な物を持っていると確信している。
なにより、壊れるに至るまでの軌跡に思いを馳せることが出来ると、とても素敵だと思うのだ。
自分以外が作った何か、それに対する事の大事さをしっかり教えて貰おうと思う娘であり。
ぴんと耳を立てたうさぎさんに、自分も力になれればと思うばかりで。

「み、見られてたね、恥ずかしい……!
 でも、おモチさんも大丈夫でよかった〜。」

支えて持ち上げた体勢のまま、恥ずかしそうに頬を赤らめた。
……ふわふわ気持ちいい、おもわずこのままハグしてしまいそうだ。
ぷるぷるとその衝動を我慢していれば、歩み寄ってきたおっちゃんに頭を撫でられて。

「ありがとうおっちゃん、あたしは大丈夫!
 って、たんこぶ!? うあ、ほんとだ」

名残惜しそうにうさぎさんの毛並みから手を離し、差し出されたホースを受け取って。
二人から言われて額に触れてみれば、確かに若干の膨らみを感じる。

「本当、毛皮があると便利だなぁ、と言うのも変かな?
 っと、そうだね、用事はちょっと後回しにして、お言葉に甘えちゃおうかなぁ。」

流石にこんな状態で言ったらむしろ心配をかけてしまいそうだ。
荷物の中にホースを仕舞い込んでから、うさぎさんに向き直り。

「それじゃ、あたしも途中までご一緒するね!
 久しぶりに土いじりして、すっごい楽しかった〜。」

その機会を与えてくれたうさぎさんに、ありがとう、と満面の笑み。

19モチ:2015/06/03(水) 00:56:56
「本当ですかっ!う、嬉しいです!すっごく!!いっぱい勉強させてくださいっ!!」

ライラの言葉には本当に喜んでいた。
ぴょんぴょんと飛び跳ねる兎の全身から喜びがあふれだす。

「えと…ライラさん?」

持ち上げられた体勢のまま、どうしてだか頬を赤らめるライラに兎は小首を傾げていた。
ライラの中で壮絶な葛藤があった事を兎は知る由も無く…。

「い、痛いの痛いのとんでけーっ!!」

そおっと、ライラの額に小さな手を伸ばす。
育ての親がずっと昔に教えてくれたおまじない。
きっと気休めにもならないのだろうけれど、腫れを治める事は出来ないがせめて痛みだけでも引いてくれる様に祈りを込めて。

「びちゃびちゃになっちゃいましたもんね…。風邪ひくまえに、ライラさんもお着替えしてくださいっ」

お着替え…と言ってちょっぴり恥ずかしくなった兎は両手で頬を覆いながらもじもじと照れていた。
何気なく言ったのだが、よくよく考えてみればライラは見た目こそ幼く見えるが…ちゃんとした女性なわけで。
大変な事を言ってしまった…。
否、既に手遅れではあるのだが。

「えへへ…僕も、皆さんと一緒に居れて楽しかったですっ!」

最初こそは保護されかかるという血の気が引く思いをしていたのだが。
今はそんなことはありません。
寧ろお友達が出来て今はとっても幸せなのです。

「本当にありがとうございましたっ!」

ぺこり。
おやじとライラに向けて頭を下げて今一度お礼を伝えた。

「皆で一緒に帰れるのも、素敵です!」

わあい!わあい!と飛び跳ねた。

『よっしゃ、そんじゃあ行くかい』

おやじの誘導に続いて、賑やかな昼の一時を過ごした小さな兎は新しくできた友人と共に帰路につくのである。
おやじと娘と一匹が並んで歩く様は、誰がどう見ても微笑ましいものだった事であろう。
また一緒に花壇の世話をしましょうね、などと語りあいながら。
やがてその楽しげな声も駅前の賑やかな音に紛れてゆくのだった。

皆で整備した花壇に立派な向日葵が咲き誇るのは、もう少し先の話………。



【退出しました】

20ライラ:2015/06/03(水) 23:06:41
「うんうんうん、ぜひぜひ! たのしみだな〜!」

ばんざいポーズに続けて胸の前で両手を組み、ぴょんこと小さく飛び跳ね。
年齢的には大人の女性ではあるが、こと技術関連になれば色々忘れてはしゃいでしまうと言う物で。

「あ、ご、ごめんねおモチさん!
 うん、無事でよかったよかった何より何より!」

一応おモチさんも男の人(?)である、いくらもふもふ気持ち良さそうだとは言え、いきなりハグつく訳にはいかない。
自制心の勝利である。
……勝利したのに!!

(ふおおおおおおお!)

うさぎさんの手が額にぴとりと触れました。
なんだろうこの妙な幸福感は!
思わず奇声をあげそうになる所を更に自制心でどうにかしたけど、表情がへにゃってしまったのはしょうがない事なんです。
至福の表情でうさぎさんから手を離し。

「……とんでいきました。
 うん、そうだねぇ、お風呂も入りたいけど、それは今夜の楽しみにしとこっと。」

着替えと言っても大して服が変わる訳ではないから選ぶ悩みも無いし。
何やら頬に手を当ててもじもじしているうさぎさんの姿に、はて、と思いつつ。
とりあえずなんか可愛いから頭を撫でてしまう。

「ふふふ〜、楽しいは正義、だよね!
 お礼にはおよばないよ〜。」

礼儀正しいうさぎさんに、ぺらりと手を横に振り。
友達だから当然の事っ、と。
おっちゃんの号令に、おー! と握りこぶしをあげて答え。
うさぎさんと娘っこ、そしてリンケイのおっちゃんの凸凹トリオが、賑やかに歩き出した。
今度はお花の事も色々聞かせて貰おう、そしてまた土いじりをしよう。
その時はまたおっちゃん、手伝ってね! と無茶ぶりもしつつ。
今日は新しい友達も出来て、楽しい経験も出来て、本当に幸せを感じる時間だった。
花の咲くころ、一緒に見に行こうね、と勝手な約束も取り付けながら、楽しそうに笑顔満面。
穏やかに楽し気な三人の姿が風景に溶けて行く―――。


【退出しました】

21山田五郎:2015/06/26(金) 01:30:54
【入室しました】




【断章】


「なに超ウケるー」

幾たびかのリバイバルをへたギャル口調を操るダークエルフギャル集団の横をトレイを持って歩く男。

いかにも明日の事など心配いらない風情。その若さ。
室内だが夏の太陽のように眩しく感じられた。

ある休日。
昼14時ごろの渋谷駅前大交差点。
その真正面のビルの中にある
スターバック・カフェ。

大交差点を見下ろす席に座って、
山田五郎はアイスのカプチーノを喫していた。
ベージュのジーンズと白Tシャツという簡素な装い。
迷彩柄の帽子に。サンドベージュのミリタリーショルダーバッグ。
靴はアウトドア調の柔らかいブーツ。



「最近は復興もしてきたのに、相変わらず世間はわからないな。」

眉間をもんでため息をつく。


大震災から30年。トキオコロニーは見事に運営されている。
大崩壊の余波であの昭和時代の焼け跡の斯くやという混乱を経てからの復興であった。
山田はその混乱を少年時代に潜り抜けていた。
大交差点の往来に感慨を覚える…
なにしろ、文化であそび装うゆとりが生まれているのだ。平和な証拠だった。
エフェメラも、一般人も、リンケイも、ボーダーズも、
それぞれ新しい時代の草創期を一生懸命に駆け抜けてきた。


山田は味の薄いラズベリースコーンをかじる。
甘さは平和の果実だった。
しかしせっかくの休日だというのに、憂わしい。



彼は時々、一人の力ではどうしようもない現実に憤りを感じる。

先日の梅ヶ丘急襲作戦で散った戦友の事を思う。
また、リンケイの中に時々いる少年少女たちの事を思う。
生きる理由はいろいろとある。手段は選んでいられないだろう。山田は個々人の背景に共感している。
それでも、少年世代のリンケイを正規に認証し運用して差し支えないという許可を出したアントリオンの行政には、
政治につきものの魑魅魍魎を感じてしまう。


戦いで人は死ぬ。
しかし人はすぐに成人にはならない。
敵は待たない。
人類はサバイバルしなければならなかった。死力を尽くして。
平和な日常の中に、埋め火のように「戦時」の感覚がある。
たとえば、何気ない役所の手続きの中に火薬のにおいを感じる。
(エフェメラはこのコロニーのために巧妙な仕組みすら用意する)


もし、ボーダーズに矛盾なく、アントリオンに腐敗なく、エフェメラに陰謀が無ければ…
山田は思いを巡らすのをやめた。
人が人である限り矛盾は消えない。
矛盾や犠牲を押し包んだまま、それぞれの人生を乗せて地球は自転している。
山田は改めて諦め、カプチーノを飲みつづける。
所詮2015年焼跡世代扱いされる覚悟はできていた。



美味い飯は美味い。
お金はあった方がいい。
この世の中で矛盾がないのは、生活という事だけだった。
せいぜいその程度の事こそ、最もゆるぎないものなのだ。



もう一つ、矛盾のないことがあった。
山田は、ボーダーズとして、少しでも勝利に貢献しなければならなかった。
少なくともそれで人類は半歩でも、かつての自由を取り戻せるのだ。


市民の一銭五厘の旗を守るために、またボーダーズは戦線の軍旗のもとに集うのだ。
いかなる矛盾があっても、務めを果たすのだ。それが山田の生活だった。



山田は席を立ち、食器をダストボックスの上に片づけ、【退出しました】

雑踏の中を歩みだす。




【断章 終了】

22久世十蘭:2015/09/15(火) 20:21:34
【入室しました】


渋谷駅前。夕刻。

例の大交差点を行きかう人々は、
震災前と変わらず気合の入った装いであった。

その中では、クラシカルメイドが一人いても目立たない。

この交差点は非日常こそが日常であった。

エフェメラ本部での密談から時間が経過した後。
交通至便のこの近辺に逗留しつつ、渋谷駅近辺をそれとなく何死していた。

無名部隊から呼び出しがあれば、即参上できるようにしている。
ダレスバッグはもう基地に置いている。

その体をストイックな黒いクラシカルメイド服で包む
エプロンのポケットには炭素繊維製のトランプのカートリッジが入っている。

片手には黒いこうもり傘。


センター街方面から黒服が音もなく寄ってくると、彼女の容姿を見込んでスカウトを仕掛ける。
「モデルとか興味ない?」
優しく微笑んだ。
黒服が悶絶してくずおれた。
傘の取っ手で黒服の鳩尾を閃く間に強打してのけた。


メイドが横断歩道を渡る。
センター街奥のオープンカフェの席に陣取ると、カシスジュースをソーダで割ったものをオーダー。
懐から丸眼鏡を取り出すと、静かに掛けた。
さらにハムとガレットを注文。程なくして運ばれたそれを、ナイフで押さえてフォークで切りながら。

十蘭は眼鏡のつるを指でそっと撫でた。
レンズの裏側に、光学加工により表からうかがえないが、回線経由で様々な情報が入ってくる。
無名部隊の権限でネットワークにアクセスすると、渋谷全体をマップに紐づけたビッグデータ群が視認される。

町で起きている事件と、アントリオンが市民に告示している対応を観察していた。

23久世十蘭:2015/09/15(火) 20:31:24
外から見ていると、
ぼんやりした目つきのまま、ガレットを食べているように見える。

「美味しい…。」
食器を置くと、店内を回っているウェイトレスを呼び止めてもう一枚ガレットを頼む。
嫌みのないトーン、丁寧な礼儀を心がけながら。


メガネの鼻を押し上げるジェスチャーで、ネットとの接続を一旦カットする。

何となく、肌をなでる視線がある。店内をすっと視線でなめる。
誰かが目をそらしたのがわかる。


「……何事もふつうが一番よ。」

独り言を漏らすと、新しいガレットを丁寧に切り始めた。


鬼、というものは、人間とは違う。
それがどんなに、人間の目線で望ましい姿であったとしても。
今、十蘭は角を秘してその本性を現してはないが。

「あっ、美味しい…。どうしよう…」


冷静でいるためには、空腹を避けつことだった。

24エヘクト・チャウター:2015/09/15(火) 21:02:21
>>23
【入室しました】

ボーダーズの勤務がないプライベートな時間。
センター街奥のオープンカフェが目に入ったので私服姿のエヘクトは入ってみる。
すると中は混んでいた。店内をざっとエヘクトが見渡すとメイド姿の久世が目につく。
どうやらそこは席が空いているようだ。
店員が久世のところに行き、相席をしていいかどうか尋ねる。

「お嬢さん、ご相席いいかな?」

こういう時は自分からも断りを入れるほうがいいだろうと思いエヘクトは久世に声をかける。
それになんとなく自分も声をかけたほうが席にありつける……気がするとエヘクトは思った。
それにしても相手が食べているガレットが本当に美味しそうだとエヘクトは思う。
自分の腹の虫が刺激されるのをエヘクトは感じた。
もっとも鳴るというみっともないことはなかったが。

25久世十蘭:2015/09/15(火) 22:01:58


やや超然とした所作でガレットを切り分け食んでいたところ、
耳に腹の虫が聞こえた。

音がするのは、私服姿のエルフ男性の方向だった。


「相席?」

店内を見渡す。

「私は構いませんけど?」

構わない、とは言う。
が、若干の警戒をにじませる。
彼は何者か。ナンパとかそういうのではないのか。
懸念はないか…。


十蘭の第六感はたぶん大丈夫、と示していた。


男性にどう、奢ると言ったものか…?
まだ相手の性格がわからないなら、とりあえず丁寧な態度に出るのだった。

「経費で落とせますから。宜しかったら。」

エヘクトの目の前、空いた席の卓上にメニューを細い指でそっと置いた。

26エヘクト・チャウター:2015/09/16(水) 18:00:44
>>25

「あっ、いえ会計は別々にしていただきますから大丈夫です」

さすがに見ず知らずの人におごってもらう程エヘクトは図々しくはない。
そのため断りを入れる。

「では向かい側失礼しますね」

そう言って失礼のないように久世の向かい側に座る。

「しかしカフェの食事を経費で落とせるなんて羨ましい限りです。
私が経費で落とせるのはレーションぐらいなものでして……」

ははとエヘクトは笑いながら言う。ちなみにレーションとは軍で作戦行動中に支給される
携行糧食のことである。その単語を知っていればエヘクトがボーダーズではないかと推測できるだろう。
そしてエヘクトは店員にはマルゲリータを注文する。

「しかし食事の仕草といいカフェの食事を経費で落とせることといい……
もしかしてどこかの令嬢でおられるとか?」

相手の食事の仕草や発言から推測したことを断ろうと思えば断れる穏やかな口調でエヘクトは聞く。

27久世十蘭:2015/09/16(水) 22:15:12

「いえいえ、こう見えてもメイドですから、あまり自由はないのよ?
今日はたまたま時間が空いていたから、こうしていただけで。」

こうして両名は向かい合う。

初秋の風が心地よい。


「いえ、そんな…」

レーションしか自由に買えない、というその言葉に薄らとはにかむ。

「それでも自由でしょう?私はお仕えする身なので…」

実はただのメイドではなく、ましてただのボーダーズですらないのだが
普通の自由というものからは著しく縁遠いのだった。
自由はまばゆい。

ナイフを握る手が静かに止まった。

「ご令嬢だなんて、大旦那様に申し訳が立ちません。
 私はほんとうに、大旦那様にお仕えするだけの家なので…」

十蘭は強く謙遜してみせる。
経費で落とすのは家の方針ですよ、というニュアンスで言う。


「この町のために戦っておられるあなたの方が、ずっと素敵だと思いますわ?」

話は奢らない方向で進んでいる。

「レーション、というのは食べ物の事だとは聞いています。リンケイの方ですか?
 それとも、ボーダーズでしょうか?」


どちらにしても、立派だと思いますわ。


ごく柔らかく、優しい声でそう添えた。
所作はいちいち繊細で、目線の動きから何からこまやかであった。

「申し遅れました。水瀬 蘭と申します。」


申し立てはしない、一応その名で世を忍んではいる。
しかし、偽名である。

「明治神宮の方が職場です。」

明治神宮といえば、高級住宅街であった。
その高級住宅街に雇われているメイドである、と自己紹介をしていた。

「お名前を伺ってもよろしいでしょうか?」

28エヘクト・チャウター:2015/09/17(木) 19:43:05
>>27

「ああ、メイドでしたか。それなら礼儀正しさも納得がいきますね」

その様子は本当に納得がいったようで微塵も疑っている様子はない。
本当に相手がメイドだと思っているようだ。

「自由……ですか。まあ私はボーダーズなので一般の方々と比べると
自由は少ないと思いますが……」

大旦那に仕える家と聞き、少々トーンを落として言う。
おそらく相手は生まれた時から将来が決まっていたのだろう。
確かにそれと比べれば志願してボーダーズになった自分の方が自由だろうなと
エヘクトは思った。

「ああ、私はボーダーズのエヘクト・チャウターと言います。水瀬さんですね。
少しの間の付き合いよろしくお願いします」

相手のしぐさに合わせ出来る限り丁寧な応対をする。
そのしぐさから少なくともエヘクトは中流階級の生まれであるというのを感じさせる。
そして店員がエヘクトが頼んだマルゲリータを運んでくる。
できたてホヤホヤのようでチーズと生地のいい匂いがする。

「では、いただきます」

そう言い、素早く正確に付属のピザカッターでマルゲリータを切る。
そしてマルゲリータの切片を口に運ぶ。そしてマルゲリータを噛みしめ
味を堪能し

「ああ、美味しいです。水瀬さんのガレットを見てなんとなくマルゲリータを食べたくなったので
頼んだのですが正解ですね」

そう言った。

29久世十蘭:2015/09/17(木) 21:12:14

「それはよかったです。私が何かの役に立てるなら、本望ですわ。」

控えめな所作で、片手を口に添えて、コロコロと、笑った。

「作り手の腕がハッキリするピザが、マルゲリータと聞いています。
 美味しいのでしたら、ここはいいお店なんですね。なんだかよかったです。」

これは真実そう思っていた。
そのようにメイドとして振舞いながら、相手の実質を見ている。
中流の生まれのようだ。悪党っぽさや質の悪さは、確かに感じられない…。


なんだか、こちらの言葉がトーンを落としてしまったらしい。
「ああいいえ、これはもう運命みたいなものですから!
 お気になさらないでくださいね?」
恐縮がにじむ勢いで取り成す。手元は止まっている。
 代々がそうなので、そうなっちゃいました、と付け加えた。

「あの、楽になさってくださいね?私につられないでいいんですよ?」

ほんとに。
ほんとに…。


心配そうに付け加えるのだった。


「でも、とっても育ちがよさそうですのに、なぜ、入隊されたのです?」


メイドのガレットの皿が空いた。すぐにウェイトレスが下げていく。
彼女の前にデザートのクレームブリュレが運ばれてきた。

30エヘクト・チャウター:2015/09/18(金) 19:57:24
>>29

「ええ、本当にマルゲリータが美味しくて良かったです。
ふらっと寄っただけなんですが良店に出会えて嬉しいです」

にこっと微笑みながら言う。

「そうですか……なら分かりました」

相手が引きずらなくて良いと言っているのだ。
引きずっては失礼だろう。そうエヘクトは思い言った。

「なぜ入隊したかですか?う〜ん難しいですね……
まあ二言で言えば罪悪感と恩返しからですね」

同じくからになったマルゲリータの容器が下げられる。
エヘクトはプリンパフェをデザートに頼んだ。

エヘクトはふ〜っと一息つき

「30年前まで地上は今ほどの混乱に包まれていなかったと聞きます。
それが地殻変動で我々が進出し混乱をもたらしてしまった。
その罪悪感とそんな我々を受け入れてくれたということからの恩返しですね」

そうさきの言葉の意味を説明した。

31久世十蘭:2015/09/18(金) 20:14:14

「私、感銘を受けましたわ。」

エヘクトの語る動機に、静かな口調で、少し嬉しそうに言う。

「でも、直接チャウターさんには関係ないことでしょう?
 …私の知るボーダーズの方は、もっと大きなものにあこがれる方が大勢います。
 町を守る栄誉とか、軍人として栄光に包まれたい、とか。
 なのに、そんな動機で…立派、なのですね。」

これは本気で感心をしていた。
打算ではなく、人類としてスッキリと筋が通っていた。

ボーダーズの秘密部隊として、暗部に身を潜めている久世十蘭としては、その動機の正しさと人間性がまぶしく思われた。
ボーダーズには軍人であることに依存して、随分と腐った連中もいたので…。

「義理堅いのですね。そういう人、好きです。」

桜色の唇がほころんだ。
秋波を送ったわけではない。
が、そういうように見える表情と、所作だった。
鬼という種族のせいだ。
今は角は隠しているが、それでも人類の恋愛以上の感情をかき乱す空気や、所作を我知らず行っている。
それでもなお、鬼というのはどういうものか。日本人系の人類であれば、もし彼女の実質を知れば納得しうるだろう。

…今はその機会ではない。

十蘭は、クレームブリュレのカラメルを割り、甘美なプディングを少しずつ崩して、スプーンですくい取り、食んでいく。

「さっきは、私から質問しました。チャウターさんは何か、聞きたいことはありますか?」

32エヘクト・チャウター:2015/09/19(土) 16:43:37
>>31
「そう言われると照れますね。なんだかとても気恥ずかしいです」

相手の嬉しそうな様子を見て微笑みながら照れの表情を見せる。
少し視線も泳いだ。

「大きなものは背負いきれないだけですよ、私は。
ただそれだけのことです。立派なわけではありません」

至極まじめに答える。
相手は自分を買いかぶり過ぎだと思った。
そこまで立派なわけではない。少なくともエヘクトはそう思っている。

そして運ばれてきたプリンパフェをひとくち食べる。

「う〜ん質問ですか?じゃあメイドの給金とか?
あっ冗談ですので真に受けないようにお願いしますね。
多分私では払えない金額だというのは分かっておりますので」

いたずらっぽく笑いながら言う。

「しかし質問と言われましても中々思いつかないものですね。
恥ずかしながらこちらから振るのはどうも苦手で」

33久世十蘭:2015/09/19(土) 21:21:37

相手は真面目だった。
真情が感じられるのは、彼女にはとても好ましく思われた。
口元の笑みが一層柔らかくなった。


「御給金?私のですか?
 ………。」

きょとん、とした表情のまま、ちょっと考え込む。

何か面白いことを言おう、と思うものの…。

「ほんとに、人並みなんです。」

ちょっと困った表情で笑った。

「お仕えしている身で、贅沢は望めません。」


十蘭が受け取っている本来の報酬がいくらかは、
あまたの帳面を引き比べなければ見えてこなうだろう。


「ですよね。」

いきなり言われても、なかなか出てこないものである。

「会って間もないのに、質問も何もないですよね。私ってホントに…。」

エプロンのポケットの中から、着信音がする。
スマホに出る十蘭。応答してからスマホを切り、口を開いた。

「あっ、はい。大旦那様ですか。……よろしいのですか?ご不自由はございませんか?
 …ありがとうございます。では。

……今日は暇を戴いて結構ということでした。オフになってしまいました。」


今日一日、十蘭が応じるべき本業の案件はない、という意味の通信であった。
そしてまたオフでもある。


「いつでも唐突なんです。もう慣れましたけれども…」

34エヘクト・チャウター:2015/09/20(日) 12:27:05
>>33
「人並みの給金を自分のポケットマネーから出せる人なんて少ないですよ」
微笑みながら言う。

「結構、自由人というか気ままというか
そんな感じの旦那様なんですね。
ああ、今質問が思いつきました」

頭の上に豆電球がついたかのようなはっとした表情を見せる。

「同僚のメイドさんのこととかメイドのお仕事とかを聴かせていただいても構いませんか?
何か興味がわきまして……特にメイドの仕事なんてあまり知らないことに気が付きましたし」

そう言った後またひとくちプリンパフェを食べすすめる。
そろそろパフェにのっていた乗っていたプリンが消える。

35久世十蘭:2015/09/20(日) 15:32:42

「まあ、ありがたいことなんですけれどもね。」
そう、お給金が問題なく出せるというのは恵まれている。
つくづくと有難く思う。暮らしというのは安定しているようで、誰も明日など分からない故に。


エヘクトの質問を傾聴して。

「お仕事の事ですか。専業主婦みたいなものですよ?」

では、と息を継いで口を開く。

「朝…6時には起きて、私の身の回りを片付けて着替え。御屋敷の掃除を。
 台所に行って大旦那様の一日の準備、それからテーブルを整えるところから始まります。」

説明は続くが、その間にクレームブリュレを少しずつ食べている。

「8時には私が朝食をとって、それから大旦那様と家族の朝食の片づけを。それから昼食の手配。
 昼食が済んだら私も昼食になりますね。
 大旦那様不在の間に、私室のお掃除、お屋敷のほかの掃除と、お布団の準備。
 少し休憩の後、お夕食の準備。食器洗い。それで一日が終わりますね。
 大旦那様のお子様はもう独立しておりますので、これでも楽になった方だ、と。」
 
そう私の親から聞いています。

ウェイトレスが卓上に二人分の水を運んできた。

「生活の些事をわたくしどもが一手に引き受けることで、
然るべき人物が然るべき仕事ができるよう陰から支える。…使用人とはそういう物なのです。」


なので、自由がある暮らしは、眩しいです、そう付け加えた。

36エヘクト・チャウター:2015/09/21(月) 16:50:25
>>35

「なるほど……でも専業主婦って大変と聞きますし
聞いた限りだとお仕事も結構な重労働みたいですね
私は寮ぐらしなんですが狭いのに家事が大変ですし」

忌憚なき感想を述べる。家事の大変さは狭い寮ぐらしの
自分でもよく分かる。ましてや高級住宅街の家だ。
敷地も広く、家具なども多いだろう。
その分大変なのだろうなとエヘクトは思った。

そうしている間にもプリンパフェを食べ進めいつの間にか
プリンパフェは無くなっていた。そして運ばれたお水を
ぐっと一気に飲んだ。

「では私はそろそろこの辺で失礼します。
お体を大事に……では」

そう言って自分の会計票を持って行きレジで会計を済ませ
店を出た。

【退室しました】

37久世十蘭:2015/09/21(月) 21:43:29

うなづきながら話を聞いている。
「そうなんですよ。意外と家事は重労働なんです。
 ご結婚なさることがあれば、ぜひ念頭に置いていただければと思いますわ。」

そろそろ帰る、というチャウター氏。
「あら、そうですか…では私も一旦お暇を戴きます。」

荷物を持って立ち、彼の後をついてレジに並び、お代を払う。


さて。
街路でタクシーを捕まえると、高級住宅地へのと行くように頼んだ。
一旦、帰投する。


【退出しました】


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