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素晴らしき膨らみの世界
10
:
幻龍総月
:2016/04/20(水) 08:26:49 ID:J7/PPADQ
放課後。3人は久し振りに一緒に帰宅していた。
「久し振りにどこか寄ってかない? カラオケとか」
「いいね! 行こう行こう!」
「行く行く! パーッと楽しんじゃおう!」
そんな盛り上がっている3人の前に一台の車が止まった。その車から1人の男が現れた。サングラスに黒スーツ、スキンヘッドで大柄でいかにも怪しい人物だった。
「土門京華さんですか?」
「え、えっと、そうですけど、何か?」
3人は不審に思い、男から3歩程距離を離した。もしかしたら誘拐目的かもしれない。そんな風に思えたからだ。いざとなったら人を呼んだり、逃げる準備の構えを取る。
「失礼しました。私こういう者です」
懐から一枚の名刺を取り出し、3人に見えるように差し出した。その名刺をのぞき込むと、
『ギガインフレーションアイドル事務所 プロデューサー 間戸部大吉』
「アイドル事務所……?」
「って、ギガインフレーションアイドル事務所?! 超有名なアイドル事務所じゃん!?」
「え、本当?!」
3人は名刺の内容に驚きを隠せなかった。
それもそのはず、ギガインフレーションアイドルとは、今流行りの人気アイドルを輩出している有名事務所だからだ。
「あの、お話し聞いていただけませんか?」
「あ、は、はい! いいですよ!」
「ここではなんですし、そこの喫茶店でゆっくりお話ししましょう」
・・・
ジャンクフードのチェーン店に入り、3人は話を聞いていた。
「えっと、要は京華にアイドルのスカウトに来たってことですか?」
さっきまで間戸部が話していたことを、千子が話の全体をまとめた。
「はい、そうなります。土門さんには膨腹の資質ありと断定されましたので」
「じゃあ今日から京華はアイドルってこと?」
「お返事さえもらえれば」
「わ、私なんかでいいんでしょうか?」
急な話に戸惑いを隠せず、緊張している。
「ちょ、京華緊張しすぎ!? まだ始まってもないよ?!」
「皆さん同じ様な反応をされます。当然と言えば当然ですが」
「あのー、テレビで見る限りだと膨腹状態で歌ったり踊ったりする感じですよね?」
「はい、間違いありません」
「私運動音痴何ですけど……」
「その点も考慮済みです。土門さんには新たに結成するアイドルグループに入ってもらうので」
「え?」
「百聞は一見にしかずです。実際に見に来てもらえますか?」
・・・
3人は間戸部の言われるがままに事務所に移動した。
テレビで見たことのある本物の事務所を見て、胸の中にあった疑惑は完全になくなった。
「こちらです」
そのまま事務所に入って行き、ダンススタジオらしき部屋に連れて来られた。
そこでは、先に来ていたと思われる女子が膨腹させるトレーニングをしていた。膨らむ大きさはそれぞれだが、一番大きくて腹囲120㎝程といったところだった。
「ここにいるみなさんが新しく結成されるアイドルグループ、『バルーンシンデレラ』です」
「バルーンシンデレラ……」
「このグループの特徴は膨腹パフォーマンスです。今までの膨腹アイドルとは違い、ステージ上で膨腹しながら歌ったり踊ったりして頂きます」
今までの膨腹アイドルは、事前に膨らませてからステージに上がっていた。バルーンシンデレラはステージ上で膨腹していくというのだ。
「膨腹パフォーマンスには動きよりも膨らませる方がメインになります。激しい踊りや走ったりするという行為は殆んどありません。なので、土門さんに白羽の矢がたったわけです」
「なるほど、それなら私にもできるかも」
「いかがでしょうか?」
京華はうーんと、悩み始めた。
「ねえ京華、やってみたらどう?」
「え?」
美玲が京華に声をかけた。
「すごい事務所にスカウトされてるんだしさ、経験しといたほうがいいって思う。私にはできそうにないし」
「美玲……」
「私もそう思う。無理強いはしないけど、京華にはすごい才能があるんだよ、きっと」
「千子……」
心の中で思いが固まった。それを言葉にした。
「間戸部さん、私アイドルやりたい」
「……その言葉を待っていました」
その風体から想像も出来なかった爽やかな微笑みで答えた。
こうして、京華は新ユニット『バルーンシンデレラ』の一員になった。
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