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【企画立案】オリスタ会議室【イベント進行】

567名無しのスタンド使い:2023/10/22(日) 01:27:30 ID:PbWPbIdw0
状況説明のあらすじとクリア条件の問題とは別々に記述した方が読みやすいかも

568名無しのスタンド使い:2023/10/23(月) 00:36:15 ID:F9/GyzUw0
567
テンプレへのアドバイス有り難うございます!
その方が見やすそうですね。次の更新時、テンプレに【クリア条件】みたいな項目を追加しようと思います。
その他にも何かあれば対応しますので引き続きご意見等募集してます。

569名無しのスタンド使い:2023/10/31(火) 21:09:48 ID:0gF7rWOM0
期日になったので企画の進行を再開します。
まずはテンプレートの件ですが、新たに【課題名】と【クリア条件】を加えた様式に変更&解答話用のテンプレを用意したました。内容は以下の通りです。

〜問題用テンプレ〜
【課題名】
【あらすじ】
【クリア条件】
【使用オリスタ】
【補足情報】

〜解答用テンプレ〜
【課題名】
【使用オリスタ】
【解答】


使用例は以下の通り。

〜問題用テンプレ〜
【課題名】
昏い森からの脱出
【あらすじ】
省略
【クリア条件】
スタンド使いの殺人鬼が潜む森の中から脱出せよ。
【使用オリスタ】
No.5358、ファー・アンド・ローシング
【補足情報】
省略

※解答用テンプレは本題のデモプレイ公開の時に使用します。

クリア条件は>>567さんのアドバイスを受けて追加しました。課題名は問題を取り扱う際にあれば便利かな程度の思い付きで加えております。様式の変更にあたり何かあればアドバイス宜しくお願いします。

次は企画のデモプレイについてです。
2週間前に問題を2つ用意しましたが、私の執筆速度では1問目の解答話しか書くことしかできませんでした。サンプルを1つしか用意できなかったことをお詫び申し上げます。
次のレスで問題1の解答話を投稿した後、実際に動いてみて感じた私見・評価をまとめつつ、今後の方針を定めたいと思います。

570名無しのスタンド使い:2023/10/31(火) 21:12:17 ID:0gF7rWOM0
【課題名】
昏い森からの脱出
【使用オリスタ】
No.6632 ムーヴィングジュエルズスカイ
【解答】

 紅葉に染まる郊外の森、暖色に包まれた閑静なハイキングコースは紅葉狩りにくる来訪者もちらほらいるようだが、整備された路から外れた手付かずの深奥は、昼間だというのに薄暗い。そんな所で一般的と呼んでも差し支えない、どこにでもいそうな高校生は、落ち葉まみれになりながら座り込んでいる。

「ううぅぅぅ……」

 高校生は脂汗をかきながら痛みに呻く。右足に履いている白いスニーカーは血が滲み出ており、立ち上がろうとした瞬間、痛覚が人体に更なる警報を鳴らす。
 恐らく骨折している。本来ならば、その場を動かずに救急車でも呼べればいいのだが、生憎ここは電波の届かない森の中、自分から動かない限り誰も救いの手は差しのべられないだろう。

 高校生は右足を庇いながら立ち上がると、落ち葉に覆い隠されていた何者かの手により仕掛けられた悪意を忌々しそうに睨み付ける。

 トラバサミ……人や動物を無差別に捕まえて大怪我を負わせる狩猟用の罠は鳥獣保護管理法により、使用が禁止されている。戦地に取り残された地雷のように、先人の忘れ形見だと思いたいが、そのトラバサミは雨風に曝されたりして錆び付いているなど経年劣化しているようには見えなかった。

「クソ、一体何のつもりなんだ……」

 高校生は今まで自分が追いかけていた知人……同級の女子高生の事を思い返す。数日前から行方不明となっており目撃証言を頼りに郊外の森まで探しにきたというのに、いざ発見したら呼び止めても無視して森の奥へと逃げていくのだ

 状況証拠的に考えるとまさか……高校生はその推理を否定する。

 彼女がこんなトラバサミを仕掛ける理由が思い付かない。彼女から怨みを買った覚えも高校生にはない。誰かに脅されて罠にはめようとしたのか……そんな思案を巡らせている高校生の行方を、無情な現実が遮る。

 ついさっきまで追跡していた彼女は、物干し竿にかけられたボロ雑巾のように、落葉樹の枝に力なくぶら下がっていた。四肢と頭は完全に脱力した状態で垂れ下がっており、よく見えないが背中は縦に引き裂かれているのか、痛ましい傷痕が晒しものにされている。

 あれは、もう……

「う、ううぅぁ、うわぁぁぁぁぁぁああああああ!!!!」

 理性が決壊した高校生は絶叫を上げられずにはいられなかった。なぜ彼女はこんな惨たらしい最期を迎えなければならないのか?高校生の脳内に溢れ出る記憶の中に彼女の死を肯定する理由は何一つ見当たらない。

 放心状態の高校生はその場から崩れ落ち、落ち葉と腐葉土にうずくまるが……首の皮一枚で繋ぎ止められていたなけなしの理性が、残酷な現実の中に紛れ込む辻褄の合わない奇妙な違和感を発見する。

 なぜ背中から引き裂かれているのに、血溜まりが出来ていない。一つの違和感に気がつけば、他の違和感も連鎖的に気がつく。なぜ背中から引き裂かれているのに衣類が血で汚れていない。ぱっくり割れた背中からは背骨や臓器も見えない……思わず目を背けてしまったが、よく観察して見れば傷痕の縁はファスナーのエレメントのように変形している。こんな状態でどうやって先ほどまで動けていたのか?

 これは偽物なのか?淡い希望が高校生の脳裏に過るが……彼女の顔を改めて見た瞬間、そんな都合の良い期待を抱いた事を後悔する。血の気の引いた蒼白の顔は人形のように硬直していようとも、紛れもなく彼女自身の素顔だった。

 生前の彼女を知る高校生は直感的にこの死体が本物の彼女だと察し、彼女の虚ろな瞳と目が合った瞬間、吐き気を催しそうになるが必死に我慢する。
そんな時、どこからともなく声が聞こえた。

「死ネ」

 高校生は声のした方向に顔を向けるが、そこには誰もおらず、風に吹かれて紅葉の木々が寂しそうに揺れるだけ。

 ストレスによる幻聴か?いいや、間違いなくはっきりと聞こえたのだ。

 一般人であるならこの状況下、恐怖を感じて動けなくなるか、或いは錯乱して闇雲に逃げ出すかもしれない。しかし、その明確な殺意込めた言葉は、高校生を逆に冷静にさせてしまった。もう絶望している暇なんてない事を気がつかせてしまった。

 この森の中には得体の知れない〈何か〉が潜んでいる。

571名無しのスタンド使い:2023/10/31(火) 21:14:41 ID:0gF7rWOM0
全容は掴めていないが、何者かが彼女を殺害して死体を弄ぶように利用した。森の中にはトラバサミがあり、恐らく他にも罠があると考えた方がいいだろう。
 高校生は自分自身の名前とは異なるもう一つの名前を叫ぶ。それは己の精神力の発露、超能力をもう一人の自分として呼び起こし、困難を共に立ち向かう為の掛け声。

「ムーヴィングジュエルズスカイ!!!」

 高校生の姿が陽炎の中にいるかのようにブレたかと思えば、ブレは次第に人のような姿を形成、高校生と並び立ち身構えるような仕草をする。
 両手首から先が独立するように浮遊しているのが特徴的な彼の特殊能力・スタンドだ。

「来るならこい!ぶっ殺してやる!!」

 高校生は攻撃的な言葉で〈何か〉を挑発しつつ、〈MJS(ムーヴィングジュエルズスカイ)〉に辺りを警戒させる。空中に浮遊する両手は能力をいつでも発動できるように、指で対角を作りながら身構え続ける。

 まずはこちらがスタンド使いという情報を開示して、相手の出方をうかがうが能力までは晒さない。相手がただの異常者ならそのまま叩き潰すが、スタンド使いならこのまま牽制しながら森を脱出する。
 彼女の敵討ちもしたいところだが、怪我をした右足を庇いながら正体不明の敵を深追いするのは現実的に難しい。だが相手が積極的にこちらを攻撃してくるならこちらも迎え撃つ。
 行動指針を定めた高校生は、しばらく注意深く辺りを警戒するが……何も起こらない。スタンド使いと戦闘するリスクを相手側も避けたいのならこちらも乗っかりたいが、あまり希望的観測に偏り過ぎれば足元をすくわれてしまうだろう。

 高校生は決心したように木の枝にぶら下げられた彼女の遺体を見つめる。彼女の帰りをどんな形であれ待ち続けている者たちがいる。中には残酷な現実に耐えきれず、行方不明という曖昧な幻想のままで良かったという者もいるかもしれないが、一番重要なのは……誰かの反応ではなく彼女自身が生まれ育った故郷に帰り、せめて安らかに供養される事だ。このまま放置すれば何をされるか分からない。
 何より彼女の遺体としっかり対面できなければ〈何か〉の正体は掴めない。背中の傷に沿うように出来ているファスナー、空洞のように見える中身を確かめる事で相手の能力を探れるかもしれない。

 高校生は〈MJS〉の両手を飛ばし、彼女の遺体をそっと抱き抱えようとした。その刹那―――

「クフフ、クフフフフフフ」

 彼女の遺体が不意に笑い声を上げる。
 否、彼女の中で何かが高校生を嘲笑している。

「ダカラ、死ヌ」

572名無しのスタンド使い:2023/10/31(火) 21:15:10 ID:0gF7rWOM0
高校生が考える間も無く、そいつは彼女の背中の傷痕から飛び出てきた。何かと思えば野鳥の雛鳥……否、その背中を突き破るように暴れ狂う野犬が飛び出てくる。
〈MJS〉は咄嗟に片手を飛ばして野犬の首を締め上げるように捕縛するが、呆気なさ過ぎる―――

「キィコェェェェェェェェェェェェェェェェエエエエエエエエエエエエッ!!!!」

 奇声を上げながら本命が彼女の中から飛び出てくるや否や、鋭利な刃物のようなもので〈MJS〉の左顔を縦に引き裂かれる。
 それに連動するように高校生の左顔に激痛が走り、左目が潰される。さらに―――ぐさりと、この混乱に乗じた追撃が高校生の右肩を穿つ。

 高校生は苦悶の表情を浮かべながら咄嗟に振り向くと、そこにはどこから湧いて出てきたのか分からない不気味な顔……人の顔の皮で作成したような恐ろしいマスクを頭に被る大男が、高校生の右肩にナイフを突き刺していた。

 大男は当然、ナイフに力を込めて高校生の肉体を引き裂こうとするが、その前に〈MJS〉は、なりふり構わず野犬を大男めがけて投げつけて、高校生と大男を引き剥がす。
 さらに彼女の遺体も手放し、浮遊する両手が指で対角を作るように構える。指に沿った範囲内にガラス板を十数枚具現化された途端、ガラス板は時計回りに動きだし、断面が大男の方に向けられた瞬間、ガラス板は手裏剣の如く射出される。

 その時、大型犬くらいの大きさの〈何か〉が茂みから飛び出しくるや否や、大男に体当たりをぶちかまし、生身の人間であるならば一溜りもない斬撃の集中砲火を間一髪で回避してみせた。

 そいつは右腕が鎌のようになっているアライグマみたいな姿をしている。あれが大男のスタンドで間違いない。

〈MJS〉はガラス手裏剣の掃射を継続、〈アライグマのようなスタンド〉は軽やかな身のこなしで茂みに潜り込み逃走を図る。一方の本体と思わしき大男は地面にうつ伏せになったまま動けないでいる……否、彼女の遺体と同じように、その背中はファスナーに変形しており、既に中身は逃げた後らしい。
 取り残された大男のマスクを〈MJS〉を使い引き剥がしてみると、充満していた悪臭が外気に解き放たれる。そいつは見るも無惨な腐乱死体だった。

どうやら大男……謎の殺人鬼のスタンド能力は……死体にファスナーを取り付けて、中に入り込み着ぐるみのように着用出来るのだろう。雛鳥の中から野犬を放出して意表を突くような事もしており、着ぐるみの大きさは恐らく関係なく、小型生物に潜伏して隠密行動等もとれるのかもしれない。奇襲を仕掛けてくるという事は真向勝負は苦手なタイプなのだろうが、スタンド能力に頼りきりではなく、本体も積極的に攻めてくるのは能力も相まって厄介だ。

573名無しのスタンド使い:2023/10/31(火) 21:16:55 ID:0gF7rWOM0
「あぁ、クソ…能力は理解できたけど……仕留め損ねたのはしんどいなぁ」

 高校生は頭をかきむしりながら苛立ちをみせる。
 右肩に突き立てられたナイフは引き抜こうとすれば、たちまち血がほとばしり大量出血は必至。左目も潰されてしまい遠近感や平衡感覚が乱れる。殺人鬼のスタンド能力をおおよそ看破できたかもしれないが、それにしても高校生の方が被害は甚大であり、手痛い授業料を支払ってしまった。
 自分の甘さが招いた結果だ。頭では最善の行動を選択していたつもりでいても、相手の方が一枚も二枚も上手だったのだ。彼女の遺体を回収しながら森を脱出する以前に、高校生自身が自分の命を守りきれなければ話にならない。

「ごめん……必ず戻ってくる」

 高校生は倒れ伏せる彼女を見つめて〈MJS〉の能力を発動する。せめてこれ以上、傷つかないように……ガラス板の防御壁で彼女を囲い、その場を後にする。血塗れの拳は小刻みに震えながらも力強く握りしめられており、右足を庇いながら前進を続ける。
 殺人鬼も先程の強襲以降、高校生の様子をうかがっているのか姿を見せない。手負いの獲物を付かず離れず追跡して、瀕死になりかけた頃合いに再び畳み掛ける算段か、或いは……すぐに殺すのではなく獲物を弄びながら狩りを楽しむサディスト志向があるのかもしれない。高校生が〈アライグマのスタンド〉に気を取られていた際、殺すつもりならいくらでも急所は狙えたハズだ。
 殺人鬼の能力を踏まえれば、こうしているうちに何か仕込みを入れていてもおかしくはない。負傷した高校生側から積極的に攻めることは出来ない以上、選択できる戦術は迎撃ぐらいしかできないが……それならまだ勝算があると高校生は共に並び歩く〈MJS〉を見ながら次なる手を打つ。
 どれくらい森の中を歩いたか高校生にも分からないが、彼女の遺体が戦闘の影響が及ばなさそうな位置まで来たところで立ち止まる。

574名無しのスタンド使い:2023/10/31(火) 21:18:09 ID:0gF7rWOM0
「イージーモードはつまらないよな、おい?」

 高校生が自虐的に笑うと、〈MJS〉は指を対角に構えて無数のガラス板を具現化し、自分の回りに次々と衛星のように周回させる。
〈MJS〉は近距離パワー型に分類されるスタンドだが、破壊力は人並みぐらいしかなく、スピードも接近戦闘に特化した同種のタイプには一歩及ばないが……ガラス板の具現化を基本能力に、A判定の精密動作性・成長性からなる柔軟な応用力は、他の近距離パワー型とも互角以上に闘えるポテンシャルを秘めている。

「MJSのガラスの衛星は攻防一体!僕の周り半径5メートルを旋回しながら近づくものを弾き飛ばして切り刻む!ぶちのめしてやるからお前のとっておきを見せてみな!」

 相手が攻めて来ないならこちらの情報を敢えて開示して誘い込む。勿論、相手がこちらの誘いに都合良く乗ってくるとは限らないが、高校生は体力を消耗しきる前に、この膠着状態をどうにかしたかった。その為なら手段は選ばない。

「……ハンティングゲームを楽しみたいなら今がチャンスじゃないか?僕はこのままだったら血が流れすぎて失血死するかもしれない。今が一番活きが良いから、きっとひりつくような楽しい狩りができるかもしれないね。……でも、まぁどうせ絶対反撃してこない死体のケツを掘るのが大好きな変態野郎ならずっとイモる事しかできないか。あぁ……イモるって言うのはね。攻撃されるのが恐くて安全な場所に引きこもって動かない腰抜けのゲームプレイヤーの事を言うんだ……こんな辛気臭い森の中で死体とお着替えごっこなんてしてたらきっと知らないよね?」

 高校生は相手の感情を逆撫でするような言葉を思い付く限り吐き捨てる。確信ではなく、ただの推測だが……強盗・強姦・殺人、様々な社会的タブーを破ってきた犯罪者は、往々にして自分の感情に正直で自制心の欠片もないだろう。人目の多い場所ならまだ演技なり取り繕うかもしれないが、自分が支配する有利なテリトリー・狩り場で、今まで散々いたぶってきた獲物に突然好き放題、罵詈雑言を浴びせられたら?

 分からせてやろう……と、付け入る隙を勝手に晒してくる。

 もっとも相手の異常性や実力を見誤れば自分の寿命を縮める自殺行為でしかないが……高校生の瞳に迷いや余計な感情は宿っていない。既に覚悟しており、生死を賭けた博打に挑むだけだ。
 そうこうしているうちに、木々の隙間からそいつは……ぬっと現れるや否や、四肢を力強く躍動させながら少年に向かって猛進してくる。

「いやいやいやいや……マジか」

 さすがにこれは高校生も想定していなかった。

 森の中に仕掛けられていたトラバサミは、狩りのサポートの為だけではなく、この〈切り札〉を確保する為に仕掛けられていたのかもしれない。

 高校生は呆けたように目を丸くしながらそれを見つめる。恐らく生まれて初めて現物を見たのだろう。
 体長はゆうに2メートルは超えている。黒みがかった褐色の毛皮は防弾チョッキのように硬く丈夫、その中も分厚い脂肪と筋肉で保護されており、急所を猟銃で撃ち抜かない限りその暴走を止められない……日本国内最大最強の野生生物ヒグマだ。
 その発達した肩の筋肉は盛り上がってこぶになっているが、その正中線にはやはりと言うべきか、お約束のファスナーがついている。中身が何かは定かではないが……問題はあれが着ぐるみに宿るスペックを活用できるかどうかだ。

〈MJS〉は空中に漂わせていたガラス板を一斉に射出するが、ヒグマは直撃を受けてガラスがその身に突き刺さろうとも怯む様子はない。この程度の攻撃では、分厚い装甲を身に纏う屍の重戦車を足止めする事は不可能。
 ヒグマの前足が容赦なく高校生目掛けて振り下ろされるが、〈MJS〉は空中に待機させていた残りのガラス板を重ね合わせて一点集中の防御を図る。
 合わせガラスと強化ガラスの特性をイメージしたのガラスの防御壁は、ナイフのように鋭利なヒグマの爪の直撃を受けても完全に砕け砕け散る事なく、高校生を致命傷から守りきるが……剛腕の凪払いまでは押し返す事は叶わず、力負けしてガラス板ごと高校生は吹き飛ばされてしまう。
 ヒグマの中身が何にしろこの異常なパワーはヒグマの着ぐるみそのものに宿る固有の剛力なのかもしれない。高校生は木陰に激突するが、すぐさま起き上がり逃げ出す。脳内のアドレナリンは全身に駆け抜ける痛覚の警報を無視して疾走させる。

 すぐ後ろには猛追するヒグマが迫りくる。

 そんな緊迫した危機的状況下、足元を注意深く洞察できる余裕は高校生にはなく―――ガシャン。
 落ち葉に紛れて仕掛けられていたトラバサミ、今度は高校生の左足をガッツリ挟み込んでいる。

575名無しのスタンド使い:2023/10/31(火) 21:18:36 ID:0gF7rWOM0
「―――っ?!クソ!またかよぉぉぉぉぉぉおおおおおお!!!!」

 同じ日に二度繰り返される理不尽な不運。ヒグマに襲われていようとも、冷静に立ち回っていた高校生も流石に感情を爆発させた。辛うじて近くの木に捕まって転倒こそしてないが状況は最悪過ぎる。
 かかさず〈MJS〉は高校生とヒグマの間に割って入り、宙に浮かぶ両手を対角に引き延ばすと、ヒグマと同じくらいのサイズはある巨大なガラスを具現化する。その時、姿を見せずにいた伏兵が茂みから飛び出ててきた。

「キィコェェェェェェェェェェェェェェェェエエエエエエエエエエエエッ!!!!」

 耳をつんざくような喧しい奇声をあげながら〈アライグマのスタンド〉は右腕の鎌を〈MJS〉の脇腹に突き立てようとする。高校生と〈MJS〉の周りを旋回していたガラスの衛星はヒグマの強襲で既に使いきっている。ガラスの防壁でヒグマの猛襲を凌ごうとする高校生の一瞬の隙を突こうするが……殺人鬼は獲物の意図を見誤ってしまった。
〈MJS〉は具現化した巨大なガラス板を片手を使い上空に押し上げながら放り投げると、自由になったもう片方の手を力強く握りしめながら、襲いかかる〈アライグマのスタンド〉の頭部に渾身の裏拳をぶち当てて吹き飛ばす。さらに迫りくるヒグマに対して蹴りの連打をお見舞いする。
 友人の死、自分自身に迫りくる生命の危機、リスクを減らす逃げの思考をかなぐり捨てた生死を賭けた直接対決、その全て経て高校生の精神力が成長してもなお〈MJS〉のパワーではヒグマを一瞬足止めするのがやっとだが……その一瞬で十分。

 無数の蹴撃を受けてもまるでダメージを受けていないヒグマは、そのまま〈MJS〉を強引に押し退けて前進しようとするが……上空から落下してきたガラス板のギロチンに避ける間も無く胴体を真っ二つに切断される。ヒグマを屠ったガラス板は地面に接触するや否や悲鳴あげながら粉々に砕け散った。

〈MJS〉の真骨頂はガラス板の具現化、本体の高校生が逆境に立ち向かいながら精神的に成長した結果、具現化するガラスの強度をより強固なものとなり、一瞬ではあるがガラスを操作する能力射程も劇的に伸びたのだ。

 偽物とはいえ大自然の暴威の権化を退けた高校生は思わず安堵の笑みを浮かべた時―――高校生の腹部にいつの間にか忍び寄っていたトカゲ、そのファスナーのついた背中は、ナイフを握りしめた筋肉質な腕により突き破ぶられる。

 スリラー映画〈ソウ〉の黒幕よりもずっと獲物の近くに潜み込み、高校生の一挙一動を一番の特等席で観察していた殺人鬼は、自身のスタンドのように喧しい声を出すことなく、高校生の喉元にナイフを突き立てようとする。ここまで懐に入られてしまっては〈MJS〉で防ぐ事も間に合わず―――

 グサリ

576名無しのスタンド使い:2023/10/31(火) 21:20:08 ID:0gF7rWOM0
「やると思ったよ」
「!?」
「クマは切り札を装ったワンチャン狙いのブラフ、お前が直接クマの中に入り込んでいたなら、ガラスのギロチンを察知して難なく避けられていたかもしれない」
「ごふっ……!」
「でもあのクマは馬鹿の一つ覚えみたく襲いかかってくるだけ。飼い慣らしたか……或いは狂犬病にでも罹った野犬でも仕込んでいたんだろう?」
「うううぅぅぅグギギギギ……!」

 殺人鬼の手からナイフがこぼれ落ちる。その腕が伸びる根元のトカゲは、高校生が隠し持っていたガラスの破片が突き立てられており、トカゲの器には収まりきらない量の赤黒い血液が溢れ出てくる。

「発想のスケールを見誤らなかった僕の勝ちだ」
「……キィコェェェェェェェェェェェェェェェェエエエエエエエエエエエエッ!!!!」

 高校生の勝利宣言に殺人鬼は苛立ち、唯一自由に動かせる己の〈アライグマのスタンド〉……〈ファー・アンド・ローシング〉に意識を集中させて高校生を襲いかかろうとするが、隠れて攻撃する鈍いスタンドに、真向勝負で〈MJS〉は遅れを取らない。

「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ッ!!!!」

 空中に独立浮遊する〈MJS〉の両拳から繰り出される殴打のラッシュ、避ける間も無い〈ファー・アンド・ローシング〉はなす術なく吹き飛ばされ、地面に倒れ伏せる事しかできなかった。

 いたぶって遊びながら殺害しようとしていた獲物に、逆に見下ろされる殺人鬼。もしも彼がプロの殺し屋ならば謙虚に振る舞い、最初の強襲で確実に高校生を始末していたかもしれない。最後の瞬間もそうだ。高校生の希望に満ち溢れた顔を絶望に染めてやろうと、彼の顔色がどんな風に変化するのか見るために、敢えて背後に回り込もうとはしなかった。      
 人殺しを趣味嗜好としてしまった殺人マニアの悪癖が、そのまま勝負の分かれ目てなってしまったのだ。
 殺人鬼に自分の落ち度に気がつく猶予は残されていない。ただ今際に……生意気な獲物に向けて呪いの言葉を吐き捨てる。

「クフフ……あの女の具合、クフフ……最高だったぜ。バラバラにして犬の餌にしてやった。あの場に捨て置いて……見捨てたお前のせい。クフフ、クフフフフフ、せいぜい犬の糞を探し回れ」
「……つまらない嘘つくね。死体はお前にとって大事なリソースじゃないのか?お前は最低最悪の屑の大馬鹿野郎だが妙に小賢しい。殺し合いの真っ只中で自分が切れる手札を悪戯に浪費する?自分の一張羅を無駄遣いするほど余裕あるの?腐った死体を着続けるギネス記録でも狙ってるなら知らないけど」

 高校生は一瞬だけ苦虫を噛み潰したような表情をするが、すぐに平静さを取り戻すとつまらなさそうに一蹴する。それこそ彼女の死体を残酷に再利用でもされていれば、高校生の精神は揺さぶられ勝負はどうなっていたか分からなかっただろうが。

「クフ、フ……シ…………………………」

 全てを見切られた殺人鬼は完全敗北を惨めに実感しながら事切れる。強がりで吐き捨てた虚言は、高校生の脳髄に巣くい、呪い続ける力など残されていない。同様に〈ファー・アンド・ローシング〉の能力は解除され、トカゲを突き破り血塗れの死体が飛び出てくるが……もうそいつの事は心底どうでもよかった。

577名無しのスタンド使い:2023/10/31(火) 21:21:26 ID:0gF7rWOM0
 そんな事よりも高校生は日が暮れる前に森を脱出するべく……まずは自分の右足に挟み込む憎たらしいトラバサミを解除する。
 幸いトラバサミは難なく外せたが、両足がトラバサミに潰されてしまった高校生は、最早歩くことすらままならず、這いつくばりながら移動する事しかできない。依然として危機的状況は継続している。

「……いやいやいやいや……まさかね?まさかだよね?せっかく森の中のババ・ソーヤー(亜種)みたいなサイコ野郎を倒したのにさぁ!遭難&失血死エンドはないよね……いやいやいやいや!クソ、冗談じゃないぞ!畜生!」

 森を脱出するうえで、最大の障害は取り除けたまでは良かったが、ここまで積み重ねてきたダメージが満身創痍な高校生の肉体に重くのしかかる。口では軽口を叩いているが、時間だけが無情に過ぎて辺りは赤橙に染まりかけてきた。

「……絶対に帰るんだ。絶対に生きて帰る!絶対に生きて帰って、ここに戻って、迎えに来るんだ……!家に帰るんだ……!」

 高校生はうわ言のように自分を鼓舞する言葉を呟き続ける。もう喋り続けていないと意識が飛びそうになっていた。その時―――

「そっちじゃないよ、こっちこっち」

 どこからともなく聞き覚えのある声がした。
声のした方を見れば……明らかに声の主とは程遠い、大柄な体型をした壮年の男性が立ち尽くしている。

 いや誰?高校生は見知らぬ男の出現に困惑するが……その屈強な体格だけなら見覚えがあったかもしれない。そして、彼の背後に隠れていた見覚えのある少女は、ひょっこりと顔を出してイタズラそうな笑みを浮かべていた。彼女たちは道を開けるように二手に分かれると同じ方向を指差す。
 その先には血塗れの高校生を発見して、慌てて駆け寄ってくる人物がいた。

「じゃあね。ありがとっ」

 それだけ言うと彼女と大男の幽霊は夕焼けの光と共に消えてしまう。高校生が死にかけだったから見えたのかもしれないが、或いは……彼の言葉は意図せずして、この地で無念の最期を遂げて、眠りについていた人々の魂を呼び覚ましたのかもしれない。
 生死の境目で奇跡的な再会を果たした高校生は、感傷に浸る間も無く、喧しい友人の声と共に現実に引き戻される。

「おーい!!一体何があった!?ボロボロじゃねーか!新手のスタンド使いにでも攻撃されたのか!?」
「……まぁ、そんなところだね。ご覧の通りかなりヤバかったけど奇跡的に何とかなった。ところでどうして君がここに?」
「こっちのトラブルが早めに解決できたからだよ。手伝おうと思って連絡しても電話が繋がらないから心配になって来てやったんだぜ。そしたら何か森の中で怪我している人がいるから助けてやってくれって……時々すれ違った人たちに教えてもらってここまで来たんだ。いやぁマジ感謝だな」
「……そうか、そうだったのか……本当にお節介焼きのお人好しは敵わないね。ありがとう本当に助かったよ」
「何だか妙に素直じゃねーか気持ち悪いな」
「こっちは死にかけなんだ。無理言うな」
「あぁ〜悪い悪い、もう少ししたら電波も繋がるところに出るから救急車呼んでやるからな。持ちこたえろよ!しょうがね〜からおんぶしてやる!ほらおんぶ!」

 血塗れの格好で背負われるのは申し訳ないと高校生は遠慮するが、青年は「終わらねーから早くしろ」と、わざとらしく急かしながら言いくるめる。
高校生も言い返す余力もなく、大人しく背負われる事にした。
 
 こうして底知れぬ邪悪が潜んでいた森は、一人の若者の奮闘により静寂を取り戻した。森の中に取り残されていた者たちはそれぞれの帰路、向かうべき場所にようやく歩み始める。物言わぬ家族の帰りを迎え入れる者たちは、きっと深い悲しみに打ちのめされることだろう。その痛みをどうやって癒せばいいかなんて誰にも分からない。幻想や呪いに囚われたまま、前に進めなくなる者もいるだろう。しかし、時は何も語らぬまま進み続け、世界は新しい明日を迎え続けるように、残された者たちは否でも応でも生き続ける。どのような選択をするかは人それぞれだが―――去ってしまった者たちに報いられるように、若者たちは己の意思で歩み続ける事を選択する。

578名無しのスタンド使い:2023/10/31(火) 21:23:55 ID:0gF7rWOM0
解答話のサンプルは以上です。
文字数制限を失念しており、連投する事になってしまい申し訳ありませんでした。
解答話に採用したオリスタは本スレの【完成品サンプル】からお借りしました。
登場人物を命名していないので、少し読みにくいと思いますが、そこら辺は読み手・原案の人・絵師が各々好きに解釈してくれれば良いかなと思っていますので、読み流してくだされば幸いです。

本題である企画の評価に入りたいと思います。
問題の内容がバトルものだった事もあり「……これってもしかしてトーナメントでもよくない!?」と言う危惧がありましたが、問題に組み込まれたオリスタは条件次第でスペックをフル活用しやすく、問題を解決するオリスタは不利な条件で動かなくてはならないので、ランダム条件という公正さが売りのトーナメントとは違う方向性で、良くも悪くも贔屓してオリスタを扱えるかなと思いました。
ただ、あまりやり過ぎると私の解答話のようにバトルに注力し過ぎて、森からの脱出という本題をご都合主義の力技で解決するハメになってしまいますので匙加減は気を付けたいです。或いは問題を全て解決できなかったビターエンド風のパターンが有ってもいいかもしれません。

その他でトーナメントと明確に差別化できる強みは、やはり1つの問題でifの解答話の製作を楽しめそうな点です。問題に登場したファー・アンド・ローシングの本体設定は割かしシンプルだったので書き手の解釈次第で、お決まりの単独犯から、イカれた殺人鬼ファミリーが被り物をした死体の着ぐるみを着用して不死身の殺人鬼を演出しているとか、臓器売買を秘密裏に行うギャングと結託しているとか……問題の設定から逸脱しない程度に上手く盛れば、書き手が選んだ解答オリスタと合わせて色々な話がつくれそうかもしれません。
懸念点を挙げるとすれば、オリスタを組み込んだ問題ばかりだとバトル系の解答ばかりになりそうなので、問題にオリスタを組み込む事に拘らず、事故や災害救助・テーブルゲーム等のシチュエーションを加えたパターンも考案してみたいですね。
あと私も1人で同じ話を違うパターンで繰り返し解答できる余力はなさそうなので、企画に興味を持って遊びにきてくれる書き手さんがいる事が前提になりそうです。

問題を解答するオリスタについては、当初は推薦してもらうという案がいいかなと思っていましたが、あまり条件をガチガチに固めすぎると書き辛くなりそうな気がしてきたので、書き手さんが活躍させたいオリスタを好きに選んでもらった方が良いかなと思いました。
推薦は書き手がどのオリスタを使用するか迷っている場合、予め活躍させて欲しいオリスタを募集しておいて、迷っている時にその中から選ぶ程度で止めようと考えています。

問題の作成については、こちらで作成しつつ、面白そうなオリスタがあれば推薦してもらったり、問題そのものを募集して上手く扱えそうなら各々解答話を書くようにすればいいかなと思ってます。

企画自体の進行については、現状書き手が私一人だけなので引き続き先行して問題と解答を作成しつつ、書き手や問題作成・活躍させたいオリスタの推薦を随時募集する自由参加型の企画にしようかなと考えています。参加者がいなさそうなら最初から一人でやればいいかもしれませんが、オリスタ15周年を祝う大義名分を掲げた企画の方がモチベーションが俄然上がるので、誠に勝手ではありますがご容赦お願いします。このままのペースなら16周年も祝う事になりそうですが、それもまたよしです。

それではまた2週間ぐらい様子を見ながら、今度は必要になりそうなルールを考案・整備・明文化して本格的に企画を開始する準備に移行したいと思います。
現状の方針・進行に何か問題があれば、遠慮なくご指摘お願いします。その他ご意見・アドバイスも随時募集していますので宜しくお願いします。

579名無しのスタンド使い:2023/11/04(土) 00:22:22 ID:WYRLp11w0
うーん……正直このボリューム&クオリティは相当にハードルが高い気がする……

そして、この場合は【完成品サンプル】から書いてくれたとのことですが
これだけのものを僕は書けるよ!書くよ!って人が「確実に」複数人いるって状況にならない限り
もう普通のSS単作品と大差が無いというかなんというか
いやSS作品は意欲のある人がどんどん書いてくれて増えてってくれた方が嬉しいんだけど

なんというかそのォ…オリスタ記念企画を謳うのであれば、もうちょっと多くの人が気軽に参加出来る形にならんかなあ……と思った
サンプルとは言え力作を書いて頂いた後で批判気味な感じでなんか申し訳ない

580名無しのスタンド使い:2023/11/04(土) 05:48:16 ID:APpO.E0U0
横から失礼します。

拝見してるとどうやら初っ端の問題からして複雑すぎるのかなと。
最初の最初なので長い文章問題よりかは単純な計算問題みたいなのが良いのではないかと思います。

本編でいうところのラーメンにコショウぶちまけたのを取り除くーみたいな感じで大喜利やれれば盛り上がれるのかなと。

それでちょっと思ったので問題、出してみます。

【課題名】
ドアに置かれた鍵
【あらすじ】
スタンド使いのあなたはコレから用事があって出かけなければなりません。
そのための準備を済ませ、いざドアを開けようとするもの僅かな隙間しか開きません。
その隙間から覗いてみるとドアの前にはなんでか巨大な金庫が置かれてあります。
【クリア条件】
出かけよう。
【補足情報】
金庫がなぜ置かれてるか等の謎解きは不要です。今は用事のため、一刻も出かけたい心境、だと思ってください。
手段は問いません。極論、ドアを使わなくても構いません。
その他細かな設定は一任します。

この程度でならどうでしょう?

581名無しのスタンド使い:2023/11/04(土) 22:24:02 ID:P1f4QAp60
>>579 >>580
アドバイス有り難うございます!
自分では気がつかない点をこうしてフィードバックして貰えるのは凄く助かります。
確かに参加を募る企画なら、もっと気軽に参加できそうな雰囲気・イメージが沸いてくるようなサンプルの方が良かったですね。問題の設定の仕方と解答方法も今一度考え直してみます。
ルール考案と平行して、>>580さんが作成してくださった問題への解答もサンプルとして用意してみようと思います。

その他アドバイスやご指摘等何かあれば対応しますので引き続きご協力宜しくお願いしますm(_ _)m

582名無しのスタンド使い:2023/11/14(火) 21:37:15 ID:vaR4k3ss0
期日になったので企画・ジョジョの奇妙な問題集の進行を再開します。
まずは前回いただいたアドバイス&問題を元に回答案のサンプルを二つを作成しましたので投稿します。


【課題名】
ドアに置かれた鍵
【使用オリスタ】
No.6947 カシミール
【解答】

 雲1つない清々しい青い晴天、こんなお出かけ日和の素敵な昼前、休日なら誰もがどこかに出掛けたくなるかもしれない。

 亜麻色に染めた髪をハーフアップにまとめ、オーバーサイズのニットをワンピースのように着こなす垢抜けたギャルっぽい少女も、友達とショッピングに出かける為、朝のうちから準備を済ませ、いざ出かけようとドアを開けようとするが……ドアの前に重たい何かが置いてあるようで、僅かな隙間ができるぐらいしか開く事ができなかった。

 隙間から外を覗いてみると、黒い鉄の塊、巨大な金庫のようなものがドアを塞いでいた。

「置き配?……にしては規格外のサイズ。新手の嫌がらせ?」

 身に覚えのない現象に少女は首を傾げながら打開策を思案する。

 ここはマンションの上階、窓から脱出するのは……能力を駆使すれば出来なくはないかもしれないが、悪目立ちしてしまうのは良くない。

 女子高生がハリウッドアクションばりのパルクールに挑戦している所を、ご近所さんに目撃された日には奇異の目で見られてしまい、今後の日常生活に支障をきたすかもしれない。

 両親は仕事の真っ最中、友達をわざわざ自宅に呼び出して迷惑をかけるのもしたくない。誰かを当てにする前に、少女は己の内に秘められた力を奮い立たせる。

「力を貸して、カシミール」

 少女の姿が二重にぶれたかと思えば、もう1人の自分と呼ぶべき異形の鏡像が表面化する。体の所々から綿のようなものが飛び出ている女性特有の柔らかいシルエットをした人型のスタンドが出現した。

「さてと、色々やり方はあるけど、自宅を破壊するのはNG、映え重視の派手な演出も今はいらない。その前提を踏まえた上で私ができる事……一番シンプルな解答はこれじゃない?」

 少女は少しの思案をした後、〈カシミール〉と顔を見合わせて頷き合う。彼女のスタンドは言葉こそ発しないが、一心同体である本体の意図を実行するべく動き出す。

〈カシミール〉は壁を通り抜けるとドアを塞ぐ金庫に触れる。人並みのパワーしかない〈カシミール〉には鉄製の巨大金庫を押し退けのは難しいが……彼女たちの真髄はパワーに非ず。

 あらゆる外的驚異から保管するものを保護する事を目的とした鉄塊は、瞬く間にモコモコ・ふわふわ・やわら〜い綿繊維に変化した。

〈カシミール〉の能力で重たい鉄製の金庫も、まるごと綿に変えてしまえば重量も変化し、押し退けるのも容易になる。

 障害物を排除したドアは、ガチャリと軽快な音を鳴らしながら開かれた。

「何か分からないけど、楽勝じゃな〜い?」

 トラブルを解決した少女は颯爽と外に出て、いざ友達と約束した待ち合わせの場所に向かおうとするが……脱出した先には予期せぬ伏兵が待ち受けていた。少女はそれと目が合いギョッとする。



 ドドドドドドドドドドドドドドドドドド!!!



「ちょっま―――」

「ママーッ!!となりのおねーちゃん、まほーつかいッ!!!じつはエスパーだったんだーッ!!!」

 偶然その場に居合わせたお隣りさん家のこーすけくん(5才・非スタンド使い)は全てを見ていた。

(To be continued Bgm: roundabout)

※おしまい

583名無しのスタンド使い:2023/11/14(火) 21:39:16 ID:vaR4k3ss0
【課題名】
ドアに置かれた鍵
【使用オリスタ】
No.7169 スクエア・ダンス
【解答】

 二階建てのモーテルの一室、中は乱雑に散らかっていた。

 多種多様な嗜好品・物がジェンガのように際どいバランスで積み重ねられており、中にはトロフィーや表彰状等も散見されるが、あるべき場所に飾られているのではなく、物で散らかった部屋の中で忘れられているように見えるだろう。

 この部屋の主はというと、タブロイド紙をアイマスク代わりにベットで眠っていたようだが、不意にムクリと起き上がったかと思えば、何かを閃いたのかのように指を鳴らす。

「そうだ冒険に行こう。南米のアマゾンで遺跡巡りの旅がいい。石仮面に柱の男?そそるんじゃーないの?ついでに新種の生物なんかも発見できたら素敵だなぁ」

 突拍子のない与太話を言っているように聞こえるかもしれないが、この男は至って大真面目。真夏の太陽のように瞳をギラギラ輝かせながら今後の展望を思い描きつつ、早速身支度を進めるべく己のスタンドを発動する。

「スクエア・ダンス」

 男に呼び出されたスタンドは、纏衣装着型に近しい性質なのか、見た目はフードに顔の名残がある長袖の服で、男が袖を通さず肩に羽織る形で発現した。袖口からスタンドの腕が伸びており、見た目は四本腕の様に見える。

〈スクエア・ダンス〉が両腕を伸ばし、部屋の中を埋めつくす物を次々に掴み取ると、瞬く間に袖の奥に引き込んでしまう。

 百科事典にアイロン・観葉植物・金属バット・自動小銃・カメラ・ゲーム機・ダンベル・天体望遠鏡……袖口よりも明らかに大きい物だろうと関係なく、袖の奥に瞬く間に隠してしまう。その癖、袖は膨れ上がる様子もなく、まるで袖の中に隠した物を消失させたように見える。

 神隠しならぬ袖隠し、袖の奥に引き込んだものをこの世から完全に消し去り、異空間に隠し置く。これが〈スクエア・ダンス〉の特筆すべき能力だ。

 神憑り的な速さで10分もしないうちに、物で散らかったモーテルの一室は小綺麗に片付けられた。

「うーん、いいねぇ。飛ぶ鳥跡を濁さず、されど旅は身軽が一番」

 スタンド能力を駆使して身支度を終えた男は、本気で南米に向かおうと部屋のドアを開けようとするが、ドアの前に何か重たい物が置いてあるのか開かない。

「チッ……何だこりゃ」

 ドアの隙間を覗き込むと巨大な何かが入り口を塞いでおり、身に覚え……がないこともなさそうな男は首をかしげる。

「……こんなの持ってきたっけ?」

 男が思案するよりも先にドアの向こう側から答えが帰ってきた。

584名無しのスタンド使い:2023/11/14(火) 21:40:41 ID:vaR4k3ss0
「おはよう、間抜けなルパンくん」
「あぁ?何だテメー?」

 声の主はブラックスーツを身に纏いサングラスをかけた厳つい大柄な黒人男性だった。

「自分がやらかした事を俺にわざわざ説明させたいのか?」

「いや、どーでもいい。野郎のツラとそれに関連する事柄は記憶できなくてね」

「ブワハハハハハハ、タフガイ気取りの軽口なら今のうちにいくらでも叩いていいぞ」

「その口ぶり、何かサプライズでもあるのか?」

「俺はお前の足止め役、所謂前菜だ。メインディッシュはすごいぞぉ。拷問マニアの殺し屋がこれからやって来るんだ。アート・ザ・ピエロを知ってるか?業界の中でも一番イカれたサイコ野郎がお前の為だけに来てくれるんだぞ」

「いや知らねーし、随分と悠長な話だなぁ」

「まぁな、残念だよ。お前がゆっくり朝寝坊でもしてりゃドッキリ企画として成立したのに」

 ドアの隙間から見える黒人男性は、ニヤニヤとゲスそうに口元を緩めている。彼には男のスタンドが見えていないのか、まるで警戒するような様子はない。相手はカタギではないが、スタンド使いでもないと判断した男は面倒くさそうに溜め息を吐く。

「しゃらくせー、もっとデカイことやろーぜ」

 男は状況を打開すべく〈スクエア・ダンス〉の袖口から隠した物を取り出す。ゲーム機・金属バット・百科事典・観葉植物・アイロン・スコップ・何かが入ってる鞄……色々な物が袖の中から出てくるが、お目当ての物ではないらしい。拳銃やマチェーテ・ダイナマイト・自動小銃も引き当てるが「これじゃねぇ」と投げ捨てる。

 もっとも一連の様子をドアの隙間からこっそり眺めていた黒人男性は、何もない虚空から次々と物を取り出す男を見て酷く狼狽し、自動小銃を取り出した辺りで「おい待てっ!!こんなの聞いてねぇぞっ!!!」と、尻尾を巻いて逃げ出してしまった。

 そんな外野の事など気にも止めず、男は次々と物を出していくが……ふと触り心地に違和感があるものを引き当てると、即座にドアに向けてそれを取り出すのではなく放出する。

ズゴシャーーーーーーーーンッ!!!!

 凄まじい轟音と破壊と共に現れたそれは……ドアも巨大な鉄製の金庫も部屋の壁も丸ごと、全てお構い無しに吹き飛ばす10tトラックだった。

「……こんなの隠してたっけ?」

 飛ぶ鳥がなんとやらと言っていた男は、〈スクエア・ダンス〉の能力で隠して持っていた10tトラックに、記憶がないのか目を丸くしながら驚いていた。


サンプルは以上で終了です。
最初のサンプルよりも、オリスタの能力・設定を端的に紹介できる内容に仕上げられたと思います。こんな感じの解答話が作成できるように、>>580さんが作成した例題を参考に問題を考案していこうと思います。
勿論こればかりじゃなくて、最初のサンプルみたいな難易度の高い問題や違うパターンも取り入れて、飽きがこないような工夫も考えていきたいです。

585名無しのスタンド使い:2023/11/14(火) 21:42:23 ID:vaR4k3ss0
次は考案したルール・概要を紹介したいと思います。

【企画タイトル】
ジョジョの奇妙な問題集

【概要】
日常の中で遭遇する奇妙な状況・スタンド使いとの遭遇、様々なシチュエーションが問題として提示され、その問題を好きなオリスタを活躍させて解決していく自由参加型の短編集企画です。

【目的・目標】
オリスタの設定を借りて楽しく遊びつつ、15周年を向かえたオリスタを祝福したいです。企画者の勝手な目標はオリスタ企画で考案された組織を何かしら形で活躍させる事を目指したいと思います。
※ストイックに目標だけを遂行するのではなく、話を思い付いた時に書くような緩い縛りだと思ってくだされば幸いです。

【開催場所】
オリスタSS板

【使用テンプレート】
〜問題用テンプレ〜
【課題名】
【あらすじ】
【クリア条件】
【使用オリスタ】
【補足情報】

〜解答用テンプレ〜
【課題名】
【使用オリスタ】
【解答】

【ルール】
①オリスタSS板にて開催、スレタイは【ジョジョの奇妙な問題集〜】としてスレッドを立てます。

②本企画は冒頭でも触れている通り自由参加型の企画です。興味を持ってくださる方がいれば、問題の作成&投稿・問題の解答話の投稿・活躍させて欲しいオリスタの投稿・その他質問等を受け付けております。気が向いたら気軽に遊びに来てください。

③上記のテンプレートを使用して問題を作成して本スレッド内に投下します。問題のシチュエーションはお任せします。問題にオリスタを使用しない場合、問題用テンプレの【使用オリスタ】の項目は無視してください。
※問題は難しく考えすぎず、シンプルな条件でも大丈夫です。
※問題設定やクリア条件が難しい場合、書き手が選べない可能性もありますので、その辺はご了承お願いします。

④解答となる話は、投稿された問題の中から自由に選択して、活躍させたいオリスタを選び、問題で提示されたクリア条件解を決する短編のお話を書きます。
解答話も上記のテンプレートを使用して作成してください。大喜利みたいな小話でも、もっと短いショートショート、ちょっと長いSSでも大歓迎です。
問題の設定内容からあまりにも逸脱しない限りは拡大解釈も大丈夫だと思います。オリスタの設定を借りて楽しく遊びましょう。
場合によってはクリア条件に満たせなかった話もアリですが、手段の一つとしてたまに活用する程度でお願いします。

⑤活躍させて欲しいオリスタも募集しています。最終的にどのオリスタを選択するかは書き手の人によりますが、どのオリスタを使用していいか迷っている時など、いくつかの候補があれば選びやすいので、気が向いたらご協力宜しくお願いしますm(_ _)m

⑥問題を解答するオリスタが他の人と被るのはOKです。Ifの話として許容しましょう。

⑦使用オリスタ本体の名前を設定するのもOKです。解答文の冒頭に補足して書いてくだされば読みやすいかもしれません。逆に名前を設定しないのも可です。

⑧他のオリスタSSで設定が固められたオリスタキャラを使用するのも良いと思います。ただ、お借りする場合は最大限リスペクトしましょう。取り扱い注意です。

⑨ネタやチートオリスタを使用するのもOKです。せっかくだから活躍できそうな問題があればネタ話として割りきって投稿するのも面白いかもしれません。

⑩その他何かあれば、質問や確認したい事があれば対応しますので気軽にレスしてください。


ルール発表は以上となります。全体的に何かふわふわした表現をしてそうかもしれませんが、ガチガチの決まりごとを設定したと言うよりは、必要最低限な決まりごとを明文化した感じとなっております。
ルールを確認して分からない点、もっとこうした方がいいんじゃないかというアドバイス?追加したい内容があれば教えてください。
それではまた2週間ぐらい様子を見ながら問題を作成しつつ、ルールに修正・追加があれば報告したいと思います。何事もなければSS板で開催したいと思いますので、全体を通して何かあれば遠慮なく言ってください。

586名無しのスタンド使い:2023/11/28(火) 21:37:59 ID:92x3Be2.0
期日になったのでそろそろ企画を開始したいと思います。SS板に本スレを立てましたので、気が向いたら遊びにきてください。
何か企画の事で確認する事があれば、今後は向こうのスレッドでお願いします。

https://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/otaku/13086/1701173885/l30

それでは行クゼ!ディ・モールト グラッツェ!


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