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天使と妖精
1
:
ペンギン
◆pe868B2fwg
:2015/07/04(土) 18:14:55 ID:K8yqP/CU
投稿サイトに出すつもりだけど、一応こっちにも貼るお
以前と違い、メモ帳に手書き→打ち起こしの体裁だお
2
:
ペンギン
◆pe868B2fwg
:2015/07/04(土) 18:15:57 ID:K8yqP/CU
俺が塾の帰りに夜道を通っていると――ひゅーんと何かが夜空から飛んで落ちてきた。
最初鳥かと思ったのだが――日の長い夏とはいえ、もうすっかり暗くなった夜の9時近くに鳥が飛んでいるというのもおかし話なのだが、街灯と住宅の明るさがあればあることなのかと思った――、
落ちるそれが目の前を通過する際に、その薄く半透明の羽から昆虫を予想して、虫にしてはあまりの大きさに俺はぎょっとそれから飛びのいた。
ぼてんと地面に落ちて、『ウゥ〜』と唸るそれを恐る恐る覗き込むと――俺は仰天を通り越して愕然とした。
3
:
ペンギン
◆pe868B2fwg
:2015/07/04(土) 18:17:10 ID:K8yqP/CU
――妖精だったのだ――体長15センチほどの女の子の妖精。
アスファルトの道路の上に腕と脚を揃えて折りたたんだ、縮こまった姿勢で目を閉じて倒れている。白い花飾りを付けた、やや亜麻色がかった、長くウェーブのかかった金髪から、妖精のトレードマークの一つといえる先のとがった長い耳が突き出している。
細い眉に、長いまつ毛、薄い唇の間から、相当高い鼻が飛び出しているのだが、細く整っており、それほど不調和に見えず、白い肌の顔に彫りの深さを与えていた。やたら細い腰のところで紐で締められた緑のワンピースの肩の上部分は鋭く尖って華奢な肩から大きく外に三角の角が飛び出しており、短いスカート部分の裾もギザギザと三角の角々で縁取りされている。
俺がよく見るために屈み込むと、その視線の角度の変化に伴って、つやつやした服の表面が街灯の光をシャボン玉の表面のようにきらっきらっと七色に反射した。
そして俺が、その落ちてくる姿を見て虫と勘違いする原因となった――妖精の最大の特徴である――、白く、その薄さから半透明をして、表面に翅脈が浮き上がった細長い四枚の羽――まさにバッタといった昆虫の羽そっくりだった――が、どうやってかわからないが(妖精の存在自体非現実的なのだが)、その緑の服の背中に開いた、羽よりだいぶ小さい縦の二つの切れ込みからくぐらせて突き出ていた。
履いている靴はこれも緑で、小さい縁飾りを付け、先が必要以上に長く尖った爪先部は軽く上にカールしていた。
着ている服から突き出した腕と脚――そして首も――は白くて細長く、華奢で、端正な顔立ちも合わせて体全体が美しい姿態をしていたが、目を閉じたその顔を今は苦痛にしかめていた。
怪我か、それとも疲労だろうか――
4
:
ペンギン
◆pe868B2fwg
:2015/07/04(土) 23:17:01 ID:K8yqP/CU
俺がもっとよく見ようと、屈み込んで顔を近づけたところ、右手の空が突然明るくなり、いきなり現れた光の方に顔を振り仰ぐと――今度は結論だけから言うと女の天使が現れた。
5
:
ペンギン
◆pe868B2fwg
:2015/07/04(土) 23:18:03 ID:K8yqP/CU
道路に立った俺の右横の住宅の敷地内、屋根より2メートルほど上方に、夜闇を圧した煌々たる光を全身から発しながら、後ろに広げた白い翼を羽ばたかせることなく宙に浮いていた。
腿ほどまである長い銀髪がふわりと体から少し浮いて離れてまとわっており、着ているのは丈が足首まであり、ゆったりした裾と袖を持つ厚手の白いローブ。
手には先に装飾がついた杖を持ち、体の浮遊に合わせてかすかにひるがえった裾から覗く白い靴は羽根飾りがついているが、作り自体は、靴底が薄く、足の大まかな輪郭にしたがって丸っこい形をしただけの至ってシンプルなものだった。
背中の翼は広げ切った今、体の幅の何倍もあり、白鳥の翼のようなそれを見ている者――俺だ――を威圧するようだった。
そして、翼以上にそれを身に着けている者を天使だと主張する輝く輪っかが頭の上に浮いており、遠くから見るにもかかわらず、ひときわ強く輝くおかげで、まばゆい光の中、大きく広げた翼を含めた体全体に比べて小さな比率のそれもはっきり見極めることが出来た。
距離があるのと、光と闇のコントラストの内にいるため、顔ははっきり見えなかったが、やや細長で白い肌の顔立ちは遠目にも整って美しく見えた。
全身から発する光は、普段見慣れた蛍光灯の無機質な一辺倒のものでなく、乳白色がかった柔らかい輝きで、どこか見ている俺を癒してくれる効果を与えるような印象を受けた。
6
:
ペンギン
◆pe868B2fwg
:2015/07/06(月) 01:27:52 ID:jrxDrNpc
俺は天使が夜中に発するまばゆい光が近所に住んでいる人や、そばを通りがかる人達の注目を集めるんじゃないかと、直接自分に関係のない心配をしたが、
天使は背中の翼を羽ばたかせることなく、すぅっとこちらの方に宙を滑るように移動して道路の上に出てくると、ブロック塀の上部の辺りの高さに足を浮かせたまま静止し、すぐ目の前にいる俺が眼中にないかのように、道路の上に倒れた妖精だけをじっと見据えた。
――見据えたといっても、そばに来たおかげではっきり見ることの出来た顔立ちのその目はじっと閉じられていたのだが。
――そのあるべき視線ははっきりと妖精の方を向いていた。
髪色と同じ細く整った銀の眉に、真っ直ぐ通った細い鼻筋、真っ白い滑るようななめらかな肌の頬の部分にはほんの少し朱が差さっている。
やはり少し近寄りがたいほどの美しさだ。
ただ、どういうわけか額に汗が浮いており、眉と口元を少ししかめたその表情はしんどげでもあり、ふーふー軽い音ながらも、荒く呼吸する音が少し注意するとはっきり聞こえ、‘見つめる’先の妖精に対して発せられた言葉にもその息切れが反映されていた。
7
:
名無しさん
:2015/07/06(月) 21:52:37 ID:jrxDrNpc
「――やっと追い詰めましたよ。――ここまで長かったですが――、これでとどめを――、悪魔よ――」
天使がさらに浮遊する高度を下げ、塀の中ほど――宙1メートルほど――の高さまで下がって静止し、荒い息遣いと共に手にした杖を振り上げたところ、近づいてきて強さを増した天使の発する光に当てられたのか、
「ウウゥ……」
と、倒れていた妖精は一層苦しげに顔を歪め、手を握りしめて全身をぎゅっと硬直させたが、はっと目を開けた。今にも自分の方向に向かって宙に杖を振り下ろそうとする天使に気付き、一瞬で飛び起きると、
しゅんと――それは例えが悪いかもしれないが蠅のような素早さだった――飛び立って、間一髪天使の杖から発せられた光線を避けた。
目にも止まらない速度でS字を描く低空飛行をし、距離を取ると、宙にとどまって、こちら――天使と、ついでに、その隣にぽかんと突っ立って妖精の方を見ている俺――の方を見た。
それはすぐに憎々しげな睨みつけに変わり、怒りから片方が捩れて開いた口の端から白い牙が覗いた。
かすかな『シャーッ』という威嚇の声も聞こえたような気がする。
普通にしていればさぞかし可愛いだろうが、獰猛に歪められたその顔を見た俺はいつぞや本で見た、狼に育てられた少女というのを思い出した。
8
:
名無しさん
:2015/07/06(月) 22:09:41 ID:jrxDrNpc
妖精が今しがた逃げおおせた道路の場所には、杖から発せられた光線が当たって、直径50センチほどのきれいな円形の光がくっきり残り、
その光は『シューシュー』とも『ブスブス』ともいう音を発しながら徐々に弱まり、やがて完全に消えた。
光が消えた後のアスファルトはかすかな破損の後もなかった。
9
:
名無しさん
:2015/07/06(月) 22:29:07 ID:jrxDrNpc
今一歩で妖精にとどめをさし損ねたらしい天使は逃げ飛んで宙に佇む妖精の方を向きながら、これも苦々しげに――それぞれの表情は、妖精が追い詰められた獣のようだとしたら、天使の方はそれを取り逃がしたハンターのようだった――顔を歪めたが、
今放った光線に力をとられたのか、疲労(天使にそんなものがあるとしてだが)の蓄積を感じさせるその顔の動きに力がなく、顔の汗と息遣いも一層激しくなっており、今やその両方とも意識しなくてもはっきり気づくほどまでになっていた。
10
:
名無しさん
:2015/07/06(月) 22:54:16 ID:jrxDrNpc
「――悪魔め……」
息を切らしながらつぶやくが、妖精はその様子を見ても気を許す風なく、今度ははっきりと口を開けて両の牙を剥き出しにシャーッと唸り、吊り上げて細めた目で威嚇して天使を睨み、
そのかたわらに立つ俺の方を最後にちらりと眺めると、身をひるがえし、背中の羽をものすごい勢いで動かし、しゅんと夜空にかき消えて行った。
11
:
名無しさん
:2015/07/07(火) 19:45:58 ID:brQS4KDs
「――悪魔め……」
天使がもう一度、今度はつぶやくというより、声を絞り出すようにするのが俺の耳に届いた。
俺があまりのことに呆然と妖精が飛び去っていった方を見やっていた状態からはっとそちらに顔を振り向けると、いつの間にか天使はアスファルトの地面の上に降り立ち、地に突いた杖に両手をかけ、必死にすがり付いた状態で立っていた。
ゼーゼーいう音はすっかり高くなり、大量の汗が浮かぶその顔を見ていると、本来は美しさに資するはずの肌の白さが本来のものでなく、病的状態による極端な具合の悪さによるものにものに思われてくるほどだった。
さっきまで数メートル四方をまばゆく照らしていた光もすっかり衰え、体の周りを薄膜のようにぼんやり覆うだけとなっている。
12
:
名無しさん
:2015/07/07(火) 19:53:44 ID:brQS4KDs
ただ、そうしてそちらの方を見やる俺には、どういうわけだかで力を使い果たした感の天使からは先ほどまでの神々しさから来る近寄りがたさが消え、どこか親しみやすい人間味を俺に意識させ、改めて間近にいる『彼女』の美しさを俺に意識させた。
真っ白なうなじにも浮かぶ汗の玉はローブの隙間から覗く、ふっくらとした胸の谷間に流れ落ちそうで――
はっとした。
13
:
名無しさん
:2015/07/07(火) 19:54:49 ID:brQS4KDs
「あんた大丈夫か!?」
我に返った俺は叫んだ。こんな非現実的なことが起こり――起こったからともいえるが――、具合が悪そうな相手――それも恐らくは天使――が目の前にいるというのにぼーっと美しさに心を奪われ、いやらしい妄想までするとは――。
14
:
名無しさん
:2015/07/07(火) 20:34:08 ID:brQS4KDs
あまりの悪そうな具合に敬語を忘れ、素っ頓狂な声を上げてしまったが、今まで俺の存在に気付いていたのかいなかったのか、やっとの思いで立っている天使は杖にすがって前屈みになった顔を初めて俺の方に向けてにっこり笑った。
「――ありがとうございます。――私は――、主の命により、逃げた悪魔を討つべく――、この地まで――」
15
:
名無しさん
:2015/07/07(火) 20:35:06 ID:brQS4KDs
息切れしながら途切れ途切れに話すが、またしても俺はぼーっとしてしまい、まともに言葉を聞けていなかった。
相変わらず目を閉じたままの‘彼女’の笑顔が完全に俺を魅了してしまったのだ。
西洋映画の美しいトップ女優が誰もいない暗い夜道、自分だけのために笑顔を向けてくれるようなものだ。
しかもどんな美人女優でも肌の表面にかすかな色や質感の粗があるが、目の前の‘女性’はそれもなく、顔から、先ほど俺が見とれていた首筋とうなじ、杖にすがる手までの露出面の全てがつるつるとした白い肌で、しかもどこか柔らかい質感がある。
『真珠のような――』という比喩をよく聞くが、俺は今間近に‘彼女’を見て初めてその表現を理解した。それも、あまりに整いすぎると、先ほどまで感じていたような、非人間的な(そもそも人間ではないのだが)近寄りがたさがあるのだが、それもこの笑顔で払拭される。
――閉じたままの目さえ、表情の動きの豊かさを強めているようだった。
16
:
名無しさん
:2016/01/09(土) 07:09:42 ID:mdPMuvvU
本当に出会える出会い系ランキング
http://bit.ly/22KSCc3
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