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【ダンガンロンパ】ダンガンライダー龍騎【仮面ライダー龍騎】
1
:
鎧カリバー
◆OPO1uqcrCU
:2014/10/03(金) 01:31:57 ID:9TRJEPM.
ダンガンライダー龍騎
第一話始まり/鏡の学園はプリズン
「なんだろう、これ……カードデッキ……?」
様々な超高校級の才能を持つ生徒たちが集まるという希望ヶ峰学園の入学式に急いでいた苗木誠は、偶然道端で赤いカードデッキを拾った。
交番に届けた方がいいだろうと思った苗木だったが、時間もない為仕方なくそのまま希望ヶ峰学園に向かった。
しばらくして何とか入学式が始まる十分前に学園についた苗木は、突然頭痛に襲われた。
「うっ……なんだろう、緊張してるのかな……?」
ふとガラスを見て苗木は驚愕した。
鎧を纏った二人の戦士が戦っていたからである。
「な、なんなんだ、あれ……?」
一人は黒く、細い剣を持ちもう一人は金色で長い杖を持っていた。
振り返ってもそこにはそんな鎧はおらず苗木は混乱した。
そしてガラスに手を伸ばそうとすると視界が歪みはじめ、やがて意識を失った。
2
:
鎧カリバー
◆OPO1uqcrCU
:2014/10/03(金) 01:34:47 ID:9TRJEPM.
目覚めるとそこは教室だった。
自分以外は誰もおらず、なぜか窓も全部鉄板で塞がれていて、その代わりとばかりに大量の鏡が置かれていて、不気味な感覚を覚えずにはいられなかった。
「あ、入学式!」
苗木は自分の目的を思い出して急いで体育館に向かった。
「遅いぞ!」
体育館に入ると15人の生徒がいた。
「す、すみません!あの……皆は……?」
白い学ランを着た男子が苗木の前に出て説明してくれた。皆、希望ヶ峰学園の入学者で学園に着いた途端、頭痛で意識を失い気が付けばここにいたのだという。
「僕の名前は石丸清多夏だ、よろしく」
「僕は苗木誠、石丸くん説明してくれてありがとね」
「なーに、困っている事があればお互い様さ、はっはっはっ!」
「あ、ははは……」
石丸清多夏は真面目でいい人だとすぐにわかったが、他の生徒たちは皆明らかに警戒していて、こちらを見ていても目を合わせるとすぐ逸らしてしまう。
3
:
鎧カリバー
◆OPO1uqcrCU
:2014/10/03(金) 01:36:04 ID:9TRJEPM.
そんな中、一人の少女が石丸に続いて個声をかけてきた。
「あ、あの……苗木くん……?ですよね?」
どこか不安気に尋ねてきた少女を少し見て、苗木は昔同級生だったという彼女の事を思い出した。
「も、もしかして……舞園さん?」
「は、はい!そーです!舞園さやかです!よかったぁ〜、覚えていてくれてとっても嬉しいです!」
「舞園さんの方こそ、よく覚えててくれたよね、今や知らない人はいないっていう“超高校級のアイドル”だからさ、僕の事なんて忘れてると思って……」
「そんな事ないです!だって苗木くんは、とっても優しかったし、それに」
「幼馴染だかなんだか知らねーけどよ」
舞園の言葉を遮ったのは大和田紋土。超高校級の“暴走族”だ。
4
:
鎧カリバー
◆OPO1uqcrCU
:2014/10/03(金) 01:38:42 ID:9TRJEPM.
「あんまり、騒ぐんじゃねぇようるせーな」
「な、なんですかあなた!あなたには関係ないじゃないですか!」
「や、やめなよ舞園さん……」
「そうだぞ!喧嘩はよくない、大和田くん、君もやめないか!」
石丸も割って入ったが、大和田は引く事もせず「邪魔だ!」と彼を押しのけて苗木と舞園に迫った。
「この訳のわかんねえ状況で騒ぐなって言ってんだよ!」
「え……状況って……」
苗木は大和田に言われて、周りを見渡してみてこの体育館もやはり窓を始めとした外に繋がる物がすべて塞がれていて、代わりに複数の鏡が置かれている事に気付いた。
苗木誠殿、僕たちは皆この学園に閉じ込めらたと見るべきですな、まるでデュフフな漫画みたいにね」
そう教えてくれたのは山田一二三、かつて在籍していた学園の文化祭で同人誌を一万部すべて売り切ったという超高校級の“同人作家”。
「そういう事ですわ、どこにも出口は見当たりませんし、何者かが何らかの目的で閉じ込めた事は明白ですわね」
セレスティア・ルーデンベルク、超高校級のギャンブラー。
彼女の着るゴシックロリータの服は周りの皆と比べても一際異彩を放っていた。
一人、それ以上に異彩を放つ人もいたが。
5
:
鎧カリバー
◆OPO1uqcrCU
:2014/10/03(金) 01:40:41 ID:9TRJEPM.
「正面玄関も同様に閉ざされていた……我のパワーでも破壊する事は叶わなかった所をみると、とても突破するのは無理であろう」
女性の物とは思えない声でそう語ったのは大神さくら、超高校級の格闘家だ。
盛り上がった筋肉は見ただけで、そのパワーを感じる事ができ、凄まじい威圧感を苗木に与えたが不思議と怖いという気持ちはなかった。
そんな彼女の陰から、顔を覗かせているのは超高校級のスイマー、朝比奈葵。
「し、しかしよ、これって相当やばいじょうきょうじゃねーか?で、出られねえって言うんなら……飯とかどうすんだべ?最悪、皆仲良くお陀仏って事も……」
「や、やめてよ!そんな事!」
「だっ、だってよぉ」
超高校級の占い師葉隠康弘呂が言った不安を煽る言葉に朝比奈が怯えた声を出し、大神が彼女を優しく宥めた。
6
:
鎧カリバー
◆OPO1uqcrCU
:2014/10/03(金) 01:43:19 ID:9TRJEPM.
そして彼の言葉に舞園も隠していた恐怖心が少しその顔を見せ、苗木の袖をぎゅっと握った。
「舞園さん……大丈夫だよ、きっと助けがくるよ……」
「そんな確証がどこにある?」
彼女を慰めようと言った苗木の言葉を遮るように超高校級の御曹司、十神白夜が言った。
「希望ヶ峰学園そのものが、巨大な牢獄のように改造されているんだぞ?そんな力を持った奴がそう容易く救援を近づけさせると思うか?それにもしかしたら、この事自体俺たち以外誰も知らないかもしれんぞ?」
「そ、そんな事わからないだろ?!いくらなんでも、誰か絶対に気付くはずだよ!」
「だがその気付いた人間すら消されているかもしれない、助けはないと思ったほうがいいだうろな」
「そ、そうよそうよ!きっと皆、ここで死ぬんだわ!」
ネガティブな思考の超高校級の文学少女、腐川冬子が十神の発言に同調して泣き喚き始めると「うるせーな!アホアホアホ!」と超高校級の野球選手、桑田怜恩が怒って大和田と一緒になって十神と腐川に突っかかった。
今にも手を出しそうな二人を見て、石丸がその間に入って「言い争っている場合ではないだろう」と四人に言い聞かせるが既に火に油を注ぐ状態だった。
7
:
鎧カリバー
◆OPO1uqcrCU
:2014/10/03(金) 01:44:58 ID:9TRJEPM.
「も、もうやめてよ……嫌だよこんな……!」
「あんたたち、ちょっと黙ってよね!」
ますますヒートアップする五人の言い争いに舞園や朝比奈、超高校級の“プログラマー”の不二崎千尋がうずくまって震え、“ギャル”の江ノ島盾子が五人に向かって怒声を向けた。
舞園も、ただただ泣きながら苗木にすがりつくしかなく、苗木は何も言えずただ彼女を抱きしめてやる事しかできなかった。
「…………」
そんな中でたった一人、唯一才能を明らかにしていない霧切響子だけは冷静に、体育館の中を何かを探すように見渡していた。
そしてステージの上に一枚の姿見鏡が置かれている事に気付くと心なしか、その表情が強張った。
8
:
鎧カリバー
◆OPO1uqcrCU
:2014/10/03(金) 01:46:27 ID:9TRJEPM.
すると途端に謎の頭痛が苗木を襲った。
意識を失った時と同じあの頭痛だ。
それは皆も同じようで、頭を抱えて苦しんでいた。
やがて頭痛が収まると、ステージの上に置かれた鏡に鳥を模した金色の鎧を着た何者かが映った。
「……誰……?」
その姿を見た誰もが一度は後ろを振り返るがそこには誰もおらず、何がどうなっているのか全くわからなかった。
「誰だてオメェは!」
声を荒げた大和田に続いて、桑田も同じ言葉を繰り返した。
すると鏡の中の彼は自らを“仮面ライダーオーディン”と名乗った。
「か、仮面……ライダー……?」
「オーディン?」
聞き慣れない言葉に、皆が困惑しているのも構わずオーディンは続ける。
『お前達は二度と外には出られない』
そう宣告され、ほぼ全員が言葉を失った。
9
:
鎧カリバー
◆OPO1uqcrCU
:2014/10/03(金) 01:48:09 ID:9TRJEPM.
「……ふ、ふざけんじゃねぇぞ!!!」
「そ、そうだべ!二度と出られねぇなんてお断りだべ!」
「私も、コンサートとかあるんですよ?!」
「ちょっ、あたしだって雑誌のモデルとかの仕事があるんだよ!」
「家に帰してよ!」
そんな声が一声に沸き起こった。
だがオーディンは全く動じず、その態度を崩さない。
『食料等は随時補充される、協力しあえば生きていける、それでも帰りたいというのなら……一つだけ方法がある』
それを聞いて、皆の顔が変わった。
外に出られる方法が一つある。それだけで、皆は希望をそこに見た。
『お前たちも仮面ライダーとなってお互いに最後の一人になるまで戦い、勝ち残る事だ』
「そ、それってつまり……コロシアイをしろって事……?」
『そうだ、勝ち残った最も強い者がこの私と戦う権利を得、私に勝つ事ができたなら、その時はめでたく“卒業”だ』
そう言ってオーディンはカードデッキを取り出し、生徒たちに投げ渡した。
10
:
鎧カリバー
◆OPO1uqcrCU
:2014/10/03(金) 01:50:22 ID:9TRJEPM.
デッキの数は11、受け取れなかった者たちは『この学校のどこかに隠してある救済処置』を手に入れなければならないと言われた。
「こ、こんなのが何だって言うんだ!」
『それはミラーモンスターと契約してある。鏡の中の世界、ミラーワールドを覗く事とその中に入る事が可能となる。鏡の中にいられる制限時間は十分だ、それ以上は二度と出られなくなり、消滅する』
「消滅……?それって死んじゃうって事……?」
『そうだ、そしてデッキを破壊された場合も死ぬ。お前達はライダーに変身し、戦い、相手を殺す、それだけだ』
「ふ、ふざけんじゃねぇぞ!オメェエエエ!!」
声を荒げて駆けだした大和田はステージの上に飛び乗り、鏡に向かって拳を繰り出した。
するとオーディンは無数の金色の羽を撒き散らしてその姿を消し、大和田の拳が鏡に蜘蛛の巣状のヒビを刻んだ。
「なっ……」
そして大和田の背後に金色の羽を撒きながら再びオーディンが姿を現し、振り返った彼を右手で繰り出した裏拳で弾き飛ばした。
11
:
鎧カリバー
◆OPO1uqcrCU
:2014/10/03(金) 01:53:38 ID:9TRJEPM.
「うわあああ!」
ステージの上を転がった大和田は更に前蹴りを叩き込まれて吹き飛ばされると、咄嗟に前に出た大神に受け止められた。
「大丈夫か?」
「あ、あぁ……」
『お前達は戦うしかない、最後の一人になるまで戦い続けろ』
「ふ、ふざけんじゃないわよ!私、デッキ受け取れなかったのどーしろって言うのさ?!救済処置なんてあてになるかよ!それに、コロシアイなんて絶対、お断りなんだからね!」
デッキを受け取れなかった江ノ島が抗議するとオーディンはステージからふわりと降り立ち、江ノ島に歩み寄った。
『ならば今ここで私を倒してみるがいい』
「このっ……!」
次の瞬間、江ノ島盾子はオーディン目掛けて蹴りを繰り出したが、また羽を撒き散らしながら瞬間移動され躱されてしまった。
「ちょっ……それひ……」
『ふん、仕方ない』
オーディンは恐ろしく冷酷に続けた。
『見せしめというものも必要か』
12
:
鎧カリバー
◆OPO1uqcrCU
:2014/10/03(金) 01:57:02 ID:9TRJEPM.
オーディンは長杖ゴルドバイザーの金の不死鳥を模した装飾の下にあるカバーをスライドさせ、腰のバックルに装填されたデッキから一枚のカードを引き抜くとバイザーに差し込んでカバーを閉じた。
―アドベント
無機質な電子音声が響いた。
その瞬間、鏡の中より現れた金色の不死鳥型のミラーモンスター“ゴルドフェニックス”がステージの鏡から現実世界に現れ、一瞬の内に江ノ島をその足で掴み、鏡の中に引きずり込んでいった。
「た、助け……ぁ゛あ゛あ゜あ゛あ゛あ゛……!!」
その悲鳴は鏡の中に引きずり込まれると途端に途切れ、彼女と不死鳥の姿も見えなくなった。
何が起こったのか、誰もわからないでいると朝比奈が恐る恐るオーディンに尋ねた。
「あ、あの……江ノ島ちゃんは……」
『ミラーワールドに生身で入った時点でモンスターに捕食される或は消滅する、つまり、どのみち死んだという事だ』
それを聞き、途端に実感が湧きあがり皆悲鳴をあげた。
逃げようとする者、唖然とする者、ただ怯える者。
腰を抜かし、今にも壊れてしまいそうな舞薗を抱きしめて苗木は恐ろしさを必死に抑え込みながらオーディンを睨み付けるとオーディンもまた苗木を一瞬、見つめると鏡の中に戻っていった。
13
:
鎧カリバー
◆OPO1uqcrCU
:2014/10/03(金) 02:02:53 ID:9TRJEPM.
『逃げるのも、戦うのも貴様たちの自由だ。だが、最後の一人になるまで戦わなければこの学園から出られない事を覚えておけ』
そう言い残して、オーディンは姿を消した。
そして残された生徒たちは、これが遊びではない本気の殺し合いである事を察した。
それからしばらくして、突然の江ノ島盾子の死を経験した生徒たちはそれぞれ生徒手帳に記載された自分たちの部屋に向かっていた。
「苗木くん……私、怖いです……私も苗木くんも皆……死んでしまいそうで……」
「大丈夫だよ舞園さん、絶対に皆で外に出る方法はあるはずだよ」
「は、はい……そうですよね……諦めたりなんかしたらダメですよね!」
「うん、だっていつも」
「『希望はある』、ですよね?」
「え?」
「私、エスパーですら」
「えぇ?!」
「冗談です」
そんな事を言える程には、落ち着けたんだなと安心する一方で、やはり彼女が無理をしているという事も苗木は理解し、何があっても彼女を守ろうと決めた。
「こんな面白いゲームは久しぶりだ……絶対に勝ち残り、この俺の実力をあの金色に見せつけてやろうじゃないか……!」
「ど、どうせ私なんか勝てる訳ないわ……」
「安心しろ朝比奈、我が朝比奈を守る」
「う、うん、ありがと……さくらちゃん」
「たくっ、ふざけた真似しやがって……!」
「皆、怖い時は手を繋ごう!コロシアイなんてしないぞって事をあの校長?に言おうじゃないか!」
「馬鹿だべか?」
「オメェに言われたくなんかねぇよ」
「デュフフ……これはいい作品の題材にできますな!」
「お気楽な物ですわ、しかしバトルロワイアルとは……中々面白い趣向ですこと」
「うぅ……どうしよう……」
「…………」
そしてライダー同士の戦い……生徒たちのコロシアイは絶対にさせない、止めて見せるとも、苗木誠は決意する。
現在、投げ渡されたデッキは11つ。例外的に苗木が手に拾ったデッキも含めれば12つ。
そして黄金のライダー、彼も含めれば生存する仮面ライダーは13人。
龍騎、ナイト、ゾルダ、ファム、王蛇、ガイ、シザース、ライア、ベルデ、タイガ、インペラー、オーディン、そしてリュウガ。
13人のライダーと生存者14人の戦いが始まった……。
14
:
鎧カリバー
◆OPO1uqcrCU
:2014/10/06(月) 22:20:19 ID:BLcWQESg
第二話変身/鏡の世界
仮面ライダーオーディンにより、希望ヶ峰学園卒業を目的とした生徒たちが変身するライダー同士の戦いが開始されて、一日が経った。
各自が持つ電子生徒手帳には部屋割りや校内の地図、校則や戦いにおけるルール等が記載されていた。
「これからは食堂に集まる事にしよう」と言い出したのは石丸だった。
確かに体育館に集まるよりは、食堂の方が椅子もあって座れるし、部屋からも近くて時間が短縮できる。
何より、食事を取る為には必ず食堂に行かなくてはならない為、ほぼ確実に全員と顔を合わせる事ができた。
「おはよう、皆」
「うむ、おはよう苗木くん!今日もいい朝だな!」
「朝かどうかなんて、わっかんねーけどな」
「あはは……」
「苗木くん!おはようございます!」
食堂に入ってきた苗木を見た途端、昨日の怯えきっていた表情が嘘のように、明るく挨拶をしながら駆け寄ってきた舞園を見て、苗木も笑って手を振った。
15
:
鎧カリバー
◆OPO1uqcrCU
:2014/10/06(月) 22:22:22 ID:BLcWQESg
「舞園さん、おはよう」
舞園は照れ臭そうに笑って、すぐにまた心配そうな表情で苗木に訊いた。
「えへへ、あの……昨日は大丈夫でしたか?」
「うん、大丈夫だったけど……舞園さんは?」
すると彼女は、「大丈夫でした」とは答えず少し俯いて肩を震わせた。
「ま、舞園さん……?」
「な、苗木くん……その……私……昨日、寝ようとしたらあの頭痛がして……そしたら部屋の扉を誰かが無理やり開けようとしてきたんです……!」
「え……?!」
怯えきった舞園の言葉を聞いて、苗木は衝撃を隠せなかった。
昨日、大半の生徒たちがコロシアイに反対の色を示していたと言うのに、もう舞園を狙っている者がいると思って、苗木は震えた。
ただ舞園さんに用があっただけという可能性も……いや、そうだったならどうしてそんな彼女を怯えさせる必要があるのだろうか。
「そ、それで……どう……なったの?」
「そ、それで必死に耐えて……しばらくして頭痛が収まると、扉を開けようとしていた人も諦めたみたいで……」
そこまで言って、舞園は押し黙った。
それ以上、言えない程に彼女は恐ろしい思いをしたのだと苗木は想像し、彼女の手を握った。
「大丈夫だよ!僕が着いているよ!怖い事や不安な事があったら僕を頼ってよ!」
「な、苗木くん……」
「あ……ぼ、僕だけじゃないよ?!石丸くんとか、大神さんもいるしさ!それに朝日奈さんや……」
「う、ふふふ……」
「?」
突然笑い出した舞園に不意を突かれ、苗木はキョトンと目を丸くした。
「ど、どうしたの舞園さん?」
「ふふふ……だって、苗木くんと話してたら、なんだかとっても安心して……」
涙をぬぐって、また明るい笑みを浮かべた舞園の言葉を聞き、苗木はとても嬉しくなった。
やっぱり、舞園さんは笑っている方がいい、と。
「僕も、舞園さんが安心してくれて、嬉しいよ」
「私も苗木くんと話せてとってもよかったです!あ、一緒にご飯食べませんか?」
「え、いいの?」
「はい!皆で食べた方が美味しいですもの!」
「そうだね、一緒に食べようか!」
「やったー!」
16
:
鎧カリバー
◆OPO1uqcrCU
:2014/10/06(月) 22:23:49 ID:BLcWQESg
そんな二人が微笑ましく笑いながら朝食を取って席に着くと、その前にすみれ色の髪をした少女が歩いてきた。
「……おはよう、苗木くん」
彼女の名は霧切響子、唯一超高校級の才能を明かしていない。
そのどこかミステリアスな外見と、あまり他人と関わろうとしないその態度から昨日は結局、名乗った以外は誰とも喋らず、どこかに行ってしまった事を苗木はなぜか思い出した。
「ぁ……お、おはよう霧切さん……」
「……おはようございます……」
霧切は、ムッとした舞園がそこにいないかのように苗木を見つめるというより睨み付けて、訊いた。
「苗木くんあなた、ライダーの戦いを止めようと思っているのよね」
突拍子もない質問に、苗木は反応が遅れたが、力強く「うん」と頷いた。
「どうして?」
「だって、どんな理由があっても殺し合うのは間違ってるって思ったから……それに、皆でこの学園を脱出する方法だってきっとあるはずなんだ」
「でも、どれだけコロシアイを望まない人が居ても、必ず殺しは起きるわ。閉鎖空間に閉じ込められて、脱出する手段がそれしかないとあれば……なおさらね」
「ちょ、ちょっと!貴女、いきなりなんなんですか?!」
机に掌を叩きつけて立ち上がり、怒声を上げた舞園に対して霧切は冷たい瞳を向けた
17
:
鎧カリバー
◆OPO1uqcrCU
:2014/10/06(月) 22:27:03 ID:VgBJYPmg
「貴女もデッキは受け取ったのでしょう?」
「っ……!どうして……」
「わかるもの、デッキを手にしてその力を使おうとしている人の目が」
そう言われ、舞園は「わ、私……そんな事……」と否定しようとするが明らかに動揺していて、霧切の言っていた事が図星であった事を肯定してしまう結果となってしまった。
「苗木くん、これでわかったでしょう。誰が誰を狙っているのかは、もうわからないわよ」
「そ、そんな……」
「ごめんなさい……苗木くん……私……私……!」
舞園は泣きながら謝り続け、そのまま走り去ってしまった。
その後を追おうとした苗木だったが、「待ちたまえ!」と石丸に呼び止められた。
「彼女も追い詰められている……今はそっとしておいてやるべきじゃないか……なとは僕は思う」
「石丸くん……」
するとまたしてもあの頭痛が皆を襲い、食堂の壁にかけられた鏡にオーディンの姿が浮かんだ。
18
:
鎧カリバー
◆OPO1uqcrCU
:2014/10/06(月) 22:30:37 ID:BLcWQESg
「な、何しに来たのよ!」と朝日奈が叫び、大神や大和田が身構えた。
「てんめぇ……」
オーディンは、静かに食堂を見渡すと『今、出て行った舞園を含め3人程いないか』と人数を確認した。
それを聞いた苗木が食堂内を見渡すと舞園以外にも、桑田と葉隠がいなかった。
「桑田君と葉隠君もまだ寝てるんじゃ……」
不二崎がそう指摘すると、オーディンは『そうかもな』と曖昧に答えた。
『まあいい、ここにいる11人に問う。貴様たちは戦うのか、否か、どちらだ』
オーディンの問いに皆、少し迷った。
戦わないと言えば「ならば戦うだけの理由をやる」と言い出しそうで、苗木は迂闊には言えないと思った。
「私はやだよ!絶対にコロシアイなんてしないんだから!」
そう言ったのは朝日奈だった。
すると、それに続いて大神もオーディンに向かって拳を突き出して「我も同意見だ」と意思を表明した。
更に大和田と石丸も続く
「俺だってコロシアイなんてもんにゃ、反対だぞ、ゴラ!」
「僕も同意見だ!生徒同士がどうして傷つけあわねばならないのだね?!」
「あ、あの……僕も……コロシアイなんて、嫌だよ……」
四人の勢いに乗って、不二崎も反対を示した。
苗木は「ほら、戦いなんて誰も望んでないんだ」と喉まで出かかった。
しかし。
「こいつらがどう言おうと、俺は降りる気はないぞ」
そう言い切ったのは十神だった。
彼は不敵な笑みを浮かべ、オーディンに言った。
「俺は十神財閥の御曹司として、様々な事を叩き込まれてきた……その中で数多くの“ゲーム”を楽しんできたがここまで面白いゲームは少なかった。だから、降りる気はないし負ける気もない、必ず勝ち残り貴様をも倒して堂々と卒業させてもらう」
その宣言を聞いたオーディンは「ふっ」と笑った。
19
:
鎧カリバー
◆OPO1uqcrCU
:2014/10/06(月) 22:31:30 ID:BLcWQESg
「そ、そーよ!あ、あたしだって負ける気はな、な、な、ないわよ……っ!」
十神に感化されたのか、腐川もたどたどしくだが、戦う意思を見せた。
「貴様はすぐ負けるだろうな」と鼻で笑った十神が、セレスティアに視線を向けると今まで山田に命令して淹れさせたロイヤルミルクティーを飲んでいた彼女も、カップを置いて立ち上がった。
「あら、わたくしも負ける気はありませんわよ?ギャンブルの中には命を賭けた物もありましたのよ?」
そう自信気な微笑みを浮かべたセレスティアの後ろで山田が「ぼ、僕は別にどちらでもかまいませんぞ!」と強がりを見せた。
この時点で戦いに賛成しているのは、十神、腐川、セレスティアの三名、反対は苗木、朝日奈、大神、大和田、石丸、不二崎の7人。
『ならば今すぐに変身し、戦うといい』
そう告げたオーディンは静かにゴルドバイザーを召喚し、その柄で床を叩いた。
『早く戦えばそれだけ、卒業までの時間も短縮できるだろう?戦え』
20
:
鎧カリバー
◆OPO1uqcrCU
:2014/10/06(月) 22:33:41 ID:BLcWQESg
「ふっ……いいだろう……」
「ふふ、面白いですわ」
十神とセレスティアの二人は電子生徒手帳に記入されていたデッキの使い方に従って鏡の前に立ち、カードデッキの紋章をかざした。
すると鏡の中から召喚されたバックルが二人の腰に巻き付いた。
「貴様には負ける気がしないな」
「ふっ……奇遇ですわね、わたくしもですわ」
二人はお互いの顔を見て、不敵に笑うとそれぞれのデッキに定められたポーズを決め、掛け声を放った。
「「変身!」」
すると四方向から合わせ鏡に映った鏡像の様に複数の仮面ライダーの姿が飛来し、二人に重なると実体化した。
十神は体が緑色で、各部の装甲が銀色のいかにも機械的な外見をした“仮面ライダーゾルダ”に、セレスティアは黒い体に赤いラインの入った緑の装甲の“仮面ライダーベルデ”へとそれぞれ変身を遂げた。
21
:
鎧カリバー
◆OPO1uqcrCU
:2014/10/06(月) 22:35:27 ID:BLcWQESg
「と、十神様?!」
「ああ……これはまるでかの有名なバトルアニメのような光景……!」
「い、一体何がどうなっているのだね?!」
「お、俺に言われてもわかるかよ!」
「ふ、二人とも……」
「むぅっ……?!」
変身を見た皆が驚く中、二人はそれぞれ鏡の中に飛び込んでいった。
現実世界とミラーワールドを行き来する為のマシン“ライドシューター”に乗り込んだゾルダとベルデはお互いに追い抜こうと並走して突き進み、やがてミラーワールドに出た。
そこは、鏡の中であるが故に物や文字の向きが左右反転しているのと人がいない以外はまったく、現実世界と変わらなかったが、独特の音が常に響き渡っていた。
「ふん……始めるぞ」
「ええ、よしなに」
次の瞬間、ゾルダは腰から拳銃型の召喚機“マグナバイザー”を引き抜いて、ゾルダ目掛けて発砲した。
ベルデは弾丸を華麗に躱しつつ、腰に取り付けられたカメレオンを模した“バイオバイザー”の舌を引き伸ばし、デッキから引き抜いたカードを装填し戻した。
22
:
鎧カリバー
◆OPO1uqcrCU
:2014/10/06(月) 22:36:20 ID:BLcWQESg
―ホールドベント
無機質な電子音声と共に、虚空から飛来したヨーヨー型の武器バイオワインダーを手にした。
「受けてごらんなさい!」
ワイヤーに手をかけ、放たれたバイオワインダーは弧を描いてゾルダに巻き付き拘束した。
「ふふふ、案外あっさり捕まりましたわね」
ベルデが更にデッキからカードを引き抜こうとした時、ゾルダはかろうじて動く左手でデッキからカードを抜くとマグナバイザーに装填した。
―シュートベント
召喚された二連装プラズマ砲“ギガランチャー”が肩に装着されると、容赦なくワイヤーを持っていて動けないベルデ目掛けて発射し、吹き飛ばした。
「きゃああ!」
「言っただろう、俺は負ける気もないと」
拘束を解いたゾルダはギガランチャーと共にマグナバイザーを発砲し、一方的にベルデを攻撃して圧倒した。
23
:
鎧カリバー
◆OPO1uqcrCU
:2014/10/06(月) 22:38:50 ID:BLcWQESg
その戦いはデッキを持っている苗木たちにも見えていた。
「ひ、酷い……あんまりじゃないか……!」
それを見た苗木は一方的な戦いを展開する十神に対して、怒りに近い物を覚えた。
そんな彼の言葉を受けた霧切は静かに言う。
「これがライダーの戦いという物よ」
以前から、ライダー同士の戦いを知っているかのような口ぶりを苗木は不思議に思った矢先、たまたまポケットに入れっぱなしだった拾ったデッキの事を思いだして取り出した。
「苗木……?それ……」
「昨日ばら撒かれたデッキの中にはなかった色だな」
そのデッキを見て不思議に思った朝日奈と大神の質問に対し、苗木は「あ、今朝、部屋に落ちてて……」と誤魔化した。
苗木は、自分のカードデッキを見て思った。
これを使えば、彼らの戦いを止められるんじゃないかと。
「やらなきゃ……」
「苗木?」
「ごめん、僕……戦いを止めて来る!」
苗木はそう言うと二人が変身した鏡に向かって走り出した。
24
:
鎧カリバー
◆OPO1uqcrCU
:2014/10/06(月) 22:39:52 ID:BLcWQESg
引き返す事はできないかもしれない、それでもやらなきゃいけない。
殺させるものか。
そう思い、デッキを鏡にかざそうとして驚いた。
霧切がいつの間にか隣にいて、紺色のデッキを手にしていたからだ。
「霧……切さん……?」
「変身するんでしょ?早くして頂戴」
「う、うん……!」
苗木は改めてデッキを鏡にかざし、バックルが装着されると掛け声と共にデッキを装填した。
「へ、変身ッ!」
そして苗木は赤い体の、仮面ライダー龍騎へと変身を遂げた。
「これが……仮面ライダー……」
25
:
鎧カリバー
◆OPO1uqcrCU
:2014/10/06(月) 22:40:58 ID:BLcWQESg
その隣で霧切もデッキをかざした。
「…………変身……」
霧切は次の瞬間、紺と黒色の騎士の如き姿の仮面ライダーナイトへと変身した。
「さあ、いきましょう、苗木くん」
「あ、うん……!」
本当に鏡の中に入れるのかという不安もあったが、指先が触れるとあっさり鏡の中に吸い込まれるようにして二人はミラーワールドに突入したのだった。
26
:
鎧カリバー
◆OPO1uqcrCU
:2014/10/22(水) 01:46:26 ID:aa0dYovk
また詰まってしまった……原作ありきで書き始めるとすぐ詰まう……
27
:
名無しさん
:2016/01/07(木) 22:37:07 ID:gFTCxJgg
失踪()
28
:
名無しさん
:2016/02/07(日) 10:57:34 ID:k6vzdwrc
どこ行ったんだ...面白いのに...
29
:
名無しさん
:2021/12/22(水) 23:57:50 ID:Jwb.pDpY
「やっと……扉が開いた……」
「ははは……何だか、眠く、なってきた」
「ちょっと、おやすみ……霧切さん……」
開け放たれた扉。
光が差し込む。そこに居たのは、2人の子供たち。
1人は少女。背中から凄惨に流れ出た血液はすっかり固まり、壁にもたれ掛けて眠っていた。
1人は少年。少女に寄り添うように眠り、左手で少女の手を優しく握り、右手には血に濡れた龍のカードデッキがあった。
開け放たれた扉から差し込む光は、いつまでも。
いつまでも。2人を明るく照らしていた。
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