したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | メール | |

人間、喜怒愛楽

1浩司:2014/12/23(火) 19:41:17
「何で…………どうして君はそうなの!? 君が好きだから、君を愛してるから私は……!」
 彼女の言葉の意味も。
「私のこの気持ちすらも、君は否定しちゃうの……?」
 彼女が流す涙の意味も。

 分かんねぇよ、俺には…………

2名無しの権兵衛:2014/12/27(土) 01:14:59
「第1話 [一部]」



 4月6日、午前8時。校庭の桜が七分ほどに咲いている[県立保土ヶ崎高校]。その5階フロアは新入生達の喋り声で満たされていた。
 友達を作ろうと他の生徒に積極的にアプローチしている者、かつての同級生と集い談笑する者、席についたまま辺りをおどおどと見回している生徒は、人見知りがきついのだろう。
 そんな、入学式直前ならではの緊張感に満たされた空気を僅かに淀ませるかのようなオーラを放つ男子生徒がいた。
 1年1組、夏川彰良[なつかわ あきよし]。彼は自席にどっかりと腰かけ、さっぱりと短い茶髪を揺らしながらロック音楽を聴いている。一見ただ寛いでいるようだが、その瞳には何者をも寄せつけぬ気迫を湛えており、実際そんな彼に話しかける者もそうそう居なかった。先ほども、勇気ある女子生徒が彼との会話を試みたが、彼の机まで1メートルの距離まで近付いたところでその鋭い眼光に射すくめられ、やがて気合い負けして退散を余儀なくされていた。
 周囲では依然としてお喋りが続いていた。
(うるせぇな)
 彰良はポケットの音楽プレイヤーに手を伸ばし、音量レベルを上げる。それで大分「静かになった」もののそれでも、時折悲鳴のような笑い声が彰良の耳を突いた。
(っとにうるせぇ……!)
 耐えかねた彰良はガタッと机を蹴り、椅子から腰を上げた。片手で上履きの入った袋をさらいつつ、教室を出る。
 彰良が向かったのは昇降口。式まではまだ時間があるようだから、それまで外の空気でも吸おうという作戦だ。
 暖かな風が中庭を吹き抜け、木々を揺すり、若葉をざわめかせる。桜の花びらが舞い散る春らしい情景に、何人にも許されることの無かった彰良の心はいとも簡単に開放された。
 真の安息というのは美しい自然の中でこそ生まれるものだとつくづく思う。
 扉に寄りかかり、新鮮な空気を胸一杯に吸い込む。そして目を瞑って風に身を任せていると、忌々しい人間達の喧騒を忘れることができる。
 地球の表土を覆う花畑を、どこまでも飛翔していくような、そんなイメージだ。
 予鈴が鳴る頃には、彰良の心は完全に春の空気に溶け込んでいた。
 そして入学式も終わり、下校前のホームルームも迫った頃になって昇降口前に発見された彰良は、壁に浅くもたれ、微笑みを浮かべて立ったまま眠っていたという……

3浩司:2015/01/05(月) 00:14:12



 入学式翌日の時間割は、専ら学活が占めた。
 レクリエーションを兼ねた自己紹介や席決め、新入生歓迎会といった行事によって、新入生が学校やクラスに順応しやすいようにする目的だ。
 教員らの目論み通り各クラスに友好の輪が広がる中で、1年1組では「夏川彰良は本モノの不良」というよからぬ噂がたち始めていた。
 根も葉も無い話に聞こえるが、話しかけても口を利いてくれずそれどころか鋭く睨みつけて追い返し、しかも入学式をフケておきながら悪びれる様子も無い夏川彰良という少年を普通と思う人間も居ないものである。

 ある男子生徒は、担任教諭に訊いたそうだ。
「夏川君は喋れないんですか?」と。
 随分と失礼な話だが、彼の話によると自己紹介の時間にぼそりと名乗ったのを最後に、彰良の声を一切聞いていないのだという。
 しかしその担任教諭は、入学式を無断欠席した彼と幾らかの言葉を交わしている。
 じゃあ俺達、やっぱ嫌われてんのかなぁ。
 その事実を聞かされた男子生徒は肩を落として職員室を去ったという。


新着レスの表示


名前: E-mail(省略可)

※書き込む際の注意事項はこちら

※画像アップローダーはこちら

(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)

掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板