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投下用SS一時置き場4th
96
:
エンドロールは流れない -刃鳴吹雪が舞う頃に-2
:2015/11/23(月) 03:25:48 ID:YTH1tfEc0
「……ッ」
交錯、火花散る。
槍と剣がぶつかり合う。
何の変哲も無い一撃ではあるがその剣閃は鋭く研ぎ澄まされている。
幼き頃から両親を亡くし、復讐を誓った時からずっと振るい続けてきたこの剣技。
クロエはそれを直情的に実行するだけでいい。
いわば、軽いウォーミングアップのようなものだ。軽く振るった剣閃がイレーヌへと伸びていく。
雪を押し潰しながら放たれた一撃を、イレーヌは取り出した槍で何とか抑える。
刀身と柄によるぎちぎちとした金属音が辺りへと鳴動する。
押し返された刃を袈裟に振るい、弾き返す。
一旦の後退。刺突が繰り出される前に、一足一刀の間合いから離脱する。
「彼への手出しは許さない」
スタンを庇う形で、イレーヌは前へと出ているが、数刻前とはどこか様子がおかしいのだ。
何を怖がっているのか、その表情には薄っすらと恐怖が混じっている。
まるで、魔物を見るかのように。
まるで、彼らが想い合っているかのように。
ふざけている。ふざけているにも程がある。
何故、寄り添い、かばい合う。
貴様らは悪鬼だ、この殺し合いで人を殺すことを是とした屑にも劣る奴等だ。
断じて、生かす価値はない。
だから、自分が『殺す』のだ。
――何かが、矛盾している。
雪を蹴り解し、前へと進む。
槍は慣れぬ得物なのか、イレーヌの手つきは覚束なく、こうしている間にも深くはない傷が彼女の身体へと刻まれていく。
このまま押し切れば、殺れる。クロエの頬が釣り上がり、自然と表情も明るくなる。
スタン達を斬れば、正義が勝つことを証明できるし、彼らへ及ぶであろう危害を未然に防げるのだ。
セネルも、シャーリィも、ロイドも、シンクも、護れる。
ならば、取るべき行動はとっくに決まっていた。
壊そうとする者達を、皆殺しにしてしまえばいい。
動くのは敵だ、剣を取るのは敵だ、声をかけるのは敵だ。
自分へと駆け寄ってくる総てを敵だと思え。
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