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投下用SS一時置き場4th

69エンドロールは流れない -胡蝶之夢-4:2014/11/22(土) 15:10:03 ID:.aJ578Io0
閑話休題。レイシス=フォーマルハウトに晶霊術の才は無い。

クレーメルケイジはレイシスを嫌うかの様にまるで反応をせず、晶霊達は終ぞその力を貸すことは無かった。
尤も、レイシス自身晶霊術士になりたいと言うわけではなかったため、その才の無さは別段困る話でもなかったのだが。
しかしながらその対価か、レイシスは生まれながらにして魔的な剣術を扱う事が出来た。
剣は雷を帯び、風は切っ先に集い、またある時は光を歪め残像を見せ、爆発を起こした。
大多数の王都インフェリア民は、クレーメルケイジ無しで属性を操るその技術を異端と蔑み悪魔の子と囃したが、
何事にも誠実なレイシスのその姿勢から、やがてその噂は表面上ではなりを潜めた。
尤もその裏では国王が平民の娘に手を出して生まれた彼を汚らわしく思い、
また若輩の分際で、国王が惚れた女の息子故に特別扱いされる事をやっかむ者共が居た事も、勿論レイシスは知っていた。
しかし、レイシスは賢しい子供であった。
母を不幸にし、死へと追い込んだグルノーレ2世への恨みを滅し、
人前では極力その力を封じ、他人には本性と能力を見せないよう努めた。
そう――――――リッド=ハーシェルに、出会うまでは。

バロールにてリッド=ハーシェルに出会い、その剣術を目の当たりにして、レイシスは我が目を疑った。
片田舎に住むリッドは、周囲と本人の知識の浅さ故に、それこそその力を異端と思ってはいなかったが、
王都に住まうレイシスにとって、リッドは産まれてから今に至るまでの人生で初めて出会う“対極の世界の同類”であった。
リッドが扱う剣術もまた、魔的とも言うべき属性を付与された――雷神剣、風雷神剣を始めとする――ものであった。
そしてその技能の正体が、他ならぬフィブリル、もとい真の極光術であった事を、レイシスはセレスティアに渡り知る事になる。
本来人間はクレーメルケイジを介してのみ術を行使出来る。
しかし極光術のみがその例外であり、媒介を必要とせず体内でフリンジする事により、晶霊力を引き出す事が出来た。

その極光の力を使い、レイシスはこの瞬間、デッキブラシに光属性をコーティングした。
それは彼独自の最終奥義・爪竜残光剣を発動する為であり、レイシスは走りながらも姿勢をより低く、抜剣の姿勢へと構えを移行する。
その流れの滑らかさは最早達人の域のそれであり、ネレイドを討つという言葉が現実になるのだ、という説得力すらあった。

ただ、この時のレイシスに油断があったとするならば、
それはネレイドが防御姿勢を取り、得体の知れぬ魔障壁――正体はリングシールドであったがレイシスはその存在を知らなかった――を、
展開した事に些かの疑問も抱かなかった一点と、
最も奇襲に対してクリティカルダメージを受けやすい、技の発動前の姿勢で走っていたという一点であろう。
二点ともネレイドを討てるという過信と驕りが招いた油断であり、そしてこの死の島は、それを見逃す程都合が良くもなかった。
故に不幸にも、この油断が彼にとって致命的なミステイクへのトリガーとなってしまう。

距離にして100。時間にして3秒弱。
圧倒的速度で迫る騎士、否、鬼神の身体を、

「爪、りゅ―――――――――」

シャーリィ=フェンネスの憎悪が、その残滓が、希望を砕く様に横薙ぎにした。


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