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投下用SS一時置き場4th

121エンドロールは流れない -希望が災厄になる瞬間-14:2016/09/26(月) 03:51:17 ID:L07qfzMo0







(――皮肉、だな…全て、もう、終わった、矢先に、お前と、再会出来るなんて)


闇の中の、真っ赤な海に広がる波紋


(なあ、今の“俺”を見て、お前は、どう、思う?)


静かに、静かに広がる


(俺は、もう――――だから)


さざ波にも及ばない、とても小さな、小さな波


(罵っても、軽蔑しても、構わない。ただ、もし、叶うならば)


祈りにも似た、消え入るような想いを乗せ


(どうか“俺”を―――――)


僅かに遺された<英雄>の断片は、静かに――――――――。







「…チッ、やってくれたね…あの、死に損ないが…」

スタン達から数百メートル程離れた瓦礫の奥から
全身に走る痛みを堪えながら身体を起こしたシンクは
忌々しげに呟いた。折れてはいないだろうが、恐らく至る所で
罅は入っただろう。皮膚も至る所で大きく擦り剥いている。
全てが後手々々に回った挙句、採った手段は全て目論見が外れたのは
余りに大きな失態だった。未だ戦えるにしても、今すぐ戻って
クロエの救援に間に合う可能性は限りなく低い。
無論、通常なら即死してたかもしれない一撃を咄嗟に防御壁を展開した結果、
この程度の傷で済んだのは不幸中の幸いではあったが、やはり駒を失ったのは痛い。

(恐らく手遅れだろうが、念のため戻って―――ん?)

立ち上がろうとして手を瓦礫の上に置こうとした時、
ふと冷たい感触を覚え視線を向ける。そして見つけてしまった。

(…なんだ、こんな所で燃え尽きてたのか)

元同僚ではあったが、シンクに特に感慨は無い。
物騒な肩書はあれど、実体はあのルーク達と同じくお人好しの
聖なる焔の燃えカス――アッシュ。血に染まり、体温を失ったその身体に
既に命の息吹は欠片も残っていない。シンクは鼻で嗤った。

(まあ、生き急ぐ馬鹿が長生き出来るとは思わなかったけど、随分不様な最期だね)

どうせ余計な事に囚われ、塔の崩落よりも早く命を落としたのだろう。
そう結論付け、軽く周囲を見渡しアッシュの手荷物を探したが
見つかりそうになかったので、瓦礫に埋もれた遺体を放置して歩き始める。
漸く瓦礫の雨は落ち着きつつあったが、ほんの僅かな衝撃で再び
崩れかかった外壁が降り注がないとは限らないし、仮に危険が無くとも
壊れた玩具に最早興味は無かった。

だが結論から言えば、興味が無くとも遺体を少しでも調べておけば、
たとえ何も得られなくとも、少なくともこの場での、シンクにとって
不利な状況での邂逅は防げたであろう。

「―――シンク!」

数十メートル程歩いた所で突如背後から響く自分を呼ぶ声。
シンクは内心舌打ちした。振り返るまでも無く理解出来た。
今この状況下で出会いたくは無かった、その声の主は――――。


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