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投下用SS一時置き場4th

109エンドロールは流れない -希望が災厄になる瞬間-2:2016/09/26(月) 03:40:51 ID:L07qfzMo0







「く、来るな!こ、この化物!!!」
「…何で俺がお前の言う事を聞かないといけないんだ?」

恐怖に怯えるクロエに、スタンは首を傾げながらゆっくり近づく。
決して軽くも無く、早くも無い筈の足取りだが、まるで死刑宣告を突きつけられるような
強烈な恐怖がクロエの身体の奥深くまで浸食していく。

「来るなと言ってるのが聞こえないのか!?」
「聞こえてるよ。だから言ってるだろ?お前の言う事を聞かないといけない必要なんて――」

すっかり恐怖に取り乱してしまったクロエに
やれやれと言った様子でスタンが近づこうとした瞬間、
クロエが手にしている剣――アトワイトから放たれた剣圧が
スタン目掛けて襲い掛かったが、スタンが軽く剣――魔剣ネビリムを
一閃させただけで掻き消されてしまう。
一瞬クロエが恐怖と驚きで固まるが、即座に構え直す。

「魔神剣!魔神剣・双牙!!魔神剣・瞬牙!!!」

クロエから次々と凄まじい剣圧が繰り出され、衝撃波がスタンを呑み込まんと
襲い掛かるが、スタンが溜息混じりに剣を繰り出す毎に掻き消され、欠片すらも
スタンの身体に傷を付ける事が出来ずに終わる。

「―――五月蠅いな」
「………ッ!?」

とは言え、実害は無くとも、次から次へと飛んでくる剣圧は不愉快だったらしく、
スタンは剣を力強く一閃させた。同時に唸りを上げてクロエに襲い掛かる剣圧は
先程のクロエが放ったものの比では無い。防御も回避も間に合わず
衝撃波に巻き込まれたクロエは悲鳴を上げて吹き飛ばされ、地面に転がる。
それでも即座に受け身を取り、何とか剣を構え直す。

「かはっ、あっ、はぁ、はぁ…」

だがクロエの息は激しく乱れ、身体の震えが止まらない。
寧ろ先程よりも酷くなっていた。勿論スタンの一撃のダメージが
無い訳では無いが、致命傷には程遠い。にもかかわらず身体の自由が利かない。
それ程までにスタンに対する恐怖がクロエをさらに深く呑み込んでいた。
もしクロエが凡人なら、或いはそのまま下半身を濡らしていたかもしれない。

「そんなに怯えるなよ。お前も一応剣士なんだろ?」

そんなクロエの姿に、スタンはボサボサ頭を掻きながら苦笑した。
勿論殺意も悪意も込めたつもりは無いが、クロエには
その笑みが逃げ場を失った草食獣に向ける肉食獣の笑みに見えたらしい。
最早イレーヌを相手にしていた時の殺意に溢れた威勢は完全に失われていた。

「…これじゃ話にならないな」

スタンは溜息を吐くと、若干呆れ顔で言った。
どうせ殺すとはいえ、これでは余りにも面白くない。
どうにかして戦う気を起こさせたい、そう思ったスタンは
ふとある事を思い出し、ポンと手を叩いた。

「だったら先にさっきお前を止めようとしていた緑――あの少年から殺すか」

そう言って先程シンクが去っていた方角に視線を移す。
同時にゆっくりとその方角に向けて歩きだそうとした。
果たして予想していたかのような強い殺意がスタンを襲った。
再び視線をクロエに戻すと、つい先程までの恐怖を抑え込み、
射殺さんばかりの視線をこちらに向けるクロエの姿があった。

「シンクに手は出させない」
「…そう来なくっちゃな」

クロエの言葉にニヤリと笑うと、スタンは軽く身構えた。
以前のスタンならば大よそ想像付かなかった行動。
一見すれば却って危険を招いたようだが、今のスタンにとって
大したことでは無い。それが強者の余裕故か、
騎士、戦士道精神によるものかは現時点で判断に悩む所ではあるが。
両者身構えつつ、徐々に距離を縮める。その数秒後―――。
2人は同時に大地を蹴り、斬撃を繰り出した。
交錯した刃から凄まじい金属音が響き渡り、火花が飛び散る。
一閃、二閃、三閃と、次々と繰り出される目にも止まらぬ剣閃。
一瞬でも気を許せば命を刈り取られるような戦いがそこにはあった。


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