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( ・∀・)ヒート・オブ・ザ・ソウルのようです
1
:
ブーン系の名無しさん
:2014/03/23(日) 20:02:19 ID:NuFaU0o.
ラノベ祭り参加作品。No.34の絵より。
五話構成になってます。三日間で順番に投下してく予定がギリギリになってしもうたんや……
休み休み投下してくよー
2
:
ブーン系の名無しさん
:2014/03/23(日) 20:05:29 ID:NuFaU0o.
1.
( ・∀・)
少年はその場に座り込んだまま、自分が何故ここにいるのかを思い出そうとしていた。
目の前には錆び色のスチールのドア。
冷たいコンクリートの階段に腰を下ろし、膝を抱いたまま、そのドアを見つめていた。
どのくらいのあいだ、こうしているだろう。
起きているのに眠っているような感覚がずっと続いている。
( ・∀・)ヒート・オブ・ザ・ソウルのようです
第一話 どこかの町で目覚めた誰か
3
:
ブーン系の名無しさん
:2014/03/23(日) 20:06:59 ID:NuFaU0o.
2.
( ・∀・)(何でここにいるんだっけ……僕は何をしてたんだ?)
頭の中がふわふわして思考が積み重ならない。
断片的な記憶がよみがえっては、すぐに掻き消えてなくなる。
いつも通り朝起きて、バスで高校へ行った。帰り道のクレープ屋で友人たちと買い食い。
女の子や、教師や、部活の話題―――
( ・∀・)「キュート」
不意にその名をつぶやいて、すぐに疑問に思った。
( ・∀・)(キュート……? キュートって誰だ?)
(:::::::::::)「その少女が誰だか知りたいだろう」
男の声がした。少年は弾かれたように振り返った。
肩越しに逆光の中に何かが見えたが、まぶしくて目を開けていられなかった。
4
:
ブーン系の名無しさん
:2014/03/23(日) 20:08:53 ID:NuFaU0o.
3.
(:::::::::::)「出て来い」
それきり声は消えた。
少年は長いあいだそちらを見つめたままでいたが、やがて立ち上がった。
何年かぶりに膝を伸ばしたかのように関節がきしみ、ブレザーの制服に積もった砂埃が落ちた。
地下室へ続く階段から出た。
目が慣れると、思ったほどには明るくはなかった。曇った日の早朝か、日没だ。
( ・∀・)(ここは……?)
どこかの団地の棟だった。人気はなく、何の物音もない。前後左右に同じ建物が身を寄せ合っている。
まったく見覚えのない場所だった。
ひどく寒い。息が真っ白だ。少年は自分の両腕で自らを抱き、呆然と周囲を見回した。
( ・∀・)「ん」
5
:
ブーン系の名無しさん
:2014/03/23(日) 20:10:38 ID:NuFaU0o.
4.
奇妙なことに気付いた。
ベランダに洗濯物が干してある世帯がひとつもない。
植木鉢も鳥かごも、人の気配を感じさせるものが何ひとつ見当たらない。
取り壊しが決まった廃墟だろうか?
何もわからないまま、声の主を探した。
( ・∀・)「誰? どこにいるんだ?」
砂利を踏む音がして、振り返った。何かが棟を回り込み、その影へと駆けてゆく。
(;・∀・)「待ってよ!」
少年は走り出した。
建物の影に入ると、建物の合間を通る小道に奥にかろうじて小さな影が見えた。
必死であとを追った。こんな場所に取り残されることが怖かった。
路地を抜けると、団地の隅にある公園に出た。
6
:
ブーン系の名無しさん
:2014/03/23(日) 20:13:47 ID:NuFaU0o.
5.
( ・∀・)「!!」
団地は高台にあり、平地の様子が一望できた。
暗雲の下、曲がりくねった下りの坂道の先に、灰色の町が広がっている。恐ろしいほど静かだった。
風がうなり声を上げて吹きすさんでいる。
見晴台の鉄柵に、誰かがこちらに背を向けて腰掛けている。
o川* )o
彼女が振り返りかけたその瞬間、頭の中で激しくフラッシュが明滅する。
頭がくらくらし、よろめいて柵にしがみついた。
何とか再度まぶたを開けたときにはもう、少女の姿は消えていた。
( ・∀・)(今のは……?)
再びこの世界にひとりぼっちで放り出され、めまいがした。視界が歪み、まっすぐ立っていられない。
7
:
ブーン系の名無しさん
:2014/03/23(日) 20:15:59 ID:NuFaU0o.
6.
手すりに掴まり、地面にひざまずいた。
( -∀-)「これは夢だ」
激しくなる自分の動悸に耳を澄ませ、目を閉じて自身に繰り返す。
―――これは夢だ。
たった今、幻覚で見た少女のことが胸をよぎった。
顔も思い出せないのに、なぜかひどく懐かしく、暖かい感じがした。
( ・∀・)(あの子……あの子がキュートなのか? 何だろう、僕にとってすごく大事な人のような……?)
顔を上げ、再び見知らぬ町に目を凝らす。
ずっと遠くに、果てしなく巨大な塔のようなものが見えた。天を突く高さだ。
( ・∀・)(何だあれ……?)
背後で再び足音がし、彼は振り返った。
8
:
ブーン系の名無しさん
:2014/03/23(日) 20:17:09 ID:NuFaU0o.
7.
弾かれたように立ち上がり、駆け出した。
自転車置き場の顔を曲がると、その向こうに駐車場が見えた。
そちらに走ろうとしたとき、水溜りを踏んだ。ぎょっとして足を引く。
( ・∀・)(タール……?)
真っ黒な液体が地面に溜まりを作っている。
すぐに我に返った。構って入られない。
( ・∀・)「ねえ、待ってよ!」
黒い足跡を追って駐車場に出ると、その誰かにやっと追いついた。
女性のようだった。OL風のタイトスーツ姿で、こちらに背を向けている。
とりあえずほっとして少年は彼女に声をかけた。
( ・∀・)「あのさ、ちょっといいかな。ここって……」
9
:
ブーン系の名無しさん
:2014/03/23(日) 20:19:31 ID:NuFaU0o.
8.
びちゃ。
再び黒い水溜りを踏んだ。
(:::::::::::)「……」
( ・∀・)「? ねえ、あの……どうかした?」
彼女は背を向けたまま、ゆっくりと上半身をゆらゆら前後に揺すっている。
不意に前かがみになると、激しく嘔吐し始めた。
(:::::::::::)……ゲェェッ!! ゲボォッ
(;・∀・)「!?」
真っ黒な吐瀉物がアスファルトに落ち、飛沫を上げた。
激しい嗚咽を上げ、長く尾を引く嘔吐が終わると、女は凍り付いている少年に振り返った。
(゚q 。川
10
:
ブーン系の名無しさん
:2014/03/23(日) 20:21:11 ID:NuFaU0o.
9.
口からも、鼻からも、目からも黒い液体を垂れ流しにしていた。
スーツの前に大きな黒い染みを作っている。
喉元に噛まれたような歯型があり、ぽつぽつと開いた穴がU字型を描いていた。
彼女が荒く呼吸し、胸を上下させるたび、それに合わせて口鼻とその傷から黒い液体が噴き出した。
(゚q 。川 ゲェッ、ゴボォッ
( ・∀・)
はらわたが凍りつくのを感じながら、少年は後ずさった。
女は酔っ払っているような足取りで一歩踏み出した。
片手を少年に向かって伸ばし、引きつった指で彼を掴み取ろうとするような動きをしながら。
(;・∀・)「!」
どこかでびしゃりと水音がした。
振り返ると、そちらにも人影があった。
11
:
ブーン系の名無しさん
:2014/03/23(日) 20:23:40 ID:NuFaU0o.
10.
(゚q 。川
(゚q 。)
黒い涙を眼から溢れさせ、口と鼻から漆黒の液体を吐き出す人々だった。
あちこちの隙間や、物陰から這い出るように現れ、呆然とモララーを眺めている。
服装はみなサラリーマンや、主婦や、ジャージだった。ランドセルを背負った小学生の姿もある。
( ・∀・)「……!」
口も利かず、表情も変えず、彼らはただ静かにモララーを見ていた。
喉元までせり上がってきた悲鳴を飲み込み、モララーは弾かれたように走り出した。
(゚q 。川ゴボォッ
(゚q 。)ゴボゴボゴボ
喉に液体を詰まらせるような音を上げて、彼らは追って来た。
12
:
ブーン系の名無しさん
:2014/03/23(日) 20:25:09 ID:NuFaU0o.
11.
足を引き摺り、あるいは手で地面を這って。
(;・∀・)(なっ……何だあれ、何なんだよ?!)
三十人はいるだろうか。
駐車場を飛び出した少年はがむしゃらに走り続け、団地の中心部に迷い込んだ。
ロータリーになっていて、中心に枯れた花壇と噴水がある。
その横を通り過ぎて奥の道を抜けようとしたが、別の怪物が現れて道を塞いだ。
(゚q 。川ゲボッ
(゚q 。)ゴボゴボ
(;・∀・)「ハァッ、ハァッ、何でこんなにいるんだよ!?」
振り返って来た道を引き返そうとしたとき、ひとりが背中に飛びついてきた。
つんのめって噴水の縁にぶつかる。
13
:
ブーン系の名無しさん
:2014/03/23(日) 20:27:09 ID:NuFaU0o.
12.
( ・∀・)「うわっ!!」
(゚q ↑)ゲボッ、ゴェェッ
(;・∀・)「くそっ、ちくしょう」
振りほどこうとめちゃくちゃに暴れたが、小柄な肉体からは想像もつかない怪力の持ち主だった。
相手の立てた爪が少年の顔や胸を引き裂く。
鋭い痛みは紛れもなく現実のものだった。
(;・∀・)(夢じゃない、これは夢じゃない!!)
(;・∀・)「あっ……」
(゚q ↑)ゲボッ
首に巻きついている相手の腕に狂ったように爪を立てたが、びくともしない。
そのとき、再び誰かの声がした。
(:::::::::::)「噴水の中だ! 泥をさらえ」
14
:
ブーン系の名無しさん
:2014/03/23(日) 20:30:25 ID:NuFaU0o.
13.
声がした方向に視線をやろうとしたとき、少年はバランスを崩し、ふたりはもつれ合って噴水の中に落ちた。
口と鼻に汚水が殺到する。
無我夢中で手を探ると、硬い棒のようなものに触れた。
それが何なのかわからないまま掴んだ瞬間、少年の内側で何かが爆発した。
( ・∀・)「!!」
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
激しい飛沫を上げて、二つのものが噴水の中から飛び出した。
宙を舞い、コンクリートの地面に落ちる。
それは上下に両断された人体だった。
(゚q ↑)ゴボ……
ふたつは虫のように力なく手足をばたつかせている。
15
:
ブーン系の名無しさん
:2014/03/23(日) 20:32:41 ID:NuFaU0o.
14.
続いて少年も噴水から這い上がり、激しく咳き込んだ。
(;・∀・)「ゲホッゲホッ!! あー、クソ!」
(゚q 。)
(゚q 。川
自分を取り囲む怪物たちを一瞥すると、手にしていたものを一振りして泥水を振り払った。
彼の身長とほぼ同じ長さの、槍と槍の中間のような武器だった。
柄・刀身ともに青みを帯びた鋼のような単一の素材で出来ていて、全体の中間地点からそれぞれ両刃の剣・柄に分かれている。
口の中の泥を吐き出し、少年は身構えた。
剣を通じて、自らの内側に凶暴なパワーが満ちるのを感じる。
( ・∀・)(何だ……? 負ける気が全然しないぞ!)
群がってきた怪物に対し、剣はすさまじい切れ味を発揮した。
ひと振るいごとに人体を木の葉のように切断してゆく。
16
:
ブーン系の名無しさん
:2014/03/23(日) 20:35:55 ID:NuFaU0o.
15.
(゚q// 。)ゴボオッ
(゚//q 。川ガボ……
( ・∀・)「ハハッ、すげえや!」
夢うつつだった頭は肉体とともに研ぎ澄まされ、彼は舞うように華麗な立ち回りを見せた。
たちまち屍が山と築かれ、地面が黒い血で満たされてゆく。
すぐに少年のほかに動くものの姿はなくなった。
剣をひと振りして返り血を散らすと、彼は改めてそれを見つめた。
( ・∀・)(なんだろう、これ? まるで最初から自分の一部だったみたいだ)
鏡のように磨き抜かれた刀身には自分の顔が写り込んでいる。
不意に背後に影が差した。
(:::::::::::)「お見事」
( ・∀・)ハッ
17
:
ブーン系の名無しさん
:2014/03/23(日) 20:38:46 ID:NuFaU0o.
16.
振り返るとそこにいたのは、銀色の毛皮に覆われた大型犬だった。
きょろきょろと辺りを見回すが、他には何もいない。
(U'A`)「マヌケ面さらしてどうした?」
犬はバカにしたように言った。
(;・∀・)「犬?! しゃ、喋ってる……!!」
(U'A`)「頭のデキはてめえよかよっぽどマシなんでな」
(;・∀・)(口が悪い……)
(U'A`)「俺について来な。ヴォイドの残党に気をつけろ」
( ・∀・)「ヴォイドって?」
犬は鼻先を地面の屍にしゃくった。
驚くほど人間的な動作だった。
18
:
ブーン系の名無しさん
:2014/03/23(日) 20:42:11 ID:NuFaU0o.
17.
(U'A`)「そこに転がってる奴らのことだ」
少年は犬を追って歩き出した。
( ・∀・)「こいつらは何なんだ? ゾンビ?」
(U'A`)「ただのがらんどうさ。名前は?」
( ・∀・)「モララー」
(U'A`)「俺はドクオだ」
ひとりと一匹は再び見晴台に向かった。
途中、明滅する街灯の下にふたつ、コカコーラの自販機があった。
ドクオはそこで立ち止まった。
(U'A`)「まあ、とりあえず何か飲め」
( ・∀・)「うん……」
19
:
ブーン系の名無しさん
:2014/03/23(日) 20:45:41 ID:NuFaU0o.
18.
スラックスのポケットを探ったモララーは蒼白になった。
(;・∀・)「あれ、財布が……」
(U'A`)「ぶっ壊して好きなのを取ればいい」
( ・∀・)「そんなこと出来るかよ」
(U'A`)「気にするな。もうこの世界にそれを咎める奴は誰もいない」
モララーは動きを止めた。
( ・∀・)「誰もいないって……?」
(U'A`)「お前はさっきあれだけのヴォイドを殺した。なぜ誰も騒がない? なぜ警察は来ない?」
( ・∀・)「……」
(U'A`)「何か飲んでひと息つけ。話はそれからだ」
自販機はずいぶん長い間放置されている様子だった。
埃を被り、金属部分は錆びている。明かりもついていない。
20
:
ブーン系の名無しさん
:2014/03/23(日) 20:47:28 ID:NuFaU0o.
19.
モララーは躊躇を振り払い、剣の切っ先を自販機の扉の隙間に入れた。
軽く力を入れただけでボルトが折れ、簡単に開いた。
(U'A`)「このへんの自販機は荒らされてない。団地がヴォイドの巣だから誰も近づかないんだ」
( ・∀・)「ペプシ……はないか。ファンタでいいや」
ジュースを中から取り出し、見晴台に向かった。
柵まで来ると、ぬるい中身を一気に半分ほど飲んだ。
口から泥水の不快な味が洗い流されると、気分が落ち着いた。
( ・∀・)「ふう」
地面に伏せったドクオが言った。
(U'A`)「気分は?」
( ・∀・)「最高だよ。ペプシがあればもっといいけど」
21
:
ブーン系の名無しさん
:2014/03/23(日) 20:50:57 ID:NuFaU0o.
20.
(U'A`)「これからお前がやらなきゃならんことを説明しよう。
お前は世界を変えるために選ばれたんだ」
( ・∀・)「???」
(U'A`)「ここはお前の生まれ育った町だ。見覚えがないように思えるのは記憶が混濁しているからだろう」
ドクオが町に視線をやると、モララーも改めてそちらを見た。
何かを思い出そうとしたが、記憶に霧がかかっている。
( ・∀・)「うーん……?」
(U'A`)「まあ、いずれ思い出すだろう。
この町……というか、世界に生き残っている人間はもういくらもいない。
ほとんどは殺されるか、ヴォイドに変えられてしまった。
ヴォイドに噛まれたり、引っかかれたりした人間はみんなヴォイドの仲間になってしまうんだ」
( ・∀・)「うわー、ゾンビ映画そのまんまだな」
(U'A`)「……真面目に聞いてるのか?」
22
:
ブーン系の名無しさん
:2014/03/23(日) 20:52:33 ID:NuFaU0o.
21.
( ・∀・)「もちろん……ん!? ってことは……」
モララーははっとして自分の袖をめくった。
さっき引っかかれた跡がくっきりと残り、血が滲んでいる。
(U'A`)「そのくらいなら大丈夫だ。噛まれたらヤバかったな」
(;・∀・)「そ、そうか。良かった。で、そのヴォイドってのはどこから来たんだ?」
(U'A`)「ある男が?願望機?を使ったんだ」
( ・∀・)「?」
(U'A`)「蓋を開ければ何でも願いを叶えてくれる箱だ。ランプの魔神といったところか。
そいつは偶然手に入れた箱を使って世界を支配する王となり、暴虐の果てに世界中にヴォイドをバラまいた」
( ・∀・)「……」
(U'A`)「でかい塔が見えただろう。あれが王の城だ」
( ・∀・)「あれが?」
(U'A`)「モララー、お前はその王を倒して箱を取り戻さなければならない。これはお前にしか出来ないことだ」
23
:
ブーン系の名無しさん
:2014/03/23(日) 20:55:30 ID:NuFaU0o.
22.
ドクオが立ち上がると、モララーはあわてて引き止めた。
(;・∀・)「ちょ、ちょっと待ってくれよ!」
(U'A`)「何だ?」
(;・∀・)「何もかもいきなりすぎるよ! いったい僕にどうしろってんだ?!」
(U'A`)「今、説明しただろ」
( ・∀・)「だって僕はただの高校一年生で、テレビゲームと剣道が得意で、あとちょっと女の子にはモテるけど……
その……王? とかってのを、ひとりでやっつけろっての?」
(U'A`)「そうだ」
(#・∀・)「保健所に連れてっちまうぞ、このバカ犬!
だいたい信じられないよ、何でも願いが叶う箱なんて。ドラゴンボールか」
ドクオはしばらく彼を見上げていたが、すぐにそっぽを向いて歩き出した。
(U'A`)「……まあ、やる気がないなら別に構わんよ。好きにしろ」
24
:
ブーン系の名無しさん
:2014/03/23(日) 20:56:02 ID:Fbq0hdjM
支援
25
:
ブーン系の名無しさん
:2014/03/23(日) 20:57:43 ID:NuFaU0o.
23.
( ・∀・)「え?」
(U'A`)「じゃあな」
モララーはすたすたと歩いて行く彼をあわてて追い、正面に立ちふさがった。
(;・∀・)「ちょっと待てよ! 僕はどうすればいいんだ、こんなとこでひとりぼっちで」
(U'A`)「俺の知ったことじゃない」
( ・∀・)「無責任だぞ!」
(U'A`)「そうそう、お前のまぶたに浮かんだ女の子だが」
モララーははっとした。
( ・∀・)「あの子? 知ってるのか!?」
(U'A`)「王を倒す旅に出るというのなら、道中でわかるだろう」
モララーは再び彼女のことを考えた。
26
:
ブーン系の名無しさん
:2014/03/23(日) 21:00:17 ID:NuFaU0o.
24.
名前と後姿しか知らない彼女の存在は、モララーを猛烈に駆り立てるものがあった。
何もかもがあいまいなのに、あの子への思いだけは確実に自分の内にある。
( ・∀・)(なぜだろう……僕は、彼女にどうしても会わなくちゃいけない気がする)
(U'A`)「俺はもう行くぞ」
ドクオはモララーの脇をすり抜けた。
( ・∀・)「待ってくれ」
(U'A`)
ドクオが振り返ると、剣の柄を強く握り締めたモララーは、真っ直ぐに相手を見据えて言った。
( ・∀・)「なぜ僕なんだ?」
(U'A`)「いずれその答えも知ることになる……好むと好まざるとに関わらずな」
( ・∀・)「彼女に会えるんだな?」
27
:
ブーン系の名無しさん
:2014/03/23(日) 21:04:08 ID:NuFaU0o.
25.
(U'A`)「かもな」
モララーは剣を肩に担ぎ、ドクオと並んで歩き始めた。
( ・∀・)「その願望機ってのを使えば、本当に何でも願いが叶うんだろ?」
(U'A`)「まあな」
( ・∀・)「PS4を買おうと思ってたんだよね。新しい自転車も欲しいし。
億万長者になったり、アイドルと付き合ったり……あ、透明人間になるとか!」
(U'A`)「まったく、どうしようもない奴だ」
ずっと前から彼を知っているような口ぶりだった。
(U'A`)「ところで、着替えなくていいのか?」
( ・∀・)「え? あ……」
自分がずぶ濡れであることを思い出し、モララーは大きなきしゃみをひとつした。
28
:
ブーン系の名無しさん
:2014/03/23(日) 21:05:54 ID:NuFaU0o.
25.
(U'A`)「かもな」
モララーは剣を肩に担ぎ、ドクオと並んで歩き始めた。
( ・∀・)「その願望機ってのを使えば、本当に何でも願いが叶うんだろ?」
(U'A`)「まあな」
( ・∀・)「PS4を買おうと思ってたんだよね。新しい自転車も欲しいし。
億万長者になったり、アイドルと付き合ったり……あ、透明人間になるとか!」
(U'A`)「まったく、どうしようもない奴だ」
ずっと前から彼を知っているような口ぶりだった。
(U'A`)「ところで、着替えなくていいのか?」
( ・∀・)「え? あ……」
自分がずぶ濡れであることを思い出し、モララーは大きなきしゃみをひとつした。
29
:
ブーン系の名無しさん
:2014/03/23(日) 21:08:11 ID:NuFaU0o.
26.
(;・∀・)「ぶえっくし! こりゃいかん、一度戻ってなんか着替えを探して来よう。
食料とかも必要になるだろうし」
つづく……
30
:
ブーン系の名無しさん
:2014/03/23(日) 21:11:02 ID:NuFaU0o.
なんか25が被ったな。
では続いて二話行くでー
31
:
ブーン系の名無しさん
:2014/03/23(日) 21:13:35 ID:NuFaU0o.
1.
団地の一室のドアをこじ開けたモララーは、タンスやクローゼットを引っかき回していた。
サイズの合うジーンズとハイネックのセーター、ダウンベストを見つけてベッドに放り出す。
( ・∀・)「……?」
服を脱ぎ捨てた時、ふと、洋服ダンスの鏡を見た。
ほっそりとした体つきの胸板、ちょうど心臓の真上あたりに赤黒い痣がある。
指で撫でながら首を傾げた。
( ・∀・)「こんなのあったっけ……?」
川 ゚ -゚)ヒート・オブ・ザ・ソウルのようです
第二話 ブージャム・ドール
32
:
ブーン系の名無しさん
:2014/03/23(日) 21:15:30 ID:NuFaU0o.
2.
服を着て部屋を出ると、ドクオがあくびをひとつして立ち上がった。
(U'A`)「じゃ、行くか」
( ・∀・)「おう!」
背負ったリュックにはかき集めた食料、着替え、ナイフや毛布など必要なものを詰め込んである。
ふと、団地の入り口にある掲示板に目をやった。
避難場所や誰かへの伝言などがびっしり貼り付けられている。
( ・∀・)「どこかで生き延びている人たちがいるのかな」
(U'A`)「恐らくな。今となっては恐竜の化石より珍しくなっちまったが」
( ・∀・)「とりあえず、この避難所っていうとこに行ってみよう。通り道みたいだし」
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
準備に手間取り、丘を降りることにはすでに日暮れ近くなっていた。
33
:
ブーン系の名無しさん
:2014/03/23(日) 21:19:26 ID:NuFaU0o.
3.
比較的損傷の軽い住宅を間借りし、その庭で一晩を過ごすことにした。
拾い集めた廃材で火を起こし、缶詰を食べた。
ドクオにも勧めたが、彼は遠慮した。
( ・∀・)「お前、ヴォイドのこと、がらんどうって言ったな。どういう意味だ?」
(U'A`)「あいつらは魂の熱量を奪われた人間だ」
( ・∀・)「?」
(U'A`)「昔、キリストとか言う奴が言ったそうだな。人はパンだけ食って生きてるわけじゃねえ、って。
この世は不運と不幸と不公平に凍りついた地獄だ。
生きていくには希望って言う熱が必要なんだよ。
それは家族だったり、友人だったり、夢だったり、金だったり……まあ人によって違うが」
( ・∀・)
(U'A`)「ヴォイドに噛まれた人間はその熱量を失う。絶望に凍え、他人の熱を奪おうとして襲いかかる」
( ・∀・)「あの黒い血が……?」
34
:
ブーン系の名無しさん
:2014/03/23(日) 21:22:34 ID:NuFaU0o.
4.
(U'A`)「そうだ。あれが人間をヴォイド化させるウイルスみたいなもんだ。
王が箱に願って作り出した。ただ人間を苦しませたいってだけの理由でな」
( ・∀・)「とんでもないサド野郎だな」
(U'A`)「希望がない時間が終わることなく続くってのが、どれだけ人をおかしくするかよーくわかってたのさ」
モララーは食べ終えた缶詰の空き缶を投げ捨てた。
(U'A`)「両親や友人のこと、心配じゃないか?」
( ・∀・)「うーん……何とも言えない。ろくに思い出せないものを心配するってのも無理があるし」
ジュースを飲み干し、モララーは火を見つめて眉根を寄せた。
( ・∀・)「親も友達もいたはずなんだけどな。
不思議だな、あの子……トソンのことだけはすごく強く記憶に残ってる。
あの柵に腰掛けててさ。確か夕日を眺めてたんだ。手がきれいだった」
(U'A`)「手?」
35
:
ブーン系の名無しさん
:2014/03/23(日) 21:26:06 ID:NuFaU0o.
修正。トソンじゃなくてキューちゃんだった。
4.
(U'A`)「そうだ。あれが人間をヴォイド化させるウイルスみたいなもんだ。
王が箱に願って作り出した。ただ人間を苦しませたいってだけの理由でな」
( ・∀・)「とんでもないサド野郎だな」
(U'A`)「希望がない時間が終わることなく続くってのが、どれだけ人をおかしくするかよーくわかってたのさ」
モララーは食べ終えた缶詰の空き缶を投げ捨てた。
(U'A`)「両親や友人のこと、心配じゃないか?」
( ・∀・)「うーん……何とも言えない。ろくに思い出せないものを心配するってのも無理があるし」
ジュースを飲み干し、モララーは火を見つめて眉根を寄せた。
( ・∀・)「親も友達もいたはずなんだけどな。
不思議だな、あの子……キュートのことだけはすごく強く記憶に残ってる。
あの柵に腰掛けててさ。確か夕日を眺めてたんだ。手がきれいだった」
(U'A`)「手?」
36
:
ブーン系の名無しさん
:2014/03/23(日) 21:29:11 ID:NuFaU0o.
5.
( ・∀・)「そう。確か……あれ」
モララーは手で右のこめかみを押さえた。
記憶にかかった霧が僅かに晴れ、その奥にあった映像がおぼろに見えた。
( ・∀・)「手。そうだ、彼女の手を覚えてる。確か……僕、顔を怪我してさ、ここんとこ。
それで彼女がハンカチで顔を押さえて……くれて……」
突然、記憶がフラッシュバックする。
友人たち、学園生活、部活、テレビゲーム……だがそんなものは走馬灯のようにおぼろげで、現実感がなかった。
唯一リアリティを伴っているのは、彼女の存在と、その手だけ。
( ・∀・)「手だ。彼女の手……」
眼を閉じると、まぶたの裏側がチカチカする。
ドクオがからかうように言った。
37
:
ブーン系の名無しさん
:2014/03/23(日) 21:31:39 ID:NuFaU0o.
6.
(U'A`)「要するに変態ってことだろ」
(;・∀・)「何でそうなる?!」
(U'A`)「手フェチの変態」
(#・∀・)「うるせー、バカ! 人の思い出をおちょくりやがって」
ふてくされたモララーはそっぽを向き、ベンチで毛布にくるまって横になった。
しばらくしてから、彼はつぶやいた。
( ・∀・)「お前は僕が誰だか知ってるのか?」
(U'A`)「かもな」
( ・∀・)「ちぇ、そればっかりだな」
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
翌朝、モララーは寒さで目を覚ました。
荷物をまとめて町に出ると、改めてその様相を目の当たりにし、ため息を漏らした。
38
:
ブーン系の名無しさん
:2014/03/23(日) 21:33:51 ID:NuFaU0o.
7.
( ・∀・)「すごいな、こりゃ」
ぞっとするような静けさに満ちた町は、おおむね原型を保っている建物が多いが、一部は完全に破壊されてガレキになっていた。
いつかテレビで見た、戦場になった町のようだ。
( ・∀・)「本当に誰もいないんだな」
(U'A`)「ヴォイドに気をつけろ。あいつら、ほとんど気配がしないからな」
今のところ姿を見せないが、地面のところどころに黒い液体が溜まりを作り、その影を感じさせた。
放置された車の合間をぬって大通りに出ると、横倒しになった戦車を見かけた。
( ・∀・)「自衛隊……?」
(U'A`)「何でも願いが叶う奴に勝てるわけがなかったな」
( ・∀・)「ん」
鼻先に落ちた白い破片が、たちまち溶けて滴になった。
39
:
ブーン系の名無しさん
:2014/03/23(日) 21:36:49 ID:NuFaU0o.
8.
それを手でこすり、空を見上げる。
( ・∀・)「雪だ……冷えるわけだよ」
ひとりと一匹は死んだ町を歩き続けた。
ヴォイドの襲撃はちらほらあったがいずれも少数で、モララーの剣を受けて散った。
(゚q 。川 ゴボ……
( ・∀・)「……」
首を切り落としたヴォイドは少女で、セーラー服姿だった。
地面に転がった頭部のうつろな眼が、黒い血を流してこちらを見ている。
(U'A`)「同情するな。そいつらはこれでやっと苦しみから解放されたんだ」
( ・∀・)「うん」
食料はほとんど見つからなかったが、あまり腹は減らず、喉の乾きもなかった
40
:
ブーン系の名無しさん
:2014/03/23(日) 21:39:23 ID:NuFaU0o.
9.
にも関わらずモララーの体は活力にあふれ、一日に何十キロも歩いた。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
団地を出て三日目。
相変わらず空は分厚い雲に覆われ、町にはいかなる生物の息吹も感じられない。
そこにはただ廃墟と、荒涼とした風と、絶望に身をよじるヴォイドの影だけがあった。
モララーは顔すら思い出せない少女の存在だけを希望に、ひたすら前進を続けた。
( ・∀・)(全然近づいて来ないなあ……この調子じゃ一週間くらいかかるんじゃないか)
坂道の上でふと立ち止まり、地図と遠くの城とを見比べる。
町を出て郊外の住宅街に入ると、ヴォイドの襲撃が頻繁になった。
( ・∀・)「もうすぐ掲示板に書いてあった避難所だけど……あ、ここだ」
モララーは広大な駐屯地の前で立ち止まった。
41
:
ブーン系の名無しさん
:2014/03/23(日) 21:41:58 ID:NuFaU0o.
10.
避難民たちを収容していたらしく、周囲をぐるりとバリケードに囲まれている。
その奥にプレハブの住居がいくつもあり、ヴォイドたちがあてもなく歩き回っているのが見えた。
(U'A`)「ま、こうなってることは予想がついたな」
( ・∀・)「うん……」
モララーは身を屈め、見つからないように通り過ぎた。
ヴォイドを恐れてはいなかったが、いい加減相手するのにうんざりしていたのだ。
駐屯地からしばらく歩いた時、突然遠くで甲高い銃声が聞こえた。
( ・∀・)「!!」
(U'A`)「基地からだ」
( ・∀・)「誰かがあそこに……?!」
(U'A`)「ヴォイドが銃を暴発させただけだろ。あの中でまともな人間が生き残ってると思うか?」
( ・∀・)「でも、もしかしたら……」
42
:
ブーン系の名無しさん
:2014/03/23(日) 21:44:48 ID:NuFaU0o.
11.
そこで再び、もう一発。
( ・∀・)「やっぱり見に行く!」
(U'A`)「やれやれ」
来た道を駆け戻った。
バリケードを乗り越えて駐屯地に飛び込む。
防水布のテントを迂回して仮設住宅の方に走ると、銃声を聞きつけたヴォイドたちがそちらに向かって殺到していた。
手あたり次第に切り捨てながらそちらに向かう。
( ・∀・)「誰かいるのか?」
返事はなかったが、プレハブの合間を駆け抜ける人影がちらりと見えた。
数え切れないほどのヴォイドがその後を追っている。
(;・∀・)「くそっ、多いな……ん?」
43
:
ブーン系の名無しさん
:2014/03/23(日) 21:48:50 ID:NuFaU0o.
12.
視界の隅を何か大きな影がかすめた。
ドクオがこの時ばかりは犬らしい仕草で鼻を鳴らし、空気中の臭いをかぎ分けた。
(U'A`)「ブージャム・ドールだ」
( ・∀・)「そりゃいったい何……」
言い終わらないうちに、背後にそれが降り立った。
とっさに振り返る。
( <●><●>)ゼエー、ゼエー
マネキンのようにのっぺりした顔の人形が、首を傾げながら不思議そうにこちらを見下ろしていた。
人間の上半身と四本の足を持つ長い胴、両腕は長大な刃という、カマキリに似た姿をしている。
ぜぇー、ぜぇーと喘息のような苦しげな呼吸音を上げていて、目鼻と口からは黒い血があふれていた。
( <●><●>)ゴボッ
44
:
ブーン系の名無しさん
:2014/03/23(日) 21:51:11 ID:NuFaU0o.
13.
(;・∀・)「うわっ!?」
片腕の鎌を振り下ろした。
とっさにかわしたモララーの体を長大な爪がかすめてゆく。
(;・∀・)「こいつは?!」
(U'A`)「ブージャム・ドールっていう、ヴォイドの親玉だ。こいつは〝マンティス〟だったかな。噛まれるなよ」
相手は図体に反して恐ろしく俊敏だった。
猫のような身のこなしで素早く位置を入れ替えながら、鞭のように腕をしならせて攻めてくる。
長い腕に阻まれて防戦一方となり、モララーは徐々に追いつめられていった。
(;・∀・)「クソッ、こいつはひと味違うな」
息を切らせながら、間合いを取って構え直す。
その時、背後であのゲロが喉に詰まったような音がした。
45
:
ブーン系の名無しさん
:2014/03/23(日) 21:54:40 ID:NuFaU0o.
14.
振り返った瞬間、忍び寄った自衛隊員のヴォイドが後方から飛びついてきた。
(゚q 。)ゴボゴボ
( ・∀・)「うわ、やば……」
何とかお互いの相手に剣を割り込ませたものの、その隙を突いてマンティスが鎌を横薙に払って来た。
( <●><●>)
(;・∀・)「クソッ!!」
とっさに伏せてかわすと、ヴォイドのマシンガンを持つ手を掴んだ。
引き金を引いてマンティスの顔面に弾丸を浴びせかける。
( <●><●>)「!!」
ひるんだところでヴォイドを引きはがして斬り捨て、返す刀でマンティスに一刀を浴びせる。
相手の右腕が跳ね、顔面から胸にかけて銀光が一閃した。
46
:
ブーン系の名無しさん
:2014/03/23(日) 21:57:50 ID:NuFaU0o.
15.
真っ黒な血が吹き出し、相手は凄まじい金切り声を上げた。
( <●><●>)ギャアアアアア
( ・∀・)「どうだ……あっ」
左の鎌の切っ先が伸び、モララーの肩に突き刺さった。
そのまま建物の壁に押しつけられる。
(;・∀・)「うっ!?」
( <●><●>)
すぐさま相手は噛みつきにかかってきた。
耳まで裂けた口が開かれ、上下にびっしり並んだ乱杭歯が覗く。
とっさに剣の柄を噛ませて防いだが、凄まじい怪力で迫ってきた。
(#・∀・)「この、野郎……!!」
47
:
ブーン系の名無しさん
:2014/03/23(日) 21:59:40 ID:aw/jJTGM
支援!
48
:
ブーン系の名無しさん
:2014/03/23(日) 22:02:25 ID:NuFaU0o.
16.
( <●><●>)
もう目と鼻の先に真っ黒な口がある。
(;・∀・)「うああああ畜生―――!!」
相手が柄ごと口を閉ざそうとした時、誰かがモララーの頭の後ろに腕を滑り込ませ、肩を組むような格好になった。
川 ゚ -゚)「動かないで!」
( ・∀・)「?!」
ぴったりモララーの隣にくっつくと、誰かはマンティスの口に銃身の短いショットガンを突っ込んだ。
銃声が轟音を上げる。
一発で上顎の半分が吹っ飛んだ。
( <●>;; ;; #)グオ……
川#゚ -゚)「くたばれ!」
49
:
ブーン系の名無しさん
:2014/03/23(日) 22:04:40 ID:NuFaU0o.
17.
すぐにもう一丁のショットガンを抜いて更に一発を食らわせると、完全に首から上がなくなった。
マンティスはゆっくりと右側に傾ぎ、倒れた。
(;・∀・)「うおお、耳が! キーンて……」
モララーは耳を塞ぎながら隣を振り返った。
髪の長い女の子で、分厚いパーカーの上に弾帯を二重に巻いている。
腰に巻いたガンベルトにはショットガンが差してあった。
( ・∀・)「君は……?」
川 ゚ -゚)「ここを出るのが先。ついてきて」
残りのヴォイドたちがこちらの様子を窺っている。
彼女についてモララーは走り出した。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
50
:
ブーン系の名無しさん
:2014/03/23(日) 22:06:26 ID:NuFaU0o.
18.
追撃を振り払い、ふたりと一匹は町に出た。
モララーは途中彼女に話しかけたが、彼女は「ここは危ないから」と言っただけだった。
コンクリートの壁に囲まれた貸しコンテナ倉庫にまでやってくると、彼女は門の隣にあるドアの鍵を開けて中に入った。
そこでようやく一息ついた。
川 ゚ -゚)=3「ふーっ! 死ぬかと思った」
( ・∀・)「君は?」
川 ゚ -゚)「わたしはクー」
よく見るとモララーと同い年くらいだ。
川 ゚ -゚)「強いんだね、驚いたよ。あなたは?」
( ・∀・)「モララー」
川 ゚ -゚)「肩の怪我、大丈夫?」
モララーは言われて初めて、マンティスの鎌を受けたことを思い出した。
51
:
ブーン系の名無しさん
:2014/03/23(日) 22:09:22 ID:NuFaU0o.
19.
ぎょっとして触れるが、傷はない。
服には血がついているにも関わらずだ。
(;・∀・)「ん……?! いや、服だけだったみたい」
川 ゚ -゚)「そっか、良かった。医療品があんまりないから」
奥へと歩いてゆく。
そこはひとつの町になっていた。
積み上げられたコンテナに足場と階段があり、それぞれが住居や倉庫として使われているようだった。
人々がこちらをうかがっている。
( ^ω^)「……」
( ・∀・)「どうも、こんちは」
( ^ω^)
階段に座っていた男に挨拶をしたが、返事はなかった。
52
:
ブーン系の名無しさん
:2014/03/23(日) 22:12:43 ID:NuFaU0o.
20.
無気力によどんだ目はモララーを見ているようでいて、どこも見ていない。
( ・∀・)「……?」
川 ゚ -゚)「その人たちはいいんだ。ほっといて」
クーはコンテナのひとつにモララーを案内した。
ランプの明かりを付け、ガンベルトを外して壁にかける。
それからぱんぱんに膨らんだリュックを下ろし、中身を机の上に並べ始めた。
ほとんどは食料で、その他燃料、銃弾、医療品など雑多な物資が山を成す。
川 ゚ -゚)「外で生きてる人間なんか久しぶりに見た」
( ・∀・)「僕は初めて見たよ」
川 ゚ -゚)「座ったら?」
それもそうだとモララーは荷物を置き、壁に取り付けられたベッドに腰を下ろした。
彼女は彼が壁に立てかけた剣を見た。
53
:
ブーン系の名無しさん
:2014/03/23(日) 22:16:18 ID:NuFaU0o.
21.
川 ゚ -゚)「剣を振り回す人なんて始めて見たけど。どこから来たの?」
( ・∀・)「丘の上の団地。知ってる?」
彼女は目を見開いた。
川;゚ -゚)「あのヴォイドの巣から?! よく生きてたね」
( ・∀・)「まあね。えっと……どう説明したもんやら」
ちらりとドクオを見下ろした。
(U'A`)「ありのままを話したらどうだ?」
戦利品を整理していたクーの手が止まった。
目をぱちくりさせながらドクオを見下ろす。
川 ゚ -゚)「今……あなた、何か言った?」
54
:
ブーン系の名無しさん
:2014/03/23(日) 22:20:48 ID:NuFaU0o.
22.
( ・∀・)「ん? ああ、えっと、こいつは……」
(U'A`)「犬も喋るさ、こんな世の中ならな」
彼女は驚きのあまり椅子から立ち上がり、気味悪げにドクオを見た。
川;゚ -゚)「何、それ……ヴォイドの仲間じゃないよね?」
( ・∀・)「実のところ、僕もよくわかんないんだよね。まあ、こいつはとにかくこういうやつなんだ」
(U'A`)「そういうことだ」
川;゚ -゚)「そ、そう……そっか」
彼女が椅子に座り直すと、今度はモララーが質問を始めた。
( ・∀・)「君はずっとここにいるの?」
川 ゚ -゚)「うん。終末戦争からずっと」
( ・∀・)「ひとりなの? つまり……家族とかは?」
川 ゚ -゚)「ううん。父さんと弟と一緒。父さんは……去年、食べ物を探しに行って、そのまま戻って来なかった」
55
:
ブーン系の名無しさん
:2014/03/23(日) 22:24:29 ID:NuFaU0o.
23.
( ・∀・)「そっか。ごめん」
川 ゚ -゚)「弟はブージャム・ドールに連れ去られた」
( ・∀・)「さらわれた?」
彼女はうなずいた。
川 ゚ -゚)「何のためかは知らないけど、時々生け捕りにして人をさらっていくの。
ヴォイドにするわけでも、殺すんでもなく。
その時、父さんがいなくて……わたし、どうすることもできなかった」
( ・∀・)「さっきのあいつに……?」
川 ゚ -゚)「いや、頭がふたつある奴だった」
(U'A`)「王が作ったブージャム・ドールは百体いるんだ。そのうちの何体が今でも動いてるかはわからんが」
川 ゚ -゚)「ちょっと仕事があるんだ。そっちであなたのことをもっと話して」
クーは荷物をまとめて席を立ち、ガンベルトを肩に担いでコンテナを出た。
56
:
ブーン系の名無しさん
:2014/03/23(日) 22:26:48 ID:NuFaU0o.
24.
隣のコンテナに移動し、ドアの鍵を開く。
彼女に続いてモララーが中に入ろうとしたとき、後ろでギシッというロープがきしむ音がした。
( ・∀・)「あ……!」
振り返ったモララーは、思わず声を上げた。
向こうの足場から首にロープをかけた男が飛び降りたところだった。
体を激しく痙攣させながら、ゆらゆらとぶら下がっている。
( ω )
(;・∀・)「自殺……?」
川 ゚ -゚)「またか」
クーはうんざりした口調でつぶやいた。
川 ゚ -゚)「誰が片付けると思ってるんだ、まったく」
57
:
ブーン系の名無しさん
:2014/03/23(日) 22:28:56 ID:NuFaU0o.
25.
( ・∀・)「よくあるの?」
川 ゚ -゚)「感じない? この臭いっていうか、空気」
( ・∀・)
他の住人たちは、大して興味もなさそうにぶら下がっている男を見ている。
J( 'ー`)し
/ ,' 3
(,,゚Д゚)
彼らがヴォイドと同じ目をしていることに、モララーは今更気付いた。
絶望が蔓延し、誰もが無感覚で無関心になっている。
(U'A`)「まあ、正気を保つのが難しい世の中だしな」
( ・∀・)「……」
58
:
ブーン系の名無しさん
:2014/03/23(日) 22:30:41 ID:NuFaU0o.
25.
( ・∀・)「よくあるの?」
川 ゚ -゚)「感じない? この臭いっていうか、空気」
( ・∀・)
他の住人たちは、大して興味もなさそうにぶら下がっている男を見ている。
J( 'ー`)し
/ ,' 3
(,,゚Д゚)
彼らがヴォイドと同じ目をしていることに、モララーは今更気付いた。
絶望が蔓延し、誰もが無感覚で無関心になっている。
(U'A`)「まあ、正気を保つのが難しい世の中だしな」
( ・∀・)「……」
59
:
ブーン系の名無しさん
:2014/03/23(日) 22:33:54 ID:NuFaU0o.
26.
コンテナに入った。
見慣れない道具がテーブルに並べられている。
( ・∀・)「これは?」
川 ゚ -゚)「父さんはリロードベンチって言ってた」
彼女は戦利品の弾層を取り出し、一発ずつ弾丸を取り出した。
慣れた手つきで道具を使って弾丸を分解し、弾頭、薬莢、弾薬、雷管に分ける。
モララーはテーブルに置いてあった、単発式のショットガンを手に取った。
( ・∀・)「これ、もしかして手作り?」
川 ゚ -゚)「そう」
短く切った鉄パイプに、木製のストックを配管テープで固定しただけのものだ。
クーはパイプの尻の部分のねじ蓋式のキャップを外して見せた。
キャップには小さな穴が開いていて、そこに釘が差し込んである。
60
:
ブーン系の名無しさん
:2014/03/23(日) 22:36:23 ID:NuFaU0o.
27.
川 ゚ -゚)「この釘が撃針。雷管を叩くやつね」
コの字型の金具がゴムで固定してあり、親指で持ち上げて弾くと、金具がかちんと釘の頭を叩いた。
川 ゚ -゚)「父さん、戦前は鉄工所に勤めてた技師だったから。こういうの得意だったんだ」
モララーは弾をひとつ手に取った。
厚紙の筒に火薬と雷管、散弾を詰め込んだもので、湿気らないようにグリースを塗りたくってある。
( ・∀・)「みんな手作りなんだ」
川 ゚ -゚)「ちゃんとした弾はもうとっくに尽きちゃったから。
自衛隊の7.62mm弾を分解してショットシェルに作り直してるの」
( ・∀・)「なぜそのまま使わないの? 銃を見つけてくればいいじゃないか」
川 ゚ -゚)「オートマチックの銃はちゃんと整備しとかないとすぐダメになっちゃうんだけど、わたしはそんなの出来ないし。
それにヴォイドにはほとんど効かないから」
(U'A`)「人間なら誰だって撃たれたら痛みで動けなくなるが、あいつらはそういうのがないからな」
61
:
ブーン系の名無しさん
:2014/03/23(日) 22:38:43 ID:NuFaU0o.
28.
テーブルに手をかけて後ろ立ちになったドクオが、パイプの臭いを嗅ぎながら言った。
(U'A`)「ちまちま穴を開けるより、吹っ飛ばす方が確実ってこった。ところでこれは?」
川 ゚ -゚)「パイプ爆弾だよ」
彼女はそれを手に取った。
25センチほどの長さのパイプにテープで大量の釘が巻きつけられ、導火線が伸びている。
川 ゚ -゚)「火をつけると、爆風がこの釘を四方八方に撒き散らすってわけ」
(;・∀・)「すげえな……」
川 ゚ -゚)「手伝ってくれたら夕食を奢るけど」
( ・∀・)「やるよ」
モララーは弾丸の弾頭を鍋で溶かして散弾を作る仕事を任された。
溶けた鉛を型に流し込み、パチンコ玉よりやや小さいくらいの玉をたくさん作った。
62
:
ブーン系の名無しさん
:2014/03/23(日) 22:40:46 ID:NuFaU0o.
29.
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
日がとっぷり暮れると作業が終わった。
モララーが外に出て火を起こしていると、クーが食糧倉庫から大きな瓶を持って来た。
瓶詰めした後に丸ごと鍋で熱して滅菌した保存食だ。
川 ゚ー゚)「とっておきのビーフシチュー」
(*・∀・)「おお、牛肉!! すげえ、久しぶりだ」
並んで食事を終えたあと、モララーは興味深げにクーを眺めた。
( ・∀・)「これからどうするの?」
川 ゚ -゚)「君は?」
( ・∀・)「僕は城に行く」
彼女は目をぱちくりさせた。
63
:
ブーン系の名無しさん
:2014/03/23(日) 22:42:19 ID:NuFaU0o.
30.
川 ゚ -゚)「城って……王の!?」
( ・∀・)「そうだ。そこに僕の記憶の手かがりがある気がするんだ」
モララーは自分の事情のあらましを説明した。
( ・∀・)「……ってわけ。僕は自分の記憶を取り戻したいんだ」
川 ゚ -゚)「それだけ?」
( ・∀・)「え?」
川 ゚ -゚)「何でも願いが叶う箱の話は聞いたことある。王が持ってるって。
何でもだよ? それを手に入れたら、やりたいこととかないの?」
モララーは考え込んだ。
( ・∀・)「うーん……ちょっと思いつかないな。
僕は世界の王とか、億万長者になんかなっても仕方ないし。
もっとさ、欲しいものは別にあるんだ」
64
:
ブーン系の名無しさん
:2014/03/23(日) 22:44:28 ID:NuFaU0o.
31.
川 ゚ -゚)「それは?」
モララーはキュートのことを話した。
( ・∀・)「不思議だよね。家族とか、友人のことはほとんど記憶になくて、夢みたいなのに。
なぜか彼女のことだけは本当に……本当に、僕の一部だったって気がするんだ」
川 ゚ -゚)「……ふーん」
クーは「変な奴」というふうにモララーを見た。
( ・∀・)「君はどうするの?」
川 ゚ -゚)「同じ」
( ・∀・)「え?」
川 ゚ -゚)「今日で必要なぶんの物資が集まったから、城に行く」
( ・∀・)「もしかして、弟さんを助けに……?」
川 ゚ -゚)「そう」
65
:
ブーン系の名無しさん
:2014/03/23(日) 22:47:48 ID:NuFaU0o.
32.
(U'A`)「ブージャム・ドールが人間を城に連れ去っているという噂を信じてるのか?」
川 ゚ -゚)「うん」
彼女はきっぱりと言った。
川 ゚ -゚)「あの子だけがわたしの生き甲斐なんだ」
(U'A`)「生きてるとは思えんがな」
川 ゚ -゚)「それでも行かなきゃ。だって……あの子を諦めたとして、それで、明日から何をすればいいの。
何のために生きていく?」
ちらりと、幽霊のようにこちらを見ている他の住人たちに目をやる。
川 ゚ -゚)「わたしはあんなふうになりたくない」
( ・∀・)「……」
たき火の炎がぱちんとはぜた。
66
:
ブーン系の名無しさん
:2014/03/23(日) 22:50:26 ID:NuFaU0o.
33.
( ・∀・)「そういうことなら、お互いに協力しようよ」
川 ゚ー゚)「いいよ。君、けっこう強いみたいだし」
ふたりは握手を交わした。
( ・∀・)「改めてよろしく、クー」
川 ゚ -゚)「こちらこそ、モララー。と、ワンちゃん」
(U'A`)「ドクオだ。名前くらい覚えろ」
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
翌日。
リュックを背負ったクーは装備を点検した。
体の前で交差するようにたすきがけにした二本の弾帯には約八十発の弾丸があり、更にバッグには予備がある。
腰に巻いたガンベルトには手作りのショットガンが六丁と、パイプ爆弾が二つ。
家を出る前、ふとテーブルの上の写真立てを手に取った。
67
:
ブーン系の名無しさん
:2014/03/23(日) 22:51:53 ID:NuFaU0o.
34.
自分と弟、それに両親が写っている。
川 ゚ -゚)「行ってきます。必ず帰るから」
彼らに囁くと、コンテナを出た。
川 ゚ -゚)「行こう」
( ・∀・)「よし、出発だ!」
つづく……
68
:
ブーン系の名無しさん
:2014/03/23(日) 22:53:49 ID:NuFaU0o.
二話目が終わったとこでもはや眠気が限界
すまん、残りは明日だ。場外乱闘になっちまうが
ここかVIPかどっちになるかわからんが
69
:
ブーン系の名無しさん
:2014/03/23(日) 23:06:39 ID:aw/jJTGM
乙乙!!面白かった!!
70
:
ブーン系の名無しさん
:2014/03/24(月) 01:17:34 ID:???
乙 ぶっさいくな犬もいたもんだww
続きも楽しみにしてる
71
:
ブーン系の名無しさん
:2014/03/24(月) 11:54:34 ID:Hf7f3q6s
真っ昼間だけど昼休み中に覗いてる人とかもいるかも知れんし投下してくぞウラー
第三話だ!
72
:
ブーン系の名無しさん
:2014/03/24(月) 11:57:10 ID:Hf7f3q6s
1.
モララーとクー、ドクオのふたりと一匹は果てしない道のりを歩き続けた。
長年を苦節と共に過ごしてきた者の辛抱強さで、クーは文句ひとつこぼさずモララーについてきた。
コンテナの町を出て二日が過ぎると、郊外を出て再び都会に入った。
( ・∀・)「うわ、でっけえ! やっと近づいて来たなー」
電柱によじ登ったモララーは、遠くに見える城を眺め、感慨深げにつぶやいた。
(U'A`)ヒート・オブ・ザ・ソウルのようです
第三話 君の手
73
:
ブーン系の名無しさん
:2014/03/24(月) 12:01:30 ID:Hf7f3q6s
2.
電柱を滑り降りると、下でクーとドクオが待っていた。
クーは壊れた自動販売機の奥を手で探っている。
川 ゚ -゚)「どうだった?」
( ・∀・)「あと三日くらいかかると思う。そっちは?」
川 ゚ -゚)「ダメ、空っぽ」
自販機から手を抜いたクーは不満げに首を振った。
川 ゚ -゚)「水がなくなりそう。もう一日も持たないよ」
(U'A`)「あそこにありそうだが」
ドクオは鼻先を集合住宅の方に向けた。
一部屋何千万円という類の高級マンションで、比較的きれいなままだ。
( ・∀・)「行ってみよっか」
74
:
ブーン系の名無しさん
:2014/03/24(月) 12:04:35 ID:Hf7f3q6s
3.
川 ゚ -゚)「わたしは反対だな。ああいう狭いとこは逃げ場がないから避けろって父さんが言ってたし」
( ・∀・)「大丈夫、僕がついてるさ」
モララーがそちらに向かうと、クーも仕方なく同意した。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
途中、大通りに面したビル群に、巨大なペイントアートが描かれているのを見かけた。
通りの端から端までを使い、絵巻のように何かの物語を成している。
( ・∀・)「これは……?」
川 ゚ -゚)「王のお話だよ。誰が描いたのかな」
( ・∀・)「お話?」
(U'A`)「ちょうどいい機会だ、話してやる」
ドクオはふたりを先導し、ビルの前をゆっくりと歩きながら順を追って語り始めた。
75
:
ブーン系の名無しさん
:2014/03/24(月) 12:09:07 ID:Hf7f3q6s
4.
最初の絵は見慣れない衣服を身につけた男たちが、光の中から小箱を取り出しているシーンだった。
(U'A`)「遠い昔、まだ神と人との境目が曖昧だった時代、時の神官たちは自らの繁栄を盤石なものにするべく、願望機……
つまり、例の何でも願いが叶う箱を作り出した。
それは空前絶後の超文明をもたらしはしたが、やがて彼らは自らの欲望のために願望機を使うようになり、結局は自滅した」
次のシーンではゴミ捨て場のような場所に、みすぼらしい格好の男が屈み込み、箱を拾い上げている。
(U'A`)「箱は果てしない年月の中で次々に持ち主を変え、紆余曲折を経てとある男の手に渡った。
彼は貧しく、みにくい姿をしていた。
両親を含めた誰もが彼の姿と愚鈍さを軽蔑し、嫌っていた」
男が手にした箱から、光とともに様々なものが飛び出す。
宝石、金、美女、車、武器とブージャム・ドールの兵隊たち。
76
:
ブーン系の名無しさん
:2014/03/24(月) 12:12:29 ID:Hf7f3q6s
5.
(U'A`)「当然ながら、男は自らの願いを片っ端から叶え始めた。
最初はせいぜい金や、美貌を手にするという程度だった。
巨万の富を得、家来を従え、毎週のように自分の顔を変えるっていうようにな。
だが彼は徐々にそのねじくれた本性を現し始めた。
この箱を持つ自分が世界の頂点に立つのが当然だと考えたのだ」
次のシーンでは、王様の格好をして王冠をかぶった男が、女性を前に箱を掲げている。
(U'A`)「世界の王となった彼はかつて恋した女性を振り向かせようと、ありとあらゆる贈り物をした。
だが彼女が心を開くことはなかった。男の腐った本性に気付いていたからだ。
王は激怒した」
世界各国の都市に侵攻するブージャム・ドールとヴォイドたち。
77
:
ブーン系の名無しさん
:2014/03/24(月) 12:16:30 ID:Hf7f3q6s
6.
(U'A`)「王は女が思い通りにならない鬱屈を紛らわすかのように、残虐な行為に取り憑かれるようになった。
慰みに戦争を始めて遠くの国を滅ぼし、人々を思うがままに拷問し、処刑した。
女は耐えきれず、とうとう一身を捧げると誓ったが、王の心が満たされることはなかった」
荒れ果てた町と、がれきの城の上に立つ王の姿で、この一連の物語は終幕となっている。
(U'A`)「文明はたった一人の男によって滅ぼされ、この世界に残されたのはヴォイドとブージャム・ドールだけとなった。
今となっては王とその女がどうなったのか知る者はいない」
( ・∀・)「お前、何でそんなに詳しいんだ?」
川 ゚ -゚)「わたしは戦後生まれだけど、みんな知ってることだよ。語り継がれてきた有名な話だし。
これがみんなここ数十年間のこと」
クーが付け足した。
78
:
ブーン系の名無しさん
:2014/03/24(月) 12:19:27 ID:Hf7f3q6s
7.
川 ゚ -゚)「王は世界地図にダーツを投げて、刺さった場所に十日間の猶予を与えて、それからブージャム・ドールを引き連れて
攻め込んでたんだって。
暇つぶしという以外に、何の意味もなしに」
モララーは絵の中の王を凝視した。
背が低く、くせっ毛で、潰れた鼻をしている。
いかにもコンプレックスの塊で偏屈といったふうだ。
( ・∀・)「何でも願いが叶うようになったら、みんなこうなっちゃうのかな」
(U'A`)「人間なんてそんなもんだ。天井知らずで底なし沼ってやつさ」
( ・∀・)「僕はそんなことしないよ。今でもけっこう満足だしさ」
歩きながら、ふとクーが言った。
川 ゚ -゚)「モララーはその何とかって言う女の子のこと、どのくらい憶えてるの?」
79
:
ブーン系の名無しさん
:2014/03/24(月) 12:22:54 ID:Hf7f3q6s
8.
( ・∀・)「それが全然。こないだ話したことでほとんど全部なんだ。
日暮れの見晴台で柵に座ってたことと、あと、手がきれいだったってことだけ。
不思議だよね、顔はまったく思い出せないのにさ」
川 ゚ -゚)「……ふーん」
( ・∀・)「何でだろうな。彼女が僕の顔に触れたとき、すごく嬉しかった」
川 ゚ -゚)「恋人だったとか?」
( ・∀・)「わかんない。けど大事な人だったとは思う」
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
マンションについた。
エントランスの案内板によると一階層につき四世帯、十二階建てとのことだった。
オートロックは開かれたままで、奥に警備員の詰め所がある。
( ・∀・)「お邪魔しますよっと」
80
:
ブーン系の名無しさん
:2014/03/24(月) 12:29:04 ID:Hf7f3q6s
9.
ヴォイドは見あたらず、床にそのしるしもなかった。
一階はエントランスと駐車場で、住居は二階からになっている。
ふたりは非常階段を上がり、最初に目に付いたドアをこじ開けて中に入った。
川 ゚ -゚)「……?」
モララーに続いて中に入ろうとしたクーがふと振り返った。
( ・∀・)「どうかした?」
川 ゚ -゚)「ううん、何でもない」
クーは台所に行き、モララーはクローゼットに衣料を探しに行った。
歩き詰めで靴がぼろぼろに擦り切れていたので、そろそろ新しいのが必要だった。
( ・∀・)「おお、これアルマーニじゃない?!」
(U'A`)「何しに来たんだ、お前?」
81
:
ブーン系の名無しさん
:2014/03/24(月) 12:31:12 ID:Hf7f3q6s
10.
( ・∀・)「まあまあ、たまにはいいじゃんか。すごいな、この靴。鮫皮だよ!」
さっそく今の服を脱ぎ捨て、着込んでみた。
サイズはぴったりだった。ロレックスもあったのでそれを付け、姿見の前で気取ってみる。
(*・∀・)「おお、イケメン! どうよ、ジョニー・デップみたいじゃね?」
(U'A`)「……」
( ・∀・)「いや、マフィア映画のロバート・デ・ニーロのようなシブさも持ち合わせているな、これは」
(U'A`)「ああ、今のお前ならヴォイドも一発でホレちまうだろうよ」
呆れたドクオは投げやりに言ったが、モララーは気にした様子もなく、ニヤニヤしている。
色んなポーズを取ったり、ネクタイの色を変えてみたり。
川 ゚ -゚)「水はないな、ブランデーがあったけど……何やってんの?」
( ・∀・)「かっこいいだろ?」
82
:
ブーン系の名無しさん
:2014/03/24(月) 12:33:36 ID:Hf7f3q6s
11.
きっとドキッとするに違いないと思っていたが、クーは呆れた顔をしただけだった。
川 ゚ -゚)「ああ……うん」
( ・∀・)「ドレスもあったよ、ほら」
モララーはベッドに投げ出した青いイブニングドレスを彼女に差し出した。
彼女はいぶかしげにドレスとモララー、両方を交互に見た。
川 ゚ -゚)「どうしろっての?」
( ・∀・)「きっと君に似合うと思って」
川;゚ -゚)「よしてよ」
( ・∀・)「そんなこと言わずにさ、ほら、出てるから」
川 ゚ -゚)「あ……ちょっと!」
モララーは彼女にドレスを押しつけ、部屋を出た。
ドアに背をもたれかけさせながら、モララーはドクオにニヤついた。
83
:
ブーン系の名無しさん
:2014/03/24(月) 12:35:58 ID:Hf7f3q6s
12.
(*・∀・)「彼女、イイよな。あの影があるとこがさー」
(U'A`)「ああ、ヴォイドの巣でパーティごっこしたくなるくらいステキだよ」
( ・∀・)「お前が言ったことだろ、人はパンだけ食って生きてるわけじゃないって。
これも魂の熱量を維持するのに必要なことさ」
(U'A`)「何でも自分に都合よく取りやがって。羨ましくなるくらい脳天気だな、お前」
部屋の中から「いいよ」という声がした。
ワクワクしながら入ると、ドレスを身につけたクーが所在なげに突っ立っていた。
モララーが凝視すると、恥ずかしげに視線をそらす。
川 ゚ -゚)「……」
(*・∀・)「似合うよ! すっごくきれいだ」
川;゚ -゚)「よしてよ、からかわないで」
(*・∀・)「嘘じゃないよ」
84
:
ブーン系の名無しさん
:2014/03/24(月) 12:37:31 ID:Hf7f3q6s
13.
モララーは真剣に言った。
真っ白な肌にシルクのドレスが映えている。
川;゚ -゚)「ハイヒールなんか初めて履いた」
( ・∀・)「手袋も付けてみたら?」
川 ゚ -゚)「え?」
( ・∀・)「確かこのへんにさ……あった、これ」
モララーはクローゼットをあさり、肘の上まである手袋を見つけた。
彼女の手を取る。
川 ゚ -゚)「あ……」
火傷と切り傷の跡、それに長年の風雪にさらされて荒れ果てた手だった。
彼女は真っ赤になって手をふりほどき、モララーを部屋の外に押し出した。
85
:
ブーン系の名無しさん
:2014/03/24(月) 12:39:33 ID:Hf7f3q6s
14.
川;゚ -゚)「はい、着せかえごっこはおしまい! 出てって!」
( ・∀・)「え、あ、うん」
ばたんとドアが閉じた。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
お互いに着替え、探索に戻った。
部屋をひとつずつ調べてゆき、四階にまで上がった。
収穫は今のところ高そうなトレーニングシューズに、ブランデー、牡蛎の薫製の缶詰、食塩。
油断なく銃を構えたクーは妙に無口で、どことなく怒っているように見える。
モララーはそっとドクオにささやいた。
( ・∀・)「あの子、なに怒ってんだろ」
(U'A`)「お前はバカなのか?」
(;・∀・)「な……何が?」
86
:
ブーン系の名無しさん
:2014/03/24(月) 12:41:41 ID:Hf7f3q6s
15.
(U'A`)「キュートの話をしただろ、彼女に。手がきれいだったって」
モララーは不思議そうに首をひねった。
( ・∀・)「それが?」
(U'A`)(ほんとにバカだなこいつ)
川 ゚ -゚)「モララー」
( ・∀・)「ん!? なに」
ぎょっとして振り返ると、彼女は背後に顎をしゃくった。
川 ゚ -゚)「尾けられてる」
( ・∀・)「え? マジ?」
川 ゚ -゚)「うん、この建物に入ってからずっと。そろそろ切り上げて出たほうがいい」
( ・∀・)「まだ水が見つかってないよ」
川 ゚ -゚)「別のところで探そう」
87
:
ブーン系の名無しさん
:2014/03/24(月) 12:43:42 ID:Hf7f3q6s
16.
( ・∀・)「わかった。じゃ、次の部屋で最後にしよう」
彼女は同意し、ふたりと一匹は中に入った。
キッチンに入ってすぐ、ウォータークーラーが目に付いた。
タンクは空っぽだが、戸棚をあさると未開封の予備が見つかった。
十リットルはあるだろう。
(*・∀・)「おお、グレート! これで当分困らないね」
川 ゚ -゚)「よし、出よう」
部屋から出ようと玄関まで行ったとき、突然、ドアを突き破って何かが飛び出してきた。
先端に鋭利な穂先を持つサソリの尻尾のようなものが、モララーの胴に巻き付いた。
( ・∀・)「!?」
すぐにドアごと蝶番を引き千切って引っ込み、廊下を抜けて非常階段へ飛び込んでゆく。
88
:
ブーン系の名無しさん
:2014/03/24(月) 12:45:48 ID:Hf7f3q6s
17.
モララーは何が何だかわからないまま引きずられてゆき、最上階に入ると同時に投げ出された。
(;・∀・)「ぐえっ?!」
床を転がり、目が回るのをこらえながら立ち上がって相手と対峙する。
サソリのような姿をしたブージャム・ドールで、先端に穂先のある長い尻尾を持っていた。
( <●><●>)
そのとき、モララーは手の中が空っぽなことに気付いた。
剣をどこかで落としたらしい。
(;・∀・)「くそっ、やべえ!!」
( <●><●>)ゼェー、ゼェー
振り下ろされた尻尾を間一髪でかわす。
穂先がタイルの床をえぐった。
89
:
ブーン系の名無しさん
:2014/03/24(月) 12:47:05 ID:Hf7f3q6s
18.
( <●><●>)ゴボッ
( ・∀・)「食らえ!!」
ベルトに差したサバイバルナイフを抜き、隙を突いて相手の顔面に向かって投げつけた。
銀光が閃き、左目に直撃する。
( <●><×>)
しかし相手はまったく怯まず、モララーの体を腕ごと両方のハサミで押さえつけた。
(;・∀・)「ぐぐぐ……」
( <●><×>)
万力のような力で締め上げられ、骨が軋む。
巻き上げられた尻尾の穂先が、モララーの眉間に狙いを定めた。
( ・∀・)(死ぬ……)
90
:
ブーン系の名無しさん
:2014/03/24(月) 12:49:04 ID:Hf7f3q6s
19.
体感時間が圧縮され、スローモーションのように見える。
あの子に二度と会えなくなる……
(;・∀・)「ああああ!!」
その瞬間、彼の肉体は限界を超えて稼動した。
両腕でハサミを開くと、逆にそれを掴んで相手の体を振り回し、背後の壁に叩き付けた。
ブージャム・ドールはコンクリートの壁を突き破り、隣の部屋に転がり込んだ。
( <●><×>)「!?」
( ・∀・)「ハァッ、ハァッ」
唖然として自分の両手を見下ろす。
( ・∀・)(何だ、今のパワー……?)
川 ゚ -゚)「モララー!」
91
:
ブーン系の名無しさん
:2014/03/24(月) 12:51:14 ID:Hf7f3q6s
20.
やっと追いついたクーとドクオが姿を現した。
クーが槍投げの要領で剣を投げ渡す。
川 ゚ -゚)「受け取れ!」
( ・∀・)「おっしゃあ」
ブージャム・ドールが立ち上がるのと、モララーがキャッチした剣を振るうのがほぼ同時だった。
( <●><×>)「!!」
( ・∀・)「うおおお!」
胴体を一閃する。
しかし相手はとっさにハサミで胴体を守り、それと引き替えに致命傷を避けた。
モララーに体当たりをかける。
( ・∀・)「うわっ」
92
:
ブーン系の名無しさん
:2014/03/24(月) 12:53:22 ID:Hf7f3q6s
21.
そのまま彼を吹っ飛ばし、ブージャム・ドールはクーに突進をかけた。
( <●><×>)ゼエゼエ
(;・∀・)「クー!」
川;゚ -゚)「くそっ」
彼女はショットガンで散弾を浴びせた。
一発は相手の肩を吹き飛ばし、もう一発が胴体に手を突っ込めるくらいの大穴を開けた。
しかしそれでも勢いを止められなかった。
川;゚ -゚)「うわああああ!!」
( <●><×>)
(#・∀・)「野郎! その子に近付くんじゃねえ!!」
ブージャム・ドールはクーの首筋に噛みついた。
その口からこぼれる黒い血と、彼女の赤い血が混ざってほとばしる。
93
:
ブーン系の名無しさん
:2014/03/24(月) 12:55:16 ID:Hf7f3q6s
22.
川 > -<)「う……」
横に回り込み、モララーはブージャム・ドールの頭を一刀の元に切断した。
すさまじい断末魔を挙げて身をくねらせながら振るった相手の尻尾が、モララーの胴体を貫く。
そのまま壁に叩きつけられ、昆虫標本のように縫い止められた。
( ・∀・)「あ……」
自分の胴体を貫通しているものをぼんやり見下ろした。
全身が痺れ、それから糸が切れたように力が抜けてゆく。
( ∀ )「ごぼっ」
吐き出した血が上着を汚した。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
94
:
ブーン系の名無しさん
:2014/03/24(月) 12:57:23 ID:Hf7f3q6s
23.
モララーはあの団地にいた。
夕暮れ時で、まだ遊び足りない子供たちの笑い声が公園から聞こえる。
家路につく人々が早足に見晴らし台を通り過ぎてゆく。
( ・∀・)「……ん?!」
モララーはそこに立っていた。
頬がなぜか妙に痛む。
( ・∀・)
見晴らし台の柵のところに少女がひとり、腰かけていた。
夕日を浴びて、短く切りそろえた髪も、鉄柵を掴む真っ白な指も、学校の制服も、みんな赤みを帯びて見える。
( ・∀・)(あの娘は……)
彼女が振り返ったが、夕闇が迫りつつある上、逆光になって顔がよく見えない。
95
:
ブーン系の名無しさん
:2014/03/24(月) 12:59:05 ID:Hf7f3q6s
24.
o川* )o「どうしたの?」
( ・∀・)
o川* )o「怪我してるの? 大丈夫……?」
彼女は柵を降り、こちらにやってきた。
ハンカチを取り出し、モララーの頬に押し当てる。
この世の何よりもきれいな手をしていた。
( ・∀・)「君は……」
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
すさまじい苦痛がモララーに覚醒をもたらした。
激しくせき込みながら、あえぎあえぎあたりを見回す。
マンションの廊下だった。
96
:
ブーン系の名無しさん
:2014/03/24(月) 13:01:21 ID:Hf7f3q6s
25.
( ・∀・)「夢……?」
(U'A`)「そうでもないと思うがな」
ドクオの声に、自分の胸を見下ろす。
もはやぴくりとも動かないブージャム・ドールの尻尾の穂先が、そこに突き刺さったままだった。
(;・∀・)「くそ……こっちは現実か」
意識を失っても握ったままだった剣を落とし、両手で穂先を掴んだ。
( ∀ )「うぐ、あああ……!!」
あまりの苦痛に再び意識が飛びかけた。
それでもこらえ、一息に引き抜く。
ズブッ!
(;・∀・)「ぐっ……」
97
:
ブーン系の名無しさん
:2014/03/24(月) 13:04:07 ID:Hf7f3q6s
26.
そのまま床に倒れた。
苦しいのはほんの一瞬だけで、たちまち苦痛が引いてゆく。
モララーは仰向けになり、呆然と自分の腹に開いた穴を見た。
(;・∀・)「なんだ……?」
みるみるうちに肉が盛り上がり、傷が塞がってゆく。
(;・∀・)「どうなってんだよ、これ!?」
(U'A`)「お前は外傷で死ぬことはない。くたばるのは魂の熱量が失われた時だけだ」
( ・∀・)「何てこった……じゃ、マンティスの時も……?」
何がなんだかわからないという顔をしていたが、そこでやっとクーのことを思い出した。
( ・∀・)「はっ! クーは!?」
立ち上がると、床に伏したクーは苦しげなうなり声を上げていた。
98
:
ブーン系の名無しさん
:2014/03/24(月) 13:06:06 ID:Hf7f3q6s
27.
あわてて駆け寄り、抱き起こす。
川 - )「うう……」
(;・∀・)「良かった、生きてる」
(U'A`)「お前が気絶してたのはほんの数秒だ。だがその女が助かるかどうかは微妙なところだな」
( ・∀・)「と、とにかくどっかに寝かせなきゃ」
適当な部屋に入り、ベッドに寝かせて傷の手当てをした。
きれいな水で傷口を洗い流し、消毒液を噴いて包帯を巻く。
川 - )「ゲホッ、ゲエッ!!」
クーが吐き出した胃液には、わずかに黒い血が混じっていた。
( ・∀・)「!!」
(U'A`)「ヴォイドになりかけてる」
99
:
ブーン系の名無しさん
:2014/03/24(月) 13:08:17 ID:Hf7f3q6s
28.
( ・∀・)「どうすればいい?!」
(U'A`)「その女は魂の熱量を失いかけてる。手当をして、呼びかけてやるんだな」
彼女はうわ言のように誰かの名を口にしていいた。
川 - )「ショボン……ショボン」
( ・∀・)「弟のことか。大丈夫、きっと生きてるよ」
川 - )「うう……」
( ・∀・)「きっと、きっと生きてるよ……」
モララーは彼女の手を取り、夜を徹して励まし続けた。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
二日目の朝。
煮沸消毒した包帯を抱えてモララーが部屋に戻ると、クーがベッドで上体を起こしていた。
100
:
ブーン系の名無しさん
:2014/03/24(月) 13:10:29 ID:Hf7f3q6s
29.
川 ゚ -゚)「おはよ」
( ・∀・)「クー!!」
(U'A`)「ツイてたな。流れ込んだ黒い血が少なかったのと、弟の存在に助けられたか」
( ・∀・)「まだ寝てたほうがいい」
無理矢理彼女をベッドに押しつけ、毛布をかけてやる。
川 ゚ -゚)「モララー」
( ・∀・)「ん? なに」
川 ゚ -゚)「聞こえてたよ」
彼女はむき出しの手でモララーの手を握り、ほほえんだ。
川 ゚ー゚)「君がずっと励ましてくれてたこと」
(*・∀・)「ああ、いや……」
川 ゚ -゚)「ありがとう」
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