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家族ゲーム Episode 0

1ちんぱる:2013/06/11(火) 00:02:57
吉本荒野が沼田家にやってくる前のお話を書きたいと思います。
生徒役はAKBメンバーです!

リクエストとかもジャンジャンお待ちしております。

129黒蜜もち:2013/06/23(日) 17:59:23
やっぱ発想力がちがいますね。

続き楽しみです

130ちんぱる:2013/06/23(日) 18:03:27

「はい、罰ゲームね!」
「えぇ〜!」
ジェンガを倒した罰として、優子に科せられたのは“初恋の想い出を語る”だった。
「えっと、初恋は…」
「ちょっと待って!」と吉本が優子の話を止める。
そしてすかさず携帯を取り出すと“ピッ”という音を鳴らしてから「どうぞ!」と言った。

「ちょっ、ちょっと待ってください!先生動画撮ってません!?」
「撮ってないよぉ〜、いいから続きを早く!」
「いや、だって赤いランプがピコピコ光ってるじゃないですかぁ!」
「分かったよ…」と残念そうに携帯をしまう吉本。
「じゃあ、行くよ…私の初恋は…」


自分の部屋にいた珠理奈は悩んでいた。
さっき和也が開いていたページを自分のパソコンで開き、よく見てみると
“吉本荒野は人殺しだ”など“吉本荒野は私の家族を崩壊させた”など書き込みがたくさんあった。
「そんな…先生が、そんなことするわけ…」
信じたくなかった、でも現にこういうサイトがある時点で、そのことが事実であることには間違いなかった。

「あれ、お姉ちゃんは?」
遥香はようやく、友美が家にいないことに気付いた。
「今日は優子ちゃんの家に泊まりに行ってるわよ」と母親が教えてくれた。
「そっか…」
何となくそれが遥香の中で気になった。
そして思わず家を飛び出し、大島家へと向かった。

131ちんぱる:2013/06/23(日) 18:04:14
>黒蜜もちさん
発想力は人並みです(照)

132黒蜜もち:2013/06/23(日) 18:06:00
いえいえヤバいですよ。

尊敬する先輩です。

133ちんぱる:2013/06/23(日) 18:09:54
>黒蜜もちさん

僕の書き方って、ちょっと色んな人の本の書き方を要所要所パクってるので
自分らしさが無いんですよね…

しかも“〜だった”とか“〜した”とかなんか箇条書きみたいになっちゃって、ちょっと苦手です…

134黒蜜もち:2013/06/23(日) 18:13:43
自分らしさなんてどんどんだしてけば良いです。
だから今はそうじゃなくてもいいと思っています。

135ちんぱる:2013/06/23(日) 18:46:02

大島家に向かう途中、遥香は女性とぶつかってしまった。
女性は「イタタタ」とマンガのように倒れている。
「ゴメンなさい!大丈夫ですか?」
「え、ええ…」
「本当にごめんなさい」と頭を下げると、相手から帰ってきたのは予想だにしないことだった。

「もしかして、あなた板野遥香さん?」
「え?」
「大島麻友さんの友達の板野遥香さん?」
彼女がなぜ自分の名前を知っているのか、遥香にはさっぱり分からなかった。


「それで、結局フラれちゃいました…」と過去のエピソードを語り終えると、「はい、いっただき〜!」と吉本が声をあげた。
「ほらぁ!やっぱり撮ってるじゃないですかぁ!」
「人の行動はよ〜く見ないとダメだよぉ〜」とバカにしてくる。
吉本は携帯をしまうフリをして、胸ポケットから音声のみを録音していたのだった。

優子はなんとかして削除しようと、彼の携帯を取ろうとするが、当然吉本も抵抗する。
わちゃわちゃやっていると、友美が突然笑い出した。
「ホント、2人って仲いいんですね」
「えっ!?」

優子は正直驚いていた。
正直、この男のことはよく分からない。
今起きているこの状況でさえ、彼の計算の内なのではないかと、最近思う事がある。
しかし実際、吉本が大島家にやって来てから色んな事が起きた。
見たくもない現実を突きつけられ、避けていた事を無理やり正面から向き合わされた。

どれも優子にとっては苦痛でしかなかったが、もしかするとそれは全て彼が自分のことを思っての行動だとしたら。
優子にとって吉本荒野は、それほど大きな存在になりつつあった。

その吉本は友美と何やら楽しそうに喋っている。
優子の中で何かがモヤモヤとしていた。

136ちんぱる:2013/06/23(日) 20:18:31

しばらく楽しんだあと、「じゃあ俺は帰るな」と吉本は言った。
「え?もう帰るんですか?」
「ちょっとな、用があって」
最近吉本は全然授業をしようとしない。
ほとんど優子に丸投げしている。
しかしそれでも優子の成績は、なぜかグングン伸びていっていたので文句は言えない。

吉本は優子の部屋を出て、リビングに降りて行った。
すると麻里子が自分のパソコンを開き、画面を見つめ続けていた。
「お邪魔しました」と声をかけるまで彼の存在に気付かないくらい、周りのことが見えていなかったのだ。

「ああ、お疲れ様です…」
「どうしました?」
「えっ?」
「何か、元気が無いですけど…」
「そんな事無いですよ」と無理に笑顔を作るも、引きつっているのが自分でも分かった。
吉本はそんな麻里子を見て、ため息を一つつくと、名刺をパソコンの上に置いた。

「困ったことがあったら、ここに連絡してください」
「え、でも…」
「じゃあ、お邪魔しました」
家庭教師は本日の職務をすべて終えた。


「そんな…」
遥香は道ばたでぶつかった女から、思わぬ真相を告げられた。
「それじゃあ、麻友たちは?」
「このままだと、崩壊の糸をたどっていくでしょうね」
「ど、どうしたら止められますか…?」
彼女は動揺を抑えることが出来なかった。

「この事を、彼女たちに伝えて欲しいの。それから…」
女は一枚の紙をカバンから取り出すと、遥香に手渡した。
「これを彼に渡して」
「えっ…」
「ここにすべての真実が書かれてある。だから彼に渡して」
そう言い残し、女は去っていった。

137名無しさん、いらっしゃい!:2013/06/23(日) 20:29:27
ん?

ゆきりんのリストカットにその名言・・・

まさか・・・

138ちんぱる:2013/06/23(日) 20:32:14
>>137の名無しさん
もしかして気付いちゃいました?

139ステージ:2013/06/23(日) 21:57:18
すいません

137は僕ですww

それは桜からの手紙の・・・

140ちんぱる:2013/06/23(日) 21:59:06
>ステージさん
そうでしたか!

そうですよ(笑)。
必死になって探した結果、これに落ち着きました(笑)。

141ステージ:2013/06/23(日) 22:01:19
ちんぱるさん

成程ww

142ちんぱる:2013/06/23(日) 22:07:11

吉本はスーパー銭湯に来ていた。
理由はここのサウナで汗を出すためだ。
週に5回は来ている。

「あっつい…」と一人っきりのサウナで呟くと2人新しい客が入ってきた。
一人は40代ぐらいだろうか会社の課長クラスであろう人物。
もう一人は恐らくその男の部下だろう。

「いやぁ、今日も疲れたな」
「にしても課長、いいんですか?本当に早く帰らなくても」
「いいんだよ、どうせ帰ったって居場所が無いんだ」
「うわっ、それスゴイ寂しいじゃないですか」
「お前な!」と大きな声を出しそうになったが、吉本の存在に気付き男は声を小さくした。

「最近、次男が引き籠ってるんだよ…。まったく、何がしたいのかさっぱり分からん」
「弟さん、いくつでしたっけ?」
「来年で中学3年になる。出来のいい兄貴とはえらい違いだ」

男2人組が出て行った後も、しばらくしてからサウナから出た。
そして水風呂に浸かり、着替えを済ませ、コーヒー牛乳を一気飲みする。
「いいねぇ…」と小さくつぶやいた。

143ちんぱる:2013/06/23(日) 22:21:51

敦子に別れ話を切り出されて以来、潤は完全に骨抜きになっていた。
当然、部下からは“役立たず”、“存在感なし”など影でレッテルを張られまくっていた。

「ただいま…」
「おかえりなさい、ご飯ありますよ」と麻里子が言うものの、テーブルの上に置かれてあったのは近所の弁当屋で売ってある弁当だった。
「いい、今日はもう食べてきた」とウソをつく。
自分のプライドが許さないのだ。
潤はそのまま寝室へと向かった。

麻里子は「そうですか」とだけ言うと、置いてあった弁当をそのままゴミ箱に入れた。
誰にも聞こえぬように、舌打ちも混ぜて。


「じゃあ、“労働三法”とは?」
「えっと…、労働基準法、労働組合法、労働関係調整法!」
吉本は優子に口頭で抜き打ちテストを行っていた。
「正解!いいねぇ〜!」
「やった!」

「見る見るうちに成績もよくなってるじゃんかぁ、よく頑張ったな」と吉本は優子の頭を乱暴に撫でた。
「髪の毛がクシャクシャになっちゃうじゃないですかぁ」と言いながらも、されている本人は嬉しそうだ。
「じゃあ、次な」
「はい、何でも来てください!」
「スゴい自身だな…、じゃあ重複立候補制とは?」
「えっ…」とさっきまでの勢いはどこに行ったのか分からなくなるくらい、優子は固まってしまった。

「どうした?」
「えっと…」とこっそり教科書を覗こうとするものの、吉本は手に持っていたノートで優子の頭を叩いた。
「バカ野郎、カンニングするんじゃないよ!」
「アハハハ…」
「分からないんだな?」と不敵な笑みを浮かべる吉本。
今回のテストにも間違えるとそれなりのペナルティーが科せられることになっていた。

「いや、分かりますよ!分かるんですけど…」
「5!4!3!2!1!」のカウントダウンが余計に優子の頭をグチャグチャにさせた。
「はい、終了〜!」
「待って!あと5秒!」
「ダメ〜!」と腕をクロスさせ、×印を彼女に見せつける吉本。

結局、優子にペナルティーが与えられることになってしまった。

144ちんぱる:2013/06/23(日) 22:22:42
さあ、再び小ネタを挟みましたよ(笑)

どこか分かりますか?

145ステージ:2013/06/23(日) 22:24:39
むむむ・・・


一茂が出とる!

146ちんぱる:2013/06/23(日) 22:29:14
(あまり大声じゃ言えないんですけど…)

正解です!!!!!!!!!(デケえよ声…)

147ステージ:2013/06/23(日) 22:35:45
よかったww

148ちんぱる:2013/06/23(日) 22:40:32

「という訳で、お前にはペナルティを与えないとなぁ」
「えぇ〜!」
吉本はベッドの上に寝転がった。
「う〜ん、何してもらおっかなぁ…」
「あんまり変なのはやめてくださいよ…」と不安になる優子。

吉本から“ペナルティ”や“罰”と言う言葉を聞く度にある事を思い出す。
『俺さ…、人殺したことあんだよ』

優子からの問いに笑いながら「そんなことはしないよぉ!」と答える家庭教師。
天井を見上げていると、何かを思いつたかのように突然起き上がった。
「そうだ!みなみちゃんの家に行ってみようよ!」
「えっ…」
「よし、行くぞ!」と吉本はカバンを手に取り、部屋を飛び出した。
「ちょっ、ちょっと待ってください!」
優子も慌てて追いかける。

その様子を麻友は、部屋のドアの隙間から覗いていた。
そして2人が家から出たのを確認すると、こっそりと後をつけ始めた。

149ちんぱる:2013/06/23(日) 22:54:06

高橋家の前に吉本はいた。
優子が遠くからようやくやってくる。
「先生…、早いですって…」
家庭教師は彼女の言葉に耳を傾けることも無く、高橋家をただただ見つめいていた。
「あの、本当に行くんですか…?」
「お前だって本当は気付いてんだろ?彼女がいじめの主犯格じゃないことぐらい」

確かに優子にも思い当たる節がいくつかある、だが何故みなみが自分と友美のことをいじめてきたのか。
その理由がいくら考えても分からなかった。
「分からないだろうなぁ、お前みたいなやつには…」
「それってどういう…」
優子が話し終える前に、吉本は躊躇もせずインターホンを押した。

「はい?」と若い男性の声がする。
「こんばんわ、わたくし家庭教師の吉本と申しますが、高橋みなみさんいらっしゃいますでしょうか?」
「はい、ちょっと待っててください」とインターホンは切れたが、家の中から「みなみ〜!」と言う声が聞こえた。
みなみが下りてくるのを待っている間、吉本は優子に少し離れた所にいるように指示した。
「なんで?」
「いいから!お前がいたら彼女も下りてきにくいだろ…」

数分後。
ようやく高橋家のドアが開かれた。
「みなみちゃぁ〜ん、こんばんわ」
「どうも…、今日は何ですか?」と不審そうに吉本を見るみなみ。
彼女の姿は以前とは違い、少しやせているようで体の色も少し悪かった。
「今日は君に会わせたい人がいてねぇ」
「“会わせたい人”?」
「もう出てきていいぞ」と吉本が言うと、電柱の陰から優子が姿を現した。

「優子…!」
「久しぶり…」
みなみは彼女の姿を見ると、家の中に戻ろうとした。
しかし彼女の腕を吉本が掴んで引きとめる。
「逃げるな、しっかり真正面から向き合え」
そしてその腕を優子の方に引っ張っていき、2人っきりにさせた。

「久しぶりだね、みなみ…」と優子が声をかけても、みなみは一向に口を開こうとしなかった。
「あ、あのさ…」と別の話題を切り出そうとした時、ようやくみなみの口が開いた。

「ゴメンね…」と一言言うと、彼女の目から涙が零れた。

150ちんぱる:2013/06/23(日) 22:54:55
>ステージさん
よく気付きましたねぇ(笑)

151ステージ:2013/06/23(日) 23:03:04
ちんぱるさん

まぁ常識ですね(ドヤ)

152ちんぱる:2013/06/23(日) 23:14:22

「私…、優子とともに、ヒドイ事を…」と泣き続けるみなみ。
優子はただただ、それを見ていることしかできなかった。
「何であんなことしたの?」
「今は…まだ言えない…」
「なんで?」
「ダメなの、今言っちゃ…」
みなみの決心は固いもののようだった。

「ゴメンね優子、ホントにゴメン!」
「じゃあ、主犯は誰?」と尋ねるも、みなみは再び黙り込んでしまった。

さすがの優子も我慢の限界だった。
みなみの腕を強引に掴んだ。
「いい加減にしてよ!アタシ達がどんだけ辛い想いしたと思ってるの!!
 何の理由があるのか知らないけど、何でそうやって隠そうとするわけ!
 ねえ!私たち友達だったんじゃないの…?」と目に涙を浮かべながら優子は問いただした。
しかしみなみはそれでも話そうとしない、出てくるのは「ゴメン」や「許して」のその言葉だけだった。

優子はみなみを突き飛ばすと、その場を後にした。
後ろから「待って!」という言葉を気にもせず、早歩きでどんどん、どんどん、先に進んで行った。

153ちんぱる:2013/06/23(日) 23:14:41
>ステージさん
さすがっスね(笑)

154ちんぱる:2013/06/23(日) 23:18:54

「ハハハハ、いいですねぇ〜!」
みなみと優子が真剣な話をしている間、家庭教師は少し離れたところにある、時期外れのおでん屋台でおでんを食べていた。
隣には、今日はじめて会ったばかりの男がいる。
ちなみにこの男は、すでに会社の飲み会で出来上がってるらしく、ベロンベロンだった。

「それでね!家内に言ったわけですよ!もう少し家族のことをよく観ろと!」
「ほうほう!」と適当に相槌を交わしながら、吉本は日本酒を男に注いでいる。

「でもね、家族が私のことをバカにしてるんですわ!どう思いますか!?」
「それはおかしいですねぇ、一家の大黒柱であるご主人に対してその仕打ちは!」
「でしょう?ったく、浮気相手にも『別れてくれ』なんて言われちゃってさぁ…」
「それはヒドイ、そんなヤツこっちから願い下げですよ!」
「おお!アンタとは話が合いそうだねぇ!」と男も吉本に酒を注ぐが、吉本は一口も口にはしなかった。

その後、フラフラになりながら帰る男の後ろ姿を吉本は写真に収めた。
その男は今現在、吉本が担当している一家の主人である。
「いいねぇ…」

155ちんぱる:2013/06/24(月) 00:28:43

夜の八時を少し過ぎたころ、麻友は遥香から突然呼び出された。
「どうしたの、こんな時間に?」
「じ、実はさ…、話したいことがあって…」
「何よ?」
遥香はこの前であった女性から告げられた事を麻友にすべて話した。

すると彼女にも相当なショックだったようで、目に涙を浮かべていた。
「どういう事?それって…」
「多分、吉本荒野さんは自分のことが許せないんだと思う…」
「そんな…」と驚きを隠せない麻友。

「じゃ、じゃあ何でウチを?」
「それがまだ分からないの、だってその人でさえ分からないって言ってたから」
その人とは以前晴香がであった女の事だ。

「その人の名前分かる?」
「前田敦子さん…」
「えっ…」
“前田敦子”、その名を、まさかこのタイミングで聞くとは思っていなかった。


その頃、優子が洗面台で歯磨きをしようとすると、「はぁ〜良いお風呂でしたぁ〜!」とタオルで頭をふきながら風呂場から出てきたのは、なんと家庭教師だった。
バスタオルを一枚腰に巻き、上半身裸の状態であがってきた。
その姿にというか、風呂に入っていたことに驚く優子。
「ちょっ!先生!」
「何だ、いたんだ」と悪びれる様子も無い。
本当にこの男はマイペースなんだなと優子は思った。

「あの、とりあえず服着てもらってもイイですか?」
「えぇ〜、ちょっと見ないでよ、エッチぃ〜!」とマンガの女の子みたいなセリフを言う吉本に、一瞬だけイラっとした。
「いいから着てください」
「怒んなよぉ、冗談通じないなぁ〜」と吉本は若干拗ねた。

157ちんぱる:2013/06/24(月) 17:51:23

麻友が数学の問題を解いているのを吉本が横から見ていた時、突然彼女の書く手が止まった。
「あの…、聞きたいことがあるんですけど」
「どこ?」と問題用紙を覗きこむ家庭教師。
しかし麻友の質問の内容は、その紙の上には書かれていなかった。

「吉本荒野さん、いえ…田子雄大さん」
麻友がその名を口にした途端、吉本の表情が変わった。
「へぇ、そこまで調べ上げたのか…」と麻友を睨みながらベッドの上に座り込む。
「あなたのことをよく知る人物に会ったんです。その人がすべてを教えてくれました」

「それで?一体どうしたいってんだ」
「よく分からないんです、何でアナタがこんな事をしているのか。
 だって、普通だったらこんなことしないでしょ?」
「普通じゃないからやってるんだよぉ」と吉本は突然立ち上がり、部屋の中をうろつき始めた。

「学校の先生じゃ出来ないだろぉ?一生徒の教育ために、わざわざ家庭環境という根本から変えないといけないなんてさぁ」
「正気ですか?」
「いたって正常だよ、むしろお前が異常なんだ」と吉本は麻友に近づいた。

「お前が必死になって守ろうとしてんのは、自分のことにな〜んにも口出しをしない今の環境だろぉ?
 だから俺はそれをぶっ壊そうとしてるって訳」
「ふざけないで!」と思わず立ち上がる麻友。
家庭教師は「おお、怖いなぁ」と笑って言いながら、麻友に詰め寄られていく。
「あなたがやってることは絶対に間違ってる!」
吉本は彼女をいとも簡単に押しのけると、さっきまで座っていた椅子に座った。
「俺がやってることが間違ってる?アッハッハハハ!!!」と手を叩きながら声高に笑いだす。
麻友は彼の、この笑い方が嫌いだった。

「この国自体が間違ってるんだから、俺がやってることが間違ってるとは限らないだろ。
 毎日、事件や事故が起きているこんな時代に、真っ当な教育なんて通じるわけないんだよ」
「勝手なこと言わないでよ!それに全く関係ないでしょ!?国の教育だとか、そんなの間違ってるわけもないじゃない!」
「ハッハハハハ!!!本当にそう思ってるのか?
 考えることを放棄して、周りの意見に流されてるだけじゃないのか?」と麻友を睨みつける吉本。

言っていることが全く理解できていない様子の麻友に、家庭教師は鼻で笑った。
「だったら歴史の授業を例にとってみよう。
 人類の誕生から始めて俺達に身近で重要なはずの近代史は、何故か三学期に駆け足で終わらせる。
 百年も経っていない首相の暗殺事件でさえ、教科書ではたった数行しか語られない。
 どんな背景があって、どんな思いがあって殺されたのか、本来はそういう事を学ぶべきなんじゃないのか?
 でも誰もそれをおかしいとは思わない、なぜなら!そんな詰め込み式の教育でも、社会がそれなりに機能していたからだ。
 だがその歪みはアイデンティティの喪失として現れた。」
吉本はゆっくりと椅子から立ち上がると、麻友に少しずつ詰め寄っていく。

「自分のルーツを曖昧にしか理解できていない俺達は、自分に自信が持てなくなり、闘う事を恐れて、他人と同調するようになった。
 メディアに踊らされて一方的な意見で物事をくくりたがるのが、その最たる例だ!
 俺達はいつの間にか個性を奪われて、誰かに依存しなければ生きていけない骨抜きにされてるんだよ!」
ようやく、吉本の弁論が終わった。

しかし、なおも麻友は反論し続ける。
「何言ってるの?そんな話、私たちに関係ないから!」
「あるんだよ、関係あるんだよ!!!」と家庭教師は麻友の頭を右手で強引に掴んだ。

「そんな教育を受けて、平和ボケに浸かっているお前らみたいなヤツがいるから…、俺が生まれたんだ…。
 お前らみたいなヤツがいるから!無意識のうちに…、悪意だと感じない悪意で!汚れ無き弱者を追い詰めてるんだ…」
麻友の視界に自分の頭を掴んでいない彼の左手が入った。
その手は、これまで見た事無いくらいに震えている。
彼の息遣いも、とても荒いものとなっていた。

吉本は彼女を突き飛ばすと、息を整え出した。
「ハァ…ハァ…、いいか、俺は“吉本荒野”だ。これからもそのことに変わることはない。
 もしもこれ以上俺のことを調べるようだったら、本当にお前のこと消すぞ…」
最後の警告を彼女に告げ、吉本は部屋から出て行った。

158ちんぱる:2013/06/24(月) 19:39:22

家庭教師記録。
生徒名、大島優子、大島麻友。

大島家にやってきてからこの2ヶ月、さまざまな問題が山積みのままだ。
まず一つは、長女、優子のいじめの件。
主犯格はおそらく、彼女だろう。
しかし、この事を優子が知れば、彼女の心に大きな傷が出来る。
そうなってしまえば受験どころじゃなくなるのは目に見えている。
早めの内に色々と手を回しておいた方がよいだろう。

二つ目に潤、麻里子の夫婦関係の悪化について。
浮気の存在が発覚して以来、両者に深い溝が出来ている。
ここまできたら、もはや修復不可能だ。

三つ目に次女、麻友。
彼女はすでに俺の正体を知ったようだ。
だが、彼女には今日“恐怖”を植え付けた。
麻友が何かをしでかすことは、今後一切無いだろう。
しかし油断はならない、麻友と一緒に行動していた和也がどう出るかだ。
こちらも早めに手を打たねばならない。

こんな小さなことで、計画を崩すわけにはいかない。
多少のズレはあるものの、順調にことは進んでいる。
あとは…崩壊あるのみだ。

159ちんぱる:2013/06/24(月) 22:59:48
ここから、少しの間キャラクター目線で物語を進めて行きますが

全体の流れとしてはさほど変わらないので、引き続きお楽しみください。

160ちんぱる:2013/06/24(月) 23:11:38

大島優子、17歳。

高校3年生を迎えて、受験勉強真っ盛りとなった私は
親からの期待にこたえるべく、成績を伸ばそう、伸ばそうと努力してきた。
でも、結果はついて来なかった。

毎日悩んだ。
どうしてこんなに私は勉強しているのに、周りに抜かされていくんだろう…。
その悩みが表に出るようになり、友達の悩みにも聞く耳を持とうとしなかった。
そのせいで友達は引きこもりになった。
余計に私は苦しんだ。

そんなときだった、掲示板を見ていたら吉本先生のホームページにつながったのは。
“これだ”と思った、彼ならきっと私を変えてくれる。
そう信じた…。

実際、先生がやってきて色んな事が起きた。
友達との和解、かと思えば新たないじめ。
そのいじめを乗り越えたかと思えば、新たな謎が生まれる。
昔の私だったら、きっと逃げ出していたのかもしれない。
でも先生がそうさせなかった。


『ビビってんのか?あ?また そうやって目の前の現実から逃げんのか!!』

『本当に彼女のことを考えてるんだったら、悩んだりしないはずだ。
 でも現にお前は、悩んでるじゃないか!
 心のどっかで、自分だけは助かりたいっていう気持ちがお前の中にあるんだよ…』


私がいくら逃げようとしても、現実を突きつけ続けた。


『ったく、お前明日は学校に行け』
『え、なんで!?』
『当たり前だろうが!それに…お前は俺のペットなんだよ』


やり方はひどいけど、先生なりの愛が少しだけ伝わる時が何度もある。
でもそれは本当に私のことを思ってのことなんだろうか…。
私が彼の掌の上で慌てふためいているのを、ただただ楽しんでいるだけなんじゃないだろうか…。

時々、先生が怖くなる時がある…。

161ちんぱる:2013/06/25(火) 15:14:47

この日、和也は一人で“田子雄大”に関する情報を集めていた。
本物の吉本荒野の母親にもう一度会い、“田子雄大”のことを知っている人物を尋ねたのだ。
しかし手掛かりといえるような情報は少なく、途方に暮れていた。

「クソ…」
公園のベンチに座り、何も手がかりを得ることが出来ない苛立ちを抑えていると誰かが隣に座った。
「何か分かった?俺に関すること」
隣に座ってきたのは、和也が今まさしく正体を知ろうと必死になっている人物だった。
突然の出来事に、思わずベンチから立ちあがった。

「いつから居たんだよ」
「う〜ん、君が“吉本荒野”の病院に行った辺りからかな」
「最初から俺のことをつけていたわけだ」
「そんな怖い顔すんなよぉ〜、お前だって知られたくない事の一つや二つあんだろ?」
家庭教師は顔を近づけ、低い声で言った。

「そんなのある訳ないだろ」と答えると、吉本は納得したように首を縦に振った。
「そう!無いんだよ、お前にはそういう弱点がさぁ」
「何が言いたい?」

「いや、つまんねえなぁって思って」
「つまんない?」
吉本はベンチから腰をあげ、公園を眺め出した。

「人間には必ず裏の顔がある、全部が全部良く出来ているわけ無いんだよ」
「そんなわけ無いだろ、現に、世の中には素晴らしい人はたくさんいる」
「そんなの単なる偽善者だよぉ、そいつらは相手に表面だけ見せて、評価を受けている自分に驕っているだけだ。
 人間はみな、必ず欠けているところがある」
そういい、吉本は和也に近づいた。

「いつかお前の化けの皮も剥いでやるよぉ、お前のことを信じている人たちの前でな」
「やれるもんなら、やってみろ」
「いいねぇ…」
不敵に笑うと、吉本はその場を後にした。

外は少しずつ雨が降り出していた。

162ちんぱる:2013/06/25(火) 15:44:50

「俺の弱点だと…」
傘が無いため、和也は一歩も動けないでいた。
「そんなもの、ある訳がない…」
自分の拳に力を入れる。
和也は震える自分の左手から、赤い液体が滴り落ちていることに気付いていなかった。


「遅いな…、先生どうしたんだろ?」
優子は焦っていた。
約束の時間になっても、家庭教師は一向に現れない。
それどころか、ここ数日、彼と全く会わないのだ。
思い切って、初日にもらった名刺に書かれてある携帯の番号にかけてみるも
『おかけになった電話番号は、現在使われておりません』と彼の声は聞こえてこなかった。

「私、なんかしたかな…」
ただの家庭教師にここまで気持ちを動かされているとは、彼女自身も気付いていなかった。


「えっ?」
麻里子は驚きを隠せなかった。
買い物に行った帰りに、松井玲奈のもとを訪ねてみるとそこはすでに空き家となっていた。
「どうして、だってこないだまで…」

『本当にすみません!今度絶対お詫びをいたしますので!』と言った彼女の言葉はやはり偽りだったのだ。
近所の方に聞くと、借金を作って夜逃げしたらしい。

麻里子は家の玄関を開け、その戸が閉まる前に舌打ちをした。


「麻友?麻友!」
「え…?」と完全に上の空だった様子の麻友。
遥香が何度声をかけても、彼女は反応しなかったのだ。
「大丈夫?この前から何か様子が変だけど」
「だ、大丈夫…。うん…」

『もしもこれ以上俺のことを調べるようだったら、本当にお前のこと消すぞ…』

その言葉を思い出す度、彼女の震えは止まらなかった。
何度も忘れようとしたが、至近距離で言われたあの男の顔が何度も脳裏に浮かぶ。

『お前が何しようとムダだよぉ、もうゲームは始まってるんだ』
『…ゲーム?』
『そう、これはゲームだよ。か・ぞ・く!げえ〜む!』


一方、麻友の隣に座る珠理奈も放心状態だった。
「珠理奈もどうしたの?2人ともなんか変だよ!」
「ぱるちゃん、私どうしたらいいのかな?」と突然珠理奈が尋ねてきた。

「何が?」
「好きな人の事が分からないの…」
「吉本さんのこと?」
「うん…、本人に聞いてみようかな」
すると突然、「ダメ!!」と麻友が立ちあがった。

「珠理奈、ダメ!聞いちゃ…ダメ…」


『もしもこれ以上俺のことを調べるようだったら、本当にお前のこと消すぞ…』


麻友の気迫に押されたのか「う、うん…」と珠理奈はさらに落ち込んでいった。

3人の関係に少しずつズレが生じていた。

163ちんぱる:2013/06/25(火) 20:52:39

それから1ヵ月が経った。

「行ってきます」と力なくドアを開け、家を出る優子。
その先に待っていたのは…友美だった。
「おはよう、優子」
「おはよう…」
「元気ないね?」
「うん…」

家庭教師が姿を消して、丸1ヵ月。
どこへ行ったのか、何故いなくなったのか。
誰もその理由を知るものはいなかった。


「じゃ、じゃあ、もうせんせーには会えないの?」と悲しげな顔で麻友に尋ねる珠理奈。
「多分…」
「そんなぁ…」

彼が居なくなったことで心に大きな穴を作ってしまったのは、彼女たちだけではない。


「はあ…」
「どうしたんですか?大島さん」
先週から始めたパート先で麻里子は大きなため息をついていた。
「い、いえ…。ちょっと知り合いが急にいなくなったものですから…」
「あら、それは大変じゃないですか」と同僚の片山に同情されている。
何か新しい事を。そう思いパートを始めたのだが、なかなか思うように楽しむことは出来なかった。


真夜中。
山奥を歩く男女2人がいた。
「どこまで行くの?」
「もうすぐだ…」
小さな小屋の前にたどり着くと、男はそのドアを開け中へと入っていった。
女も後を追う。

「ここで、アイツは…、俺を殺したんだ」
男は女にそう説明した。

164ちんぱる:2013/06/25(火) 23:34:32

家庭教師が突然行方をくらましたため、優子は現在塾に通っている。
帰ってくるのはいつも夜の11時過ぎだ。
すると帰ってくるなり、リビングに家族全員が集められた。
「何、話って?」
「お前たちに大事な話がある」と深刻な顔をする潤。
優子には大方予想がついていた。

「父さんと母さんな、離婚することにした」
「やっぱり、だと思った」と麻友が言った。
どうやら彼女も予想はついていたらしい。

「何で?」
優子の問いに麻里子が答える。
「前に麻友ちゃん言ったでしょ?『こんな家族いらない』って。それで思ったの、本当に私はこの家族のことを思ってるんだろうかって。
 そしたらね、吉本先生に言われたとおりだった。私、誰に対しても愛情を持って接することがもう出来ないの。
 み〜んな、私のそばにいる人全員が私の敵にしか見えないの。
 だから一回1人になってみようと思って。
 離婚して、ゼロから始めて、もう一度、誰かを愛するってことを思い出そうと思って」
すべてを話した麻里子の表情は、何かがすっきりしたように清々しいものだった。

「それで?私たちはどうなんの?」
「そこはお前たちにまかせる。俺のもとに来るか、それとも彼女の元へ行くか、好きな方を取ればいい」
そう潤が説明すると、麻里子が反論した。
「イヤよ!言ったでしょ?私は一人になりたいの。もう子供の御守りなんてまっぴらよ!」
「お前!自分の子供だぞ!」
「そういう自分ははどうなのよ?」と麻友がぶっきらぼうに言った。
「お父さんだって、私たちのこと自分の娘って思った事無いんでしょ?」
何も言い返せない大人二人を見て、麻友は鼻で笑った。

「別にアンタたち、大人の力無くても、私は私でやっていけるし。お姉ちゃんは?」
「えっ?」
「お姉ちゃんはどうするの?」

165ちんぱる:2013/06/25(火) 23:42:13

「お姉ちゃんはどうするの?」
麻友からの質問に優子は戸惑っていた。

「わ、私は…」
「お姉ちゃんも“そっち”側の人間なんだ」
「違う!私はそんなんじゃ…」
「もういいよ、言い訳しなくて」
麻友は大きくため息をつくと、そのまま部屋に戻ろうとした。

「待ちなさい、まだ話は終わっていない」と潤が麻友の腕を引っ張るも、麻友は抵抗する。
「離してよ!」
「ちょっと、麻友!」
麻里子はのんきに携帯を触り出した。

「やめてって言ってんでしょ!」と麻友が父親を突き飛ばす。
彼は背中を床に打ちつけた。
「グッ…、おい!麻友!」
「やめて!お父さん!」
今にも、潤が麻友に殴りかかろうとしたそのとき。

「はぁ〜い!」といきなり家族の中の人物では無い声が、家の中に響き渡った。
全員が振り向くと、1ヵ月ぶりにあの男が姿を現した。
「呼ばれてないのにジャジャジャジャ〜ン!」

「せ、先生…」
「いいねぇ…」

166ちんぱる:2013/06/26(水) 00:02:58

突然現れた思わぬ乱入者に、大島家一同目が点になっていた。
「ハハハ、修羅場の邪魔しちゃってゴメンなさい!どうぞ、僕のことは気にせず続きを!」
そういうと、吉本はテーブルや台所周辺を物色し始めた。
「おい!何やってるんだ!」と潤が問いただす。
「忘れ物ですよぉ、これとか」と家庭教師が見せつけたのは、何やら小さな機械のようだった。

「盗聴器と小型カメラです、よっと!これ結構高いレンタルなんですよ…」
テーブルの上に乗り、その上のライトの上からも盗聴器を回収した。
「お前な!警察に連絡したって構わないんだぞ!」
「そしたらお父さんも、全部バレちゃいますよ?」
吉本がそう言うと、潤は何も言い返せなくなってしまった。
「どういうこと?何があったの?」と優子が尋ねても、潤は一向に口を開こうとしない。

「えっと、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15と。1階はこのぐらいかな」
1階と言ったその言葉に思わず潤が反応した。
「ちょっと待て、もしかして2階もあるのか?」
「あ、安心してください。優子ちゃんと麻友ちゃんの部屋だけなんで!」
それだけでも大問題である。
家庭教師は追いかけられるのを避けるように、走って2階に上がっていった。

167ちんぱる:2013/06/26(水) 00:41:29

「いつから置いてあったんですか?」
勉強を教えていたはずの家庭教師は、マンガの間にはさまれていた盗聴器を回収する。
「ここに初めて来たときかな、確か“プライバシーの侵害ですよ〜”辺りから」
「大分最初じゃないですか…」

吉本は優子の部屋に置かれた盗聴器とカメラを回収すると、1ヵ月ぶりにいつもの椅子に座った。
「で?結局、真犯人が誰か分かったのか?」
この1ヵ月、優子と友美にはいじめは全く起きなかった。
恐らく真犯人の目的は、今のなお学校に姿を見せないみなみに、全てを擦り付けるつもりなのだろう。

「はあ!?まだ分かんねえの?」
「えっ…?」
「もう少し周りを見てみろ」と言い残し、家庭教師は部屋を出て行った。

168ARAKB53:2013/06/26(水) 16:42:26
麻友の部屋で盗聴器やカメラを回収していると、突然彼女の方から声をかけられた。
「この1ヵ月、どこに行ってたんですか?」
「なにぃ〜?寂しかったのぉ〜?」
「い、いや…、そういうわけじゃ」

「ちょっとね、野暮用があってしばらく来れなかったんだ。
 でもまぁ君らと会うのも、これで最後かもねぇ」
「え?どういう事ですか?」

吉本は麻友の顔を見ると、「フッ」と軽く笑った。
「な、何ですか…?」
「お前、ずいぶん顔立ちが変わったな」
「関係ないでしょ…」
「まあいいや、で?どうすんの?」

家庭教師は全ての盗聴器を回収し、数を確認している。
「何をですか?」
「親の手は借りないんだろ?どうやって暮らすんだよ。学校辞めて、風俗ででも働くのか?」

数を確認すると、吉本は麻友に近づいた。
「俺の事より自分のことを心配しろよ、優等生〜。子供一人で生きていけるほど、世の中甘く出来てねえんだよ」と吉本は麻友の耳元で囁いた。


すべて回収し、一階に戻ってくると潤と麻里子の前に離婚届が置かれていた。
吉本はその用紙の上にメモを置く。
「これ、今月分の月謝の振込先です。あと、突然で申し訳ないんですけど、僕、家庭教師辞めさせてもらいます」
「なんで?」と潤は驚き、尋ねた。

「ちょっと自分を見つめ直そうかな〜なんて思っちゃったんで」
「そんな理由で勝手に決めるな!」
「どっちみち、もう僕に払う月謝なんて無いですよね?」と吉本は潤に詰め寄った。
「正直に皆に言ったらどうですか、会社を辞めてきたって」
「な…、どうしてそれを…」
「だからコレですって!」と盗聴器を潤に見せつける。

「お父さんの独り言、全部これに筒抜けでしたよ」
「お前…」と怒りで潤の体は震えていた。
「用が済んだなら、とっとと出て行け!」
「はぁ〜い!」とバッグを肩にかけ、出て行く吉本。

優子は慌てて、彼のあとを追いかけた。
「先生!」
吉本は歩きを止め、振り向いて生徒を見つめた。
「どこに行くんですか?」
「お前とも、もうさよならだな」と全く返答になってない吉本。
このままでは再び、会話の流れが、彼のペースになってしまう所だった。

「私…、これからどうしたら?」
すると吉本は考え込んでから、答えた。
「お前、みなみちゃんが今どうなってるのか、知ってんのか?」
「みなみが?」
「お前があの時、みなみちゃんの“待って!”の言葉に耳を傾けなかったせいで、彼女は自殺にまで追い込まれた。
 幸い、彼女のお兄さんが自殺しようとする寸前で彼女を止めたらしいが、あと少しで死ぬ所だったんだよぉ。
 彼女を追い込んだのは他でもない、お前なんだぞ。」
優子は吉本の話を正面から受け止めていた。

「真犯人が誰とか、それ以前にお前にはやるべき事があるんじゃないのか?
 それが分からないようじゃ、お前も同罪だよ」
吉本はくるりと向きを変え、再び歩き出した。
優子はその後ろ姿を、それ以上追いかけることが出来なかった。

169ステージ:2013/06/26(水) 16:56:36
いいねぇ

170ARAKB53:2013/06/26(水) 18:07:43
>ステージさん
ありがとうございます!

171ちんぱる:2013/06/26(水) 19:17:45

夕食後、突然二宮家のインターホンが鳴ったので、珠理奈がドアを開けると大好きな人がそこにいた。
「よっ」
「先生…、せんせー!」
思わず珠理奈は吉本に抱きついた。
「おおぉ…どうした?」
「だってぇ…、ずっと来なかったからぁ」と涙を流しながら喜ぶ珠理奈。
「はいはい、分かった分かった」と珠理奈を引き離し、吉本は二宮家に入っていった。

部屋に入り、珠理奈の最後の授業を終えると、吉本は彼女に家庭教師を辞めることを告げた。
「え…、何で?」
「ちょっと大事な用事が出来たんだ、だからお前との授業はこれまでだ」
「イヤだ!ヤダヤダ!せんせーと離れたくない!」と駄々をこねる珠理奈。
しかし家庭教師はそんな彼女の肩を押さえ落ち着かせると、優しく話しかけた。

「いいか、珠理奈。お前はとっても真っ白だ、それゆえにすぐに他の色に染まりやすい。
 染まらないためにも、自分らしさを大事にしろ。
 他人を変えることは出来ないが、自分を変えることなら出来る。
 自分が変わればきっと周りの人も変わっていく、それを信じろ」
「でも、私そんなこと出来ないよ…」
「大丈夫、お前ならきっと出来るさ。諦めるな、それともう人前で泣くな」
「う、うん…」
吉本は珠理奈の頭を優しく撫でると、和也の部屋に向かった。


「聞こえましたよ、今日で最後らしいですね?」
「何?寂しくなっちゃった?」
「逆ですよ、嬉しくてたまりません」と敢えて蔑むと、「いいねぇ」と呟いたのが聞こえた。

「まあ、お前の化けの皮も結局剥ぐ事が出来なかったのが、心残りだけどねぇ」
「そんなものある訳無いじゃないですか」
すると吉本は何枚かの写真を、和也の前にばらまいた。
そこには電柱の陰や、建物のそばに隠れる和也と、その奥には優子が写っていた。
「これって…」

「いくら幼なじみを守るためとはいえ、これじゃあストーカーと何一つ変わんねえよぉ!」
「ずっとつけてたのか?」
「つけてたのはお前の方だろ?やっぱりみなみちゃんじゃなく、優子のことが好きだったんだなぁ。
 でもアイツがこの写真見たら、きっとお前のこと軽蔑しちゃうかもよぉ〜」
和也は家庭教師のことを強く睨みつけた。

「おぉ〜怖い怖い」
「テメエ!」と胸ぐらをつかもうとしたが、すぐに腕を掴まれ、軽く一捻りされてしまった。
「グッ…」
「脇が甘いんだよぉ、脇が」
吉本は和也の髪の毛を掴み、自分の顔を近づける。

「フッ、お前がどんなに足掻いても、俺には勝てねえんだよ。げえ〜む、お〜ば〜!」
そう言うと、家庭教師は和也を突き放した。
「じゃあな、もうお前らとは関わることも無いだろう」
それだけ言って家から出て行った。

172ちんぱる:2013/06/27(木) 00:51:49

家庭教師が嵐のように去っていった後、大島家では潤が真実を語り出していた。
「すまない、お前たちには黙っていた。実は…会社を辞めたんだ」
誰もその理由を尋ねようとしなかったが、潤はそれでも説明を続けた。

「もう一度、自分を最初から始めたかったんだ…。家族のことをしっかり受け入れようと。
 でも、受け入れられてなかったのは俺の方だったんだな…。」
潤は悲しげな顔で離婚届に判を押した。
「じゃあ明日、区役所に提出してきますね」

「待って!」と優子が大きな声を出した。
「あと…、あと2日待って!お願いします」
「2日って、何をする気なんだ?」と潤が尋ねる。
「見せなきゃいけないものがあるの、お願い待ってて…」
そう言うと優子は2階へあがっていった。

173ちんぱる:2013/07/11(木) 23:03:03

夜の12時を過ぎたのにもかかわらず、高校2年生の板野遥香は家の前に立っていた。
彼女のそばには、男が立っている。
その男は、つい先ほどまで2つの家庭を“教育”していた。

「じゃあ、そろそろ行くね」
吉本のそばには、キャリーバッグが置かれてあった。
「あの、どこに行くんですか?」
「う〜ん、とりあえず南米あたりかな。ブラジルとか、チリとか」
「これから私たちはどうすれば?」
「それは君ら次第だよ。俺がどうこうする問題じゃない」
「でも、実際あなたがやったから、麻友達があんなことになってるんじゃないんですか?」

家庭教師はしばらく考え込んだ。
そして肩から提げていたバッグの中から、一枚の封筒を取り出す。
「コレ、持っておいて」
「何ですか?コレ」
「時が来たら、これを麻友と珠理奈に見せてあげてくれ。そのときまで君も見ないでくれると嬉しいな」
「“時が来たら”?」
「それじゃ」と吉本はキャリーバッグを引きずりながら、夜の闇へと消えて行った。


「ただいま」
部屋に戻ると、友美が不安げな顔をして訊ねてきた。
「今の、優子の家庭教師だよね?」
「うん、吉本先生」
「何しに来たの?」
「ちょっとね…」
遥香は手渡された封筒を背中に隠し、そっと自分専用の物置の中に入れた。

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