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やる夫の兄はブラコンのようです

679 ◆hrPgATdXSI:2020/01/08(水) 00:23:00 ID:4Bp4JfWUSa
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┌─────────────────────────────────────────────────────────┐
│ 俺には天才の従弟がいる。                                                                 .│
│ そいつと俺の外見はとてもよく似ていて小さい頃は連れ立つ度に兄弟と間違われた。                                │
│ けれど中身は全く違って従弟は俺の苦手とするもの全てを難なくあっけなくこなしてしまうのだった。                     ......│
│ 最悪なことに彼は己よりも年下の少年で、周囲から比較される機会が増えるにつれ俺は一方的に嫉妬心を募らせていった。       .│
│ けれどどうにかその醜さを口に出さずにいられたのは凡才なりに己にも得意とする領分があったからだ。                  ....│
│ いや、嘘だ。俺は自分を凡庸だなんて思ってはいなかった。むしろ特別な存在だと己惚れてさえいた。                      │
│ だって俺は彼の幼い弟に随分と懐かれていたし、こっそりと小説をしたためるなどもしていた。                          .│
│ 物語を書けるだけで、それだけで才能があると、それだけで凄い事なのだと、こっそりと、思っていた。                      │
│ 俺は少年だった。けれどそれをいうならば彼だって少年だったのだ。                                        ...│
│ ある日従弟の御両親が瞬く間に亡くなった。彼は躊躇いなく今までを捨てた。                                   ...│
│ そうして俺の分野へと足を踏み入れてきた。不器用で未熟な様子に俺は優越を抱いた。愚かにも先を見ずに。               ..│
│ 従弟はまず家事を覚え、弟を愛することを覚えた。容易くはなかっただろうが素早くそれをやってのけた。                   │
│ 愚かな俺はそれでも彼の恐ろしさに気付かずに親切ぶって自ら距離を詰めていった。自分の持ち物を見せびらかし一部を与えた。  .....│
│ それからは真っ逆さまだった。                                                              ......│
│ 違うな、俺が堕ちたのではなく、俺はただ停まっていただけだ。進まなかっただけだ。                                .│
│ 自分が小説家になれると思っていた。物語を書くふりをしているだけで、いつかはなれると思っていた。                     │
│ だから大学になど行かなくていいと思った。妹の進学を思いやるふりをして受験勉強から逃げた。                        │
│ けれどそうして空いた時間を費やしても物語は完結しなかった。やればできる筈なのに。長編は愚か短編すら仕上がらなかった。   .....│
│ 俺は自分の才能に見切りをつけたくはなかった。何もなくなってしまうのがわかりきっていたからだ。                      .│
│ だから縋るように従弟を誘った。小説を書いてみないかと言った。                                           │
│『自分には書けなかった』と言って欲しかった。                                                      ....│
│                                                                                    │
│ あいつにできないことなんてなにひとつないのに。                                                     .│
│                                                                                    │
│                                                                                    │
└─────────────────────────────────────────────────────────┘

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