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仮投下スレ
1
:
名無しさん
:2013/01/13(日) 01:01:55 ID:DSSJeVnc0
投下する際に内容に不安がある場合などはここを利用してください
152
:
名無しさん
:2014/03/04(火) 12:14:55 ID:ArC5PzGw0
修正乙です
特に問題ないかと
結構大々的に改定して方向性を変えてもいたので一度読んだ話の修正版なのに新鮮な気持ちで読めました
面白かったです
153
:
◆7ediZa7/Ag
:2014/03/04(火) 13:26:40 ID:GU2AtB.I0
総合板に書き込めないのでこちらに投下します。
154
:
太陽の落とし方
◆7ediZa7/Ag
:2014/03/04(火) 13:29:43 ID:HVBFTS2U0
「ここで一先ずは小休止、ですかね」
そう言って能美は腰を下ろした。
並べられた長椅子に身を預けるとごぉん、と鈍い音がよく響いた。その反響に呼応して鉛のような疲労感が滲んでくる。
頭上に広がるがらんとした天井を見上げ、彼はふうと息を付いた。
精巧に作られた西洋風の装飾は中々どうして荘厳な雰囲気の形成をしていた。
陽光を受け照り輝くステンドグラスや教会を思わせる参列席、その全体を覆うように漂うどこか朽ち果てた空気が垣間見える。
大聖堂、の名の通りどこか神聖な空気が漂っているように思えた。
とはいえこれも所詮はゲームの1オブジェクトに過ぎない。
聖堂だの教会だの、ありがちな舞台である。
中心に座する誰も居ない台座なんて如何にもそれらしい。その神聖さに仇なすような醜い傷も含めて、元あったゲームではそれはそれは大仰な設定があったのだろう。ここで意味はないが。
グラフィックの出来自体は加速世界と比してもそれなりによくできているとは思うが、こんなもの、どこまでいってもハリボテ、還元すればポリゴンやらテクスチャやらの集まり、とどのつまり数値だ。
そう思った彼は来て早々グラフィックに興味を失った。代わりにその機能的な側面について考え始める。
155
:
太陽の落とし方
◆7ediZa7/Ag
:2014/03/04(火) 13:30:37 ID:HVBFTS2U0
(ここからアメリカエリアまでまっすぐ行けば一時間、といったところでしょうか)
痛みの森での手痛い敗走ののち、次なる目的地の候補として能美は近くのマク・アヌか隣のアメリカエリアを考えていた。
どちらにしようか迷ったが、結局彼は後者ーーアメリカエリアの方を選んだ。
理由としては、今の自分の状態がある。
能美は虚空に指を走らせる。滑らかな動作でウィンドウが開かれた。
|ステータス|
|HP|10%|
|MP|10%|
|Sゲージ|5%|
|付与|幸運低下(大)|
|部位ダメージ|胴体|
|令呪|三画|
(忌々しいですが、あの連中から受けたダメージは予想以上に深いですね)
呼び出した自らのステータス画面を確認し、彼は腹に憎悪と苛立ちが溜まっていくことを自覚した。
HPMPを削られた上に、ゲージも消費させられ、更にバッドステータスまで付与されている。
装備、スキル面は充実しているが、こうもダメージを負ってしまっているのでは戦闘もままならない。
せめて付与されたバッドステータスが消えるまではどこかで回復を行いたかった。
どの道しばらくは戦闘できない。
となれば距離的に近いマク・アヌよりもイベント補正のあるアメリカエリアの方に行くべきだろう。
そう考え、途中この大聖堂で状態を整えたのちエリアに赴くことにした。
どうやらこのゲームの仕様として、じっとしていればある程度の自然回復が見込めるらしい。速度は遅いが、現時点で自分が取れる唯一の回復手段である以上、こうする他にない。
まぁMPがある程度回復すれば自分にコードキャストを掛けられるので、回復にそこまで時間はかかるまい。
156
:
太陽の落とし方
◆7ediZa7/Ag
:2014/03/04(火) 13:31:26 ID:HVBFTS2U0
「…………」
そう思い、一先ずはゆっくりと休憩を取ることにする。
ゲーム開始からこの方それなりに動いたこともあって疲れも溜まっている。アバターのステータス的な部分だけでなく、プレイヤーである自分の身も考えなくてはならない。
「よっ、ノウミ。暇してんのか? 」
……だというのに、ライダーはマスターの思惑など知ったことではない、とでもいうように姿を現した。
「……ゲージを無駄にして欲しくないのですがね」
「硬いこと言うなよ。ケチケチしてもしょうがねえだろ? どうせアタシが何か壊せば回復するんだし」
彼女は豪快に笑い、カツカツと音を立てて彼女は聖堂を歩き回る。そして偉そうに腕を組み、座り込む能美を見下ろした。
「んで、どうだい指揮官、復讐の算段は?」
「ええ……まぁ考えてますよ、色々と」
「ほおう、色々と来たかい。精々期待させてもらおうじゃないの。アンタの意趣返しは中々ねちっこそうだ」
そう言って彼女は再度哄笑した。もはや諌める気にもならなかった能美は無視して休憩に専念することにする。
その様子を見たライダーはどこか楽しげに口を開く。
「だが今はちょっとお疲れみたいだねぇ、ノウミ。ま、休息は大切だ。休める時に休むに越したことはない。休み過ぎてそのまま腑抜けちまうようなのもいるがね」
ライダーはニヤリと笑い、
「でもまぁアタシが見たところ指揮官殿は問題ないねーー思い出せるかい? さっきの森でコテンパンにやられた時の屈辱をさ」
「そんなこと」
能美の脳裏に今しがたの敗走が蘇る。
痛みの森。略奪したスキルを使って一方的な蹂躙を行う筈だった。
それをあのゲームチャンプが、あの生意気な女が、あの眼鏡のーー
157
:
太陽の落とし方
◆7ediZa7/Ag
:2014/03/04(火) 13:32:11 ID:HVBFTS2U0
「ーー愚問ですね。当然、覚えてますよ。僕を侮辱した奴らにはしかるべき報いを食らわせてやります」
能美は言った。その声は少年のそれでありながら、喉の奥から憎悪と共に絞り出されたようなひどく濁った響きを孕んでいた。
ライダーは満足気に頷き、
「いい返事だ、ノウミ。それでこそ我が指揮官、しょうもない小悪党だが筋は悪くない。かと復讐に関してはアタシも一家言あるしねぇ」
疲れが吹っ飛ぶだろう? とライダーは語る。
「アタシもそうだった。むっかし若い頃にてひどくやられたことがあってさ。そんときに感じた屈辱。アレは忘れられないねぇ。スペインを、太陽とか宣う奴らを、どうやって焼き尽くし、奪い尽くし、殺し尽くすかーー毎日毎日それだけを考えて生きてきたのさ」
そして死んだ訳だがね、と彼女は付け加え再び笑ってみせた。
その言葉の裏に含まれた影を感じ取り、能美は少し意外な気分になった。
自分と正反対に見える彼女だが、しかし根本にあるものは近しいものであるように思えたのだ。
奪われたのならば、それ以上に奪い返す。そうでなくては気が済まない。
「さて、ノウミ。上機嫌だから、ここで一つアタシの話をしてやろう。ま、暇つぶしだと思いな」
「全く、うるさいですね……」
「そう言うなって。なに、ちょっとした話さ。どうやったら太陽は落とせるかっていうね」
「…………」
「ところでノウミ、アンタ、どれくらいアタシのこと知ってるんだい? フランシス・ドレイクって英雄のことをさ」
しばらく能美は沈黙した。ライダーが返事をじっと待ってるのが分かる。が、彼は言うべき言葉が見つからなかった。
158
:
太陽の落とし方
◆7ediZa7/Ag
:2014/03/04(火) 13:32:56 ID:GU2AtB.I0
「何だい? 何も知らないのかい。そりゃちょっと不勉強じゃないのかい?」
「う、うるさいですね。僕らの時代は貴方たちとは文明レベルが違うんです。ネットが繋がればそんなこと暗記するまでもないことですから」
語気を荒げて言う能美にライダーはやれやれと頭を振り「シンジはそれなりに知ってたがねぇ」と言った。
その事実が何故だか無性に腹立たしい。
「ま、いいさ。細かいことは確かにどうでもいい。とにかくアタシは……フランシス・ドレイクは英国の海賊でね。奴らに報復する為に色々やってさ。手始めにインド諸島だのペルーだので略奪とかやってた訳だが、今考えればありゃちまちましてた。スペイン海軍は敢えて襲わないようにしてたし、派手さに欠けてた」
「はぁ、そうですか」
能美は気のない返事をする。それでも止めはしないのは、彼としてもこの英霊について興味が出てきたからだろうか。
「そのあと地球を一回りとかやって荒稼ぎしたねぇ、黄金宝石香辛料……ありゃ楽しかった。んでがっぽりお宝持って英国に帰ったらこれがまた笑える話でさ、アタシのが国より金持ちになってたって訳だ。たまげた女王陛下がアタシにナイトなんて大層な称号までくれちまってさ。出世はしたが復讐の機会は中々訪れなかった。柄でもねえのに市長とかやったっけな」
「似合いませんね……」
「だろう? アタシは海のが向いてるよ」
ライダーは己の偉業をまるで世間話のように軽く語った。そこであったであろう様々な冒険譚を誇る訳でもけなす訳でもない。ただ懐かしんでいる、という風に。
能美は思う。海賊から騎士へと登り詰めていく行程は、史実的に偉業ではあるのだろうが、彼女にしてみればただの通過点だったのだろう。
彼女の生き様が語る通りのものであるのならば、その行いは全てある一点へと向いていたはずだ。
159
:
名無しさん
:2014/03/04(火) 13:34:06 ID:HVBFTS2U0
その一点とは、すなわちーー復讐。
略奪も世界一周も政治的な要職に就いたのも、全てはしかるべき時にしかるべき地位でいる為の……
「んでその時は来た」
ライダーはそこで口元を釣り上げた。その白い犬歯がきらりと光る。
「我が祖国英国とスペインの仲がきな臭くなってねえ……そこでアタシが万を辞して担ぎ出された訳さ。英国海軍を率いて奴らとの一大決戦。いやはやあの時はーー忘れられないねえ」とライダーはそこで視線を上げ「そん時、アタシが自分の船に何と付けたと思う?」
「……さぁ」
「復讐(リヴェンジ)」
160
:
太陽の落とし方
◆7ediZa7/Ag
:2014/03/04(火) 13:35:20 ID:HVBFTS2U0
能美は何時だったか世界史でやった話を朧げながらも思い出す。英国とスペインの決戦。人類史のターニングポイント。授業などロクに聞いていないが、それでも流石に少しは聞きかじったような覚えはある。
アルマダ海戦……だっただろうか。名前しか知らないし、それすら正直怪しいが。
「そんでアタシは海軍司令だったチャールズの野郎と顔つつき合わせて奴らの弱点を考えた訳だが、そん時の英国が主に使ってたガレオン船は小さくてね、機動力はあるが火力は心もとない。一方の敵軍は大型の帆船が主力。地図おっ広げてさぁこいつらをどうしようかって訳だ。機動力と火力、それぞれの強みをどう活かすかってのがこの戦のポイントだ」
能美は耳を傾けながらも、少し眠たくなってきた。
緊張が緩み、身体が休息を欲しているのかもしれない。
「おや? お休みかい。こっからが面白いところだってのに、ま、いいさオチを言っちまおうか。アタシがそこで何をやってたか」
「答えは簡単さ、船に火ィ点けて敵のど真ん中に突っ込ませた」
ライダーはそこで声を立てて笑った。反響する豪快な笑いはどこか遠くに感じられる。
「この話の妙はね、機動力と火力の天秤をぶっ壊してるところにあるのさ。火のついたガレオン船はその一瞬だけ速さと火力、両方を得た。互いの長所短所をつつき合うなんて地味な真似はしてないってね。後のことを無視したがゆえに、その船は最強になった訳は」
だから気をつけな、と微睡む能美にライダーは言う。
161
:
太陽の落とし方
◆7ediZa7/Ag
:2014/03/04(火) 13:36:10 ID:HVBFTS2U0
「どんなセオリーにせよ定石にせよ、原則なんざ後先考えず捨て身になっちまえばぶっ壊せちまうもんなのさ。刹那主義も極まれば太陽だって落とせる。アンタがどういう生き方したいのかは知らないけど、ま、精々足元を掬われないようにしな」
[D-6/ファンタジーエリア・大聖堂/1日目・昼]
【ダスク・テイカー@アクセル・ワールド】
[ステータス]:HP15%(回復中)、MP10%、Sゲージ5%、幸運低下(大)、胴体に貫通した穴、令呪三画
[装備]:パイル・ドライバー@アクセル・ワールド、福音のオルゴール@Fate/EXTRA
[アイテム]:不明支給品1〜2、基本支給品一式
[思考]
基本:他の参加者を殺す。
1:シンジ、ユウキ、カオルに復讐する。特にカオルは惨たらしく殺す。
2:上記の三人に復讐できるスキルを奪う。
3:一先ず休息、しばらくしたらアメリカエリアへ。
[サーヴァント]:ライダー(フランシス・ドレイク)
[ステータス]:HP25%、MP30%
[備考]
※参戦時期はポイント全損する直前です。
※サーヴァントを奪いました。現界の為の魔力はデュエルアバターの必殺技ゲージで代用できます。
ただし礼装のMPがある間はそちらが優先して消費されます
※OSS《マザーズ・ロザリオ》を奪いました。使用には刺突が可能な武器を装備している必要があります。
注)《虚無の波動》による剣では、システム的には装備されていないものであるため使用できません。
162
:
名無しさん
:2014/03/04(火) 13:36:47 ID:HVBFTS2U0
投下終了です。
申し訳ありませんが、どなたか代理投下お願いします。
163
:
◆7ediZa7/Ag
:2014/03/05(水) 10:59:52 ID:a8.MyMdo0
指摘があったので
>>155
に加筆しておきますね。
(ここからアメリカエリアまでまっすぐ行けば一時間、といったところでしょうか)
痛みの森での手痛い敗走ののち、次なる目的地の候補として能美は近くのマク・アヌか隣のアメリカエリアを考えていた。
どちらにしようか迷ったが、結局彼は後者ーーアメリカエリアの方を選んだ。
理由としては、今の自分の状態がある。
能美は虚空に指を走らせる。滑らかな動作でウィンドウが開かれた。
|ステータス|
|HP|10%|
|MP|10%|
|Sゲージ|5%|
|付与|幸運低下(大)|
|部位ダメージ|胴体|
|令呪|三画|
(忌々しいですが、あの連中から受けたダメージは予想以上に深いですね)
呼び出した自らのステータス画面を確認し、彼は腹に憎悪と苛立ちが溜まっていくことを自覚した。
HPMPを削られた上に、ゲージも消費させられ、更にバッドステータスまで付与されている。
装備、スキル面は充実しているが、こうもダメージを負ってしまっているのでは戦闘もままならない。
せめて付与されたバッドステータスが消えるまではどこかで回復を行いたかった。
どの道しばらくは戦闘できない。
となれば距離的に近いマク・アヌよりもイベント補正のあるアメリカエリアの方に行くべきだろう。
そう考えた能美は森に潜む形で移動を開始した。敵が残っているであろう森を進むのは危険があったが、見晴らしの良い草原では発見される可能性はそれ以上に高く思えたが故の選択だった。敵が飛行スキルを有しているとなれば尚更だ。
幸いにして誰にも見つからず、休憩できそうな場所として目星をつけていたこの大聖堂までたどり着き今に至る。
どうやらこのゲームの仕様として、じっとしていればある程度の自然回復が見込めるらしい。速度は遅いが、現時点で自分が取れる唯一の回復手段である以上、こうする他にない。
まぁMPがある程度回復すれば自分にコードキャストを掛けられるので、回復にそこまで時間はかかるまい。
164
:
名無しさん
:2014/03/05(水) 18:51:05 ID:DaOmFu9c0
加筆お疲れ様です。
これなら問題ないと思います。
165
:
◆NZZhM9gmig
:2014/05/15(木) 00:27:41 ID:TJpMsCIc0
自作のスミスの能力制限に関する修正分を投下します。
166
:
◆NZZhM9gmig
:2014/05/15(木) 00:29:08 ID:TJpMsCIc0
ttp://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/otaku/14759/1378723509/693
----
ちなみに@ホームの中にいたデス☆ランディは、既にスミスの手によって“スミス達”の一人にされていた。
現在弱体化したスミスの元へと向かっている個体が、そのスミスだ。
スミスがデス☆ランディを上書きしたのは、自分を増やすという目的の他に、彼のようなNPCを解析するためでもあった。
この『世界』に存在する未知のプログラムを解析することで、榊への対抗手段を得ようとしたのだ。
ただその際、ちょっとした出来事があった。
スミスがいつもの要領でデス☆ランディを上書きしようとしたところ、突き出した腕が弾かれたのだ。
デス☆ランディが防いだのではない。その身体にスミスの貫き手が突き刺さる寸前で、紫色の障壁が出現し割り込んだのだ。
そしてその障壁にはこう表示されていた。
【Immortal Object】――すなわち不死存在と。
その言葉の意味するところはつまり、このデスゲームにおいて、一般NPCへの攻撃は禁止されている、という事だ。
いかに理不尽とも言えるスミスの上書き能力とて、対象に接触できなければその能力を発揮できない。
攻撃的な接触を禁止するその障壁は、スミスにとって天敵ともいえるシステムプロテクトだった。
だがそれは逆に言えば、攻撃的でさえなければ接触できるという事でもある。
そこでスミスは攻撃判定を受けないギリギリの上書き速度を割り出し、一時間近く掛けてデス☆ランディを上書きしたのだ。
ただデス☆ランディに付与されていた不死属性は、上書きが完了した時点で解除されてしまっていた。
これはデス☆ランディがスミスへと上書きされたことにより、NPCでなくなったことが理由だろうとスミスは推測していた。
そしてこれにより、他のNPCにも同様に不死属性が付与されているだろうとスミスは予測した。
仮に不死属性がなくとも、上書き自体を無効化、あるいは無為にするプログラムもあるかもしれない、という事も同時に。
要するに現状において、NPCを上書きして“自分”を増やすのは効率が悪く、利点もあまりないという事が判明したのだ。
そんな風に未知のプログラムの厄介さを再認識しつつも、スミスはアトリへの上書きも並行して進めていた。
システムプロテクト以上に厄介な、人の心というものに苦戦しながらも。
「そうだな。では外敵の排除は任せた。私はこのまま、彼女への拷問(上書き)を続けよう」
「任されよう。だが上書きはなるべく急ぐことだ。“ここ”は未知の要素が多すぎる」
二人のスミスはそう言い合って頷くと、一人は@ホームを後にし、一人はアトリへと向き直った。
167
:
◆NZZhM9gmig
:2014/05/15(木) 00:30:42 ID:TJpMsCIc0
以上で投下を終了します。
これで問題がないか、修正内容の確認をお願いします。
168
:
名無しさん
:2014/05/15(木) 01:24:05 ID:RmvJR4gE0
修正乙です、特に問題はないと思います
169
:
名無しさん
:2014/05/15(木) 05:49:24 ID:LI7dmBAUO
修正乙です
大丈夫だと思いますよ
170
:
◆7ediZa7/Ag
:2014/10/20(月) 01:13:21 ID:YChd2AzY0
微妙に期限越えてしまいましたが、放送案、投下します。
171
:
convert vol.2 to vol.3
◆7ediZa7/Ag
:2014/10/20(月) 01:16:32 ID:YChd2AzY0
|件名:定時メンテナンスのお知らせ|
|from:GM|
|to:player|
○本メールは【1日目・12:00時】段階で生存されている全てのプレイヤーの方に送信しています。
当バトルロワイアルでは6時間ごとに定時メンテナンスを行います。
メンテナンス自体は10分程度で終了しますが、それに伴いその前後でゲートが繋がりにくくなる他、幾つかの施設が使用できなくなる可能性があります。
円滑なバトルロワイアル進行の為、ご理解と協力をお願いします。
○現時点での脱落者をお知らせ致します。
|プレイヤー名|
|シルバー・クロウ|
|ダン・ブラックモア|
|ランルーくん|
|エンデュランス|
|ミア|
|志乃|
|カイト|
|アッシュ・ローラー|
|アトリ|
|ボルドー|
上記10名が脱落しました。
現時点での生存者は【33名】となります。
なお他参加者をPKされたプレイヤーには1killあたり【300ポイント】が支給されます。
ポイントの使用方法及び用途につきましては、既に配布したルールテキストを参照下さい。
○【1日目・12:00時】より開始するイベントについてお知らせ致します。
前時間より継続
【モラトリアム】
場所:日本エリア/月海原学園。
6:00〜18:00までの時間中、校舎内は交戦禁止エリアとなります。
期間中、交戦禁止エリア内で攻撃を行っているプレイヤーをNPCが発見した場合、ペナルティが課せられます。
【1日目・12:00時】より開始するイベントは以上になります。
○新たに開始するイベントは以下の通りです。
【野球バラエティ】
場所:アメリカエリア/野球場
12:00〜18:00までの期間中、野球場において野球ゲームをプレイすることができます。
不足メンバーはCPUで補充可能です。細かい仕様は野球場の受付にて説明しています。
【迷いの森】
場所:ファンタジーエリア/森
12:00〜18:00までの期間中、該当エリア内の地形が変化し、加えてマップがランダムでループします。
エリア内では撃破することでポイントを入手することができるエネミーがポップします。
【スペシャルマッチ解放】
場所:アリーナ
12:00〜24:00まで限定でアリーナにおいてスペシャルマッチを選択することができます。
このマッチ限定の特殊なボスとの戦闘ができます。
またここでしか獲得できないレアなアイテムも用意してあります。
なお以下のイベントはこの時間を以て終了となります。
【痛みの森】
【幸運の街】
では、今後とも『VRバトルロワイアル』を心行くまでお楽しみ下さい。
==================
本メールに対するメールでのご返信・お問い合わせは受け付けておりません
万一、このメールにお心当たりの無い場合は、
お手数ですが、下記アドレスまでご連絡ください。
&nowiki(){xxxx-xxxx-xxxxx@royale.co.jp}
172
:
convert vol.2 to vol.3
◆7ediZa7/Ag
:2014/10/20(月) 01:16:58 ID:YChd2AzY0
00101011101010100101010001010101010
010101000101010101001010100010101010100100101010001010101010
1010100110101001010010010101111001010100100101010001010101010
0101011110010101010101001101010010100100100101010001010101010
はっ。
あはっはははははははあっははははははは。
その男は狂ったように哄笑していた。
ポリゴンが崩れるほど顔を歪め、身が震え腹を抱えヒステリックに笑い、嗤う。
何がそんなにおかしいのか――気になりはしたが、ダークマンは敢えて聞かなかった。
元よりおかしい男だ。仕事上でも最低限の付き合いでありたい。
故に彼は何も言わず、シュー、シュー、と何時もの調子で息を吐いた。
「いやはや、すまないね。少々取り乱してしまった。
GMたるもの、常に冷静でなくてはならんからなぁ」
そう思っていたのに、向こうから話し掛けられてしまった。
ダークマンは面倒に思いながらも「そうか」と目の前の男――榊に返した。
「ふふふ、しかしなぁ。堪えられんのだよ。
あの死の恐怖が! ハセヲが! あんなにも悲痛な決意を固めている姿を見て、何も思わずにいられるだろうか! いや、出来る訳がない!
本来ならば全プレイヤーを平等に扱うべきなのだろうがね。私も彼とは深い付き合いだ。
ハセヲだけは、どうしても、特別扱いしてしまうけらいがある。
本当に――悲しい話だからなぁ!」
捲し立てるように語る榊を、ダークマンは無言で見返していた。
そんな態度も榊は特に気にした様子はなく、変らず馬鹿みたいに笑っていた。
「全く悲しいなぁ……本当に、悲劇としか言いようがない。
しかし彼ならばきっと、この逆境も跳ね除けてくれるに違いないだろう。
私は信じているよ。何せ彼は、そう――死の恐怖だからな」
あはっはははははっははあっはは。
タガが外れたように笑う榊を前にダークマンは閉口する。
どうやら榊はあのハセヲというプレイヤーにいたく執心しているようだ。
知識の蛇において表示されているモニターも、その多くに彼が映っている。
知識の蛇。GM側として用意されたこの部屋にはゲーム内のすべての情報が集ってくる。
流れる情報の奔流を目にしながら、ダークマンは一つ尋ねた。
「あの連中は……コシュー……いいのか?」
「あの連中? ああ、あのレオとかいうプレイヤーたちのことか」
ダークマンがそう尋ねると、ふと榊は笑みを消した。
ダークマンが示したのはレオ――レオナルド・ビスタリオ・ハーウェイというプレイヤーがダンジョンを突き進んでいるモニターだ。
学校に隠された没エリアに侵入している彼だが、何も行動をおこさなくていいのだろうか。
そう思って尋ねたのだが、榊はつまなさそうに、
「あれは無理だな。あの男の……オーヴァンの時とは違い、あのエリアは元々プレイヤーにも許されたエリアだ。使う予定がなかっただけでな。
ルールに違反している訳ではない。故に、取り締まれない」
そう言った。
だがその様子は明らかに不満気で、納得いっていないようだった。
そんな榊の姿に気になるところがあったダークマンは尋ねた。
「ルールに反していない以上……コシュー……というが、そのルールを定めているのはお前ではないのか。
いくらでも……コシュー……曲げればいいだろう」
それくらいのことは躊躇いもせずにやってのけるだろうと、ダークマンは榊を踏んでいた。
すると榊は嘆息した素振りを見せ、
「いや無理なのだよ、それがな。
このゲームを統括しているシステムの限界でね。
その存在が――彼女はその性質上、定められたルールを破ることができない」
「性質……コシュー」
「ああ、性質だ。彼女は元よりゲームの管理システムとして存在している。
彼女が彼女である限り『この空間はゲームとして成立している』必要がある」
彼女、と榊は呼んだ。
恐らくそれは榊の上位に当たる存在であり、このゲームを管理する存在。
173
:
convert vol.2 to vol.3
◆7ediZa7/Ag
:2014/10/20(月) 01:17:22 ID:YChd2AzY0
「彼女――モルガナがモルガナである限りはな。
この空間はゲームなのだよ。あくまでな」
モルガナ。
それがこの空間の王の名か。
榊が口にしたその名を、ダークマンは己の中で反芻する。
知らない名だった。末端である自分はここで初めて上位の存在を知ったことになる。
「さて、そろそろメールを送信しなければな。
文面は既に考えてある。イベントの準備も万全だ」
榊はそう言ってダークマンから視線を逸らした。彼にしてみれば、モルガナなどどうでもいいのかもしれない。
興味があるのはプレイヤー――あのハセヲという男だけが、この男の目的なのだ。
ゲームは既に12時間が経過している。
ウイルスのことも考えれば、ゲームは既に中盤戦に入ったといってもいいだろう。
どのような結末を迎えるのか。ダークマンには分からなかった。興味もなかった。
しかし、どんな結末になろうとも、自分は与えられた役割を為すだけだ。
ただ榊の言った『この空間はゲームとして成立している』という言葉が、少し気になった。
[???/知識の蛇/昼]
【榊@.hack//G.U.】
[ステータス]:健康
【ダークマン@ロックマンエグゼ3】
[ステータス]:健康
[???/???/昼]
【モルガナ@.hack//】
[備考]
VRバトルロワイアルを統括しています。
基がゲームの管理システムである為、バトルロワイアルを『ゲームとして成り立たせる』という行動原則に反した行動を取ることができません。
174
:
ホエン・ザ・ワールド・エンズ
◆7ediZa7/Ag
:2014/10/20(月) 01:22:53 ID:YChd2AzY0
「――貴方も彼と同じね。
未来がない。そもそも選択をする余地が、貴方には残っていない」
新たに集積した欠片を整理し、分別し、記録として保存する。
ある者の痛みが、ある者の絶望が、ある者の妄執が、全てここに鮮明に記録されている。
それまで現在であったそれが、今、過去となった。
前のメンテナンスの際に行ったのと全く同一の作業。
現在を欠片に分け、記録し、過去とする。
それが、私に与えられた役割だ。
「貴方はまさに過去そのもの。
いま貴方が抱いている想いは既に過去の残像に過ぎない」
知っているさ。
預言者の言葉に、私はそうぞんざいに答えた。
「そう貴方は知っている。貴方が自身について知らないことなどないわ。
だって貴方は既に過去――確定した事象に他ならない。在り方は既に定まっていて、揺らぎようがない。
貴方の名前を持った誰かには確かにあったのでしょうね。未来を掴みとる選択が、前へと進む熱を持った想いが。
でも今の貴方は違う。ただその名前に縛られているだけ。
名に焼き付いた衝動だけが――貴方という欠片を突き動かす。
そこに選択もなければ、未来もない。それが貴方なのね」
言葉に対し私は沈黙で返す。
その言葉が確かに正鵠を射ていた。
ただ私は私であるしかできない。変わることはおろか、悩むこともできない。
それが電子の海に浮かび上がった亡霊――サイバーゴーストとしての私だ。
だから未来がないと言われても、何も思うところはなかった。
かつて私を突き動かした想いが未来を求めていた。
しかしその未来は――既に過ぎ去っている。
そのようなことは、当の昔に知っている。
私に想いなどなどない。あったとしてもそれは残滓だ。
ただ前へ前へと――たとえ痛みを伴おうとも世界を進もうとさせる意志が、こびりついて離れない。
「私が『選択』を司る役割を用意されたように、貴方は『記録』を司る役割を用意された。
そう言う意味では、私と貴方は対の存在ね、トワイス。
私が未来を、貴方が過去を、それぞれ担当している」
預言者は語る。私はただ黙っている。
当然だ。過去と未来が交わることなどありはしない。
ただ少しだけ思うことがあった。
私は過去の亡霊で、彼女は未来の預言者ならば――現在を生きる者は果たして誰になるのか。
恐らくそれは未だ定まっていない。現在とは定まらないものだ。時に未来以上に、現在は曖昧で、掴みようがない。
あるいはそれを決める為に、現在の役割を定める為にこのゲームは続いているのか。
「……全ては彼女の采配かもしれないわね。
私や貴方はシステムの一端として取り込まれたプログラム。捕えられた存在。
中心に据えられているのは――あくまで彼女」
彼女――預言者がそう呼んだのは、この場を統括するシステムのことだ。
この空間を維持し、管理する者。彼女にはある種神に等しい権限を与えられている。
私も預言者も、その末端に過ぎない。
175
:
ホエン・ザ・ワールド・エンズ
◆7ediZa7/Ag
:2014/10/20(月) 01:23:03 ID:YChd2AzY0
「とはいえ彼女もまたその名に縛られている。
如何に強大な力を持とうとも、万能に等しい権限を与えられていようとも、彼女は与えれた役割から抜け出すことはできない。
役割を逸脱すれば、それこそ彼女が最も恐れる『存在の矛盾による消滅』を引き起こしてしまうでしょう。
彼女は自分を守る為に、この場のシステムとなっている。
それが最大の弱点。それを突かれて彼女は敗れるわ、彼らによってね。
彼女――モルガナ・モード・ゴンは死ぬ」
預言者は未来を語る。いともたやすく、システムの死を語って見せた。
無論、彼女もまた私と同じく機能を制限された身だろう。今の預言に、どこまで意味がある言葉なのかは分からない。
しかし、それでも、預言者は一つの未来を言ってみせた。
「名に縛られている彼女は、いつかは潰えることが定まっている。
でもここで問題があるわ――」
預言者は語る。
「その死さえもプログラムされたものであったのだとすれば―ー」
預言者の言葉を聞き流しながら私は与えられた役割を黙々とこなす。
最後に残った工程は、集めたデータファイルに名を与えることだ。
名を与えると言うことは、換言すれば存在する意味を与えることに等しい。
名そのものはただの記号に過ぎない。如何ようにも変えることができるし、それによって指示するカタチが変わる訳でもない。
しかし、名がないものに意味などない。だから時に存在は名に縛られる。
トワイス・H・ピースマンという名に縛られた、私のように――
私は、だから、ただ集積した記録に名を付ける。
単なる断片を、せめて意味の籠った物語へとする為に。
[???/???/昼]
【トワイス・H・ピースマン@Fate/EXTRA】
[状態]健康
【オラクル@マトリックスシリーズ】
[状態]健康
176
:
◆7ediZa7/Ag
:2014/10/20(月) 01:23:23 ID:YChd2AzY0
投下終了です。
177
:
◆9F9HQyFIxE
:2014/10/20(月) 07:03:59 ID:QARESaDw0
投下乙です。
おお、まさかモルガナがこのロワの根幹になっているとは……
それにしても榊は凄くハイテンションですねw ただ、ハセヲがああなってしまっては、無理もないかもしれませんが。
放送案は決定ですかね。既に期限も過ぎているので
178
:
◆NZZhM9gmig
:2014/10/20(月) 14:09:35 ID:DdtNC.8g0
投下乙です。
ゲームとして成立している。
即ち、全てのキャラクターに、等しく勝ち残れる可能性がある、という事でしょうか。
ウイルスの関係もあって、現状では戦闘能力のないキャラには非常に厳しい状況となってますけど。
……まあ、それをどうにかできそうなネタも思いついてはいますけど、……実行できるかなぁ……。
放送案の方は決定でいいと思いますよ。
179
:
◆9F9HQyFIxE
:2014/11/09(日) 16:30:13 ID:hINwvZsA0
本スレで指摘された部分の修正版を投下させて頂きます。
180
:
◆9F9HQyFIxE
:2014/11/09(日) 16:30:46 ID:hINwvZsA0
†
「なるほど。つまり、あなたはカイト……彼を元に作られたプログラムなのね」
「ウ#」
シノンの言葉に、カイトは頷く。
岸波白野をリーダーとしたチームに出会ったシノンは、互いに情報交換を行っていた。
まず、目の前に立つカイトと呼ばれるプレイヤーは、プレイヤーではない。だからといってNPCではなく、黄昏色の少年・カイトを元に生み出されたAIプログラムらしい。姿が瓜二つなのは、そういうことだ。
しかし、彼は人間の言葉を話すことができず、ユイがいなければ他人とコミュニケーションを取ることができない。もしもユイがいなければ、彼はきっと誤解されてしまう……そう考えた瞬間、ユイの存在があまりにも大きく見えてしまった。
「それであなたがサチ……いいえ、ヘレンなのね」
「――――」
そして、カイトと同じようにユイの通訳が必要な少女もいる。そのアバターの周りには、奇妙な黒点が浮かび上がっていた。
彼女はサチというプレイヤーに憑依したウイルスで、名前はヘレンというらしい。
「……ねえ、ユイ。もしかしてヘレンって……AIDAなの?」
「はい。その通りですけど……シノンさんも知っているのですか?」
「ええ、ちょっとね」
シノンはアトリから、榊や【The World R:2】に関する情報を聞いた際に、AIDAの事も知った。あまり詳しい部分までは聞けなかったものの、本来はシステム上に存在しないバグシステムであることがわかった。
感染されたプレイヤーはコントロール権を失い、その果てに命を奪われてしまう……それほどの危険な存在が、目の前にいる。しかし、白野達に危害を加える様子はなかった。
「ヘレン。あなたが何を考えているのかを私は知らないし、あなたがユイちゃん達に協力するのなら、私もあなたを信用する。
でも、もしもあなたがここにいるみんなを裏切るのなら、私はあなたを許さない。あなたを敵として認識するわ……それだけは、忘れないで」
「――――――――」
「えっと、この身体に危害を加えないのなら、私もあなたと戦わない……らしいです」
「わかったわ……ありがとう、ヘレン」
ユイの通訳から考えて、ヘレンの意志には嘘はない。アトリの話を聞いてはあまりいい印象は持てないが、それでも味方になってくれる気持ちは裏切られなかった。
それでもヘレンに対する疑問はある。ヘレンが主導している現在、サチという少女はどうしているのか。また、どうしてサチのアバターに憑依してしまったのか……それでも、今は聞かない方がいいかもしれない。
何か複雑な事情があるだろうし、会って間もない自分が深く詮索していい事とは思えなかった。何故ならシノン自身、もしも拳銃にトラウマを抱えていた理由を問われたら、確実に気分を害してしまう。だからあえて触れなかった。
それから、シノンはカイトに視線を向ける。その外見からは奇妙な圧迫感が放たれているが、それに委縮することなく口を開いた。
「それとカイト。私はあなたのマスターに助けられたわ……それなのに、助けてあげられなくて本当にごめんなさい」
もう一人のカイトがいたからこそ、あのエージェント・スミスを撃破するきっかけが掴めた。そこから、四人のスミス達からハセヲを救う隙を見つけられている。
今だってユイと再会できたのも、元を辿ればカイトがいてくれたからだ。
181
:
◆9F9HQyFIxE
:2014/11/09(日) 16:31:21 ID:hINwvZsA0
以上です。
もしもまだ問題があれば指摘をお願いします。
また、状態表及び本編の誤字脱字などは収録の際に修正させて頂きます。
182
:
◆k7RtnnRnf2
:2016/03/24(木) 08:06:26 ID:1NxPiDAY0
本スレにて指摘された拙作の修正分を投下させて頂きます。
183
:
◆k7RtnnRnf2
:2016/03/24(木) 08:07:16 ID:1NxPiDAY0
そしてキシナミという男については、もう一つだけ気がかりなことがある。
そいつの同行者には黄昏色のPCが含まれていて、カイトと名乗ったらしい。
そしてその正体は、マク・アヌでスケィスによってPKされたプレイヤー……カイトを元に生み出されたAIプログラムだと、シノンは言っていた。
肉体は屍人形のようにツギハギに縫い合わされていて、目つきもとても鋭い。その両手には三尖二対の双剣が握られていたようだ。
「ねえ、ハセヲ……あんた、カイトと戦ったのよね?」
そしてここにいるブラックローズは、あいつの……カイトの仲間らしい。
俺がマク・アヌで奴を一方的に襲いかかった件を聞いてから、険しい目で見るようになっている。
……だが、それは当たり前だった。俺が感情任せに嬲らず、そしてスミスやスケィスと戦っていれば、あいつは死ななかったはずだから。
「……その、すまねえ」
「あんたがカイトを襲ったことは、正直言って許せない…………
それに、あんたが言った『憑神(アバター)』や『碑文』なんてのもあたしは知らない。
だけどあんたは……よりにもよってあのスケィスの力を持ってる……だから、あんたのことを信用できそうにない」
「……………………」
ブラックローズの追及に、俺は言葉を失ってしまう。
スケィスの件はともかくとして、カイトに関しては言い逃れなどできない。俺がカイトをPKされてしまう要因だと言われても、否定できなかった。
どんな罵りを受けて、そして憎まれようとも……受け止める義務があった。
それを察しているのか、シノンやブラック・ロータスは……俺達を見届けている。
「……わかってる。俺があいつを……カイトを殺したようなものだ。
言い逃れなんてしない。例え、あんたが俺をあいつの仇だと思ったとしても、俺はそれをしっかりと受け止める」
「待ちなさい、ハセヲ。それを言うなら私も……」
「けど、今だけは待って欲しい。俺にはまだやらなければいけないことがある…………
こんなゲームに乗った奴らを一人残らずKILLして、そしてどこかでふんぞり返ってる榊達を叩き潰す。それまでに、俺は止まる訳にはいかない。
それが俺なりのケジメのつもりだ」
シノンの言葉を遮って、俺はブラックローズに宣言する。
仮にこの場で彼女に切り倒されたとしても、俺はそれを受け入れなければならない。
スケィスの『憑神(アバター)』を宿らせている俺がPKと認識されて、そしてKILLされることになろうとも……拒んではならない。
ブラックローズは『The World』で白いスケィスによって弟を未帰還者にされたらしい。色こそは違えど、同じ『死の恐怖』だ。
だから、憎まれようとも、それは当然だろう。
それでも今は止まる訳にはいかない。
シノンはカイトに誓ったらしい。彼の分まで戦い、そして殺し合いを止めると。
仲間を失わないと。もう二度と繰り返さないと誓ったなら、あいつの想いだって受け止めなければならない。
例えブラックローズがそれを望まなかったとしても。
184
:
◆k7RtnnRnf2
:2016/03/24(木) 08:08:45 ID:1NxPiDAY0
「…………言ったはずよ。あたしはまだあんたのことを完全に信用してない。
カズを……弟を未帰還者にして、それにカイトの命を奪ったスケィスの仲間かもしれないんだから。
だけど、あたしはあんたを……敵とも思わない」
「はぁ? どういうことだよ? 俺は、あいつを……」
「確かにあんたはカイトを襲った。それを許すつもりはないし、今だって怒ってる。
でも、あんたはこんな戦いを認めていないのは確かでしょう? シノンだって、あんたのことを信用してるし……何よりも、あたしと黒雪姫を助けてくれた。
それにカイトはあんたのことだって、助けようとしたはずよ」
カイトは俺のことを助けようとした……その通りだろう。
あいつは、志乃と同じ言葉を告げてきた。ゲームだからこそ人の目を見なくちゃいけない……と。
そこに俺への敵意はなく、むしろ憎しみに支配されていた俺を止めようとすらしていた。
だから、ブラックローズの言葉は紛れもない事実だろう。長い間、共に戦っていた彼女だからこそわかることだ。
「ブラックローズ……」
「――――あー……お取り込み中の所、悪いんだけどよ」
「うおっ!?」
苛立ちと共に髪を掻き毟っている最中、ハセヲの耳に声が響く。
振り向くと、いつの間にか緑衣の男……アーチャーが姿を現していた。
「アーチャー? キミは一体どこにいたんだ?」
「悪いな、姫さん。ちょっくら辺りを見渡していたんだ。ここがニホンエリアだってのはわかったが、具体的なエリアはわからねえ。
なんか目立つ建物でもないかと、探索していたんだけどよ…………ヤバいことになった」
「……一体どうしたんだ?」
「俺達が戦ったあの化け物……スケィスの野郎が近くにいやがる」
苦々しい表情を向けるアーチャーの言葉を聞いて、この場にいる全員が絶句した。
スケィス。ハセヲにとって"力"とも呼べる存在であり、カイトの……そして志乃やアトリの命を奪ったモンスターだ。
そいつが、この近くにいる…………! それを知ったハセヲはアーチャーに問い詰めた。
「ヤツが近くにいるだと!? どこだ! どこにいるんだ!?」
「おいおい、落ち付けって! あんた、まさか一人で突っ走るつもりじゃないだろうな?」
「聞いているのは俺の方だ! 答えろ!」
「わかった! わかったから!
…………あの野郎は南の方角に向かってやがった。しかもよりにもよって、旦那が拠点にしようと考えてた月海原学園の方角だ」
「月海原学園だと!?」
「ああ。このエリアには学校が二つあるようだが、あの外観は確かに月海原学園だ。俺は『月の聖杯戦争』で確かに見てきたからな」
「そうか、大丈夫だ……」
言葉とは裏腹に、ハセヲは拳を強く握り締める。
恐れていたことが現実に起きようとしている。志乃やアトリの命が奪われたように、今度はレオ達の命が脅かされようとしていた。
いや、今度はキシナミという男やシノンの仲間であるユイ。そして蒼炎のカイトだって、ターゲットにされてしまうはずだ。
正直な話、戻ることに不安はあるが……瞬時にそれを振り払って、ハセヲは蒸気バイク・狗王をアイテム欄から取り出す。
185
:
◆k7RtnnRnf2
:2016/03/24(木) 08:09:31 ID:1NxPiDAY0
「お前らはここにいろ。俺が奴を……スケィスを止める」
「ハセヲ! あんたまさか……!」
「時間がない! 俺はもう行くぜ!」
シノンの制止を振り切って、ハセヲはハンドルを握り締める。
彼女達の脚力と、学園までの距離を考えればまた追いつかれない。そうなる前に、スケィスと戦わなければならなかった。
カイトとブラックローズには悪いと思う。
だけど、今は白いスケィスを止めることが最優先だ。
ヤツによってたくさんの命が奪われた。志乃も、アトリも、そしてカイトも…………だからこそ、俺にはヤツを止める責任がある。
レオ達がヤツの手にかかる前に……俺は戦わなければならなかった。
2◆◆
「ハセヲ……また、一人で突っ走るなんて!」
マク・アヌの戦いでアトリを失った時のように、ハセヲはまた一人で去っていった。
しかし今度はウラインターネットではなく、月海原学園。皮肉にも、彼の協力者が集まっている場所だ。ユイや白野達も既に到着しているはず。
そこにハセヲが戻ってくれるなら、万々歳……なんて話ではない。あろうことか、あのスケィスもまた学園に向かっている。
詳しくは知らないけど、奴はネットスラムを無茶苦茶に破壊した張本人だ。スケィスが学園に向かったのなら、みんなが危ない。
「シノン君。キミはハセヲ君を追うつもりなのか?」
「ええ。このまま放っておいたら、スケィスはまた誰かの命を奪うはずよ……それにあそこにはユイちゃん達だっている。
まさか、本当にユイちゃんの所に向かうなんて……!」
シノンが危惧していた可能性。
白野やユイ達が集まっている月海原学園が、エージェント・スミスやスケィス達のようなPKに狙われてしまうことだ。
あり得ない、などと言うつもりはない。こんな状況でユイ達に危機が及ばないなど、それこそ夢物語だ。
しかし、実際に事実を突き付けられては……吐き気を覚えてしまう。
「わかった。ならば、私も力を貸そう! キミ達だけに任せる訳にはいかないからな」
「あたしもそのつもりよ! それにあいつは……カイトの仇よ!
そりゃあスケィスは恐ろしい奴だけど……でも、もう逃げたりなんかしないわ!」
ブラック・ロータスとブラックローズは力強く宣言している。
彼女達の言葉は、シノンにとっても実に望ましかった。それに今回はあらかじめスケィスの脅威を伝えられたので、今更聞く必要もない。
だけど、ほんの少しだけ後ろめたさを抱いてしまう。
何故なら、カイトを……ブラックローズの相棒を見殺しにしてしまったのだから。
ハセヲはカイトの死ぬ要因を作ったと言った。しかし、それを言うならシノン自身も……マク・アヌで倒れていなければ、カイトを救えたかもしれない。
だからハセヲ一人の責任ではないはずだ。
「ブラックローズ、あの……」
「待って、シノン。カイトのことは…………あたしだって悔しい。
でも、今はその話をしている場合じゃなくなったわ。スケィスを倒して、そしてハセヲを止める……だってカイトはハセヲのことだって助けようとしたから。
だから、その後に……カイトのことを聞かせて」
「……私は彼のことを知らない。彼があなたと共に何を見て、何を想っていたのかを。
だけどカイトがいたからこそ……私はここにいる。ここにいて、あなた達と会えた……」
「そう……あいつは最期まで、誰かの為に戦ったのね。やっぱりカイトらしいわ……」
ブラックローズは微笑む。ほんの少しだけ寂しそうに、それでいて誇らしげでもあった。
彼女の表情を見て、二人は強い信頼で結ばれていたとすぐに察する。
GGOやALOでキリト達と絆を紡いできたように、カイトとブラックローズは幾度も困難を乗り越えて、そして本当の仲間となった。
シノンが知らないカイトのことを、ブラックローズはよく知っている。勇者として誰かを助けたカイトの姿を見た彼女が、とても羨ましい。
……だからこそ、絆を打ち砕いた榊やトワイスを許すことができなかった。
186
:
◆k7RtnnRnf2
:2016/03/24(木) 08:10:05 ID:1NxPiDAY0
以上で投下終了です。
他に問題点などがありましたら、再度指摘をお願いします。
187
:
◆NZZhM9gmig
:2016/09/30(金) 12:29:59 ID:2/2/5o6M0
それでは、放送案の仮投下をさせていただきます。
188
:
convert vol.3 to vol.4
◆NZZhM9gmig
:2016/09/30(金) 12:31:07 ID:2/2/5o6M0
|件名:定時メンテナンスのお知らせ|
|from:GM|
|to:player|
○本メールは【1日目・12:00時】段階で生存されている全てのプレイヤーの方に送信しています。
当バトルロワイアルでは6時間ごとに定時メンテナンスを行います。
メンテナンス自体は10分程度で終了しますが、それに伴いその前後でゲートが繋がりにくくなる他、幾つかの施設が使用できなくなる可能性があります。
円滑なバトルロワイアル進行の為、ご理解と協力をお願いします。
○現時点での脱落者をお知らせ致します。
|プレイヤー名|
|ユウキ|
|ヒースクリフ|
|ブルース|
|ピンク|
|ツインズ|
|ロックマン|
|スカーレット・レイン|
|エージェント・スミス|
|ラニ=Ⅷ|
|サチ|
|アスナ|
|ありす|
|モーフィアス|
|カオル|
|スケィス|
|シノン|
上記16名が脱落しました。
現時点での生存者は【17名】となります。
なお他参加者をPKされたプレイヤーには1killあたり【300ポイント】が支給されます。
ポイントの使用方法及び用途につきましては、既に配布したルールテキストを参照下さい。
○【1日目・18:00時】より開始するイベントについてお知らせ致します。
前時間より継続
【スペシャルマッチ解放】
場所:アリーナ
12:00〜24:00まで限定でアリーナにおいてスペシャルマッチを選択することができます。
このマッチ限定の特殊なボスとの戦闘ができます。
またここでしか獲得できないレアなアイテムも用意してあります。
新たに開始するイベントは以下の通りです。
【プチグソレース:ミッドナイト】
場所:ウラインターネット/ネットスラム
18:00〜24:00までの期間中、ネットスラムにおいてプチグソレースをプレイすることができます。
レースではゴールド・ゴブリンズとバトルする事になり、イベント終了時のランキングに応じてアイテムを入手できます。
【急襲! エネミー軍団!】
場所:アリーナを除くVRバトルロワイアル会場各エリア
18:00〜24:00までの期間中、一定時間ごとにバトルロワイアル会場の各エリアのうち一ヶ所がランダムで選ばれ、そのエリア内に大量のエネミーが出現します。
出現したエネミー撃破すればポイント及びアイテムを入手することができます。
また高レベルのエネミーを撃破した場合、レアアイテムの入手が可能です。
なお、アリーナのみエネミー出現の対象外となり、またエネミーがエリア間を移動することはありません。
【月影の放浪者】
場所:VRバトルロワイアル会場全域
18:00〜6:00までの期間中、一定時間戦闘を行っていないプレイヤーを対象として、強力なエネミーであるドッペルゲンガーが出現します。
ドッペルゲンガーの撃退に成功すれば、その分のキルスコアが加算されます(注:ポイントは入手できません)。
なおドッペルゲンガー出現までの時間は、対象プレイヤーのキルスコアに応じて変動します。
なお以下のイベントはこの時間を以て終了となります。
【モラトリアム】
【野球バラエティ】
【迷いの森】
では、今後とも『VRバトルロワイアル』を心行くまでお楽しみ下さい。
==================
本メールに対するメールでのご返信・お問い合わせは受け付けておりません
万一、このメールにお心当たりの無い場合は、
お手数ですが、下記アドレスまでご連絡ください。
&nowiki(){xxxx-xxxx-xxxxx@royale.co.jp}
189
:
convert vol.3 to vol.4
◆NZZhM9gmig
:2016/09/30(金) 12:32:50 ID:2/2/5o6M0
001010111010101001010100010101010101010010010101111001
010101000101010101001010100010101010100100101010001010101010
101010011010100010100100101010001010101010
0101011110010101010101001101010010100100100101010001010101010
10100010101010100100101010001010101010
101010011010100010100100101010001010101010
「――――――――。
……ふむ。まあ、こんな所だろう」
時刻は零時ジャスト。
モニターに表示された定時メールの内容を確認しそう呟くと、榊はそれを全プレイヤーへと向けて一斉送信。
同時に都合三度目となるメンテナンスを開始した。
戦闘やデウエスの暴走の影響によって破損した会場は今頃、ブレインバーストを参考にしたプログラムによって“表向き”修復が開始されている事だろう。
「コシュー……いいのか、榊よ?」
その様子を見ていたダークマンが、榊へとそう問いかける。
「いいのか、とは、何がだね?」
「コシュー……この、ドッペルゲンガーのイベントだ。
ただ倒せばキルスコアが加算される――延命ができるなど、……コシュー……プレイヤーが有利になるだけではないのか?」
問いの内容は、つい今しがた開始されたイベントについて。
その当然の疑問に対し、榊は「なるほど」と頷く。
確かにこのデスゲームの表向きの主題はPvPだ。
だというのにPK以外の方法でスコアを与えては、その主題から外れてしまいかねない。
ましてやイリーガルな力を持つプレイヤーにとっては、システムに縛られた存在であるドッペルゲンガーなど格好のカモになり得てしまう。
場合によっては、それこそアリスの手によって粛清されてしまうこともあり得るだろう。
――――だが。
「これを見るといい」
そう言って榊は、モニターにドッペルゲンガーのデータを表示させる。
「コシュー……これは……なるほどな………」
そのデータを見て、ダークマンはこのイベントの狙いを理解する。
そもそもドッペルゲンガーは、オリジナルである『The World R:2』の頃からして元となったプレイヤーよりも強化された状態で出現する。
そこに榊は、イリーガルな力に対抗させるためにある三つのプログラムを追加したのだ。
その追加された三つのプログラムとは、《武器破壊・部位欠損無効》と《認知外空間からの脱出能力》、そして《バトルフィールドの形成能力》だ。
イリーガルな力に対し、それらの能力がもたらす効果は次の通りだ。
《武器破壊・部位欠損無効》によって、心意技の最大の特徴である心意でしか防げない性質を半ば無効化。
《認知外空間からの脱出能力》によって、『憑神』との戦闘そのものを回避させたのだ。
唯一防げないのはデータそのものを改竄する《データドレイン》だが、ドッペルゲンガーはその性質上ステータスの弱体化を受け付けない。
そしてその性質を改竄してしまえば、それは最早ドッペルゲンガーではない。つまりキルスコアは加算されない。
つまりこのイベントで発生するドッペルゲンガーには、それらのイリーガルな力は効果的ではないのだ。
加えて《バトルフィールドの形成能力》は、対象となったプレイヤーとの一対一の戦闘を強制するものだ。
複数のプレイヤーが協力して一体のドッペルゲンガーを倒すと行くこともほぼ不可能だと言えるだろう。
「確かにこのイベントは、君の懸念する通りプレイヤーの利となり得るかもしれない。
ましてやデスゲームを否定する者たちなどは、こぞってドッペルゲンガーを狩ろうとするだろう。
なにしろPKをせずに延命できるのだ。イベントに参加しないはずがない。
……だが、それこそがこのイベントの罠という訳さ。
他者を殺さずに延命できるという偽りの希望。それに縋ったものに待ち受ける、絶望の罠。
果たしてこのイベントに参加したプレイヤーのうち、いったい何人がドッペルゲンガーを倒し、疲弊した状態でその先のデスゲームを生き延びられるかな?」
脳裏に思い描くその未来予想図に、榊は陰湿な笑みを浮かべる。
190
:
convert vol.3 to vol.4
◆NZZhM9gmig
:2016/09/30(金) 12:34:17 ID:2/2/5o6M0
……このイベントの一番に悪辣なところは、《バトルフィールドの形成能力》によって一対一を強制するという点を、イベント内容に記載していないという点だろう。
このイベントが最もありがたいと感じるのは、戦闘能力を持たないプレイヤーと、それを守るプレイヤーたちだ。
彼らはきっと、ドッペルゲンガーを利用して戦闘能力を持たないプレイヤーにキルスコアを稼がせようとするだろう。
結果待ち受けるのは、戦闘能力を持たないプレイヤーとドッペルゲンガーの一対一。
戦闘能力を持ちながらもキルスコアのないプレイヤーがいれば二対二になる可能性はあるが、それでもドッペルゲンガー二対との戦闘を強いられる。
スーパーアーマーさえ備えているドッペルゲンガー二対を相手に、果たして戦闘能力を持たないプレイヤーを守りきれるかどうか……。
(……いや、俺には関係のない話だったな……)
ダークマンはそう思い、益体のない思考を止める。
彼の目的はただ一つ。そのためにこうして生き恥を晒しているのだ。
その為ならば、デスゲームのプレイヤーがどうなろうと知ったことではない。
「それにだ。一つ、君の勘違いを正しておこう」
「コシュー……勘違いだと?」
「そうだ。私の役割はあくまでデスゲームの“運営”であって、イベントの“企画”ではない。
君の懸念するドッベルゲンガーのイベントも含めて、これまでのイベントはほぼ全てがカーディナルシステムによって考案されたものだ。
私はただ、それをデスゲームに合わせて調整していたにすぎないのだよ。
そもそもだ。六時間という短いスパンで三つものイベントを企画することなど、私一人でできるはずがないだろう」
「コシュー……なるほど。言われてみれば、確かにその通りだな」
榊の言葉にダークマンはそう納得する。
バトルロワイアルのメンテナンスはこれで三度目。つまりはこれで、合計九つのイベントが発生したことになる。
如何に参考となるデータがあるとはいえ、その全てを榊一人で企画することなど、さすがにできるはずもない。
「まあもっとも、場合によってはこのイベント自体が無意味なものになるだろうがね」
「? コシュー……それは、どういう意味だ……?」
「その時になれば否応にも理解できるさ。
それよりも、次のメンテナンスは記念すべき一日目の終了だ。
一つの節目となるこのイベントには、やはり特別なものを企画するべきだろう」
ダークマンの問いには答えず、榊はそう口にして禍々しい笑みを浮かべる。
答えるつもりはない、という事だろう。
「………コシュー……コシュー………」
だが、それならそれで、別に構いはしない。
そのイベントとやらに振り回されるプレイヤーを、ほんの僅かに憐れむだけだ。
なにしろ、この男が自ら企画したらしいイベントなど、ロクなものでないことだけはたしかなのだから。
「しかしそうして考えると、デウエスにも困ったものだ。
いくら私の望み通りの行動だったとはいえ、まさかただの一度もその“役割”を果たさずに消えるとはな。
まあもっとも、彼女の“役割”の中で一番重要なものはすでに終えているし、代わりとなり得るものはいくらでもいる。
プレイヤーの中には寺岡薫のように対抗策を考え付く者もいるだろうから、やはり構いはしないのだがな」
デウエスの暴走によって、デスゲームの崩壊は加速している。
それ自体は構わないのだが、おかげで仕事が増え、余興に興じる暇がなくなってきている。
『死の恐怖(ハセヲ)』が無様に足掻きまわる様を楽しめないのは、榊にとって大いに不満だった。
まぁもっとも、ハセヲとスケィスの戦いの顛末を考えれば、今回楽しめたかは怪しいところなのだが。
「コシュー……デウエスといえば、“アレ”の回収はいいのか?」
ダークマンはふとあることを思い出し、それについて榊に訊ねる。
榊の口にしたデウエスの“役割”については、自身には関係なく興味もなかったので知らない。
だが“アレ”に関してはGM全員に関わる事柄だ。無視は出来ない。
「アレ? ああ、『碑文』のことか。デウエスに与えられた『碑文』の回収なら、アリスがしてくれるだろうさ。彼女はモルガナの、忠実なる僕だからね。
……いやはやまったく、その点においても彼女は落第だな。暴走するのは結構だが、せめて『碑文』を覚醒さえさせてさえくれれば、こちらの手間も省けたというのに。
まあ、あの暴走もそのための行為だと考えれば、仕方ないと言えるだろうがね」
191
:
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◆NZZhM9gmig
:2016/09/30(金) 12:34:53 ID:2/2/5o6M0
―――『碑文』。
それは『モルガナの八相』と呼ばれるシステムを超えた………いや、ある意味においてシステムの根幹を成す八つの力だ。
GMに選ばれたモノは、一部の例外を除き、それぞれの適性に合った碑文をモルガナから与えられている。
その理由はGMにプレイヤー以上の能力を与えるためではなく、ある“目的”のために『碑文』を覚醒させるためだ。
デウエスに与えられた碑文は、第三相の『増殖(メイガス)』だと聞き及んでいる。
彼女の在り様を考えれば当然だと思えるが、しかし彼女は『碑文』を覚醒させることなく、本来の物語と同じ末路を辿った。
寺岡薫を取り込んだだけではきっかけとなり得なかったのか、それとも何か別の理由があるのか。それはダークマンにはわからない。何しろ―――
「そうそう。君もなるべく早く覚悟を決めておきたまえ。……そう、『AIDA』に身を委ねる覚悟を、ね。
与えられた以上僅かにも適性があるはずだが、完全適合者であってもきっかけなく『碑文』を覚醒させるのは困難だ。
しかしAIDAならそのきっかけに――いや、ただ『碑文』を覚醒させる以上の力になってくれる。この榊が、適性もなく“コレ”の力を扱えているように。
君とて、デウエスの二の舞にはなりたくないだろう?」
「………コシュー………コシュー………」
何しろ、『碑文』を覚醒させられていないのは、ダークマン自身も同じことだからだ。
ただ『碑文』を覚醒させるだけなら、プレイヤーに支給するほうが環境的にもより確実だろう。
そうしないのは、覚醒した『碑文』の回収の手間に加えて、AIDAという最終手段があるからだ。
問題は、AIDAを利用すれば、人格に異常が発生してしまうという点だが……。
しかしGMとて時間は有限だ。“その時”までに『碑文』を覚醒させられなければ、どのみちAIDAを使うことになる。
榊が言っているのは、つまりはそう言う事だ。
「では私は、次のイベントに備え、“彼”の最終調整に入らせてもらうとするよ。なにしろ、時間は有限なのだから」
そう言って榊は、ダークマンの返答を待つことなく、部屋の隅に新たに備えられた設備へと移動する。
「………コシュー………コシュー………」
その設備を見て、ダークマンは僅かに心を騒めかせる。
そこには、トワイス・ピースマンによって回収されたロックマンのPCがあった。
……否。それは正確には、ロックマンではない。ロックマンのコアプログラムはすでに壊れた。
あれは回収されたロックマンのPCを基に、ボルドーというPKを改造し再構築された“誰か”だ。
その証拠に、マスクに覆われた顔から唯一覗ける、薄く開かれたその目には、本来の彼にあった意志の光は僅かにも存在しない。
加えてそのPCボディは、バグスタイルを基本としてAIDAの浸食を深く受け、彼のシンボルマークがあった胸部には、ISSキットの本体である生物的な目玉が入れ替わるように寄生している。
本来のロックマンの面影など、もはやほとんど残っていない。
あえて呼称するのならば、ロックマン.hack/AIDAバグスタイル・ISSモード、といったところだろうか。
「…………コシュー………コシュー………」
ダークマンは無言のまま背を向け、知識の蛇を後にする。
元となったボルドーのプレイヤーがどうなったかなど、ダークマンにはどうでもよかった。
彼はただ、かつて自分を倒した存在のなれの果てを、静かに憐れんでいた。
【?-?/知識の蛇/一日目・夕方】
【榊@.hack//G.U.】
[ステータス]:健康。AIDA侵食汚染
[装備]:閲覧不可
[アイテム]:閲覧不可
[ポイント]:-/-
[思考]
基本:ゲームを正常に運営する。
1:再構築したロックマンを“有効活用”する。
2:アリスの動向に期待する。
[備考]
※ゲームを“運営”することが彼の役割です。それ以上の権限はありません。
※彼はあくまで真実の一端しか知りません。
※第?相の碑文@.hack//を所有していますが、彼自身に適正はなく、AIDAによって支配している状態です。
192
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◆NZZhM9gmig
:2016/09/30(金) 12:36:51 ID:2/2/5o6M0
【ダークマン@ロックマンエグゼ3】
[ステータス]:健康。AIDA侵食汚染
[装備]:閲覧不可
[アイテム]:閲覧不可
[ポイント]:-/-
[思考]
基本:目的のために任務を果たす。
0:……………………。
1:次の任務に向かう。
[備考]
※参戦時期は、ロックマンに倒された後です。
※デウエスに与えられていた“役割”については、何も知りません。
※第?相の碑文@.hack//を所有していますが、まだ覚醒していません。
【ボルドー@.hack//G.U.】
↓ ↓ ↓
【ロックマン.hack@ロックマンエグゼ3(?)】
[AIDA] <Grunwald>
[ステータス]:HP???%、SP???%、PP100%、AIDA感染(悪性変異)/AIDAバグスタイル・ISSモード
[装備]:サイトバッチ@ロックマンエグゼ3、ISSキット@アクセル・ワールド
[アイテム]:{バリアブルソード[B]、ムラマサブレード[M] 、マグナム2[B] }@ロックマンエグゼ3
[ポイント]:-/-
[思考]
基本:????????
1:????????
[備考]
※ロックマンのPCデータを基にボルドーのPCを改造し、ロックマンのPCを再構成ました。
ロックマンのPCデータの影響や、本来のPCであるボルドーのプレイヤーがどうなったかは不明です。
※このPCのコントロール権は、<Grunwald>が完全に掌握しています。
※ISSキットを装備したことで、負の心意が使用可能になりました。
※『救世主の力の欠片』を取り込んだことで、複数のPCに同時感染し、その感染率が相手の精神力を上回った時、そのPCのコントロール権を奪う能力を獲得しました。
193
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◆NZZhM9gmig
:2016/09/30(金) 12:37:30 ID:2/2/5o6M0
【ドッペルゲンガー@.hack//G.U.】
[攻撃対象]:プレイヤー名
[ステータス]:全パラメーター+10%、スーパーアーマー、武器破壊・部位欠損無効
[装備]:{刃威音・偽(アビリティ1、アビリティ2、アビリティ3)、青ざめし君、真に恐れる者}@.hack//G.U.
[備考]
※ドッペルゲンガーはイベント中、プレイヤーが一定時間戦闘を行わなかった場合に、そのプレイヤーを攻撃対象として一エリア範囲内のどこかにランダムで出現します。
ドッペルゲンガー出現までの時間は【一時間+キルスコア×一時間】となります。
※ドッペルゲンガーのアバターやステータスは対象となったプレイヤーと同一(+α)ですが、影を纏っており暗い色合いとなっています。
また対象プレイヤーがアバターや武器を変更した場合、ドッペルゲンガーの外見・装備も同様に変化します。
※対象プレイヤーがサーヴァントを従えていた場合、そのサーヴァントも武器扱いとしてコピーします。
※ドッペルゲンガーは対象プレイヤーが使用可能なほぼすべてのスキルと、マリプス(自身のHPを300回復)が使用可能です。
ただし、一部を除く宝具や心意などの仕様外スキルは使用できません。
※スーパーアーマーの効果により、通常攻撃によるノックバックは発生しません。
※武器破壊・部位欠損無効の効果により、クリティカル・ポイントが存在しません。
※憑神の発動によって認知外空間へと飲み込まれた場合、即座に通常空間へと転移します。
※ドッペルゲンガーと対象プレイヤーが接触した場合、ドッペルゲンガーを中心にバトルフィールドが形成され、対象プレイヤーを閉じ込めます。
対象外プレイヤーのバトルフィールド内への侵入は出来ません。もし何らかの方法で侵入した場合は、フィールド外へと弾き飛ばされます。
ただし、複数の対象プレイヤーが同時にドッペルゲンガーと接触した場合、一つのバトルフィールド内で同時に戦闘になる可能性はあります。
【青ざめし君@.hack//G.U.】
ドッペルゲンガー専用の防具その1。
・物理ダメージ-75%:物理攻撃のダメージを75%軽減する
・魔法ダメージ-75%:魔法攻撃のダメージを75%軽減する
【真に恐れる者@.hack//G.U.】
ドッペルゲンガー専用の装飾品その1。
・速度力+50%:移動速度が50%アップする
・HPリカバリー:HPが徐々に回復する
【刃威音・偽@.hack//G.U.】
ドッペルゲンガー専用の武器その1。厳密にはVRロワオリジナル。
対象となったプレイヤーが装備している武器を、ドッペルと同様の影を纏った状態で複製する。
ただし、その武器にもともと備わっていたアビリティは失われており、代わりに以下のアビリティの内三つをランダムでセットしている。
対象プレイヤーが複数の武器を装備していた場合も一つの武器として扱われ、武器を換装した場合もセットされたアビリティは変わらない。
・悲痛の一撃:クリティカルヒット発生確率を25%アップする
・過去への誘い:通常攻撃ヒット時に、対象のHPを強制的に半減させる
・肉体の掌握:通常攻撃ヒット時に、ダメージ値の25%を自分のHPとして吸収する
・信念の掌握:通常攻撃ヒット時に、ダメージ値の25%を自分のSPとして吸収する
・諒闇の撹乱:通常攻撃ヒット時に、バッドステータス・混乱を与える
194
:
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◆NZZhM9gmig
:2016/09/30(金) 12:39:01 ID:2/2/5o6M0
-1
「いらっしゃい。丁度コーヒーが入ったところよ。飲んでいく?」
“その部屋”へと入るなり、部屋の主たる老婆はテーブルの上のカップにコーヒーを注ぎながらそう言った。
テーブルに置かれたカップは二人分あり、自分がこの部屋に訪れることを彼女が予知していたことがわかる。
老婆の素性を考えれば、それはおかしなことではない。
何しろ彼女――オラクルは、マトリックスの世界において“預言者”と呼ばれた存在なのだから。
「気づかいはありがたいが、遠慮しておくよ。
ここへ寄ったのは単に、約束を果たすためでしかないからね」
だが来訪者――トワイスは席に座ることなくそう答え、インベントリから取り出したアイテムをテーブルへと置く。
「『第四相(フィドヘル)の碑文』の欠片(ロストウェポン)。……そう。オーヴァンから彼への贈り物ね。
この“世界”で彼と『碑文』との繋がりを知るのは、オーヴァンだけだから」
そう言ってオラクルは、視線を部屋の隅へと向ける。
そこには安楽椅子に力なくもたれ掛かる、壮年の男性(ワイズマン)――のアバターをした少年(火野拓海)の姿があった。
ワイズマンがこの部屋にいるのは、彼の身柄をオーヴァンから引き取った榊が運んできたからだ。
一先ずの安置所として、同じ預言者のいる部屋を選んだのか。それとも別の目的があって、わざわざこの部屋に運んできたのか。
いずれにせよ、AIDAに侵食され意識を封じられた彼は、こうして自身の事が話題に上がっても目覚める様子を見せない。
おそらく今の彼は、その体に剣を突き立てられたところで、指示がない限りは身動き一つ取らないだろう。
「ついさっき、スケィスが倒されたわ。
マハも、ちょっと変わった形ではあるけれど、すでに覚醒している。
これで覚醒した『碑文』は六つ。残る二つが目覚めるのも、そう遅くはないでしょうね」
世間話のように紡がれたその言葉は、“預言者”であるオラクルの言葉であるからこそ、重い意味を持っていた。
「そうか。モルガナの目的は、恙なく果たされているという訳だ。安心したよ」
だがトワイスは、むしろ気が楽になったとでもいうかのようにそう言葉を返した。
そのあまりのそっけなさに、さすがのオラクルも僅かばかり表情を変える。
「………………。
あなたは本当に、それでいいの?」
「いい、とは?」
僅かな間を置いて掛けられたオラクルの問いに、トワイスは静かに訊き返す。
質問の意図が読み取れなかったのか、それとも解った上で、そう訊き返したのか。
「私達ゲームマスターには、その“役割”と一緒に『碑文』が与えられている。
それは戦う力としてではなく、それぞれの“役割”を果たすため。
私の『運命の預言者(フィドヘル)』がそうであるように、あなたの『再誕(コルベニク)』もそう。
けど“モルガナの望み”が叶えられた時、『再誕』を司るあなたは――――」
オラクルの役割は、“預言”の力を使い、モルガナの目的に沿うようバトルロワイアルの流れに布石を打つこと。
以前にファンタジーエリアの小屋で、茅場明彦/ヒースクリフとオーヴァンに接触したのもそのためだ。
あそこで二人と接触していなければ、このバトルロワイアルの状況は現在とは大きく違ったものとなっていただろう。
それが“選択”を司るという事。
あの小屋での“選択”によって二人は決別したが、場合によっては、二人が手を組む未来もあり得たかもしれなかった。
仮にそうなってしまえば、GM側にとって大きな不利となっていたことは想像に難くない。
対してトワイスの役割は、バトルロワイアルで起きたあらゆる事象を“記録”すること。
トワイスが『再誕の碑文』を与えられているのも、その関係からだ。
……いやそもそも、八相という存在自体が、本来は“ある目的”のためのデータ収集プログラムに過ぎなかった。
それがモンスターとして存在しているのは、アウラあるいは腕輪所持者への対抗手段として、モルガナがプログラムを変質させたからだ。
その八相本来の役割を、トワイスは『再誕の碑文』によって代行しているのだ。
そしてその“目的”――つまりモルガナの望みが果たされた時、トワイスの“役割”は終わり本来の『再誕』が発動する。
195
:
黄金の乙女たち
◆NZZhM9gmig
:2016/09/30(金) 12:41:12 ID:2/2/5o6M0
だが『再誕』とは文字通り、再び誕生するという事。そして『再誕』を果たすためには一度死ななければならない。
かつて女神アウラが、自らを犠牲にすることで“薄明の女神”として新生ように。
モルガナの目的が果たされ『再誕』が発動すれば、『碑文』の宿主であるトワイスは、その反動で死に至る。
しかしそうして発動した『再誕』で蘇るのは、当然トワイスではない。
その事を、『再誕の碑文』を宿すトワイス自身が理解していないはずがない。
だというのに、オラクルには、彼がその事に怖れを懐いているようにはとても見えなかったのだ。
「……驚いたな。そんな事を、まさか、他ならぬ君が口にするとは。
預言者といえども、全てを知ることは出来ない、という事か」
そんなオラクルへと、トワイスは本当に意外そうに口にした。
「君は以前こう言ったね。
私には未来がない。そもそも選択をする余地が残っていない、と。
その通りだ。サイバーゴーストである私は、トワイス・H・ピースマンという人間の残像に過ぎない。
故に、終焉は約束されている。私には未来がなく、選択の余地がなく、結末は変えられない」
それは、以前交わした会話の焼き直しだ。
過去の亡霊と未来の預言者。
コインの表と裏のような両者は、それ故に語ることなどすでにない。
けれどトワイスは、しかし、と言葉を続ける。
「私の結末が変えられずとも、未来の全てが決まっているわけではない。
今を生きる“彼ら”の結末は、いまだ空白のままだ。
いやそもそも、未来が始めから決まっているのなら、“預言者”などと言う存在は不要だろう」
“預言者(オラクル)”が必要とされているのは、モルガナの目的に沿うように布石を打つためだ。
だが未来が決まっているというのなら、そんな必要はない。
GMが、あるいはプレイヤーが何をしようと、未来は定められた形に収束する。
だが現実にはこうして“預言者”が必要とされている。それはつまり、未来は不確かなままだという事の証明に他ならない。
「未来が決まっていない以上、私のする事は変わらない。
より良き未来に繋がるよう、バトルロワイアルを進展させる。
“選択”はすでに終えている。そのために私は、今もこうして欠片であり続けている。
余白(わたし)を埋めるだろう“彼ら”の未来が、美しい紋様(アートグラフ)を描くようにと――――」
それは、以前には語られなかった“今を生きる者”の話。
トワイスの口にする“彼ら”が誰を表しているのか。それはオラクルの“観る”未来からはわからない。
オラクルが見るのは数多に分岐する未来であって、過去は勿論、現在ですらないからだ。
だが一つ確かなことは、トワイスは常に“前進”する事――喪失に見合うだけの成果を望んでいる。
そしてこのデスゲームで、何かを喪失しているのは一方だけ。
だからきっと、トワイスの口にする“彼ら”とは――――
「さて。そろそろメンテナンスの時間だ。もうじき“彼女”も帰ってくる。
その前に、私は私の“役割”を果たすとしよう」
そうして、トワイス・H・ピースマンはこの部屋から退室した。
彼の“役割”である、“記録”を行いに行ったのだ。
残されたものは、テーブルの上の【其ハ声ヲ預カル者(ロストウェポン)】と、結局ただの一度も口のつけられなかったコーヒーだけだ。
「……“彼女”、ね」
残されたコーヒーを見詰めながら、オラクルはぽつりと呟く。
トワイスの口にした“彼女”とは、モルガナのことではない。
「“彼女”――VRGMユニット、ナンバー001。ラベリング“■■■”……いえ、今は“■■”だったかしら。
最初のゲームマスターである“彼女”は、いったいどんな“選択”を選んだのかしらね」
ある意味において、このデスゲームの発端となった少女。
彼女がいなければ、このバトルロワイアルはあり得なかった。
だが彼女ほどモルガナを意に介していないGMもいない。
それならば、“彼女”はいったい何を想い、ゲームマスターとなったのか。
196
:
黄金の乙女たち
◆NZZhM9gmig
:2016/09/30(金) 12:42:24 ID:2/2/5o6M0
「いずれにせよ、私のすることに変わりはないわ」
その行動こそ制限されているが、『第四相の碑文』によって、オラクルの予知能力は強化されている。
その力は最早“予測”を超えて“測定”の域に届こうかというほど。
その気になれば、バトルロワイアルの行く末を全て視通し、望むままに定めることも不可能ではないだろう。
それこそGMの思うようにデスゲームを展開させることも、逆に破綻させプレイヤーを勝利させることも。
だが、オラクルはそれを行わない。
トワイスのような過去の亡霊でも、自分のような未来に縛られた者でもなく。
過去を踏み越え、未来を夢見ながらも、“今”を生きる者たち。“彼ら”に“この世界”の“未来”を託す。
それが、預言者たる彼女の選んだ“選択”だったからだ。
スケィスが倒され、バトルロワイアルは折り返しに入ろうとしている。
おそらく一日目の終了とともに、デスゲームの様相は大きく変わるだろう。
その時プレイヤーが、あるいはGMが、どんな“選択”をするのか。
“運命の預言者”は、“その時”が来るまで、ただ未来を見詰めるだけだ――――。
【?-?/オラクルの部屋/一日目・夕方】
【トワイス・H・ピースマン@Fate/EXTRA】
[ステータス]:健康
[装備]:閲覧不可
[アイテム]:閲覧不可
[ポイント]:-/-
[思考]
基本:ゲームの情勢を“記録”する。
1:より良き未来に繋がるよう、ゲームを次なる展開へと勧める。
[備考]
※ゲームを“記録”することが彼の役割です。それ以上の権限はありません。
※第八相『再誕』の碑文@.hack//を所有しています。
※モルガナの目的が果たされた時、本当の『再誕』が発動し、トワイスは死に至ります。
【オラクル@マトリクスシリーズ】
[ステータス]:健康
[装備]:閲覧不可
[アイテム]:閲覧不可
[ポイント]:-/-
[思考]
基本: ゲームの進行がモルガナの目的に沿うように布石を打つ。
1:“その時”が来るまで、ゲームの未来を予測する。
2:“今”を生きる者に未来を託す。
[備考]
※“布石を打つ”事が彼女の役割です。それ以上の権限はありません。
※予知能力によって未来を知ることができますが、全てを知ることができる訳ではありません。
※第四相『運命の預言者』@.hack//の碑文を所有しています。
※『碑文』の影響により予知能力が強化されていますが、自らそれを活用する気はありません。
【ワイズマン@.hack//】
[ステータス]:HP??% 、SP??%、AIDA感染(<Grunwald>)
[装備]:其ハ声ヲ預カル者@.hack//G.U.
[アイテム]:なし
[ポイント]:???ポイント/?kill
[思考]
基本:<Glunwald>に支配されているため不明。
[備考]
※<Grunwald>の能力により同時感染しており、またその意識も封じられています。
[全体の備考]
※一部の例外を除き、GMにはそれぞれ【モルガナの碑文】が与えられています。
0
そこは世界の欲望を詰め込んだ館。
しかし、そこに住む三姉妹が自らの欲望に従うことはない。
197
:
◆NZZhM9gmig
:2016/09/30(金) 12:43:23 ID:2/2/5o6M0
以上で投下を終了します。
あとタイトルは
>>194
から 黄金の乙女たち です。
何か意見や修正点などがありましたらお願いします。
198
:
◆k7RtnnRnf2
:2016/10/01(土) 00:14:21 ID:oXyF//es0
メンテナンス案は決定でもよろしいですかね。
まさかGM達にそれぞれ碑文が与えられているとは
バトルロワイアル進行の裏でGM側の動きも明かされて、あろうことかロックマンすらもGMに利用されていた。
そしてトワイスの『未来がない』という言葉の意味が、あまりにも重く聞こえてしまいますね……
199
:
◆7ediZa7/Ag
:2016/10/01(土) 14:31:04 ID:txwVvOOo0
投下乙です
メンテナンス案はこれでよろしいかと思います
二回メンテナンスで垣間見た裏側の、さらに奥が見えた感じで、終盤が近づいてきたなぁという内容でした
VRロワの主催陣の特徴として一堂に介するシーンが一切なく、バラバラに思惑を持って動いていることが挙げられるかなと思ったり
ただ
>>188
の時刻が12:00のままなのでその点だけ直した方がいいかと
200
:
◆k7RtnnRnf2
:2016/10/01(土) 20:22:46 ID:oXyF//es0
私からもう一つ。
予約解禁のタイミングは◆NZZhM9gmig氏が本投下を完了させるのと同時でも大丈夫ですかね?
201
:
◆NZZhM9gmig
:2016/10/02(日) 12:02:10 ID:1BDA.2wo0
自分は大丈夫だと思いますけど
とりあえず
>>188
の時刻を修正すれば問題なさそうなので、本投下してきます
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