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神様との恋(個人)
1
:
名無しさん
:2015/04/29(水) 21:57:12 ID:???
私は沢田幸(ゆき)
23歳、看護師をしている。
趣味は読書という地味な女だ。
看護師になりたての頃に両親を亡くし、兄弟もいなかった私は一人で暮らしていた。
しかしこんな私にも幸運なことに素敵な彼氏がいる。
4歳上の彼氏、邦宏。
実家は地方都市の旧家で資産家。
彼は私と同じ地域で公務員をしているが、いずれは実家のある地方に転勤をするつもりでいた。
少し前から結婚の話が持ち上がっていて、玉の輿に乗れるとウキウキしていた。
しかしこの先、予想だにしない出来事に見舞われる。
2
:
名無しさん
:2015/04/29(水) 22:08:03 ID:???
ある日の仕事帰り。
読書用の本を何冊か購入して帰ろうと思い、職場から一駅歩くことにした。
(書店もいいけど、古本屋も覗いてみようかな…)
しばらく歩いていると願ったり叶ったりか、見慣れない古本屋があった。
「こんな所に古本屋なんてあったっけ…?」
疑問に思いながら、普段見過ごしていただけかもと思い、その古本屋に引き寄せられるかのように入っていった。
これが運命の始まり―――。
3
:
名無しさん
:2015/04/29(水) 22:20:06 ID:???
「いらっしゃい」
店の入り口近くにカウンターがあり、まるでアニメで見るようなノスタルジックなおじいさんが出迎えてくれた。
私はペコリと会釈をして、早速本を物色する。
古文書のような本から、数年前にベストセラーになった著書など様々な本が並べられていた。
何冊か買う本を決め、そろそろ会計をしようかという時、一冊の本が目に留まる。
背表紙のタイトルを凝視した。
「………守り神?」
何の変鉄もない内容が想像できそうな本だったが、妙にその本に惹かれた。
4
:
名無しさん
:2015/04/29(水) 22:31:51 ID:???
その本も手に取り会計に向かった。
レジには白髪に丸いレンズの眼鏡 、立派な髭を生やしたおじいさん。
「お嬢さん、なかなか通な本を読まれるんだねぇ」
「通な本なのですか?私は読書が趣味で。分野を問わず興味を持った本ならなんでも読みます」
「はっはっは。それはいいことだね」
他愛もない会話をしながら会計を済ませた。
「ありがとうね。よかったらまたいらっしゃい」
「こちらこそ!」
お互いニコニコと挨拶をすると幸は店をあとにした。
5
:
名無しさん
:2015/04/29(水) 22:46:52 ID:???
家に帰り、彼氏の邦宏と電話をする。
「それじゃあ明日。仕事が終わったら連絡するから」
「うん。待ってるね」
翌日デートの約束をしていた。
電話を切るとほくそ笑みながら、鞄から購入した本の入った袋を取り出す。
どれから読もうかと考えていると…
「そういえば……」
何故か買ってしまった「守り神」という本。
確か著者名が記載されていなかった気がした。
ガサガサと袋を開け、例の本を取り出すと表紙、背表紙ともに作者の名前は無い。
「…なんかすごくヤバイ本なんじゃ…」
いわく付きの本ではないかと悪い考えしか浮かばない…。
6
:
名無しさん
:2015/04/29(水) 23:10:25 ID:???
恐る恐る本を開く…
すると突然……
「ひゃああぁ!!」
本から強い光が放たれ目の前が真っ白になった。 幸は本から手を離すと部屋の隅っこで身構えた。
――数秒後、光が収まるとビクビクしながら目を開ける。
するとそこにはスラッとした端正な顔立ちの男性が立っていた。
その男性が目を開き、幸の前にたち膝になった。
「お呼びいただきありがとうございます。私は守護神その1284。あなたの守り神を勤めさていただきます」
挨拶をすると幸に手を差し出してきた。
7
:
名無しさん
:2015/04/30(木) 01:00:33 ID:???
目の前のあり得ない出来事に呆然とする。
「ひ……幽霊はダメです!!ごめんなさい!!帰ってください!!」
自己紹介など理解できるはずもなく、彼を幽霊だと思いさらに取り乱した。
「落ち着いてください。私は幽霊ではありません」
「え…?」
幸はようやく少し冷静になれた。
しかし人間ではないことに変わりはない。
心臓はバクバクしたまま、体の構えも解けない。
「スミマセン、驚かせてしまいましたね。1284と申します。あなたの守り神です」
改めて自己紹介をする。
「えっと……どういう事ですか?私は第六感とか無いんですけど…」
今まで生きてきて、オカルト現象などは無縁だった。
8
:
名無しさん
:2015/04/30(木) 01:36:02 ID:???
「えっと、第六感とはあまり関係ないかもしれません。私は一応神の部類に入るので」
1284の言ってることがさっぱり理解できない。
とりあえず幽霊ではないらしい。
「私はあなたの買われた本の中で、あなたと出会うのを待っていました。」
彼は続けた。
「私たちは特定の人間の守護を命じられていて、主となった方を守るためにこちらの世界にやって来きたのです」
「守るって何を?」
「うーん、簡単にいうと貴方がピンチの時…といった感じでしょうか?」
「………」
全くピンとこない。
ファンタジー小説の世界を目の当たりにしているようで、これは夢なのではと本気で思った。
むしろ幽霊であった方がまだ納得がいくのに…
9
:
名無しさん
:2015/04/30(木) 02:05:53 ID:???
「という訳で、どうぞヨロシクお願いします!」
そういうと1284は頭を下げた。
「ちょっと待ってください…!ヨロシクって…一緒に暮らすってことですか??」
「はいっそうです!」
1284は満面の笑みで答えた。
それに対して幸はうろたえた。
「そんなこと言われても!私にはお付き合いしてる人がいて、結婚の話も出てるのに他の男性と一緒に暮らすだなんて…」
「心配には及びません。邪魔をするつもりはありませんし、お呼びでないときは基本的に本の中に居ますので。」
これはなんとなく避けて通ることはできない気がした…
「そこまで言うなら……よろしく…」
腑に落ちない点も多いが、幸も一緒に暮らすことを同意して頭を下げた。
(守護゙霊”的なものだと思えばいいか…)
「はい。よろしくお願いします幸さん」
幸はハッとした。
「あの、あなたの事は何て呼べばいいですか?」
「うーん、1284が私の名前のようなものなので…1284でいいですよ?」
相手を数字で呼ぶのはいい気がしない。
「じゃあ…とりあえず神様って呼びますね」
「わかりました」
こうして運命は時を刻み始めた―――。
10
:
名無しさん
:2015/04/30(木) 02:32:36 ID:???
翌日――。
朝を迎えベッドから起き上がる。
テーブルには昨日買った本が積んだままになっている。
一番上には「守り神」の本になっていた。
彼の姿が無いところを見ると、本の中に戻ったのだろう。
幸はあったことがまだ半信半疑でいた。
「…………神様?」
小声で呼んでみる。
すると…
「はい」
本から声がしたと思うと、そこから光の球体が現れ瞬時に人の形を成した。
「おはようございます。幸さん」
「あ、うん。おはようございます神様」
ぎこちなく挨拶をする。
(夢じゃなかった…)
11
:
名無しさん
:2015/05/10(日) 16:45:31 ID:???
「なにかご用ですか?」
「あ…いや…ごめんなさい。呼んでみただけなんです…」
昨日の事が本当かどうか確かめてみたかったのだ。
幸は申し訳なさそうに説明する。
「この事がまだ信じられなくて…」
「うーんそうですか。無理もないでしょう。現代の方々は私達のような存在と縁遠くなっていますからね」
1284の言うことは尤もな気がした。
幸自身、神を信じていなかったからだ。
12
:
名無しさん
:2015/05/14(木) 08:33:06 ID:???
「徐々に慣れていただければよろしいので」
1284はにこりと笑う。
「はぁ…わかりました」
「朝食はいかがですか?なんでも作りますよ」
「ええ!?そんなことまで?」
まさか神という存在が炊事をしてくれるなんて…。しかし幸は首を横にふった。
「いえ、さすがに家事は自分でやりますよ!むしろ神様には何をお出しすればいいですか?」
「ああ、お気遣いなく。僕たちには必要ありませんので」
幸はキョトンとする。
お供え物が必要なのかと思った。
「そう…ですか。ならとりあえずコーヒーを入れるので」
「ありがとうございます!」
そう言うと幸は台所へ立った。
13
:
名無しさん
:2015/09/22(火) 19:19:31
二人分のコーヒーを入れ部屋に戻り、ひとつを1284に差し出した。
「ありがとうございます」
1284はニコりと笑うと差し出されたコーヒーを飲んだ。
「あのー…」
「なんでしょうか?」
幸が切り出す。
「私は今日出掛ける予定があるので…留守番を…あっ留守番といっても本の中にいてもらって構わないので!」
「わかりました。いってらっしゃいませ!」
「あ…はい。ヨロシク」
コーヒーをのみ終えると1284には本に戻ってもらった。
その間に家事を済ませシャワーを浴びる。
あっという間に夕方になった。
14
:
名無しさん
:2015/09/22(火) 20:52:38
身支度をしていると邦宏からメールが届く。
約束の時間が迫ってきていた。
ちょっとおしゃれなレストランを予約してくれているらしいので、少々めかしこんで行く。
「いってきます」
1284の本に声をかけた。 誰かに「いってきます」なんて言うのは久しぶりだ。
不思議な気持ちになった。
待ち合わせの駅で待っていると、約束の時間を少し過ぎて邦宏が現れた。
小走りでこちらに向かってくる。
「ごめん、待った?」
「ほんの少しだけね。気にしないで」
ありふれた会話を交わすとレストランへ向かう。
とても雰囲気のあるお店だ。
二人でスパークリングワインを開け、他愛もない会話をしながら食事をする。
ほろ酔い加減になってきたところで、邦宏が改まって話を切り出してきた。
「来月の休みに実家に帰省しようと思うんだ。休みが同じ日があれば一緒に来ないか?君を両親に紹介したい」
15
:
名無しさん
:2015/09/23(水) 20:56:58
「それって……」
幸の心臓の鼓動が大きくなる。
「……結婚してほしい」
「……はいっ!」
待ちに待った言葉だった。
そろそろなんて話はあがっていたが、改めて言われると本当に嬉しい。
自然と涙がこぼれる。
食事がすんだ後はホテルで熱い時間を過ごした。
「ご挨拶に伺うのドキドキするなぁ。立派なご両親なんだろうね」
「そんなことないよ。結構ラフな人たちだから」
「そう?ふふふ。じゃあ来月のこの日に休み希望出すね」
「うん、わかった」
帰りの電車を待つ間に予定を立てる。
するとの家に向かう電車が先に来た。
「それじゃあまた…」
「うん、おやすみ」
別れ際にこっそりキスをする。
幸は電車に乗り、邦宏に手を振った。
16
:
名無しさん
:2015/09/23(水) 22:08:06
軽い足取りで家路を歩く。
玄関を開け、テーブルにおいてある本が目に留まる。
(ひょっとして神様のお陰なのかな…)
1284の本を購入してから すぐさまプロポーズをされ、ご利益のようなものを感じた。
「ただいま」
本に声をかける。
すると本は仄かに光を放ち1284が現れた。
「お帰りなさい」
1284は微笑む。
幸の表情に気がつく。
「おや、何かいいことでもありましたか?」
「えへへ…神様にはお見通しですか」
幸は照れながら答えた。
「私、プロポーズされたんです!」
「そうですか!それはおめでとうございます!」
「ひょっとして神様のお蔭ですか…?」
「いいえ、私にそういった力はありませんので」
「そう…ですか」
幸はキョトンとした。
昨日の今日だからもしやと思ったのだが…
「まぁそれなら……あ、私ご飯食べてきたんですけど、何か用意しましょうか」
「いいえ、お構い無く!それより明日もお仕事ですよね?」
「はい」
そうだ、明日も日勤だ。
17
:
名無しさん
:2015/09/24(木) 05:04:38
「もうこんな時間ですし、早くお休みになられたほうが…」
「そうですね、そうさせてもらいます」
幸はシャワーを浴び早々にベッドに入った。
「それではお休みなさい」
そう言うと1284は本に戻っていった。
「お休みなさい」
幸も返事をすると電気を消す。
プロポーズの嬉しさで興奮し、なかなか眠ることができなかった。
しかしその幸せは長くは続かなかった―――
18
:
名無しさん
:2015/09/24(木) 05:24:12
朝を迎え朝食をとり、また1284と共にコーヒーを飲む。
1284が来てから2週間ほどそんな日々を送った。
こんな生活がすっかり馴染んでいた。
「神様にはコーヒーしか出してませんけど、本当に大丈夫なんですか?」
ある日1284に訪ねてみた。
「ええ。人間のように食べたり飲んだりはできますが特に必要はありません。だけどこのコーヒーはありがたく頂いてます」
「そうですか…」
一緒に暮らしているので何も出さないのはと思っていた。
だけど必要ないと言うのなら仕方ない。
「それじゃあ行ってきます」
「いってらっしゃいませ」
幸は職場に向かい1284は本に戻っていく。
今となっては当たり前のことになっていた。
(…結婚したら神様はどうしよう……)
霊的な存在とはいえ男性である。
一緒に生活するなんて到底ありえない。
しかしずっと本にいてもらうのも何だか気が引ける。
何か対策はないかと考えながら職場へ向かった。
19
:
名無しさん
:2015/09/24(木) 05:41:46
午前中、病棟で仕事をこなしていると幸に異変が起きた。
「うっ……あっ…」
突然、下腹部に激痛が走る。
腹を抑えその場にうずくまり、額には冷や汗が浮かぶ。
あまりの痛みに動けなくなった。
回りにいた同僚が直ぐに気付き駆け寄ってきた。
「澤田さん!?どうしたの!?」
「おなかが…下腹部が…痛いっ…!」
「吐き気は?下痢をしてるとかはある?」
幸は首を横に振る。
「ストレッチャー持ってくるわ!」
同僚は数人のスタッフと共にストレッチャーを持ってきた。
幸はすぐさまストレッチャーに乗せられ、処置室に運ばれていった。
「CT室空いてるか連絡してみてもらえる?」
スタッフ同士で指示をだしあう。
ドクターもやって来て触診を始めた。
20
:
名無しさん
:2015/09/24(木) 05:59:37
「子宮の可能性が高いな……まずはCTを撮ろう。産婦人科にも連絡して」
運良くすぐにCT室が使えた。
バタバタと処置が行われた―――
撮影した結果、卵巣に腫瘍があり、それが大きくなりすぎたために卵管が捻れていた。
捻れた方の卵巣は一部に壊死が見られ、緊急手術が行われることになった。
幸は意識がしっかりしていて、看護師という仕事柄か直接説明をされる。
「澤田くん、このままでは危険だ。すぐにオペに取りかかる。いいね?」
「はい…お願いします……」
幸も自分の状態ががいかに危険な状態かは理解できた。
拒否する理由はない。
そのまま手術が行われた――
21
:
名無しさん
:2015/09/24(木) 06:28:59
目が覚めると産婦人科のベッドだった。
まだ酸素マスクがついたままだ。
とりあえず今日一日はこのままだろう。
まさか自分がこんな目に合うとは思っていなかった。
しかし同時に、職場が総合病院でよかったと心の底から思った。
しばらくぼんやりしていると、産婦人科のドクターと仕事を終えた同僚がやって来た。
「オペは無事に終わったよ。残念ながら片方の卵巣はダメだったけど…」
「はい……」
悲しくないといったら嘘になる。
しかし腫瘍があったのなら遅かれ早かれ切除しなければならない。
命には変えられない。
「幸い腫瘍は良性で、もうひとつには腫瘍はなかったよ。だけど念のために色々と検査をしよう」
幸はうなずく。
説明し終わったドクターは「後は頼む」と同僚に言い部屋を出ていった。
22
:
名無しさん
:2015/10/04(日) 01:53:15
「びっくりしたわ。大事には至らなかったようだけど…」
同僚が声をかけてくれる。
「ええ。あなたのお陰で助かったわ。ありがとう」
「お礼を言われるようなことはなにもしてないわよ。でも…ショックでしょう…」
「そんなことないわ。卵巣はもうひとつあるから!」
「そっか。思ってたより元気で安心したわ。これあなたのロッカーの鍵。よかったら荷物持ってくるわ」
そうだ…邦宏に連絡しなくては。
「うん。お願い」
同僚は笑顔で頷くと、幸の荷物を取りに部屋を出た。
23
:
名無しさん
:2016/01/17(日) 19:46:39
同僚は私の荷物を持ってきてくれ「お大事に」と一言だけ言い残し帰っていった。
あとのことは担当の看護師がいるから心配はしてない。
携帯を取り出し確認をすると、邦宏から他愛のないメールが来ていた。
幸はそのメールに返信をする。
卵巣に腫瘍があり緊急手術をしたこと、1週間は入院するだろうという旨を伝えた。
すると数分後――
携帯が振動した。
邦宏からの電話だ。
24
:
名無しさん
:2016/06/15(水) 11:12:12
「…もしもし?」
幸は電話に出た。
すると邦宏が荒々しくたたみかけた。
「幸!?手術って大丈夫なのか!?」
「うん、今は何ともないよ。片方は取っちゃったけど…」
幸は手術に至った経緯を説明した。
「そうか…ならよかったよ。いやぁ焦った…」
邦宏はほっとした様子だった。
「心配かけてごめんね。」
「いや、無事ならいいよ!これから行くよ!何か必要なものは?」
「ううん、今日はもう面会時間終わっちゃうから…邦宏が大丈夫なら明日とかにお願いできないかな?」
「そっか、わかった。仕事終わったら行くから必要なものメールしといて!」
「ありがとう。」
電話を終えると幸は眠りについた。
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