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没SSスレ

91 ◆1cfhWaNZIk:2012/09/19(水) 13:19:25 ID:TphIfduI
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海東は、たった三十分ほどの練習で自分に匹敵する操縦技術を身に付けてしまったリュウセイに、ほとほと呆れ果てた。
リュウセイは、三階から飛び降りて、壁にかかった時計を撃った後、階段の手すりを利用して見事に着地してみせたのだ。

(いやはや、飲みこみが早いのか。あるいは、何をやらせても凄いのか)

ちなみに、リュウセイのアーチェリー射撃は完全に独学だ。
彼は、海東たちとモール内を探索する道すがらも、おもちゃ感覚で店内のあちらこちらに矢を打ちまくって射撃の練習していた。。
逆にいえば、それだけでここまでの芸当が出来るようになったのだ。どれだけ才能に恵まれているのだろう。

(はあ……まあ、いずれにしても、リュウセイ君が戦力になることは、私にとって好都合でしょう)

しかし、海東は内心でほくそえむ。なぜならそれは―

(これで、あの邪魔な妖犬を遠慮なく排除できます)

海東には、自分の代わりに戦ってくれる盾が、己のリスクを軽減するための消耗品が必要だ。
しかし、それは一枚でいい。余計な知恵の回らない勇敢な前衛が一人いれば十分だ。
そういう意味で、天野河リュウセイは海東にとって理想的な駒だった。
もはや、己を怪しむ権兵衛を無理して飼いならす意味はない。

さて、いかにしてあの厄介な犬を排除するか。
確実に落とすならば、やはり殺し合いに乗った者と戦わせた上で、後ろから足を引っ張るのが一番だろう。
すると、いまパッと思い付く限り、名案と呼べるものが一つだけあるが…。

「ところでシャロさん、リュウセイ君」海東は、胡散臭い笑顔を張り付けたまま、二人に穏やかに話しかけた。
「私に、この殺し合いを止める素晴らしいアイディアがあるのですが、協力してくれますか? これは、優秀な君たちにしか頼めない」

まあ、この策で間違いないだろう。どのみち、そろそろ武器を携えたマーダ―たちから襲撃されたいと思っていたのだ。
ただし、そのマーダ―たちを迎え撃つのはこの海東純一ではないが…。

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「権兵衛さん、やっぱり、こういうことは皆にも話した方が…」

「駄目だ、早苗さん。これから作るものは、リュウセイ君やシャロさんの手には余るものだ」

「でも……ならば、せめて海東さんにだけでも…」

「それは……それも、駄目だ…」

早苗と権兵衛は、高級レストランの厨房で、とある洋書を参照しながら様々な薬品を調合していた。
薬局で手にいれたヘキサメチレンテトラミンと、新車販売店で手にいれた発煙硝酸を反応させ、蒸留水で希釈して濾過装置でRDXを取り出しているのだ。
RDXとは、立派な爆薬である。

なぜ二人にこのようなものを作ることが出来るのか。
それは、彼らがモール内の書店で見つけた一冊の本にある。本のタイトルは、そのものずばり『The History of Plastic Explosion(プラスチック爆弾の歴史)』。
早苗に抱きかかえられた権兵衛が、首輪の解除方法を求めて駄目元でミリタリー関連の書籍を渉猟していると、代わりにこれが出てきたのだ。

食いついたのは権兵衛だ。。
殺し合いの平和的解決を模索すれば、いずれは主催者との全面対決も避けられぬものになるだろう。
となれば、彼らから支給された武器以外の、切り札を用意する必要が出てくる。
主催者陣営をまとめて吹き飛ばす爆弾を製造できれば、この殺し合いを停止させることも可能かもしれない。

無論、『The History of Plastic Explosion』は、プラスチック爆弾の発展の歴史を綴った一般的なミリタリー本だ。
RDX爆薬の原材料や、雷管の構造図ぐらいは書かれているが、
たとえばその原材料をどのように調達すればいいのか、また部品をどのように製作すればいいのか、などについては一切記載されていない。
文系の権兵衛に、この本からプラスチック爆弾の製造方法は割り出すことは困難だ。


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