したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | |

世界に光が生まれる話。

9名無しさん:2022/11/26(土) 09:12:31
>【この子はただの赤ちゃんよ、と楽観視する】

長老を送っていって、と再びギムリンを送り出したフィンは、椅子に座りながら小豆色の小瓶を眺めていた。
陣痛を和らげる薬なのか、それともやはり…

真剣に睨んでいたせいか、そしてその雰囲気を感じたのか赤ちゃんが小さく動いた。

「不安なの、私のかわいい赤ちゃん…?大丈夫。少なくとも飲まないと思うから」

優しくお腹を撫でながら、フィンはお腹の中の赤ちゃんに語りかけた。
たとえ我が子がこの里に、そしてこの世に害をもたらしかねない存在だとしても…どちらにせよ2人の血を引く赤ちゃんに変わりはない。
闇の力を持つとしても…それは使う人によって善にも悪にも変わる…はずだ。
我が子が道を外さないようにすれば、必ず良い結果をもたらす…フィンはそう信じていた。

お腹を撫でながら、フィンは少し違和感を覚える。

【…赤ちゃん、成長が早くなったのかな?なんだか、少し前よりお腹が大きくなってるような…】
【…赤ちゃん、少し前より動きが少ないような…】

10名無しさん:2022/11/28(月) 08:11:09
>【…赤ちゃん、少し前より動きが少ないような…】

赤ちゃんも長旅で疲れていたのかな。寝ているのなら起こさないでおこう。

それにしても、お腹、国から出る前よりほんのすこし大きくなっているような気がする。
中で赤ちゃんがぐんぐん成長しているのだから、当たり前のことなんだけれど……。

フィンの脳内に、救世主伝説の一節が浮かぶ。
世界から失われた光は、最も暗い闇の中に転生するはず。
追われているときはともかく、今はそれなりに安全だし、満足すら感じる。
お腹の赤ちゃんが生まれるまで、この里に定住したい。ううん、絶対しよう。
でも、いくら非常時で長老も許してくれたけど、ギムリンはドワーフだ。
排他的な態度をとるエルフは、きっと少なからずいる……

そう思ってフィンは大きなお腹を抱えて、ギムリンにとある提案をした。

【お腹の赤ちゃんが生まれるまで、ギムリンは里の外で私たちの新しい住居を探して】
【お腹の赤ちゃんが生まれるまで、なんとかエルフの里の人たちと打ち解けてほしい】

11名無しさん:2022/11/29(火) 17:18:24
>【お腹の赤ちゃんが生まれるまで、なんとかエルフの里の人たちと打ち解けてほしい】

「お腹の赤ちゃんが生まれるまで、なんとかエルフの里の人たちと打ち解けてほしい」
…とフィンはギムリンに伝えた。
これ以上の長旅は赤ちゃんにも自分にも負担が大きい…そう考えたからだ。
打ち解けるかどうかはしばらく時間が過ぎないと分からないが、諦めて最初から里から出て住居を探すような考えでは余所者としか見られない…そういった思いからだった。
コクリ、と頷いたギムリンは早速長老のところに向かい『エルフの里を守る警備員に参加したい』と伝えた。
『ドワーフの身体能力は高いと聞いているし、この里の皆のことを知るにも良いだろう』と意図を理解した長老は快諾する。

翌日。
朝ご飯をギムリンと取ったフィンはギムリンを警備隊に送り出した後、
長老からギムリンが教えてもらった産婆のもとに訪れた。
しばらく産婆さんなどに診てもらっておらず、赤ちゃんの様子を確認するためだ。

「やぁ、君が外から来たって噂の妊婦さんかい。私はクアール。よろしくね」
銀髪に少し色黒、赤い眼でモノクルを付けた白衣の女性がそうフィンに挨拶をした。
「まぁ見ての通りダークエルフっぽい肌だが…親父がこんな肌色で余所者だったんだが、流れ着いたこの里で母親が一目惚れして…要するにハーフエルフみたいなもんだね。
だから君たちの気持ちもなんとなくわかるよ」

そう話したクアールが、フィンを診察用ベッドに横になるよう指示をする。
そして、横になったフィンのお腹の上に手をかざし、なにやら詠唱を始めた。
魔法陣が錬成され、光りだす。
魔力の流れを確認し、胎児の様子を確認する…フィンがかつていた村でも行っていた術式だ。

「おや…?」
クアールが小さく呟き首を傾げる。
何か赤ちゃんにあったのか…不安そうにクアールを見つめるフィン。

魔法陣での診察を終え、触診も終えたクアールは『まだ確定はしていないけれど』と前置きをしてフィンに伝えた。

【魔力の流れが2つあるように感じるね。ひょっとしたら、双子ちゃんかもしれないな】
【魔力の流れを太く強く感じるね。ひょっとしたら、これから普通の子より大きく育つかも】

12名無しさん:2022/11/30(水) 19:10:54
>【魔力の流れを太く強く感じるね。ひょっとしたら、これから普通の子より大きく育つかも】

「魔力の流れを太く強く感じるね。ひょっとしたら、これから普通の子より大きく育つかも」
そのクアールの言葉に、ちょっと驚いて「そうなんですか?」とフィンは尋ねた。

「本当に確定しているわけではないんだけどね。君の赤ちゃんへの魔力の流れは太いし、とても強い。私が知っている限りだと、大きな赤ちゃんが多いのは確かだよ」
一瞬「心配させてしまったかな」というような顔をしてから、クアールは説明を始めた。
曰く、母体からの魔力の流れはかなり千差万別である一方傾向があり、確実ではないが胎児の状況を予測する手がかりとして大きいのだという。
「特に、私なんかもそうだったらしいけど、種族にある程度違いのあるものの間に生まれた子は大きくなりやすいと言うしね」
なのでよくあることだ、とクアールは微笑んで締めくくった。

検診を終えて礼を言うフィンに、クアールは提案をしてきた。
「君の選択次第なんだけど、私としては2つ提案したい。私と、母体と胎児の魔力の流れについて学ぶか、無理のない程度に里の皆の手伝いをするかなんだけど」

【クアールと魔力の流れについて学ぶ】
【体に無理のない程度に、里の皆を手伝えることを探す】

13名無しさん:2022/11/30(水) 22:28:31
> 【クアールと魔力の流れについて学ぶ】

『魔力の流れについて学びたい』…そうクアールに伝えるフィン。
「里の人を手伝うにも基本を押さえた方がいいし、万一の時にギムリンの戦闘サポートもしたいから」
…というのがフィンの考えらしい。

「わかった。私が得意なのは医療関係…怪我や体力の回復、あとは風や水などを利用して手術用の刃の精製…とかかな。
これを応用すれば、ヒールや攻撃アップなどの補助にも、直接攻撃にも使えないことはないと思うし。
それから、術式をうまく使えばお産を楽にする事に繋がるかも。そんな感じでいいかな?」

クアールにそう提案され、フィンは頷いた。

それじゃあ、まずは…

【自分や仲間の怪我を治す方法を教えてもらおうかな】
【やっぱり自分の身や仲間を守るために刃の精製を学ぼうかな】

14名無しさん:2022/12/01(木) 23:32:00
>【やっぱり自分の身や仲間を守るために刃の精製を学ぼうかな】

守るための力はもちろんのこと、魔力を形にする方法を学べば、お腹が大きくなってきてもいろいろ応用できる。
そうと考えたフィンは、刃の精製のほうを学ぶと答えた。

準備する必要あるから修業が始まるのは翌日からとクアール師に言われ、フィンは帰宅する。
その途中で彼女は、ちょうどアレクとラキシスが仲良さそうに一緒に道を歩いているのを見た。

遠くから見た感じ、二人はこれから食事にでも行こうとしている様子だ。


【今は調子もいいし、声かけようかな】
【二人の間に入らないほうがいいかな】

15名無しさん:2022/12/03(土) 18:00:05
>【二人の間に入らないほうがいいかな】

声をかけるか迷っていると、お腹の中の赤ちゃんがモゾモゾと動いた気がした。

「よしよし、どうかしたのかな?」

フィンが話しかけながらお腹を撫でて、落ち着いた頃に顔を上げると、アレクとラケシスの他にもう1人…男の子が増えて間に入っていた。

(『母親として思うところはある』…って言ってたような気がするし、2人は夫婦か…シングルマザーと恋人みたいな関係なのかな)

家族団欒にせよ、子供を交えたデートに近いものにせよ、二人…いや、三人の間に入らないほうがいい。
そう考えたフィンはゆっくりとした足取りでその場所を離れた。

少しずつ落ちる夕日を見ながら帰路に着くフィンは考えにふける。

【久しぶりにゆっくり出来るし、彼女たちみたいにギムリンと食事に行こうかしら】
【久しぶりにゆっくり出来るし、我が家で2人きりでギムリンと過ごそうかしら】

16名無しさん:2022/12/05(月) 08:22:42
>【久しぶりにゆっくり出来るし、我が家で2人きりでギムリンと過ごそうかしら】

……なんか美味いものでも作って我が家でギムリンが帰ってくるの待とう。
と、晩ご飯の食材を手に入れようとフィンは一度、隠れ里の外れに寄った。

「あったわ、本当このキノコはどこでも自生してるのね」

探したい物を見つけるのは、フィンにとってはそう難しくはなかった。
酒みたいな香気を発するキノコ、それはギムリンの好物である。

あとはキノコを根元から切って採取するだけ、のその時、フィンは……

【赤ちゃんがキノコの香気に反応したのか、お腹がジンジンと痛くなる】
【キノコを餌に獲物を待ち伏せている捕食生物に、岩陰から襲われる】

17名無しさん:2022/12/10(土) 18:42:25
>【赤ちゃんがキノコの香気に反応したのか、お腹がジンジンと痛くなる】

「んっ……!?」

急に鈍い痛みをお腹に感じ、しゃがみ込むフィン。
何事かと思って、お腹にさっと手をやる。
赤ちゃんになにかあったのではないだろうか、という不安が頭をよぎる。

(で、でもどうして……あっ!)

フィンは思い出した。
色んな理由で魔力の流れが変わっているときには、このキノコの香気は害を及ぼすことがあると、以前ギムリンの友人に教えてもらったことがある。
魔力の流れの変わる理由なんて、言うまでもない。
だから、キノコの香気に赤ちゃんが反応しているのかもしれない。

(そういえば、ギムリンは体調の悪いときにこのキノコを食べて、余計に体調を悪くしたって言ってたわね……)

原因の察しがついたところで、フィンは少し落ち着きを取り戻した。
あまり香気を吸うと、赤ちゃんにどんな影響があるかわからない。
そうなると……。

【それでもギムリンの好物なので、香気を吸い込まないように袖で口と鼻を覆って、キノコを持ち帰る。】
【赤ちゃんになにかあってはいけないので、その場を離れる。】

18名無しさん:2022/12/11(日) 23:07:42
>【赤ちゃんになにかあってはいけないので、その場を離れる。】

そう思って踵を返したフィンだったが、家へ向かう途中で足を止まってしまう。

「……ぅ……」

そうさせた原因は他ではなく、さっきから続いているお腹の鈍い痛みだった。

胎動もそれなりに痛みを伴うけれど、それとはまた違う、ジンジンとした感じ。

魔力が乱れているというのなら、どこかでいったん休んで、それを整えよう。

このあたりに休める場所はといえば……

【万が一のことを考えて、人通りの良い広場のベンチ】
【元よそ者だったし、人通りの少ない井戸横の切り株】

19名無しさん:2022/12/12(月) 11:00:53
【万が一のことを考えて、人通りの多いベンチ】

(今のままでは早産の可能性もあるし、そうなったら気付かれやすい場所がいいわね…)

そう考えたフィンは、隠れ里の外れから1番近くそれなりに人通りの多いベンチに腰掛けた。

「しばらく休んでいこうね、赤ちゃん」

そうお腹に語りかけ、ゆったりとした手付きでお腹を撫でながらフィンはぼぅっと人通りを眺め始めた。

「思ったより…いろんな種族がいるわね」

人通りを見ながら赤ちゃんに語りかけるためか、自分の中で整理するためかそう一人ごとを呟くフィン。
排他的と思い込んでいた隠れ里にしては、クアールのように色黒な肌のダークエルフやハーフエルフも少なからずいるし、
行商人らしき亜人も僅かながら居る。
それでも純潔らしき白い肌のエルフが多いことは変わらないが…

「ひょっとしたら…思ったより受け入れられるかも、ね」

楽観視は出来ないが、それでも希望が少し見えてきた。
しばらくそのまま眺めていて、ジンジンとした痛みが治まって来た頃…

【「たまたま通りかかったんだが…大丈夫かい?フィンくん」とクアールに声をかけられた】
【「こんなところにいたのか。心配したぞ、大丈夫なのか」とギムリンに声をかけられた】

20名無しさん:2022/12/13(火) 20:49:40
>【「こんなところにいたのか。心配したぞ、大丈夫なのか」とギムリンに声をかけられた】

「こんなところにいたのか。心配したぞ、大丈夫なのか」
朝出かけてから長い間帰宅しなかったからか、ギムリンが迎えに来たようだ。
彼の姿を見てパッと笑顔になるフィンはベンチから立ち上がり、彼に抱き着く。
そのまま二人は家に戻り、その夜はいつもよりもいい雰囲気で朝を迎えた。

そして、その翌日の朝。
「……うーん、少し張り切りすぎちゃったのかしら」
魔力を制御する練習をしながら、お腹をさすってフィンは呟いた。
その理由はというと……

【胎動が一層強くなってきた気がする】
【魔力練ると妙にじんわりとお腹が疼く】

21名無しさん:2022/12/15(木) 00:23:17
【胎動が一層強くなった気がする】

夜の営みの影響もあるのかもしれないが、フィンのお腹の中の赤ちゃんは胎動を活発に行う。
魔力の制御をしようとするとお腹を蹴られ、集中を阻害されるフィン。

「赤ちゃん、ごきげん斜めなのかなぁ…」

昨日の夜、ハッスルしすぎたかと少し罪悪感を覚えるフィン。
しかし、赤ちゃんが落ち着いた隙を見計らい、魔力制御の練習を続けていく。

クアールがフィンの様子を見て、こう伝える。

【より実践的に、まずはナイフやフォークを作るのを目指そうか】
【回復魔法の方の才能も気になるし、一旦魔力制御の練習をやめてから、休憩後簡単なものを教えようか】

22名無しさん:2022/12/17(土) 21:39:53
>【より実践的に、まずはナイフやフォークを作るのを目指そうか】

クアールによると、熟知している身近な小物を作るのなら魔力も扱いやすいとのことらしい。

それを聞いてフィンは、今日の体調を考えてそっちの練習に切り替えることを決めた。

ウォーミングアップをしてから、まずは魔力を棒の形に固めることから練習は始まる。

呪文を唱え、フィンは頭の中で10センチぐらいの棒が目の前にあることを想像した。

すると・・・・・・

【見事に成功し、ただの棒の形だけではなくちゃんとナイフが形成された】
【どこか間違ったのか、棒は棒でも魔力からねじりん棒が形成された】

23名無しさん:2022/12/21(水) 16:36:15
【見事に成功し、ただの棒の形だけではなくちゃんとナイフが形成された】

手のひらが光り始め、その光の中から徐々に現れたのは間違いなくナイフだった。

(やった、成功した)

フィンが笑みを浮かべると同時にクアールが「ほう」と呟く。

「初めての魔力形成にしてはかなり優秀だね。君の才能か、あるいは赤ちゃんの潜在能力か…」

クアールが冷静に分析するのを、フィンは自分や赤ちゃんが褒められているように感じて笑みを浮かべていた。
それからしばらくの間フォークやスプーン、皿などを作る練習をして、気が付けば日は高く昇っている。

【そろそろ休憩して食事にしようか、私が作ろうとクアールに提案される】
【そろそろ休憩して食事にしましょう、私が作りますねとフィンが提案する】

24名無しさん:2022/12/29(木) 22:51:27
>【そろそろ休憩して食事にしようか、私が作ろうとクアールに提案される】

「妊娠中の君に良いものを食わせよう、この隠れ里の人しか知らない料理だ」
と言って、クアールは食事の用意をするため練習部屋から出た。

ただ待っているのもなんだし、もう少し自主練しようとフィンは再び魔力を練り始める。
しかしさすがに疲れたからか、魔力を成形しようとしてもなかなかうまくいかない。

「うーん、イメージ自体はさっきと同じなのにな……どうしてだろう」
気が付くといつの間にかズキズキと張ってきたお腹をさすりながら、フィンは小首を傾げる。

その時――

【フィンのお腹の中の胎児がドクンと大きく鼓動した】
【部屋の外から嫌な予感と共に不吉な魔力を感じた】

25名無しさん:2023/01/04(水) 18:34:28
【フィンのお腹の中の胎児がドクンと大きく鼓動した】

「う、あ…?」

ドクン、ドクン…とフィンのお腹の中の胎児の心臓の鼓動が大きくなった…そんな印象をフィンは感じた。
自分の鼓動に驚いたのか、はたまた不快感を覚えたのか。鼓動が大きくなると同時に胎児はなんどもフィンのお腹を蹴り始める。

「ふぅーっ、はぁーっ…大丈夫、大丈夫…。無理させちゃったかな、ごめんね…ふぅーっ、はぁーっ…」

魔力成形の影響と判断したフィンは繰り返しお腹を撫でつつ、胎児に語りかけながら深呼吸を繰り返す。
フィンの語りかけが功を奏したのか。胎児の鼓動は落ちつくように小さくなり、お腹を蹴る頻度も少なくなる。
すっかり胎児が蹴らなくなってからも、お腹の違和感を感じていたフィンはお腹を撫でながら呼吸を繰り返す。
ようやく違和感が治ったフィンはゆっくりとした足取りで練習部屋を後にする。

ダイニングテーブルに向かう道筋でフィンは思考を巡らせる。

【赤ちゃんが暴れ出したこと、クアールさんに正直に伝えた方がいいかな】
【クアールさんが心配しないように赤ちゃんが暴れていたことを話さない方がいいかな】

26名無しさん:2023/01/05(木) 18:32:49
>【赤ちゃんが暴れ出したこと、クアールさんに正直に伝えた方がいいかな】

「そういう前例は無いはずだが……産気づく前触れなのでは?」
「で、でも、妊娠期間から考えてまだまだ早いんじゃ…?」
「それはエルフの場合でな。その子はドワーフとの混血ゆえ、同じとは限らない」
「……そう、なのかな……」

クアールさんに言われてみれば、確かに隠れ里に来てからはずっと違和感があった。
赤ちゃんはドワーフとのハーフてすし、確かにエルフの常識が適用されない可能性がある。
今は暴れていないお腹の赤ちゃんに向かって、フィンはお腹を撫でながら思いを巡らした。

【もしかしたらもう出てこようとしてるのかな……と、心の準備をしておく】
【違和感あるけどさすがにまだ早いはず……と、自分に言い聞かせる】

27名無しさん:2023/01/08(日) 14:12:20
【違和感あるけどさすがにまだ早いはず……と、自分に言い聞かせる】

(違和感はあるけれど…さすがにまだ、早い…わよね?)

エルフの妊娠期間だと明らかに早い上に、ドワーフの妊娠期間でももう少し先…と妊娠初期にギムリンから聞いた記憶がフィンにはある。
だからといって早産の可能性も考えられるし、混血だとどうなるかわからない…。
色々な思考が頭をよぎる中、クアールがパンパン、と合図するように拍手した。

「あんまり考えすぎちゃダメだよ。魔力の練習をセーブすればしばらくはお腹の中にいてくれるかもしれないしね。
 さあ、ご飯が出来たよフィンくん」

クアールの言葉を合図に、フィンとクアールはご飯を食べ進める。

満腹になってお腹を優しくさするフィンにクアールは語りかける。

【無理しない程度に魔力成形の練習を再開しようか】
【ひとまず今日は魔力成形をお休みして、私がレシピを作成したお菓子作りでもしてみようか】

28名無しさん:2023/01/10(火) 11:58:17
>【無理しない程度に魔力成形の練習を再開しようか】

「さてフィンくん、無理しない程度に魔力成型の練習を再開しようか」

「っ……すみません、ちょっとこの子が……またっ」
痛くはないが一向に胎動が収まらず、お腹をさするフィンは困り顔に。

「ふむ、やはり何かの理由で活発にでもなっているのかな?どれどれ……」
そう言いながら、クアールはフィンの妊婦腹に手を当てる。
どうやら、胎児はフィンの魔力の流れを強く干渉しようとているようだ。
フィンの中にいる胎児の鼓動を感じながら、クアールはこう言った――

【もしや、フィンの魔力制御を胎内から手伝おうとしている……?】
【もしや、フィンの魔力を自分の体に取り込もうとしている……?】

29名無しさん:2023/01/11(水) 00:45:53
>【もしや、フィンの魔力制御を胎内から手伝おうとしている……?】

「もしや、フィンの魔力制御を胎内から手伝おうとしている…?」

クアールの呟きに、フィンはそういえば、と思い返す。
『灯火(ランプライト)』を使っていた時に、脈打つような胎動を返していた。
その時は逃げていた疲労から…と考えていたが、もしかしたら『灯火(ランプライト)』の魔力制御を手伝おうとしていたなら…

思いついたことをフィンがクアールに話すと、少し考えるそぶりをする。

「ふむ…赤ちゃんに対する胎教みたいなものと考えてもいいかもしれないな。
『その者、この里に災いをもたらす可能性を感じるが、その者は光なき世界に大いなる光をもたらす可能性も秘めている』…みたいなのを長老が話していたし、ね。
であれば…そうだな。せっかくだから赤ちゃんにも練習させてあげようか。君もけして無理はしないように。」

そうクアールが話しながら用意したのは

【魔力の流れで自由に形を変化させる粘土だった】
【魔力の流れで自由に組み立てられる知育玩具だった】

30名無しさん:2023/01/12(木) 22:19:06
>【魔力の流れで自由に形を変化させる粘土だった】

「今も腹の子は動いているだろ?この粘土に手を近づけて、胎動に意識を向けながら魔力を練ってみ」
「は、はい……」

さっきから変に胎動が激しくて正直こんなことをする場合ではないと思っているフィンだったが、
疼くお腹を右手でさすりながらクアールに言われるがままに粘土に左手の手のひらをかざった。

「よし、そのまま力を抜いて胎動に集中して、造形は腹の子に任せるのだ」
「えっと、こう……?」

クアールの指示されるとおりにフィンは目を閉じ、お腹の赤ちゃんに意識をゆだねる。
そしたらなんと、まるで胎動に影響を受けているかのように、粘土がくねくねと変形し――

【丸まっている胎児に見えなくもない物体……のような形になった】
【歪ながら何かの植物を象ったっぽい物体……のような形になった】

31名無しさん:2023/01/25(水) 23:09:37
【丸まっている胎児に見えなくもない物体……のような形になった】

変形を終わって出来たのは、丸まった胎児…みたいな形の粘土。

「え、これ。もしかして…?」

フィンが目を丸くするのと同時に胎児がトン、とお腹を蹴る。

「ほほう、これはこれは…ひょっとして赤ちゃんの姿かな?ドワーフのような武骨さに、エルフのような繊細さを秘めているような…」

クアールが感心するようにマジマジと見つめる。

「…さて、気付いたら日も傾いて来たね。今日は終わりにしようか。
君のお腹の具合も気になるし、赤ちゃんも疲れたんじゃないかな」

そう言えば、とフィンは考える。
夕日が少しずつ赤くなったし、お腹の違和感は薄くなってはいるが残っているし、赤ちゃんは疲れたのか大人しい。
クアールに頭を下げ帰ろうとするフィンだったが、『お土産だ、ギムリンくんにも見せてあげるといい』と粘土を渡される。

家にたどり着いたフィンは…

【テーブルに粘土をおいて夕食を作り始めた】
【ギムリンが来るまで粘土を眺めつづけていた】

32名無しさん:2023/01/29(日) 10:28:32
【ギムリンが来るまで粘土を眺めつづけていた】

「これがあなたの姿かぁ……ふふっ、ここら辺とかギムリンとそっくりね」

家に帰ったフィンは、夕食の用意も忘れてしまうほどに、お腹の赤ちゃんが作った粘土を眺めつづけていた。

「っ、また……もう少し、お腹の中にいてくれてほしいな……」

お腹に感じる違和感は多少薄くなっていながらも、忘れそうになった時にしっかりと感じてしまう。

痛いというほどのものではないから、おそらくこれは生まれそうになっているではないと思う反面、
胎動の感じとも違っていてどちらかというと肩こりとかそういうずっしりとしたものに戸惑うフィン。

「ただいま」

いろいろ考えていたら、ギムリンが帰ってきたようだ。
最愛の夫の声を聴いて、フィンは玄関へ向かおう動き出す。
すると……

【急に粘土がうっすらと光りだした】
【急にお腹の赤ちゃんが暴れだした】

33名無しさん:2023/02/06(月) 00:11:58
【急にお腹の赤ちゃんが暴れ出した】

玄関を目指して2、3歩歩き始めるとお腹の赤ちゃんが何度もお腹を蹴り始めた。
思わずお腹に痛みを覚え、お腹に右手を当てへたり込む。

「フィン!?」

慌てて駆け寄り近づいたギムリンを左手で制し、フィンは呼吸を整える。

「大丈夫…大丈夫…まだ、直ぐには産まれない…はず…」

苦しそうな声で呟きながらも何度もお腹を撫でていると、赤ちゃんは少しずつ動きを止め、痛みも直ぐに引いた。

「ごめん…ご飯、作れそうにない」
「まぁそんなこともあろうかと思って、料理をいくつか買ってきたよ。食卓に並べて行こうか」

フィンの言葉にギムリンは大きな胸板を叩く仕草をしながら返事をした。
そして、2人は手際良く料理を並べ始める。

食事をしながら、フィンは「ひょっとしたら早産になるかも」と不安げに語ったり「この粘土の形、赤ちゃんが作ったのよ」と自慢(?)する。

食事を終え体を清めベットに潜り込むフィン。彼女は…

【まだ予定日は先だろうし、フィンさんにまた魔力形成の勉強をさせてもらおうと考えた】
【お腹の違和感が気になるから、念のため新台受けた方が安心できそうと考えた】

34名無しさん:2023/02/09(木) 14:57:10
>【お腹の違和感が気になるから、念のため診断受けた方が安心できそうと考えた】

種族の垣根を超えて授かった大事な赤ちゃんだし、やはりもう一度診断を受けよう。
自分を落ち着かせようと、ベッドに潜り込んだ状態でフィンはゆっくりお腹を撫でた。
彼女につられてギムリンも、フィンの膨らんでいるお腹にその大きな手をかざす。

「……熱いな。これじゃまるで太陽を孕んでいるじゃねぇか」

フィンの心臓の鼓動に合わせて、彼女のお腹の内側から魔力の波を感じるギムリン。
ポカポカする熱くて強いその魔力は、二人の赤ちゃんの異常性を何より示してくれる。
まだ産まれないとエルフのフィンは言ってるが、ドワーフのギムリンはそう思わなかった。

そして、その夜。真夜中の月明かりが窓から射し込んで寝室を照らしてる中。
今まで感じた違和感の答え合わせみたいに、フィンはーー

【寝かせてくれないほどの激しい胎動を感じた】
【悲鳴を上げちまうほどの激しい腹痛を感じた】

35名無しさん:2023/02/11(土) 11:04:10
【寝かせてくれないほどの激しい胎動を感じた】

「ぅ…」

小さく唸ったあと、フィンは月明かり輝くベッドから体を起こした。
どうやら胎動が激しくなかなか寝付けないらしい。

「暴れん坊さんね…もうちょっと、落ち着いてくれないかしら。…ぅ、ふぅ…」

陣痛というわけではなさそうだが、違和感はまだ続いている。
フィンは「はぁ」とため息をついた後、ゆっくりとした足取りで粘土が置いてあるテーブルへと歩いた。
テーブルに着席するとすぐに、グネグネと粘土が動き出す。
赤ちゃんの形をしたかと思えば紐のような形を作ったり、ボールのように丸めたかと思えば伸ばし始めたり。

「ふふ…楽しい?」

フィンが語りかけると、小さくモゾモゾと赤ちゃんは動いた。
赤ちゃんが疲れたのか粘土の動きが鈍くなってきたのを見ながら、フィンはいつのまにか睡魔に身を委ねていた。

翌朝。

クアールの元に訪れたフィンは、夕食ごろに赤ちゃんが暴れ出したこと、夜にも胎動が激しくなりなかなか寝れなかったことを伝えた。
最初は笑みを浮かべていたが、次第に真剣な顔をするクアール。
すぐに診断を始め、クアールが出した結論は…

【思ってたより成長が早いね。数日中に産まれる可能性だってある】
【魔力制御の練習をすれば多少は大人しくなるかな。それでも数週間もすれば産まれそうだ】

36名無しさん:2023/02/16(木) 11:13:26
【思ってたより成長が早いね。数日中に産まれる可能性だってある】

……と、真剣な顔からまた一転してクアールは苦笑いを浮かべて言った。
もとより覚悟の上だったゆえこの診断結果にフィンは驚いてはいなかったし、
ああやはりお腹の違和感は出産の兆しだったのね、とむしろ納得していた。

数日中に本陣痛は来るだろうと言っても、今のところは何ら支障はないようだ。
本人の意向でもあるため、この日もフィンは魔力制御の練習をすることにした。
ただしその内容に少し変更があって、出産するとき役に立つようなものに。
特に魔力を循環させ痛みを和らげる呼吸法を、フィンは重点的に練習した。

万端とは言えないし焼き付け刃程度だが、出産に向けて心の準備はできた。
あとは、お腹の赤ちゃんからの合図……陣痛が来るのを待つだけだ。


【早ければ今夜もあり得ると考えて、フィンは体を清めようと風呂場に入る】
【念には念をと、ベッドに腰を下ろしてフィンは学んだ呼吸法を復習する】

37名無しさん:2023/02/20(月) 00:46:21
【念には念をと、ベッドに腰を下ろしてフィンは学んだ呼吸法を復習する】

いつ本格的に陣痛が始まるか分からないフィンは、風呂桶にお湯を入れタオルで身体を軽く拭ったあと、
ベッドに腰を下ろしてクアールに学んだ呼吸法を復習した。

「普通の時の呼吸は一般的な産婦さんの呼吸で…ひっ、ひっ、ふぅぅ…」
何度か一般的な呼吸を繰り返したあと、フィンは目を閉じて集中し始める。
「魔力を循環させて和らげるときは…お腹に魔法陣を描くイメージで…すぅぅ、ふぅぅ…」
フィンが深呼吸を始めると、徐々に淡い光がお腹の辺りに現れた。
それは次第に魔法陣のような形を取り、緑に光り始めた。

フィンが教わった呼吸法では、魔力を循環させるために補助としてお腹の辺りに魔法陣を作るために集中力を高める…といった感じの呼吸法。
かつて勇者を産んだ母親も得意とする呼吸法…だったと文献にあるらしい。
ただ、胎児の魔力とのバランスが崩れると母子共に負担が増えるらしく、
先日の勇者を産んだ母の記述では、魔法陣が緑から赤に光の色が変わり始めた頃から魔力循環のバランスが崩れ、
赤く点滅し始めたあたりからは勇者の母は泣き叫びながら必死に分娩を行っていた…と文献に書かれていた。
結果、勇者の母は出産で死ななかったものの体調が完調するまで数ヶ月を要した…らしい

フィンとしては話を聞いた時から不安ではあるが、それでも二つの呼吸法を繰り返すうちに落ち着いた気持ちになる。
そして優しくお腹に語りかける。

【早く出ておいで。あなたに見せたいもの、いっぱいあるから】
【のんびりやさんみたいだから、あなたのタイミングで生まれてきてね】


新着レスの表示


名前: E-mail(省略可)

※書き込む際の注意事項はこちら

※画像アップローダーはこちら

(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)

掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板