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没ネタ・妄想SSスレ

13没話「角砂糖は命より重い?」 ◆Rf2WXK36Ow:2012/03/02(金) 20:39:51 ID:9iQe6KeE
セッコはどうすればいいのかわからなかった。
ただひとつ理解していることは『ここには何もない』ということだけだった。
だだっ広い野原の真ん中、表現するならそういうほかない。セッコは夜空の天井を目にしながら目を覚ました。
土の匂い、草の匂い、風の匂い。原始的な匂いの充満する中で、生き物の臭いだけが酷く希薄だった。ほとんどしなかったと言ってもいい。
セッコがブチャラティを追って居たはずの広場でも、もっとヒトの臭いがした。気配があった。
まずセッコは反射的に『チョコラータ』を思い出した。セッコにとって頼るべき相手は、彼を置いて誰が居るだろう。頭の良いチョコラータなら、セッコを導いてくれるに違いない。
チョコラータは言っていた。
『ミスタは仕留めた』『オレたちは無敵だ』
チョコラータがチョコラータである限り、セッコはその言葉を無条件に信じている。それがセッコの気質でもあり、処世術でもあったからだ。

「で、電話……携帯電話ッ!」

あの老人はなんと言っていただろう?
『バトルロワイアル』『殺し合い』『なんでも与える』そう言っていた気がする。

がさがさと体中を探りまわし、目当ての携帯電話はおろかチョコラータのハンディカムまで持っていないことに気づき、セッコはギリギリと歯ぎしりをした。
チョコラータに怒られる。くれると言っていたご褒美の角砂糖も投げてもらえないかもしれない。

あの老人はチョコラータよりも頭が良いのか?強いのか?お金持ちなのか?
セッコにはわからない。ただ『ぽっ』と出てきた爺さんより、セッコを大事にしてくれていたのはチョコラータだ。遊んでくれたのもチョコラータだし、頭をなでたり背中をかいたりしてくれたのもチョコラータだ。

「なんだぁ、この紙っぺら」

傍にあったデイパックをぶちまけて見つけたものは、味気なさそうなパンに水と、道具が少々。角砂糖なんてどこにも入ってやしない。
何か書いてあるのかと折りたたまれた紙っぺらを開けると、ころりとペンダントが転がり出てきた。大きくてきらきらした綺麗な赤い石がはめ込まれたものだったが、セッコにとっては特別価値のあるものではない。捨てるのも何なので持っておこう、その程度のものだ。

「……どうする、どうする、なんでチョコラータいねぇんだよォ……」

目印も何もないこの場所は、地図をみたところでよくわからない。
チョコラータは、このわけのわからない町のどこにいるとも限らない。
老人の言葉は……信用できるのかわからない。
ないないづくしのなかで、セッコが思ったのは『角砂糖食いてぇなぁ』という、本能に基づいた欲求だった。

「とりあえずよー、誰かのいるところに行きゃあ『ある』んじゃねぇかなァァアァァ」

そしてセッコは探し出す。オアシスでその場に潜り、自らが持つ原始的な才能でもって捉えた、もっとも近距離にいる『誰か』を。






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