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和「ちょっと律!」

1いえーい!名無しだよん!:2016/04/16(土) 14:33:06 ID:kw0RarYA0
和「あなたまたけいおんSS書いてないでしょ!」

律「やべっ和だ」

和「今月一本も書いてないのあなただけよ」

澪「律、またなのか」

律「すまん、アイデアが浮かばなくて」

澪「嘘をつくな!使えそうなネタをツイッターで呟いてるだろ」

律「あれはボツネタを再利用してるだけだ」

唯「りっちゃん、ちゃんとけいおんSS書かなきゃだめだよ?」

和「そうよ。あなたはけいおんSS部の部長なんだからしっかりしなさい」

梓「私、もっと真面目にけいおんSSを書く部活だと思って入部したのになぁ」

律「くっ……」

律「私だって……ポンポンけいおんSSを量産したいさ……」

澪「律……」

律「でも書けない!」

唯「りっちゃん、もしかしてSMAP?」

律「ん?」

梓「唯先輩スランプですか?」

唯「そうそう、それ」

唯「りっちゃんはスランプなんだよ」

紬「ちょっと待って」

紬「唯ちゃん今SMAPって言ったよね」

唯「あ……」

紬「けいおんSSに男性を登場させてはならない」

唯「……ご、ごめんねムギちゃん」

律(あぁ、ムギの暴走が始まった)

律(こうなってしまったらもうおしまいだ)

律(傾向としてムギは百合原理主義者だし、和はすぐに空気になる)

律(これは私の力量が足りないからなのか……)

田井中は頭を抱えた。
そろそろ真鍋に発言させる必要があった。
真鍋和ならこの状況でどんな発言をするのか、田井中にはそれがわからなかった。

律(和、お前は今、なにを思いどんな行動を取るんだ)

田井中は背凭れに体重を預け静観することに決めたが、真鍋は眼鏡を光らせるばかりで一向に動きを見せなかった。
田井中が苛つきを覚えた頃、真鍋は田井中の視線に気付いたのか組んでいた腕を解き眼鏡をクイッとした。

律(……)

真鍋の表情は極めてニュートラルなものだったので感情を探ることは困難だった。
やがて田井中は意識が遠のいてゆくのを感じた。

2いえーい!名無しだよん!:2016/04/17(日) 07:53:22 ID:5s60X3KE0
けいおんSS倫理規定とその解釈

憂「こちら平沢唯保護者会窓口担当の平沢憂です」

律「けいおんSS倫理規定とやらについて教えてくれ」

憂「けいおんSS倫理規定とは平沢唯保護者会と秋山澪ファンクラブ、そして生徒会、この三つの組織によってけいおんSSを審査するための規定です」

律「うーん、わからん」

律「平沢唯保護者会とはなんだ?」

憂「お姉ちゃんを主人公としたけいおんSSが一定の基準を満たしているかを証明するための組織です」

憂「平沢唯保護者会の審査に合格したけいおんSSはタイトルにその旨を付記することが認められます」

律「全然わからん」

憂「つまり、老若男女が安心してけいおんSSを読めるように、その内容の品質と健全性を保証するための組織です」

律「ふむふむ」

律「秋山澪ファンクラブとは?」

憂「秋山澪ファンクラブとは澪先輩を主人公としたけいおんSSが一定の基準を満たしているかを証明するための組織です」

律「では生徒会は?」

憂「生徒会はカテゴリーギャグに分類されたけいおんSSを取り扱います」

律「唯が主人公だと保護者会、澪が主人公だとファンクラブ、ギャグだと生徒会か」

憂「その通りです」

律「例えばムギを主人公にしたらどうなるんだ?」

憂「我々の管轄ではありません。お姉ちゃんと紬先輩の百合でしたら我々が審査しますが」

憂「今後紬先輩SSを審査する組織も発足するでしょう」

律「そうか、ではけいおんSS倫理規定の具体的な内容を教えてくれ」

憂「では担当の者に代わります。そのまま少しお待ちください」

律「はいよ」

3いえーい!名無しだよん!:2016/04/18(月) 00:33:16 ID:cvaE1ayY0
梓「はい、担当の中野です」

梓「けいおんSS倫理規定の具体的な内容についてのお問い合わせですね」

律「そうだ」

梓「まずはレーティングからですね」

律「レーティング?」

梓「けいおんSS倫理規定が定める禁止表現の有無を判断し、禁止表現が有る場合、対象年齢区分を設けます。全年齢対象だとか十八禁だとかですね」

律「どんな表現が禁止されているんだ?」

梓「基本的に読者が不愉快になる表現、差別等、特定の個人や法人、団体等に不利益となる表現は禁止です」

律「そんな表現する奴いないだろ」

梓「禁止ですから当然ですね。そんなことしようものならレーティングは与えられず即刻執事ノート行きです」

梓「次に推奨しない表現。性表現、暴力表現、反社会的行為表現、言語・思想表現の四つです」

律「ふむ」

梓「性表現はキス、抱擁、下着の露出、性行為、裸体、排泄等です」

律「抱擁……?唯が梓にいつも抱きついてるのは……」

梓「抱擁、及び愛撫にあたります」

律「だよな」

梓「けいおんSS倫理規定には百合的観点からの推奨とギャグ的観点からの許容が存在します」

律「はい?」

梓「百合的観点からのキス、抱擁、性行為は強く推奨されているので積極的に表現して下さい」

律「……」

梓「暴力表現は出血描写、身体の分離・欠損描写、死体描写、殺傷、恐怖、対戦格闘・喧嘩描写等の澪先輩が嫌がりそうな表現全般です」

梓「ただしムギ先輩が百合的表現により鼻血を流してもギャグ的観点から許容されます」

梓「唯先輩がトラックに轢かれて絶命した場合、非常に不愉快なのでギャグ的であっても禁止です」

梓「唯先輩とトラックの恋愛描写は禁止ですが、唯先輩と小型トラックの恋愛描写なら禁止しません。なぜなら小型トラックはフランス語で女性名詞だからです」

律「本性を現してきたな」

梓「禁止はしませんが推奨もしません」

律「そうかい」

梓「唯先輩に怪我を負わせる事も推奨しません。唯先輩を転ばせる場合、厚さが充分なマットや布団等を用意するか、顎・肘・膝に充分なプロテクトを施し唯先輩が出血したり痛みを感じないよう努めて下さい」

梓「基本的に唯先輩へ身体的、精神的ストレスを与えてはいけません」

梓「唯先輩に危険が及ぶ可能性もダメです。深夜に唯先輩を徘徊させたり、ましてや戦場に連れて行ったりしたら厳重注意となります」

梓「唯先輩の手の届く範囲に酒類、煙草、薬物等を放置してはなりません。ゼリーやお餅等喉に詰まりそうな物、ブロックやクレヨン等、唯先輩が誤飲しそうなものも施錠された箱等に保管して下さい」

律「お前ら唯を乳幼児扱いするなよ」

梓「唯先輩が不当に貶められない為の組織ですのでご容赦下さい」

梓「あと喧嘩描写ですね。喧嘩しているのが二人で双方女の子であれば百合喧嘩と見做され推奨されます。澪先輩が律先輩に鉄拳制裁を加えても百合暴力なので禁止しません」

律「百合ならなんでもありなのか……」

梓「そうでもありませんよ。たとえ百合でも唯先輩を過度に太らせたり、禿させたりするのはNGです」

梓「唯先輩に勝手な設定を付け足す場合可愛いか可愛くないかでこちらは判断します」

梓「唯先輩が伝説の魔法使いの子孫で、ある日魔法に目覚めても可愛さに影響はないので問題ありません」

梓「また、絶対音感以外の特殊能力や技能について。唯先輩がゴム人間になって腕が伸びたりするのは可愛くないので推奨しません。唯先輩が手のひらサイズまで小さくなれる能力を得たらそれはそれで可愛いのでokです」

律「もう帰っていいか?」

梓「もう帰るんですか?」

律「今日はなんだか疲れた。続きは明日聞かせてくれ」

梓「はい、お疲れ様でした」

4いえーい!名無しだよん!:2016/04/19(火) 00:42:00 ID:GsXIIDPw0
姫子「平沢唯保護者会の立花です」

律「今日は姫子か」

姫子「よろしくね」

律「昨日は暴力表現まで聞いた」

姫子「じゃあ今日は反社会的行為表現からだね」

律「頼む」

姫子「反社会的行為表現とはまぁ犯罪描写だね。麻薬等薬物、虐待、非合法な飲酒及び喫煙、非合法なギャンブル、性犯罪等、人身売買等」

姫子「唯に援助交際をさせてはならない」

姫子「唯に痴漢してはならない」

姫子「唯に極道の道を歩ませてはならない」

律「うん、至極当然の事だな」

姫子「眠っている唯のおっぱいを触ったりほっぺにキスしたりしてはならない」
※ただし百合なら可

律「そうだな」

姫子「あと、唯が成人している設定でも飲酒、喫煙はあまり推奨しない」

律「なぜだ?」

姫子「可愛くないから」

律「そうか?」

姫子「けいおんSS倫理規定は個人の解釈によって多少ズレる」

律「可愛いか可愛くないかなんて明らかに主観だしな」

姫子「保護者会の中でも解釈の齟齬が見られる。これはけいおんSS倫理規定の瑕疵だと私は思う」

姫子「例えば唯の空腹について、憂ちゃんと一文字とみさんは唯が空腹を感じないようにどんどん食べ物を与えるけど、中野さんと和は唯の肥満を危惧してやや反対の姿勢を示してる」

律「なるほどなー」

姫子「例え唯がデブになっても憂ちゃんは可愛いと思うだろうね」

律「モリモリ食べる唯を微笑みながら眺めてるだろうな」

姫子「和は我が平沢唯保護者会と秋山澪ファンクラブと生徒会の会長だから殆ど顔も出せないくらい忙しいんだ。だから私が均衡を保たないと」

律「和……」

姫子「内部事情はもういっか」

姫子「反社会的行為表現だね」

姫子「カニバリズムとスカトロは例え百合でもダメだよ」

姫子「唯は食べちゃいたいくらい可愛いけど」

姫子「ペロペロくらいで我慢ね」

律「ムギの眉毛を食べるのは?」

姫子「ムギの眉毛は結論から言えば許可する」

姫子「ムギの眉毛は美味いらしいからね、不味いならそもそも唯に食べさせてはならない」

姫子「それにムギの眉毛は生産者の顔もしっかり表示されてるしオーガニック食材として扱うから寧ろ推奨」

姫子「唯に食品を与える際には公衆衛生とトレーサビリティをしっかり遵守するんだよ」

律「ラジャー!」

姫子「次、言語・思想表現。人物・国・人種・民族・宗教・思想・政治団体等」

姫子「唯に政治、宗教等の意見を言わせないようにして」

律「お前ら唯信者のくせしてよく言うな」

姫子「私たちはいいの、でも唯はだめ」

姫子「唯が政治的な諍いや軋轢に巻き込まれたらと思うと私は心が痛い」

姫子「唯の心はいつも平和で、唯の寝顔はいつも穏やかでなきゃ」

姫子「唯が見上げる空はいつも高く澄んでいて、風は心地よく、川のせせらぎと動物達の朗らかな声が唯を笑顔にさせる」

律「姫子お前……」

姫子「世俗は悪!悪は唯から遠ざけるべし!」

律(姫子が暴走しただと……)

姫子「おぉ、百合の神ア○マブラよ!唯の未来にこの世で最高の喜びと祝福を賜りたまえ!」

立花の頬に一筋の涙が走った。

5いえーい!名無しだよん!:2016/04/19(火) 23:53:33 ID:8VGo3Yg60
唯好き、けいおん好きの身としては、拷問、虐め、過度な暴力はほんとにノーサンキュー。
憂や梓、姫子の言うことにも一部うなづけるが、少し過保護すぎるか(笑)
特に姫子には狂信的というか神がかったものを感じられるのもグー。
りっちゃんと受け身な聞き役も似合うな。

6いえーい!名無しだよん!:2016/04/21(木) 00:03:39 ID:h8YJ8TSU0
けいおんSSの不文律

とみ「読者を置き去りにするのは良くないねぇ」

律「仰る通りです」

とみ「読者はとてもデリケートだからねぇ。展開がね突然だったり、画面が地の文でビッシリと埋め尽くされてたりしたら、スーっと何処かへ消えてしまうのよ。気をつけるんだよ」

律「地の文を読むのは疲れますからね」

とみ「りつさんはめんこい子だねぇ」

律「いえいえそんな」

とみ「ゆいちゃんとりつさんで演芸大会に出てみたらどうかしら?」

律「いやー私演芸なんて大層なこと出来ないので」

とみ「それならSSを書くことね。SSは人生を豊かに彩ってくれるのよ」

律「はい、書きます」

とみ「りつさんのSSを読んでみたいねぇ」

律「はい、SS書くのサボってすみません」

とみ「いいのよいいのよ。SSは義務じゃないからね」

とみ「唯ちゃんのSSも憂ちゃんのSSもとっても素敵でそれぞれ味があるのよ」

とみ「唯ちゃんたら最近ますます上手になってね。唯ちゃんのお陰で老人の一人暮らしも退屈じゃないのよ」

律「そうですか」

老人の退屈な話は続いた。

律「ところで」

律「唯とみは……百合なんでしょうか?」

とみ「……!?」

老人の目が大きく開いた。


走れ唯

唯は激怒した。必ず、かの邪智暴虐の王、さわ子を除かなければならぬと決意した。唯には政治がわからぬ。唯は、村の牧人である。カスタネットを叩き、羊と遊んで暮して来た。けれども邪悪に対しては、人一倍に敏感であった。きょう未明唯は村を出発し、野を越え山越え、十里はなれたここ桜ヶ丘の市にやって来た。唯には父も、母も無い。女房も無い。十六の、内気な妹と二人暮しだ。この妹は、村の或る律気な一牧人を、近々、花嫁として迎える事になっていた。結婚式も間近かなのである。唯は、それゆえ、花嫁の衣裳やら祝宴の御馳走やらを買いに、はるばる桜ヶ丘市にやって来たのだ。先ず、その品々を買い集め、それから都の大路をぶらぶら歩いた。唯には竹馬の友があった。アズニャンティウスである。今は此の桜ヶ丘の市で、石工をしている。その友を、これから訪ねてみるつもりなのだ。久しく逢わなかったのだから、訪ねて行くのが楽しみである。歩いているうちに唯は、まちの様子を怪しく思った。ひっそりしている。もう既に日も落ちて、まちの暗いのは当りまえだが、けれども、なんだか、夜のせいばかりでは無く、市全体が、やけに寂しい。のんきな唯も、だんだん不安になって来た。路で逢った鈴木純をつかまえて、何かあったのか、二年まえに此の市に来たときは、夜でも皆が歌をうたって、まちは賑やかであった筈だが、と質問した。純は、首を振って答えなかった。しばらく歩いて一文字とみに逢い、こんどはもっと、語勢を強くして質問した。とみは答えなかった。唯は両手でとみのからだをゆすぶって質問を重ねた。とみは、あたりをはばかる低声で、わずか答えた。
とみ「さわ子は人にきわどいコスプレをさせます」

場面転換

とみ「……」

老人は一口茶を啜って落ち着いたら声で言った。

とみ「けいおん!の舞台は桜ヶ丘ではなく桜が丘です」

律「すみません訂正してきます」

7いえーい!名無しだよん!:2016/04/22(金) 21:29:47 ID:nHgrWZbw0
澪「憂ちゃんを唯以外と結婚させるなんてとんでもない」

澪「律、お前はなにを考えてるんだ」

律「いや、わかってるよ。わかってるけど走れメロスの都合上、仕方なかったんだ」

澪「はぁ」

秋山は不満の入り混じった長いため息を吐いた。

澪「律、そこは腕の見せ所だ」

律「腕の見せ所……」

澪「物語の展開上『百合的不都合』が生じた場合、原作の設定、パロディ元の設定、クロス元の設定、その他法律、物理法則、なんだって自由に改変してもいいんだ」

律「なんだって……」

律「だってけいおんSS倫理規定では……!」

澪「律、けいおんSSには不文律がある」

律「けいおんSSの不文律?」

澪「そうだ。けいおんSS倫理規定には書いていない。あまり大きな声では言えないルール」

澪「成文化しても成文化しなくても不都合があるから不文律なんだ」

律「そんなルールまであるのかややこしいな」

澪「律だって無意識に理解できてる」

澪「女の子同士で結婚できるのは当たり前だし、悪役はさわ子先生か信代であるべきなんだ」

律「そうだ、誰が決めた訳でもなく自然とそんな風潮が生まれていた」

澪「けいおんSSは百合的な治外法権なんだ」

澪「百合の為、読者の満足度向上の為なら和の進学先をN女子大に変えても良いし、もっと言えば3年2組全員N女に現役合格させる事も可能だ」

律「それはやり過ぎだろ」

澪「そんなことない。読者の皆さんもそう思うだろ?」

読者「そう思う」

律「なっ、なにいいイィィィィイ!?SS内で読者から同意を得ただとぉぉぉぉぉ!????」

澪「これも百合、あれも百合、百合の為なら汚い手段も良しとしよう」

澪「けいおんSSの明日を担う者よ!」

澪「恐れる事はない!百合という大義名分を掲げ、SSを書くのだ!」

澪「律よ!けいおんSSの礎となれ!」

律「こんなのおかしーし」

律「まるで百合ヤクザだ」

8いえーい!名無しだよん!:2016/04/26(火) 02:51:08 ID:DPpq.dIc0
とみの指摘が何気に面白い。
「悪役はさわ子先生か信代」とか「百合やくざ」なんていう味のある表現も好きだな。
このまま律はどこに行ってしまうのか。

9いえーい!名無しだよん!:2016/04/26(火) 17:19:16 ID:p/DPpU6Y0
唯が百合的三角関係の末にふられる、もしくは身を引くようなSSについては
保護者会のみなさんはどうお考えなのだろうか

10いえーい!名無しだよん!:2016/04/29(金) 05:02:24 ID:Wbki0d4g0
校舎の屋上

空は鈍色の雲に覆われ、強く冷たい風が吹き、今にも雨が降り出しそうな天気だった。

澪「律、珍しいな。こんなところで何してるんだ?」

律「ん……澪か」

澪「SSも書かずにこんなところで膝を抱えて……風邪ひくぞ」

律「今はSSを書く気分じゃないんだ」

澪「そうか。律、SS書くのに疲れてしまったのか?」

律「いや、そんなことない」

澪「なら、なにか悩み事か?」

律「まぁそうだな」

澪「律でも悩み事なんてあるんだな」

律「まぁな、百合について考えてたんだ」

澪「百合……」

律「百合とはなんだろう……ってさ」

律「澪、なんで私がここにいるってわかったんだ?」

澪「いや、なんとなくだけど」

律「それも百合だと思うか?」

澪「それも広義の意味での百合だろうな」

律「私と澪が時間をかけて培ってきたもの、それは広義の百合なのか。百合とは時間の積み重ねなのか」

澪「長い時間を経て熟成された百合は強靭な百合だ。でも時間なんか関係ないさ。積み重ねなくても百合は百合」

律「一瞬の閃光を放つ儚い百合だってあるもんな」

律「……なら百合とはなんだ」

澪「……百合とは形のないものだ。言葉にするのは難しい」

律「私は百合を体系的に学ぶ必要がある」

澪「百合を学ぶ……か」

律「百合に対する広い見識と深い造詣を持って、私はもう一度保護者会の奴らと話がしたい」

澪「律の成長物語か」

律「これも百合になるか?」

澪「そうだ、それも百合だ」

11いえーい!名無しだよん!:2016/04/29(金) 05:02:52 ID:Wbki0d4g0
紬「百合とはかけがえのないもの。そして光の百合と闇の百合」

律「うん」

紬「百合はカオス、無秩序に入り混じって日常の皮を被る」

紬「まるで百合じゃないよ、とでも言うように」

律「うん」

紬「れっきとした百合なのに百合じゃないように振舞ってる」

律「ムギは憤りを感じているのか」

紬「ううん、そんなことない」

律「そうだよな、ムギが怒るわけないよな」

律「でもさ、ムギは怒っても可愛いと思う」

紬「怒りの百合?」

律「怒り百合と悲しみ百合だ」

紬「それは闇の世界の百合よ」

紬「りっちゃん道を間違えないで」

律「ムギ、私を心配してるのか?」

紬「そう、私はりっちゃんが心配なの」

律「それも百合だな」

紬「りっちゃん、百合を広く受け止め過ぎないで。心が温かくなるようなほのぼの百合を書こうよ」

律「百合はいつもハッピーエンドなわけじゃないだろ。女同士なんだからドロドロな修羅場だってある」

紬「……」

律「……男が絡む事だってある」

紬「りっちゃん!」

律「そんな大声を出すなよ。シリアスみたいだろ」

紬「シリアスはやめて……シリアスは……」

律「イケメンボーカルが恐いか?」

窓の外で大きな雷鳴が響いた。

紬「世界が怒ってる……」

律「いや、世界は恐れてるんだ」

律「ノーマルラブは読者への攻撃」

紬「そう……けいおんSSに男性を登場させることは……読者に銃口を向けるのと同じなの」

律「けいおんSSに男性を登場させてはならない」

律「ムギがいつも口癖みたいに言ってることだ」

律「読者を身構えさせるメリットなんてない。読者のトラウマを想起させる必要なんてない」

律「ならばなぜ、わざわざそんなSSを書くのか。言われなくとも自主的に守るべき絶対のルールをなぜ……」

紬「それは多分、百合に信憑性、リアル感を与えたいから」

律「百合の過程をリアルにするのは良いことだ」

律「百合はいつもハッピーエンドとは限らないと考えれば失恋も描きたくなるだろうな」

紬「そんなの私は読みたくないよ」

律「わかってるよムギ」

律「でもさ百合を学ぶ上で避けては通れないだろ?」

律「ハッピーエンドの為にバッドエンドも知っておくんだ」

紬「りっちゃん……けいおんSSの闇に飲まれないでね」

律「大丈夫。私には仲間がいる」

律「仲間がいるから心が温かいんだ」

いつしか雨は降り止んで空には見事な虹がかかっていた。

12いえーい!名無しだよん!:2016/05/01(日) 13:31:13 ID:sSPvgEiI0
律「なぁ唯」

唯「おや、りっちゃん」

律「今、なに考えてた?」

唯「私?うーん」

唯「……」

唯「特に何も考えてなかったよ」

律「そうか」

唯「そうだね」

律「……」

唯「……」

律「今、何考えてる?」

唯「なにも」

律「そか」

律「唯の頭は空っぽだもんな」

唯「今、世界の経済について考えてた」

律「経済か」

律「どうだった?」

唯「なにが?」

律「世界の経済は」

唯「まぁ、結構良い方向に向かってるね」

律「そうか」

唯「なんでニヤけてるの」

律「ふふっ、いや」

唯「頭の中でバカにしてるよね」

律「バカにしてない」

唯「じゃあなんでニヤけてるの」

律「ニヤけてないだろ」

唯「ニヤけてるじゃん!」

律「唯を観察してると面白いからな」

唯「観察しないでよ」

律「特別天然記念物だよお前は」

唯「えぇ〜」

律「働かなくてもご飯食べられるぞ」

唯「それいいね」

澪「なにやってるんだ律」

唯「あ、澪ちゃん!」

律「唯の観察」

澪「SSも書かずにか」

律「唯を見てるとアイデアが湧いてくるんだよ」

律「澪もやってみろよ」

澪「じー」

唯「……」

律「じー」

唯「……」

唯「……」キリッ

澪「ふふ、急に真面目な顔するなよ」

律「面白いだろ?」

澪「唯を小馬鹿にしてないでSS書け」

唯「やっぱりバカにしてるよね!」

律「いいんだよ」

澪「はぁ?」

律「SSなんか書かなくてもいいんだよ」

律「だってそれも百合だから」

澪「どっどういうことなんだ?」

律「私がSSを書かなければ、誰かがSSを書けと言いに来るだろ」

律「そこから百合は始まるんだ」

唯「な、なるほど……」

澪「だからってSS書かなくてもいい理由にならないだろ!」

律「そんなことない。菫ノートちゃんもそう思うだろ?」

菫ノ「そう思う」

澪「律お前!」

律「怒った澪は目ん玉飛び出る程可愛いな」

澪「なんだと///」

13いえーい!名無しだよん!:2016/05/01(日) 23:58:40 ID:O5Ry5dEc0
すべてが百合、いやそうではないと禅問答が続くうちに御大が出てきたな。
これからさらに律はどうなるか・・・

14いえーい!名無しだよん!:2016/05/04(水) 00:35:03 ID:m8.Y6XMM0
面白い

15いえーい!名無しだよん!:2016/05/10(火) 07:07:04 ID:twVSXLYY0
それはとても神秘的で貴重な経験だった。

雨が連日のように降り続いた真夏の前のある日、私は部室を訪れた。
その日の天気もやはり土砂降りで、桜高校舎は雨の音に包まれ、相対的に静まりかえっていた。

部室には誰も居らず。

無人の部室はなんだか心許なくて私の身体は無意識に強張ってしまう。
まるで部室に拒まれているような感覚だった。

辺りを見渡すとブームスタンドに何かが掛けられているのを見つけた。
それは仄暗い空間に融けるようにダラリとぶら下がっていた。

これは唯先輩のタイツだ。

私は唯先輩のタイツを観察してみた。
名探偵コナンの犯人を思わせるような深く吸い込まれそうな漆黒、そして若干の光沢。
見ているだけで心に狂気が芽生えそうで、私は警戒を強める。

次に匂いを嗅いでみた。
これは疑う余地も無く唯先輩の香りだ。
そして後から遅れて、生乾きの不快な匂いが私の鼻腔を突いた。
……クンカクンカ。
脳内麻薬が分泌されているのを感じる。

私は唯先輩のタイツ、略して唯ツの先端、爪先の部分を控えめに口に含んでみた。

快楽、エクスタシー、形容し難い何かが津波のように押し寄せて来た。
私の中が満たされゆく。

目を閉じて、ゆっくりと唯ツを舌の上で転がすと、瞼の裏にモナ・リザが映し出された。
とても母性的で、子供に戻って甘えたくなるような柔らかな微笑み。
私の心を見通し永遠に見守ってくれそうな眼差し。

気付けば私は唯ツに心酔していた。

16いえーい!名無しだよん!:2016/05/10(火) 07:07:46 ID:twVSXLYY0
私は部室を出て、階段を降り、3年生の唯先輩達の教室に向かった。

廊下から恐る恐る教室を覗くと、左奥の窓際に唯先輩の姿が見えた。
最も黒板から遠い席、唯先輩らしい。

唯先輩の前に涼しい顔で座すのは真鍋和先輩。
クールで成績優秀、この学校を取り仕切る生徒会長である。
強力な百合ライバルだ。

身体が熱くなるのを感じた。

唯先輩の隣で頬杖を付いているのが立花姫子先輩。
あの和先輩ですら唯先輩の隣を確保することは出来なかった。

唯先輩の隣で我が物顔で寛いでいる。
唯先輩の隣を恣に占拠している。

私は怒りで震えた。

私があと八ヶ月早く産まれていれば、このような理不尽を許さなかった。

仕方がないので私は飛び級する事にした。

17いえーい!名無しだよん!:2016/05/10(火) 08:24:09 ID:twVSXLYY0
梓「今日から3年2組に仲間入りする中野梓です。よろしくお願いします」

それまで騒ついていた教室は、時間が止まったかのように鎮まった。
誰も声を上げず、ヒヤリとした空気が私の汗を冷やす。


私は一度深く息を吐き、意を決してから、自分の教室から苦労して運んだ自分の机を、唯先輩と立花先輩の間に差し込んだ。

姫子「……」

彼女からの反応は無かった。

姫子先輩、名前が漢字一文字では無い時点で彼女はモブである。
超主役級である私が恐れることなど何も無い。

見た目は一見ヤンキーだが、律儀にシャツをスカートに仕舞っている。
内申点への執着が捨てきれていない証左である。

律先輩のように豪快に内申を放棄するレベルでなければ、私を牽制することは出来ない。

胸だって澪先輩の方が大きい。

私はなんだか気持ちが軽くなった。

姫子「君、資格は?」

梓「え……?」

姫子「し、か、く」

梓「資格……?」

姫子「一級平沢唯取扱者認定資格、持ってる?」

梓「……」

私は困惑した。

姫子先輩によると、唯先輩の前後左右の席に着くには国家資格が必要らしい。

一級平沢唯取扱者認定資格を所持していれば平沢唯保護監督責任者を名乗ることが出来る。

梓「……持って、無いです」

姫子「じゃあダメだね」

姫子「出直しておいで」

梓「そんな、机と椅子、凄く重くて……階段とか、運ぶの大変だったのに……」

唯「あずにゃん、泣かないで」

唯先輩が私の頭を優しく撫でてくれた。
頭のてっぺんに残った唯先輩の暖かさを逃がさぬように、私はポケットに忍ばせておいた唯ツを頭に被った。

唯ツは私のツインテールを優しく包み、宇宙的な慈愛と慈悲のパワーを私に宿した。

梓「控えおろう!」

姫子「なっなに?」

梓「唯先輩の御前であるぞ!」

読者が何か言いたげな表情でこちらを見ていた。

梓「我輩はあずにゃんである。胸はまだ無い」

18いえーい!名無しだよん!:2016/05/10(火) 08:24:43 ID:twVSXLYY0
澪「律、これはキャラ崩壊だな」

律「そうだ」

澪「キャラ崩壊はあまり……良くないんじゃないか?」

律「いや大丈夫だ」

澪「読者に酷評されるぞ」

律「私は"意図的"にキャラ崩壊させている」

律「そして"意図的"に読者を置き去りにしている。わかるか?」

澪「まさか……」

律「唯のタイツを被ることによって梓は盛大にキャラ崩壊する。それにより読者のキャラ崩壊の閾値は最大まで上昇する」

澪「なるほど、キャラ崩壊の感覚を麻痺させることによって、その後の多少のキャラ崩壊に気付かせないという狙いか」

律「意図的であると示すのは重要だ」

澪「そうだな」

律「これまでの誤字脱字や設定の矛盾も意図的であると示すことによって全然恥ずかしくない!」

澪「凄いぞ律!自力でそんな高等テクを編み出すなんて」

律「へへーん、私が本気でSSを書けば、こんなもんだぜ!」

その時、田井中の尻から気の抜けるような、極めて間抜けな音が聞こえた。

律「私は今、意図的に屁をこいた」

澪「なに?意図的にだと?」

律「なぜだかわかるか?」

澪「わからん」

律「いずれわかるさ」

19いえーい!名無しだよん!:2016/05/10(火) 23:25:41 ID:LTovw71I0
おもしろい。続きが楽しみどす。

20いえーい!名無しだよん!:2016/05/11(水) 14:08:32 ID:rhxQW7lM0
アカネ「あの……」

梓「はい?」

アカネ「そこ、私の席なんだけど……」

梓「それが……なにか?」

アカネ「えっ……」

佐藤アカネ。
彼女はバレー部所属のモブである。

名前が茜なら準主役級だったかもしれないが、残念ながら超モブ級止まりである。

梓「今日からこの、唯先輩の右前方の席は私が座ります」

梓「よろしいですよね?」二コリ

アカネ「なっ……!」

アカネ「いいわけないよ!モブになる代償としてこの席を貰ったのに!」

アカネ「それに唯から離れる程、カメラに映らなくなるんだよ!」

梓「承知の上です。どうか譲って下さい」

アカネ「ダーメ!」

紬「ここは百合バトルで白黒付けるべきね!」

梓「ムギ先輩!?」

紬「唯ちゃんクイズ始めます」

紬「第1問!唯ちゃんのギー太のフィルムを剥がしたのは誰?」

梓「……」

アカネ「はい!律!」

紬「正かーい!」

紬「第2問!唯ちゃんの月々のお小遣いは幾ら?」

アカネ「5000円!」

紬「大正かーい!」

梓「ズルい!」

梓「一期の前半のことなんて私、知りません」

梓「ヤダヤダ!唯先輩の近くに座りたいよ〜」

唯「あ!駄々にゃんだ!可愛いな〜」

姫子「頻出問題を答えられないなんて、勉強が足りないよ」

梓「なんで私だけ学年が違うんですか」

梓「こんなの間違ってますよね?唯先輩?」

唯「そうだね。あずにゃん、私の膝に座っていいよ」

梓「いいんですか?」

唯「いいよ〜」

梓「わーい!」

唯「あずにゃん、軽〜い♡」

21いえーい!名無しだよん!:2016/05/12(木) 23:14:22 ID:YbAbBwIk0
これはりっちゃんの百合ssの内容ということなんだな。
唐突な展開で面食らったが、どんどん面白くなっていきそうな予感が。

22いえーい!名無しだよん!:2016/05/20(金) 21:00:55 ID:UkkiOuco0
こーゆーメタいSS大好き。のんびり書いてくれ。

“桜が丘”の誤字に関しては昔っから見る度イライラしてたから
とみさんよう指摘してくれたと相槌打ってしまった。

23いえーい!名無しだよん!:2016/05/26(木) 19:48:54 ID:RRxXlDU60
続きお待ちしております。


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