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オリロワ2014 part3

174名無しさん:2019/10/16(水) 09:39:52 ID:8DWP/KWs0
投下乙です
完結おめでとうございます!!
大団円とは無関係のところでしれっと復活してるアイツに笑う

175 ◆VJq6ZENwx6:2019/10/21(月) 22:47:00 ID:NiZApUXY0
投下乙です!
74人の長い長い戦いがようやく終わりましたね!
自キャラも書いていただきこちらこそありがとうございました!!

エピローグ、予約します。

176 ◆VJq6ZENwx6:2019/11/02(土) 23:34:49 ID:/TXTX7c60
お待たせしました。
オリロワ2014エピローグを投下します

177自己否定・進化とは枯れていくことなり ◆VJq6ZENwx6:2019/11/02(土) 23:37:23 ID:/TXTX7c60
ハァ、ハァ、と息を切りながら路地裏を走る。
カイザルに撃たれた脇腹から血が滲む。
あの男、もう長くはないはずだったがまさかご丁寧に鉛弾を届けに来る元気があったとは驚きだ。

「…う…あ…」

世界を改変しようとしてせき込む。
ご丁寧に喉を潰された、自分<ワールドオーダー>がアンナをやった事、
自分<ワールドオーダー>の能力を殺し屋組織にリークした人間がいる。

どうやら自分<ワールドオーダー>は終わったようだ。

無念も絶望もない。ただ虚無だけがある。
なのに自分はなぜ逃げているのだろう。
思考がそこに差し掛かったところで目の前に巨大な影が射す。
影の手に持っているカメラがカシャリとシャッター音を立てた。
自分はその顔を覗き込み、見知った顔に少し安堵した。

「き、みは…」

黒いコートを纏った覆面の巨漢、覆面男だ。
なるほど、確かに彼の設定ならあそこでの生死にかかわらず、復活できる可能性があるだろう。
そう納得した次の瞬間、僕は驚愕した。

「すみませーん、取材いいですかぁ」

誰の声だと一瞬思ったが、その声は間違いなく目の前から聞こえた。
覆面男が喋った。
バカな、そんなハズはない、そんな設定はしていないはずだ。
虚無だった自分の心を走った驚愕、その勢いのままに腕が動き、覆面を弾き飛ばした。

「り、ヴぇいら…?」

178自己否定・進化とは枯れていくことなり ◆VJq6ZENwx6:2019/11/02(土) 23:40:02 ID:/TXTX7c60
見慣れた銀の髪と相貌、邪神リヴェイラだ。
しかし肌の色が黒い、もともと漆黒ではあったが今では全く光を返さず、輪郭すらつかめない。

「そう、僕はリヴェイラだよ」

目の前の存在はそう言った。

(ちがうね)
声にならずとも、考えが口に出た。
リヴェイラは倒される側だった。
倒される側が倒す側に回る、その程度の奇跡が起こってもらわなければ困る戦いであったが、目の前のこれは“黒”だ。
未だに倒されるべき存在、その色が抜けていない。
それを自分<ワールドオーダー>が、否、世界が見逃すはずがない。

「なるほど、この創造主様はあの戦いのことも詳しいご様子だ」

目の前の存在は口の動きで自分の言葉を読み取り、顔を伏せた。
ク、ク、ク、とかみ殺した笑い声が聞こえる。
自分はこのリヴェイラもどきが言っている“あの戦い”、オリロワ2014の準備のために用意された自分<ワールドオーダー>、
能力実演を兼ねて用意する主催者Aと役割が被るため、省かれた主催者α(アルファ)だ。
他の自分を知っている、ということは他の自分が作ったリヴェイラと同じ破壊(リセット)装置だろうか?

「疑り深い目をしてるなあ、取材の過程でしらみつぶしに創造主様に当たったら
 君にぶつかったって訳だよ。
 創造主様のことを知りたがってた人間もいたしWinWinだね。」

目の前で紙切れをひらひらさせる、オリロワ2014の参加者名簿だ。
参加者は全員、自分<ワールドオーダー>の手がかかっている。
自分の存在を前提にして調査すれば、確かに突き当たるかもしれない。

179自己否定・進化とは枯れていくことなり ◆VJq6ZENwx6:2019/11/02(土) 23:40:25 ID:/TXTX7c60
見慣れた銀の髪と相貌、邪神リヴェイラだ。
しかし肌の色が黒い、もともと漆黒ではあったが今では全く光を返さず、輪郭すらつかめない。

「そう、僕はリヴェイラだよ」

目の前の存在はそう言った。

(ちがうね)
声にならずとも、考えが口に出た。
リヴェイラは倒される側だった。
倒される側が倒す側に回る、その程度の奇跡が起こってもらわなければ困る戦いであったが、目の前のこれは“黒”だ。
未だに倒されるべき存在、その色が抜けていない。
それを自分<ワールドオーダー>が、否、世界が見逃すはずがない。

「なるほど、この創造主様はあの戦いのことも詳しいご様子だ」

目の前の存在は口の動きで自分の言葉を読み取り、顔を伏せた。
ク、ク、ク、とかみ殺した笑い声が聞こえる。
自分はこのリヴェイラもどきが言っている“あの戦い”、オリロワ2014の準備のために用意された自分<ワールドオーダー>、
能力実演を兼ねて用意する主催者Aと役割が被るため、省かれた主催者α(アルファ)だ。
他の自分を知っている、ということは他の自分が作ったリヴェイラと同じ破壊(リセット)装置だろうか?

「疑り深い目をしてるなあ、取材の過程でしらみつぶしに創造主様に当たったら
 君にぶつかったって訳だよ。
 創造主様のことを知りたがってた人間もいたしWinWinだね。」

目の前で紙切れをひらひらさせる、オリロワ2014の参加者名簿だ。
参加者は全員、自分<ワールドオーダー>の手がかかっている。
自分の存在を前提にして調査すれば、確かに突き当たるかもしれない。

180自己否定・進化とは枯れていくことなり ◆VJq6ZENwx6:2019/11/02(土) 23:40:50 ID:/TXTX7c60
「確かに、邪神はあの場で殺されたよ。
 他ならぬ創造主様だ、見逃されるはずもないさ。」

「でもね、創造主様も最初に僕の顔見たとき考えたろ?
 『覆面男なら復活するか』って」

「!」
確かに覆面男はグレーゾーンだ。
倒されるべき存在として投入されたが、
クリスより変革の可能性は低く、脅威としてはセスペェリア以下、そういう立場と見積もっていた。
数年ごとの再発生設定が切られていなくとも、おかしくはない。

「運よくあの場所で、解析の機会に恵まれてね、
 最後の瞬間に邪神<リヴェイラ>から亡霊<覆面男>への低俗化<ジョブチェンジ>を試してみたんだよ」

少し思案した。
『定義』の問題だ。
自分が世界を変えた際にどうなるかを考えるのに近い。
例えば、血ではなくトマトジュースを飲み始めた『空谷葵』が『自分は吸血鬼で無くなった』と主張したところで『吸血鬼は死ぬ』と改変すれば死ぬが、
男とぶつかり、性別転換した『裏松双葉』なら『女性は死ぬ』と改変したところで死なない。
そういう定義の更新を行わなければならない。
リヴェイラは邪神だ。
例えばその体を素材に覆面男を純粋培養するなどして、その体を別のものに変えることも確かに可能だろう。

181自己否定・進化とは枯れていくことなり ◆VJq6ZENwx6:2019/11/02(土) 23:42:09 ID:/TXTX7c60
(しかし、ひっかかることがある。)
考えを口にする。
声にならずとも邪神は読み取れるようだ。

「なにかな?」

(もとのふくめんおとこは、どうした?)

「退場したよ。中枢の魂は成仏したみたいだね。
 僕が成り代わる時には、再構成に別の魂が必要な状態だった。」

『覆面男』を残したまま中身は成仏。
単純に田外や聖剣で浄化されたわけじゃなさそうだ。
中々面白いことが起きている。

(せいげんはどうした)

「制限?ああ、首輪のことかな?
 それなら首だけになったとき取れたね」

致命傷を伴う制限の解除、倒されるべき側がそのままに首輪を解除できるほぼ唯一の手段だ。
ただ一機、機械であるサイクロップスのみは、頭部切除後にほかの参加者が首輪を取り出し、再接続することで無傷で解除できるのではないか。
という懸念があり、サイクロップスにそれほどのことが起きるのであればむしろ望ましいと放置されていたが、ほかの参加者ではまず不可能だろう。

確かに、奇跡が立て続けに起こっている。
邪神が覆面男になり得る状況は揃いつつある。
足りてないピースはもう一つ。

182自己否定・進化とは枯れていくことなり ◆VJq6ZENwx6:2019/11/02(土) 23:44:50 ID:/TXTX7c60
(じゃしんのたましいは、ふくめんおとこのちゅうすうにならない。)

「ククク…」

その質問をした瞬間、空気が変わった。
リヴェイラ、否、目の前の存在は顔を上げた。

「ハァーッハッハッハ!!」

その顔は、愉快な笑い声に似合わず、涙に濡れ、悲痛に歪んでいた。

「その通りだよ。」

「僕の体は、意識は覆面男になれる。でもそれは覆面男の構成材料にされるだけだ。神の亡霊なんてものはあり得ない。僕が中心の魂になれる筈がない。」

目の前の存在は涙を流しながら答えた。
その姿は懺悔のような、罪の告白に見えた。

「死ぬとき、目の前にちょうどいいサンプルがあった。」

「魔族<オデット>が邪神<リヴェイラ>の肉を食えば、邪神の力を得られる。
 邪神の力を奮うのに僕である必要はさほどなかったんだ。」

「ちょっと前に覆面男くんの解析をやってたからね、
 魂が成仏してたみたいだし体を借りようかと思ったけど、
 リヴェイラでは主人格になりえない。
 意識が薄れてきたところで最後に会場に呼ばれた時を思い出したんだ。」

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「『自己肯定・進化する世界(チェンジ・ザ・ワールド)』
 僕の能力の一つさ。対象のパーソナリティを書き換える。これで僕は僕になった、そうだろ僕?」
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「リヴェイラは邪神だ。洗脳魔法に記憶抹消、呪いの類もなんでもござれさ。
最期に魂だけになって覆面男の中枢となる人間、それを上書きする程度は余裕だったよ。
 元々あの戦いでも悪をばら撒こうとは思ってたんだけどね、まさかそれが最後の仕事になるとは思ってなかった。」

(おまえは、だれだ?)

「邪神の力を継いだ覆面男であり、リヴェイラの記憶と人格を継いだ―」

「四条薫の亡霊さ。ごめん、嘘ついた。」

目の前の存在、そう形容する他ない物はそう言った。

「泣けるね、体はともかく魂まで捨てることになるとは思わなかったよ。」

邪神は漆黒の覆面を被りなおした。
その覆面の下は未だ泣き続けているのだろうか。

183自己否定・進化とは枯れていくことなり ◆VJq6ZENwx6:2019/11/02(土) 23:45:50 ID:/TXTX7c60
「さて、取材を始めようか」

リヴェイラの取材、オリロワ2014への質問、それに答えるものは自分には大してなかった。
オリロワ2014の答え、それはあの場で得るべきであるし、敗退者と参加者未満が別の場で語り合うなど許されることではない。
そう伝えると、目の前の存在は驚くほど素直に引き下がった。
代わりに参加者の以前の情報を聞かれたが、これも情報を置いた住処を教えるだけで済んだ。

「つまり、今の僕は覆面男の概念を持ったリヴェイラ、という自己認識の四条薫というわけさ」
そう語りながら彼(いや、彼女か?)はペンをメモ帳に走らせる。
もはや取材は意味をなくし、覆面男の自分語りとなっている。

「今の僕ならあの光の賢者ジョーイと互角と言って差し支えないね。」

元々、邪神が賢者ふぜいと比べ物になるはずがない。
四条薫の癖だ。自分<ワールドオーダー>とは違い上書きの肝心たる部分、元のパーソナリティの消去はできないのか。
なるほど、確かにリヴェイラを名乗る覆面男の体を借りた四条薫、そう言えるかもしれない。

「リヴェイラは『邪神が死ねば、膨れ上がった世界が選定できなくなる。神を残さねば』、
そう思ったけどね。君のその様子じゃあもう世界は無数に増えそうにはない。
無駄だったようだ。あそこで死んだリヴェイラのお役目は返上させてもらうよ」

この三位一体の倒錯した話を聞いているからか。撃たれた出血のせいか。
意識が朦朧としてきた。まだだ、聞きたいことがある。
口の形だけで伝えたその質問は邪神に伝わった。

「なんでこんな体になってまで生きたのか、だって?」

「だって僕は―――」

184自己否定・進化とは枯れていくことなり ◆VJq6ZENwx6:2019/11/02(土) 23:49:35 ID:/TXTX7c60
「じゃあ、僕はこんなところで退散するよ。
 彼へのいい取材代となってくれてありがとう、創造主様。」

邪神が消えた後、背後から車輪が回る音が聞こえた。
振り返ると、そこには黒服に押される車椅子に座ったカイザルが居た。
コイツも大概おかしい。
悪党商会が公開したナノマシン技術を用いた遺伝子治療の論文、それが活発になったと知ったのはいつだったか。
海賊版ナノマシンを独自に服用した病人が、激痛のあまり発狂死、未だナノマシンによる遺伝子治療は遠いという新聞記事を見たのは最近だったはずだ。
目の前のカイザルを見る。
枯れ木のように細くなった手足、落ち窪んで漆黒を携えた目、闘病のためかもはや毛の類は一本も見当たらない。
外見でこれだ、中身はもっとひどいのだろう。
リヴェイラが上位存在たる邪神の力を持って行い、結果無様さに打ちひしがれるまでに至った死からの逃走を人の身で行っているようなものだ。

「話は終わったか?ジョン・スミス」

聞かれたところでこの喉から返事ができるはずもない。
返事は手に持ったこれでやる他はない。

(なんでこんな体になってまで生きているのか、だって?)

(だって僕は邪神<ラスボス>だからね、邪神<ラスボス>として負けるまで終われるはずがないさ)

邪神はそう答えた。
世界の破壊者、そう始まってしまったものはそうでしか終われない、終わりたくない。
子ども染みた返答だが、自分には何よりも頼れる返答だった。

自分が少年だったのはいつだったか。
ナイフの設定を変えて、遊んでいたのはいつだったか。
邪神を処分できる最強のナイフ、それを作ったのはいつだったか。
ナイフを持って英雄ごっこをしていた少年、それを見たのはいつだったか。
聖剣により永遠と紡がれる英雄、勇者システムを作ったのはいつだったか。
チェンジ・ザ・ワールドの劣化を、とうに幼年期は過ぎていると知ったのは、自分だったか。

純粋な作品である彼が、子どもじみているというのは喜ばしいことなのかもしれない。

自分<ワールドオーダー>が成功したのか失敗したのか、それにも関わらず続いている自分のような断章がある。
ならば、彼のように統合し、終わるまで続ける存在が必要なのだろう。

きっと自分も同じだ。
最後まで足掻き、この断章を物語に変え、完結させる必要がある。
そのために理由もない生存を続けている。

愛用のサバイバルナイフをカイザルに向けて構える。
カイザルも震える手でこちらに銃を向ける。

これでエンディングだ。

185過去確定・変われない役割 ◆VJq6ZENwx6:2019/11/02(土) 23:57:07 ID:/TXTX7c60
ここはどこにでもある平凡な貸家。
だが、その実態は異世界の侵略の前線基地である事を知る者はいない。
おお!見よ!
結構いい値段がしたお洒落なテーブルで、
黒コートと覆面をした形容しがたき邪神が私のパソコンで作業しているではないか!

「って邪神様、なにやってるんです?」

「サキュバスか、ちょっと待ってくれ、今記事をまとめてるんだよ」

「そんなことやってる場合じゃないですよね!?」

貸家に家主―サキュバスの怒号が響く。

「魔王様も暗黒騎士様もガルバイン様もみーんな死んじゃったから魔界大荒れなんですよ!?邪神様が纏めなかったらどう纏めるんです!?」

「うーん、それ纏めるの僕にも無理」

しかし、怒号の返事は無常であった。

「今の僕は覆面男だから42人殺したら数年消えなきゃいけないんだよね
 正直今の魔界って42人程度殺ったところで収まんないでしょ?」

「そ、そんな…私たちはどうすれば…」

「とりあえずその鎧でも持ち帰って相応しい魔族とか決めたら?」

リヴェイラが指をさしたその先、そこには、サキュバスの私服に紛れて見慣れた黒い鎧が掛けられていた。
間違いようがない、暗黒騎士のものだ。

「え…嘘…あの鎧って…崩壊した世界に残されたはずじゃ…」

「うん、そこから取ってきた」

邪神は腕を前に掲げ、呟いた。

「Etag NepO SseRdA NO ??????」

邪神の目の前に扉が現れる。

186過去確定・変われない役割 ◆VJq6ZENwx6:2019/11/02(土) 23:58:01 ID:/TXTX7c60
だが、開くはずがない。
サキュバスだって試したことだ。
いくらゲートを作り、座標をつなげたところでロストした世界につながる扉が開くはずがない。

そしてその扉はサキュバスの目の前で破壊された。

「え?」

サキュバスは思わず扉の中を覗き込んだ。
重力すら崩壊し、崩壊した研究所、ビル、その他もろもろが宙に舞っていた。
ここが魔王様の巻き込まれた会場なのだろう。

「い、今のってどうやったんですか?」

「むこうで強力な破壊があってね。
 僕なりに取り込んでみたんだ。」

やった当人はすでに記事の編集に戻り、作業を進めながら答えた。

「今の僕なら破壊されないものも破壊できる。
 邪神、いや、ラスボスの権能さ」

邪神は横の記事をつかみ、サキュバスに渡した。

「はいこれ」
「なんですかこれ」
「僕たちの世界の記事さ」

渡された記事に目を通す、そこに書かれているのは魔王、カウレスを代表とした自分たちの世界出身者の、リヴェイラが知る限りのあの戦いにおける顛末であった。

「継ぐものを探せ」

「勇者でも裏ボスでもなんでもいい、彼らの物語を受け継ぐものを探すんだ
 そして…殺し屋なんてものに負けた邪神を超えてくれ」

187過去確定・変われない役割 ◆VJq6ZENwx6:2019/11/03(日) 00:00:04 ID:NlAx5Fro0
「…随分と、役割にこだるんですね」

「ああ、こだわるよ」

「あの男が作った役割、なんてものにこだわる理由はないんじゃないでしょうか」

外で爆音が響いた。
邪神が窓ガラスの外に目を向けると季節外れの花火が花開いていた。
そういえば今日は花火大会だったか。

「実は、ディウスくんと出会った時はそのつもりだったんだ。
 ピリピリしてたからね、なんなら創造主様がやったみたいな殺し合いでも開こうかと画策してたよ」

「はい?」

「リヴェルヴァーナを作った時から…いや、あの聖剣が出てきた時から頭に響いてたんだ。
 世界の全部を見通せる僕の後ろに、さらにもう一人いるんじゃないかってね」

かつて出会った真っ白なコックコートに身を包んだ男の姿が、サキュバスの脳裏をよぎる。
邪神から聞いた話ではすべての黒幕だ。奴に違いない。

「腹立たしいことに、たぶんそれすら創造主様の手の内だ。
 魔王と勇者の殺し合いで、僕が黒幕気取りで余計なチャチャを入れた場合、
 魔族と人間が僕相手に結託するルートに入る。
 聖剣なんてものをチラつかせて、自分の存在を僕にアピールしたのもきっと
 『裏ボス』の存在を僕から示唆させるためだろう。」

覆面に隠れた邪神の顔は伺えないが、
歯ぎしりの音から悔しさがにじみ出ていた。

「だがそんな創造主様も、あの殺し合いを開いて
周到な計画も役割もわざわざ壊したわけだよ」

188過去確定・変われない役割 ◆VJq6ZENwx6:2019/11/03(日) 00:01:33 ID:NlAx5Fro0
「わかるかい?サキュバス。
 裏ボス様が自分で壊した物語を、役割を
破壊神という機構として作られた、僕が継ぎなおして終わらせる。
最高の復讐じゃないか。」

「………」

「幻滅したかな?」

「いえ、結構見直しました。
 てっきり何も考えてないものかと思って心配しましたよ」

「言うね君」

「もしも、勇者や魔王様の記事を見ても、
そのあとに続こうとする者が現れなかったらどうします?」

「どうもしない。
 それで終わった、そう読者が思ったならそれでいいさ」

あの戦いで失われたものは多い、みな、創造主の勝手な都合で自分の物語から途中参戦したものばかりだった。
それが周知されるというのは、結構悪くないことだ。
流石邪神様!考えがお深い!
サキュバスはそう思った。

「ほら、僕って邪神だし、裏方に回るのさ。邪神らしくね。」

「…わかりました」

「さて、それじゃあ行ってくるよ」

「どちらへ?」

「取材だよ」

189過去確定・変われない役割 ◆VJq6ZENwx6:2019/11/03(日) 00:03:26 ID:NlAx5Fro0
邪神は扉の向こうを指さす。

「まだわかることもあるかもしれない。
 まだ取り込める破壊もあるかもしれない。
 まだ他の世界に続く扉があるかもしれない。
 今度は完全に崩壊するまで根気強くやってみるよ」

「長くかかりそうですね…」

「大丈夫、この扉は開けたままにしておくからラスボス戦が必要なときは呼んでくれ」

ディウスを倒し、復活を果たした剣神龍次郎、創造主を倒した新田拳正、光の賢者ジョーイ、
新たなカウレスならぬ勇者や魔王の意を継ぐものが邪神の脳裏をよぎる。
いつか自分も、彼らに負けるのだろう。

邪神は最後にこう残してこの世界を去った。

「また会おう。」

190 ◆VJq6ZENwx6:2019/11/03(日) 00:04:27 ID:NlAx5Fro0
以上で投下終了です。

191名無しさん:2019/11/04(月) 14:34:16 ID:4CyXU4B.0
投下乙
龍次郎に続いて復活するリヴェイラさんで笑った
しかしWAαさんも邪神(裏ボス)さんもそうだけど、世界の終わり以外にも「彼らにとってのエンディング」があったんだなあと感慨深くなった
あとナノマシンで無理矢理延命してWAさん殺しに行く先代殺し屋組織トップヤバすぎない????


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