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中学生バトルロワイアル part6

564言いたいことも言えないこんな世の中じゃ ◆j1I31zelYA:2015/10/31(土) 20:59:12 ID:YiPBGXDk0
正式タイトル『言いたいことも言えないこんな世の中じゃ、俺は俺をだますことなく生きていく』
(タイトルが長すぎて一度エラー食らいました)

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跡形もなくなった。
違う、『跡形だらけになった』と表現すべきだろう。

天を突く塔のような建造物がひとつ、ごっそりと崩れ落ちたのだから。
ここはさしずめ神様のごみ捨て場だろうかというほどの瓦礫が、小高い丘を一面に埋めつくして鉄筋の山と成していた。
今になってもまだ瓦礫が崩れ足りないように陥没を起こす音が響いて、時おり地面を余震のように揺らす。
月灯りのしたに輪郭だけを残して、『跡形だらけ』は夜闇へと埋没していた。
百メートルは離れていようかという、この杉林にさえコンクリートの塊がごろごろと散乱している。

あの瓦礫の山の最下層に、何人もの中学生が、何十匹もの犬たちが、埋もれて眠っている。

杉林の合い間からその光景をのぞいて、悪趣味な塚のようだと七原は思った。
文字どおりの一括埋葬。破壊した者も、破壊された者も、等しく飲まれて見えなくなった。

「植木は、『死にたくねぇ』って心の中で思ったとしても、言わない奴だったんだ」

菊地善人と名乗った少年は、そう言った。
横目に見ていたのは、そんな瓦礫の雨に打たれた少年の死体だった。
崩れ落ちたホテルの中から、七原によって転移させられて。
尋常ではない量の赤い血液でその身を汚したまま、永遠に動かなくなっている。

「俺、最初は植木耕助って奴はズレてるんだと思った。
哲学者のカントっつうおっさんが『道徳形而上学言論』の中で『正義の源は行動ではなく動機にある』とか書いてるのを読んだことがあってな。
おおざっぱに言うと『正義かどうかが決まる法則は、最善の行動をしたかどうかじゃなく、自分を犠牲にして他人のために尽くす動機があったかどうかで決まる』っつう理論なんだが。
俺は最初、『植木の法則』もその類だと思ってた。最初から正しかったんだ。
でも、正しすぎて周りとズレてて、バロウが襲ってきた時も、率先して自分が盾になって。
皆を守るのが当たり前で、自分が真っ先に死ぬようなことをして。
正しいだけで、こんな場所だと何も守れないかもしれない。そういう危うい奴なんだと思ってた」

菊地善人は、片膝をたてて座ったまま話している。
少し離れた位置に横たえた植木耕助を、埋葬しようという動きは見せない。
埋めたくない気持ちは、七原にも理解できた。
植木から間隔を置いて、さっきまで一緒だった少女も寝かされているから。
誰も掘り返さないホテルの跡地に埋められる瀬戸際から連れ出したのに、また地面の中へと遺体を埋める。
弔うためとはいえ、『どう違うのだ』と思ってしまうだろう。

「話を聞く限りだと、えらく我が儘な奴だな。付き合わされたら心労で死ねそうだ」
「……そうかもしれないな。勝手だったのかもしれない。
でも、シンジが死んでからは、身勝手じゃなくなっていったんだ。
 それに、俺の考えていたことだって違ってたんだ」


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