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中学生バトルロワイアル part6

542スノードロップの花束を  ◆sRnD4f8YDA:2015/10/12(月) 19:10:33 ID:lhrTcDrE0
少年は、御手洗清志は想定外の乱入者に泡を食った。いや、ただ乱入されただけでは御手洗とてそう激しい動揺は見せないだろう。
問題は、少女の、初春飾利の胸の中にあった。初春の胸には、水兵に囚われていたはずの式波・アスカ・ラングレーが、無傷で抱かれていたのだから。

「な、何だ……? 何をした……?」

水兵は“消え”ていた。アスカに止めを刺したと油断して少し目を離した隙に、綺麗さっぱり、最初からそこには何もなかったかのように、消えていたのだ。

「……な、ん、でよ……」

口から白い泡を吐きながら、アスカが息も絶え絶え、そう零した。
何故、此処に戻ってきたのか、と。呪うような、ホッとしたような。様々な感情に混沌のした視線が、初春に突き刺さる。

「……アン、タ、馬鹿ァ……?」
「はい、馬鹿です!!」

初春ははっきりと言った。アスカは思わず目を丸くする。

「私、馬鹿なんです、ホントに。でも、自分が犠牲になって私達を逃すだなんて、式波さんはもっと馬鹿です!!
 あとでこっぴどく叱ってあげますから、絶対に生きて下さい!!! 自分を犠牲にだなんて、そんな悲しいこと、絶対にもうさせません!!」

微塵も悪びれる様子もないその口調に、アスカは苦しそうに笑う。
水を出し尽くしたスプリンクラーが放水を止め、辺りは静寂に包まれた。アスカはゆっくりと紫色の唇を開く。

「開き直り……って、ワケぇ……? 今更無力なアンタが、何しに、来たのよ……」
「まず、答えを、言いに」
「答え……? 正義になりたいか、ってヤツ……? なによ、やっぱり……正義の、味方に……なりたいの、アンタ……? だから、来たっての……?」

初春は、口をへの字に曲げながらアスカを静かに床へと横たえる。
少しだけ頬に触れると、白くきめ細かな肌は、氷のように冷たかった。

「いいえ。それは違います。だって私は、」
「おいっ、僕を無視するなよ! 何だ、何をしたんだお前ッ?! 能力者か!?」

会話に割ってはいったのは御手洗だった。初春は振り返ると、アスカを庇うように手を広げる。

「……私は、ただ友達を助けに来ただけですよ」
「そんなことを聞いているんじゃあないっ!! 僕の水兵をどうやってッ」
「教える義理はありません」
「馬鹿が……図にのるなよ! どうやってやったか知らないが……そうマグレが都合よく何度も続くと思うな! 丸腰のお前なんかに、何が出来る!」

声を荒らげ、歯を剥き出しにして叫ぶ御手洗へ、初春は頷く。何も出来ないのだと認めるような素振りは、御手洗の神経を余計に逆撫でた。
こめかみに青筋を浮かべる御手洗へ、けれども初春は慄くこともせず口を開く。

「はい。何も出来ません。何も出来ませんよ、私には。誰かがいないと、何も出来ません。今だって、怖くて堪らないんです。
 膝は笑ってますし、歯だってががちがち音をあげて、拳も震えてます。私は、いつだって誰かに、何かに守られてばっかだったから。
 でも、だから」

初春は一息吐くと、胸に手を当てて唾を飲み込む。


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