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中学生バトルロワイアル part6

540スノードロップの花束を  ◆sRnD4f8YDA:2015/10/12(月) 19:03:51 ID:lhrTcDrE0
綾乃の目から、光が消えてゆく。氷のように冷徹に、綾乃は光子を見下した。どくん、と心臓が跳ねる。
ふつふつと憎悪と怒りの感情が、全身に湧いてくる。ぞわり、と身の毛がよだつのを、綾乃は感じた。
全身が黒く、泥色に染まってゆく。それが生まれて始めて持った殺意の感情なのだと理解するまで、時間はさして掛からなかった。
最早膨らみすぎたその感情を抑えることなど、中学生の綾乃には出来なかった。
仲間を失った憎しみと虚しさの捌け口に、目の前の死に損ないほど調度良い存在は居なかったのだ。
彼女を生かす選択肢など、最初からありはしなかった。

正義なんだ、と、綾乃は自分を納得させるように小さく呟く。
私が正義になるんだ。悪を倒す正義の味方に。私が正義で、わたしが、わたしを、私だけが。私が、やるんだ。皆の仇を取るんだ。


「私だって」


闇の中、少女は足を踏み出した。ふらふらと、誘蛾灯に向かう蝶々の様に、そこへと歩く。
それの、相馬光子の側に立って、少女は自嘲した。心の中で、暗い感情がぐるぐると渦巻いている。
激しい後悔が、肉に牙を剥いていた。少女はふと思う。私は此所に来て何をしただろうか。
ただのうのうと生きてきただけで、あの二人と違って、ちっとも立派じゃない。
正義なんて、持ってすらいなかった。

「正義に、なれる」

式波さんは凄いですよね。誰よりも強くって、勇気もあって、冷静で。
初春さんも凄いですよね。直ぐに作戦を組み立てて、咄嗟の判断も理に適ってて、ちゃんと正義感があって。
本当は、二人は私を見捨てて助かることだって出来たはずなのに。
でも、そうしなかった。ねえ式波さん。私なんかを助けて、それで貴女は満足でしたか。
あの時、私を庇ったから手負いになったんですよね。私がいなければ、助かったんじゃあないの?
初春さんは参謀、式波さんは切り込み隊長。本当は、私はマスコットなんかじゃなくて、捨て駒だったんじゃあないですか?
私には何もない。強さも、勇気も、冷静さも、判断力も、正義さえも。
マスコットだなんて、誰にでもできるじゃないですか。
意味を下さい。役割を下さい。価値を下さい。怖いの。一人になりたくないの。私は、そこに居てもいいですか。

ああ、違うの、そうじゃない。はは。何考えてるの私。馬鹿みたい。そんなこと、どうでもいいじゃない。
……でも、もう居ないから。私の知り合い、みんな死んじゃったんだよ。
嫌だよ。怖いよ。一人は嫌だ。死にたくないよ。もう、誰も喪いたくない。私のせいで、誰かを喪いたくない。
私からこれ以上、何も奪わないでよ。

「この人を」

厚い自責の念と負の感情が、ずっしりと覆い被さる。下唇を強く噛み、私は堪らず自分の体を強く抱いた。
顔を腕の中へ埋めてみる。暖かさが呪わしい。渇き切った笑い声が耳に入った気がした。震えていたのは間違なくなく、私の喉。
瞳を開いた。ぴくりと動く目の前の殺人鬼を見て、私は固唾を飲む。喉がごくりと音を上げた。
しんと世界は静まり返って、まるで世界中に自分達しか居なくて、今までの事は全部夢なのではないかと、ふと思った。
でも、夢だなんて、そんなはずはない。これは現実で、私は敵に止めを刺せる。今なら、まだ、間に合う。
皆の仇をとって、私は、漸く皆と同じ、正義になるんだ。


「殺せば」


暗い影の中、少女は目を見開いて、ぽつりと呟く。震える指先を、ゆっくりと彼女の首に回した。
小さな正義<殺人鬼>が、産声を上げた瞬間だった。











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