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新西尾維新バトルロワイアルpart6

471球磨川禊の非望録 ◆wUZst.K6uE:2014/11/08(土) 12:01:28 ID:fWV1lgbY0
 
記憶の辻褄が合わないことに戸惑っている様子の球磨川。
ぼんやりと遠くを見つめながら、頭を振ったり首を傾げたりしている。

『大きい蟹がどうとか言ってた気がするんだけど』
「夢でも見ていたのではないですか?」
『夢? そうかなあ――』

訝る球磨川に対して、七実は、

「……もしかすると、少しばかり記憶が混乱しているのかもしれませんね」

探るように、確かめるように言う。
切り込んで、鎌をかける。

「黒神めだかが、死んだことの衝撃で」

無表情で、平然とした口調で。
いつも通りの七実の喋り方で。

『黒神、めだか――?』

その名前を、球磨川は頭の中で反芻する。記憶を掬い取るように、何度も。
その様子を七実はじっと見つめる。つぶさに見、観察する。
『大嘘憑き』による記憶の消去。
それがどの程度まで作用しているのか、実のところ七実にもわかっていない。
『大嘘憑き』自体アンコントローラブルな能力であるし、球磨川の記憶の中身を具体的に知り得ない以上、どの記憶をなかったことにするのか恣意的な操作などできるはずもない。
球磨川の様子を見る限り、黒神めだかの死に取り乱していた間の記憶はなかったことになっているようだが。
それを確認するため、あえて黒神めだかの名前を出したのだろうが――果たして。

『誰それ?』

と、球磨川は言った。

『やだなあ、七実ちゃん。週刊少年ジャンプの熱血系主人公じゃないんだから、見ず知らずの人が死んだくらいで僕がそんな取り乱すわけがないじゃない』

傾げた首を、さらに傾げて。
直角に傾げた首で、へらへらと笑う。

「……ええ、そうですね、失礼しました。今の言葉は――忘れてください」

その反応を見て、にこりと微笑みを返す七実。

『それよりもさ、なんで僕こんなもの持ってるんだろう? たしか七実ちゃんが持ってたやつだよね、これ』

と、手に持っていたクロスボウを七実に示してみせる。引き金に指をかけたままなので実に危なっかしい。

「ああ、それでしたら大螺子がなかったので、代わりのものが必要だと」
『え? 僕がそう言ったの?』
「いえ禊さんでなく」
『…………? よくわかんない……』
「いえ――もしよろしければ差し上げますけど」
『そう? んー、じゃあ遠慮なく』

珍しい玩具でも貰ったように、球磨川はクロスボウをデイパックにしまう。
言うまでもないが、七実に刺さっていた矢はすでに引き抜かれている――というより、矢そのものを射創と着物の血ごと『大嘘憑き』でなかったことにしたようだ。


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