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新西尾維新バトルロワイアルpart6
453
:
球磨川禊の非望録
◆wUZst.K6uE
:2014/11/02(日) 14:02:19 ID:GGNzVLNQ0
コンパスと地図を手にさっさと歩き出す球磨川。七実もすぐさまそのあとを追おうとする。
「ま――待てよ、姉ちゃん」
それを七花は、なおも追い縋ろうとする。
無駄とは知りながら、悪あがきをする。
「待たないわよ、なんでわたしが待つと思うの? しつこいからこの際はっきり言ってしまうけど、わたしはもうあなたに興味はないのよ」
待たないと言いつつ、首だけ振り返って七花を見る。
しかしその視線は、家族に向けられるものとは思えないほど冷め切っていた。
「あなたがまた本気で戦ってくれるなら、もう一度あなたに殺されるつもりでいた。殺されたいと思っていた。
でも今のあなたには、殺されてやる気も戦ってあげる気も起こらない。それともあなたは、そんな状態でまだわたしと戦おうというの?」
七花の胸元を再び指差す。
弱さを体現した球磨川と、回復力こそあれど脆弱さを極めた七実、その二人の弱さを反映する四本の『却本作り』。
今の七花の身体は、戦うにはあまりに脆すぎる。長時間はおろか短時間の戦闘ですらそうはもたないほどに。
七花が不意討ちを選んだ真の理由は、実のところそこにある。
長時間にも短時間にも耐えることができないなら、開始と同時に決着する、そんな戦い方を選ぶしかあるまい。
『一瞬での、一撃による必殺』――確実に勝つにはそれしかないということを、きっと本能で理解していたのだろう。
「もうひとつ、あなたに感謝しておくわ、七花。あなたが背中を押してくれたおかげで、わたしは生き続けることを選ぶ決意ができた。
わたしはもう、あなたにも、誰にも殺されてやるつもりはない。禊さんがいる限り、わたしはどこまでも一緒に生きてゆく」
生き方を選べなかった七実が、唯一選んだはずの死に方。
彼女が唯一、殺されることを望んだはずの相手。
そのたった一人の相手が価値を失ったことで、生き方を選ぶきっかけとなった。
しかしそれは。
唯一の肉親である鑢七花を突き放す選択に他ならない。
「あなたが悪いのよ、七花」
ようやく、七実は笑顔を見せる。
ただしそれは、球磨川に見せたような柔和な微笑みでなく。
侮蔑と憐憫を含んだ、冷笑だった。
「あなたが、そんなにも弱くなってしまうから。そんなにも弱くならないと生き続けることすらできないような身体に、あなたがなってしまうから。
わたしも禊さんも、あなたが死なないように助けてあげただけ。それであなたが弱くなったのはあなたの責任。だから――」
最後にはもう、冷笑すらも引っ込めて。
その顔に浮かんでいたのは、胡乱で、空っぽで、取ってつけたような。
虚構のような、笑みだった。
「わたしは悪くない――いえ、悪いのかしら」
今度こそ振り返ることなく、七実は球磨川の後を追ってゆく。二人の姿は、すぐに夜の闇にまぎれて見えなくなる。
後に残されたのは、右手を失くし、腐敗に侵され、四つの弱さを螺子込まれ、ただ茫然と膝をつく、一本の刀だけだった。
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