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新西尾維新バトルロワイアルpart6
447
:
球磨川禊の非望録
◆wUZst.K6uE
:2014/11/02(日) 13:57:24 ID:GGNzVLNQ0
「…………?」
「あなたのその悲しみに、あなたの責任はない。あなたは何も悪くありません。
ならばこそ、あなたがそれを背負う必要も、割り切る必要もないはずです。
だったら全部、忘れてしまえばよいではないですか」
割り切って1にするのでなく。
マイナスしてゼロにする。
虚構(なかったこと)にする。
「辛い現実なら、身を裂かれるような悲しみなら、忘れてしまえばいいのです。受け入れる強さも、乗り越える強さも必要ない。過負荷(わたしたち)らしく、弱いままに生きてゆけます」
「…………」
「大事なのは強がることではなく、弱さを受け入れること――そうですよね? 禊さん」
それは、球磨川自身が口にした言葉だった。
戯言遣いと八九寺真宵。その二人がある決断を迫られたとき、球磨川が語って聞かせた過負荷としての精神論。
七実が何をしようとしているのか、球磨川はようやく理解する。
理解できて当然だろう。そのとき球磨川自身がやったことと同じことを、七実はやろうというのだから。
「……僕は、めだかちゃんを守れなかった」
いつの間にか、球磨川は泣いていた。
七実に抱かれたまま、両目から滂沱として涙を流している。七実の胸元に零れ落ちた涙は、血と混ざり合ってすぐに見えなくなる。
「めだかちゃんが殺されたとき、一番近くにいたのが僕だった。それなのに、殺されるまでそれに気づくことができなかった。めだかちゃんと戦うのに夢中で、気づこうと思えば気づけたはずなのに、それなのに――」
「あなたは悪くありません」
懺悔のような言葉を遮って、もう一度同じことを七実は言う。
球磨川の吐露を、球磨川の言葉で優しく否定する。
「あなたは何も悪くない。ただ弱かっただけです。そしてわたしは、あなたに弱いままでいてほしい。過負荷(あなた)らしく、過負荷(わたしたち)らしくあってほしいのです」
「…………」
「わたしは、あなたを置いて死んだりはしません。あなたの望む限り、あなたが臨む限り、あなたの傍にいます」
死にぞこないだけれど。
生きぞこないだけれど。
生まれてくるべきではなかったけれど、それでも――
「あなたのために、生き続けますから」
だからどうか。
あなたがあなたであることを、やめないでください。
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