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少女漫画キャラバトルロワイアル 第二巻

33正面衝突 ◆F9bPzQUFL.:2013/07/05(金) 00:21:20 ID:BduNxm8I0
 


「揚羽!!」
鬼宿が遠くに行ってから、人目もはばからずに更紗は揚羽に抱きついていく。
京都、あの日、自分を導いていくれた筈の揚羽。
けれど、外に出たのは自分だけで。
その日以来、誰も揚羽の姿を見ていなかった。
けれど、更紗は信じていたのだ。
きっと何処かで、揚羽はひょうひょうと生きているのだろうと。
そして今、それは不思議な形で叶ったと言える。
「おいおい更紗、痛ェっつの」
痛みに少し顔をゆがめながらも、予想外に早く再会できた喜びを分かち合う。
だが、いつまでもこうしているわけにもいかない。
揚羽には、更紗に伝えねばならぬことがあるのだ。
「それより、お前に京都の石榴計画について喋らなくちゃいけねえ」
口を開いた瞬間、更紗の表情が変わる。
驚いているような、落ち込んでいるような、微妙な表情。
揚羽はその真意をくみ取れないまま、更紗の口から衝撃の一言を受ける。
「……揚羽、石榴計画はもう壊滅したんだよ」
「何だと!?」
「……どうやら、ボクの出番のようだね」
動揺する揚羽に、颯爽と現れた綾女が話の舵を握っていく。
「タイム・パラドクスの説明、そして更紗君がタダの石だと思っていた石の力。話すことは山ほどあるようだ。
 キミの怪我の治療もある、まずは南の村を目指さないかい?」
傷ついた身体を抱えた揚羽、更紗がただの石だと思っていたものが輝き、雷を放ったこと。
そして、タイム・パラドクス。山ほどしゃべる事はあるものの、こんな砂漠のど真ん中で喋ることではない。
どこかで腰を落ち着かせ、ゆっくりと喋ることを綾女は提案する。
「南は……まあ、いいか」
南、初めに揚羽が少年と交戦した場所でもある。
此方に向かっていない、となると少年は町に留まっている可能性が高い。
だが、揚羽は彼が居ようがいまいが別に構わなかった。
自分が持っている情報を更紗に流せば、遅れを取る事はまず無いだろうと確信していたからだ。
「更紗、使え」
同時に、こっそり拾っていた十手を更紗に渡す。
「いいの?」
「どうせ今のオレじゃあ使えねえよ」
この中では今、唯一まともに動ける少女に、唯一の武器を渡していく。
悔しいが、現状で襲撃者に対抗できるのは彼女しか居ないのだ。
「では行くとしようかラブロマンサーズ達よ!」
そう、この良くわからない生命体は、戦力にはならない。
初対面の揚羽が数秒で見抜くほど、非力さに溢れていた。
「おい」
「何かね?」
そんな綾女に、揚羽は一つの事を問いかける。
「怪我人を担ぐとか、そういうのはねえのか」
「生憎、ボクは縫い針より重いモノは持てなくてね」
分かりきっていた答えと同時に、綾女は意気揚々と南に歩き出す。
その後姿を見つめ、溜息を一つ零してから今度は更紗に問いかける。
「更紗」
「何?」
「あいつ、何だ?」
長い、沈黙。
「……私に聞かないでよ」

"草摩綾女"という存在が理解できる人間は、そう多くない。


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