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仮投下スレ

132どじふんじゃった! ◆AJINORI1nM:2011/09/01(木) 04:42:26 ID:???
 今この場には自分しか魔物は居ない。
 そんな自分に傷を付けるような実験をする気はない。
 たとえ魔物との交戦中だとしても、こんな不確かな武器を使うことはないだろう。
 人間や無機物に対するように、武器としての本分を果たせない可能性がある物を使うつもりはないからだ。
 ゼオンは獣の槍を蔵王に仕舞うと、代わりに金糸雀という剣を取り出した。
 残る刃物はこれしかない。
 ソルド・ザケルガを遣うのは心の力の無駄遣いだ。

 ゼオンは金糸雀で芳野の胸部を切り裂いた。
 内臓を傷つけていないとはいえ、体内にまで達する深い傷だ。
 傷口からは止めどない血液が流れ落ちている。
 右腕や脚部から大量の血液が流れ出ていたこともあって、芳野の体からは血の気が引き、肌の色が白くなった。

 ゼオンは素早い手つきで芳野の傷口を開くと、その中に何かを押し込める。
 そして傷口から手を引くと、芳野の首の血管へナノマシンを注入した。
 手にはべっとりと芳野の血がついてしまっているが、後で海水で洗い落とせば良いだろう。
 芳野にナノマシンを注入すると、心臓に近い位置に付けられた傷口が見る見る内に塞がって行く。
 それだけではない。
 突然右腕や両足の傷口から金属とも有機物とも取れない物質が飛び出し、失われた手足を形作り始めたのだ。
 その硬質の右腕と両足は自身の形を落ち付かせると、罅割れた(ひびわれた)表面が次第に有機的な質感になって行き、
最後には肌色に変わってしまった。
 本物の手足と寸分違わぬ(たがわぬ)、罅割れも傷もない綺麗な手足がそこにあった。
 芳野の顔色も、血の気が戻ったように健康的な色を取り戻している。
 呼吸も、ゆっくりではあるが深いものへとなっていた。

 それを確認したゼオンは、装身具を身に付けた右手を芳野の頭部に当てる。
 魔導具『神慮思考(しんりょしこう)』。
 ゼオンの右腕に装着されているのは記憶を操作する魔導具である。
 この魔導具で操作できる記憶は、神慮思考の使用者も知っている記憶でなくてはならないが、問題はない。
 何故ならば、ゼオンは相手の記憶を奪う技を会得しているからだ。


(……記憶を奪うのに時間がかかるな)


 制限のせいか、ガッシュから記憶を奪った時よりも時間がかかっている。
 記憶を完全に奪い終えるまでに意識を取り戻した場合、何か術を打つべきか。
 ゼオンの左手には魔本が握られている。
 対応は即座にできるだろう。
 だが、そんな考えは杞憂に終わった。
 記憶の奪取は無事完了し、この女は自分の名前以外何も覚えていない状態になっている。 
 この後は簡単だ。
 神慮思考を使い、主従関係にあるという偽りの記憶を植え付ければ良い。
 そうすれば、この女は便利な手駒と化し、心の力を使える道具となるのだ。


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