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渡来船2
103
:
カサブタ
:2012/03/17(土) 12:24:21
14
藍と七海を乗せた車は、ゆっくりと紅葉台学園の校門に入ってきた。
校門の前には既に何人かの黒マントの少女達がレッサーと化した男子生徒や男性教諭を従えて整列し、藍の到着を待っていた。
やがて後部のドアが開き、藍が降りてくると。 少女達は彼女に向かって深々と頭を下げた。
「ようこそおいでくださいました、藍様。 私はマリアお姉様の侍女の音無さやかです。」
先頭にいた少女が藍に話しかけてくる。藍は知らないが、彼女こそ女子寮で最初にマリアに血を吸われた犠牲者だった。
「ローズ様がお待ちになっていますよ。私達が案内するので、いらしてください。」
「ご丁寧にありがとう・・・。ところで、そのボウヤは貴女に随分懐いているのね。もしかして彼だったのかな?」
「ああ、この子ですか・・・?」
さやかは傍らに居る一人のレッサーの頭を撫でながら笑った。
「ええ、この子とは恋人でしたの・・・。でも、マリア様とローズ様のおかげで彼を本当の意味で私の物にすることができましたわ。
今まで、何かとすれ違うこともあったけれどこれでこの子も永遠に私の物・・・。」
「それは、間違った愛し方よ・・・。 恋っていうのはね、たまにすれ違いや間違いがあるから素敵なの。」
ばさぁぁっ ブワァァァッ!!
「きゃぁっ!!」
藍は、少女達の目の前でマントを翻す。途端に彼女を中心にして爆風のような風が沸き起こり、レッサーもろとも少女達を吹き飛ばしてしまった。
「そんなっ!! 貴女はもうローズ様の眷属になった筈じゃ・・・!!」
ただ一人、耐えていたさやかは驚愕の目で藍を見る。
「えぇ、つい先程まではそうだったわ・・・。 まぁ、今でも奴の呪縛を完全に振り払えたわけではないのだけれど・・・。」
藍はさやかの方に向かって手を突き出す。
「あの女に捕らわれているのは貴女も同じよ。 そんな力になんか頼らずに彼を愛してあげれば良かったのに・・・。」
藍の手の先から巨大な魔力の塊が衝撃波となってさやかに襲いかかる。さやかのマントは粉々に吹き飛び、彼女自身も校門の先の草むらに転がっていってしまった。
藍は風を止ませると、バサリとマントを軽く翻して乱れた裾を直した。
藍は、幾分か自由になった身体を改めて確認する。先程、キルシュの血を飲んだことで、ローズによる呪縛がある程度解けたのだ。
キルシュの身体はローズの身体の一部から作られたホムンクルス。つまり、その血肉はローズの物に他ならない。彼の血を飲むことはローズの血を飲むことと同義なのだ。
ローズが和也の血を吸って藍を支配しようとしたように藍はキルシュを襲うことによってローズの魔力を支配下に置いたのである。
とはいえ、今はお互いが相手の一部を支配している状態。自分とローズの魔力の差を考えると、いまだに五分五分とも言えない不利な状況だ。
(それでも行かなくちゃ・・・。)
藍は自分に心の中で自分に言い聞かせる。すると、彼女の後ろでドアを閉める音がした。
車に隠れていた七海が出てきたのだ。
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