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SRPGバトルロワイヤル8

1 ◆j893VYBPfU:2011/02/16(水) 00:57:31 ID:TzbLndQo
ルールなどは>>2-
詳しくはまとめwikiをどうぞ。


【まとめwiki】
ttp://www36.atwiki.jp/srpgbr/
【したらば】(作品の修正スレ・仮投下スレ・死者スレなどはこちら)
ttp://jbbs.livedoor.jp/otaku/14091/

【過去スレ】
SRPGバトルロワイアル企画スレ
ttp://game12.2ch.net/test/read.cgi/gamesrpg/1164191107/
SRPGバトルロワイヤル1
ttp://game14.2ch.net/test/read.cgi/gamesrpg/1178981646/
SRPGバトルロワイヤル2
ttp://game14.2ch.net/test/read.cgi/gamesrpg/1193849696/
SRPGバトルロワイヤル3
ttp://schiphol.2ch.net/test/read.cgi/gamesrpg/1205662859/
SRPGバトルロワイヤル4
ttp://schiphol.2ch.net/test/read.cgi/gamesrpg/1224581120/
SRPGバトルロワイヤル5
ttp://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1248313700/
SRPGバトルロワイヤル6
ttp://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1262002256/
SRPGバトルロワイヤル7
ttp://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1281581561

70Box of Sentiment ◆j893VYBPfU:2011/04/28(木) 11:10:56 ID:???
 

 ――オレは第三十八代、地球勇者なのだから。


オレは考えうる最悪の可能性を頭から振り払り、無理矢理心を奮い立たせる。
アティが無線が取れなかったのは、単に何らかの偶然という事もある。
あるいは、無線の故障という可能性も。

それに、本人にもし何かあったのだとしても?
本人は未だ生存し、助けを求めているという可能性もある。
ならば、一刻も早く駆け付けるべきであろう。
それが、今のこのオレに出来る最善の行為だ。

本人の死体を発見するまでは、悲嘆にくれるのは早計に過ぎる。
状況は決して楽観はすべきものではないだろうが、
最初から諦めては、救えるものすら救えないのだ。
 
オレは胸の内にじわじわと侵食を始める、どす黒いものを振り払うように。
駆動系が熱を持つ事すら無視して、限界を超える勢いで村へと駆け続けた。


【C-2/森/一日目・夜中】
【カーチス@魔界戦記ディスガイア】
[状態]:背中及び数箇所に切傷(軽症)、左足に異常(要修理)、若干の性能劣化、
    激しい焦燥と後悔
[装備]:オウガブレード@タクティクスオウガ
[道具]:支給品一式
    鍵@不明、オリビアの首輪
[思考]1:手に入れた首輪を解析する為に、異世界の(特に魔法に詳しい)参加者を探す。
   2:アティにいち早く接触し、他の参加者達やディエルゴについての情報を再確認。
   3:ガフガリオンを警戒。
   4:アティの身柄の確保と同時に、エトナ達を探してみる。

71Box of Sentiment ◆j893VYBPfU:2011/04/28(木) 11:11:56 ID:???
[備考]:首輪が魔法的な防護により異常なまでの硬度を帯びており、
    物理的手段だけでは分解不能である事を理解しました。
    分解と解除には魔法と科学に通じたものが必要であると推測を立てています。
   :ウィーグラフ達とこれまでの情報交換を行いました。
    状況が落ち着けば、後ほどアティとともにB−2の塔にて合流する約束をしました。
   :カーチスは自分を含めた全ての参加者には、主催者側の選定基準があり、
    其々に彼らが望む一定の役割を与えられていると推測を立ててます。

【ウィーグラフ@FFT】
[状態]:健康 、ガフガリオンへの不信感
[装備]:キルソード@紋章の謎
[道具]:いただきハンド@魔界戦記ディスガイア、
    ゾディアックストーン・アリエス、支給品一式(ペットボトルのみ無し)
[思考]:1:ゲームの打破(ヴォルマルフを倒す)
    2:仲間を集める。
    3:ラムザとラハールの捜索
    4:ガフガリオンを警戒(不審な行動を見せれば斬る)
    5:アティとエトナ達はカーチスに任せる。
    6:合流予定のB−2の塔で、同時にゴードン達を探してみる。
[備考]:ジョブはホワイトナイト、アビリティには現在、拳術・カウンター・攻撃力UP、
    HP回復移動をセットしています。
   :カーチスと情報交換をしました。首輪に関する話題は筆談にて済ませています。
    但しカーチスの考察以上の事は発展が有りませんでした。

【中ボス】
[状態]:顔面と後頭部に軽症(行動に一切の支障なし)、軽い胃痛、酷い口臭、頬にご飯粒
[装備]:にぎりがくさい剣@タクティクスオウガ、ペットボトルの水(半分消費)
[道具]:支給品一式 (水は全て消費済)、ウィーグラフのクリスタル、カーチスのメモ
[思考]:1:ゲームの打破
    2:自分が犠牲になってでもラハール達の帰還
    3:エトナも早く戻ってくればよいのですが…。
    4:メモの内容…。とても気になりますね。これは。
    5:赤毛の麗しきマドモワゼル(アティ)。フム、意外と近くにいましたか…。
      って、これは浮気じゃないですよ皆さぁーん!!

72Box of Sentiment ◆j893VYBPfU:2011/04/28(木) 11:12:53 ID:???
[共通備考]:
 カーチスの首輪に関する考察には、以下のような事が書かれています。
【カーチスの首輪に関する考察メモ】
 
・首輪は異常なまでの堅牢性が与えられている。当然のごとく、防水性。
 その原因は物理的なものではなく、極めて強力な魔法に類する力であり、
 その力を特定し、無効化することがまずは先決である。
・視認した限りにおいては、分解防止の為か監視カメラの存在はない。
・死亡者の有無を確認出来ることから、生体反応を感知できる何かがあると推測される。
 ただし、参加者がアンデッドと化した事やカーチスのようなサイボーグであっても
 生死を正確に認知できることから、体温や脈拍等で感知しているわけではない。
・主催側の目的やこの殺し合いで得られるものから考えるに、装着者の絶望や憎悪等の
 どす黒い感情を効率良く集積する機能が付加されている可能性が高い。
・今回のゲームの首輪については、サプレスの悪魔(ディエルゴと名乗る者)の求めに応じて、
 進行役の人間(ヴォルマルフ)が入れ知恵をして制作されたと推測される。

:C−3からC−2への通り道の間に、中ボスが食べ終えた空の弁当箱と
 シュールストレミングの缶詰が捨てられています。

73 ◆j893VYBPfU:2011/04/28(木) 11:13:42 ID:???
以上で投下終了です。
感想、ご指摘等ありましたら遠慮なくお願いいたします。

74源罪な名無しさん:2011/05/01(日) 18:27:28 ID:???
臨時放送を未だに突破してないのはアイク、ミカヤ、ゴードン、アティ、ネスティ、アルガス、サナキの
以上七名で良かったっけ?
書くとしたら彼ら優先だよな…。

75源罪な名無しさん:2011/05/02(月) 09:44:17 ID:???
特に問題なさそうなのでwikiに収録します

76 ◆j893VYBPfU:2011/05/08(日) 20:34:07 ID:???
アルガス、サナキで予約します。

77源罪な名無しさん:2011/05/13(金) 17:19:07 ID:???
今状況的に危険なのは区分けすると概ねこんな感じ?

危険度
極度 マグナ、パッフェルホームズ、カトリ
高度 アティ、ネスティ
中度 カチュア、ミカヤ、カーチス、ヴァイス
低度 ラムザ、レンツェン、チキ、ニバス

負傷状態も込みで考えればだけど。?

78源罪な名無しさん:2011/05/16(月) 09:53:05 ID:???
アルガスも状況次第じゃ、
放置プレイで爆死するんだよねw

79源罪な名無しさん:2011/05/16(月) 10:26:02 ID:???
爆死というか、ラハールに首刈られますな。
しかもラムザやサナキには止める理由がほとんどない。

80 ◆j893VYBPfU:2011/05/22(日) 08:35:50 ID:???
サナキ・アルガスを延長します。

81 ◆jEaHSufpKg:2011/05/24(火) 21:42:08 ID:???
初参加の者です。
アイクで予約します。

82源罪な名無しさん:2011/05/24(火) 21:43:29 ID:???
アイクキター!

83源罪な名無しさん:2011/05/25(水) 00:40:20 ID:???
うぉぉ、来たー!

84 ◆imaTwclStk:2011/05/26(木) 21:15:17 ID:???
ソノラ・二バス予約します

85open your eyes ◆imaTwclStk:2011/05/27(金) 14:03:55 ID:???
ソノラ・二バス投下します。

86open your eyes ◆imaTwclStk:2011/05/27(金) 14:04:31 ID:???
意識の覚醒は突然にだが速やかに行われた。
火の爆ぜる音が耳に聴こえる。
だが、何かが足りない。
考えるまでもなく理由は分かっていた。
二バスはゆっくりと目を開ける。
傍では焚き火の温もりが体を温め、
そして、その近くに亡者の騎士がその鎧の色のように
闇夜の漆黒と同化し、物言わず控えている。
身体を起こし、周囲をぐるりと見回す。

(やはり……姿が見えませんね)

何かが足りないと感じた理由。
自分をまるで保護者の如く慕う、
騒がしい少女の姿が今は見えない。

(薪を集めに行った様でもないですし、これは……)

闇夜の中、焚き火の心許ない明かりの中で
幽鬼の如く映る老人は静かに考える。
可能性は二つ。
何がしかの用で外しているか。
若しくは逃げたか。
前者の可能性も万に一つはあるのかもしれないが、
二バスは即座にそれを否定する。

(離れすぎている……これは有り得ませんね)

守ると言った少女が危険を察知出来ぬほどに
その対象から離れては意味がない。
愚かな事に変わりはないが、
それ程までに愚かでもないだろう。

ならば可能性は一つだが、疑問がある。

(あれ程までに私を信頼していたのに、突然逃げる訳は?)

突然、恐怖に駆られたわけでもないだろう。
為らば、何故?

そこで二バスはふと小さな違和感を覚える。
そして自分の持っていたクリスタルに目を向ける。

87open yor eyes ◆imaTwclStk:2011/05/27(金) 14:05:36 ID:???
「……これはッ!?」

この老人にしては珍しく、小さく驚嘆の声を上げる。
二バスが眠りに落ちるまでは微かな魔力を感じていた
クリスタルからは今は何も感じられない。
今では、露天などで容易に手に入るただの石と同様の物と化している。

「魔力を取られた……いや、引き継いだという事ですか?」

研究者としての探究心が鎌首を上げる。
純粋な興味が今の置かれている現実を凌駕していく。

「成る程、流石は異界の術法ですね。
 一体、如何いった類のものだったのか…
 非常に興味深いですね」

自身の知らない現象、術、知識の類を種類を問わず、貪欲に貪る。
それこそが自身の究極目的への到達には欠かせないのであるのだから。

「しかし、残念ですね。
 今はその効力を知る術はありませんか」

だが、その冷酷にして底無き頭脳は大方の予想は導いている。

突然の少女の失踪。
クリスタルの魔力の消失。
そして、クリスタルの『本来』の持ち主。

この三つの現象を重ね合わせる。

「記憶…若しくは知識の引継ぎ……」

ぶつぶつと呟きながら二バスは真相へと意図もあっさりと到達する。
その考えの対象である少女でさえ半信半疑だというのにである。
それも当然かもしれない、
何しろ、それの元凶たる者は他ならぬ自分自身なのであるのだから
悩む要素など無いのだ。

「ふむ、どの程度離されたのか…これが問題ですね」

あくまで冷静に二バスは現状を突き詰めていく。
自分が眠っていた時間、少女が何らかの理由で
クリスタルの『何か』を引き継ぐまでの経緯。
天を見上げて経過時間におおよその目安を立てる。

88open yor eyes ◆imaTwclStk:2011/05/27(金) 14:06:33 ID:???
(二刻から三刻、大体そんな所ですか)

天に日が射す気配なく、周囲の闇はより深みを増している。
それ程深く眠った訳でもないようである。

「……困りましたねぇ、ただ逃げただけじゃなく
 研究材料を持ち逃げされるのは」

それは怒りではない、純粋にこの老人は困っているのだ、
『研究材料を取られた』という事に。
ニバスにとってソノラという少女は
最初から“その程度の”認識でしかないのだ。
居れば利用するだけだし、居ないのなら別にそれでいい。
余計な事をするつもりなら後で始末するだけの事。
自分というものすらこの老人の中ではヒエラルキーの頂点ではなく、
頂点に座するのはただ知識のみ。
自分自身ですら、その為の材料の一つに過ぎないニバスにとって
ソノラという少女の存在は既に如何でもいいモノの一つと化している。

「おや? …継承であるのなら、
 それの条件とどこまで適用されるのか気になりますね」

似た様なものは知っている。
高位の魔術師のみが行使できる転生術。
我が身を捨て去り、魂のみを新たな肉体へと引き継ぐ。
だが、これすらも肉体をその都度、捨てなければ
死から逃れられない以上、
ニバスの目的の到達点とはいえない。
だが、それの簡易版ともいえる代物ならば
やはり興味深い素材である。

「試してみる価値はあるかもしれませンね」

クリスタルは本来の持ち主であるムスタディオの
肉体の消滅に反応した。

「継承者もまた対象となる…
 可能性としては捨てがたい……」

ゆっくりと立ち上がり身体に付いた土ほこりを払う。
身体の感触を確かめるように身体を少しずつ動かして確認する。

「多少のふらつきは否めませんが、
 そこはさほど問題ではありませんね。
 問題は魔力ですが……」

こちらは思っていたよりも深刻である。
回復術法に費やした精神力は並大抵のものではない。
いや、本来ならこうして平然と立ち上がっていること
それ自体が尋常ではないのだ。

「魔法を行使できるのは精々数えるほど…
 と、なれば……」

そこでニバスはただじっと立ち尽くす騎士へと目を向ける。
それを合図としてか、亡騎士はヴォルケイトスの柄を振るい
焚き火をかき消す。
明かりが消え、闇と化した景色の中で
声だけを屍術師は響かせる。

「……さて、不本意ではありますが動くとしますか」

89open yor eyes ◆imaTwclStk:2011/05/27(金) 14:07:23 ID:???
【G-6/森/一日目/深夜】
【ニバス@タクティクスオウガ】
[状態]:肋骨骨折(魔法により応急措置済、行動には支障なし)、精神的疲労(重度)
   ※背中の打撲傷は完全に治療済です。
[装備]:ビーストキラー@暁の女神、ムスタディオのクリスタル@FFT
[道具]:支給品一式×2、拡声機、光の結界@暁の女神
[思考]1:保身を最優先、実験材料(死体)の予備を確保。
   2:最終的に優勝を狙い、この島を屍術の実験施設として貰い受ける。
   3:研究の手掛かりになるかもしれない為、とりあえずはこの世界の召喚術について詳しく調べてみる。
   4:ソノラを追跡し、始末する。
   5:ソノラの殺害でクリスタルは作用するのかを確かめる。

【リチャード@TS】
[状態]:デスナイト
[装備]:折れたヴォルケイトスの先端、柄@TO
   :女神の祝福を受けた鎧@FE蒼炎の軌跡
[道具]:空のザック
[思考]:ニバスを守り、他の参加者を殺す


「あいたっ!!」

暗い暗い森の中を少女は一人で歩き、
闇に見えぬ視界で思いっきり鼻を伸びていた枝にぶつける。

「〜〜〜〜〜ッ! あぁ、もう明かりくらい持って来れば良かった!」

リチャードに気づかれないようにするために敢えて
明かりの類は全部置いてきていた。
それを今更になってソノラは後悔する。

「でもいいもんね、もうすぐここから出られるし」

一人の筈の少女はまるで誰かと一緒に居るように
明るく振舞う。
いや、少女にしてみれば最早“いつでも”一緒なのだ。

そろそろ森の出口に差し掛かる、さっさと抜け出そうとして
咄嗟にソノラは身を隠す。

(……やっばぁ〜、あれ帝国の軍人じゃん)

町の方から街道に沿って歩く集団の姿を木の陰から覗き見る。
集団側からしてみればソノラは警戒どころか歓迎の対象なのであるが、
それを知る由も無いソノラにとって見れば日頃の天敵である
軍人は避けて通るべき相手なのである。

(あいつって、しかもアズリアじゃん。
 くわばらくわばらっと……)

帝国でも名の轟く剣姫をまともに相手になんてしてられない。
しかも屈強そうな男と弱そうな細っこいののオマケ付である。
隠れるようにしてこそこそと、
ソノラは向こうに気づかれないように移動する。
集団が移動して行ったのもあって気づかれずに済んだようである。

「どうしよっかな? 少しここに隠れてよっかな?」

少し思案し、ふと置いてきたニバスの事が気になった。

(本当にニバスさんは……)

感慨に耽りながらニバス達が居た方を仰ぎ見る。
森の奥に薄っすらと見える焚き火の明かりがその時、ふっと消えた。

(……気づいた!?)

意味も無く焦燥感が全身を襲う。
このまま此処にいては拙いと思考の片隅が警告する。
そんな本能の警告に少女は意を決する。

(行こう!!)

少女は地を蹴り、まだ形すら見えぬ向こう側へと駆け出した。

【G-6/森/一日目/深夜】
【ソノラ@サモンナイト3】
[状態]:健康
[装備]:リムファイアー(7発消費・残り29発(確認済))
[道具]:支給品一式、石化銃の弾丸(24/24、他の銃に利用可能かどうかは不明)
[思考]:1:クリスタル継承したムスタディオの記憶の真実を確かめに、G−5の住宅街に向かう。
    2:ニバスについてどうするかについては保留。個人的には殺したくない。
    3:ムスタディオさんの記憶と遺志に従い、ラムザとアルマ、アグリアスを守りゲームを破壊する。
    4:どんな時でも、あたしは独りじゃない!

90 ◆imaTwclStk:2011/05/27(金) 14:08:23 ID:???
投下を終わります。
矛盾等ありましたら指摘をお願いします。

91源罪な名無しさん:2011/05/27(金) 21:27:33 ID:???
確かにその考察、可能性あるちゃあ有るだろうけど…。
ニバス、相変わらず彼らしい「全ての生命は虫けら同然」の酷い発想しか思い浮かばんなw
しかもここに「自分の生命」を例外視しない辺り、単なる小物で終わらせないものになっている。

なんて嫌なマーダーなんだ…。
ともあれ投下乙でした!

特に矛盾もなかったのでそれでいいかと。

92 ◆j893VYBPfU:2011/05/28(土) 09:04:35 ID:???
サナキ・アルガスを延長します。
ただし、今夜中に投下します。

93 ◆j893VYBPfU:2011/05/28(土) 23:51:47 ID:???
サナキ・アルガスで投下します。

94騎士の誕生 ◆j893VYBPfU:2011/05/28(土) 23:52:44 ID:???
アルガスからの情報に、目を引くような重要なものはなかった。
元よりそう多くを期待していなかった分、失望には至らなかったが。
だが、残念と言えば残念ではある。

折れた角を頭に持つ緑髪の少年。
ホームズの親友であるリュナン。
そして獰猛な印象を与える黒髪の男に、
エトナという赤毛の悪魔。

彼の話しによれば、以上四名の危険人物ばかりに遭遇し、
そのいずれにも酷い目に合わされたという。
そして、わたしはそれが敵意と偏見に満ちた主観入りという事に注意しながら、
脳内でアルガスの情報を整理してゆく。

おそらく、遭遇した人物全員が危険という訳ではないだろう。
わたしの勘で言えば、アルガスの傲慢な態度が巡って周囲にそう返礼されたか、
あるいは本人の脇の甘さが招いた結果なのだろう。
他人を見下す事に夢中になるものは、どうしても視野が狭窄する。
己もまた、他人に内心で見下され返すという事に気付かないのだ。

 ――馬鹿というか、甘いというか。

わたしは物心付く頃に祭り上げられ、最初から飾りである天上人だった。
「神使」と言う地位は名ばかりで、自らは何の奇跡も起こす事も出来ず。
ただ、そこに鎮座してある事のみが価値とされたわが身としては。

出会う者全てがこちらにおもねり、へつらう態度の奥底で。
絶えずわたしを利用しようと隙を伺い、
あるいは所詮傀儡に過ぎぬと侮蔑してかかる
有像無像に囲まれて育ったわが身としては。
絶えず他人の内心を用心深く推し量りながら、
自らは決して弱みを見せぬ事などもはや常識。

95騎士の誕生 ◆j893VYBPfU:2011/05/28(土) 23:53:19 ID:???
貴族の見せる優雅さとは、決して見栄の為のみではない。
他者に弱みを見せぬ為の偽装であり、用心の心得なのだ。

かつては名門貴族でありながら、その程度の作法すら理解出来ないアルガスの無防備さに。
わたしは大きな羨望と失望の入り混じる、大きな溜息を漏らした。

 ――ある意味、羨ましい育ちじゃったのかもしれんの。
   昔ちやほやされてたのが突然に没落し、周りの態度が豹変して人間でも歪んだか。

だが、わたしの溜息を境遇への憐憫とでも見誤ったのか?
アルガスは下手に出て、わたしに媚び諂う。

「なあ、こんなオレを哀れだと思ってくれてるのなら。
 今度こそ、仲間として受け入れてはくれないか?
 …絶対に、皇帝陛下の役に立ってみせる。必ずだッ!」

熱っぽい眼差しで、奴はわたしに視線を送る。
わたしを出世の足がかりにでもするつもりなのだろう。
その事については、別にわたしも不快には思っていない。
「相互扶助」という名の「相互利用」。
人間関係とは、良くも悪くもそれで成り立つ。
利用するなら大いに結構。それはお互い様というものだから。

だが、目の前の男に利用価値があるかと言えばそれはないだろう。
むしろアルガスを連れ歩く事は足手纏いにすらなりえる。

気に入らない相手と見れば所構わず吠え続け、侮蔑を隠そうともしない。
周囲の空気を著しく悪化させて、一切悪びれる事もなく。
その貴族主義を、ことさらに周囲に押し付ける。
アルガスを駆り立てるのは己の野心と憎悪のみ。
それ以外の事象に価値など見出せないのだろう。

96騎士の誕生 ◆j893VYBPfU:2011/05/28(土) 23:53:58 ID:???
わたしはこれまでのアルガスとのやり取りから、
あえて危険を冒してまで仲間にするメリットはないと判断していた。
そして、吐き出させるべき情報も全て吐き出させた。
もはや用済みか、と考えた所で。


「――初めまして、皆様方。
 私は悪鬼使いキュラーと申す者。以後、お見知り置きを」


本来はあり得ないはずの、放送が。
アルガスの運命を嘲笑うかのように、城内に響き渡った。


          ◇          ◇          ◇


「その“救いの手”を受け入れるか、あくまでも拒絶するかについては、
 貴方達の自由意思に委ねましょう。これは強制ではありませんからね。
 このゲームでは、なにより自由意思による選択こそが尊重されるのです。
 貴方達のご健闘に期待しておりますよ…」


わたしは苦々しい思いでその放送を聞き入っていた。
――その狙いは、あまりにもあからさまに過ぎる。

そして、この状況はアルガスの運命を決定付けるものであった。
アルガスが見る見る蒼褪め、混乱のあまり大騒ぎを始め出す。
そのみっともなさはともかく、心情だけは同情するに余りある。
そう、誰とてこの臨時放送がもたらすものは理解できる。
――理解できるのだ。

97騎士の誕生 ◆j893VYBPfU:2011/05/28(土) 23:54:33 ID:???
ラハールは暴れたがっており、そしてその相手と武器を見境なく探している。
そして、ラムザはアルガスとの仲はお世辞にも良いとは言えない。
アルガスとて、それらの状況は充分に理解している。
――そして、何よりも。

残りの制限時間が、この先どの程度であるかがわたし達には分からない。
第一回放送で呼ばれた最後の死者は、果たして午前中に死んだのか?
それとも、放送直前に死んでしまったのか?
今のわたし達にとってはそれすら不明なのだ。
それらを早急に確かめる事も必要である。

そして、それらの人間関係を始めとする全ての問題点を解決できる手段が。
――たった今、わたしの目の前にある。

殺しても誰一人として良心が痛まない者がおり。
殺した方が明らかに今ある状況を優位に立て。
殺す事により確実な安全を保障出来る。

そんな都合の良い「生贄の羊」が、たった今無力な状態で拘束されている。
それに、たとえこちらが放置して手を下さなくとも、
発見され次第誰もが彼を始末しようとするだろう。
貴重な時間と、身を守る武器を得るために。
「殺す」という行為に、義務のみでなく利益を得てしまったが為に。

そして今、同時にこのわたしの立場も危ういものとなってしまった。
無論、ラムザという男が如何なる場合であれ、
無抵抗な女子供を手にかける者ではない事は、
これまでの僅かなやり取りの中で充分に理解している。
――だが、だからこそ。

98騎士の誕生 ◆j893VYBPfU:2011/05/28(土) 23:55:13 ID:???
アルガスのみを目の前で殺めて、首輪を奪うという事は充分にあり得る。
いつ「不用」として首を狩られるか不安の中にいる、このわたしを安心させる為に。
アルガスという男。ラムザとの因縁やこれまでの態度から察するに、
あまり良質な人間だとは言えないのだとも理解していた。

そして、ラムザはアルガスを殺す事に躊躇いはないだろう。
あの男は優しくはあるが、決して甘くはないのだ。
それは身に纏う空気やその目からも理解は出来ていた。
あのヴォルマルフという騎士相手に一度は勝利した強者に、
決して隙や甘さなどあろうはずがない。
――だが、だからといって。

アルガスを見捨ててしまってもよいものだろうか?
下愚としか言いようのない、人間の失敗作であっとしても。
窮地にある者を見殺しにして自らは手を汚さず保身を図る、
かつての元老院まがいの浅ましい行為を。
人の上に立つ者が取って良いものなのだろうか?

 ――否、断じて否。

もし、アルガスを見殺しにしてしまうのであれば。
わたしは、かつてヘッツェルを断罪した時のように。
わたし自身をも断罪しなければならなくなる。

元老院議員へッツェルもまた、己の身の可愛さ余りに
「高貴なる者の責務(ノブレス・オブリージュ)」を忘れ、
全ての悪事について見て見ぬ振りを続けていたのだから。
それは、国家の命運を担う者が、守るべきものの荒廃を
座視したも同然の行為であるが故に。

99騎士の誕生 ◆j893VYBPfU:2011/05/28(土) 23:55:49 ID:???
 
 ――わたしは自ら手を汚し、ヘッツェルをその罪ごと焼き滅ぼした。

たとえ、己自身が悪事に手を染める事がなかろうとも。
それはすべからく貴族の義務の放棄を意味したが故に。
庶民ならいざ知らず、貴族の取るべき態度ではない。

ましてや、わたしは人の頂点に立つ皇帝。
そのような罪を背負うものに、皇帝を名乗る資格はない。
他者にはその手を汚させ、自らは安穏とするなど言語道断。
率先して己が手を汚して、自らも危険を背負ってこそ皇帝。
無力は罪の言い訳にはならぬ。
――ならば。

わたしは怯え喚き続けるアルガスを無視すると、小部屋を飛び出した。


          ◇          ◇          ◇


「さあて、戻って来てやったぞ。待ちくたびれたかのぅ?」

わたしはにんまりと笑うと、城中を捜し回りようやく見つけた鋸を手に。
大股で、ゆっくりとアルガスの所へと近づいた。

アルガスの顔が恐怖へと歪む。迫り来る運命を悟り。
わたしは勝ち誇るように笑う。運命を己が握るが故に。

100騎士の誕生 ◆j893VYBPfU:2011/05/28(土) 23:56:35 ID:???
「やめろーッ! オレを放せーッ!頼むーッ、殺さないでくれーッ!!
 ふざけるなーッ! どうして、オレが殺されなきゃいけないんだッ!
 オレは貴女様の役に立つから、ラムザなんかよりも役に立って見せるからッ!
 だからサナキ様ッ!皇帝陛下様ッ!考え直してくれよッ!なッ!なッ!」

先程の、ラムザへの威勢の良さはどこへやら。
アルガスは尻もちを付いた姿勢のまま、ずるすると退がり続け。
やがて後ろの壁に当たり、その退路すらも断たれた。

年下の少女相手にカタカタと歯を打ち鳴らす様はむしろ滑稽ですらある。
その怯えぶりは、もはや貴族というよりは道化と呼ぶ方が相応しい程に。

「残念じゃが、おぬしはラムザほど役には立てんよ」
「覚悟を決めるのじゃな。さあ、女神に祈るがよい」

わたしは残念そうにゆっくりと首を左右に振り、アルガスを押さえ込む。
右手には握られた鋸。真新しいそれは、獲物を求めて鈍い光りを放ち。
絶叫を上げるアルガス。それは屠殺される寸前の家畜を連想させるも。

「頼むよ…、やめてくれーッ!!
 いやだーッ、死にたくないーッ!やめてくれーッ!」

現実を拒絶して、眼を瞑るアルガス。
わたしはその命乞いを無視して――。
あてがった鋸を、一気に引く。

「助けてくれッ、かあさんッ!! 」

101騎士の誕生 ◆j893VYBPfU:2011/05/28(土) 23:57:57 ID:???
響き渡る絶叫。
引き続けられる鋸。
そして、溢れ出す―――――ことのない血潮。



――束の間の、静寂。
白けた空気が、周囲を支配する。



「って、あれ?なんで生きてるのオレ?」

呆けた声を上げるアルガス。
縛られていた圧迫感が不意に消え、怪訝に思った彼が少し身体を動かし。
ようやく、身体の縛りのみが引き裂かれていた事を理解する。

「…その年でマザコンとは関心せんのぉ?」

わたしは苦笑を浮かべながら、アルガスを見下ろしてた。
奴は勘違いにようやく気付き、酷く顔を赤らめる。

 ――してやったり。だからこういう悪戯はやめられんのじゃ。

「う、ううううるさいッ!黙れッ!黙れ黙れ黙れッ!
 よくも、よくもこのオレに恥を掻かせてくれたなッ!」

「なんじゃ、そなたにも恥を知る心ぐらいはあったか。
 ラムザ相手にあれだけ啖呵切ってたのが嘘みたいじゃの」

102騎士の誕生 ◆j893VYBPfU:2011/05/28(土) 23:58:39 ID:???
わたしはニヤニヤと笑いながら、アルガスをからかい続ける。
ラムザの名を出され、若干顔が硬くなり始めるも。
そっぽを向きながら、ぶつぶつと言い訳を始める。

「…そりゃそうさ。オレだって命は惜しいッ。物凄く惜しいッ。
 いくら一度経験してるにしてもな、もう一度死ぬのは嫌に決まっているッ。
 だがな、これまでに自分が名家であるが故に受け続けた恩恵も忘れて、
 貴族の義務も誇りも放棄してベオルブの家から逃げたラムザ相手に、
 引くなんて貴族としてありえないね。それを許したら、身分が曖昧になる。
 それにあいつに媚び諂って命乞いする位なら、殺された方がまだマシだッ。
 ベオルブ家の面汚しを、同じ貴族だなんてオレは認めんッ」

――なるほどの。
意地や誇りのかけ方が少しばかりズレておる。
あと口調がいつの間にか敬語ではなく対等になっておるが、それはまあよい。
あるべき貴族主義が誤ったまま固定化され、それで道を誤ったということか。
ラムザの事にせよ、なんらかの誤解か勘違いじゃろ。目が曇り過ぎというものじゃ。
だがまあ義務や誇りという言葉が出る分、まだ更生の余地はありそうじゃの。
ただ単に、身分に拘り過ぎで意固地に過ぎるという事か。

わたしはそう得心すると、視線でアルガスに部屋からの退出を促す。
「早くここから消え失せろ」と。
「もうお前は見逃してやる」と。
アルガスはその反応にぽかんとした顔でこのわたしを眺め。
唐突に得られた自由に戸惑い、そして警戒し。
躊躇いがちに、ぼそりと口を開く。

103騎士の誕生 ◆j893VYBPfU:2011/05/28(土) 23:59:24 ID:???
「なあ、なんでこのオレをわざわざ助けるんだ?
 あんた自身が言ってただろ?オレは役に立たないって。
 それにオレが死ななきゃ、あんたが代わりに殺されるかもしれないんだぜ?
 今の放送聞いてりゃ、それ位はあんただってわかるよな?
 ここじゃ皇帝だの貴族だのって地位は、平民の家畜どもには通用しないッ。
 それに――。」

アルガスはそう言うと、猫背で弛緩した姿勢を取り。
わたしはそれを最初から予期しており、杖の末端と半ばを握り構える。

「――そなたがわたしを襲わぬとも限らぬ、とでも言いたいのじゃろ?
 ならば…、試してみるかの?」

アルガスは不敵に挑発するわたしの様子を、しげしげとしばらく眺め。
「そこまでわかっていて、一体何故なんだ?」と心底理解に苦しんだ表情を見せ。
わたしは答える。真なる貴種の生き様というものを。

「…阿呆。目の前で殺されそうになっておる生命を前にな。
 己の保身の為に見殺しにする輩など、誰も皇帝などとは呼ばんじゃろ?
 それこそ、そなたの言った『貴族の義務』という奴じゃ。
 わたしは、わたしの誇りの為にそなたを助ける。そなたの価値など関係あるか。
 それにの、護身の心得なら多少はあるでの。そなたの裏切りなど計算の内じゃ。
 貴族とは、民草とは生き様の格の違いを見せつけてこそ貴族というものじゃろ?
 わたしを単なるお人好しか、地位を笠に着るだけの小娘だとでも思うたか?
 この第三十七代ベグニオン皇帝を、あまり見くびるでないわ」

わたしはニヤリと笑いながら、それを奴に教える。
わたしの在り方を。わたし自身の矜持というものを。
眼前の誇りのかけ方を誤った没落貴族にも分かるよう、
はっきりと宣告する。
その言葉に――。

104騎士の誕生 ◆j893VYBPfU:2011/05/29(日) 00:00:27 ID:???
アルガスが身に纏う、空気が変じた。
アルガスは唐突にその目を見開き、大きくその身体を震わせて。
あたかも女神からの天啓でも受けたかのように。

自ら片膝を折り、わたしに頭を垂れ――。
恭しく厳かな声で、騎士の礼を取った。

「これまでに渡る数々の無礼…、どうか、どうかお許し下さいッ。
 貴方様には、真の貴族の誇りを見た気がいたしました。
 ただ、願わくば。それが許されるのであれば。
 この私めを、是非貴方の配下に加えて頂きたく存じ上げます。
 未だ騎士見習いの身なれど、己が未熟は熱意で補いますが故に」

それは、あの傲慢極まりなかったアルガスの口から初めて聞かれる。
一切の混じり気のない、偽り無きわたしへの敬意に満ちた言葉。
それは、「相互利用」といった契約関係を望むのでは決してなく。
わたしを本当の意味で主として認め、己を臣下とするよう願い出た。

――わたし自身想像すらしなかった、唐突なるアルガスの改心。
当然を語ったに過ぎない積もりが、ここまでの影響を与えるとは。

…この男、まだ芯までは腐り切ってはいなかったという事か。
その反応にわたしこそが驚き、反応に少々こそばゆいものを感じはしたものの。
だが、わたしはアルガスの懇願に――。

「その申し出は、今はまだ受け入れられんの」

拒絶にて、それを返す。
びくり、とアルガスが悲嘆に肩を震わせるも。

105騎士の誕生 ◆j893VYBPfU:2011/05/29(日) 00:01:06 ID:???
「…今はまだ、と言ったんじゃ。つまりは保留という事じゃ」
「そなたが貴族に相応しい振舞いを身に付けたと、わたしが認めた時。
 その時は改めてそなたをわたしの騎士として認めよう。
 人の性根など簡単に変わる。今はまだまだ信頼できん」

わたしは、アルガスに優しく諭す。

道を違えぬ限り、少なくともわたしはアルガスを認めると。
良き方向に人が変わるのであれば、わたしはその切っ掛けとなりたい。
わたしは人を導くのが責務であるが故に。

「じゃからの、わたしがそなたを直で見届けるとしよう。」
「どうせ、ここにい続ければそなたはラムザ達に殺されるんじゃ。
 じゃが、そなたを野放しにするのも危なっかしいしの。
 …仕方あるまい。ようは監視も兼ねて、という事じゃ。
 一緒に出るぞ?元より、その積もりじゃったしの。
 その代わりに、わたしの護衛でもしてくれると助かるがの?」

そして、事実上の承認にも等しい言葉を与える。
その思いがけぬ言葉に、アルガスは再び顔を上げ――。

「…このアルガス、身命を賭して貴方をお守りいたします」

わたしの腕を取り、騎士の礼を取る。
その瞳には、僅かながらも涙が溜まっていた。
おそらくは、初めてなのだろう。他人に必要とされ、認められたという事が。
経緯はどうあれ、他人に損得抜きで命を救われ、受け入れられたという事が。
それが、たとえどのような形であろうとも。
だからこそ、これほどまでに心震わせたのだ。

106騎士の誕生 ◆j893VYBPfU:2011/05/29(日) 00:01:58 ID:???
そして、あれが最期を覚悟した時に出た「かあさん」という言葉。
それも、あの者が「誰かに認められたいという」渇望を持つ事を裏付ける。
世に生まれ落ちて、最初に己を全肯定するのが「母親」という存在であるが故に。

実はこの男、これまで「貴族」という地位に殊更に拘泥しているのも、
周りが己を認める唯一のよすがが、その血筋のみだったが故なのか?

ならば、まだ変わりゆく余地は充分にある。
そして、その切っ掛けを与えてやる事はわたしにも出来るかもしれない。

「うむ、苦しゅうない。
 ならば、護衛代といってはなんじゃがこれをやろう」

わたしは膝を折るアルガスの首筋に。
剣の平で叩く代わりに、あるものを巻き付ける。
わたし自身が、それまで身に着けていたものを。

「これは…?」

それは、貴族が巻き付けるには質素に過ぎる、
むしろ違和感を醸し出すものではあるのだが。
何よりも柔らかく、暖かく。作り手の優しさが伝わるものを。
それが同時にわたしの気持ちでもあると、伝わるように。

「誰かが人の為に編んだ、手編みのマフラーじゃ。
 陳腐なもの言いじゃが、作った者の想いまで伝わってきよる。
 …わたしのお気に入りだったんじゃがの。
 己を見失いそうになったら、これを見て思い出せ。
 先程の、わたしへの誓いをの。」

107騎士の誕生 ◆j893VYBPfU:2011/05/29(日) 00:02:28 ID:???
わたしはそう言い含める。
「人に認められたい」という気持ちが強いのであれば。
「人の思いやり」の篭もったものは金品より価値あるものとなるだろう。
それが、主と認めた者からの賜りものなら尚更に。
そして、アルガスはわたしから報酬に。

「…ありがたき、幸せ」

恭しくマフラーに手を当て、再び頭を下げた。
様子を見る限り、しばらくは翻意を抱く事はないだろうと判断する。
とはいえ、楽観は禁物だろう。
人はそう、簡単に変われる訳ではないのだから。
問題は、むしろこれからなのだ。

「さて、長居は無用じゃ。さっさと出掛けるぞ。」

わたしはアルガスに準備を促し、怪我の治療を杖魔法で行ってやると。
鋸を用意する際にあらかじめ書いておいた手紙を部屋の中央に置き、
二人で城を後にした。

『アルガスがこのままでは危険過ぎるので、拘束から解放する事。
 アルガスを一人にすれば不安が残るので、わたしが監視する事。
 そして自分から言い出しておきながら、皆でこの城を出る事が出来ず、
 皆に申し訳ないと。ホームズには後ほど自分から詫びておくと。』

手紙にはこう記してはおいたが、不安ではある。
経緯はどうあれ、わたし達の離反はラムザ達への不審を意味するのだから。
何より、今の合流はアルガスが危険過ぎる。

108騎士の誕生 ◆j893VYBPfU:2011/05/29(日) 00:03:51 ID:???
 
 ――ま、理解してくれるとありがたいんじゃがの。

そして、後はアルガスのお守か。
わたし自身が決めた事とはいえ、少々気が滅入る。
わたしの騎士となろうとする以上、私怨はひとまず置くよう命じてはいるのだが。

 ――どうしても、不安が残るのぅ。

私怨を捨てろとまでは言わぬが、自重位はしてくれると有り難いのだが。
それが出来ぬようであれば、責任を以てわたし自身の手で阻止せねばならない。
たとえその結果、アルガスの生命を奪う事になろうとも。

 ――そういう事態だけはないよう、女神に祈りたいものじゃがの。

わたしは将来における数々の不安に頭を悩ませながら。
何度ともなく溜息を吐き、もう一度だけ城を振り返ると。
頼りない従者とともに、暗闇の野原へとその足を進めた。
 

【E-2/城の正門前/1日目・夜中】
【サナキ@FE暁の女神】
[状態]:精神的疲労(軽度)
[装備]:リブローの杖@FE、真新しい鋸
[道具]:支給品一式
[思考]1:アルガスを監視しつつ、その行く末を見守る。場合によっては…
    2:帝国が心配
    3:皆で脱出
    4:アイクや姉上が心配
    5:魔道書等の充分に力を出せるアイテムが欲しい、切実に。

[備考]:二人で編成を組むに伴い、支給品一式を二人分アルガスに預けてます。
    アルガスや自分に使ったリブローで、若干の消耗が起こってます。

109騎士の誕生 ◆j893VYBPfU:2011/05/29(日) 00:05:33 ID:???
【アルガス@FFT】
[状態]:ラムザに対する憎悪(重度)、サナキに対する忠誠心
[装備]:手編みのマフラー@サモンナイト3
[道具]:支給品一式×2
[思考]1:サナキに相応しい騎士となるよう務める。
    2:戦力、アイテムを必ず確保する。
    3:サナキが望まないので、とりあえず私怨は抑えてみる
    4:…オレ、どうすりゃいいかな?

[備考]:アルガスの怪我はサナキがリブローの杖で治療しました。
[共通備考]:アルガス達のいた部屋の中央に、サナキの置手紙が置いてあります。
      鋸の刃は薄いので、戦闘には一切使用できるようなものではありません。
      サナキとアルガスがどの方角へと向かったのかは
      他の書き手様が自由に決めて下さい。

110 ◆j893VYBPfU:2011/05/29(日) 00:06:17 ID:???
以上で投下完了です。
矛盾点やご指摘等ございましたら遠慮なく下さい。

111源罪な名無しさん:2011/05/29(日) 00:33:36 ID:???
おぉ、アルガス改心(?)かぁ……
不安しかねぇから不思議w

位置的にホームズと再会出来るかが分かれ目だなぁ。
別行動が吉と出るか凶と出るか……

投下乙でした!w

112<ディエルゴに喰われました>:<ディエルゴに喰われました>
<ディエルゴに喰われました>

113 ◆jEaHSufpKg:2011/05/31(火) 22:48:14 ID:???
アイク、投下させていただきます。

114蒼炎の勇者、立つ ◆jEaHSufpKg:2011/05/31(火) 22:50:59 ID:???
後悔の瞬間、失望の瞬間、絶望の瞬間。
その瞬間は近付いている。
刻一刻と、近付いているのだ。
この場で会った者の死、元の世界の仲間の死を知らせる放送が。
すぐそこに、今まさに始まろうとしている。





『――諸君、これから第一回目の放送を始める』




アイクはその声を聞き、閉じていた目を開く。
その声はヴォルマルフ当人の声だった。
間違えようもない。
流れてくる声に感情はまったくと言っていいほど感じ取れなかった。
そしてすぐ、その無感情な声が流れる。

『まずは禁止エリアを発表する。



 ――B-4、E-4、F-8



 以上の三箇所だ。現在地が該当エリアの者は速やかに移動をせよ。
 ゲームを盛り上げるためにも、つまらん死に様は曝さなぬようにしてもらいたいのでな』


「…どれも遠い…か」

115蒼炎の勇者、立つ ◆jEaHSufpKg:2011/05/31(火) 22:52:04 ID:???
あえて注意するなら、F-8だろう。
地図に何か印を書こうにも何もない。
アイクは少し考える。
少しだけ時間を置き、アイクが何かを考え付いた素振を見せる。
そこでアイクが取った行動は…。

「穴を開ければいいか」

指で禁止エリアの部分に穴をあけた。
ちなみにここは宿舎なので探せば筆記具はあるはずなのだ。
しかし、そこまで頭が回らなかったのだろう。

『続いて、ゲーム開始からこれまでの死者の発表をする。』

その声を聞いて、アイクは再び放送に耳を傾ける。
自分の仲間、そしてリチャードの安否を知るため。

『――アメル、オイゲン、シーダ』



『シノン』




呼ばれた、これにはさすがのアイクも動揺を隠せなかった。
シノン、彼がどう死んだかは分からない。
自分から挑発して殺されたのか、武器もなく追い詰められ殺されたのか、分からない。
アイクは、シノンを殺した奴に対して少なからず怒りが芽生えてしまう。

放送は続く、名前が続けて呼ばれる。



『ティーエ、ナバール、ビジュ、ベルフラウ、マルス、ムスタディオ』



『リチャード』



その名前が出た時、アイクは一瞬後悔した。
もしも、あの時折れずに無理をしてでも戦えばリチャードは助かったかもしれない。
そんな事を考えてしまう。
だが、この考えはリチャードの勇気への冒涜だ。
あいつは俺を助けてくれた。
俺の大事な仲間なのだ。

116蒼炎の勇者、立つ ◆jEaHSufpKg:2011/05/31(火) 22:52:36 ID:???


『以上、11名。開始から12時間で約1/5の死者――なかなかだ。このペースでゲームに努めてもらいたい』


アイクはその言葉を聞いて無言だった。
それは、仲間を殺した者への怒りか。
リチャードを助けられなかった非力さを痛感しているのか。
今まで無感情に話していたヴォルマルフが笑った事による違和感か。


『失ったものは戻ってこない、と思っている者に一つ教えてやろう。ゲーム開始前に言ったことは覚えているな?
 優勝者には望むままの褒賞が与えられる、と。それに例外はない――たとえ死した者を蘇らせることでも、だ』


アイクは眼を閉じ、考える。
他の奴をリチャードの二の舞にさせたくない。
自分のために死んでいった、彼。
もう、油断はしない。
俺は……。


『これにて第一回放送を終了する。さあ――殺し合いを再開せよ』


この声と共に、彼は歩き始めた。
放送が終わり、決意を改めた彼に一つ雑念が浮かぶ。






(ああ―――――肉が食いたいな…)






【H-7/城内の兵宿舎/一日目/夕方(放送直後)】
【アイク@暁の女神】
[状態]:全身にかすり傷・左肩にえぐれた刺し傷・右腕に切り傷(全て応急処置済み)
    貧血(軽度)。
[装備]:エタルド@暁の女神
[道具]:支給品一式(アイテム不明、ペットボトルの水一本消費、地図は禁止エリアに穴が開いている)、応急措置用の救急道具一式
[思考] 1:『蒼炎の勇者』として、この場で為すべきことを為す。
      (テリウスの未来の為、仲間と合流しゲームを完全に破壊する)。
    2:主催と因縁がありそうな者達(ラムザ・アティ)と合流し、協力者と情報を得たい。
     3:リチャードとシノンの死体を見つけ次第埋めてやる。
     4:漆黒の騎士に出会ったら?
     5:今度ネサラに出会った場合は、詳しく事情を問い詰める。
     6:あの石化した少女は余裕があれば対処する。
    7:出来れば、肉が欲しい。

117 ◆jEaHSufpKg:2011/05/31(火) 22:53:27 ID:???
投下を終了させていただきます。

118源罪な名無しさん:2011/06/01(水) 08:30:52 ID:???
投下乙。
どこまで行っても肉かあんたはw

119源罪な名無しさん:2011/06/01(水) 13:00:45 ID:???
投下乙です!
仲間や短い付き合いでも認めた
男の死を乗り越え……って、おいw

120源罪な名無しさん:2011/06/03(金) 09:52:53 ID:???
あ、忘れてた。一か所指摘。
第一回放送が六時だから、時間帯はそれ以降なので夜になります。
wiki収録時にそこ直しておきますね。(夕方→夜)

121 ◆imaTwclStk:2011/06/04(土) 21:02:06 ID:???
「open youra eyes」内で矛盾が見つかりましたので、
修正したものを修正スレに投下しました。
申し訳ないorz

122源罪な名無しさん:2011/06/04(土) 21:08:06 ID:???
了解、確かに時間的にアズリア達には会いそうにないですからな。
では、wikiもそれに合わせて修正かけますね。

124源罪な名無しさん:2011/07/25(月) 17:53:22 ID:???
先生…。殺陣が、書きたいです…。

でも先に繋ぎ進めないと時間的に被るからなあ…

130 ◆j893VYBPfU:2011/07/31(日) 23:00:20 ID:???
アルガス、サナキ、レンツェン、チキ、ホームズ、カトリ、ヴァイスで予約。

135 ◆j893VYBPfU:2011/08/13(土) 23:49:56 ID:???
すいません。予約延長で。

145 ◆j893VYBPfU:2011/08/20(土) 18:49:10 ID:???
諸事情により予約を破棄します。

165 ◆imaTwclStk:2011/10/23(日) 20:01:18 ID:???
デニム、カチュア、オグマ、アズリア、イスラで予約します。

166源罪な名無しさん:2011/10/24(月) 09:51:24 ID:???
予約キター

167 ◆imaTwclStk:2011/11/01(火) 13:33:42 ID:???
すいません、予約延長します

168 ◆imaTwclStk:2011/11/18(金) 00:08:07 ID:???
予約を再延長します

169 ◆imaTwclStk:2011/11/23(水) 23:32:20 ID:???
投下します!


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