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仮投下スレ
1
:
名無しさん
:2010/07/15(木) 00:08:08 ID:jM/W7I820
規制中の場合はこちらへどうぞ
2
:
◆egOgs3EjF.
:2010/07/16(金) 23:21:39 ID:jlUM6g5E0
OP案を投下します
3
:
◆egOgs3EjF.
:2010/07/16(金) 23:22:22 ID:jlUM6g5E0
その日、バッツ・クラウザーは草原を駆けていた。
相棒のチョコボ、ボコが大地を蹴るたびにぐんと加速し、全身に心地よい風を感じる。
戦いの日々が終わってしばらく経つ。
しかし長く旅の中で育ってきたバッツにとって平和な村の暮らしはいささか退屈であり。
きっかけなど何もなく、風の如く自由な男バッツは再び旅立つことを決めた。
故郷リックスの村を出発し、まずは二人の仲間がいるはずのタイクーン城へ。
レナとファリスに会うのは久しぶりだ。
いっそのこと二人も誘ってクルルに会いに行こう――そんなことを考えていたら、突然視界が揺れた。
ボコが何かに躓いたのか、なんて思う間も一瞬。
バッツの意識は一瞬で闇に落ちた。
4
:
◆egOgs3EjF.
:2010/07/16(金) 23:23:25 ID:jlUM6g5E0
そして今、目覚めたバッツの前に広がるのはどこまでも続く大草原ではなく、陽光射さぬ暗い大ホールだった。
慌てて目をこするも、眼前の光景は夢のように泡と消えることはない。
「ファファファ。久しぶりだな、バッツ・クラウザー。クリスタルの光に導かれし戦士よ」
「その声は……まさか、エクスデスか!?」
カッ、と闇に光が投げ込まれる。
その中心に立つのはバッツと因縁深き暗黒魔道士、エクスデス。
かつてバッツをはじめとする光の四戦士によって討ち滅ぼされたはずの。
「な、なんでお前が!? お前はあのとき無の力といっしょに消えたはず……!」
「ファファファ! 夢とは砕け散るもの……平和というつかの間の夢は楽しかったか?」
狼狽するバッツとは対照的に、エクスデスは悠然と光の下を進み出でて来る。
その姿はバッツの記憶にある最後の姿――大樹、そして無の獣――では、ない。
魔道士とは思えないほどに逞しい巨体を白い鎧に押し込めた、最初に出会ったころのカタチ。
「たしかに私はお前たちに一度滅ぼされた。だが、私を完全に滅することができるのは無の力のみ!
少々時間はかかってしまったが、私はついに無の力をすべて解明した! そして無の力をもって甦ったのだ!」
最後の戦いのとき、エクスデスは無の力に呑み込まれ外見のみならず記憶や人格までも変質し、無そのものとなっていた。
だが今のエクスデスは違う。その瞳には確固たる意志の輝きがあった。
「だったら、もう一度倒すだけだ!」
「おっと、大人しくしていてもらおうか! 貴様以外にも挨拶せねばならない者は大勢いるのでな」
バッツが腰の剣に手を伸ばす――が、空を切った。
彼は気づいていなかったが、愛剣はすでにエクスデスによって没収されていたのだ。
満足げにその様子を見ていたエクスデスが手を一振りすると、大ホールの照明が点火した。
夜から朝へ、闇から光へ。
急激な視界の変化に目を押さえながら慌てて周りを見回すと、気づかなかったがあちこちに人がいた。
(ここにいるのは俺とエクスデスだけじゃない?)
反射的に仲間の姿を捜し求めたが、レナやファリス、クルルの姿はなかった。
バッツはほっと息をついた。
5
:
◆egOgs3EjF.
:2010/07/16(金) 23:24:01 ID:jlUM6g5E0
「おい、貴様! これは一体どういうことだ!」
そのバッツの代わりにエクスデスに食ってかかったのは、青い髪を逆立てた15歳ほどの少年だった。
エクスデスを睨みつける瞳が示すのはこの異常な状況への戸惑いと怒りだ。
バッツと同じく武器を奪われたのだろうが、彼は怯むことなくエクスデスへと足を進めていく。
「どうやって僕をこんなところに連れてきたかは知らないが、ただで済むと思ってはいないだろうな!?」
「待ってよノヴァ! 迂闊に近づいちゃ危ない!」
「ダイか? ふん、君もいるとはな。ちょうどいい、そこで見ているがいい! この『北の勇者』の実力をな!」
ノヴァと呼ばれた少年は、呼びかけてきた少年――ダイというらしい――に構うことなく、エクスデスの真正面に立った。
「ふむ、自ら名乗り出てきてくれるとは。説明する手間が省けるな。ちょうどいい……」
「何をゴチャゴチャと――くらえ! マヒャド!」
魔法力が高まる。一流の魔道士でもあるバッツの目にはそれが氷属性の、それも相当強力な魔法であると知れた。
ノヴァが掲げた右手から氷塊が生まれ、エクスデスへと殺到する――が。
「な、何ッ!?」
氷の大河はエクスデスへと到達する前に次から次へと溶解していく。
かろうじて目標へと辿り着いた氷の刃はしかし、暗黒魔道士が何気なく振った杖に砕かれた。
「ま、魔法が弱まっている……? くそっ、だったらこいつだ!」
「馬鹿、止せッ!」
なおもノヴァは諦めることなくエクスデスへと挑む気らしい。察したバッツが止めようと走る。
だが遅い――バッツの視線の先、ノヴァの向こうのエクスデスの貌ははっきりと笑みの形を刻んでいた。
「武器を奪おうと関係ない! 闘気を剣にする僕のこの力なら……!」
ノヴァの何も握らない手に輝きが集う。
光は剣の形に伸びていき、神々しささえ漂わせる。
(魔法剣……違う! チャクラを剣にしたのか!)
バッツの知るどのジョブにもその技はない。強いて言うなら体内の気を活性化させるモンクのアビリティ、チャクラが近い。
だが体内に気を巡らせるのと、体外に形を固定するのとでは技の難度は段違いだ。少なくとも今のバッツにそんな芸当は出来ない。
驚愕するバッツをよそに、ノヴァは跳躍した。
「ノーザン・グラン・ブレードッ! くらえェェ――――ッ!」
天より降り注ぐ極十字の闘気剣。
一瞬の閃光のようにノヴァの闘気が膨れ上がり、飛竜すら両断できそうなほどの巨大な刃となる。
両手持ちのフレア剣にすら匹敵するかと思わせるほどの一撃が、エクスデスを強襲した。
6
:
◆egOgs3EjF.
:2010/07/16(金) 23:25:00 ID:jlUM6g5E0
「やったか!?」
思わず拳を握り締める。
歴戦の戦士バッツをして、今の一撃はそれほどに見事なものだった。
だが。
「……遅いな」
届かない。
どうしようもなく、エクスデスには届かない。
パチン、と指を弾く一刹那。
ノヴァの全霊を振り絞った闘気剣がエクスデスを断ち斬るより先に、その軽い音が鳴り響いた。
そしてパンと何かが爆ぜる音が続く。
「ファファファ……!」
ノヴァの必殺技はエクスデスの真横の地面を深く貫いていた。
バッツの見立てどおりその威力は大したものだ。まるで地割れでも起きたかのような破壊痕。
しかし、ではそれほどの腕を持つノヴァがなぜ狙いを外したか――疑問に顔を上げたバッツの目に、すぐさま答えが飛び込んできた。
「ノヴァ――――――――ッ!!」
ダイという少年の悲痛な叫びが響き渡る。
『北の勇者』ノヴァの、幼さを残した顔が、首から上が、きれいになくなっていた。
代わりにそこにあるのは真紅の噴水。
ノヴァの頚部から噴出する血のシャワーが、エクスデスの白い鎧とノヴァ自身とを真っ赤に染める。
その光景は、ノヴァに続いて我もとエクスデスに詰め寄ろうとしていた者たちの足を止めるには十分だった。
「さて……この場で私に逆らうことの愚かしさはわかってもらえたと思う。
諸君、首元を見たまえ。それは特別製の首輪でな……私の意志一つで自由に起爆させられるという訳だ」
バッツだけでなくそこにいたすべての人間が己が首に手をやり絶句する。
冷たい金属質の首輪がそこにある。
まるで、そう、狗の首輪だ。
逆らうことを許さない絶対のくびき。人の尊厳を奪い奴隷へと貶めるもの。
7
:
◆egOgs3EjF.
:2010/07/16(金) 23:25:50 ID:jlUM6g5E0
「今から貴様らには殺し合いをしてもらう。
最後に生き残ったただ一人の勇者には望むものを与えよう……我が無の力は万能であるがゆえに!」
暗黒魔道士は大きく手を広げ、その腕にすべてを包み込むように叫ぶ。
「さあ行くがいい、兵どもよ! 貴様らのあがきを、特等席で見物するとしよう!!」
そして、指を立て切り裂くように振り抜く。
その瞬間、バッツだけでなくすべての人間の足元に次元の渦が発生し、その体を呑み込んでいく。
「これは……デジョンか!」
「安心したまえ、害はない。戦場へと移動してもらうだけだ。ただ殺し合わせるだけではつまらんのでな。
友と離れ、命を狙う敵を前にして貴様らはどうするのか。フフフ……ファファファ――――――!!」
転送魔法が、50数名の人間をそれぞれどこか違う場所へと転移させていく。
すでに腰まで沈んでいたバッツは脱出は不可能と判断し、最後にこれだけはと声の限りに叫んだ。
「エクスデス! 俺が必ずお前を止める!
お前が甦るのなら何度でも、何度でも――絶対にだッ!」
肩が沈み、声が出せなくなっても指を突きつける。
エクスデスの喉元へと必ず喰らいつく――その決意を込めて。
とぷっ、と水面に落ちたようにバッツ・クラウザーの姿が消える。
その叫びを受けたエクスデスは――
「……ならば戦い、最後の一人となるまで勝ち残るがいい、クリスタルの戦士よ。それならば私が相手になろう。
だがな。この場に集った剣者たちは、たとえ貴様といえども容易い相手ではないぞ……」
ファファファ、と哄笑を残し、ホールの灯りが落ちる。
静寂の帳が落ち、絶望の宴の幕が開く――
【ノヴァ@ダイの大冒険 死亡】
【バトルロワイアル 開始】
・転移した先に武器とデイパックがあり、名簿・基本支給品・個別支給品が入っています。
・名簿にルールが記されています。
8
:
◆egOgs3EjF.
:2010/07/16(金) 23:26:54 ID:jlUM6g5E0
以上です
9
:
名無しさん
:2010/07/16(金) 23:37:52 ID:qC8d9n3s0
投下乙です!
ようやくOPが来たか!
10
:
◆I2ss/4dt7o
:2010/07/18(日) 23:35:18 ID:8e7uByJI0
最後にさる
投下終了ーしえんありー
おまけ
ttp://pc.gban.jp/img/21389.jpg
11
:
名無しさん
:2010/07/19(月) 15:13:06 ID:iDmammL.0
地図
ttp://www1.axfc.net/uploader/Sc/link.pl?dr=2165480678&file=Sc_135425.jpg
12
:
名無しさん
:2010/07/19(月) 15:14:18 ID:iDmammL.0
ビューアで見れないか
じゃあこっち
ttp://www.dotup.org/uploda/www.dotup.org1037300.jpg
13
:
ファンタジー剣士ロワOP案
◆Mc3Jr5CTis
:2010/07/19(月) 20:33:47 ID:oakNg4oo0
放送案投下します
14
:
ファンタジー剣士ロワOP案
◆Mc3Jr5CTis
:2010/07/19(月) 20:34:21 ID:oakNg4oo0
耳を叩く濁流の音。
不規則に、伏した身体を揺らす力強い水のうねり。
自己を取り巻く環境の、異変を察して志葉丈瑠は目を覚ます。
開いたばかりの眼にまず映るのは、奇妙に薄暗い朱の光。
夕暮れともまた違う、まるで血のような色素に包まれた世界に、丈瑠は存在していた。
足下にあるのは、太い丸太で組まれた巨大な筏。
その百メートル四方はあろうかという大きな筏を、時代遅れのぼろぼろの帆船が幾本もの太いロープで繋いで曳航していた。
周りでは、丈瑠と同じように目覚めたばかりの人々が辺りを見回している。
その全員の首に、銀色に鈍く輝くリングが装着されているのが妙に目に留まる。
それはもちろん、丈瑠の首にも装着されており……
「ここは、一体……」
見覚えのない周囲の様子に丈瑠が疑問の声を発すると、背後から低い男性の声がそれに応えた。
「ここは、三途の川だ」
聞き覚えのある声に、丈瑠は素早く振り向いて身構える。
「腑破十蔵ッ!!」
そこに居たのは、かつて丈瑠と幾度もの死闘を繰り広げたはぐれ外道、腑破十蔵であった。
構えた瞬間、自らの愛刀シンケンマルを腰に帯びていない事に気付いた丈瑠ではあったが、どうやら十蔵もその身に
寸鉄帯びていない様子。
どういう事かと訝りながらも、今は人の姿を取った男に仔細を訪ねる。
「三途の川だと……? 生きた人間は、この場所に来る事は出来ないと聞いていたが……俺は死んだのか?」
この男との斬り合いの果て、辿りついた所がこの場所だというのか。
志葉家当主の影たるその役目を解かれた今、丈瑠にやるべき事はなくなっていた。
流ノ介を初めとする家臣たちを騙していた事をちゃんと謝れなかった事が心残りではあったが、侍戦隊はようやく
その真の姿を取り戻したのだ。
姫という真の主の元、その務めを果たして欲しいと丈瑠は思う。
「勘違いをするな。俺とお前の決着は、未だ着いてはいない。
……俺も、気付いたらここにいた。仔細は判らん。だが――
そら、説明してくれそうな奴がおいでなすったぞ」
野性味あふれる野武士めいた風貌が、ぐっと上方を見上げる。
釣られて同じ方向を見上げた丈瑠の瞳に、帆船の船尾に姿を現した仇敵の姿が映った。
「血祭ドウコク……ッ!」
呻くように、丈瑠が呟く。圧倒的な力で叩き潰された記憶が蘇る。
血祭ドウコクという名の通り、血を浴びたような真紅の色合いに染まった物々しい意匠の鎧を身に着けた、この荒武者
こそ丈瑠たちシンケンジャーの敵である外道衆の総大将である。
右手には青龍刀の如き幅広の刀、昇竜抜山刀を担ぎあげ、左手には酒をなみなみと注がれた大きな杯を掲げたその男は、
妖しく発光する複眼で眼下の人間たちを睨め付けると、その巨体に似つかわしい大音声を張り上げた。
15
:
ファンタジー剣士ロワOP案
◆Mc3Jr5CTis
:2010/07/19(月) 20:35:02 ID:oakNg4oo0
「お前らああああああっ! よく集まったなあああああああぁ!
てめえらにはこれから、最後の一人になるまで殺し合いをして貰うっっ!!
存分に斬り合い、殺し合えぃっ!!」
一息も継がずに、言い切った。
その傍若無人な言葉の前に、筏の上に居並ぶ人々は言葉もない。
この状況を説明しようだの、その意図を語ろうなどというつもりは欠片も感じさせない態度であった。
それだけ言うと用は済んだと思ったのか、戻ろうとするドウコクを傍らに控えた骨のシタリが引き留める。
「お、お待ちよドウコク。それだけじゃ、判らないだろう?
ルールだとか、ちゃんと色々教えないと……」
「面倒くせぇ。お前が説明しとけ」
説明役をシタリに押し付けると、ドウコクはその場に座り込み、杯を呷りはじめる。
その様子から、もう喋るつもりはなさそうだとシタリは思い、渋々説明役を替わろうと進み出た。
「お待ちください。御大将に、御老体。その役、よろしければこの私が承りましょう」
が、それを一人の怜悧な印象を持つ、銀髪の男が遮った。
丈瑠には見覚えのない、外道衆とも思えぬ人の姿をした優男だったが、その姿を見た瞬間、傍にいた桜色の着物に
緋の袴といった、大正時代のような和装をした少女が声を上げた。
「おまえは……葵叉丹!! あの時、確かに倒したはずのあなたが、なぜ!?」
「フフフ……真宮寺さくらか。貴様らに敗れ、三途の川を漂っていた私を御大将が拾ってくれてな。
こうして再び貴様らと相見える事が出来たというわけだ」
顔見知りらしき少女とやり取りをかわす叉丹と呼ばれた男に、シタリは道を譲る。
確かに、この男ならば適役だろうと考えて。
隙間を通ってこの世とあの世を行き来する、外道衆の能力を更にさまざまな世界へと繋げる事が出来たのは
この男の齎したさまざまな技術や魔術のおかげなのだから。
そう、参加者たちの首に光る、金属製のリングを考案したのも、また――
「それでは、先ほどの御大将の言葉を補足させて貰う。
これから様々な世界から選りすぐった貴様ら剣士五十三名を、三途の川の中州へと解き放つ。
貴様たちは、その島で最後の一人となるまでお互いに殺し合って貰う。
島は、一定時間が過ぎる毎に水位が上がり、移動範囲が狭まっていく。
また、この空間では外道に堕ちれば堕ちるほど、貴様ら剣士たちの力は増していく。
つまりだ。のっけから広い島に散在する参加者たちを、各個撃破する事で貴様らの力は上がっていき
殺し合いを有利に進める事が出来るというわけだ。
時間がたてば、生き残った参加者たちは隠れる事も出来ずに島の中央部へと追いやられていくのだから、
下手に殺し合いに抗おうなどとは思わず、なるべく序盤の内に力をつけておく事を薦めておこう」
「誰が、おまえたちの言う事なんてっ!!」
「待つんだ、さくらくん!」
激昂し、食ってかかろうとする桜色の乙女を、傍らの男が押し止める。
正しい判断だと、丈瑠も思う。
なんの装備もない今、あの驚異的な力を誇る血祭ドウコクに立ち向かうのは不可能だ。
ましてやここは敵の本拠地とも言える三途の川。
なんとか機を窺い、脱出するより他にはない。
16
:
ファンタジー剣士ロワOP案
◆Mc3Jr5CTis
:2010/07/19(月) 20:35:53 ID:oakNg4oo0
だが、そこに乙女の考えに同調する、毅然とした声が響いた。
「そうだ。そのような言葉を聞く必要はない!」
聞く者の心を鼓舞するかのような、力強い少女の声がその場の空気を染め変える。
と同時に、どこからともなく聞こえてくる、重厚な陣太鼓の音が鳴り響いた。
白色の陣幕が筏の上に張り巡り、志葉家の家紋が染め抜かれたのぼりが立つ。
その声を聞き、まさか――と、丈瑠は思う。
まさか、姫までもが、この場に連れて来られたのかと。
声の主を包み隠していた陣幕が引き、その中から現れたのは白を基調とした上質な着物に身を包んだ年端もいかぬ少女の姿。
どこか凛とした気品を漂わせるこの少女こそ、本物の――
「ショドウフォンッ!」
姫の指示で、どこからともなく現れた黒子が、筆型の携帯端末を差し出した。
「一筆奏上! ハァッ!!」
超然とした掛け声とともに、見事な筆致で書かれた火という文字が中空に踊る。
文字が反転し、少女の全身が「火」のモヂカラに包まれると、そこには真紅のスーツを纏った一人の戦士が立っていた。
漢字をモチーフとしたゴーグルの形は火。
身体に張り付き、僅かに盛り上がったスーツの胸元が、この凛々しい戦士が先ほどの少女である事を示していた。
これが変身。
これが天下御免の侍戦隊、シンケンジャー。その頂点に立つ真の志葉家十八代目当主――
「シンケンレッド! 志葉 薫!!」
黒子が用意したシンケンマルを構え、この場に集う全ての者どもに対し、挑むように名乗りを上げた。
その立ち居振る舞いには、一分の隙もない。
まさにシンケンレッドを名乗って何の不足もない、珠玉の才。
だが、長年影武者として一人で戦い続けてきた丈瑠の経験が警鐘を鳴らす。
姫をこのまま一人行かせてはならないと。
「姫ッ!」
諌める意図を持って、呼びかける。
が、シンケンレッドへと転じた少女は、まかせよとでも言うかのように丈瑠に頷くと
「参る」
告げて、炎が燃え移るかのように鮮やかに、ロープの上へと飛び乗った。
奔る。
筏と船を繋ぐ、張り詰めたロープの上を軽業師の如く一瞬で渡り切ると、シンケンマルをその場の葵叉丹へと叩きつける。
腰間の光刀無形を引き抜き、その一撃を間一髪受け止めた叉丹ではあったが、助走混じりの一撃は重く、後方へと体が流れる。
一瞬の間の出来事にシタリは慌てふためき距離を取り、ドウコクは杯を床に叩きつけて立ちあがる。
17
:
ファンタジー剣士ロワOP案
◆Mc3Jr5CTis
:2010/07/19(月) 20:36:44 ID:oakNg4oo0
「やはり、貴様が来たかっ! 志葉の小娘がぁっ!」
主催者たる三者に生じた一瞬の隙を突き、シンケンレッドは刀にインロウマルを装着する。
全ての折神の力を宿した「真」のモヂカラの力により、陣羽織を纏ったスーパーシンケンレッドとドウコクの太刀が激突した。
ただ振るうだけで火のモヂカラを纏い、鮮やかな赤の剣閃を描くスーパーシンケンレッドの華麗な太刀捌き。
だが、それでもドウコクの剛剣には抗しえないのか、軽く剣を合わせるとすぐさま後方へと飛び退いた。
「てめえら手ェ出すんじゃねえぞ! この小娘は俺がやる!」
そこへ追撃を仕掛けようとしたシタリと叉丹の両名を、猛り狂うドウコクの警句が止める。
次いで口から衝撃波を――
出そうとした所へ、逆に炎の乱舞が襲い来る。
炎のモヂカラを斬撃に乗せて放つ、この技を使うためにレッドはドウコクの攻撃を軽くいなし、後ろへと退いて見せたのだ。
真・火炎の舞をまともに受けて仰け反ったドウコクが、次に見たのは宙に紅く輝く「門」構えのモヂカラであった。
「血祭ドウコクッ! 今こそ、貴様を討つ!!」
シンケンマルを右手に。
ショドウフォンを左手に構えたレッドが、渾身の力を込めて書いた、このモジカラこそ志葉家当主のみが使える
ドウコク封印のためのモヂカラの一部。
「――ッ!? いけないよ、ドウコク。あれを完成させては!」
その事に気付いたか、骨のシタリがドウコクに注意を促した。
それに応え、先ほど止め掛けた衝撃波を今度こそ口から放つ。
ドウコクの目前の空気が歪むように振動し、レッドの元へと殺到する。
「烈火大斬刀ッ! ハア!」
シンケンマルを巨大な大斬刀へと変化させ、それを床に深々と突き立てる事で、即席の盾とする。
瞬間、ニトログリセリンでも使ったかのような大爆発が、その場で発生した。
爆風に陣羽織がなびく。
華奢な身体を吹き飛ばされそうになりながらも、烈火大斬刀の影の中で、レッドは先ほど書いた門構えの中に
「悪」の変体仮名を書き込んだ。
「させるかよぉおおおっ!!」
昇竜抜山刀を振り回しながら、ドウコクの巨体が突撃する。
迎え撃つレッドは烈火大斬刀を蹴り上げる事で、刃の突き刺さった床を切り裂きながら、引き抜いた。
地中から擦りあげるように迫り来るレッドの斬撃。
それを受け止めた昇竜抜山刀と烈火大斬刀とが重なりあい、火花が散る様な鍔迫り合いとなる。
両者ともに、引く様子は見えない。
目と鼻の先で睨みあう。
ドウコクは封印のモヂカラの完成を止めねばならないし、レッドはそれをなんとしても完成させねばならない。
何百年も続いてきた侍と外道衆の因縁の戦い。
その頂点同士の決着が、今、ここにつこうとしていた。
「おおおおおおっ!」
「くぅっ!」
力比べでは、やはりドウコクに軍配が上がった。
一瞬でも拮抗出来た事が奇跡だったのか、小柄なレッドが押しつぶされて膝を着く。
が、そのゴーグルは未だ勝利を諦めないかのように上を向き、ドウコクの殺意に抗い続ける。
その意思ごと叩き切ろうとドウコクの刀に更に力が籠り――
18
:
ファンタジー剣士ロワOP案
◆Mc3Jr5CTis
:2010/07/19(月) 20:37:34 ID:oakNg4oo0
瞬間、抵抗を続けていた大斬刀から力が抜け、昇竜抜山刀が刃の上を滑った。
巧妙に変わった力の流れに戸惑うように、ドウコクがたたらを踏み、そこに隙が生まれる。
巨刀から小さなシンケンマルへと戻った刀が、ドウコクの鎧を一合、二合と切りつける。
刀に込められた火の力が、ドウコクを鎧ごと切り裂いて爆発を起こす。
「グッ、し、しまったッ!!」
もはや、剣が届かぬ間合いにまでドウコクを押し戻したレッドが、最後に「炎」の封印のモヂカラを――
「なあーんて、な」
発動させようとした時、ドウコクが緩慢に振った一撃が、その発動を阻んだ。
それは、その場に居並んだ英雄、剣豪たちの眼を持ってしても理解しがたい光景だった。
まるで力なく適当に振られた斬撃が、届くはずもない距離から行われた攻撃が、
スーパーシンケンレッドの首を、一撃のもとに刎ねていたのだった。
「ひ、姫ェェェーーーーーー!!」
誰かの絶叫が耳をつんざく。
それが自分の声なのかどうかすら、丈瑠にはわからなかった。
刎ねられた首から、大量の血が噴水のように飛び出てドウコクの鎧を更に朱に染める。
宿敵の一族、その最後の一人の血を心地よく浴びながら、ドウコクは満足げに哄笑していた。
強大な火のモジカラを宿していた、書きかけの封印のモヂカラが消滅し、同時にシンケンレッドの変身も解ける。
たった十四歳で、その短い生涯を終えることとなってしまった少女の首が、三途の川にぽちゃりと落ちた。
何が起きたのかも、わからぬままに。
ドゥと倒れた少女が握っていたショドウフォンが、床に叩きつけられてバウンドした勢いで船から落ちて丈瑠の
元へと転がってきた。
その血に塗れた遺品を手にして、丈瑠はゆっくりと理解する。
ここに、彼が生涯を懸けて守ろうとしていた志葉家の家系が途絶えた事を。
◇
19
:
ファンタジー剣士ロワOP案
◆Mc3Jr5CTis
:2010/07/19(月) 20:38:06 ID:oakNg4oo0
「……さて、御理解いただけたかな?
貴様たちに、反撃の機会など存在しない事が」
まるで何事もなかったかのように、騒動が起こる直前のままの口調で叉丹が説明を再開する。
「そう、気付いている者もいると思うが、先ほどの御大将の攻撃は、貴様らの首に嵌められたその首輪の機能を使ったのだ。
……御大将、よろしいですか?」
「応」
宿敵を倒し、どっしりと座りこんで祝い酒を呷っていたドウコクが、叉丹の声に答えて僅かに剣を引く。
すると、その場の全員の首に痛みが走り、一筋の血が垂れ落ちる。
理屈は判らないが、ドウコクの剣とこの首輪が繋がっており、逆らえば一刀でこの場全員の首が飛ぶ事を全ての剣士が理解する。
「島から逃げようとすれば、切る。
首輪を外そうとしても、切る。
死にたくなければ、全ての参加者たちを斬り殺し、このゲームに優勝する事だ。
改めて言うまでもないが、生き残れるのは一人だけ。
恋人、友人でも迷わず切れ。外道に堕ちれば、堕ちただけ優勝の可能性は跳ね上がる」
さきほど自分に反抗した二人を昏い眼で見やりながら、叉丹は淡々と説明を続ける。
自らの発言に端を発した凄惨な出来事に青褪めていた少女は、声もない。
傍らの男が少女を勇気づけるように、ぐっと肩を抱き締めた。
「さて、後は……六時間毎に死亡者の通知を放送で行う。
聞き逃さないように注意しろ。
島の水位が上がるのも、だいたいその頃だ。
その時間になったら水辺から離れよ。三途の川に触れたものは、逃亡の意思ありと見做して首を刎ねる。
……説明は、だいたいこんなところだろうか」
全ての説明を終えた叉丹が言葉を切り、その場に静寂が戻る。
「……待て」
鋭い男の声が、その静寂を裂くように響いた。
傍らより響いたその声の主は、はぐれ外道腑破十蔵。
「斬り合う事には何の異存もない。いずれ劣らぬ剣豪揃いだと言うなら、むしろ望む所よ。
だが、剣はどうした?
我が愛刀、裏正はちゃんと返して貰えるんだろうな?」
斬り合いを肯定する声に、彼の周囲の人々は息を呑む。
参加者の中に主催側の言葉を肯定する者が出た事で、本当に殺し合いが始まるという事を実感したのだ。
20
:
ファンタジー剣士ロワOP案
◆Mc3Jr5CTis
:2010/07/19(月) 20:38:52 ID:oakNg4oo0
「おお、これは失礼。
剣はもちろん支給される。だが、それが貴様らの望む剣、扱いやすい剣であるかどうかは我々は感知せぬ。
良い剣が欲しいのであれば、それを持つものから奪い取ればいい。
その意味でも、早々と殺し合いに乗る事は得策だと言えるだろう。
なお、剣と一緒に細々とした物を入れる袋も支給しよう。
鎧や、殺し合いに役立つさまざまな道具、殺し合いに参加する者たちの名前の載った名簿、食糧などが入っているはずだ」
支給品に関する事を説明しおえ、今度こそ説明が終わった事を確認すると叉丹は退く。
変わりにドウコクが立ちあがると、大号令を発した。
「それでは、これより参加者五十二名による殺し合いを始める。
者ども、存分に愉しめ!!」
参加者たちの首筋を、ちくりとした痛みが走ると眠気が襲う。
次にこの眠りから覚めた時、そこは地獄の底であろう事を皆は確信しながら、抗えぬ眠りへと落ちていった……。
【志葉薫@侍戦隊シンケンジャー 死亡】
【残り52名】
【主催者 血祭ドウコク@侍戦隊シンケンジャー】
【主催者 骨のシタリ@侍戦隊シンケンジャー】
【主催者 葵叉丹@サクラ大戦】
【ファンタジー剣士バトルロワイヤル 開幕】
21
:
ファンタジー剣士ロワOP案
◆Mc3Jr5CTis
:2010/07/19(月) 20:39:26 ID:oakNg4oo0
以上です
22
:
名無しさん
:2010/07/19(月) 21:45:25 ID:FikpIDqU0
最後にさるった
代理投下終了です
この三人が主催か。そして見せしめが姫とか丈瑠がカワイソスw
ルール説明が丁寧で心理描写もよく出来てていいなぁ
23
:
OP
◆Wf0eUCE.vg
:2010/07/19(月) 22:02:49 ID:2DAAdEgg0
私もOP投下しまふ
24
:
OP
◆Wf0eUCE.vg
:2010/07/19(月) 22:03:47 ID:2DAAdEgg0
「よくぞ集まった、三千世界に名を轟かす偉大なる剣士たちよ。
私は大神官ハーゴン。君らはこれより、鍛え上げたその腕を振るい、己が最強を存分に証明するがいい」
始まりは謳うような言葉だった。
セフィロスとの決着つけハイウィンドで帰還する途中、何時の間に眠っていたのか。
意識を取り戻し目を覚ました場所は、巨大な祭壇の上だった。
体を動かそうとするが、両腕両足は手錠のような何かで拘束されて思うように身動きが取れない。
それでも、足の拘束は若干の余裕があるようなので、立ち上がるだけならば支障はなさそうだ。
うまく身をよじり立ち上がると、辺りを見渡す。
辺りは暗く、頼りは祭壇の四方に灯された心許なく揺らめく松明の紅い灯のみである。
祭壇の各所には髑髏が配され、まるで悪魔信仰を掲げる黒魔術の儀式台のようにも思える。
その周囲には詳細こそわからないが、幾多の人影が見える。
そして、おどろおどろしい祭壇の中心には先ほどの言葉を放った大神官を名乗る男が両腕を広げている。
「突然の事態で混乱しているものも少なからずいるだろう。
君たちには私の儀式に少し協力してもらいたいだけだ。なに、やることは簡単だ先ほども言った通り、ただ己が最強を証明してもらえばいい。
端的にいえば、他のすべてを皆殺しにし、ただ一人となるまで殺し合うのだ!」
殺し合い不穏な、いや、あるいはこの悪魔じみた祭壇にふさわしい言葉。
ざわめきの走る群衆。
その中から、一人の蒼い青年が叫んだ。
「儀式だと!? ハーゴン! …………貴様っ。貴様はまた、あの破壊神を蘇らせるつもりかっ!?」
叫びをあげた青年の顔を見て、ハーゴンはニヤリと口の端を釣り上げた。
懐かしい友に出会ったように、あるいは憎むべき仇敵に出会ったように。
「破壊神? それは違うなぁロラン。
貴様に破壊される程度の破壊神など我が信仰には足りえぬ。
私が求めるのは破壊神を超えた究極の神だ」
「究極の、神?」
「そう、神だ!
戦いという名の祈りを捧げよ。生という名の渇望を捧げよ。死という名の絶望を捧げよ。そして全ての生と死を捧げよ。
貴様らの全ては神を召喚せしめる贄となるのだ!」
「貴様…………ッ」
ギリッと、青年が砕ける強さで奥歯をかみしめる。
「おっと。いらぬ動きはせぬ方がよいぞ、ロラン。他のものも同じく、抵抗など無意味だ」
ハーゴンは言う。
確かに、武器は奪われている上、拘束されている状況ではどうしようもない。
だが、完全に動きを封じられているわけではない。
戦おうと思えば素手で戦えるものもいるだろう。
だというのに、あのハーゴンの確信にも似た自信はどこから来るのか。
25
:
OP
◆Wf0eUCE.vg
:2010/07/19(月) 22:04:25 ID:2DAAdEgg0
「おい、ジジイ」
冷やかな声がした。
蒼い青年のものではない。
ハーゴンのものでもない。
「お前らの話なんぞ、どうでもいいし、どういうPSIでこの俺を連れてきたかは知らないが。
俺はこれでもいろいろと忙しいんだよ、さっさと帰せよ死にたくなければ」
声の方向にいたのは、奇妙なカブトを被った黒衣の男だった。
まるで、触れるものすべてを切り裂く刃の様な男だ。
その視線を真正面から受けながらも、ハーゴンの余裕は崩れない。
「おや? 話を聞いていなかったのかな?
元の世界に戻りたくば、最後の一人になるまで殺しあえと言ったはずだが。
そして貴様に私を殺すことはできない。絶対にな」
ワザとらしく見下すようなハーゴンの言葉。
男はその言葉を受けてハッ、と吐き捨てるように笑う。
「いいなお前、面白いよ」
パキン。という音。
見れば、男の手の中には有るはずのない刀が握られており、その刃が両腕両足を封じる拘束をり裂いていた。
「――――特に、こんな程度で俺を封じたと、本気で思ってるところが」
そう言った男が尋常ではない速度で動く。
その身のこなしは人のものとは思えない。
「そんなに欲しけりゃお前が味わえよ、絶望ってやつを」
漆黒の男が剣を振りかぶった。
彼我の距離は約二十メートル。
どう見ても剣の間合いではない。
だが、そんなことは知らぬと、男は横薙ぎに刀を振り抜いた。
それと同時に、男の手にした刀身が、ズルリと伸びた。
伸びた刃は、そのまま祭壇に構える男の首を狩らんと、"その軌跡にいた群衆を切り裂きながら"、一直線に伸びる。
その一撃をハーゴンは見た目にそぐわぬ素早い動きで悠々と躱した。
対照的に、突然、斬撃を打ち込まれた、群衆たちは様々だった。
不意打ちじみた一撃に反応した数名は拘束されながらも身を躱した。
だが反応の遅れた数名は、その首を地面へと落とした。
………………。
おい。
死んだぞ。
人が死んだぞ。
物のついでのように、人が、死んだぞ。
その事実を気にかけるでもなく、
周りの被害など気にせずに、黒衣の男は戦いを続け、返す刃で再度ハーゴンを切りつけた。
祭壇ごと切り落とす勢いで振り抜かれたその余波で、また、誰かの悲鳴が聞こえた。
血の臭いがひどい。
阿鼻驚嘆の地獄だった。
26
:
OP
◆Wf0eUCE.vg
:2010/07/19(月) 22:05:25 ID:2DAAdEgg0
「ちっ。かったりィな。さっさと死ねよ、お前」
思うように攻撃が当たらない苛立ちに舌を打つと、男の手の刀が消える。
戦意を無くしたのか、などと思うものはいない。
その表情から、男が諦めたのではない事は誰の目にもわかった。
「――――――毘沙門・叢」
次の瞬間、出現する。
刀。
刀。
刀。
刀。刀。刀。
刀刀刀刀刀。
刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀。
刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀。
刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀。
刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀。
刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀。
宙に浮かぶは、視界を埋め尽くすほどに敷き詰められた、無数の刀。
何のことはない、男が攻め手を単体攻撃から範囲攻撃に切り替えただけの話だ。
この無数の刀をどう使うつもりかは知らないが、こんなもの使われたら被害はこれまでの比ではないことくらいはたやすく理解できる。
そしてこの男はそんなことを歯牙にもかけないということも、この場にいる誰もが嫌というほど理解していた。
そう、祭壇に佇む大神官も含めて。
ここにきて初めてハーゴンがその表情から余裕というものを消した。
「やれやれ。多少の戯れであれば目をつむってやってもよかったのだが。さすがにおいたがすぎるな。
これ以上無駄に駒を減らされては困る。多少惜しいかしかたあるまい」
僅かに口惜しそうなハーゴンの声。
応えるように宙に浮かんだ刀が震え、泣き声のような音を放つ。
「―――――死ね」
指揮者のように男が全てに破壊をもたらす合図を送る
中に浮かぶ刀たちの振動は頂点まで極まり、
次の瞬間”攻撃をした黒衣の男の首が”天高くへと吹き飛んだ。
ボトリと、首が地面に落ちて、中に浮かんだ無数の刀は光の粒子になってかき消える。
僅かに遅れ、残されたからだが力なく横たわる。
「諸君。見ての通りだ、理解できたかな?
何度も言うように抵抗は無意味だ、君たちの命は文字通り私の手中にある。
私の意思一つで君たちの首はこのように、体と泣き分かれることになるのだ」
ハーゴンの自信の理由がこれだった。
奴は本当にこの場にいる人間すべての命を握る仕掛けを打ってあったのだ。
27
:
OP
◆Wf0eUCE.vg
:2010/07/19(月) 22:06:24 ID:2DAAdEgg0
「さて、それよりもルール説明が途中だったか、続きを始めるとしようか、」
「待て! 怪我人がいる、早く治療しないと、このままでは死んでしまう」
勇敢にも赤髪の少女騎士が声を上げた。
声の方を見れば、少女の足共には片腕を失い痛みに喘いでいる男の影があった。
それを見てハーゴンは思案するように顎に手を当てた。
「ふむ。確かに、今の些事で負傷したものも少なからずおるようだな。
確かに、開始前からいらぬハンデを抱えての戦いなど不平等。私もそのまま戦えなど酷なことは言わん」
そう言って慈悲深く大神官が笑う。
ゾッとするような冷たい笑みだった。
「よかろう。特別に負傷者には我が神の名のもとに救済を与えよう」
大神官が救いを下す。
次の瞬間、腕を失い呻きをあげていた男の首が吹き飛んだ。
「…………あ…………っ」
「さあ。これで”負傷者”はいないな?
他にいれば今のうちに言っておけ、同じく救いをくれてやろう」
返り血を浴びた少女は言葉を失い。
その光景に他の誰も何も言わない。
その様子に満足したのか。
ハーゴンは周囲を見渡し転がる死体を数え始めた。
「ひい、ふう、みい……ふむ。これで合わせて十名ほど駒が減ってしまったか。
まあよい。あんな程度の一撃にも反応できぬ雑魚が消えたと思えば、むしろ好都合。
足りぬ人数は新たに見繕うとしよう」
「この儀式では、6時間毎に放送を行う。
そこでは、連絡事項とその間に脱落した死者を発表、そして追加ルールの発表を行う。
そのルールに従わぬものはそいらに転がるモノどもと同じ末路をたどることになるが、心配するな。
そんなに難しいルールを追加するつもりはない、当面はな」
「舞台はここではなくとある小島を用意した。
貴様らを縛る拘束は舞台に着けばすぐにとこう。
そして貴様らの持っていた武器はすでに全て没収済みだが、没収物は後で支給品としてランダムに武器を配布する、その中に、貴様らの愛刀が含まれているだろう。
地図と名簿も全員に支給予定だが、名簿に関しては若干の修正が必要になったのでな、追加分は第一放送で発表することにしよう」
「終了条件は舞台上の生存者が一人になること。優勝者には我が神がどのような願いでも聞き遂げてくれるであろう!」
「さあ、ルールは以上だ。次に目が覚めたときは会場となる舞台の上だろう。
三千世界より集まりし剣士たちよ。その力を存分に振るい己が最強を証明するがいい」
大神官が始まりの言葉を繰り返す。
その声を聞きながら、オレの意識は再び闇に落ちた。
【ジュナス@PSYREN -サイレン- 死亡】
【残り42名 + 10名】
【主催者 ハーゴン@ドラゴンクエストⅡ】
【ファンタジー剣士バトルロワイヤル 開幕】
ジュナスを含め10名ほど死亡しました。
死亡者がだれかは後続にお任せします。
28
:
OP
◆Wf0eUCE.vg
:2010/07/19(月) 22:07:25 ID:2DAAdEgg0
出れそうにないのでジュナスさん無双がしたかった。後悔はしてない。
参戦作品じゃないけど見せしめなのでありですよね、多分。
まあ一案として。
29
:
戦鬼、再び……
◆k7QIZZkXNs
:2010/07/25(日) 19:23:21 ID:N2WA4OUU
最後で規制されましたが投下終了です。
本スレで支援してくださった方、ありがとうございました。
30
:
◆Ub.tayqwkM
:2010/07/26(月) 18:28:14 ID:nHPrCFwY
サルさん規制を喰らったので、続きをこちらで投下します。
31
:
◆Ub.tayqwkM
:2010/07/26(月) 18:28:50 ID:nHPrCFwY
「ふう、もういい。興が削がれた。続きはまた今度だ」
グリフィスはそれだけ言うと、剣を納め、戦闘中断を宣言した。
「一方的だな。何のつもりだ」
「理由など一つ。邪魔が入った。そしてこの場でこれ以上やっても、新たな邪魔者も入りそうなのでは」
グリフィスはそういいながら木にもたれかかっている式に目を向ける。
才人を見つけた際に、反対側にいる式も気配で感じ取っていたのだ。
「なんだ見つかったのか。でも俺は別に横槍も漁夫の利を狙うつもりも無いんだが」
「俺の気持ちの問題だ」
それだけ言い残し、グリフィスは背を向けて森の深遠の影へと姿を消していく。
「……やれやれ、なら俺も行くよ。これ以上ここにいても仕方が無いからな」
式も戦闘が終われば用は無いとばかりに、森の影へと姿を消していく。
そしてその場に残ったのはセシリーと才人の二人のみ。
「……俺も行く。じゃあ」
「待てっ!貴様は残れ。無粋にも決闘の横槍を入れてそれで去れると思うな」
「……殺し合いは駄目だ」
時間が置かれ、少しばかり落ち着いたのか、才人は前よりも落ち着いた声でやはり自分の主張を出す。
だが、セシリーはキョトンとした表情を見せる。
「お前は何を言っているんだ。私はあいつを止めようとしただけだ。殺そうなどとしていない」
「なっ」
才人は絶句する。
自分の空気を読んでいない行動に少しばかり赤面してしまう。
「つまりお前は勘違いで無粋な行動をした間男というわけだ」
「………………」
才人は思わずその場にしゃがむ。
(カッコつけて登場して間男かよ。冒頭でも俺カッコ良いって感じのモノローグ入ってるのに………シリアス路線で
登場したのに………間男って!)
「うわああああぁぁぁぁぁっっっ!!!」
思わず、自分の空回りと恥ずかしさに叫んでしまう。
過去の厨二病的行動を思い出してのた打ち回るような感じで叫ぶ男の姿がそこにはあった。
32
:
◆Ub.tayqwkM
:2010/07/26(月) 18:29:30 ID:nHPrCFwY
【F-5 森林 中部 一日目 深夜】
【セシリー・キャンベル@聖剣の刀鍛冶】
【状態】少しの疲労
【装備】エクスカリバー@Fate/stay night
【道具】支給品一式 ランダムアイテム(個数内容ともに不明)
【思考】基本:殺し合いをとめる。
1:何だこの間男(平賀才人)は?
2:グリフィスと決着をつける。
【平賀才人@ゼロの使い魔】
【状態】健康
【装備】剣(現時点での詳細は不明)
【道具】支給品一式 ランダムアイテム(個数内容ともに不明)
【思考】基本:殺し合いを止める
1:やべえ、恥ずかしい
2:殺し合いを阻止する方法を考える。
[備考]
登場時期は7巻で死亡後、蘇生される直後
ただし、ガンダールヴの刻印は継続されています。
【F-5 森林 北部 一日目 深夜】
【グリフィス@ベルセルク】
【状態】少しの疲労
【装備】ロングソード@ファイナルファンタジーⅤ
【道具】支給品 ランダムアイテム(個数内容ともに不明)
【思考】基本:ガッツを俺の物にする。
1:ガッツを見つける。
2:ガッツと闘い、倒して俺の物にする。
[備考]
登場時期は12巻〜13巻辺りでガッツに敗北〜拷問される直前のどこか。
【F-5 森林 南部 一日目 深夜】
【両儀式@空の境界】
【状態】健康
【装備】無し
【道具】支給品 剣(詳細不明) ランダムアイテム(個数内容ともに不明)
【思考】基本:元の世界へと帰る。
1:とりあえずここから帰る方法を探す。
[備考]
登場時期は殺人考察後編
白純里緒の一件が終わり、退院する幹也を迎えに行く直前。
33
:
◆Ub.tayqwkM
:2010/07/26(月) 18:31:23 ID:nHPrCFwY
投下終了です。
何方か代理投下をしていただければ幸いです。
またwiki収録時のタイトルは
最後の悪あがき/愛情か友情か憎しみか/騎士の誇りを胸に/とある魔眼の殺人鬼
でお願いします。
34
:
◆DzuK1MKXmE
:2010/07/28(水) 20:42:09 ID:/lOfSdHQ
ミズー・ビアンカ、諫山黄泉、獅堂光、本スレ規制中なのでこちらに投下します
35
:
弦月の下で/獅子邂逅
◆DzuK1MKXmE
:2010/07/28(水) 20:43:05 ID:/lOfSdHQ
「神の剣…ね、馬鹿馬鹿しいにも程があるわ」
人の姿をした、しかし人ではない存在──。
『どのような願いも叶えましょう』
ロワと名乗ったあの女の言葉や存在は、かつてミズー・ビアンカが対峙したモノを彷彿させるのに十分だった。
ソレは人々にとっての未知の存在。人々が世界の空白を既知によって埋め尽くしたと思い込んだ時、世界の空白地帯より現れる怪物。
ミズーはその存在、未来精霊アマワと関わった事により引き起こされた数々の事件と戦いの記憶に強く歯噛みをする。
「アマワの呪縛を打ち破り、全ては終わったはずなのに──」
アマワと似て非なるロワの存在を──そして、神の剣の存在を許せなかった。
かつてこの世に存在しない伝説の鋼を、その一振りを求める都市があった。
ミズーの出自であり、自身が全てを焼き滅ぼした錬金都市イムァシア。
究極の絶対殺人武器をただひたすらに追い求めた都市の錬金術師達は、幼少のミズーを冷たい牢獄へと監禁した。
「そして、私は絶対殺人者として、徹底的に今の私にさせられた──」
ロワの語った言葉は、死してなおイムァシアの狂人達を狂喜させるに十分すぎるモノだった。
それ故に、ミズーの怒りはその総てを許せない──。
「ロワ…私はお前を必ず打ち滅ぼすッ」
神の剣の破壊を誓い、その女の名を憎々しく叫びながら唇を噛み締める。
『剣の所有者がそれを望むのならば』
──幻聴。
否、その声は確かに聞こえてきた。
『でも貴方にそれが出来るのかしら』
剣を柄に手を重ねて、問い返してくる声に、ミズーは動じずうなずく。
「然るべき時に、然るべき場所であれば、必ず──」
『ならば最後の一人になりなさい、それがこのゲームのルールよ』
その言葉を最後にロワの声は消えていった。
「──ええ、そのつもりよ」
虚空に浮かぶ弦月を見つめて頭を振る。
(でも、それは最後の手段)
マントの下で剣の柄に手をかけて。
「そう易々とお前の言葉に乗るつもりは無いのよ!」
剣の宝玉が輝き抜刀、背後の闇へと一気に斬り付ける。
──ギイィン。
金属同士がぶつかる鈍い音が響き渡った。
「あはっ、どうして気付いたの?」
「ただの感よ、不意打ちには慣れているの」
一瞬の攻防後、不敵な笑みを浮かべた両者は同時に地面を蹴り、二つの刃が空気を切り裂いた。
36
:
弦月の下で/獅子邂逅
◆DzuK1MKXmE
:2010/07/28(水) 20:46:45 ID:/lOfSdHQ
☆ ★ ☆
うっそうと生い茂る木々の合間を月明かりの煌きが照らす。
そんな薄闇の中を荒い呼吸を吐き出したまま駆ける者が居た。
真紅の外套を纏い、炎のような長髪を振り乱してミズーが疾走する。
対峙する者は、夜の闇より濃い黒髪の美少女、諫山黄泉。
「はあぁッ!!」
裂帛の気合と共に凶刃が閃き、鳴り響く轟音が周囲の大気を震撼させる。
黄泉の放った一振りの斬撃が森の木々を次々と紙屑のように薙ぎ倒していく。
「冗談じゃないわよ! 馬鹿力にしたって限度があるでしょう!」
ミズーは軽く舌打ちをすると、倒壊する木々の残骸をかわして地を転がる。
その先へ回り込んだ黄泉は、地へと水平に刃を突き立て跳躍した。
その姿を認めたミズーは迎撃は間に合わないと即座に判断するや、剣を地に突き立てた。
黄泉が飛び、二人の身体が地上で交差する。その寸前に、ミズーは立ち上がりざま、手にした剣を逆手で構え、飛来する黄泉の刃を剣腹からその先端へと受け流す。
響く鈍い金属音、と同時に黄泉の背に蹴りを放つ。が、しかし無理な体勢で放たれた技は当たらず。受け流されるままに、黄泉はミズーの後方へと飛び退いた。
「あはははっ、なかなかやるじゃない」
戦いの最中で高笑いをあげるその姿は見る者に不快感を与え。
人の世の穢れを祓う為に、超自然災害対策室のエージェントとして悪霊と戦った諫山黄泉は既にいない。
此処に居るのは殺生石の妖力を持ち、人の限界を超えた膂力で刃を振るう、自身もが悪霊となった存在であり。
そして黄泉が振るう剣は、今は失われて久しい、古の技術で造られた一刀であり、それは鋼鉄をも断つファン・ガンマ・ビゼンのニホントウだった。
(あの腕力に、あの剣、なんて厄介な組み合わせなのよ!)
もしミズーが手にした武器が普通の剣であれば、初手の一撃で剣ごと両断されていたかもしれない。
不意に走った悪寒に背筋が震える。だが、ミズーがその手に握る武器も、とある名工が若き竜の勇者の為に伝説の金属で鍛え上げた一振りだった。
(この剣に、運に命を救われた?)
不意に湧き上がる疑念に、今は目の前の敵を倒す事に集中しろと、頭を振る。
幸いな事に、剣技そのものは決して対処できないものではない。
力を使わずに技量と視力だけでどんな相手にも対抗できる、剣術の基本だった。
それでも、本来なら障害物であろう森の木々をものともしない異常な膂力の相手には、
草木や枝に剣を制限されるているミズーの不利は否めない、上に距離が掴みにくい。
(此処は不味いわね、どこか拓けた場所を……)
森林の空白地帯を探してミズーが駆け出した。そして──。
「……見えた」
地面を駆ける靴の下で、小枝を踏み折る音を立てながら、ミズーは一気に森を抜ける。
足元に広がるは若草が揺れる草原、追撃をかけようとした黄泉の足がほんの一瞬だけ止まり。
「ここなら有利に戦えるとでも思ったの」
「そうかもね」
少なくとも、邪魔な障害物で相手の剣を見失う事は、無い。
「そう、じゃあ試してみようかしらねッ!」
小細工なしで、正面から突進を駆ける黄泉の刃、その速度と重量を受けきる気にはならない。
ミズーは大きく飛び退きその斬撃をかわす、が、逃がしはしない。とばかりに黄泉は更に踏み込み、振り下ろした刃が手の内で跳ね上がる。
黄泉の放った切っ先が迫り。それに抗うのは一瞬、ミズーは空で身体を旋廻させ、手にした剣をニホントウの腹へと横からぶち当てる。
甲高い金属の音が響き、体勢を崩した二人が左右に弾き飛ばされる。
体勢を崩しながら、外套の裏に隠した短剣を、ミズーが素早く放ち。
視界に鈍色の輝きを認めた黄泉は首を捻り、短剣を避けたか見えた。
が、飛来した残光が通り過ぎた後、その頬には赤い一筋の線が走る。
(……なんて無茶苦茶な刃の軌道をするのよ!)
上段からの斬撃を腕の内で翻し、更なる下段からの突き上げを行ったその刃に、ミズーは静かに戦慄する。
黄泉が今しがた放った技は、言うなれば彼の有名な剣豪、佐々木小次郎の燕返しを力技だけで再現したようなモノだった。
とはいえ、それは黄泉自身が幼き頃から神童と呼ばれた剣の腕を持ち、殺生石で人の限界を突破していたからこそ出来る技なのだろう。
(このままじゃあ……負ける?)
地面にニホントウを突き立てて体勢を保った黄泉が笑い。
頬から流れ出る雫を指で拭い、ぺろりと舐める。
それでも、相手が生きている以上は──。
(いいえ、私に殺せない者はいない……私は負けない)
37
:
弦月の下で/獅子邂逅
◆DzuK1MKXmE
:2010/07/28(水) 20:48:37 ID:/lOfSdHQ
★ ☆ ★
ミズーは真紅の外套を留める、獅子のレリーフが入った留め金を無意識に掴む。
炎の獅子、獣精霊ギーアが封じられた水晶檻、しかしその力は封じられていた。
「なかなか埒が明かないわねえ」
「それはお互い様よ」
ミズーと黄泉が戦いを始めてどれくらいの刻が過ぎたのか。
ほんの数分なのか、数十分なのか、それはわからないけれど。
時間の経過と共に、両者の身体に疲労が蓄積していくのだけは確かだった。
「そうね、それならこれはどうかしら?」
黄泉は楽しそうに笑いながら、手にしたニホントウを納刀すると、鞘を背に隠したままに腰を低く落とす。
抜刀術、居合いの構え。それはミズーとの切り結びにおいて、剣の腕は相手が上と見た、黄泉なりの戦略だった。
(剣を収めた? いえ狙いは判るわ……此処で決めるつもりなのね)
黄泉の構えを凝視したミズーは内心の動揺を隠しながらもあくまで平静を装う。
が、しかし。未だに動けないでいるミズーに黄泉は小声でほくそ笑む。。
「ふふ、これは狙い通りかしら。まるで御伽噺の中から出てきたようなその服装を見れば、ね」
ミズーとて居合いに似た技を見た事がない、経験がない訳ではない。
しかし諫山黄泉が尋常ではない膂力から繰り出すで居合いの距離が掴めずにいた。
そして、それが即座に自身の死へと直結する事も。
それでも抜刀術に対抗する手段がない訳ではない。
ミズーがあれこれ思考している間にも、黄泉はその距離をジリジリと詰めてくる。
(念糸能力を使うには…今はリスクが大きすぎる)
それならば打つ手は一つ、居合いを打ち破るものは、その攻撃圏外からの先制攻撃のみ。
ミズーは念糸の行使を即座に振り払い、己が持つ必殺の構えを選択する。
(そう、殺害はもともと困難なもの……)
ミズーは剣を持ち上げて、そしてつぶやく。
(殺害を可能にするのは、すべて距離にかかっている……)
持ち上げた剣を構える。普通に振りかぶるのとは多少、違う。
(すべての距離を自分のものにできれば、殺害は思いのままとなる……)
剣を水平にしたまま、大きく肩の上に担ぎ上げて、必殺の距離が迫り──。
「「ハアッ!!」」
それはミズーと黄泉の必殺の間合いが交錯した瞬間──。
腰溜から腕の筋肉を伝い、その力の一切を余す事なく指の先まで浸透させる。
極限まで引き絞られた技を、後はただ目の前の敵を打ち滅ぼすために解き放つのみ。
一撃必殺の投剣術、大気を切り裂くダイの剣が黄泉へ迫り──。
一撃必殺の抜刀術、大気を切り裂くニホントウがミズーへ迫り──。
極限の殺意が集う、無の一点、絶対の殺人領域に絶叫と残光が響き渡った──。、
38
:
弦月の下で/獅子邂逅
◆DzuK1MKXmE
:2010/07/28(水) 20:52:02 ID:/lOfSdHQ
☆ ★ ☆
瞬間の静寂。
極限まで引き絞られた殺意の余波が空間を攪拌させて──。
炎を纏った獅子が、真紅の閃光で薄闇を切り裂いた。
「「──なっ!!」」
激しい残響の後に起こった結末は、二人の予想を裏切った。
「間に合って良かった──」
勝者の剣が敗者の体を貫くであろう刹那、ミズーに劣らぬ真紅の輝きを煌せて。
黄泉のニホントウを炎の剣で、ミズーの刃をその身に纏った鎧で弾き、その少女が叫ぶ。
「みんな、戦っちゃダメだよ──殺し合いなんて絶対に間違ってるはずなんだッ!」
額にうっすらと汗を浮かべながら、少女──獅堂光はにっこりと二人に笑いかける。
思わぬ新たな乱入者に黄泉は距離を取り、ミズーは場違いな少女の笑みに戸惑い顔をしかめた。
「勘違いしないで頂戴、殺し合いに乗って襲い掛かってきたのはそっちの女よ」
「余計な邪魔が入ったと思えば子供か。いいよ私は、邪魔をするならお前も一緒に斬ってあげる」
光の鎧に弾かれた剣を隙なく拾うとミズーが声を張り上げて、黄泉が舌なめずりをする。
「そんな、どうして! あなたは人を殺してまであの剣が欲しいの!?
それに、あなただって襲われたとしても、それだけの強さがあれば戦わずに済む方法だってあったんじゃないないのか!?」
両手を広げて必死に叫ぶ光の姿は、この殺し合いの場にはあまりに似つかわしくない。
ミズーは黄泉を、黄泉は光を、光はミズーを止めようして、三人が睨み合う形となり、状況が膠着するかに見えた。
その中で、光の言葉にミズーの鼓動がどくんと跳ね上がる。
(わたしは殺そうとした…)
襲ってきたから殺す。それは最後の手段だと決めたのに。
無理に戦わず、逃げるという選択肢もあったはずなのに。
(やはり──私は絶対殺人者でしかないの? いいえ、違うわ!)
剣を黄泉へと構えたままに、ミズーの身体から剥離した銀色の糸が、黄泉の身体へと収束していく。
「なにっ!?」
咄嗟、身体に巻きつく銀糸を斬ろうとするが、半不可視のソレに黄泉は触れない。
「あなたは何をするつもりなんだ!」
「それは念糸──、私の切り札よ」
冷たい表情でミズーが告げる。
(もっとも、本当の切り札は──)
獣の瞬間──他にあるのだけれど、という事はおくびにも出さず。
「この三人の中で明確に殺し合いに乗っているのはあなただけよ。
この子が乱入してきた以上、このままじゃあますます埒が明かないわ。
だから、今は退きなさい──」
無言のまま、黄泉が光とミズーを見比べて思案する。
「……ふふ、ここで無茶をする必要もないか」
チンッ、という微かな金属音が響き、黄泉がニホントウを鞘に納める。
その姿を、殺意が消えた事を確認したミズーがゆっくりと念糸の力を解除する。
二人が戦いを止めたことに、光は微かな安堵が浮かべる。
「──ここは退くわ。でも、次はちゃんと殺してあげる」
その言葉を最後に、黄泉はその場から駆け出していく。
39
:
弦月の下で/獅子邂逅
◆DzuK1MKXmE
:2010/07/28(水) 20:58:19 ID:/lOfSdHQ
★ ☆ ★
(どうにか、ハッタリが効いたみたいね……)
ミズーが黄泉に対して仕掛けた念糸、その念糸能力は《発熱》である。
本来のそれは相手と自分を思念の道(念糸)でつないで、そしてさらに意思を注ぐというツーアクションが必要になる。
しかしその力はこの場で大きく制限されており、本来のアクションに加えて、
意思を注ぎ発熱が始まるまでのタイムラグと、発熱後に相手の戦闘力を封じるまでの威力を発揮するには更に時間を要する。
といった、言うなればフォーアクション、どころかファイブアクションさえ必要とする、戦闘ではとても使えない代物になっていたのだが。
「今だけでも…あなた達が殺しあわずに済んでよかった…」
黄泉が去ったのを見届けた光がそうつぶやき、そのままがくりと地に膝をつく。
その光景を見たミズーが光の元へと急いで駆け寄り、その肩を抱く。
「なんて無茶をするのよ! 一歩間違えば貴方が死んでいたのよ!」
地に倒れたて苦しげな表情を見せる光。その肩口からは左腕にかけておびただしい量の鮮血が溢れていた。
「いいんだ、これ位わたしは大丈夫だから…」
「動かないで頂戴、まずは私に傷を見せて」
「えっ、あっ、うん…」
真剣な表情で迫るミズーの言葉に光は胸の辺りで両手を合わせる。
すると薄桜色の虹彩が光の全身を廻り、淡い輝きが消えた後には真紅の鎧が消失していた。
「驚いたわね、それは貴方の魔法なのかしら?」
「これは導師クレフが授けてくれた魔法の鎧なんだ!」
さして興味の無い話でも多少の気休めにはなるだろうか。
そんな事を考えながら、ミズーは制服姿になった光の腕を見る。
それは思った以上に真っ赤に染まっていた。ミズーが負わせてしまった傷だった。
光は黄泉の刃を剣で受け止めたものの、ミズーの放ったオリハルコン製の剣は、魔法騎士の鎧を貫き光の肩を深く抉っていた。
(この傷は私が付けたのよね…)
その事実に多少の罪悪感が湧き上がる。
「光だよ…」
「うん?」
「わたしの名前…獅堂光っていうんだ」
「そう…それよりも、今は止血をするのが先ね」
「…どうするの?」
ミズーは光の腕を覆う制服を引きちぎると、意識を集中して、再び念糸を紡ぐ。
「…少し痛いけど我慢しなさい」
剥き出しになった肩口の傷に銀色の糸が絡みつき、そして。
「うあぁぁッ!」
光が悲鳴をあげて、脂肪が焦げる嫌な臭いが鼻をかすめる。
身を焼く痛みに奥歯を噛み締め必死に耐える。
(こんな華奢な身体で無茶をして…)
しばらくして、汗を拭ったミズーが顔をあげて告げる。
「傷口を焼いて接着したわ。多分……一時はこれで大丈夫なはずよ」
「あっ、ありがとう…お姉さん」
「礼を言うのは私の方、あなたが割って入らなければ、正直どうなっていたかのかわからないもの」
「光だよ、わたしの事は光って呼んでほしい」
いまだ激しい痛みに肩を震わせて、額を流れる冷や汗を拭いながら光はミズーの瞳を見つめる。
「そう…ヒカルね…」
「お姉さんの名前は?」
「…………」
ミズーは逡巡してしまう。このような殺し合いの場で名前を名乗ることに意味があるのかと。
(積極的に殺し合いをするつもりはないけれど、それでも私は殺人者なのよ……)
だとしても、ヒカル(光)という少女の笑みに──。
「…私はミズー、ミズー・ビアンカよ」
「へぇ、素敵な名前だね、えっとミズーさん?」
つい答えてしまい。ミズーの口からは何故か溜息が出る。
(私も甘いわね……)
そんなミズーの様子を光は不思議そうに眺める。
「ミズーでいいわよ。それに助けてもらったせめてもの礼ね。
とりあえず、あなたを安全な場所までは連れていくわ」
そうしてミズーは東に見える村を指す。
(何なのかしらね、コレは…)
やたらと人懐っこい光の様子に、ミズーは不思議な感覚を覚えてしまう。
その少女はミズーの半身ともいえる相棒、獣精霊ギーアに何故か似ているような気がした。
40
:
弦月の下で/獅子邂逅
◆DzuK1MKXmE
:2010/07/28(水) 20:59:07 ID:/lOfSdHQ
【C-4 草原/一日目/深夜】
【ミズー・ビアンカ@エンジェルハウリング】
【状態】健康、疲労(小)
【装備】ダイの剣@ダイの大冒険
【道具】基本支給品一式、ガッツの短剣(×8本)@ベルセルク
【思考】基本:最終目的はロワを倒し、神の剣を破壊する。
1:今はヒカル(獅堂光)を連れて東の村を目指す。
2:無駄な戦いは出来るだけ避けたい、が敵対する者は倒す(殺す)
[備考]
※参戦時期は原作9巻(ミズー編最終巻)アマワの契約が破棄された後からです。
※自身の制限を全て把握しています。
※念糸能力は制限により発動がとても遅く、本来の威力を発揮する事が難しくなっています。
※精霊の召喚、行使は制限により不可能です。
※ミズーはダイの剣を扱えます。他の人間が扱えるかは不明です。
【獅堂 光@魔法騎士レイアース】
【状態】疲労(小)、右肩に深い刺し傷(止血済み)出血と治療(火傷)によるダメージ、
【装備】魔法騎士の剣(光専用最終形態)、魔法騎士の鎧(光専用最終形態)
【道具】支給品、
【思考】基本:主催に反抗し、殺し合いを止める。
1: 今はミズーさん、ミズーと東の村へ向かう。
2:海ちゃんと風ちゃんがいるなら合流したい。
[備考]
※参戦時期は光がセフィーロの柱になった以降(最終回後)です
※魔法騎士の剣は魔法騎士の鎧(手甲の宝玉)に収納可能です。(光の意思で自由に出し入れ可能)
※魔法騎士の鎧は光の意思で自由に纏う事が出来ます。
※魔法騎士の剣、魔法騎士の鎧を他の人間が扱えるか不明です。
41
:
弦月の下で/獅子邂逅
◆DzuK1MKXmE
:2010/07/28(水) 21:00:17 ID:/lOfSdHQ
☆ ★ ☆
「ハァ…ハァ…」
ミズー達と別れ、戦いが終わり。極度の興奮状態から開放された黄泉は森の中を出鱈目に彷徨っていた。
「アアアァ…!!」
額に痛みが走り、身体を駆け巡る妖力に打ち震える。
「私は…一体…あの女は…どうしたんだ…」
不意に、制服の裾から零れ落ちたモノが視界に入る。
そこに落ちている赤い携帯を拾い、折りたたみ式のそれを指先で開くと、そこには黄泉と神楽が微笑んでいた。
「そうだ…今日は確か神楽と約束があって…」
記憶が混濁している。赤い携帯を制服のポケットに仕舞う。
「そうだ…私は神楽を本当は憎んで…いた。
違う、私はあの子を家族のように……!」
いつの間にか森を抜けると、虚空には弦月が変わらずに浮かんでいた。
その月光を浴びて、黄泉の額に赤い石が浮かび上がり、黄泉の両眼が妖しく輝く。
「そうだ、私は殺さなきゃ、あの子を守る為にすべてを…」
頬の傷はいつの間にか消え、その体内では殺生石が静かに脈動していた。
【D-3 草原/一日目/深夜】
【諫山黄泉@喰霊-零-】
【状態】健康、疲労(小)
【装備】ファン・ガンマ・ビゼンのニホントウ@海皇記
【道具】支給品、ランダムアイテム×1
【思考】 基本:神楽の為に他の参加者は皆殺し。
1:出会った者は皆殺し。
2:赤い髪の女(ミズー)はいつか殺す
[備考]
※参戦時期は三途川に殺生石を埋め込まれた後です。
※殺生石の妖力で身体能力が大幅に強化、軽症は時間経過で回復します。
※法術の類がどの程度使えるのか不明です(後の書き手氏にお任せします)
※ミズーと獅堂光の名前は知りません。
42
:
◆DzuK1MKXmE
:2010/07/28(水) 21:04:55 ID:/lOfSdHQ
以上で投下を終了します。
光は魔法騎士の剣と鎧が支給されているため、ランザム支給品は0としました。
本スレ規制中のため、どなかたお手すきな方がおらっしゃいましたら、本スレへの代理投下をお願いしたいと思います。
何卒宜しくお願い致します。
43
:
無銘の剣
:2010/07/28(水) 21:33:29 ID:YmOpTTQM
さる規制をくらっちゃいました。残りお願いします。
44
:
◆WoLFzcfcE.
:2010/07/28(水) 23:10:52 ID:nR.rRfHY
伊達政宗、キング・ブラッドレイ、高代亨
投下します
45
:
雷速剣舞/隻眼邂逅
◆WoLFzcfcE.
:2010/07/28(水) 23:12:06 ID:nR.rRfHY
「Hey,そこのおっさん。ちっと聞きたいことがあるんだが、いいかい?」
「不躾だな。何だね?」
「Sorry,あいにく俺の口の悪さは生まれつきでね。いや、大したことじゃないんだが……あんた、刀は持ってないかい?」
「刀か。いや、あいにく私に与えられたのはこれだ」
ヒュン。
「ちっ、おっさんのも南蛮モノか……刀はねえのかよ刀は」
「ふむ、シンの刀剣か。あれも悪くはないが、やはり私は反りのないこのような剣が好みだな」
「An,シンだぁ? おっさん、あんた変わった着物だな。それも南蛮モノか?」
「ナンバンというのが何を指しているか理解できんが、国軍の軍服くらいどこでも見られるだろう」
「国……軍? あんた、豊臣の人間か?」
「やれやれ、名も名乗らずに質問攻めかね。最近の若い者は礼儀を知らん」
「……Ha,こいつぁ失敬。俺の顔も存外売れちゃいないらしい」
スラッ。
「じゃあ改めて名乗らせてもらうぜ。俺は奥州筆頭・伊達政宗。いずれ天下を獲る男だ――You see?」
「……ハッハッハッ! これは驚いた……今どき珍しいほどに向こう見ずなことよ。若さゆえの蛮勇か、真に次代を担う力か――」
ジャリッ。
「――だが、私の前でその言葉を吐く勇気は認めよう。蛮勇でなければよいが」
「Hey,stop.俺にだけ名乗らせる気かい? あんたの名前も聞かせなよ」
「おっと、これはこれは。私も人のことは言えんな」
ジャキッ。
「私の名はキング・ブラッドレイ。小僧、天下を獲ると言ったな。私の国を獲りたいのなら、私を倒して力づくで奪い取るがいい!」
「OK, Are you Ready? ――癖になるなよ!」
46
:
雷速剣舞/隻眼邂逅
◆WoLFzcfcE.
:2010/07/28(水) 23:13:03 ID:nR.rRfHY
◆
「――MAGNUMッ!」
雷光纏う必殺の突きが虚空を裂く。
踏み込みは迅速、走る剣はまさに神速。
竜が振るうは名剣の誉れ高き稲妻の剣。
握る武将もその躯から蒼い雷を迸らせ、剣の放つ暴風とともに踊る。
一太刀ごとに空気を焦がし、煉瓦造りの家々を掠っただけで吹き飛ばす。
暴れ回る一匹の竜。
だがその顎は小癪な獲物を捕らえられない。
「Shit! チョコマカとウザってえなッ!」
三日月細工を拵えた兜に蒼い装束、右目に眼帯を着けた一人の男。
日の本は奥州摺上原を手中に収める若き武家の棟梁、奥州筆頭・伊達政宗。
隻眼の風貌から『独眼竜』と渾名され、天下にその人ありと謳われる勇将である。
「あいにく私には君のようなデタラメな力はなくてね……さしずめ雷鳴の錬金術師というところか。大した破壊力だが、当たらなければどうということはない」
その独眼竜の荒ぶる暴虐を一手に凌ぐ――否、かすりもしない一人の男が、刃を片手に高速で迫る。
政宗が砕いた建造物の、その舞い散る瓦礫の中を悠々と、まるで散歩するようにすり抜けて。
「King――へっ、大将を名乗るだけのことはあらぁな! だがッ!」
本来の獲物ではない、加えて本来のスタイルでもない。
伊達政宗が得意とするのは六本の刀を指先に挟み持ち同時に振るう人外の荒業、六爪流。
だが今手元にあるのは使い辛いことこの上ない西洋の長剣がただ一振り。
並みの相手ならそれでも十分だったろう。
奥州筆頭の武勇は少々の不利など物ともしない、そのはずだった。
「らぁっ!」
奥州筆頭の一刀を、対する敵手――キング・ブラッドレイは刃の上を滑らせて受け流す。
政宗と同じく眼帯を着けた壮年の男。手にするのは言葉通り反りのがなく装飾も控えめのシンプルな剣。
甲斐の虎よりもかなり上、あるいはもう孫などいてもおかしくなさそうな風貌のくせに、足捌きはやたらと速い。
身体能力は若い自分が上だという確信はあった。
だが、攻撃が当たらない。
何十何百と振るう剣の軌跡に、この隻眼の男の影すら浮かび上がらないのだ。
「そこだ」
「うおっ!?」
そして、時折り放たれる反撃がやたらと鋭い。
袈裟に来たと思えば次の瞬間には首を突かれる。
頭を振って避ければ跳ね上がってきた足刀を受け、自慢の兜が吹っ飛ばされた。
後方に宙返りし、崩れた瓦礫の上に着地した。
47
:
雷速剣舞/隻眼邂逅
◆WoLFzcfcE.
:2010/07/28(水) 23:13:52 ID:nR.rRfHY
(どうなってやがる……俺の技がちいとも当たりゃしねえ。読まれてるのか?)
動きの速さで勝っているのになぜ追いつけないのか。
そして一の太刀を放った後の返し刃がでたらめなほどに速いのも不可解だ。
あんな動きをすれば剣の重量に振り回されるはずなのに、ブラッドレイは筋力で押さえつけているのかまったく揺れ動かず隙もない。
(しかしやり辛え。片眼がねえって条件は同じだが、野郎……とてつもなく戦い慣れてやがる)
政宗は右目が、ブラッドレイは左目が欠落している。ゆえにお互いの死角が重なり合い、正面からの衝突を余儀なくされていた。
政宗が目にも止まらぬ連続攻撃を放っても、ブラッドレイはあらかじめその軌跡を知っていたかのように軽々と剣閃の下を潜り抜ける。
手数の多さで圧倒して近寄らせないようにしているものの、これでは千日手も同然だ。
「Ha,まどろっこしいねぇ! こういうのは好みじゃない――Go for broke! 一気に決めさせてもらうぜ」
「ほう、まだ切り札を残しているか。よろしい、受けて立とう」
「いいねぇ、楽しくなってきたぜ……奥州筆頭・伊達政宗、推して参る!」
だから政宗は勝負に出る。
己にあって敵にないもの――政宗自身から溢れ出る雷をフルパワーで放つ、最高にハイな一撃。
回避などする場もない必殺の一撃で仕留める。
「行くぜ、HELL DRAGON!」
咆哮とともに全身の闘気がスパークし、剣先から雷の竜となって放たれた。
雷竜は一直線にブラッドレイへと向かっていき、炸裂の瞬間夜の闇を白く染め上げる。
拡散し放電する閃光の刃。
どこに隠れようとこの暴虐の怒りから逃れることなど不可能だ。
家屋を藁のように薙ぎ倒し、まるで嵐が直撃したかのような様相を呈する。
「……Ya-Ha.これで決まったな」
ブラッドレイの姿はない。
それどころか村の一区画そのものが完全に焼き払われていた。
奥州筆頭の全力の一撃は、もはや人の身で成せる破壊を遥かに超えていた。
「ハッ……フゥ。やれやれ、しょっぱなからHeavyな相手だったぜ」
手近な瓦礫に腰を下ろす政宗。
つい理由もなくたまたま見かけただけのブラッドレイに戦いを吹っかけた理由は自分のことながらわからない。
ただブラッドレイの姿を眼にした瞬間、前触れもなく。
“こいつは敵だ”
と、思ったのだ。
口うるさいが背を預けられる無二の友――『竜の右目』片倉小十郎がいれば咎めたかもしれない。
だがこれだけは口では説明できない、本能的なものだった。
そう、かつて『魔王』織田信長と相対したときに感じたような、心底からの畏怖。
「っと、んなことより俺のTrademarkを忘れちゃいけねえな」
たとえ一瞬でも怯えを認めたことを忘れたいのか、政宗は軽く頭を振って勢いよく立ち上がる――その行動が、彼の命を救った。
瓦礫の影から放たれた一筋の流星、硬く尖ったガラスの刃が一瞬前まで政宗の左目があった位置、つまり左脇腹へと突き刺さった。
血飛沫、だが政宗が痛みに呻く暇などない。
ガラス片が投じられたのとほとんど同時に、目前に白刃が滑り込んできたからだ。
48
:
雷速剣舞/隻眼邂逅
◆WoLFzcfcE.
:2010/07/28(水) 23:14:32 ID:nR.rRfHY
「……What!? なんで生きていやがる!」
「ああ、素晴らしい威力だったよ。惜しむらくは精度が今ひとつということだ」
ギリギリと刃を合わせる政宗と――怪我一つないブラッドレイ。
外見だけが、青い軍服の上着は燃え尽きたか黒のインナーに変わっていたが。
「雷鳴の錬金術師よ、君にその雷火の牙があるように」
超至近距離で交わる二人の視線。
政宗は気付く。ブラッドレイの顔に、先ほどまであった眼帯がないことを。
大きな傷が走ってはいるが、ゆっくりと目蓋が開いていく。そこには確かな瞳があった――隻眼ではない。
若き武将は知る由もない、魔法陣を抱く竜の刻印。
ウロボロスの紋章を瞳に刻んだ、人でなきモノ、ホムンクルスの証。
「私にも最強の眼があるのだよ」
色のない瞳が若き武将を睥睨する。
音速を超える銃弾すらも視認できるほどの動体視力、それが“憤怒”のホムンクルス・ラースの能力。
乱れ狂う雷刃の軌跡を一つ一つ知覚し回避しきることすらも容易いことだ。
ブラッドレイの膝が政宗の腹部を抉り、強引に膠着を崩した。
延髄に振り下ろされた剣を勘だけで受け止め、政宗はこちらは正真正銘の隻眼でブラッドレイを睨め上げる。
「調子に……乗ってんじゃねえッ!」
渾身の技を苦もなく凌がれた屈辱が怒りとなって沸騰し、その激情とともに振るった稲妻の剣が風を生んでブラッドレイの自由を奪った。
政宗はその機を逃さず走り込み、両手に握った剣を縦横無尽に振るう。
「CRAZY STORM!」
本来六爪で使う技を一刀で放った。
威力も規模も落ちているが、そこは意地と矜持で押し上げる。
左右どちらからも襲い来る鋭刃の軌跡。
「おおっ、おおああアアアアアアアアッッ!」
いかに優れた眼を持っていようと、百を超える連撃のすべてを防げるはずがない。
たとえ眼で追えても体が、剣がついてこれるわけがない。
「――なッ!?」
その政宗の目論見を、キング・ブラッドレイは覆す。
刃鳴りの音が絶え間なく響く。
威力で勝る政宗の剣を、ブラッドレイは一瞬間に剣を何度も叩きつけて威力を分散させていく。
自在に走り回る剣をさらに追尾し、打ちのめす。神速をさらに越える、瞬速の剣。
トータルのスピードでは劣っても、ごく限定的な速さ――攻撃速度の一点において、キング・ブラッドレイは伊達政宗の上を行く。
それは奥州筆頭が遅いわけでも大総統が速いからでもない。
ブラッドレイが振るう一振りの剣。
それこそは銘をはやぶさの剣、剣にあるまじき羽のごとき軽さにて一瞬間に二度の攻撃を可能とする刃。
それほどの業物を、生まれ落ちて六十余年一日たりとも弛まずすべてを闘争に費やしてきたブラッドレイが振るうのだ。
人外の強者ひしめく戦国時代に名を上げた勇将と相対し、互角以上に争えることとて決して不思議ではない。
49
:
雷速剣舞/隻眼邂逅
◆WoLFzcfcE.
:2010/07/28(水) 23:15:08 ID:nR.rRfHY
そしてここで、先ほど全力の攻勢を仕掛けたツケが回って来る。
政宗の動きが途端に精彩を欠く。
握る剣がまるで巨大な鉄塊のように感じられ、電光の速さが見る影もなく。
絶え間なく刀身に走る衝撃も無関係ではない。ブラッドレイはこの数十秒で二百はくだらない斬撃を繰り出していた。
疲労しているのはお互い様だ。だが全力の一撃を放った分、政宗のほうがその度合いは大きかった。
そして今、均衡が崩れる。
「ガッ……!」
ブラッドレイがいつの間にか片手に隠し持っていた鞘で政宗の鳩尾を突いた。
全身が弛緩した一瞬を逃さず、ブラッドレイの剣が政宗のそれに絡み合い、跳ね上げる。
天高く稲妻の剣が舞う。
視線を追わせた政宗の視界に映ったのは、夜空の星ではなく拠って立つ大地。
瞬間的に懐にもぐりこんだブラッドレイに腕を取られ投げ飛ばされていた。
瓦礫に背中から落ち、激痛に一瞬息が止まる。
続いて腹を踏み抜く固いブーツの感触。
次いで視界に飛び込んだのは、美しく煌く白刃の輝き。
(やべぇ……!)
偽りなく、政宗は死を覚悟した。
戦場に身を置く者としてその覚悟はいつだってできている。
だがあまりにもそれは唐突で、政宗を以てして、
――ああ、こんなもんなのか。くたばる前の気持ちってやつは、こんなにも静かな……Un?
そう思わせるものだった。
瞬間で脳裏に浮かぶ奥州の光景。
この手で殺した父の顔、無二の朋友、己を慕う部下ども。
それらすべてが一瞬に政宗の脳裏に踊り、同じく一瞬で掻き消える。
最後に映った男の顔は――忘れもしない赤いヤツだ。
――政宗殿、某との決着をつけずに往生なされるおつもりか? 独眼竜とはその程度の器でござったか!
――Holy Shit! 言ってくれるじゃねえか真田の! 上等だ、俺はこんなところじゃ終わらねえぞ!
同時、胸に沸き起こる烈火の感情が再び政宗を突き動かした。
ブラッドレイが剣を振り下ろすに合わせて両の拳を打ち合わせる。
「ほう、芸が達者だな」
「こういうのが得意な野郎と散々やり合ってるんでな……!」
拳の甲を交差させた白羽取り。瞬間の判断で行ったにしては会心の一手だった。
腕から拳から剣へと伝う電撃を嫌い、ブラッドレイが後方へと飛び退った。
身を起こす。だがその動作はぞっとするほど緩慢で、まるで自分の体ではないように思えた。
脇腹の傷は深くはないが出血が止まらない。その上二度に渡って全力の攻撃を仕掛けたせいで一気に疲労が増してきた。
それでも、屈することだけはしない。
ギラギラと戦意燃ゆる瞳で独眼竜は敵を睨む。
50
:
雷速剣舞/隻眼邂逅
◆WoLFzcfcE.
:2010/07/28(水) 23:15:49 ID:nR.rRfHY
「やれやれ、まだ諦めんか。私もそろそろ疲れてきたので終わりにしたいのだがね」
「Ha,つれないこと言うなよ。最高のPartyじゃねえか……楽しもうぜ」
と、減らず口を叩くものの。戦況は明らかに政宗の劣勢だった。
脇腹の裂傷は深く、鳩尾の痺れは未だ取れず、瓦礫に叩きつけられた衝撃がまだ全身に残っている。
加えて剣を手放してしまった。
その剣がどこにあるかと言えば、最悪なことにたった今ブラッドレイが拾ってしまった。
どうやら礼儀正しく剣を返してくれるつもりなどないようで、左右両手に握った剣を二度三度振るい感触を確かめている。
しかもその様がなんというか――やたらと堂に入っている。
おそらくは二刀流こそがやつの得意とするStyleだ、と政宗は推測した。
(こいつはやべえ……野郎に風が吹いてやがる。クソッ、六爪がありゃあな)
現実は六爪どころか素手だ。鋼鉄の鞘は頑丈ではあるものの、あの業物二振りを相手取れるはずもない。
刀が欲しい、と奥州筆頭は切に願った。
「君は若いな。私などもう六十にもなる、あまり無理をさせんでくれ」
「おいおい、笑えねえJokeだぜ。俺の三倍も歳喰っててその動きかよ?」
「引退したらどうかとよく言われるよ」
ブラッドレイは稲妻の剣の剣先を転がっていた政宗の兜に引っ掛け、こちらへと振り上げる。
くるくると回転し放られた兜を受け取り、礼も言わずにかぶり直す。
おそらくは末期の情け――逝くときは晴れ姿で、とでも言いたいのだろう。
鳥が翼を開くようにブラッドレイが双刃を広げ、疾走の気配を見せる。
ただでさえ苛烈な剣撃が単純に倍になって襲い来る。
さすがに今度ばかりは命運尽き果てたか、とどこか納得しながらも体は迎撃の構えを取っていた。
「では、行くぞ。できるのならば凌いで見せろ」
「All Right,来やがれ……!」
鋼鉄の鞘を砕けよとばかりに固く握り締める。
一瞬後には両断され、役目を終えるのだとしても。
(どこまで追い詰められても絶対に諦めねぇ! それが俺の――ッ!)
意地で一撃くらいは叩き込んでやる、と突き進んでくるブラッドレイを視線で射る。
と――自身とブラッドレイの間に割り込んできたものがあった。
細長い、見覚えのある形。
そう、これは紛れもなく――
「そいつを使え!」
どこからか響いてきた声に後押しされるまでもなく、その物体が何であるかを看破した瞬間政宗は走り出していた。
宙にあって強く存在を主張するそれは、まさしく今このとき政宗が求めていたもの。
嬉しいことに、それは、その天からのPresentは政宗が良く知っているものでもあった。
「借りるぜ、小十郎……お前の刀をよ!」
銘を、黒竜。
奥州でも指折りの刀工が鍛えた大業物。
相棒が、『竜の右目』がいつも腰に佩いていた名刀を抜刀し、
51
:
雷速剣舞/隻眼邂逅
◆WoLFzcfcE.
:2010/07/28(水) 23:17:05 ID:nR.rRfHY
「――おおらあああああッッ!!」
無理を押しての、渾身の逆袈裟斬り――月煌。
これは捌けないと見たか、ブラッドレイが二刀を合わせて防御の構えを取る。
だが、止まらない。
『独眼竜』と『竜の右目』の合作と言えるその一刀は、人外のホムンクルスをして予想以上の威力を叩き出す。
瓦礫の山へとブラッドレイが叩きつけられ、土砂に埋まっていく。
それを見届けた政宗は今度こそ膝をついた。
「へっ……見たか、奥州魂ってやつをよ……」
力を出し尽くした政宗は、それでも笑いながら勝利を誇る。
次いで顔を巡らせた先には、激突の刹那政宗に刀を放り投げた男が歩み寄ってきていた。
長い蓬髪を風が弄ぶに任せた、背の高い痩せた男。
面白いことにそいつも右目が潰れているようで、目蓋の上に大きな傷が走っていた。
「Thanks,Brother.おかげで助かったぜ」
「余計な手出しではなかったか?」
「んなこたあない。正直、ヤバかった」
男が差し出した手を政宗は躊躇なく取った。
こいつが敵であるか味方であるかはっきりしないものの、こいつの介入がなければ政宗は間違いなく死んでいた。
政宗の命はこいつに救われた、つまりは借りができたということである。
騙まし討ちするならそれもいい、一度だけなら受けてやる――そんな気持ちでいたのだが、事実こいつは敵意などないようだった。
引き起こされ、改めて男と向かい合う。
「俺は奥州筆頭・伊達政宗。あんたはなんてんだ?」
「……名は捨てた。どうしても呼びたいなら、そうだな。イナズマとでも呼んでくれ」
「イナズマ? Lightningか。へっ、そいつはいい! あんたは俺とよく似てるよ!」
隻眼と隻眼、蒼雷と稲妻、そして言葉にしなかったが互いに十九歳。確かに二人は良く似ていた。
そのイナズマと名乗った男――本名・高代亨は、偶然見かけた伊達政宗とキング・ブラッドレイの闘いに介入すべきかどうか迷っていた。
『最強』との闘いから数ヶ月。
逃亡生活を続けていた亨が突如招かれた、この世のものとは思えぬ死の遊戯。
統和機構からの刺客を退けることにも疲れを覚えたころ、亨はふと目覚めればこんなところに連れて来られていた。
そして考えた、ロワと名乗った女の言うとおり殺し合いに乗るかどうか。
もし最強の剣とやらを手にすれば、もう逃げ回ることもなくもしかしたら統和機構そのものを叩き潰せるかもしれない。
だがそのためにはまったく関係のない五十人以上の人間を殺し尽くさねばならず――。
「一つ聞きたい。あんた、あの女の口車を信じるのか?」
「Un? ああ、殺し合って最後の一人になれってあれか。――そうだな、信じるって言ったらどうする?」
「悪いが、ここで倒れてもらう。闘うのも殺し合うのも、その覚悟があるやつだけがすればいい。だが、それを他人に強要することは許さない」
そう、乗るわけがない。
いかに強力な力を持っていようと、追手の屍をうず高く積み上げるほどこの手が血に塗れているとしても。
最後に残ったちっぽけなプライド――あの『炎の魔女』や親友に顔向けできなくなることだけは、絶対にしたくない。
だからこそ亨は『イナズマ』として闘う覚悟を決めていた。無駄な血が流されぬように、もう二度と大事なものを取りこぼさないために。
「OK,そんな怖い顔するなよ。俺も誰かの狗になる気はない。竜ってのは誰にも従わないから竜なんだ。
無論、先に向こうに襲われちゃあさっきみたいに応戦するが、俺から誰彼構わず喧嘩を吹っかけるってことはしねえよ」
「……そうか」
亨は全身を強張らせていた力を抜いた。
亨自身、自らの力に自信はあったがこの伊達政宗や先のキング・ブラッドレイと相対して確実に勝てる自身はなかったのだ。
52
:
雷速剣舞/隻眼邂逅
◆WoLFzcfcE.
:2010/07/28(水) 23:18:09 ID:nR.rRfHY
「しかし、あんたがこの刀を持っているとはな。これも運命ってヤツか……」
「そいつを知ってるのか?」
「ああ、まあ俺の相棒の獲物なのさ。どうだい、あんたさえ良けりゃこいつを譲っちゃくれねえか? 代わりに俺の使ってた剣をやるからよ」
「構わんが、その剣はどこだ?」
「Um,さっきのブラッドレイっておっさんに」
「すまんが返せと言われても拒否させてもらおう」
割り込んだ声は紛れもなく。
政宗と亨は一瞬で戦闘体勢へと移行する。
視線の先には瓦礫を風で跳ね除けて立つ王の姿。
「Fantastic! まだ生きてやがるのかよ!」
「君の剣のおかげだ。錬金術とも思えぬが便利なものだな」
ブラッドレイは何事もなかったかのように嘯いた。
稲妻の剣が持つ風の能力が、今度は本来の持ち主ではなく敵を救ってしまったのだ。
「チッ、なら今度こそあの世に蹴り落としてやるぜ……!」
「できるかね? その疲労困憊といった体で」
「So easy! 独眼竜を舐めんじゃねえ!」
黒竜を構え、再びブラッドレイと切り結ぼうとする政宗。
しかしその眼前に亨が立つ。
「その体では無理だ。ここは退くぞ」
「Huhn? 尻尾巻いて逃げろってのか!」
「負けるとわかっていて挑むのは愚か者だ。本当に勝ちたいなら、勝つために退くということも手の一つだ」
「……チッ、小十郎みてえなこと言いやがる。だが、やっこさんだって黙って俺らを見逃してくれるほど甘かないぜ?」
「大丈夫だ、任せろ」
政宗が捨てていた稲妻の剣の鞘を構え、亨はブラッドレイと向かい合った。
鞘を持つ手をだらんと下げたその構えは、控えめに言っても隙だらけ。
「イナズマ……と言ったか。二人同時にかかってきても私は構わんよ」
「あいにくだが、この場は退かせてもらおう。今はあんたに勝てる気がしないんでな」
「逃がすと思うか?」
「できる、と俺は踏んでいる。あんたの眼――おそらく俺と似たような能力だ。直接的な攻撃力はないだろう、だから」
異名の由縁、物体の隙を見出す『イナズマ』能力を発動させ、手にした鞘を一際大きな瓦礫の一点に突き立てる。
後ろから見ていた政宗は、鋼鉄の鞘が硬い瓦礫に抵抗もなく突き込まれたのを見て取った。
一瞬で、瓦礫が粉のように分解される。
即席の煙幕が戦場に拡がった。
「……めくらましか。この程度で私の眼から逃れることはできんぞ」
「だが、あんたの行動は一手遅れる!」
そう、その初動の遅れさえあれば十分なのだ。
稼いだ瞬間の間で、亨はデイバックから己に支給された切り札を引っ張り出す。
一見してキックボードのような形状の長い板。
後部に風を噴射する貝を取り付けた、とある世界の空島という場所で用いられるウェイバーという乗り物だ。
しかもこれは通常モデルではなく、さらに強力な噴風貝(ジェットダイアル)をセットした特別製。
煙幕を吹き飛ばすほどの猛烈な風が噴風貝から噴射される。
手綱を操るのは高代亨。
その腕が伸ばされ、伊達政宗へと差し伸べられる。
53
:
雷速剣舞/隻眼邂逅
◆WoLFzcfcE.
:2010/07/28(水) 23:19:25 ID:nR.rRfHY
「――ッ!」
走っても届かぬと見たブラッドレイが隼の剣を投擲した。
まっすぐ伊達政宗の心臓を抉る軌道を飛んだ剣は、肉を裂く手応えなく地に突き立つ。
そして瞬きの間に二人の青年は飛び去って行った。
「――ふむ、逃がしたか。人間も中々やるものよ」
さして残念でもなさそうに呟き、ブラッドレイは隼の剣を回収・納刀した。
もう片方の稲妻の剣は政宗から奪ったために鞘がないので、抜き身で持ち歩くしかない。
嘆息し、眼帯を着け直す。
さて、これからどうするか。
【C-5 村 一日目 深夜】
【キング・ブラッドレイ@鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST】
【状態】疲労(小)
【装備】隼の剣@DQ2、稲妻の剣(鞘なし)@DQ2
【道具】基本支給品、ランダムアイテム(個数、内容ともに不明)
【思考】基本:『お父様』の元に帰還するため、勝ち残る。
1:とりあえず人を探す。
【備考】
※『最強の眼』を使用している間は徐々に疲労が増加。
※村の一区画が完全に破壊されています。
54
:
雷速剣舞/隻眼邂逅
◆WoLFzcfcE.
:2010/07/28(水) 23:19:58 ID:nR.rRfHY
◆
「イヤッハァッ! こいつはゴキゲンなvehicleだ!」
「おい、あまり暴れるな。操縦が難しいんだ」
見たこともない乗り物に気勢を上げる政宗と対照的に、亨の顔は真剣だった。
風を噴射して移動する特性上、ウェイバー本体はとても軽く作られていて小さな波でも簡単に舵を取られてしまうのだ。
亨はイナズマ能力を駆使して波の動きを読み取れるので操縦できるものの、かなり神経を使う作業だった。
やがてウェイバーは河を越え対岸に辿り着く。さすがにここまで来ればブラッドレイも追ってはこなかった。
二人は陸地へと降り立ち、ようやっと落ち着くことができた。
「助かったぜ、イナズマ。お前さんにゃあ借りを作ってばかりだな」
「いいさ、気にするな」
ともに死線を潜ったためか、政宗は亨を信頼し始めていた。
亨はといえば、逆に政宗やブラッドレイをあまりの戦闘力のために統和機構の合成人間ではないかと疑っていた。
そもそも名前が伊達政宗ときた。三日月を模した兜といい隻眼といい、史実どおりの独眼竜が現実に出てきたようだ。
そして懸念はもう一つ。
亨自身は大した戦闘行動をしていないのに、ずっしりとその身に疲労が残っていた。
イナズマ能力を使ったせいだろう。だが普段ならここまで重い疲れを感じることはないはずだった。
政宗の雷を生み出す力も気になる。詳しく情報を交換する必要があった。
(厄介なことになった、な)
夜空を見上げため息をつく。
皮肉なことに、輝く月はちょうど三日月の形だった。
【D-5 岸辺 一日目 深夜】
【伊達政宗@戦国BASARA】
【状態】疲労(中)、左脇腹に裂傷
【装備】黒竜@戦国BASARA
【道具】基本支給品、ランダムアイテム(個数、内容ともに不明)
【思考】基本:主催者の首を獲る。誰だろうと挑まれれば受けて立つ。
1:ブラッドレイを倒す。
2:イナズマにいずれ借りを返す。
【高代亨@ブギーポップシリーズ】
【状態】疲労(小)、能力の不調に違和感あり
【装備】稲妻の剣の鞘
【道具】基本支給品、ウェイバー@ONE PIECE
【思考】基本:戦う力のない者を守る。
1:伊達政宗の手当てをしつつ情報を交換する。
2:町や村を捜索し、殺し合いに乗らない参加者を探す(対象が強ければ別行動、弱ければ同行して守る)。
3:ブラッドレイを警戒。
【備考】
※『イナズマ』能力を使用している間は徐々に疲労が増加。
※今のところ本名を名乗るつもりはない。
55
:
雷速剣舞/隻眼邂逅
◆WoLFzcfcE.
:2010/07/28(水) 23:20:37 ID:nR.rRfHY
『イナズマ』能力について
生物・物体の気配が線として見える能力。物体の線を突けば破壊し、人体においては弱点となる。
その他、自身に向けられる攻撃のラインを知覚する・離れた場所にいる敵の気配を察知する、など応用範囲は幅広い。
高代亨は隻眼だがこの能力を使用するのに視覚は必要ないらしく、閉じた右目には向かい合う相手の急所のラインだけが見える。
・隼の剣@DQ2
非常に軽く、一動作で二度の攻撃が出来る剣。
・稲妻の剣@DQ2
道具として使えばバギの効果が得られる剣。
・黒竜@戦国BASARA
「竜の右目」片倉小十郎の刀。特殊な能力は無い。
・ウェイバー@ONE PIECE
噴風貝(ジェットダイアル)をセットした、宙に浮くスケートボードのようなもの。
機能は制限され浮かび上がる高さはせいぜい民家一件分。
56
:
◆WoLFzcfcE.
:2010/07/28(水) 23:21:52 ID:nR.rRfHY
投下終了です。
57
:
◆ClAmicNkI.
:2010/07/29(木) 04:54:46 ID:nX3P2l4c
小川健太郎、真宮寺さくらを投下します。
58
:
最強の聖剣
◆ClAmicNkI.
:2010/07/29(木) 04:55:35 ID:nX3P2l4c
「今度の世界はどこなんだろう……」
頭に光るちょーちん、肩にはひつじを装備した妙にキラキラ光る衣装の青年はそう呟いた。
最早世界を跨いで移動するのは何回目になるのであろうか。
「きっと今回もどうにかなるさ!でも早く帰らないと美樹ちゃん怒るだろうなぁ」
いつもなら彼女である美樹を救う為に世界間を移動していたが、今回ばかりはどうも違うらしい。
剣の持ち主を選定する為に剣士を集めたと、ロワと名乗る女性は言っていた。
ならば剣士どころか、危なっかしくて刃物も持たせられない美樹が召還される理由は無い。
そんな彼女が安全な場所にいるという安心感が、健太郎の心を落ち着かせていた。
「剣士といえば、きっとランスさんも召還されているに違いない。ランスさんはきっと元気なんだろうなー(非情に空気読めてない)」
奇しくも同時刻、ランスは錆白兵に返り討ちに遭い息絶えていたのだが、健太郎はそんな事知る由もなかった。
59
:
最強の聖剣
◆ClAmicNkI.
:2010/07/29(木) 04:56:06 ID:nX3P2l4c
「石さん、僕の愚痴を聞いて下さい。美樹ちゃんとのデートに行く途中この世界に無理矢理連れてこられたって愚痴を。えっ、いつもラブラブ一緒に逃避行という愛のらんでぶーしてるじゃないかって?だからこそ待ち合わせ場所を決めてそこで落ち合うってデートが愉しみだったんですよ!きっと今頃美樹ちゃんは寂しくてわんわん泣いてるに決まってます。下手すると怒って辺り一面を吹き飛ばしてるかも知れません。いや、流石にそれは帰る場所がなくなるから困る……いやいやかといって寂しがっていてくれないとそれはそれで複雑な気も……」
運命さえも手繰り寄せる本当の強さを持った剣士を選び出すという儀式。
ロワが言ったようにまるで『ゲーム』の様なファンタジー設定だ。
ゲーム好きで、過去になんどか『剣と魔法のファンタジー世界』に拉致られた経験もある健太郎は、美樹が安全である事もあり今回の事態にも心を浮かせていた。
「っと、ずっと僕ばかり愚痴を話していたね。お礼に石さんの悩みの相談を聞いてあげよう!」
陽気な健太郎が目の前の巨大な石に話しかける。
勿論石は何も話しかけてはこない。
健太郎自身も石の声が聞こえる能力がある訳でもない。
健太郎にどうして石なんかに話しかけるのかと問いかければ、こう答えが返って来るであろう――「話さないといけない気がしたからさ」と。
60
:
最強の聖剣
◆ClAmicNkI.
:2010/07/29(木) 04:56:49 ID:nX3P2l4c
◆ ◆ ◆
太正時代から召還された着物と袴を着こなした少女、真宮寺さくらは隠れながら相手の様子を窺っていた。
取りあえず遠くから見えたモニュメントを目標にこちらに来てみたのだが、近くまできてようやくその正体が理解できた。
縁があまりなくて気がつくのが遅れたが、とんでもなく巨大な西洋の墓である。
大きさは民家二件を縦に積んだ位の大きさであろうか。
巨大すぎて近づき過ぎても、巨大な石としか認識できないであろう墓の近くで、見るからに怪しげな格好をした青年が鼻歌交じりに穴を掘っていた。
墓の近くで穴を掘っているとなれば、それは墓穴であろう。
日本にも土葬という文化は深く根付いており、容易に想像する事ができた。
墓穴を掘っているという事は、誰かを埋めるという事である。
だが目の前の青年からはこれっぽっちも悲痛な感情が見えてこなかった。
つまりは――彼が人を殺してそれを隠蔽する為にわざわざ墓の近くに埋めようとしているのではないか。
「大神さん、勇気を分けてください……」
心の支え、愛する人の名前を呟き少女は腰に差している剣を握りしめた。
61
:
最強の聖剣
◆ClAmicNkI.
:2010/07/29(木) 04:58:04 ID:nX3P2l4c
「北辰一刀流真宮寺さくら。遅ればせながら、この島の平和を守る為参ります!!」
馬鹿正直に名前と流派を叫びながら少女は、青年に向かい駆けていく。
腰に差した一本の西洋刀の重さを確かめながら、居合いに好ましい位置に剣をもっていく。
西洋刀は本来ならばその重さと丈夫さを利点とし、日本刀とは異なり力任せに殴打し、鎧ごと破壊する事を目的とした武器である。
そんな事は両手で構えないと刃筋すら安定しない程の重量と、刃から柄の部分まで同じ一つの金属から鍛え上げられているという製造法からさくらでも推測できた。
しかし手元に武器はこれしかないのだ。
いつも愛用していた真宮寺家に代々伝わる家宝、霊剣荒鷹はこの場所にない。
ならば自分の持てる技を出し切り、この武器の特性を引き出すしかない。
つまりさくらが選んだ戦術それは――西洋刀の重量を利用し、遠心力を利用し相手を叩き斬るという事。
ステップは遠心力に引っ張られる剣とは反対の方向に踏みしめ、下段から一気に相手を斬り上げる。
さくらの名乗りで健太郎が振り向いた時には、もう西洋刀の刃が健太郎の目前まで迫っていた。
咄嗟に身体を後方に捻り、剣が描くであろう軌跡から脱出しようとした健太郎であったが、さくらの有する剣は物理法則を無視した動きで健太郎に追尾してきた。
62
:
最強の聖剣
◆ClAmicNkI.
:2010/07/29(木) 04:58:50 ID:nX3P2l4c
――しかし。
「いてっ!何で急に襲いかかってくるんですか!」
重さも速さも乗った一撃必殺の攻撃は、生身の身体によって跳ね返された。
手応えは十二分にあった。
しかし相手にはまるでダメージを与えられていない。
物理法則を無視した展開にしばし呆気に取られていたさくらであったが、とある事実にようやく気がついた。
「す、すいません。あたしてっきり……」
墓の周りに穴が複数個存在するが、死体が一つも無い事に。
「僕が無敵結界持ちだから良かったものの、普通の人だったら死んでたよ」
さくらの振るった剣が当たった場所をさすりながら健太郎は不満を漏らした。
健太郎からしてみればほんの一ダメージ程の痛みであったが、勘違いとはいえ急に襲われたという不満は募る。
「あの……、こんな事言えた立場ではないのでしょうけど、お墓の近くで楽しげに穴を掘ってる方も悪いと思います」
「だってこんな広い草原に一つだけって、お墓が寂しそうじゃないか。どのみちこれから沢山の人は死んでいくのだろうし、僕が穴を掘っておいてあげようと思ってね」
ほら一石二鳥じゃないか、と空気が読めない青年は微笑んだ。
63
:
最強の聖剣
◆ClAmicNkI.
:2010/07/29(木) 04:59:23 ID:nX3P2l4c
「お墓があるって事は、この島で既に人が死んでるって事なのでしょうか」
「大きいって事は沢山の人を一遍に埋葬する為の慰霊碑に近い物だったのかな」
別に殺し合いにのってる訳ではない事、いつものさくらの早とちりだった事をお互いに説明し合った二人は、目の前の大きな建造物を見上げていた。
「一杯死んでる、つまりこの島での殺し合いは私達が最初って訳でもなかったのですね」
「人が一杯埋まってるとしたら、お墓は一つでも寂しくなかったのか」
どこか話が噛み合わない二人であったが、お互いに悪い人ではないという事は理解できた。
「それにしても無敵結界って凄いのですね」
心配になって傷口を見せて貰ったが、既に痣にもなってない。
無敵結界――それは物理・魔法の種を問わず、またどれほど凶悪な破壊力であろうと、お構いなしに外部からの攻撃の一切を無効化するという反則的なバリアである。
同じく無敵結界を持つ魔王、魔人同士や神や神の同族である悪魔には結界が中和され無効化されたり、リミッターの外れた勇者やカオス、日光といったルールを超越した武器でも無効化されたりはするが、弱点はそれだけである。
64
:
最強の聖剣
◆ClAmicNkI.
:2010/07/29(木) 04:59:56 ID:nX3P2l4c
しかし健太郎は些細ではあるが重要な矛盾点を見落としていた。
無敵結界の弱点はそれだけである筈なのである。
しかし破邪の血統に属するさくらではあったが、悪魔でも魔王でも勇者でも神でもない歴とした一般人である。
そのさくらに些細とはいえど一ダメージ、確かに与えられたのだ。
物理・魔法の種を問わず、またどれほど凶悪な破壊力であろうと、お構いなしに外部からの攻撃の一切を無効化するという反則的なバリアをも超越する武器。
それは『通常攻撃が必中になり、与えるダメージは一になる』という幻の聖剣。
無敵結界も含めランスの世界は創造神ルドラサウムが全てのルールを管理していた。
だがそれ以外の世界のルールは別に存在したのである。
『何物をも無効化される』という概念と『必ず一ダメージ与える』という概念がぶつかり、後者の世界の概念が勝ったという事実。
即ち無敵結界を持っている魔人であろうとも、この世界では必ずしも不死ではないという事を。
――その最強の剣の名前は聖剣『エクスカリパー』。
65
:
最強の聖剣
◆ClAmicNkI.
:2010/07/29(木) 05:00:29 ID:nX3P2l4c
【G-7 巨大な墓の下 一日目 深夜】
【小川健太郎@ランスシリーズ】
【状態】一ダメージ程の怪我
【装備】支給品の刀@不明、スコップ
【道具】支給品一式 ランダムアイテム(一つはスコップ)
【思考】基本:なるようになるさ!
1:美樹ちゃんに怒られない内に帰りたい。
2:さくらちゃんはうっかり屋さんだけど悪い人じゃないみたい。
【真宮寺さくら@サクラ大戦】
【状態】健康
【装備】エクスカリパー@FFV
【道具】支給品一式 ランダムアイテム(個数も種類も不明)
【思考】基本:この島の平和は私が守る!
1:大神さん、私に力を!
2:健太郎さんは何を考えてるかわからないけど、悪い人じゃないみたい。
66
:
◆ClAmicNkI.
:2010/07/29(木) 05:01:03 ID:nX3P2l4c
投下終了です
67
:
◆iCbn790uw2
:2010/07/29(木) 17:59:29 ID:9xUhTCHY
セシリー・キャンベル、平賀才人、グリフィス投下します
68
:
無銘の剣
:2010/07/29(木) 18:02:53 ID:9xUhTCHY
セシリー・キャンベルの慰めに平賀才人はもう何度目かのため息に肩を落とす。
「はぁー、いくらなんでも間男はないよな」
「そう嘆くことはないぞ才人、人は己の間違いを認めてこそ成長出来るものだからな!」
サイトの肩を叩きセシリーが励ます。
グリフィスと式が立ち去り、森の中を歩く二人はここまで漫才コンビのようなやり取りを延々と繰り返していた。
そこに予想外の声が聞こえてきた。
「その通りだ」
「グリフィス!」
思わぬグリフィスの登場にセシリーと才人が身構える。
「先程は済まなかった」
だが、グリフィス姿を現すなり、深々と謝罪の言葉を口にする。
そのあまりに礼儀正しい姿勢には逆にセシリーが面を喰らってしまう。
「先の俺はこの状況に混乱していたのだ」
「そうだったのか、私の方こそ済まなかった」
「いや、俺こそ冷静を欠いていた」
色々な理由を付けては頭を下げるグリフィスに負けじとセシリーも頭を下げる。
これこそが非を認めた騎士の正しい姿。
そう言わんばかりの様子はもはや謝罪の応酬合戦、これは放って置けばいつまで続くのか解らない。
そんな二人の様子、特に先程とは180度方向転換したようなグリフィスの態度に才人は居心地の悪さを感じてしまう。
才人はその胸の悪さを確かめるように疑問を口にした。
「なあ−−さっきのあんたは何であんなに殺気だっていたんだ?」
「それはガッツがここにいるからだ」
「その名前はグリフィスが始めに口にしたな、私はてっきり親友の名前だと思ったのだが、違うのか?」
「ああ−−ガッツは親友だった、だがあの男は俺や仲間を裏切った。あの時に感じた絶望感は計り知れないものだったよ」
69
:
手を取り合って
◆iCbn790uw2
:2010/07/29(木) 18:05:51 ID:9xUhTCHY
ガッツの名前を口にするや、複雑な感情が絡みあっているのか。
グリフィスの目線が辛そうに宙をさ迷う。
「あんたはその男を見つけたら殺すのか?」
「それはいけないぞグリフィス、殺すのはダメだ!」
「そんなつもりはない、俺はガッツにもう一度俺達の仲間に戻ってもらいたいだけだ。ガッツは−−何者にも変えがたい本当に大切な親友だったのだから」
拳を握り、ガッツへの想いを語るグリフィスの瞳は一切の嘘偽りが無く、断固たる意思を秘めていた。
その真実の表情に、どこかグリフィスを信用していなかった才人は自分を恥じながら、先程セシリーが語った言葉を思い出す。
人は己の間違いを認めてこそ成長出来る。
だからこそグリフィスは素直に謝罪の言葉を告げながら姿を現したのだ。
「そうだったのか、実は俺−−あんたの事を疑ってたんだ。ほら、最初に見たあんたは今にも切り掛かりそうなくらいギラついた眼をしていたからな」
「無理もない、事実そこにいるセシリー嬢に切り掛かりていたのだから、俺がお前でもそう思うさ」
グリフィスが柔和な表情で右手を差し出してくる。
才人はその手を握り。
「そういえば、あんたとは自己紹介が済んでいなかったな。俺は才人、平賀才人だ」
「改めて名乗ろう、グリフィスだ」
「それならば私だけ名乗らない訳にはいかないだろう、セシリー・キャンベルだ!」
殺し合いの島で笑みを漏らす、才人、グリフィス、セシリー。
異世界から集まった三人の騎士はここで堅く拳を重ねる。
その様子はまるで彼らが旧知の仲間であるかのようだった。
70
:
手を取り合って
◆iCbn790uw2
:2010/07/29(木) 18:08:21 ID:9xUhTCHY
しばらくして、お互いの信頼を確信したグリフィスがばつの悪い表情をする。
「セシリー、こんな事を俺が今更頼むのは都合のいい話かもしれない。だが、もしも力を貸して貰えるのなら。ガッツを捜すのに協力してくれないか?」
「グリフィス、私は最初に言ったはずだろう。一緒に探索に協力しても構わないとな!それに私にも親友がいる、グリフィスの気持ちは痛いほどよくわかる!」
セシリー軽く胸を叩き、うんうんと何度も頷く。
そんなセシリーの姿に男である才人が負けるわけにはいかないとばかりに。
「しょうがねーな、これで俺だけが協力しないなんて言えるかよ。俺も協力するぜグリフィス!」
「セシリー、才人、すまない!」
「なーに、どうせ俺はやる事もなかったからな。これだけ広い島なんだ、一人で捜すのは大変だろ!」
「ああ、私も人助けをするのは騎士の務めだからな!」
「そうなると、どこから捜すのか決めないといけないな」
71
:
手を取り合って
◆iCbn790uw2
:2010/07/29(木) 18:13:38 ID:9xUhTCHY
才人はさっそく島の地図を取り出して二人の前に拡げる。
セシリーが地図を覗き込み街や村を指さす。
「やはり人を捜すなら街からだろうな、お前もそう思うだろ、グリフィス」
セシリーはガッツを捜す為の行き先を決めようとグリフィスに同意を求めて振り返る。
ザクッ。
「え?」
おもわずそんな言葉が漏れてしまい、セシリーは間の抜けたような自分の声に驚く。
次に襲ってきたものは胸を貫く焼けるような熱い痛みだった。
セシリーが最後に見た光景は、無表情のまま冷たい鋼をセシリーの胸に突き刺したグリフィスの姿。
「セシリー、グリフィス、何して−−」
背後の気配に顔を上げようとした才人に、突然セシリーが覆いかぶさってきた。
「なにをふざけてるんだよ、セシ…リー?」
鼻をつく鉄臭さと衣服を濡らした赤い液体に異常を感じた才人はセシリーの体に構わずその場から逃れる。
ザクッ。
才人の背中を熱い痛みが駆け抜ける。
余りの衝撃に体が混乱をきたし、呼吸が出来ない。
眼前にはいつの間にかセシリーの持っていた剣を斜め上に構えたグリフィスが立っていた。
「どうして、グリフィ…」
言葉が終わる前に脳天へと打ち込まれた一撃でなぜ自分が殺されるのかも解らず才人は絶命する。
「言っただろう、ガッツを捜すために協力して欲しいと。それには他の人間は邪魔でしかない」
真っ二つに割れたの才人の頭蓋を見たグリフィスはセシリーの遺体から即座に奪った剣の切れ味に驚嘆する。
「やはりこの剣は素晴らしいな、最初に戦わなければ気付けずにいた。感謝するよセシリー」
72
:
手を取り合って
◆iCbn790uw2
:2010/07/29(木) 18:15:39 ID:9xUhTCHY
グリフィスの目的は最初からセシリーの持つ武器にあった。
そしてグリフィスが語ったガッツの話は嘘偽りのない真実、だからこそ二人は油断してしまったのだ。
多少の紆余曲折はあった、だが結論から見ればセシリーの存在は至高の剣をグリフィスに届けるために。
才人はセシリーの油断を誘う為に在ったのだろう。
そう、グリフィスを取り巻く運命は見ず知らずのうちに光の鷹を勝利へと導く。
セシリーと才人の支給品を回収すると、ガッツを取り戻しすべての栄光を掴むために。
約束された勝利の剣を抱え、グリフィスは夢の続きに向かって森の出口へと歩き出す。
【セシリー・キャンベル@聖剣の刀鍛冶 死亡】
【平賀才人@ゼロの使い魔 死亡】
73
:
手を取り合って
◆iCbn790uw2
:2010/07/29(木) 18:16:44 ID:9xUhTCHY
【F-5 草原 一日目 深夜】
【グリフィス@ベルセルク】
【状態】健康
【装備】エクスカリバー@Fate/stay night
【道具】支給品×3、ロングソード@ファイナルファンタジーⅤ、才人が所有していた剣(不明)ランダムアイテム×3
【思考】基本:ガッツを俺の物にする。
1:ガッツを見つける。
2:ガッツと闘い、倒して俺の物にする。
[備考]
登場時期は12巻〜13巻辺りでガッツに敗北〜拷問される直前のどこか。
74
:
◆iCbn790uw2
:2010/07/29(木) 18:18:04 ID:9xUhTCHY
投下終了です、代理投下願います。
75
:
◆DzuK1MKXmE
:2010/07/29(木) 22:31:15 ID:j/3RMDCM
こんばんは、昨夜は代理投下してくださったお二方、並びにWIKI収録どうもありがとうございました。
今後ともお世話になるかと思いますのでよろしくお願いします。
76
:
◆Bn4ZklkrUA
:2010/07/30(金) 00:19:40 ID:tUba4szQ
こんばんは
修正案ですがノヴァの持ち物を白楼剣は消して楼観剣と魔法使いのローブだけにしました。
変更したので変更部分の修正案を投下します
相手は外套の上から身に付けてるデイバッグに右手を突っ込み、一ふりの刀を取り出す。
そして左手に先程の光の剣を産み出し二刀流の構えを取る。
右手の長刀の方は支給品なのだろう。その長刀は妖夢にとって見覚えのある……。
「なっ! その刀は!」
そう、それはここで取り上げられた彼女の愛刀、楼観剣。参加者に配られた可能性は考慮はしていたが
まさかこの時、敵対している相手が持っているなんて…!
そして彼女の名乗りは続く。
「この魔法騎士『獅堂 光』にはね!」
まるでましらの様に一足飛びで間合いを詰める。想像以上のジャンプ力から繰り出される頭上からの一撃。
だが妖夢は半ば転ぶ様にしてそれを避ける。だが『獅堂 光』もすかさず追撃をかける。
二刀を巧みに使い、連続攻撃をかける『獅堂 光』。
それを時にはかわし、時にはひのきの棒で受け流そうとする妖夢。
「その刀を返せっ! その刀は私の物だっ!!」
「アハハハハハ、返して欲しければ取り返してみればいい! あんたに出来たらの話だけどねっ!」
更に激しく攻撃を繰り返す。なぜなら妖夢は完全に攻撃をかわし切れず、ひのきの棒で受け流そうとする。
だがその棒も相手の斬撃に耐え切れずに何時折れても不思議でないほどボロボロになり始めている。
「あはっ、あんたの武器はそんな棒きれなんだ。可哀そうにね。くすくすっ」
「黙れ!!」
だが実力は伯仲。いや、疲労していなければ結果は違ってたかもしれないが今の妖夢にはこれが限界。
普段から何十年も修行を積んだ妖夢だからこそ疲労しつつも相手の攻撃をかわせていたが相手の身体能力も並ではなかった。
そして『獅堂 光』は止めとばかりに振りかぶり二刀による同時交差攻撃。
かわせないと思い至り、棒を使い凌ぐ妖夢。それすら辛うじて受け流し距離を取るが…そのひのきの棒は半ばで切断されていた。
終わったとばかりに嘲笑を深める『獅堂 光』。
「ふふっ、そろそろ終わりだね。じゃあ……終わりにしてあげるっ!」
今度こそ相手を両断すべくダッシュで距離を詰めようと……する途中で相手の行動に疑問を抱く。
(おかしい。あいつ、まったく慌ててない。何で?)
棒が折れたというのにまったく慌てずに棒の残りをまるで刀の柄に見立てるように握りしめ振りかぶり……。
それを見た瞬間、慌てて後ろに飛び退るのと妖夢が腕を振り下ろしたのがほぼ同時。
折れたひのきの棒の先から鱗形の弾幕の雨が撒き散らされる。
「くッ!」
後方に飛び退り着地、その勢いを殺さないまま連続バク転を繰り返して慌てて弾幕をかわす。
弾幕の射程から大きく距離を取った『獅堂 光』は体勢を立て直すと忌々しげに妖夢を睨み返す。
妖夢も無事に弾幕を出せたことに内心ほっとしつつも油断なく構え直す。
しばらくお互いが睨み合い、膠着状態に陥っていたが……急に『獅堂 光』は表情を和らげ……
「あんた、思ったより強いんだ。それなりに面白かったよ。じゃあね」
そう言い据えると踵を返してとっとと逃走を開始する。
「待てっ!」
ここまでコケにされた挙句、愛刀の持ち逃げまでされたら堪らないとばかりにその背中に弾幕をぶつけようとする。
だが放たれた弾幕はある一定の距離まで放たれた後、相手の背中にぶつかる前に掻き消えてしまった。
それを見て妖夢は顔を歪める。すかさず追おうとして……諦めた。さすがに放され過ぎたと思ったからだ。
(おのれっ!、私の楼観剣をっ!! だが今からではもう間に合わない。それに私も疲労している。
一度休息してから追うべきか……だが、貴様の顔は覚えたぞっ!
その首洗って待ってるがいい……獅堂 光!!)
77
:
◆Bn4ZklkrUA
:2010/07/30(金) 00:20:41 ID:tUba4szQ
それとノヴァの状態表も変更しました
【C-8 遺跡付近 一日目 深夜】
【ノヴァ@魔法騎士レイアース】
【状態】 健康、疲労(小)
【装備】 楼観剣@東方Project、魔法使いのローブ@ドラゴンクエストⅡ
【道具】 基本支給品
【思考】
基本: ヒカルといっぱい遊びたい
1: まずはヒカルが困りそうなことをいっぱいする。方法は何でもいい
2: ヒカルの心の揺らぎをいっぱい感じたいのに……
3: ヒカルはすぐに見つからなくてもいいが、近くにいると知ったら……
4: 他の参加者をどうするかはその時の気分次第
[備考]
※参戦時期は光と和解して同化する前です。
※ここにいる獅堂光が同次元のヒカルだと思っています
ヒカルの存在や心のうねりを感じる事ができないのは制限のせいだと思っています
※光の剣を作る事は出来ます。『炎の矢』などの魔法は不明です
※魔法使いのローブ@ドラゴンクエストⅡは主人公らの装備品ではなくモンスターの魔法使いの方のローブです
顔の部分が影になってて目だけ映ってたアレ。何故妖夢が顔を確認できたかは至近距離だったからか美少女補正か…
78
:
◆Ops2L0916M
:2010/07/31(土) 00:19:47 ID:XZNvGem6
【G-6 森林/一日目/深夜】
【神裂火織@とある魔術の禁書目録】
【状態】疲労(小) 、全身に軽い打撲
【装備】秋水@ONE PIECE
【道具】支給品 ランダムアイテム
【思考】基本:この殺し合いで優勝する
1: 一刻も早く優勝して元の世界に帰る
※参戦時期は小説の一巻の上条戦後です。
【F-6 森林/一日目/深夜】
【サマルトリアの王子@ドラゴンクエストⅡ 】
【状態】疲労(小)
【装備】ダマスクスソード@テイルズオブファンタジア
【道具】支給品 ランダムアイテム
【思考】基本:ロランを捜す
1:海(名前は知らない)についていく
2:戦いはできるだけ避けるか適当にあしらう。どうしてもという時だけ戦う。
【龍咲 海@魔法騎士レイアース】
【状態】疲労(大) 魔力消費(大)
【装備】無し
【道具】支給品 ランダムアイテム
【思考】基本:光と風を捜す
1:サトリ(名前は知らない)を連れてロラン(名前は知らない)の所に戻る
2:身を守る剣が欲しい
79
:
◆Ops2L0916M
:2010/07/31(土) 00:20:34 ID:XZNvGem6
最後だけさるった……これで投下終了です。どなたか転載お願いします
80
:
勇者、たつ!
◆srgp..gN4g
:2010/07/31(土) 15:58:05 ID:w3ijl.aQ
ニケ投下します
81
:
勇者、たつ!
◆srgp..gN4g
:2010/07/31(土) 15:59:43 ID:w3ijl.aQ
「おおぉ…! これは……!」
一人の少年が鼻の下を伸ばしていた。
これでもかという程に伸ばしていた。
彼の名はニケ。
どこにでもいる、極々普通の勇者様だ。
わけの分からないまま殺し合いに参加させられたニケは、まず支給品の確認をした。
しかし箱を(鞄を)開けてビックリ。
そこには、際どいポージングをした女性が表紙を飾っている本が入っていたのである。
……いわゆるエロ本だった。
最初はニケも戸惑った。
自分のような純粋で汚れのない子供が、大人の世界に足を踏み入れていいわけがない。
それに、エロ本とお酒とタバコは二十歳になってから、とニケは心に決めていた。
……だが、『押すなよ!』と言われれば押したくなってしまうのが人間なのだ。
ダメ、絶対。と言われると逆にやりたくなってしまうのが人間の性だ。
結局、ニケは見てしまった。
だって仕方ないじゃない、人間なんだもの。
「………ふぅ」
どれだけ時間が経っただろうか。
エロ本を眺めていたニケが、パタンと本を閉じ唐突に立ち上がった。
ちなみに、やましい事はまだ何もしていない。
「少年漫画の主人公にこんなモノ支給するなーーーー!!!!」
そして、エロ本を片手に持って振り上げ地面に叩きつけた。
ツッコミである。
辺り一帯に響き渡る程の大きな大きなツッコミである。
「はあっ…はあっ……ったく、あのロワとかいうねーちゃんは何考えてんだ!
清楚で優しそうなねーちゃんだなーとか思って見惚れてた結果がこれだよ!
こんなもん役に立たないだろ常識的に考えて!」
その他にも色々と文句を言いながら、エロ本に背を向けるようにしてニケはどかっと腰を下ろした。
深呼吸をして気分を落ち着かせる。
今はふざけてる場合ではない。
状況を整理しなければならない。
82
:
勇者、たつ!
◆srgp..gN4g
:2010/07/31(土) 16:01:28 ID:w3ijl.aQ
「殺し合いか……。はぁ……ククリと旅をしてる途中だったのになー。
今ごろアイツ慌ててるだろうな」
魔王ギリを封印してから約一年。
ニケはククリとパーティを組み旅をしていたはずだった。
それなのにいつの間にかこのような殺し合いに参加させられてしまっていた。
突然のニケの失踪に、今ごろククリは慌てふためいているに違いない。
「あのねーちゃんは剣士を集めたって言ってたからな。
ククリもジュジュもオヤジもたぶんいないだろ。なら、急いで帰らねーとな…」
殺し合いに乗るつもりはない。
人を殺してまで自らの望みを叶えたいとは思わないからだ。
ニケの当面の目標は、この殺し合いから脱出することだ。
なんとしてでもオヤジやジュジュ、そしてククリが待つ元の世界に帰らなければならない。
先ほどから誰か一人忘れている気がするが、きっと気のせいだろう。
「そのためにはまず仲間を作らないとな。オレ一人じゃ脱出手段なんて思いつきそうもないし」
殺し合いに乗った奴に襲われた時のことも考えると、やはり頼れる仲間がほしい。
そう思ったニケは、早速仲間を探しに行こうとしたのだが、すぐに足を止めた。
「って、そうだ。まだ道具を確認し終えてないぞ。武器はないのか武器は」
最初に出てきた物のインパクトが強すぎたせいで、他の道具を確認するのを忘れていた。
まさか、支給品がエロ本のみなわけがないだろう。
これから仲間を探して歩き回らなければならない。
となると、最低でも自分の身を守れるだけの武器がほしかった。
「できれば扱いやすい小振りの剣がいいんだけどな。
でもまあ、武器があればよしとするか。背に腹は代えられねーし」
とか言いつつも、心の中では短剣が支給されてることを願いながらニケは鞄を漁った。
83
:
勇者、たつ!
◆srgp..gN4g
:2010/07/31(土) 16:04:05 ID:w3ijl.aQ
「うおっ!? 重……いや長えよ!!」
ニケに支給されたのは短剣ではなく、2メートルほどの黒い長刀だった。
思わずツッコんでしまう。
『夜』
世界最強の剣士ミホークが愛用していた最上大業物の黒刀である。
先端へと少しずつ反り返っていく刀身をもったその刀は、見ようによっては十字架のようにも見える。
自分の身長よりも長い刀をニケはなんとか構えてみせた。
だが足元は覚束なく腕もプルプルと震えている。
「ふ、振れねーぞ……」
重量はそれほどではないのだが、あまりに長すぎてニケにはその刀を振るうことができなかった。
ましてや、この刀を持ったまま動き回ることなどできそうにもない。
屈強は戦士ならこの刀を使いこなすことができるのだろうが、ニケにとってこの刀は文字どおり無用の長物だ。
体が小さく桁外れの筋力があるわけではないニケにとっては最悪といってよいだろう。
素早さという盗賊のメリットがなくなってしまうため、ニケは刀をしまった。
2メートルを超す刀が鞄の中に入っていく様が冗談にしか見えなかったが、あえてそこにはツッコまない。
大人の事情というものがあるのだろう。
版権キャラの件も然り。
「オヤジなら……いや、やめとこう」
キタキタ親父がこの刀を尻に挟んで戦うという気持ちの悪い想像をしてしまった自分を嫌悪した。
彼なら本当にやってしまいそうなのが怖い。
「!! 待てよ、まさかオヤジも呼ばれてるのか!? 剣士じゃないけど盗賊のオレも呼ばれてるしな…もしかしたら……
ってか盗賊呼ぶって人選ミスだろ!!」
心細さを隠すように、ニケはツッコミを続ける。
内心では、ニケも怖がっているのだ。
世界を救った勇者であるとはいえ、ニケはまだまだ子供だ。
これからどうなるのか不安で不安で仕方がない。
虚勢を張っていなければ、心が圧し潰されそうだった。
84
:
勇者、たつ!
◆srgp..gN4g
:2010/07/31(土) 16:05:37 ID:w3ijl.aQ
「……でも、そんな事言ってられねーよな」
使える武器も防具もない。
装備は貧弱……というか何もないけれど。
それでも、ビクビクと怯えて何もしないのは嫌だ。
今自分にできる事を精一杯やりたい。
そう思ったニケは辺りを見回し、あるモノに目を向けた。
「そうだ! これも、こうすれば使えるんじゃないか!?」
そう言ってニケが手に取ったのは、先ほど投げ捨てたエロ本だ。
するとニケは、それを服の中に忍び込ませる。
何ということでしょう。
全く使い道がないと思っていたエロ本は、即席の防具へと早変わりしてしまいました。
「わりと厚さがあったからな。これで少しは安心だろ」
これなら、腹部へのダメージを少しは減らせそうではある。
こうして、刀を鞄にしまいエロ本を装備した奇妙な勇者が誕生した。
【C-4/川沿いの平原/一日目/深夜】
【ニケ@魔法陣グルグル】
【状態】健康
【装備】スケベ本@テイルズオブファンタジア
【道具】基本支給品、夜@ONE PIECE
【思考】基本:この殺し合いから脱出したい。
1:頼れる仲間をみつける。どこへ向かうかは次の書き手さんに任せます。
※参戦時期は魔王ギリを封印し、ククリと旅を始めてから1年経った頃。レベルも上がっている。
『夜@ONE PIECE』
ミホークが使っていた黒い長刀。
ミホークの身長が198センチで、それより長いので2メートルちょいの長さがあると思われる。
『スケベ本@テイルズオブファンタジア』
内容はその名の通り。
大した防御力はないかもしれない。
85
:
◆srgp..gN4g
:2010/07/31(土) 16:07:22 ID:w3ijl.aQ
投下終了です
>>80
の名前欄ミスってしまいました。SSの一部ではありません
どなたか、代理投下していただけたら幸いです
86
:
◆oOOla1DQxY
:2010/08/01(日) 00:02:57 ID:CITL./vA
遅くなってすみません……
これより風、クレス、ブルック 投下します
87
:
◆oOOla1DQxY
:2010/08/01(日) 00:04:02 ID:CITL./vA
市街地と城を取り囲むようにそびえ立つ外壁のそばで、少女が一人うずくまっていた。
年の頃は十代前半といったところだろうか。その表情は硬く、ひどく青ざめている。
「う、……っ」
この場所に飛ばされる直前の惨劇を思い出し、少女──鳳凰寺風は思わず口元を右の手で押さえた。
人が、死んだ。それもあっけなく、残酷に。
あの時少女は不幸にも集団の前方におり、事の一部始終を鮮明に見てしまっていたのだ。
「光さん……海、さん……」
初めにいた場所からここに転移させられる直前のこと。ほんの一瞬ではあったが、風は異世界セフィーロで心を通わせあった親友2人の姿を確認している。
それなのに、ロワと名乗った女性はあろうことか最後の一人になるまで殺しあえと言い放ったのである。
人を殺す事なんてできない。まして…………
──ん〜んん〜〜、ん〜んん〜ん〜 ♪
不意に聞こえた何者かの声にはっとし、風は身を固くした。
(もしもあの声の持ち主が殺し合いに乗っているような方だったら……)
深夜で視認がしづらいとはいえ、見通しがいい道路沿いにいるのだ。さらに声は市街地の方から聞こえており、建物の影に隠れようにもそこへ移動するまでに気付かれてしまう可能性が高い。
どうすれば、と半ばパニックを起こしかけそうになる心を奮い起こし、己のすぐ傍に置かれていたデイパックを探りだす。
あの女性によって『説明』されたルールによれば、最低でも一つは武器──剣が入っているはず。何が起こるか分からない以上、警戒するべきだと判断したのだ。
こうしている間にも謎の声……もとい鼻唄は近づいてきている。少女の緊張は否応なしに高まっていった。
(剣は魔法騎士としての私のものしか扱ったことがないけれど……)
そして取り出したのは、両手でも片手でも使用できることから片手半剣とも呼ばれる全長120センチほどの西洋剣、バスタード・ソード。
(っ、重たい……)
その平均的な重さは約2,2キログラム。大の大人ならともかく年頃の少女が扱うには少々荷が過ぎる代物である。
(でも、やるしかない)
しかし短い間ながらも慣れ親しんだ形状の剣でよかった、と頭の片隅で風は思った。
剣先を地面につけるようにして構え──長時間持ち上げて構えることは少女の細腕には厳しかった──、ぼんやりとだがこちらへと歩いてきているらしい人影をその視界に収める。
(光さん、海さん……私に、力を貸して!)
逃げる事も隠れる事もできないのなら、迎え撃つのみ。先手必勝、と風は声を張り上げた。
「そこにいるのはどなたですか!!」
──ん〜んん〜〜、ん〜んん〜……ん?
どうやら鼻唄の主はこちらが声を張り上げるまで気付いていなかったようだ。人影は歩みを止めると、その頭を少女のいる方向へと向ける。
その影が黒ずくめの格好をしているからだろうか、それとも月明かりのいたずらか。やけに白い顔の人物もいたものだ、と風はぼんやりと考えた。
──確かこっちから声が聞こえたような……
(……え、)
事実は小説よりも奇なり。人影がだんだん近づいてくるにくれ、風は昔の格言を思い知る事となった。
背格好からして男なのだろう。それはいい。黒いスーツにアフロヘア、シルクハットが意外と似合っている。これも問題ない。
「……おお! 貴女のようなお嬢さんと出会えるなんて、私はなんと幸せなのだろう!! ……おっと失礼、自己紹介がまだでした。“死んで骨だけ”ブルックです!!」
(導師クレフ、こんなことって……こんなことってあるのでしょうか?)
剣を取り落として取り乱すなどという失態を犯さなかった事に少女は自分を誉めたくなった。とはいえ、その胸中は異世界での恩師に思わず問い掛けてしまう程度には混乱していたのだが。
「あ、そうだ。一つお願いしたいことがあるのですが……」
セフィーロというファンタジー世界での経験をもってしても、はたしてこのような事が起こりうるなど想像できただろうか。
「パンツ見せて貰ってもよろしいですか?」
(開口一番にセクハラ発言をする、アフロを生やした動くガイコツが存在するなんて……っ!!!)
直後、風は剣を置いて己のデイパックをむんずと掴むと、手にしたそれを緊張の反動やら羞恥その他諸々の感情の赴くままにブルックの顔へ叩き付けるという、普段の彼女からはとても考えられない行動を取ったことを付け加えておく。
88
:
◆oOOla1DQxY
:2010/08/01(日) 00:05:11 ID:CITL./vA
「それでは、この場所にブルックさんのお知り合いはいらっしゃらないのですね」
「ええ。この場に連れて来られてもおかしくない者には一名ほど心当たりがありますが、少なくともあの場所で見かける事はありませんでした。って私、目ないんですけどー!」
「は、はぁ……」
あれから数分後、そこには仲良く情報交換をしあっている二人の姿が!(某番組ナレーション風)
「ところでフウさん、貴女はこれからどうするおつもりなんです?」
「私は……。先程申し上げた通り、私は殺し合いなどしたくありません。光さんや海さんと一緒に、無事に東京へ帰りたい。今思い浮かぶのはそれだけです。
……ただ、もう二度とあんな悲しい出来事が起きてはいけない。それだけは確かですわ」
「……あの騎士のような、ですか」
「……はい」
始まりの場所で無惨にも命を奪われた、フレンと呼ばれた騎士らしき青年。しかし風の脳裏に浮かんでいたのは何も彼だけではなかった。
(エメロード姫……)
ザガートを倒したことで無事東京へ帰れる。そう思っていた魔法騎士たちを待ち受けていたのは、その称号を持つ者の真の使命であった。
世界の平穏のみを願わなければならない身でありながら一人の男を愛する事を知ってしまった『柱』を殺さなければ、風たち三人は東京へ帰る事が叶わなかったのである。
誰かの願いや幸せのために他の誰かが犠牲になるということ。それは魔法騎士たちの心に深い傷を残し、よって風にはどうしても受け入れる事が出来なかったのだ。
「そうですか……。出来ることなら私もご一緒してヒカルさんやウミさんを捜してさしあげたい! ですが、あいにくと私にはせねばならない事がありまして。……申し訳ありません」
「いいえ、そんな! そのお心遣いだけでとても嬉しいですわ」
「そう言っていただけると助かります。では、私はこの辺で。……あ、そうだ。ここで会ったのも何かの縁! これを貴女にお贈りしましょう!!」
そういって立ち上がったブルックは、自身のデイパックから手のひら大の何かを取り出すと風に手渡した。
「これは……ぬいぐるみ?」
「ヨホホホ、私が持っていても不気味なだけでしょう? その人形だって貴女のようなお嬢さんに持ってもらう方が嬉しいでしょうし、ね」
可愛らしくデフォルメされた、赤いマントとバンダナを身につけた少年の姿をしたそれはどうやら誰かの手作りのようだった。
「それじゃあ、ありがたく頂戴いたしますね。……そうですわ! 私だけが頂くのも何なので、少しだけ待って頂けますか?」
そう言うと、風はブルックに背を向け己のデイパックを漁り始めた。
(暗くてよく見えませんね……)
微かな月明かりではよく見えず、目当ての物を取り出すのに苦労している時だった。
──そこの女の子、危ない!!
(え?)
後ろにいるブルックのものでも、まして自分のものでもない声が少し離れた場所から聞こえたかと思うと、
──鳳凰っ
突然、周囲がかがり火を焚いたかのように明るくなる。
「天駆!!」
どこからか現れた火の鳥はそれまで暗闇に慣れていた少女の目をくらませるには充分過ぎた。
(いったい何が?!)
直視はしていなかった分、ものの数秒で視界が戻ってきたのは幸いだった。そしてそこに映った己を守るように刀を構える何者かの後ろ姿に、風は驚きを隠せなかった。
それもその筈。デフォルメとリアルの差こそあれ、その人物はつい先程ブルックから貰った人形と全く同じ姿形だったのだから。
89
:
◆oOOla1DQxY
:2010/08/01(日) 00:06:22 ID:CITL./vA
その光景をクレス・アルベインが見たのは偶然だった。
しゃがみ込んで何かをしているらしき少女の後ろに黒ずくめの人物──恐らくは男だろう──が立っている。
(何かイヤな予感がする)
宿敵ダオスを倒すための旅で培われた戦士としての勘だったのか、あるいは俗に言う『虫の知らせ』だったのか。それを見た時、胸の内に何か引っかかるものを感じ取った。
そして何かを握りしめている男の左手が血の通った人間のそれではない事に気付くと、クレスは二人目掛けて走り出した。
その間にも男の腕は動き、手にしている何かを胸元で水平に構えている。それに少女が気付いている様子はない。
このままだと少女が危ないが、少年と二人の間にはまだ距離がある。時間がなかった。
魔神剣で牽制? 剣圧が向こうへ届く頃には手遅れになっているだろう。
空間翔転移で直接叩くか? 発動までには一呼吸以上の時間が必要、論外だ。
(どうか間に合ってくれ……っ!)
「そこの女の子、危ない!!」
ならば向こうの意識をこちらに向けさせることで時間を稼ぐ、これしかない。それにあの技を使えば移動しつつ攻撃も行える。
「鳳凰っ」
予め身につけていた刀を鞘から抜いて大地を蹴り、跳び上がる。少女を助けるという想いを剣気に変え、さらに炎に変えて全身に纏う。
「天駆!!」
そして刀を突き出し、そのまま滑空しながら急降下。名に冠する火の鳥の如き一撃はしかし男を捕らえる事はなかった。男が少年の想像していた以上に身軽な動きで後ろへ跳び退いたからである。
しかし少女から引き離すことには成功している。ひとまずはそれで良しとし、クレスは相対する者を注意深く観察した。
(服を身につけたスケルトン、あるいはドラゴントゥース……どうしてここにモンスターが?)
しかしその疑問はすぐに解消する。首もとを覆っているスカーフの影から、自分達のそれより小振りな首輪が頸骨にはめられているのが見えたからだ。
(つまり、こいつも僕らと同じ参加者。それも、ロワの説明が確かなら剣士ってことになる……)
考えてみれば不可解な点があった。もしモンスターならば問答無用で襲いかかって来るはず、いかな少女とて無防備に背中をさらしたりはしないだろう、と。
現に目の前の骸骨はそんなそぶりを見せもせず鞘に収まったままの得物を左手に持ち、静かにこちらの様子をうかがっているのみ。
「……一つだけ答えて欲しい。お前は『ゲームに乗って』いるのか?」
だからこそクレスは口を開いた。目の前に立つ人にあらざる者が取った行動の真意を問うために。
「待って下さい、その方は……ブルックさんは危険な方ではありません!」
風は声を荒げた。
確かにブルックは魔物と間違われてもおかしくない外見をしている。目の前の少年はきっと、自分が襲われていたと勘違いをしているのだろうと考えた故の言動である。
「でも僕は確かに見たんだ。しゃがみ込んで何かをしている君の背に、手にしている剣を突き立てようとしていたところを」
「え……?」
思わずブルックを見上げる風。まだ名も知らぬ少年剣士が警戒の構えをゆるめる様子はなく、当のブルック本人は沈黙を貫いていた。
「……お答えする前に、貴方の名前をお聞かせ願えませんか」
「……クレス。クレス・アルベイン」
そのまま数秒は経っただろうか。沈黙を破ったのは問い掛けられた骸骨剣士。
「クレスさん、ですか……。貴方の仰る通りです。確かに私はそちらのお嬢さん……フウさんの命を奪うため、この剣を構えていました」
90
:
◆oOOla1DQxY
:2010/08/01(日) 00:07:55 ID:CITL./vA
「そんな、ブルックさん……っ」
「っ……。それが、お前の答えなんだな? ブルック」
(どうして)
頭が思うように働かない、声を出す事が出来ない。足の力が抜け、そのまま舗装道路に座り込む。この時、風の心は衝撃と悲しみで白く塗りつぶされていた。
「フウさん。貴女を騙していた私が言うのもおこがましいですが、私を恨んでくださって構いません。……まことに申し訳ありませんが、あなた方には死んでいただきます」
ブルックが剣を抜いて構えるのにあわせ、クレスと名乗った少年も刀を正眼に構え直す。
「……どう、して」
そして少女の呟きを皮切りに、相対する剣士は同時に地を蹴った。
ギィン!!
「どうして殺し合いに乗るんだ! ロワと名乗ったあの女の言う事を信じているとでも!?」
「私には何としてでも果たさねばならない『約束』がある! そのためには生きてここを出なければならないのです!!」
ぶつかり合うこと、一合。ブルックが持つ竜牙兵の名を持つ直剣とクレスが持つニバンボシという銘の刀がぎりぎりと鍔競りあう。
「ならッ、どうして立ち向かおうと思わない!? みんなが助かる道を考えようとしないんだ!?」
膠着状態が続く中、クレスはあることに気が付いていた。剣士の魂ともいえる剣同士が触れあっている今、その違和感をはっきりと感じ取る事ができたのだ。
(口では殺すと言っていた割に殺気があまり感じられない……? いや、これは殺気というよりもむしろ……)
「死合いの最中だというのに考え事とは、とんだ余裕の持ち主ですね……ッ!!」
(ッ! しまった!!)
キイィッ!!
それは剣士として致命的な隙。想像以上の力で刀を押し払われてバランスを崩し、クレスは二、三歩たたらを踏む。
(くッ、ここまでなのか……っ!)
だが、死を覚悟した少年にとどめの一撃が来る事はなかった。間合いを広げたブルックが攻撃の手を止めていたからである。
「……若いというのは素晴らしい。あなた方のように夢を持ち、それを力に羽ばたく事ができるのですから」
ブルックは話を続ける。
「私は、そのような夢を持つには年老い過ぎてしまいました……。
皆が助かる道? そのようなものがあるのなら……およそ50年前、私は独りこの姿になってでも生き延びようと考えたりはしなかった!!」
「?!」
クレスの身体は金縛りに遭ったかのように動かなくなった。いや、魂の慟哭を前にして動けなくなったのだ。
「……おしゃべりが過ぎてしまいましたね。
これで終わりです」
竜の牙がクレスに襲いかかる。
「『戒めの風』!!」
しかしその身体に届く事はなかった。
質量のある風がブルックの身体にまとわりつき、捕らえていたのである。
91
:
◆oOOla1DQxY
:2010/08/01(日) 00:10:54 ID:CITL./vA
「フウ、さん……」
「ブルックさん。どうか、ここは退いて頂けないでしょうか?」
ブルックの顔を見つめ、静かに涙しながら風は語る。
「もう、嫌なんです。誰かの為に誰かが傷つけたり、傷ついたりするのは……っ」
そして、静かにくずおれた。『魔法』の行使者が気を失い、ほどなくブルックを戒めていた風もかき消える。
その様を、クレスはただ見ていることしかできなかった。
【鳳凰寺 風@魔法騎士レイアース】
【状態】 健康、精神疲労(極大) 気絶中
【装備】 バスタード・ソード@現実
【道具】支給品、 マスコット(@テイルズオブファンタジア)、ランダムアイテム×1
【思考】基本:光、海と共に生きて東京に帰る。
1: 誰かの為に誰かが傷つけたり、傷ついたりするのは嫌だ
2: ブルックには殺し合いに乗らないでいて欲しい
[備考]
※参戦時期はエメロードを撃破して東京に帰った後(第一章終了後)です
【クレス・アルベイン@テイルズオブファンタジア】
【状態】 健康、疲労(少)
【装備】 ニバンボシ@テイルズオブヴェスペリア
【道具】支給品、 ランダムアイテム×1
【思考】基本:仲間を募り、会場から脱出する
1: いったい何が起こったのかを知りたい
[備考]
※参戦時期は本編終了後です
【ブルック@ONE PIECE】
【状態】 健康、疲労(小)
【装備】 ドラゴントゥース@テイルズオブファンタジア
【道具】支給品
【思考】基本:生き延びて約束を果たす
1: 優勝して元の世界に帰る
2: フウの言葉を受け入れるか考える
[備考]
※参戦時期はスリラーバークで影を取り戻した直後です
92
:
◆oOOla1DQxY
:2010/08/01(日) 00:13:20 ID:CITL./vA
これにて投下終了です。題名は「哀しき鼻唄」で
規制されていたので、どなたか代理投下をお願いします
93
:
無銘の剣
:2010/08/01(日) 00:21:36 ID:1I987GYI
城近辺でしょうが、場所が書いてないですよ
94
:
◆oOOla1DQxY
:2010/08/01(日) 00:26:15 ID:CITL./vA
げ、本当だ
三名の現在地は
【G-3 市街地 外壁傍/一日目/深夜】
です。重ね重ねすみません……
95
:
無銘の剣
:2010/08/01(日) 00:26:48 ID:CliEra5.
場所は正確に書いてくれよ…
96
:
◆sV2PTzTYLA
:2010/08/01(日) 00:59:47 ID:KApa0y4s
すいません。遅れました。
アグリアス・オークス、ギルガメッシュ
投下します。
97
:
無銘の剣
:2010/08/01(日) 01:04:32 ID:.0.qcsqo
どした?
98
:
無銘の剣
:2010/08/01(日) 01:06:53 ID:KApa0y4s
「ふう……」
アグリアス・オークスは砂漠地帯を抜け、額の汗を拭う。
靴には砂が入り、心地よいとは言えなかった。
失った水分を補給するためにデイパックを漁り水を取り出す。
水が入った透明のペットボトルは彼女にとって未知のもの。訝しがりながらもキャップを回転させ、水を飲んだ。
彼女は聖大天使アルテマとの戦いに身を投じていた。
長き戦いを終え光に包まれた後に、待ち受けていたのはこのような殺し合いである。
愛剣セイブザクィーンを失い、デイパック一つを渡され砂漠地帯に独り。
(これがラムザ達との旅で砂漠にも慣れていた私だったから良かったものの)
しかしアグリアスにはこの度の非道なる催しは許せなかった。
会場にいた年端も行かぬような子供を巻き込んだことも。
この首輪を嵌めて、畜生に貶めようとすることも。
名簿を見れば、知る名は二つ。
シドルファス・オルランドゥ、クラウド・ストライフ。
ここに来るまでには、背を預け共に戦った二人である。
異世界より召還されたクラウドはなぜか火山の頂上に武器を隠しているなど謎多き男だったが、あれで仲間思いなところもある。
オルランドゥ伯に関しては言うまでもあるまい。
なにより両者とも腕はたつ。
「まずは二人を探すとするか……ん」
今後の方針について考えていたアグリアスの顔に緊張感が走る。
あのうっそうとした木立から気配を感じた。
いつのまにやら、気配を感じ取れるほどのレンジに入っている。
実力の程までは分からぬ。接触するリスクは高いかもしれない。
(だが……)
彼女は接触することを選んだ。情報が重要であったからだ。
最初に爆殺された男の鎧などは、彼女のいた世界のどの騎士団にもあてはまらぬ。
おそらくイヴァリースには存在しないものであろう。
つまり今では自分こそが以前のクラウドのように、何も分からぬ立場に立っているのだから。
99
:
無銘の剣
:2010/08/01(日) 01:10:55 ID:CliEra5.
ここはさるさんはないぞ
100
:
無銘の剣
:2010/08/01(日) 01:11:43 ID:KApa0y4s
近づけばそこにはジョブ「侍」と酷似した人がいた。
否、顔が人のそれではない。つまり、人型モンスター。
人外がいるとは会場にいた時点で気づいていたが、まさか最初に出会うとは。
(どうする。交戦するか、それとも見逃すか)
接触することを考えていたアグリアスだが、モンスターと分かればそうも行かぬ。
チョコボのようなまだ可愛げのあるモンスターならばまた違ったのかもしれないが、その男の凶相が災いした。
一人で戦って死ぬようなことがあればどうしようもない。しかし見逃せば、他のものが襲われるかもしれない。
アグリアスは結局選択することができず、剣を抜き音を立てず近づく。
剣は<カリバーン>。同じくこの地に立つ騎士王の紛う事なき名剣である。
息を殺し聖剣技の射程まで近づく。
そして陰から、モンスターの様子を伺っていた。どうやらデイパックを漁り、剣を探しているようである。
しかしモンスターがデイパックから意識をそらすと、同時にアグリアスの視線に気づいた。
その目が緊張していたアグリアスには非常に獰猛に見え、そして選択を促す。
(不味い!!気づかれた!)
無双稲妻突き。
ホーリーナイト特有のアビリティ、聖剣技の中でも射程範囲の広い技である。
チャージすることなく瞬時に魔力を練り、剣に纏わせる。
剣を以ってして招雷。その一振りは雷をモンスターに落とした。
101
:
無銘の剣
:2010/08/01(日) 01:16:18 ID:KApa0y4s
「なにぃ!!!!!!!!」
しかし、届かぬ。
モンスターが突然の攻撃に驚くのと同時に、アグリアスもまた驚愕とした。
というのもモンスターより五歩程離れ、十字の雷が落ちたからである。
地を抉るその威力は変わらぬが、問題は射程だ。アグリアスは不動無明剣を使ったのかと錯覚してしまう。
(力が制限されているのか?無双稲妻突きのみか?もしや他の技もか?)
アグリアスは違う環境に連れてこられたというのに、まさか勝手が違うはずもないと決めつけ、
敵に仕掛けた己の浅慮を責め、またかつてない事態に動揺していた。
「待ってくれぇ!!!戦うつもりは無い!!」
喋れるのか。
動揺に囚われたアグリアスは、しかしモンスターの言葉を確かに聞き取った。
その言葉、信用すべきか、殺すべきか。
奴はモンスターだ。人型は他に比べ、知恵が回るという話もある。
罠?
アグリアスが迷いにとらわれているとモンスターはそれを察し、デイパックを投げてよこした。
そのモンスターに敵意が無いと分かったアグリアスはこれ以上、追撃するわけにはいかなかった。
アグリアスは仕方なく剣を収め、ギルガメッシュと話を始めた。
■
「すまなかった。お前が殺し合いに乗っているのと勘違いして」
「まあしょうがねえよ。こんな顔見ればな」
「……」
「いや、責めてるわけじゃないんだぜ。俺も一応モンスターだし」
ギルガメッシュはバツの悪そうな顔をした。
アグリアスは自分がこの空気を作り出しているのだな、と思う。
こうして話をしていても、ギルガメッシュに対する不信感をあらわにしてしまっているのだ。
102
:
無銘の剣
:2010/08/01(日) 01:20:55 ID:KApa0y4s
(どうしたものか……)
アグリアスの焦燥を感じ取ってか、ギルガメッシュが急に腹を割って話そうと言った。
ギルガメッシュの突然の申し出に戸惑うアグリアスであったが、それを断る理由も無い。
ギルガメッシュを見極める機会と考えれば悪くは無いため、了承した。
このモンスターは先ほどにもデイパックをよこすという機転を見せるなど、やたらと空気を読んでくれるものだとアグリアスは心中で評価していた。
そして「信頼」を勝ち取るため、ギルガメッシュは自己紹介をしはじめた。
それはつまり、モンスターである彼が何故殺し合いに乗らないのか、を説明するということだ。
長いのでギルガメッシュの話を掻い摘むと以下のとおりだ。
彼は、元の世界ではそれなりに腕の立つ武芸者であったらしい。
上司にそれはもう大層見込まれていて、その実力に見合うアイテムを渡されていたほど。
渡されたアイテムを装備し、幾度と無く敵対していた一行と剣を交えた。
彼は戦い続けた。しかしこの一行は強かった。(同時にアイテムを盗まれ続けた。まるで見えない手によって操られた一行によって)
それでもなぜか友情は育まれた。
一行の危機に颯爽と現れ(この時、まさか鎧を盗まれるとは思わなかったという)、その強敵を倒すため自爆したそうだ。
この時、ギルガメッシュは死んだ。
しかしギルガメッシュは死ぬ間際に、一行と共に戦えれば、と夢想した。
同時にそのうちの一人、バッツ・クラウザーとサシで戦えればとも。
よってこんな殺し合いに乗るつもりはなく、ここにいるはずのバッツと戦う。
それが済んだら一緒に戦う、今度はバッツの仲間として。
そのギルガメッシュの告白はアグリアスの「信用」を得るには十分であった。
仲間として、という言葉は、人とモンスター、味方と敵の垣根を越えた友情を感じさせる言葉であったのだ。
なによりもその目である。その目はかつての仲間、ビブロスのような目をしていた。
信じられる男だ。そうアグリアスは結論付けた。
103
:
無銘の剣
:2010/08/01(日) 01:23:04 ID:KApa0y4s
しかし、
なぜ友情が芽生えたのか。
ギルガメッシュ、お前は本当に見込まれていたのか。
鎧盗まれたって笑ってていいのか
アグリアスの内に疑問が浮かぶ。
「なぜ鎧を奪ったのだ……」
「まあ事情があったんじゃねえか」
そんなアグリアスの疑問もギルガメッシュにとってはこんな感じで笑って済まされるのであった。
■
少しだけ彼らは打ち解け、本題の情報交換を始めた。
「あの女について知ってることは無いか?」
「悪いな、全然知らん」
少しもしないうちに自分たちが異世界から集まったことに気づき、驚いた。
加えて、魔法や武器などに関する共通項があったが、肝心のロワなる女の素性は分からない。
結局のところ、情報的な面での進展は無し。
そのいらだちを誤魔化すようにアグリアスは話題を変えた。
「武器は持っているな?」
「ああ、それならここに」
そう言ってギルガメッシュが取り出したものは黄金の剣。
黒き剣身には細やかな紅が入っている。名を<乖離剣エア>という。
ギルガメッシュはその剣に惚れ込んでいるといった風である。
ギルガメッシュ自身が武器収集を趣味とし、偶然にも逸品を得たことで興奮しているのだろうか、
アグリアスに対し鼻息荒く剣を見せびらかす。
「どうだ?かつての我が愛剣、エクスカリバーに勝るとも劣らぬうつくしき剣よ!」
「おい」
「しかも、エクスカリバーと違ってよく切れるんだ!エンキドウにも見せてやりたいもんだぜ!」
「ちょっと」
「どうした!アグリアス!驚いて声も出ないか!」
「赤いのがすっごくうずまいているんだが、あと剣から目を離すな」
「んー!?なんかうるさくて聞こえねえよ!もっと大きな声でしゃべ
104
:
無銘の剣
:2010/08/01(日) 01:26:30 ID:KApa0y4s
その後のF-4は惨憺たるものであった。
ギルガメッシュの興奮に呼応した天地乖離す開闢の星の暴発。
その一撃は豊かなる大地を一転、荒れ果てた焼け野原に変貌させた。
緑は失われ、そこに矮小ながらも確かに生きていた生物たちすら消滅してしまった。
残るものは一つを除いて何も無い。ギルガメッシュの罪の証である。
アグリアスはしばしの放心の後に、あまりの衝撃に気絶してしまったギルガメッシュを叩き起こす。
気絶したものを起こすのは危険であるかもしれないが、そうも言ってられないのだろう。
そして彼女は、お前は何をしでかしたか分かっているのかと問う。
状況を確かに認識しながらもギルガメッシュは表情を努めて変えぬようにした。
「なんだ……うん。あんまり人を信用しちゃいけないぜ。もし俺が乗ってたらお前は死んで
「馬鹿者―!!!」
かくしてあまり反省の色が見えぬギルガメッシュにはアグリアスの鉄拳が見舞われた。
果たして彼は「信頼」を得ることができるのだろうか?
【E-4/木立/一日目/深夜】
【アグリアス・オークス@FFT】
【状態】健康
【装備】カリバーン@FATE
【道具】基本支給品、未確認支給品1〜2
【思考】基本:死なない。
1: ギルガメッシュを放ってはおけない(悪い意味で)
2: クラウドとオルランドゥを探す
※参戦時期は原作終了後
聖剣技の射程が制限されているかもしれないと考えています
【ギルガメッシュ@FF5】
【状態】健康、MP0、ギルガメッシュチェンジはしていない
【装備】乖離剣エア@FATE
【道具】基本支給品、未確認支給品1〜2
【思考】基本:バッツを見つけたい。
1: やっちまったなあ……
2:他に武器が手に入ったらギルガメッシュチェンジするか
※参戦時期は自爆後
※F−4が焼け野原になりました。周囲の人間に見られたかもしれません。
105
:
無銘の剣
:2010/08/01(日) 01:32:18 ID:1I987GYI
投下乙です、ですが
名簿は支給されていません
カリバーンは既に支給済みです
エアははっきり言って剣じゃないです
「切れる」形状でもありません
真名の解放もせずに暴発する事もないです
というか、担い手でもないのにそう簡単に解放されても…
106
:
無銘の剣
:2010/08/01(日) 01:33:07 ID:KApa0y4s
投下終了です。 題名は「ギルガメッシュ ナイト」です。
規制されているので、どなたか代理投下お願いします。
予約延長など申し訳ございませんでした。
107
:
無銘の剣
:2010/08/01(日) 01:38:34 ID:CliEra5.
エア支給は微妙
ネタとしては面白いが…俺はいいとは思うが暴発はおかしいみたいだからそこは無しか
それとカリバーンはすでに支給されてるよ
108
:
◆ClAmicNkI.
:2010/08/01(日) 18:28:20 ID:6UnDlyS.
サマルトリア、海、ヒュンケル投下します。
109
:
ロッキー
◆ClAmicNkI.
:2010/08/01(日) 18:28:53 ID:6UnDlyS.
「その青い人ってのは、俺の服にある様な紋章が描かれた盾を持っていなかったか?」
「一緒にいたのは短い間だったけど、それらしき盾は持ってなかったと思うわ」
来た道を戻りつつ、龍咲海はサトリに軽い自己紹介と共にヒュンケルとロランの件について説明した。
「ロトの紋章が描かれた盾が没収されたとすると決め手に欠けるな……。ロトの子孫ならもっとアピールしとけってんだ」
この狂気に満ちた島で、一緒に大神官ハーゴンを討伐したかつての仲間と再開できる幸運に、サマルトリアの王子は顔を綻ばせた。
彼が一緒であるならば、魔王だって相手できる。
「あいつは生真面目だからなぁ。いつも面倒ごとを抱えてやってくるし困ったもんだ」
日頃軽口を叩いているサトリであったが、親友との再開に心が躍り軽口も更に磨きがかかっていた。
「もうすぐよ!急いで」
「それにしては静か過ぎやしないか。ったく、人を駆けつけさせておきながら自分一人で解決してやんの」
二人の脳裏に違った映像が流れる。
海の脳裏には自分を庇って疵ついていたロランの姿が。
サトリの脳裏には遅かったな、と笑いかけてくる戦友の姿が。
110
:
ロッキー
◆ClAmicNkI.
:2010/08/01(日) 18:29:23 ID:6UnDlyS.
「嘘……だろ……」
サトリの目の前には見慣れた親友の物言わぬ背中が横たわっていた。
身体の至る所が傷ついていたが、恐らく死因は背中へと貫通している一刺しであろう。
「おい、そんな悪質な冗談お前らしくねぇよ。いつもの俺の軽口への仕返しにしたって時と場合があるだろ……」
相棒のこんなに疵付いた背中は未だかつて見た事がなかった。
大神官ハーゴンやシドーを相手にしたときですら、ここまでの疵を負っていただろうか。
サトリが知っていたロランの背中――それは、彼が彼なりに必死に守ってきた居場所であった。
「ザオリク……!ザオリク……!おい、これは俺の数少ない取り柄だった筈だろっ」
必死になって戦闘不能状態から復活させる呪文を連唱する。
しかし無駄にMPを消耗するばかりで、屍は再び動き出す事がなかった。
「畜生、畜生っ……!!」
先程まで軽口を叩いていた男が、今は地面に膝をつき拳で大地を叩きながら哭いていた。
その悲痛な姿から、自分と光や風との関係と同じだったのだろうと予測はつき、海は自分からサトリに声をかけられないでいた。
「――おい、その男はどんな風貌をしていた」
再び顔を上げたサトリの面持ちは憎しみの色に支配されていた。
「え、二十歳前後で端整な顔立ちしててる男だったけど……」
「サンキュー。情報としては少ないがこの近くにまだいるなら十分だろ」
そういうが早いかサトリは駆けだした。
「ちょ、ちょっと待ちなさいよっ!」
「わりぃが、今回ばかりは足手まといと一緒に行動できる自信がないのでね。デートはまた縁があったらだ」
私だって戦える、ロランの時に続き再びそう叫びかけた海であったが、ロランの背中の疵を思い出し言葉を紡ぐ事は出来なかった。
「ほんと、男って馬鹿なんだから……。死んだら許さないんだからね」
走り去るサトリの背中を見つめながら、海はそう呟いて佇むしかなかった。
111
:
ロッキー
◆ClAmicNkI.
:2010/08/01(日) 18:29:54 ID:6UnDlyS.
「貴様か――ロランを、親友≪ダチ≫を殺ってくれたのは」
「どこに鼠が隠れているのか知らんが、あの女の呼んだ増援って所か」
ヒュンケルは周りを見渡す。
声と殺気から近くの何処かから、自分を狙っている者がいるのは解るが、場所が特定できない。
木々に囲まれ隠れる場所が多い上に、周囲は暗く、後方には山が聳え立っており声が乱反射するので隠れるにはもってこいの場所であった。
「ローレシアのロランか……、見事な剣士であった。しかしその親友を自称する男が隠れるしか脳がない鼠とは同情する」
「あぁ俺の事はなんとでも言うがいいさ。実際親友の背中に隠れながら戦ってた様な男だ。だがあいつは……ロランは死んで良いような奴じゃなかったっ!」
足手まといだった自分を嫌味一つ漏らさずにいつも笑顔で迎えてくれていた。
ベラヌールの町でハーゴンの呪いに倒れたときも、見捨てる事はせず貴重な世界樹の葉を自分の為に使ってくれた。
体力(HP)だってムーンブルグの王女に負け、力もロランの半分程度、呪文だってスクルトとザオリクしか取り柄が無いこの俺を肩を並べるに値する戦友のように扱ってくれたのだ。
その十八番だったザオリクもムーンブルグの王女――ルーナの方が習得が早く、何度枕を涙で濡らした事だろうか。
何とかしてロランの役に立ちたくて自己犠牲呪文≪メガンテ≫を覚えた事もあった。
それがロランの怒った顔を見た最初で最後であった。
メガンテを使う覚悟があるなら置いていくとまで言われた。
どんなに足手まといな時でもそんな事は言わなかったのにだ。
その言葉で俺はロランの背中を命に代えてでも守り抜く事を決意した。
力も鍛えて、ロランの背中を守り抜く相棒に恥じぬ努力はしてきたつもりだ。
だが俺は肝心な時にあいつの後ろにいる事が出来なかった。
112
:
ロッキー
◆ClAmicNkI.
:2010/08/01(日) 18:30:29 ID:6UnDlyS.
「これだけ言われても姿を見せぬか……、鼠は所詮鼠か。かくなる上はこちらから鼠狩りを行うまで。魔王軍、不死騎団長ヒュンケ……」
痺れをきらし名乗りを上げようとしたヒュンケルの言葉が途中で途切れる。
「閃熱呪文≪ギラ≫かっ!」
視界を覆うように襲い掛かる炎の群れ。
知っている呪文なだけに、ヒュンケルは思わず身構える。
愛用していた魔鎧さえあれば、ギラ程度気にする必要もないのであろうが今はそうも言ってられない。
しかしその見覚えのある呪文はかつての威力を伴わず、肌を軽く焦がす程度の威力で終わってしまった。
「視界がなくなれば十分っ!」
自らの放ったギラを切り裂き、ダマスクスソードをヒュンケルに振り下ろす。
「相手の名乗りの途中に仕掛け、なおかつ目眩ましとは騎士道の風上にも置けぬ輩が」
しかしサトリの剣はヒュンケルを切り裂く事敵わず、覇者の剣によって軽々と受け止められた。
ダマスクスソードを払いつつ、ヒュンケルは返す刀で目の前の鼠を切り裂こうと試みる。
「ならば、これでどうだっ!大閃熱呪文≪ベギラマ≫」
先程より燃えさかる炎がヒュンケルを包み込む。
炎によって目標を見失ったヒュンケルの剣は、やむなく目の前の炎に振り下ろした。
切り裂いた炎の向こうに見えたのは、トラマナを唱えつつ炎に駆け込んでくるサトリの姿。
「小癪なっ!」
ダマスクスソードと覇者の剣が再び交わり、金属同士がぶつかる特有の甲高い音を周囲に響かせた。
113
:
ロッキー
◆ClAmicNkI.
:2010/08/01(日) 18:31:02 ID:6UnDlyS.
「スクルトっ!」
ヒュンケルから放たれたブラッディースクライドの剣圧を、サトリは守備力上昇呪文で辛うじて耐える。
幾たびかの撃ち合いの中、次第にサトリが劣勢になっていった。
ロランが真っ正面から勝てなかった相手である。
剣士として全てが劣る自分が仇を討とうとするならば、綺麗事を考えず呪文や不意打ちを駆使するしか方法はない。
しかし奇襲は尽く失敗し、今では奇襲のタイミングに合わせて見えない相手に反撃を合わせられたりもしている。
更にはロランへのザオリクも含め、今まで呪文を湯水の如く使ってきたツケが回ってきた。
ガソリン(MP)切れ――それはロランと同等かそれ以上の剣士であるヒュンケルに対し死を意味していた。
――俺に、もっと力があれば!
力が足りないから、尽くヒュンケルに剣を受け止められていたのだ。
これがロランであれば、そう易々は受け止められず相手にも幾分かダメージを与えていられたであろう。
そして力と共に武器の愛称も悪かった。
閃熱呪文を切り裂いた剣の煌めきは見覚えがある。
あれはロトの子孫に代々伝わる剣と同じ煌めき。
つまりはオリハルコン製の剣である。
それに対しこちらはウーツ鋼の合金製の剣。
決してなまくら剣ではなかったが、伝説の剣と同等の剣相手では分が悪い。
114
:
ロッキー
◆ClAmicNkI.
:2010/08/01(日) 18:31:35 ID:6UnDlyS.
「そろそろ終わりにしよう」
対するヒュンケルもまた決め手が欠けていて苛立っていた。
いや、恐らく相手が正々堂々とした剣士であるならば長い戦いでも楽しめていたであろう。
しかし相手は不意打ち、奇襲、目眩ましなどの搦め手を多用してきている。
その様な戦いの方法があるとも、正面から戦う自分の様な相手に非常に有効であるという事も重々承知している。
だが幼い頃から騎士道を教わってきたヒュンケルにとっては好みではないスタイルであった。
しかし相手の闘気や癖も読めてきたし、MP切れ間近か呪文の手数も減ってきた。
畳み掛けるタイミングとしては悪くは無い。
「筋は悪くはない、だが相手が悪かった様だな。親友共々同じ刀の錆になれる事を幸いと思え」
再び腰を落とし、ブラッディースクライドの構えを取る。
大閃熱呪文だろうが守備力上昇呪文だろうが問答無用に突き抜ける威力となる様に暗黒闘気を剣に込めた。
「へっ、こっちの弱り具合までお見通しって訳かよ。しかし窮鼠猫を噛むとも言うぜ。閃熱呪文≪ギラ≫を知っていた貴様ならこの呪文の威力も知ってるだろ?」
ニヤリと笑うその姿は、とある有名な魔物を思い出させる。
そしてその威力も優勢ながらも勇者アバンと相打ちで終わってしまった同僚で重々承知していた。
「まさかっ……」
「そう、そのまさかさ!自己犠牲呪文≪メガン……」
自慢のブラッディースクライドもメガンテ相手では敵わないであろう。
咄嗟にヒュンケルは構えをとき、一歩退いた。
自爆しようとする相手に付き合う必要は欠片もない。
しかし敵に背を向けるという、騎士道の美学から反した行動に一瞬躊躇してしまった。
115
:
ロッキー
◆ClAmicNkI.
:2010/08/01(日) 18:32:05 ID:6UnDlyS.
「――なーんてね」
攻撃もできず、後退もできず中途半端に腰が引けていたヒュンケルに向かってサトリは跳躍した。
これが最大、最後のチャンス。
落下速度を味方につけ、最大の力で相手に剣を叩き込む。
「貴様!どこまで下劣な真似を!」
今日一番の金属音が鳴り響く。
これだけの隙でさえ、サトリの一撃はヒュンケルに通用しなかった。
剣を横にし、刃に手を当てヒュンケルはサトリの一撃に耐えたのだ。
しかしそれもサトリは予想していた。
一番の目的はヒュンケルに腰が引けたまま両手を使わせること。
サトリは空中で剣を止められると同時にダマスクスソードを片手に持ち替え、空いた片方の手で今まで相手に見せなかった死角――背中からもう一つの支給品を取り出した。
そのまま着地と同時に、相手に向かい再度跳躍する。
「――むっ!」
「俺の剣は二度“破壊”の風をおこす」
すれ違いざまに、相手の無防備な横腹を切り裂いた。
しかし悲しいかな支給品はナイフであった。
呪文以外で初めて仇に痛手を負わせる事に成功はしたが、疵はそう深くはなかった。
「俺は親友を殺した貴様を許さないっ!更に強くなり、良い武器も手に入れたらもう一度貴様の前に現れてやる!」
そう言い捨てながら、そのままヒュンケルの後方へとサトリは走り去っていった。
「俺もまだまだ甘いという事か……」
ヒュンケルは逃げるサトリを追おうとしたが、脇腹の痛みからサトリの背を見送くるしかなかった。
116
:
ロッキー
◆ClAmicNkI.
:2010/08/01(日) 18:32:37 ID:6UnDlyS.
【E-6 森林/一日目/黎明】
【サマルトリアの王子(サトリ)@ドラゴンクエストⅡ 】
【状態】疲労(中)、MP消費大
【装備】ダマスクスソード@テイルズオブファンタジア、チキンナイフ(逃げた回数二回)@FFV
【道具】支給品
【思考】基本:ローレシアの王子(ロラン)の敵を討つ。
1:他の参加者はどうでもいいが、ヒュンケルだけは許さない。
2:戦いはできるだけ避けるか適当にあしらう。どうしてもという時だけ戦う。
【ヒュンケル@DRAGON QUEST-ダイの大冒険-】
【状態】傷(小)、体力消費(中)、脇腹に裂傷。
【装備】覇者の剣@DRAGON QUEST-ダイの大冒険-
【道具】支給品
【思考】基本:優勝する。
1:優勝する。
2:できるだけ女は手にかけたくない。
3:自分の未熟さを痛感。
【F-6 山脈/一日目/黎明】
【龍咲 海@魔法騎士レイアース】
【状態】疲労(大) 魔力消費(大)
【装備】無し
【道具】支給品 ランダムアイテム
【思考】基本:光と風を捜す。
1:また一人になっちゃった。
2:身を守る剣が欲しい。
117
:
◆ClAmicNkI.
:2010/08/01(日) 18:33:37 ID:6UnDlyS.
本スレが規制中にて投下できませんでしたので、代理投下お願いします。
118
:
無銘の剣
:2010/08/01(日) 21:03:14 ID:QIJH3/7I
時間置いたけど代理しておk?
119
:
◆ClAmicNkI.
:2010/08/01(日) 21:10:31 ID:6UnDlyS.
>>118
お願いします。
本スレ規制厳しくて、自力では投下できませんので助かります。
120
:
無銘の剣
:2010/08/01(日) 21:23:56 ID:QIJH3/7I
代理投下したよ
121
:
◆ClAmicNkI.
:2010/08/01(日) 21:24:23 ID:6UnDlyS.
ありがとうございました。
122
:
無銘の剣
:2010/08/02(月) 14:17:35 ID:fvG3.P8Q
本スレが荒らしに埋められたのでしばらくはこちらを本スレ扱いした方がいいかも
123
:
◆WoLFzcfcE.
:2010/08/03(火) 01:09:46 ID:dspSIYe.
アグリアス、ギルガメッシュ
投下します。
124
:
◆WoLFzcfcE.
:2010/08/03(火) 01:11:16 ID:dspSIYe.
アグリアス・オークスは騎士である。
ルザリア聖近衛騎士団に属し、その剣は王女オヴェリア・アトカーシャに捧げられている。
彼女と王女の関わりは深く、アグリアスは職務ではなく自身の忠義を以て王女を護るべく剣を振るってきた。
放浪の末に主と離れても、その心はいつも王女の身を案じていた。
彼女は信頼できる友と共にイヴァリースを蝕む者たちとの決戦に臨んでいたはずだった。
その戦いの先にこそ求める平和があり、ひいては主の安寧にも繋がると信じて。
記憶が確かならば、自分は魔法都市ガリランドで宿を取っていたはずだ。
しかし今、アグリアスが立っている場所はどことも知れない建物の中だった。
最初は夢でも見ているのかと思った。
だが、ロワと名乗る女から伝えられた戦乱の匂い、死の宣告。
そしてフレンなる金髪の青年が無残な死を遂げるのを見て、尋常な事態ではないと悟った。
あの場でまず彼女がしたのは声を潜め周囲を見渡したこと。
辺りには自分と同じく殺し合いに巻き込まれたであろう数十名の人間の姿があった。
一行のリーダーであるラムザ・ベオルブ、銃使いムスタディオ、部下であるアリシアとラヴィアン、古参の傭兵ラッド。
神殿騎士メリアドール、ハンターであるベイオウーフ、その恋人レーゼ、ラファとマラークの兄妹に、チョコボのボコ。
幸いにも彼らの姿はなく、ほっと胸を撫で下ろした。
ムスタディオやレーゼなどはともかく、ラムザやメリアドール、それに部下二人などはこの場に招かれていてもおかしくはなかったからだ。
だが――幸か不幸か、自分一人でもなかった。
パーティの主力として活躍していた剣聖シドルファス・オルランドゥ、そして謎の男クラウドの姿を彼女は確かに認めていた。
特にシドがいてくれたことは心強い。
あらゆる剣技に精通し単騎で戦場を支配するあの剣聖ならば、こんな殺し合いなど決して許さず争いを止めるために動いているだろう。
クラウドは正直なところ掴みどころがない人物である。
だが、何度も戦場を共に駆けていく内に信頼の置ける男であるということはわかっていた。
彼女は自分の限界を知っている。
剣の腕に自信はある。が、どう逆立ちしても剣聖には及ばない。
統率力や判断力ではラムザに適うはずもなく、魔法もその道専門の使い手ほどでもない。
人間が一人でできることなどたかが知れている。
むしろ一つ一つは弱いその力を束ねることで、彼女たちは人間を超えた存在であるルカヴィを何度も退けてきたのだ。
そう、選ぶべきは殺し合いではなく元凶の打倒。
ロワという女を倒し、速やかにイヴァリースに帰還することこそ、騎士として彼女が進む道だ。
125
:
◆WoLFzcfcE.
:2010/08/03(火) 01:11:51 ID:dspSIYe.
当面は二人との合流を目的に動くべきか。
その道中で望まぬ戦いを強いられた者がいれば救ってみせる。
かつてラムザがそうしたように、己を偽ることなく己の信ずる道を行けば、必ず道は開けるはず。
「……誰だ!?」
そのとき、アグリアスの耳にかすかな物音が聞こえた。
反射的に手にしていた刀を抜刀し、そちらへと向き直る。
刀の銘は九字兼定。握りの部分に九字を刻んだ名刀である。
本来彼女が使うのは両刃の騎士剣なので、刀はどちらかといえば不得手だ。
だがこの刀からは並々ならぬ魔力を感じる。
聖剣技のパワーにも問題なく答えてくれると抜刀した瞬間に確信した。
「わっ、待て待て! 人がいるとは思わなかったんだ!」
そこでは全身を侍のような装備で固めた人物が、物陰から窺うようにアグリアスを見ていた。
まじまじとアグリアスの姿を見つめた後、おそるおそる近寄ってくる。
「お前……人間か? モンスターじゃないよな?」
「何を言っている? 人間に決まっているだろう」
アグリアスがそう言うと、鎧男は緊張の糸が切れたかのように膝から崩れ落ち、滂沱の涙を流し始めた。
突然の奇行に驚いたが、刀を構える腕は下ろさない。
「ああ、良かった! やっと化け物じゃないやつと会えた!」
「だから何を言っている! お前は一体誰だ!」
「おっと、自己紹介がまだだったな! 俺はギルガメッシュだ!」
涙の跡など一瞬で消えた。
立ち直りの早い男と思いつつも、その物腰は確実に武人のそれだった。
ギルガメッシュの背中にある大剣を睨み、アグリアスは警戒を緩めない。
「私はアグリアス・オークスという。それで……ギルガメッシュよ。どうする気だ?」
「は? どうするとは?」
「とぼけるな! 貴様は殺し合いに乗っているのかと聞いている!」
「殺し合い……いや待て待て! 俺はそんなことをする気はない!」
そこまで言うとやっと事態を認識したか、ギルガメッシュは慌てて手を振って戦意はないとアピールした。
彼は背中から剣を外し、地面に置く。
それを見てアグリアスは安心するより先に訝しんだ。
「……お前、殺し合いに乗る気がないのは結構だが、無防備にもほどがあるぞ。私がお前を殺す気だったらどうする気だったんだ」
「えっ!? そうなのか!?」
「違う! ……違うが、危機感が足りないと言ってるんだ」
126
:
◆WoLFzcfcE.
:2010/08/03(火) 01:12:26 ID:dspSIYe.
刀を納めるアグリアス。
ギルガメッシュはほっと息をつき、床にどっしりと腰を下ろした。
「いやなんつーかさ、俺ここに来るまでさんざん化け物に追っかけられてたんだよ。
だからもう戦いは懲り懲りって言うか……とにかくしばらくゆっくりしたいなー、なんて思ったり」
「ゆっくりできる状況だとでも思っているのか?」
ギルガメッシュは相当楽天的……悪く言えばバカだった。
その分腹に含むものはないだろうと、アグリアスにしては辛めの評価をつけた。
「珍しい剣はほしいが、自分から奪うような真似はしねえよ。人間にもすげー強いやつがいるし。
……ああ、最初にいた場所でも化け物みたいな気配を出してるのが何人かいたぜ。あんなのは相手にしたくねえなぁ」
「ふむ、なら私についてこないか? 私はあのロワという女を倒してこの島から脱出するつもりだ」
「脱出って……そんなことできるのか? 勝ち残るより難しいんじゃないのか」
「私とお前だけならそうだろうが、他にも同じ目的を持つものはいるだろう。そういった者と合流し、殺し合いを破綻させるんだ。
何より、この場には剣聖がいる。彼ならどんな達人が相手だろうと決して遅れは取らないだろう」
「はあ……じゃあ、とりあえずはあんたについてくよ。他にあてもないしな」
なんとも軽いやり取りの末、ギルガメッシュはアグリアスと同行することになった。
闘いたくないとは言ったが死にたくもないようで、自衛程度なら協力してくれるという。
とりあえず外に出るかと、アグリアスたちは建物の中を移動していく。
やがて一際大きなホールに出る――我知らず息を呑んだ。
そこは一言で表すなら剣の墓標。
円形のテーブルにぐるりと剣が突き立っている。その数――12本。
その光景を眼にした瞬間ギルガメッシュが歓声を上げて駆け寄っていった。
「うおおっ、こいつはすげえ!」
「おい、迂闊に近づくな!」
ギルガメッシュがそびえる剣の一本に手を掛け、引き抜こうとした。
「よっと……ん? この……ふぬぬ! うおおおおお……だぁっ! な、んだこれ! どうやっても抜けないぞ!」
だが、剣は求めに答えない。
明らかにアグリアスの倍はありそうな膂力を以てしても剣はびくともしていなかった。
往生際悪く剣に挑みかかっていくギルガメッシュは放っておいて、アグリアスはテーブルの一角へと歩み寄った。
そこには石板があり、文字が刻まれている。
「こ、これは……!?」
127
:
◆WoLFzcfcE.
:2010/08/03(火) 01:13:13 ID:dspSIYe.
その石板にはこうあった。
我ら 約されし戦に備え 盟約のもと 眠りにつこう
汝 力を求めるならば
来たるべき刻 再び我らを手にするがよい
汝が真なる剣士ならば 我らは汝の願いに応えよう
――と。
「どういうことだ? 眠りにつく……封印されているのか?」
呟きに、石板は黙して応えない。
だが想像はつく。これらはおそらく、剣を失った者への救済措置なのだ。
新たな剣を手に、最後の一人となるまで闘い抜け――と、どうせそんなところだろう。
来たるべき刻、というのは放送のことだろうか。
真なる剣士ならば、これがわからない。何か資格があるのだろうか。
アグリアスは剣を抜こうと奮闘するギルガメッシュを見やる。あいつに資格はなさそうだ、と思いながらも嘆息した。
これは必ずしもアグリアスたちに利する要素ではない。
刀剣というものは使い込めば劣化する。一握りの名剣魔剣を除き、基本的には消耗品なのだ。
もし殺し合いに乗った者がこの地で新たな力を得れば、必ず惨劇を生む。
殺し合いはますます加速するだろう。あるいはそれが狙いか。
並び立つ剣はどれも一目でわかる業物ばかり。
これらが野に解き放たれればどれだけの血が流されるか――想像するだに気が重い。
「だが、今抜けないのでは対処のしようもない。また後で戻ってきてみるか……」
思考を切り替え、アグリアスは未練がましく負け惜しみを言うギルガメッシュを引っ張って出口へと向かう。
今はシドとクラウドを見つけるほうが先だ。
遺跡を一歩出ると、夜闇が二人の前に広がった。
先行きは暗い――あの剣たちがもたらす未来図を思うと、さらに。
だが、諦めるわけにはいかない。
元の世界で仲間が、そして護るべき主がアグリアスの力を必要としているのだから。
意を決して歩き出す。
騎士の苦難の一日が始まる――
128
:
◆WoLFzcfcE.
:2010/08/03(火) 01:13:47 ID:dspSIYe.
【C-7/遺跡内部/一日目/深夜】
【アグリアス・オークス@ファイナルファンタジータクティクス】
【状態】健康
【装備】九字兼定@空の境界
【道具】基本支給品、ランダムアイテム(個数、詳細不明)
【思考】基本:ロワを打倒して元の世界に帰還する。
1:シド、クラウドと合流する。
2:ギルガメッシュ……信用できるのか?
3:遺跡の剣が気になる。
【ギルガメッシュ@ファイナルファンタジー5】
【状態】健康
【装備】アルテマウェポン@ファイナルファンタジー7
【道具】基本支給品、ランダムアイテム(個数、詳細不明)
【思考】基本:剣はほしいが殺し合いはあまりしたくない。
1:とりあえずアグリアスに同行する。
2:バッツに会ったらどうしよう。
3:遺跡にあった剣がほしい。
【備考】
※次元の狭間を彷徨っているっときからの参加です。
※外見はギルガメッシュチェンジ前のもの。
※C-7の遺跡には12本の剣が封印されており、放送ごとに四本の封印が解かれます。
※一人が持ち出せる剣は一振りのみです。
※剣を抜くには何かしらの条件があるかもしれません。
129
:
無銘の剣
:2010/08/03(火) 01:17:17 ID:dspSIYe.
投下終了です。
タイトルは「封印の剣」ですが、後半は見ての通り剣追加です。
元ネタはFF5の封印城クーザーの武器です。
一応現時点ではどれも抜けないということにしていますが、剣追加はやはりどうかという声があれば修正しますのでご意見をお願いします。
130
:
◆bUcVbHLxUE
:2010/08/03(火) 14:33:16 ID:stfG7u6s
てす
131
:
無銘の剣
:2010/08/03(火) 14:35:31 ID:stfG7u6s
月が照らすは二人の男女に一体の骸骨。
グリーンが特徴的な眼鏡をかけた少女は悲しみの涙で顔を濡らし、赤いハチマキに鎧をつけた青年は状況を飲み込めずにいた。
骸骨は埃のついた黒衣のスーツを纏い、上下統一感がある。
しかし骸骨の表情をうかがうことはできない。彼は肉体を失った骸骨だから。
戒めから解放されたブルックはドラゴントゥースを鞘に収めた。
クレスはそれを彼の意思表示ととらえ、息をつく。
最悪の事態は避けられたようであると、とりあえず安心した。
「フウさん、あなたの言葉は私の胸にドン!と来ました!!」
ブルックは気絶した少女の元に歩み寄り、彼女の背中に左手を回し抱きかかえる。
骸骨は泣き崩れた少女に対し、陽気に語り掛けた。
先ほどまで殺そうとしていたとは思えないほど優しく、眼鏡にかかった髪を右手で払いながら。
その姿には年を取った者に特有の父性が感じられる。なるほど、先ほどの50年というのは伊達ではないようだ。
しかし彼女には聞こえていないと分からないのだろうか、クレスは疑問に思う。
「申し訳ありませんでした。突然、殺し合いをしろといわれ私、平気な振りをしていても真っ白になってしまいました!骨だけに!!」
「死にたくない、死にたくないって考えてしまって、って私、死んでるんですけども!!」
「私が間違っているのが身に沁みて分かりました!!!!!!といっても私、身なんて無いんですけども!!ヨホホホ!」
身体的特徴を生かしてうまいギャグを言うもんだ、とクレスは思いながらもブルックの様子がおかしいことに気づいた。
興奮状態から抜け出せていないのか、それとも彼のような種族からすればこれは普通なのか、クレスには見当もつかない。
楽しそうに骨が動くところから、彼の情動を予測するしかないからだ。
「こんな顔してても心が弱いのでしょうね」
声のトーンが一段下がる。
冷たく、腹の底から出てきたような声であった。
クレスに悪寒が走った。
「その点、あなたは心優しく、そして強い方だ。殺そうとした私まで思いやれる素晴らしい人だ」
その言葉を聞くや否や、クレスの安堵が失せた。
ブルックが一度は抑えた殺気を再び現したためだ。
無意識のうちにクレスの手が刀へと伸びた。
132
:
無銘の剣
:2010/08/03(火) 14:39:04 ID:stfG7u6s
瞬間、鳳凰寺風の首に異物が入る。
ブルックの、人のように皮膚に覆われておらぬ鋭利な骨の指が、彼女の首をズブズブと進み行く。
風は血を吐いた。己の身に何が起きているかも分からないだろう。息苦しくてしょうがないようだ。
「そんなあなたはここにいるべきではない」
ブルックは風の首の深部まで右手の指を入れた後、力任せに横に引き裂いた。
そのあふれ出る血の量からクレスは理解する。
―――――――彼女は死神の手にかかってしまったのだ
せめて彼女が意識を取り戻さずに死んだことは救いだったのだろうか。
そんな現実から酷く遊離したような思いを抱き、クレスは立ち上がった。
言葉を口から出すのが酷く億劫で、しかし、なさねばならぬことが彼の思考回路を埋め尽くす。
「きさまぁ!!!!」
「おおっと」
怒りを顕わにし、クレスはブルックへと疾走する。
生かしておけぬ、とたぎる殺意をニバンボシに宿し振りかざす。
対するブルックも風を地に置き、ドラゴントゥースを再び抜きニバンボシの一撃を受け止めた。
クレスは問わずにはいられない。
「なぜ彼女を殺した!?彼女はお前を許したのに!!」
「彼女が少女だったからですよ」
「どういうことだ!」
淡々と話すブルックだが勿論、クレスには納得できなかった。
力を込め、ドラゴントゥースを押し込もうとするもブルックの膂力に阻まれていた。
しかしクレスにとっては動きを止めることさえできれば問題ない。
体を内に巻き込み左手に持ったニバンボシを左に振るうことで、ブルックが右手に持っていたドラゴントゥースを押しのける。
この時、ブルックはクレスを抑えるため正面からの動きに合わせていたため、クレスの急速な横の動きへの移行に対応しきれなかった。
ブルックは無防備となり動揺するも、クレスは構うことなく獅子を模る闘気を右手で前方に放つ。
「獅子戦吼!!!!!!」
そしてブルックをクレスが練った獅子が襲う。
ブルックの体に衝撃が走り、そのまま成す術も無く後方へ飛ばされた。
吹っ飛ばされ感覚器官を揺さぶられたブルックだが、
宿敵リューマとの戦いの経験地によるものか、空中で難なく一回転し体制を整え着地する。
クレスが考えていた以上にブルックが軽かったからか、二人の距離は開けてしまった。
133
:
無銘の剣
:2010/08/03(火) 14:41:40 ID:stfG7u6s
月光は、剣士と骸骨を照らす。
その構図は知らぬものが見れば、まるで黒衣に身を包んだ死神に剣士が魅入られていると想像するだろう。
そして骸骨が口を開いた。
「突然ですが、あなた。この首輪を外すことはできますか?」
クレスが追撃しかけ、一時的にやめた。何が言いたいのか、意図を測りかねたからだ。
首輪があるから、脱出できないから彼女を殺したとでも言うのか。
「できない。でも」
「なんですか、他にあてがあるんですか?」
「脱出するんだったら僕の剣があれば、何とかなるかもしれない」
「私あなたのことをよく知りませんからそうですかとしか言えませんが……
そんな参加者に逃げられるかもしれないものを支給したりしてくれますかね?」
ブルックが言うことは間違っていない。
クレスとてその可能性に気づいていなかったわけではない。
考えようとしなかっただけだ。
「100歩ゆずってその特殊な剣を支給してくれたとして、その力を存分に使うことはできますかね?」
「そしてもしも脱出できたとして、脱出した後連れ戻されたら、
いやそれならまだしも、脱出した直後に首輪を爆破されたらどうするんですか!!」
続けざまにブルックはクレスに怒気を含んだ声を浴びせた。
そう、考えれば間違いなくこの結論に至ってしまうから。クレスはブルックの顔を睨むも言葉を返せない。
「私は、私以外にもここに来ているだろう人を知っています」
「……?」
「その人はそういった分野に関しては疎いです。恐らく私同様に首輪に関して期待できないでしょう」
「……」
「私、その方、あなた、フウさん、フウさんのお友達のヒカルさん、ウミさん。数にして6人。
ちっぽけなものですが、会場にいた人数を考えれば意外と多いと思いませんか?」
この6人に共通することは首輪に関する知識も外す技術もないということ。
クレスは否が応でも、この男は僕に現実を説きたいのだと悟ってしまう。
「それでも!!彼女のような人を殺してはいけないだろう!!!」
「彼女は脱出したいと言ってました。私もできることならば誰一人殺さず共に脱出したい」
故に彼はブルックを認められないため正論を吐かざるを得ない。
しかし、クレスの正論にぶつけられるのもまたブルックにとっての正論。
「ですが無理でしょう?ならば絶望する前に、何もわからぬまま死んだほうが彼女のためじゃないでしょうか?
フウさんは人を殺すならば自殺を選びそうですが、自殺の恐怖を彼女のような少女が味わうのはあまりに可哀想だ」
「くぅ……屁理屈を!!!」
本当に心の底からそう想っているようでブルックは始末に負えなかった。
しかし、本当に首輪を外す方法が無いとしたら?
134
:
無銘の剣
:2010/08/03(火) 14:42:54 ID:stfG7u6s
そんな悲観的な考えが頭を過ぎるのをクレスは認めたくなかった。
理解されるとも、されようとも思っていなかったブルックは後ろを向き歩いてゆく。
「私は逃げるとしましょう。今のあなたならば勝てそうですが、初戦から傷を負うのは良くない」
「逃がすと思っているのか!」
「フウさんをよろしくお願いします」
そのまま勢い良く走り始めたブルックの言葉に、クレスは少女の死体に視線をよこす。
首を裂かれ、地を血で塗らしていた。
見るも無残で、野ざらしにはしておけない。だが今はこの男を。
そうして視線を彼女の死体から逸らそうとして、クレスはふと傍らの人形が目に付いた。
(これは……)
アミィちゃんがくれたものだ。
クレスの中で風がアミィに重なる。
親友、チェスターと共に狩りに行った間に騎士団の襲撃を受け、帰ってきた頃には物言わぬ躯となってしまっていた彼女を。
すると雨の中、チェスターが冷たくなった彼女を抱きしめ、体を震わせていた光景がフラッシュバックした。
あの時も、そして今も。
だが今のお前ならアミィを助けることができたんじゃないのか、クレス・アルベイン。
星を守るために戦ったダオスは殺せても、生き残るためアミィを殺した男は殺せないのか。なあ、クレス。
心の中で親友の姿が浮かび、問いかけてくる。
クレスはトーティス村の再興のため力を注ぐチェスターが、夜な夜な悪夢に苦しめられているのを知っていた。
だからこそ、あのような悲劇を繰り返してはいけないと固く誓ったというのに。いま、この場で悲劇は繰り返されてしまった。
「違う……この子はアミィちゃんじゃない」
瞼を閉じ否定した。
この地で死んでいたのはアミィではなく風という少女だった。
「この子はアミィちゃんじゃないんだ……」
クレスの顔が歪む。悲痛な声はチェスターに当てた言葉だろうか、それとも自らに当てた言葉だろうか。
気づけばブルックの姿は無かった。
優先すべきはこの少女ではなく、骸骨のモンスターを倒すことだったのに。クレスは虚脱感に包まれ、なにもできなかった。
言い返せなかったのだ。
135
:
無銘の剣
:2010/08/03(火) 14:48:17 ID:stfG7u6s
自分のこの殺し合いに対する認識の甘さを指摘された。
ブルックが状況をふまえた上で、殺人を犯したことも、
彼女のことを想ってというのが冗談や酔狂で言ったのではないことも理解させられた。
「僕は間違っているのかな、ミント……」
剣士はいとしき人を想い、空を見上げた。
その声は、夜空に消えた。
■
漆黒の闇を骸骨が走り抜ける。
アフロが揺れ、慌てて転んだりしても休むことなく駆けていく。
市街地を抜け出たところでようやくブルックは一息ついた。
(ヨホホホ……ついにやってしまいましたね……)
心が揺らいでいた。
彼女がこれ以上、自分にその清廉潔白なる言葉を紡げば、自分は彼女を信じてしまう。
共に脱出の道を探そうと思ってしまう。すれば二度と人を殺せなくなる。
だからその前に自分は彼女を殺した。だがブルックは心が痛み、涙を流したかった。
「って私、血も涙もありませんでした!!!」
そんなボケを聞き入れるものはいない。
脱出する方法なんてあるわけがない、ブルックにはそうとしか思えなかった。
これはブルックの中でこの場に集められた人間がゾロのように剣に特化した者のみだという推測に起因する。
こんな首輪を外す方法なんてブルックには分からなかったし、事実風も少し話してそんな技術は知らないといった。
それはつまり友人であるヒカルやウミにも分からないということとブルックは取った。
彼女は知ってる人がいるかもしれないから探そうと続けたが、
ブルックにはそれは偽りの希望にすがって虚しく努力をする人間に見えたのだ。事実、クレスにはやはり外す方法など分からなかった。
ならばと、ブルックは確かな希望のために動くことを決めた。
私がこのゲームに乗って人を殺すことを決意したのは事実だが、彼女は殺したくは無かった。
あの何者にも穢されておらず真っ直ぐに理想を語る姿はルフィさんとだぶり、非常に好意的な人物だったからだ。
しかし彼女を生かしておけば私は彼女に会うたび、説得され、常に鏡を見るかのように、己の悪行と向き合わねばならない。
これでは堪らない。私は耐え切れないだろう。良心の呵責に押しつぶされるかもしれない。だからフウさんを殺した。
考えてみれば我ながら身勝手で酷い話だ。だがそれでも戻りたい場所がある。
「私は50年も一人だったんです、たった数日ぐらい気にしませんよ……」
骸骨は笑みを浮かべる。
肉は無く、表情からは読み取れないが確かに。
ある世界の海賊王を目指す一人の船長は仲間を集めた。
戦闘員、航海士、狙撃手、コック、医者、考古学者、船技師、そして音楽家。
彼が音楽家を誘うことが無ければ、音楽家はその手を少女の血で染めることは無かったのだろうか。
彼が希望を差し出さなければ、音楽家は修羅の道を歩もうとしなかったのだろうか。
答えは無く、帰路を死神が往く。手には少女の血を滴らせ。
136
:
無銘の剣
:2010/08/03(火) 14:49:43 ID:stfG7u6s
【G-3 市街地 外壁傍/一日目/深夜】
【クレス・アルベイン@テイルズオブファンタジア】
【状態】 健康、疲労(少)
【装備】 ニバンボシ@テイルズオブヴェスペリア
【道具】支給品×2、 ランダムアイテム×2、バスタード・ソード@現実、
【思考】基本:仲間を募り、会場から脱出する……?
1: 風をこのままにしておく訳にはいかない
[備考]
※ 参戦時期は本編終了後です
【F-3 市街地 出口/一日目/黎明】
【ブルック@ONE PIECE】
【状態】 健康、疲労(小)
【装備】 ドラゴントゥース@テイルズオブファンタジア
【道具】支給品
【思考】基本:生き延びて約束を果たす
1: 優勝して元の世界に帰る
[備考]
※参戦時期はスリラーバークで影を取り戻した直後です
137
:
◆bUcVbHLxUE
:2010/08/03(火) 14:52:37 ID:stfG7u6s
投下終了。タイトルは「骸骨の踊り」です。
専ブラ使っているのでトリが落ちててすいません。
問題があれば、お願いします
138
:
無銘の剣
:2010/08/03(火) 20:11:32 ID:yscbqSxU
>封印の剣
ギルガメッシュはトラブルメーカー化しそうな感じだなw
それを抑える生真面目タイプのアグリアスのコンビは中々面白そう
剣の支給は、一人一本ならまぁ問題ないんじゃないでしょうか
反対側にある城あたりにも、同じような施設があってもいいかな
>骸骨の踊り
おお、骸骨の心情がよく出てるな
クレスも現実にぶちあたったか
では自分も大神さんと神楽で投下します
139
:
願果(ねがいのはて)
◆Mc3Jr5CTis
:2010/08/03(火) 20:12:45 ID:yscbqSxU
三年前のあの日。
母が還らず、父がお役目を継承した日。
家族をなくした私に「お姉ちゃん」が出来ました。
◇
吹き抜ける生臭い潮風が、短くカットされた少女の黒髪を嬲る。
小さくはためく中学校指定のセーラー服の襟や、短く巻き込まれたスカートの布地。
それらが立てる小さな物音を、潮騒の音が呑み込んでいた。
天頂の月と、無数の星だけが照らす海辺の岬。
そんな薄ぼんやりとした闇の中に、一人の少女が佇んでいた。
いつから、そうしているのだろうか。
いつまで、そうしているのだろうか。
左手には、鍔すら付いていない白鞘の野太刀を持って。
少女は何かを深く思い悩むかのように瞑目し、微動だにしない。
絶壁の岬に、打ちつけるような波の音が轟く。
不規則なリズムで刻まれる、大自然の律動。
その自然との合一の中、何かを悟ったのか。
豁然と、少女が目を見開いた瞬間。
無窮の闇の中に、一筋の光が閃いた。
転瞬の間、一気呵成に抜き放たれていた長大な刀身が、月の光を受けて濡れたような妖しい光を放つ。
青白い燐光に照らされた横顔は、死人のように青褪めている。
しかし、その瞳は何かを決意したかのように強い輝きを帯び、闇の先を見据えていた。
少女は、刀を鞘に納めると歩きだす。
己が意思のままに。
◇
ロワと名乗る女が催した、剣を使う者同士の殺し合いという最悪のゲーム。
帝都を守り、悪を挫く帝国華撃団の隊長である大神一郎は、そんなものに乗るつもりは、まったくない。
持ち前の熱い正義感の燃えるがままに――大神は、ただ夜の海岸沿いを歩いていた。
なにか脱出の手立てでもないかと思っていたのだが、島は紺碧の海の上に屹立するかのようにそびえ立っており
例え筏でも組んだとしても、それを海に浮かべる事すら困難だろうという事が判っただけだった。
翔鯨丸のような空を飛ぶ船がなければ、島からの脱出は難しいだろう。
まぁ、それ以前の問題で。
参加者たちの首に嵌められた首輪をどうにかしない事には、脱出も何もあったものではないのだが、
大神には爆発物を仕込まれた首輪を解体するだけの技能はない。
今は自分に出来る事から、地道にコツコツと反撃の糸口を掴んでいくしかないのだ。
例え、何の意味もなさそうな小さなきっかけだとしても。
機械発明が得意な部下である李紅蘭がこの場に居ればいい知恵を貸してくれたかもしれないが、ひとかどの剣士のみを
集めたというこの殺し合いに、彼女が呼ばれる事はないだろう。
軍人……隊長としての大神は、適材である彼女の不在を残念に思うが、人としての大神は、一人のか弱い女性である
紅蘭が戦いに巻き込まれなかった事を嬉しく思う。
強い霊力を持つ女性しか魔とは戦えないとはいえ、未だ彼は少女たちを戦いへと駆りだす事に納得している訳ではないのだから。
「さくらくん……無事でいてくれ」
だから、この戦いに巻き込まれただろう唯一の部下が心配だった。
北辰一刀流免許皆伝の腕前と、強い霊力を持つ彼女ならば、この戦いへと喚ばれた可能性は高いだろう。
つい足早になりそうな歩調を抑えながら、大神は周囲を警戒しつつ遠目にも朧げに姿の見えるランドマーク――
地図上ではピラミッドのような形をした遺跡を目指す。
140
:
願果(ねがいのはて)
◆Mc3Jr5CTis
:2010/08/03(火) 20:13:26 ID:yscbqSxU
と、その時である。
向かいの道から歩いてきた人の存在に、大神は気付く。
年の頃は、14〜5歳ほどだろうか。
女性として少しずつ丸みを帯びてきた肉体を、明治の世から制定された海軍の服に包んでいるのが妙に似合っていた。
だが、あのスカートはなんだろう。
いくら子供とはいえ、あんなに短いのはハレンチすぎやしないだろうか。
すみれくん独自のファッションを初めて見た時も驚いたが、この子はそれ以上なのではないか……
いけないと思いながらも、大神の視線はついつい少女の肉付きのよい、伸びやかな太腿へと注がれてしまう。
やはり剣術で鍛えこまれているのか。少女の身ながらもその力強さに、大神は野生動物のような躍動感を連想する。
「こんばんは。環境省超自然災害対策室所属、土宮神楽です」
そんな思いにふけっていると、少女も大神の存在に気付いたのか、立ち止まり礼儀正しく挨拶をする。
「うーむ……あ、ああ、こんばんはっ! 帝……国海軍所属、大神一郎少尉です」
秘密組織である帝国華撃団の存在を、余人に教えるわけにはいかない。
大神は表向きの所属を伝えておく事とする。
相手の所属する組織名も大神には覚えのないものであったが、華撃団のような秘密の組織名をうっかり口に出して
しまったのだろうか。
無理もないだろう。
如何に剣の腕が優れると言ってもこんな年端もいかない子が、いきなりこんな場所に連れて来られたのでは、
その心中は察するにあまりある。
ロワに対する憤りと共に、大神は少女の保護を決意し――
「ごめんなさい……」
「え?」
その木枯らしの如き鋭い踏み込みに反応出来たのは、自分でも上出来と思えた。
少女の脚を、よく観察していたからだろう。
大神は、突如として自分の間合いまで踏み込んできた少女の斬撃を潜り抜けて、体を交差させたのだ。
互いの立ち位置は、先ほどまでと真逆となる。
素早く振り向いて、叫ぶ。
「君、いきなりなにをっ!」
「ごめんなさいっ! 死んでくださいっ!」
群青色の瞳を見開いて、神楽は手にした野太刀を振るう。
教本に載せたくなるような、よく練り込まれた体捌き。
よほど小さな頃から修行を重ねてきたのだろう。小さな身体で長物をよく遣うと、大神は感嘆してしまう。
だが、今はそんな感心などしている場合ではない。
神楽が刀を振るうたびに、大神の肉体に朱色の線が刻まれる。
自分も応戦しなくては、これ以上は耐えきれないと判断し腰の物を引き抜いた。
手にする刀は、真宮寺さくらが父より受け継いだという破邪の霊剣荒鷹。
(借りるぞ、さくらくんっ!)
心中にて一言断り、神楽の一撃を受け止める。
大神の使う流派は、かの大剣豪宮本武蔵が興した二天一流。
二刀を扱う事で有名な流派ではあるが、別に一刀でも戦えぬ事はない。
「ッセイ!」
「はっ!」
141
:
願果(ねがいのはて)
◆Mc3Jr5CTis
:2010/08/03(火) 20:14:11 ID:yscbqSxU
短い呼気を吐き、二人の剣が重なり合う。
小兵ではあるが、素早い体捌きで体重を乗せてくるような神楽の剣は重く、鋭い。
降魔をも一刀両断にしかねない斬撃を、大神もまた霊剣に霊力を注ぎ込んで耐える。
「馬鹿な事は止めるんだっ!
死にたくないのはわかるが……あの女の言いなりになって最後の一人になるまで殺し合うなんて、正気の沙汰じゃないっ!
まずは落ちついて、話し合おうっ!」
剣を挟んで、視線がぶつかる。
神楽の濡れたような瞳に、戦意の揺らぎは見えない。
だが、先ほどから振るわれる剣には、どこか迷いがあるように感じられる。
それがなければ、大神は既に死んでいたかもしれない。
だから大神は説得を重ねるのだ。
過去、幾多の隊員たちと心を通わせたように――
この少女とも、理解し合えると信じて。
「判って欲しいなんて言わない……でも、私は戦うんだ……
――黄泉のためにっ!!」
だが、神楽はそれを拒む。
あのロワという女の言葉を聞いた時、神楽の心に走ったのは殺し合いへの恐怖だけではなかった。
彼女の提示した、どんな願いも叶えるという万能の力。
その力さえあれば、再起不能の重傷を負った黄泉を助けられるかもしれないと思ったのだ。
二か月前、全身108箇所を鋭い刃物によって刺し貫かれた黄泉は、命こそ取り留めはしたが全身の神経や腱を
ズタズタにされて、日常生活すらままならぬ重傷を負っていた。
美しかった肌を傷だらけにされ、右目を失い、声を失い、わずかに動く指先を使った意思疎通しか出来なくなった黄泉。
だが、それでも神楽に優しく笑いかけてくれる彼女を――救いたいと神楽は強く願った。
だって、あまりにも酷過ぎる。
黄泉が尊敬する義父を失ったのは、つい先日の事だった。
正体不明の悪霊による犯行と思われたその事件以来、神楽と黄泉の二人を取り巻く環境は激変する。
叔父に諫山家の跡継ぎの座を奪われ、部屋を追い出され、義父が与えてくれた宝刀も奪われた。
やがて判明した父の仇――悪霊に乗っ取られてしまっていた従姉を倒した黄泉だったが、余人を交えぬ所で行われた
その戦いは、悪霊退治などではなく私怨による殺人だったのではないかという嫌疑も掛けられた。
黄泉に残されたのは身動き一つ出来ない重傷の身体と、殺人容疑。
婚約者にすら見放された黄泉には、本当に神楽以外、何も無くなってしまっていた。
――あなただけよ、神楽……あなたが、私の最後の宝物。
声を失う前の黄泉に、かけてもらった言葉を思い出す。
神楽にとっても黄泉はかけがえのない人だ。
お役目で忙しい母と、厳しい父に育てられ、受け継ぐべき使命の重さと剣の修行しか知らなかった神楽に
家族の温かさと、楽しい毎日を与えてくれた人。
強くて優しい、大好きな黄泉お姉ちゃん。
その黄泉と、悪霊なんて関係のない世界で普通の姉妹のように生きられたら……
それが神楽の願いだった。
だからこそ、こんな所で倒れるわけにはいかなかった。
必ず勝って、力を手に入れて黄泉の元へと戻る。
悩みの果てにそう誓った神楽だったが、その剣はいざとなると鈍ってしまう。
黄泉との暮らしで優しくなりすぎてしまった剣は、カテゴリDと呼ばれる人の死骸に取り憑いた悪霊ですら
切れないほどに鈍っていた。
ましてや生きてる人間を切る事は、吐き気がするほどに抵抗がある。
その抵抗を――黄泉への想いの力で打ち破るように、神楽は剣を振るう。
142
:
願果(ねがいのはて)
◆Mc3Jr5CTis
:2010/08/03(火) 20:15:07 ID:yscbqSxU
「はあああっ!!」
「くっ! よすんだ、土宮くん……っ」
激しい剣戟の音が、夜の平原に響く。
大神は何度も説得の言葉を口にするが、それで神楽の攻撃の手が緩む事はない。
風のように縦横無尽の立ち回りを見せる神楽に対し、大神は山のようにどっしりと構えてそれを受けていた。
だが、全身にいくつもの創傷を受けた肉体からは鮮血が溢れだし、これ以上の持久戦は不可能なように思える。
遂に大神は一旦説得を諦め、少女を峰打ちして気絶に追い込む事を決断した。
この戦いが始まって以来、初めて大神が自ら動く。
弧を描くように、大神の周囲を回っていた神楽を一足で捉えた。
「狼虎……滅却っ!」
大神の肉体の中で、急激に霊力が高まる。
構える剣は狼のように獰猛に。
吼える声は猛虎の如し。
「オオォッ! 国士無双オオオオオッ!!」
少女を止める。
その一念の元、白炎の如き霊力を纏った荒鷹の峰が、神楽の腹に喰らいつかんとする。
「ハァッ!」
「――なにぃっ!?」
だが、八相の構えから流れるように打ち込まれたその剣は、ただ虚空を裂くのみに終わる。
神楽は高く上空へと跳躍する事で、これを避けて見せたのだ。
神楽を追い、上を見上げた大神の視界に、投げつけられた野太刀が迫る。
渾身の力を込めた必殺技を空振った大神に、体勢を整えてそれを避けるだけの余力はない。
「――オオッ!」
かろうじて剣を切り返し、これを打ち払う。
その乱れ切った体勢の大神の胸に、落下しながら宙で一回転して勢い付けた神楽の膝打ちが決まった。
「ぐぁっ」
肋骨が軋み声を上げ、肺の空気が抜ける。
勢いのままに地面に叩きつけられた大神の両手を広げた脚で抑えると、神楽は黒いベルトで太腿に括りつけた
ナイフケースから短刀を引き抜く。
そして、馬乗りの体勢のまま、大神の胸へとその短刀を突き刺そうとし――
「――出来ないよぉ……ごめん……黄泉ぃ、ごめん……」
その、数センチ手前で、刃は止まっていた。
代わりに大神のシャツに降り注ぐのは、大粒の涙の雫。
「土宮くん……やはり、君は……」
「止めてっ! 私は決めたんだから……黄泉の為に、なんでもするってっ!
でも、あなたが……あなたが、本気で戦ってくれないから、私はっ……」
本気で戦っていなかった、などという事はない。
大神は、間違いなく本気だった。
本気で、神楽を止めようとしていた。
だからここで神楽が言う本気とは、本気で殺し合って欲しかったという事だ。
命を奪い合う極限の戦いの中でなら、神楽の中の殺しを忌避する心はねじ伏せられていたかもしれない。
だが、追い詰められても最後まで殺し合いを回避しようとする大神の姿勢が、今回は殺し合いを止めたのだ。
143
:
願果(ねがいのはて)
◆Mc3Jr5CTis
:2010/08/03(火) 20:15:39 ID:yscbqSxU
神楽は、唇を噛みしめながら立ち上がる。
そして、地に突き刺さっていた野太刀を引き抜くと、そのまま夜の闇の中へと走り去った。
これ以上、大神の言葉を聞いていると、決心が鈍ってしまいそうだったから。
「ま、待つんだ、土宮くんっ! ぐっ……」
それを追い掛けようとした大神だったが、怪我の痛みが身体に立ちあがる命令を拒否させる。
「く、くそっ……」
この殺し合いを止めるどころか、少女一人止める事の出来ない己の不甲斐無さに歯噛みしながら、大神は
一人夜空を見上げるしかなかった。
【B-7 海辺 一日目 深夜】
【大神一郎@サクラ大戦】
【状態】疲労(小)、胸に打撲、裂傷多数
【装備】霊剣荒鷹@サクラ大戦
【道具】基本支給品、ランダムアイテム(個数、内容ともに不明)
【思考】基本:この戦いを止める。
1:殺し合いを止めさせるために動く。
2:神楽を見つけて、殺し合いを止めさせる。
【土宮神楽@喰霊-零-】
【状態】疲労(小)
【装備】夕凪@魔法先生ネギま! アサシンダガー@ファイナルファンタジータクティクス
【道具】基本支給品
【思考】基本:黄泉の為に優勝する
1:誰かを殺して覚悟を決めたい
【備考】
※諫山黄泉がこの島にいる事に気付いていません。
※参戦時期は喰霊-零-9話途中からです。
144
:
無銘の剣
:2010/08/03(火) 20:16:12 ID:yscbqSxU
以上で投下終了します
145
:
無銘の剣
:2010/08/03(火) 21:55:37 ID:.WVFpRCM
どんどん来てる
投下乙です
ギルガメッシュが面白いw
アク姉はストッパーかな? とりあえずはコンビが出来たがこの先どうなるやら
風うううウぅ!! このガイコツ! なんちゅうことを…
これはもう戻れないだろうな…
クレスもなんか心に不純な何かが生まれたな…
神楽つええええぇぇ! 大神さんも原作でぼろぼろになるシーンあるが弱い方じゃないぞ
乗らないと思ったがこう来たか。今回は思いとどまったが…
大神さん、あんたなら彼女を止められる。頑張れ!
146
:
◆Bn4ZklkrUA
:2010/08/04(水) 00:09:46 ID:aX.Jbh16
バッツ・クラウザー投下します
147
:
無銘の剣
:2010/08/04(水) 00:10:30 ID:aX.Jbh16
バッツ・クラウザーは自由人である。
体一つ、身一つで世界中を旅し、相棒のチョコボと共に今日は東へ、明日は西へと当てのない旅を続ける。
それはバッツが二つの世界をまたにかけ、世界の危機を救った英雄になってもそれは変わらない。
偶になつかしい仲間の顔が見たくなり、仲間の前に顔を出すことはあっても基本的に彼は旅人なのだ。
今日も相棒のチョコボ、ボコを駆っていた。
そして、そろそろ夜も近づいていたので野宿の準備でもしようかとして……
突然、景色が暗転した。そして……
「はぁ、さすがにこれは……まぁ、愚痴を言っても仕方ないのは判るが唐突すぎるぜ」
そう呟き、ため息をひとつ吐く。
気が付いたらいつの間にかあの広間からバッグ一つで海岸線へワープさせられた。
少なくとも今感じる潮風は幻覚や幻影ではなさそうだ。
「しかしカモメ1匹、海鳥1匹もいないとかここがまともな場所とは言い難いな。これもあのロワって女が用意した舞台ってわけか…」
まったく、こんな見世物みたいな殺し合いに大仰なとは思う。
こんなことはエクスデスの時に飽きるほど体験したがまさかまたそれを体験する事になろうとは。
そして経験上、それだけ手間暇かけたとなるとちょっとやそっとでは連中を出し抜くのは難しいだろう。
「それも問題だが一番の問題はこれだろうな」
首の首輪の冷たい感触が否応にも無くこれが現実だと伝える。
「乗るか乗らないかは別にしてもこいつが外せたら話が簡単なんだが……」
剣士だけを集めたのだからレナやファリス、クルルらはここにはいない。
ほっとする反面、彼らが傍にいてくれたらと思ってしまう。
148
:
◆Bn4ZklkrUA
:2010/08/04(水) 00:11:50 ID:aX.Jbh16
「こういうことに詳しいのは俺よりみんなの方だからな。いや、シドかミドの方か?
無い物ねだりしても始まらないのはわかってるがな」
ただ、バッツにもまったく知識がないわけでもない。
クリスタルのかけらによって得た力な中には魔道士系のジョブもある。
彼女らほどではないがバッツにも魔力や知識はある。
必要に応じてジョブを使い分けた事もあるから魔道士としての経験もある。
「剣術以外の力は制限するとか言ってたな。もしこの首輪で制限されてるとしたら魔法のアイテムのような物かもしれない」
だが、ならどうすればいいのか? そこから先の事となると簡単に答えが出ない。
こんなことならもう少しそっち方面の知識をもっと伸ばせばよかったと思ったが今更思っても後の祭り。
「その内、いい考えでも思い浮かべばいいがな……それにこのままここで考えてるだけじゃすまないか」
そう言うと自分にランダムアイテムとして支給されていた紙切れに目を向ける。
最初は役に立ちそうなアイテムではなく、ただの紙切れだと知った時はがっかりした。
だがよく調べてみるとこれは何かの地図、それもこの島の特定の場所の地図のようだ。
「物凄く胡散臭いんだよな。昔、こういう曰くありげな紙にどこぞの地形に赤丸とか付けた偽の宝の地図とか散々見たな」
レナ達と出会う前、自由人として旅をしていた頃によくそんな地図は見かけたがほとんどが偽物だった。
裏で売られてる宝の地図なんてどこぞの詐欺師が金銭目的で売ってるのが通例だからだ。
ただ、この状況で支給品として渡されたものが本当に偽の地図だと断言もできない。
「しかもランダムアイテムは一つだけとか言ってた癖に地図が3枚、それも場所がお互いバラバラとかどんな嫌がらせかよ。
これ、俺一人で三か所とも回ってたら無茶苦茶時間を喰いそうだぜ。なら誰かに協力して貰うしか……ないか」
かって暗黒魔道士エクスデスと世界の命運を賭けて戦った時、エクスデスの力は強大で幾度も敗北しそうになったがその度に仲間とともに
危機を乗り越えてきた。自分一人だけでは無理でも仲間と一緒なら解決することも可能なことがある。
バッツはそれを経験として知っている。だが……はたしてこんな状況から共に闘ってくれる同士がどれだけいるか……
「正直、お友達から始めたいところを即席でも仲間として協調しなくちゃならないのか。しかも裏切られる可能性が常に付き纏う…か」
149
:
◆Bn4ZklkrUA
:2010/08/04(水) 00:14:07 ID:aX.Jbh16
ああ、考えれば考えるほど頭が痛くなってくる。これがレナ達と一緒ならここまで……
「やめやめ、みんなまでここにいなくてよかったんだ。無い物ねだりしても始まらない。
とりあえず協力者を探すか。できれば魔法に詳しい人間、この状況だと魔法剣士か」
俺みたいに魔法の知識がある剣士が他にもいればこの首輪を外す手掛かりが掴めるかもしれない。
普通なら魔法にも詳しい剣士なんて加えはしないだろう。だが俺がここにいるということはいる可能性も0ではないはず。
そうと決まればまずは人が集まりそうな場所へ向かうか。
こうしてバッツの新たな冒険が始まった
その先にあるのは果たして――
【B-5/海岸付近/一日目/深夜】
【バッツ・クラウザー@ファイナルファンタジーⅤ】
【状態】健康
【装備】剣(詳細不明)
【道具】支給品、宝の地図三枚セット
【思考】基本:脱出する
1: まずは協力者を探す。可能なら魔法剣士
2: とりあえず地図を調べる。協力者に渡してもいい
3: 首輪を外す方法を考える
【備考】
※宝の地図はそれぞれ場所がバラバラでこの島の特定の場所の地形に謎の印が付いています
場所は何処で正確にはどういう地図かは次の書き手さんに任せます
※この首輪は魔法に属するものだと推測しています
150
:
◆Bn4ZklkrUA
:2010/08/04(水) 00:17:01 ID:aX.Jbh16
投下終わりです
タイトルは『パーティを作ろうとしてみる』です
ランダムアイテムは一つですが地図が三枚でよかったですかね?
探索する手間やハズレの場合も考えたら特別有利とは思えないけど…
151
:
◆ClAmicNkI.
:2010/08/04(水) 04:23:27 ID:3Uth4rUQ
式投下します。
152
:
魔剣混沌
◆ClAmicNkI.
:2010/08/04(水) 04:24:10 ID:3Uth4rUQ
(寂しいのぅ……)
黒い一降りの剣は心の中でそう呟いた。
何がどうなったのかは知らないが、気がついた時にはデイパックの中に入っておりそれからずっと暗闇の中で過ごしていた。
外の会話を朧気ながら思い出す。
どうやらロワという女性が神の力を持つ剣の担い手を選別してるらしい事。
(神の力を持つ剣ねぇ……)
魔神を倒す為の力を神に欲したら、神の力を得た代わりに剣にされた自分自身の過去を思い出す。
(お仲間みたいなものなのに、こんな扱いしやがって。それにしても暇じゃのー)
先程頭の上に光が差し込み、その穴から女性の顔が伺えた。
(今回の儂のパートナーは女の子って事か。いいのーいいのー。心の友との旅も良かったが、やっぱり女の子に使って貰うのが剣としての最上の喜びじゃ)
嫌らしい笑みを浮かべて、先程ちらっと見えた女の子の妄想に取りかかる。
整えられた黒髪と、あの独特の着物。
昔の仲間日光とどことなく似ている。
(つまりJAPANのおなごっちゅー訳か。JAPANのおなごはどうも日光を思い出してしまい良くないと思っとったが……。むちむちうは〜んじゃない子猫ちゃんでもそれはそれで楽しみがいがある)
それにしても、先程から声も心のちんちんも全く出ないのはどういう事か。
女の子は女の子で、こちらの顔(?)を見るなり、顔をしかめてそれっきりである。
(放置プレイは嫌じゃ。儂、つまらん)
こちらからアプローチする手段が無い以上は、向こうの心が開くのを待つしかない。
しかし、ああも嫌な顔されたのならいつ手にとって貰えるか解ったものじゃない。
なまじ意識が残っていて、日頃飢えていた女性剣士が目の前にいるというのにお預けを喰らっているこの状況は魔剣カオスにとって焦らしプレイ以外の何ものでもなかった。
153
:
魔剣混沌
◆ClAmicNkI.
:2010/08/04(水) 04:24:52 ID:3Uth4rUQ
「困ったな……」
戦う気が起きないもう一つの理由が出来た。
着物にジャケットを羽織った、一見異なるセンスを見事に着こなした少女、式はそう呟いた。
どうやら自分に配布された剣は、どうも曰く付きの剣らしい。
袋の中をチラッと見たのだが、禍々しいオーラを漂わせていた。
特に西洋系の魔剣は疎くて詳しく解らないが、このゲームの開始時に頭の中に強制的に送り込まれてきた剣の情報から『魔剣カオス』と呼ばれている事と、誰でも装備出来る事、魔人ですら斬り殺せる事などの基本情報だけは情報として浮かんできた。
「――呪われたりするのだけは勘弁だぜ」
しかし剣がこれしか無い以上は贅沢を言ってられない。
他の剣を手に入れるまで戦わずにいられるのならそれに超した事無い訳だが、この状況だそうも言ってられないであろう。
妖刀の類の呪いといっても多数存在する。
持ち主の元を離れない物から、寿命を削っていく物、無性に人を斬りたくなる物や、理性を奪われる物。
「一回実際に試し切りしておかないと危険だな」
間合いや重さなどの確認の意味もある。
いざとなったらその呪いの事象自体を斬って殺せばいいのだ。
「んっと、あれでいいか」
周囲を見渡すとおあえつらえ向きに、前方に丁度人と同じ程度の大きさの岩が横たわっていた。
いや、よく見てみると岩ではない。
「――これも剣……なのか?」
きちんと柄が作られており、無骨だが刃もついている。
斬るというよりその重量からすり潰す、押し潰すといった武器なのであろう。
確かに理には敵っている――が、極端過ぎてこの大きさを扱える人間がいるとも思えない、思いたくもない。
他の剣が欲しいとは思ったが、流石にこれは無茶がありすぎる。
まだ魔剣の方が振るえる分マシであった。
恐らくこの剣を支給品に貰った人も、使いこなせなくて捨てていったのであろう。
もしこれを使いこなせる奴がいたとして、そんな奴が殺し合いに乗ってたら面倒な事になる。
ならば魔剣の危険を確かめるついでに、斬るには大きさ的にも丁度良い目標であるといえた。
154
:
魔剣混沌
◆ClAmicNkI.
:2010/08/04(水) 04:25:25 ID:3Uth4rUQ
「しかしやっぱりこの魔剣を触るのは躊躇するな……」
デイパックを空けるとよりいっそう邪悪なオーラが増した。
――まるで何かを待っていたかの様に。
(やっと出番なの?儂、嬉しくて張り切っちゃう)
そっと手に取り、特に身体に変化は起きていない事を確認する。
「日本刀より重いな。それに未来予知も使えないみたいだ」
やはり未来予知などの潜在能力は、本来の式の武器である日本刀を使わないと発揮できないらしい。
だが概念、霊体や能力の死を視るだけならば、この魔剣でもできる。
式は魔眼に力を込めて、目の前の斧剣の死を探した。
――三本、四本。
複数の死の線が見える。
(こんなに可愛い子に先端を握って貰えるなんて……おおおおおっ、心のちんちんも元気になって……あっ、だめそこはデリケートだからもっと丁寧に)
――五本、六本。
線がどんどん増えていく。
「凄いな」
じらしプレイの効果により、いつもより興奮状態にあるカオスはその性能を十二分に発揮していた。
(さあ、行け!!行って、儂であいつを切り刻め!!)
――十本。
ついには目の前の斧剣が線でほぼ覆われていた。
つまりはあの頑丈そうな斧剣ですら、この魔剣にかかれば何通りも殺し方があるという事だ。
式は魔剣カオスの凄さを実感していた。
155
:
魔剣混沌
◆ClAmicNkI.
:2010/08/04(水) 04:25:57 ID:3Uth4rUQ
一閃。
十本の内の一本の線を無造作に選び、魔剣カオスでその線をなぞる。
今回の場合相手は動かないので斬るのに力も速さも必要ない。
敢えて言うならカオスを満足に振れるだけの力があればいい。
日本刀より重いので多少慣れが必要であるとは思われるが、複数本存在する動かない線をなぞるだけなのだ。
決して困難な作業ではない。
死の線によって線引きされた斧剣は、その線通りに音を立てて真っ二つに別れた。
「特に変わった事象も無し……か」
自分に異変が起こってない事も念入りに魔眼でチェックする。
魔眼を使った体力の消耗がいつもより多い気もするがそれ位であろうか。
「後はかかってるとしたら、魅力≪チャーム≫の魔術か」
西洋刀に全く興味がなかった式ですら、切れ味に引き込まれたのだ。
しかし特に魔術的な力は無くても、切れ味だけで惚れ込ませる妖刀の類も存在する。
「使わずに元の世界に帰れるならそれに超した事はないんだけどなぁ」
(え、ちょ。儂の活躍もう終わり?全然斬り足りない。もう焦らしプレイ飽きた……)
そんな声が聞こえるはずもなく再びデイパックに魔剣カオスをしまい、当てもなく式は歩き出した。
橙子や幹也がいれば色々指示してくれるんだろうけど……いないものは仕方ない。
この世界にはいない二人を思いつつ、風の赴くままに歩を進めた。
156
:
魔剣混沌
◆ClAmicNkI.
:2010/08/04(水) 04:26:29 ID:3Uth4rUQ
【F-6/山脈/一日目/黎明】
【両儀式@空の境界】
【状態】疲労(小)
【装備】無し
【道具】支給品 魔剣カオス ランダムアイテム(個数内容ともに不明)
【思考】基本:元の世界へと帰る。
1:とりあえずここから帰る方法を探す。
2:この魔剣に呪いとかは特にないだろうと判断。だが念には念をで使わないで済めばそれに超した事ない。
【備考】
※F-6 山脈に放置されたバーサーカーの斧剣@Fate/stay nightは真っ二つになりました。
※魔剣カオスは喋れない&見えない触手が出せない制限中。式にはなんのアピールもできませんので解らない人は式視点でカオスに全く触れずに書く事も可能です。
157
:
◆ClAmicNkI.
:2010/08/04(水) 04:28:00 ID:3Uth4rUQ
投下終了です。
158
:
無銘の剣
:2010/08/04(水) 11:47:06 ID:dmKb.9.M
>パーティを作ろうとしてみる
バッツは剣士系ジョブを中心に育てた感じかな
まぁ地図三枚は別に問題ないかと思います
>魔剣混沌
>魔神を倒す為の力
魔人、もしくは魔王では?
あと未来予知が出来ないとひとりごちるのに、なんだか違和感が…
いわゆる刀式状態ではないという事を表現したかったのでしょうが、やっぱり日本刀みたいにはいかないな
みたいな感じでいいんじゃないでしょうか
動かない的とはいえ、武器破壊が簡単に出来るのはバランス的にどうなんだろう
式は確か無機物の死は見た事がなかったような…まぁ出来るんだろうけど
見るのに時間がかかってるっぽいから実戦じゃ出来ない的な扱いなら問題ないか?
お二方とも投下乙でした
159
:
無銘の剣
:2010/08/04(水) 11:54:00 ID:hSaPPYgo
うろ覚えだけど無機物じゃなくて鉱物じゃなかった?
入院してたときベッドを切断したってエピソードがあったと記憶してるんだけど
まあなんにせよ武器破壊はねぇ…他にも剛剣使いのシドやダイの竜闘気があるが、やりすぎるとバランス壊しそう
グリフィスのロングソードとかなら一発破壊できてもいいが、魔剣レベルになるとさすがに無理だろと
バーサーカーの剣にしてもあれパルテノン神殿の柱だかなんだかで普通の岩じゃないはずだが
160
:
無銘の剣
:2010/08/04(水) 12:01:42 ID:1oWZTZyQ
武器破壊ならイナズマとかもヤバいな
161
:
無銘の剣
:2010/08/04(水) 12:12:31 ID:282qW.r2
市販武器は破壊可能ってことでいいんじゃないか?
そういやエターナルソードの材料って結局グローバルソードだけで終わったんだっけ?
まあ謎の剣とかで登場の余地もあるけど
162
:
無銘の剣
:2010/08/04(水) 12:19:25 ID:l3mrrKG.
武器破壊ならイナズマの独壇場ジャマイカ
武器も、それを扱う相手の急所も、超音速の攻撃避けながら攻撃可能だし
あの人の死線を見る能力って、それを確実にトレース出来るとかいうチート具合だし
163
:
無銘の剣
:2010/08/04(水) 12:34:40 ID:l3mrrKG.
まぁ、破壊可能の程度とかも含めて、書き手さん達の流れに任せようかねぇ
バランス崩れるようなら自然と話題に上るだろうし
164
:
無銘の剣
:2010/08/04(水) 18:58:05 ID:6ud1Dmng
>>161
グローバルじゃなくてヴォーパルな
フランベルジュは城辺りに突き刺さってそうだし、ダイヤモンドの指輪は不明支給品で出せる
165
:
無銘の剣
:2010/08/04(水) 19:05:14 ID:hSaPPYgo
イナズマは原作で破壊できない刀ってのはでてる
魔剣でもなんでもない刀だけど非常に丹念に作られていて剛性が強いから弱点がないとかで
描写次第ではあるけど、戦ってる相手の剣なんて早々破壊できないだろう
弱点を見極められないとか相手の力で弾かれるとかで
166
:
無銘の剣
:2010/08/04(水) 19:10:36 ID:hSaPPYgo
っと、あと議論スレでも出てるけどここと雑談スレ落として本スレ立てない?
創作板使えないから人は間違いなく減ったし、こんなふうに話題分散するのもさびしい
167
:
無銘の剣
:2010/08/04(水) 19:19:08 ID:dmKb.9.M
まぁ落とす必要はないと思うけどね
創作に戻る事になったらまた必要になるんだし
ここを本スレ的に使えばそれで済むと思うが
168
:
無銘の剣
:2010/08/04(水) 21:29:08 ID:0SZ5EUCE
正直、創作が落ち着いたら戻りたい
あそこはロワ以外にも色々あって面白い場所だからあそこでみんなでワイワイしたい
ただし荒らしは除く
169
:
無銘の剣
:2010/08/05(木) 01:44:21 ID:QKnLFzPM
>>164
……メチャクチャ恥ずかしいタイプミスしてしまった
穴があったら入れたいくらい恥ずかしい
そういやカオスってサーナキア曰く相当重いそうだがアレって男女だからだっけ?
170
:
無銘の剣
:2010/08/05(木) 02:35:36 ID:pJHKZ1tk
とりあえず、武器破壊は能力的に可能な人間もいるが
書き手さんの扱い・描写次第って感じでおk?
あと、ここは別に落とさなくても良いんじゃないかい?
171
:
無銘の剣
:2010/08/05(木) 04:46:24 ID:N2QoU6Kw
>>158
>式は確か無機物の死は見た事がなかったような…まぁ出来るんだろうけど
小説の描写だと、
>人にも、壁にも、空気にも―――凶々しくも静謐な線が見えた。
とあるんで、鉱物にも無機物にも見えるはず
172
:
◆9G12fmecqU
:2010/08/05(木) 17:47:15 ID:6AwMvfWw
ノヴァ@ダイの大冒険、クレア、志葉丈瑠 投下します
173
:
◆9G12fmecqU
:2010/08/05(木) 17:48:03 ID:6AwMvfWw
志葉丈瑠は侍である。
世を乱す外道を覆滅するため剣を執る、いわば人類の守護者。
クレアはクレイモアである。
人を捕食する妖魔に対抗すべく妖魔の肉から生み出された、いわば同属殺し。
ノヴァは勇者である。
世界を闇に堕とさんとする魔王軍と戦う、人呼んで『北の勇者』。
本来存在する次元の違うその三者が、何の因果か一堂に会す。
人を守り悪を倒す、という点では目的は同じ。
だが何を持って悪と見なすのか。
その基準は三人ともが違うものだった。
174
:
◆9G12fmecqU
:2010/08/05(木) 17:48:37 ID:6AwMvfWw
◆ ◆ ◆
「妖力が……うまく制御できんな」
クレアは銀髪の男と黒い剣士から逃れた後、民家に身を隠し身体の調子を確かめていた。
黒い剣士によって断たれた右腕は回収できていたので、妖力を解放し治癒力を高めるという実にクレイモア的な施術を行おうというのだ。
本来攻撃型に分類されるクレアにとって治療行為はどちらかといえば不得手なのだ。
だが幸か不幸か以前にも同じ経験があったためコツは掴んでいた。
時間さえあれば問題なく繋げられるだろう――と、思っていたのだが。
「たとえ繋がったとしても握力が戻るまでしばらくかかりそうだ……フン、この首輪のせいか?」
体内で妖力をコントロールしようとすれば、首輪のある部位で急に制御が乱れてしまう。
先ほど戦っていた時には感じなかったということは、おそらくこのような治療行為を妨害するための処置なのだろう。
考えてみれば当然だ。
クレアはクレイモアだからこそ四肢の断裂という事態に直面してもその部位さえ損壊していなければ繋げ直すことができる。
もちろんそんな真似は人間にはできない。
人間の中には下位メンバーに匹敵する達人が稀にいるという話だが、そんな例外はあくまで一握りだ。
そう、先ほどの黒い剣士のようなイレギュラーを別にすれば人間がクレイモアと戦うことなどできるはずがない。
この島に集められたものは大半が人間だったと、クレアの嗅覚は看破していた。
クレイモアや妖魔といった超越者に人間が一方的に虐殺されるのを防ぐための処置と考えると妥当ではある。
「限界を超えればあるいはこの首輪とて破壊できるかもしれんが……そうなったときの私は間違いなく覚醒者だな。
まったく厄介なものを押し付けてくれる……」
クレイモアの体質ゆえ出血多量で動けなくなる、ということはない。血はすでに止まっている。
だが片腕を欠いたままでは身体のバランスが保てず、普段のような動きはできない。
そして右腕で放つ高速剣が封じられたのも痛い。
せめて左腕であれば戦闘力の低下はまだ小さかったのだが。
「腕を繋ぐ間、私はほぼ無防備だ。今の状況では迂闊に隙を見せるのは危険だな……」
なにしろ先ほどの銀髪の妖魔や黒い剣士が追ってくるかもしれない。
双方尋常ではない使い手の上、後者に至っては人間である。
人間を殺すのは禁忌とされているクレイモアに取り、あの剣士は最悪の相手といえた。
175
:
◆9G12fmecqU
:2010/08/05(木) 17:49:42 ID:6AwMvfWw
「せめて他の戦士が……ミリアやジーンがいれば――っ!?」
呟きの途中で鋭い殺気を感じた。
クレアは腕を抱えたまま窓へと跳躍する。
ガラスを突き破り地面を転がっていく。
その最中、轟音がクレアの耳を劈いた。
数秒前までいた民家が、木っ端のように打ち砕かれたのだ。
「一体何が……?」
「マヒャド!」
事態を把握しようとしたクレアを次に襲ったのは、氷結する地面。
地を這う冷気は瞬く間にクレアの両足を絡め取った。
攻撃されていると気付き剣を抜くクレア。
そのとき、間合いの外から近づいてきた人影があった。
「全身を凍結させるつもりだったが、マヒャドでこの程度の威力しか出ないとは……」
その人影は人間だった。
妖魔の匂いなどまったくない、掛け値なしに純粋な人間の少年だ。
ラキより少し年嵩だろうか。だがその瞳の色は紛れもない戦士の眼光を放っていた。
「だがまあいい。その足ではもうろくに動けまい」
「待て、私にお前と戦う気はない」
「お前になくてもこっちにはある。その暗黒闘気をこの僕が見逃すと思ったか、魔族め!」
「魔族……?」
「この僕に、“北の勇者”ノヴァに討たれることを誇りに思うんだな!」
人間――彼が名乗ったところのノヴァという少年は、何も持っていない腕で空を掴む。
さながら虚空の剣を握り締めるように――否。
「な、何っ……!?」
「僕には剣など与えられなかったが……フッ、むしろ公平というものかな。僕には伝説の武具すらも凌駕するこの力があるのだから!」
ノヴァの手の中に現れた剣。
クレイモアとして長く戦い続けてきたクレアでさえ見たことのない、それはまさに光の剣だった。
あふれる闘気を凝縮し、固定し、剣の形に練成する力こそ、ノヴァの唯一にして最大の武器。
さきほど民家を粉々にしたのもこの闘気剣の一撃だ。
ノヴァの闘気剣は全力で放てば城壁すらも一太刀で切り裂く。
人間の技でありながら、その威力は竜の騎士ダイが放つアバンストラッシュさえも凌駕する。
176
:
◆9G12fmecqU
:2010/08/05(木) 17:50:40 ID:6AwMvfWw
「さあ、受けてみろ! これが――!」
ノヴァが跳躍する。彼が頭上で掲げた剣が閃光を放った。
夜空に煌めく十字星。
クレアは残った左腕で剣を構えるものの、
(まずい……! あれは受け止められん!)
内心で敗北を確信していた。
よもや人間がここまで強力な技を操るとは。
あれが直撃すればクレイモアとて一溜まりもない。いいや、あるいは覚醒者すらも屠れるのではないか。
「ノーザングランブレェェェドッッ!!」
光が、落ちてくる――クレアはしかし視線だけは逸らさなかった。
たとえ身体を砕かれるとしても、心までは折れはしない。
その抵抗の証として。
だからこそ、クレアは見た。
クレアだけを見据えていたノヴァが、横合いから飛び込んできた赤い影に突き飛ばされたのを。
全力を攻撃に傾けていたため、ノヴァは地面に叩き落されるまで何をされたのか理解できなかった。
そしてこちらはひらり華麗に着地した赤い衣をまとった人物が、クレアの元へ駆け寄り手を差し伸べる。
「大丈夫か?」
「あ……ああ。お前は……?」
「話は後だ、その刀を貸せ」
とその青年はクレアの手から刀を取り上げ、クレアの足を固める氷へと一閃させた。
たちまち氷は砕けて崩れる。かといってクレアの足には傷一つついていない、それは絶妙な力加減で振るわれた一刀だった。
クレアは自由になった身体を確かめ青年から刀を受け取る。
「助かった。私はクレアだ」
「俺は丈瑠。……志葉、丈瑠だ」
志葉、というところで躊躇を見せたが、志葉丈瑠という人物は名乗る。
その手にあるのは何の冗談か柄と鍔だけの刀。
だが不思議と、刀身のない刀を構える姿は様になっていた。
177
:
◆9G12fmecqU
:2010/08/05(木) 17:50:56 ID:6AwMvfWw
「手を出してから言うのも何だが、人間同士で戦うな。俺達の敵はあのロワという外道だろう」
「む……言っておくが私は襲われた方だ。今回は先に手を出してきたのはあの少年だぞ」
「今回は?」
「……後で説明する。今は」
銀髪の妖魔のときは明らかにクレアから仕掛けたので口ごもってしまう。
だが確かに今はそんな場合ではなかった。
ノヴァが立ち上がってなおも戦意絶えぬ眼差しで睨み付けていたからだ。
「貴様……人間のくせに魔王軍に寝返ったのか!」
「魔王軍? 何を言ってる。俺は外道を倒すシン――」
「ええい、問答無用! この僕の邪魔をするというなら二人まとめて倒すまでだ!」
ノヴァが懐から取り出したのは、ミニチュアサイズの剣だった。
子供のおもちゃにしか見えないそれが、ノヴァの手の中で強烈な光を帯びる。
「くらえっ!」
投擲されたミニチュアの剣は、冗談じみた見た目からは想像もできない速さで丈瑠へと迫る。
横転し回避。剣は後ろで民家の壁に突き立った、かと思えばそれだけに留まらず、壁そのもの一気に打ち砕いた。
「“砕”のモヂカラか……!?」
「僕は闘気を自在に操ることができる。礫を砲弾に変えることなど容易い!」
瞬間、丈瑠のすぐ近くでノヴァの声。
視線を前に戻せばさきほど凍らせた地面を滑ることで高速で近づいてきたノヴァが、闘気剣を叩きつけてきた。
反射的に受け止めようとし――今持っているのが刀身のない刀だと気付いた丈瑠は一も二もなく地を転がって刃から逃れた。
追撃しようとするノヴァ。
だが二の太刀が走る前に、クレアが丈瑠の首根っこを掴み後方へと距離を空けた。
「大丈夫か?」
「ああ、助かった」
「お互い様だ。それより、どうする? 向こうはやる気のようだ」
「止めるしかないだろう。あいつは外道じゃない、人間だ。斬るわけにはいかない。二人がかりなら何とでもなる」
「私と同意見か。それはいいが、いいのか? 私も正確な意味では人間ではないぞ」
「お前からは外道という感じはしない……無論、後で話は聞かせてもらうが。今はあいつを止めることが優先だ」
178
:
◆9G12fmecqU
:2010/08/05(木) 17:51:29 ID:6AwMvfWw
ノヴァが怒りに燃える目で二人へと向き直る。
丈瑠が逃げるときに放り出していた刀身のない刀を、ノヴァが拾い上げた。
刀身のない刀。
敵を斬るのではなく、己を斬る刀。
己を測る刀
己を試す刀。
己を知る刀。
誠刀・銓。
『誠実さ』に主眼を置いて鍛造された刃なき刀。
丈瑠はこの刀を持って己を見つめ直し、迷いを断ち切った。
刀身がないからこそ、刃の持つ意味を持ち主に問う。
そこから何を見出すのか――それは人によって違う。
丈瑠のように進むべき道を見出した者もいれば、ノヴァのように、
「おおおおおおぉぉぉっ!」
「刀身のない刀」に自らの生命を注ぎ込み、戦う力として活用する者もいる。
自己を過信し、我を通すことこそ善であると信ずる傲慢。
輝きを増した剣が暗闇を激しく切り裂く。
「……あいつには刀身の有無など関係ないようだ」
「触媒があった方がよりあの光の収束率が高まる……厄介だな」
柄を得たことでその分の闘気を刀身形成へと回すことができ、切れ味も上がる。
ノヴァはこの島に集められた者の中でもただ一人、誠刀・銓を四季崎記紀の予想を超えて活用できる人間なのだった。
誠刀・銓改め、我刀・ノヴァ。
無垢なる刃が侍と戦士の前に立ちはだかった。
179
:
◆9G12fmecqU
:2010/08/05(木) 17:51:45 ID:6AwMvfWw
【G-2/市街/一日目/深夜】
【志葉丈瑠@侍戦隊シンケンジャー】
【状態】健康
【装備】なし
【道具】支給品、ランダムアイテム(個数内容ともに不明)
【思考】基本:争いを止めるため戦う。
1:クレアとともにノヴァを止める。
2:剣が欲しい。
【クレア@CLAYMORE】
【状態】右腕の肘から先を切断
【装備】絶刀・鉋@刀語、右腕
【道具】支給品、ランダムアイテム×1
【思考】基本:妖魔を狩り、この殺し合いの主催者の真意を探る。
1:丈瑠とともにノヴァに対処。殺すつもりはない。
2:とりあえず安全なところまでいって右腕を繋げる。
【ノヴァ@ダイの大冒険】
【状態】疲労(小)
【装備】誠刀・銓@刀語
【道具】支給品、ランダムアイテム×1
【思考】基本:『勇者』として『悪』を倒す。
1:クレアと丈瑠を倒す。
【備考】
・この状況を魔王軍の仕業だと思っています。
・クレアの妖力を暗黒闘気だと思っています。
※レヴァンティン@魔法少女リリカルなのはシリーズ(待機状態)が地面に転がっています。
180
:
無銘の剣
:2010/08/05(木) 17:52:42 ID:6AwMvfWw
投下終了。
タイトルは「 我刀・ノヴァ 」 です。
181
:
無銘の剣
:2010/08/05(木) 19:33:48 ID:Cjq4wQY.
投下乙です
ノヴァが誠刀を武器にしたか
意外と強いのか?
182
:
◆s4f2srXljQ
:2010/08/05(木) 21:25:21 ID:vVxk5k.I
セイバー、錆投下します
183
:
彼女の理由
◆s4f2srXljQ
:2010/08/05(木) 21:26:23 ID:vVxk5k.I
◆
森の中に雨避けを見つけて、錆白兵は足を止めた。
爆縮地―――人知を超えたその足運びにより、長距離を走破したその身に疲労は見られない。
軒をくぐり、土足で中に入り込む。どうやらここは、薬問屋らしい。
医療器具を見回しながら、錆は適当に縫合した腹部の裂傷に今一度、適度な修繕を施した。
「……さて」
錆がため息をつく。
その嘆息の理由は、入り口近くにある机の上に放られた剣を見れば明らかだ。
選定の聖剣・カリバーンは、見るも無残な鋼の残骸へと成り果てていた。
「真逆、拙者の逆転夢斬を初見で見切る剣士がいるとは、驚きでござる……。
更に言えば、あの見えない刀身―――『えあ』とか言っていたか?
あの不可解な技術による拙者の速遅剣との間合いの取り合い……まさしく、緊迫の極み。
その膠着状態を打ち破ったあの疾風の一閃もまた、一揆刀銭に見劣りせぬ神技。
カウンター
拙者に刃取りがなければ、確実に両断されていたな。そして反力学で放った一揆刀銭を弾いた、
あの禍気の奔出……まっこと、恐ろしい相手でござった」
カリバーンを砕かれるほどの激戦を終えてなお、錆の目には余裕がある。
疲労よりも、戦の高揚のほうが勝っている―――否、強き剣士との出会いに、心を躍らされているのか。
「あれほどの強敵、この一生万死の坩堝では殺しきれなかった事を悔やむべきなのであろうが―――」
久しく出会っていなかった、自分より強い存在。
まだ見ぬ他の参加者達も、あるいはあれほどの強さを持っているのか。
期待を膨らませながら、錆は鉄の棒を拾い上げ、僅かに刻んで刃のように加工する。
錆ほどの剣客になれば、どんな獲物であってもその実力に翳りは落ちない。
カリバーンの鞘に俄刀・鉄を収め、錆はしばしの休息に入った。
【G-5 診療所/一日目/黎明】
【錆白兵@刀語】
【状態】健康 疲労(中・無感)
【装備】加工した鉄の棒
【道具】支給品 悪刀・鐚@刀語(電力残量55%) カリバーンの鞘
【思考】基本:優勝し、元の世界に戻って失敗作から脱却する
1:拙者にときめいてもらうでござる
【備考】悪刀・鐚は活性化の性能が制限されているため、
基本は疲労無視と痛覚遮断の効能しかありません。
ダメージを負うごとにそれを治癒しますが、その度合いによって電量を消費し、
電力がカラになると鐚の全機能が停止します。
184
:
彼女の理由
◆s4f2srXljQ
:2010/08/05(木) 21:27:18 ID:vVxk5k.I
◆
ダイとアーチャーを見逃してから、少しの時間が過ぎた。
黒化したセイバーは彼らを追うでもなく、その場に残っている。
夜風に揺れて、更地の向こうから音を立てる森林に気を配りながらも、その心は冷静だった。
(森という戦場は、弓兵にとって絶好だ。深追いは不味い)
頭に浮かぶ直感に従い、風王結界を解除し、鎧も無に還す。
受肉しているから消滅の心配はないにしても―――供給の目処がない現状、魔力の浪費は避けたかった。
風の纏境を解かれた剣は、必然その姿を見せる。
それは、木刀だった。何の意匠もない、何の外連味もない、ただの木刀だった。
何の毒もないそれを、セイバーが黄金の瞳でじっと見つめる。
「……不思議な剣だ。嘘を見破り、心を浚い、己の真実を見せる。……私には、矛盾した王道を見せるか」
.....
王刀『鋸』。とある刀鍛冶が鋳造したその日本刀は、セイバーの心に黄色の信号を燈していた。
.......................
違う―――いまのお前は違う―――真実ではない―――英霊と呼ばれた、アーサー王ではない!
「そうだ。私は反転した英霊。聖杯の泥に侵された、逆属性のアルトリアだ。
だが―――果たしてお前に、私がどうであれば正しいのか、などという事が、決められるのか」
王刀が黙る。否、黙ったのは王刀が看破し、黒化したセイバーに突きつけた、アルトリアの本性だ。
しかし、セイバーはそれを否定する。正しい自分を否定し、自分の正しさを開示する。
「私の望みとは誤った過去の清算。それはいい。それは私にとって、否定できない唯一の物だ!
だが―――それに伴う犠牲を、果たして私は理解していたのか」
それは、彼女もとうに理解しているはずの矛盾。英霊でありながら、己が生きた過去の変針を望む意思。
だが、その意思がもたらした物を、彼女は黒化してから嫌というほど知った。
かって自分が敗退した、冬木の第四次聖杯戦争……あの最後に、自分が放った約束された勝利の剣。
その一撃は聖杯を破壊し、中身の泥を撒き散らし、アンリ・マユの力で多くの人の命を奪ったのだと、
間桐桜とゾウゲンの会話から、はっきりと理解できた。自分が黒化していなければ、罪悪感に膝を折っていただろう。
それについては何も感じなかったが……さすがに、第五次聖杯戦争の結末は、堪えた。
「私がシロウとの一騎討ちに破れ、トドメを刺す前にシロウが息絶えた後……。
桜が死に、凛が死に、制御を失って溢れ出した泥の量は、四次の時の比ではなかった。
そして私は泥に呑まれ、消化される寸前に確かに見た。冬木の町が、アンリマユに蹂躙される瞬間を!」
黒化した桜を止めるために戦った衛宮士郎は、セイバーに勝って死んだ。
妹を殺す覚悟を決めていたはずの遠坂凛は、結局妹を殺す事ができずに死んだ。
とうに正気を失っていたはずの間桐桜は、姉の愛に触れ、自ら死んだ。
同じように悲惨な終わりを迎えて消滅した筈の自分が、何故黒化したままここにいるのか……それは理解できないが、
セイバーは、最後の光景を忘れなかった。再び受肉してもなお、その時の思いを忘れなかった。
「私が過去の改竄を願う度に未来の命が消えるのならば、私に夢を見る権利などなかったのだ……。
私の願いは聖杯の中身など関係なく、初めから、間違っていた……たった一つの理想こそが、
私を蝕む毒だった! 何度も、気付く機会はあったはずなのに! 私はそれに目を向けなかった!
これは変えたいと望んだ生前の我が行いと、変えられると信じた生前の国の末路と、何も変わらないではないか!」
王刀は、持ち主の毒を殺す。
だが―――殺した毒は、属性を変換させる聖杯の泥ではなかった。
それはアルトリアを殺し、アーサーが望み、セイバーが叶えようとした歪んだ願い。
決して曲がらない、王道と騎士道。それら全てを蹂躙して、黒騎士は叫ぶ。
過去の毒に影響されない、彼女自身の、現在の心からの渇望。
185
:
彼女の理由
◆s4f2srXljQ
:2010/08/05(木) 21:28:41 ID:vVxk5k.I
「私はあの願望器を獲り、『聖杯の存在しない冬木市』を実現させる。選定は―――間違っていたと、受け止めよう」
受け止める。セイバーが搾り出したその言葉は、もはや王の選定のやり直しを望まないという意味を孕んでいた。
黒化しても変わらない彼女の誇りが最後に選んだのは、
自身の仮マスター、間桐桜と、かってのマスター、衛宮士郎の救済。
騎士ならぬ騎士が見せる、最後の忠義……否、それは親愛にも似ていた。
それを実現させるため、英霊アルトリアは、殺人者セイバーとして地に足を付けた。
――――だが、彼女は気付いているだろうか?
その選択もまた、矛盾を孕んでいるという事実に。
王刀の特性が『毒のなさ』だけでなく、抱える矛盾にある事に。
「……」
突如セイバーの黄金の瞳が細まり、敵の接近を告げる。
かなりの距離まで詰められている―――アサシンでもなければ、これほど見晴らしのいい更地で
ここまで気配を立てずに接近する事は不可能なはずだと、セイバーが周囲に目をやる。
「その刀は―――いい刀でござる」
何故気付かなかったのか、セイバーは即座に理解した。
目の前に現れた、目麗しい堕剣士は、人間の気配を出していなかった。 ...
それはまるで一本の刀のような、鋭く、近寄りがたく、しかし美しい、そんなそれだった。
(――――――!)
敵の力量を測るために目をやった腰に、セイバーは息を奪われる。
そこにあったのは全ての元凶。自分の生き方を決定付けた、選定の聖剣だった。
浮かんだ感情は怒りか、憎悪か、あるいは当然のように美しいままの聖剣への呪いか。
「その剣は―――悪し剣だ」
ともかくその感情のまま、セイバーは白髪の剣士に斬りかかる。
風の鞘を招来し、黒の鎧を身に纏い。
この戦いの結果がどうあれ、彼女はこれからも同じ事をし続けるだろう。
……そして、その結末も、また……。
【F-6 森/一日目/深夜】
【セイバー(オルタナティブ)@Fate/stay night】
【状態】疲労(小) 魔力消費(小)
【装備】王刀『鋸』@刀語(風王結界) 魔力で編みあげた鎧
【道具】支給品 ランダムアイテム×1
【思考】基本:ロワの提示した万能の願望器を得、『聖杯のない冬木市』を実現させる。
1:敵を倒す。
【備考】受肉した肉体なので、物理攻撃の無効化・霊体化などは出来ません。
186
:
◆s4f2srXljQ
:2010/08/05(木) 21:29:25 ID:vVxk5k.I
以上で投下終了です
187
:
無銘の剣
:2010/08/05(木) 21:51:07 ID:YgRaNHbw
投下乙です
ノヴァ(男)は一悶着あると思ってたがこれはヒドイw
続きが気になる展開と引きでした
これは錆白兵と黒セイバーが一戦したんだろうな…
いや、黒セイバーと戦って生き残った錆白兵も凄いなw 戦闘シーンないけどw
黒セイバーは単純に優勝狙いかと思ったら……黒くても白の時に似てる部分が…
これも先に期待
188
:
無銘の剣
:2010/08/05(木) 21:54:02 ID:Cjq4wQY.
投下乙です
黒セイバーでも倒せなかったのかw戦闘シーンないけどw
カリバーン破壊に心血を注いだかな
これはもう電池切れか、悪刀暴走するまでは生きながらえるかw
189
:
無銘の剣
:2010/08/06(金) 03:27:14 ID:NfamqncQ
投下乙
本来かませとも思える錆白兵が予想以上に強いなw戦闘シーン無いけどw
ふと思ったが、セイバーの風王結界は魔力の消費が激しいとかの制限は無し?
対人宝具は制限が掛からない、みたいな事かな?
いや、この先の書き手さん次第で如何とでもなるから別にイイな…
190
:
無銘の剣
:2010/08/06(金) 03:29:46 ID:WYX188LE
お二方とも投下乙です
ノヴァがかませじゃない…だと…
これで全員出揃ったけど対主催少ないし限定マーダーと戦闘狂多いしでどうなるんだw
黒セイバーと引き分けた錆白兵つえぇ…戦闘シーンないけどw
王刀でも黒化は解けないか、そりゃそうだな
にしても木刀でカリバーンやらダイの使うブレイブブレイドと渡り合うってすげーな
カリバーンに至っては破壊してるし
191
:
無銘の剣
:2010/08/06(金) 19:24:37 ID:gAyaY/Gw
お前らの息の合いように吹いたw>戦闘シーンないけど
まとめてだけど投下乙!
ブルックが風ちょっきんのシーンにゃあ身震い来た
サトリのテクニカルな戦い方はおもろいなー
神楽はまさかのマーダーか。隊長、全てはお前にかかってる!
そしてノヴァはあまりにもらしすぎるw だめだこいつ、でも強いw
黒セイバーと白兵の独白はよかったぜい
192
:
◆jT9S86wbO.
:2010/08/07(土) 03:42:48 ID:xmPI.Nyc
ユーリ投下します
193
:
◆jT9S86wbO.
:2010/08/07(土) 03:44:10 ID:xmPI.Nyc
ユーリ・ローウェルは肩を震わせていた。
親友であるフレン・シーフォを理不尽にも殺されてしまった。
「いつもにっこりにっこりでー」
なによりも、その直後に一瞬といえど報酬という言葉に心が揺らいでしまった自分に彼は憤慨した。
友を殺した敵の甘言に惑わされるなどあってはならないのだ。
フレンが生きていれば、責められたに違いない。
「さようなら、昨日までの私。こんにちは、今日の私」
故に、彼は反抗の意をその胸に刻んだ。
『永遠』の名を冠する剣を手にし。
「へんかんへんかん へんかんかーーーん」
だが今、彼が肩を震わせるのは自然の摂理に反する禁忌に触れてしまったことへの後悔からであった。
◇ ◇ ◇
194
:
◆jT9S86wbO.
:2010/08/07(土) 03:47:55 ID:xmPI.Nyc
「あたしが女装すると美人過ぎて女性に失礼とは確かに思ってたけど……」
ユーリが森を歩いていると、神殿に着いた。
内部に侵入したユーリを出迎えたのは女性の声をした機械であった。
説明を聞けば性転換の神殿ということで、胡散臭いながらもロワの技術力を量るつもりで自分で試してみた。
もちろん、ユーリにもこれが流石に死にいたるトラップではないだろうという確信めいた考えがあった。
剣で殺し合いをさせることが目的であるのに、トラップで殺していては話にならない。
しかし
「本当に女になることないじゃないのよー!!!!!!!!」
変なかけ声の後に効果音が鳴り、気づけば全てが終わっていた。
元から中性的で整っていた顔つきは変わらなかった。
問題は首から下だ。
胸元が開いたいつもの服は、膨らんでしまった胸に圧迫され、パッツンパッツンになっていた。
そして谷間を惜しげもなく披露している。
慌てて、股間を弄ってみれば男のシンボル、ユーリのジョニーは失われていた。
アイデンティティの喪失、これは口調まで女になってしまっていることすら彼に忘れさせた。
「しかも…すぐに戻れないですって……」
これが24時間経たないと再転換できないというからやってられない。
万が一、女になったとしても、すぐに戻れるだろうという自分に都合のいい考えもユーリにはあった。
やはり焦っていたのだろうか、これが常の冷静な彼であれば機械に確認を取っていたに違いない。
その後、ユーリの行方を知る者はいなかった。
G A M E O V E R
195
:
◆jT9S86wbO.
:2010/08/07(土) 03:50:57 ID:xmPI.Nyc
ウソです
【F-8 性転換の神殿内 一日目 深夜】
【ユーリ・ローウェル@テイルズオブヴェスペリア】
【状態】健康、女体化
【装備】エターナルソード@テイルズオブファンタジア
【道具】支給品一式 ランダムアイテム×2
【思考】
1:フレンの敵をとる
2:再転換したいわ
[備考]
※原作終了後から参戦
※性転換の神殿は24時間後、再利用可能。
196
:
◆jT9S86wbO.
:2010/08/07(土) 03:54:27 ID:xmPI.Nyc
以上で投下終了です。
タイトルは「Continue」です。
197
:
◆DzuK1MKXmE
:2010/08/07(土) 23:07:46 ID:IXAgHs/I
伊達政宗、高代亨を投下します。
198
:
サムライ
◆DzuK1MKXmE
:2010/08/07(土) 23:10:23 ID:IXAgHs/I
「それで──あんたは何百年も後の時代から来たって言うのかい?」
高代亨、イナズマの語る現代を聞き、いくらなんでもそれは無いだろうと伊達政宗が笑い。
「それは俺の台詞なんだがな──」
拳を燃やす者がいれば、生身で空を翔る者など、伊達政宗がイナズマに語る戦国時代はあまりにも荒唐無稽なものであり。
(いや、だがしかし──)
その能力により、人の感情の機微さえも敏感に感じ取ることのできるイナズマであるからこそ。
奥州筆頭・伊達政宗を名乗り、蒼い装束に三日月の鎧兜纏った、その男の言葉に嘘が無いことを見抜く。
(それとも記憶を操作された統和機構の合成人間…なのか?)
それぞれの時代や自身についての情報交換を終えた二人は顔を見合わせる。
「ハッ、あんたの言葉が悪趣味なjokeじゃないってんなら」
「あの女が恐ろしく強大な力を持っているのだけは間違いだろうな」
そう、すべての推測は憶測の域を出ず、彼らが真実を確かめるには余りに情報が少ないのだろう。
話を変えるように政宗は首に嵌められた鈍色の金属をコツコツと叩く。
「ところでアンタの”物の急所を突く能力”でもコイツは何とかならないのかい?」
「ああ、この首輪には物体の脆い所──その”線”がどこにも見あたらん…」
「Shit!! 俺の雷も弾かれちまった、一体こいつは何で出来てやがる!?」
「どうやら俺たちで首輪をなんとかするのは無理らしい」
「Hye それでもこいつを外すのを諦めのは早すぎるってなあ!」
「ああ、今の俺たちだけでは無理だとしても」
「この首輪をどうにか出来る力を持った人間がいる可能性はZeroじゃない」
「ふっ、そういうことだな」
反逆の意思を秘めた二人が不敵に笑う。
そして──。
199
:
サムライ
◆DzuK1MKXmE
:2010/08/07(土) 23:11:07 ID:IXAgHs/I
☆ ★ ☆
イナズマと政宗の話が決まった。
主催に対抗する為に首輪を解除する、その為には同じ意思を持つ者を探す必要があり、
この広大な島を探索する為に彼らはそれぞれが二手に別れて行動することにした。
「俺が島の南側を…あんたが北側を探索をする。
しかしあんたはまだ傷が癒えていないだろう。本当に一人でも平気なのか?」
「ハッ、俺は奥州筆頭・伊達政宗だぜ。そう簡単に死にはしねえさ!」
それに俺にはコイツがある。と腰に差した片倉小十郎「黒竜」を抜く。
月明りを帯びた黒竜の刀身が政宗の呼び掛けに応じるが如く輝いた。
「ならば、次の放送時刻に再びこの場所で落ち合う。それが叶わなければさらに次の放送で──」
「──ok see you Lightning!!」
島の中央「D-4」草原での再開を約束したイナズマと伊達政宗はそれぞれの道へと別れていった。
──だが、暗闇へと消えていった伊達政宗の後姿に、イナズマは言い知れぬ不安を感じていた。
政宗の行く手にはうっすらと、だが確かに”線”が見えた。
「──死ぬなよ、伊達政宗」
【D-4 草原南/一日目/深夜】
【高代亨@ブギーポップシリーズ】
【状態】疲労(小)、能力の不調に違和感あり
【装備】稲妻の剣の鞘
【道具】基本支給品、ウェイバー@ONE PIECE
【思考】基本:戦う力のない者を守る。
1:島の南側を探索して殺し合いに乗らない参加者や首輪を解除できる者を探す。(対象が強ければ別行動、弱ければ同行して守る)
2:次回放送時に伊達政宗とD-4で合流する。
3:ブラッドレイを警戒。
4:死ぬなよ…政宗。
【備考】
※『イナズマ』能力を使用している間は徐々に疲労が増加。
※今のところ本名を名乗るつもりはない。
200
:
サムライ
◆DzuK1MKXmE
:2010/08/07(土) 23:11:44 ID:IXAgHs/I
★ ☆ ★
武士道とは死ぬことと見つけたり。
ほんの少し時が巻き戻る。
「ああ──俺が北に行く」
「だが島の北には奴がいる」
イナズマと伊達政宗を退けた恐るべき男、キング・ブラッドレイ。
「どっちにしたって島を調べなくちゃならないんだろ?だったら北には俺が行くぜ!」
「それならばあんたよりは無傷の俺が北に行くべきだろう?」
イナズマの言葉に対して腰に手を当てた政宗が舌を濁す。
「なあ、Lightning 此処は何も言わず俺に任せてくれないか」
俺は行かなけりゃならないと、政宗の眼がイナズマに深く語りかけ。
(──そうか)
その眼を──統和機構の最強と戦ったことのあるイナズマは知っていた。
(伊達政宗─やはり本物の戦国武将。サムライか)
かつて、誰よりもサムライに憧れて、サムライを目指したからイナズマだからこそ解る事がある。
眼前に起つ伊達政宗が、真に己と同じサムライなのだと。
(いや…俺自身はその資格をとうに失ってしまったか)
頭を振って苦笑した。
「ふっ、あんたがそこまで言うんならもう止めはしないさ」
「ハッ、そうこなっくっちゃな thank you !!」
イナズマの拳を叩き、政宗が親指を立てる。
その胸に秘めた思いは。
「このまま負けっぱなしってワケにはいかない──だろ King!!」
真のサムライがその”線”を超えるのか。
その道の先に何が待ち受けているのか。
それはまだ誰にもわからない。
【D-4 草原北/一日目/深夜】
【伊達政宗@戦国BASARA】
【状態】疲労(小)、左脇腹に裂傷(応急手当て済み)
【装備】黒竜@戦国BASARA
【道具】基本支給品、ランダムアイテム(個数、内容ともに不明)
【思考】基本:主催者の首を獲る。誰だろうと挑まれれば受けて立つ。
1:島の北側を探索して殺し合いに乗らない参加者や首輪を解除できる者を探す。
2:ブラッドレイを倒す。
3:イナズマにいずれ借りを返す。
※伊達政宗が実際には北側のどちらに向かうのかは次の書き手氏にお任せします
201
:
◆DzuK1MKXmE
:2010/08/07(土) 23:14:28 ID:IXAgHs/I
以上で投下を終了します。
202
:
◆Ops2L0916M
:2010/08/07(土) 23:29:53 ID:3UmRaXN2
投下乙です。政宗さんあかん!北には大総統以外にもブーメランとかいるよー。
南にもセイバーとかいるし、どっちにしろやばいね!
予約分投下します。
203
:
本当の願い/不屈の意志
◆Ops2L0916M
:2010/08/07(土) 23:31:25 ID:3UmRaXN2
「はぁ……俺ってかっこわりい……」
才人は大きな木に背を向けて体育座りをしていた。
その縮こまった姿は哀れさを醸し出している。
「勘違いで無粋な行動をした間男って……やばい泣きそうだ」
間男。妻のある男が他の女性と肉体関係を結ぶこと。
このケースの場合、セシリーとグリフィスの戦いを邪魔したことからそう呼ばれてしまったのだが。
「俺は純粋だぁ……ルイズ一筋だぁ……そりゃあ少しは場の流れでふらふらしたこともあったけどよぉ」
違う部分で思い当たるフシがあったのだろうか、すごくへこんでいる。
「鬱だ……」
「ったく、いつまで落ち込んでるんだ。確かに間男なのは否めないが助けに入ってくれたことにはその、何だ……感謝しているぞ」
最初の気負いはどこへ行ったのだろうか、すっかり沈んでしまっている才人。
そこにそっぽを向きながらセシリーは話しかける。
顔が少し赤いのは気のせいか、まあ才人は全くセシリーの方を見ていないので気づくことはない。
「そうかぁ……サンキューな、セシリー。何時までもグダっても始まらねーや」
「その意気だ、ほらさっさと情報交換をするぞ」
そして才人はセシリーの方へのそのそと寄って向かいに座る。
「さてと、じゃあサイト。お前は私達の前に誰か参加者と会ってないか?」
「いーや、会ってねーよ。セシリーは?」
「私が会ったのはあの場にいた者達だけだ。それ以外は誰も」
才人とセシリーは今まで会った者の情報を紙にまとめた。
容姿、戦ってみた者に限っては実際の強さはどのくらいか、見た感じ危険か危険でないかなどを書き込む。
その内に話は互いの強さの話になる。
「お前はどうなんだ、サイト。どのくらい強いんだ?」
「俺?そんな大したことねーよ。七万の軍勢を足止めもできなかったしな。
一人じゃ無謀にも程があった」
「ぇ!!!おいサイトもう一度言ってくれ、よく聞こえなかった」
「だから七万の軍勢すら足止めできなかったってことだよ。情けねえ……」
「まさか一人でか?」
「ああ、一人でだ」
唖然とするセシリー、あっけらかんに言う才人。
しばらく無言の時が過ぎる。
「ま、まあいい。サイトお前の得物は何だ?」
「俺はこれだ。日本刀ってやつさ」
204
:
本当の願い/不屈の意志
◆Ops2L0916M
:2010/08/07(土) 23:32:15 ID:3UmRaXN2
そう言って才人が見せたのは白塗の鞘の日本刀。
和道一文字。ロロノア・ゾロが持つ大業物21工の一振りである。
「ほう、すごいな。見ただけで名刀とわかる。私の持つこの剣も負けてはいないがこれもまたすばらしい!」
眼をキラキラさせてセシリーは和道一文字を見つめる。
図らずもこの殺し合いで一番の笑顔であった。
「後で幾らでも見せてやるし触らせてやるから落ち着けって。よし、次だ。こいつをセシリーにやるよ」
ポンと才人がセシリーの手に差し出したのは携帯電話。色はセシリーの髪と同じく赤だ。
「おいこいつは何だ?見たところ何の役にも立ちそうにないが……」
「ああそっか、分かんなくて当然だよな。そいつは携帯電話って言って離れた場所からでも連絡を取れたりする道具なんだ。
俺は刀の他には俺は携帯電話が二つ支給されたみたいだからさ、片方をセシリーにと思ってな。
後でそれの操作方法を教えるよ。ほら、俺が使うやつはこれだ」
「ほう、そいつはすごいものだな。だがしかし、」
才人はデイバッグから青色の携帯電話を取り出す。
赤の携帯電話と同じタイプだ。
そして携帯電話を渡されたセシリーは何か考えこむような表情をしていた。
「どうした?何か問題でもあったか?」
「いや、もらってばかりだと悪い気がする。私ばっかりが得しては不公平だ。
私にも支給されていた物があるからそいつをやろう」
セシリーが出したのは一見何の変哲もない鍵。
「もしかすると何かに役に立つかもしれんからな。このけーたいでんわとやらとは吊り合わないと思うが受け取ってくれ」
「わかった。もしかすると何か重要な物を開ける為に使うかもしれないし」
才人は鍵を受け取りズボンのポケットに仕舞う。
「よし、仲間も見つけたことだしこの殺し合いを止めることだって不可能じゃないはずだ!!
見てろよ、ロワ!!必ずお前のところまでたどり着いてやるからな!!!」
セシリーの大胆な発言に才人はひやひやする。
才人とてこの殺し合いの転覆を狙っているがセシリーには思わずびっくりした。
(……こんな大っぴらに反逆を宣言して大丈夫なんだろうか。こーゆー発言とか盗聴されていたらやば……!?)
才人の顔が青くなる。今までほんの少しも考えなかったことが頭に浮かぶ。
(俺のバカ野郎!!!どうして気づかなかったんだ!!あの女の子が首輪の爆弾以外何も仕掛けていないなんてある訳ねーだろ!!!!!!)
205
:
本当の願い/不屈の意志
◆Ops2L0916M
:2010/08/07(土) 23:32:51 ID:3UmRaXN2
才人の頭の中では幾つもの考えが回っている。
盗聴器。それか盗撮器。どちらか、いやどちらもこの首輪に仕掛られていてもおかしくはない。
この二つをつけることで参加者をほぼ監視することが出来るはずだ。
(それにあの女の子だけが敵じゃねーかもしれねーし、まだ他にも誰かいる可能性だってあるんだ。
何が殺し合いに反逆するだ、あいつらの掌の上で無様に踊らされてるだけじゃねーか……!)
思考のピースが揃っていく。結論として、自分達は泳がされているということに気がついた才人は憤慨を顕にする。
何も知らないただの道化で会ったならばどれほど幸せであれただろうか。
でももう知ってしまったし、気づいてしまった。後戻りなど出来るはずもない。
「セシリーちょっといいか?」
ひとまずは出来ることから始めていこう。
◆
『つまり大事なことは筆談でしろと?』
『ああ、盗撮に関してはどうしようもないかもしれねーけど盗聴はこれで防げるはずだ』
二人は支給された紙で筆談を行っていた。才人が盗聴、盗撮の可能性について言及したためだ。
『首輪の解除方法や明確な脱出方法を相談する場合は筆談をした方がいい』
『わかった。他の参加者と会ったらそのことを伝えよう』
『ああ、頼むよ』
筆談についての論議が終わった二人が次に相談したのがセシリーの先程の発言。
ロワに反抗するという明確な意志を声に表したのに首輪の反応がない。
そのことについて疑問に思ったのだ。
『なぜ何も起きないだろうな。ひょっとして盗聴も盗撮も行ってないんじゃないか』
『そんな甘いことは多分ねーよ。大方踊らされてるだけだ。だから、ロワが油断してるかもしれない今がチャンスだ。
隙をついて首輪の解除方法を早く探さないと』
『けーたいでの連絡はどうする?さっき教えてもらっためーるというものを使っていいのか?』
『主催者の手が回ってるかもしれねーから、大事なことはこうやって直接筆談するべきだ。
これから合流しようとか誰々が危険かとかぐらいなら大丈夫だと思うけどな』
そして二人はメモをデイバックにしまう。相談すべきことは全て相談した。
後は、この情報を他の参加者に伝えることが優先される。
206
:
本当の願い/不屈の意志
◆Ops2L0916M
:2010/08/07(土) 23:34:38 ID:3UmRaXN2
「よし、では行くか。私は北東の町のほうへ向かおうと思う」
「じゃあ俺は西の街だな」
別行動をすることは最初から決まっていた。
もしもの時も携帯電話で連絡を取れるのでデメリットは余りない。
むしろ盗聴と盗撮の可能性を他の参加者に伝える、首輪の解除方法や脱出方法を探すのには手分けして島を回った方が効率がいいと判断した。
「では、生きて再び会おうサイト。死ぬなよ」
「そっちこそ。ヘマするなよ」
「私を誰だと思っている。これでも腕に自信があるんだ、そう簡単に命をとられはしないさ」
「ああ。じゃあな」
そうして二人は別々の方向へ歩き始めた。
【F-5 森林 中部 一日目 黎明】
【セシリー・キャンベル@聖剣の刀鍛冶】
【状態】健康
【装備】エクスカリバー@Fate/stay night
【道具】支給品一式 、赤の携帯電話
【思考】基本:殺し合いをとめる。
1:北東の町へ向かう
2:首輪の解除方法、脱出方法を探す。
3:出会った仲間には盗撮、盗聴の危険性を伝える。
4:グリフィスと決着をつける。
※携帯電話について才人から教わりました。通話、メールはできます。
カメラ、ムービー撮影まで教わったのかは不明。
※ランダム支給品は何かの鍵です。
(行ったか……こんな序盤から仲間を作ることができて俺はラッキーだったのかもしれねーな)
セシリーと別れて数分後、才人は足を止めた。そしてポケットの中から青の携帯電話を取り出してピコピコと操作する。
(何だ、メールか。セシリーの奴早くも何かあったのかよ)
画面に写すのはEメールメニューの受信ボックス。
ボタンを押して開いたのは一通のメール。このメールは元からこの携帯に入っていたものだ。
送信者の名前は。
(このメールは何だよ、ロワ!)
送信者の名前の部分にはロワと明示されていた。
才人は眉をしかめて文面を見つめる。
207
:
本当の願い/不屈の意志
◆Ops2L0916M
:2010/08/07(土) 23:35:20 ID:3UmRaXN2
(この文面も何だよ、“本当の願いは優勝すれば叶う。何も得ずに死にたくはないだろう?”って。
俺の本当の願いって何言ってやがる……
今の俺の願いは殺し合いの打破だ。それ以外に何もない……とは言い切れねーか)
才人はいきなりこのようなメールを送られて動揺しているのだろうか、頭を抱えている。
顔はしかめっ面となり、いつものおちゃらけた顔は見る影もない。
(ルイズのところに帰る……)
ルイズが待つあの世界への帰還。才人はもう一度ルイズに会いたいのだろうか。
当然、会いたいに決まっている。
でもその願いを叶えるためにはこの殺し合いで優勝しなければならない。
だが殺し合いの否定を才人は最初に考えたのだ。心のなかで啖呵を切り、ロワ諸共打ち砕くと決めた。
覆すはずがない。
(人を殺してまで優勝して願いを叶えるなんてしたくない。でも、俺はもう一度会いたい。ルイズに!何も得ずに死ぬなんざ嫌だ!)
才人の目から一筋の涙が零れた。優勝したら大切な人とまた会えて笑いあえる。
不確かな脱出方法よりも優勝の方が生きて帰れる可能性が高いかもしれない。
そもそもロワが願いを叶えてくれるかどうかすら定かではない。でも完全な嘘とも言い切れ無い。
そのことがこれからの方針を揺り動かす。
「畜生、頭がグチャグチャだ。自分でも何考えてんだかわかんねー。
俺はこの殺し合いには乗らないんだ……乗ってたまるか……!」
その言葉は前ほどの覇気はなく、苦し紛れの一言に聞こえた。
【F-5 森林 中部 一日目 黎明】
【平賀才人@ゼロの使い魔】
【状態】健康、強い迷い
【装備】 和道一文字@ONE PIECE
【道具】支給品一式 青の携帯電話、何かの鍵
【思考】基本:殺し合いを止める?それとも……
1: 本当の願い……
2:西の街へ向かう。
3:殺し合いを阻止する方法を考える。
4:首輪の解除方法、脱出方法を探す。
5:出会った仲間には盗撮、盗聴の危険性を伝える。
※ランダム支給品は携帯電話二つです。
208
:
本当の願い/不屈の意志
◆Ops2L0916M
:2010/08/07(土) 23:37:05 ID:3UmRaXN2
投下終了です。
ロワのメールについては少し不安ですが、
このくらいのことなら後でフォローできるかと思いました。
駄目でしたらこの部分だけ削除します。
209
:
無銘の剣
:2010/08/08(日) 00:28:26 ID:LrQHRI/o
投下乙です
イナズマと政宗さんはかっこいいな〜
でも北も南もまずいぞ。仲間と合流できたらまだ救いがあるが…
二人の雰囲気がよく出てていいと思います
こっちも分散か
サイトは意外にも盗聴の可能性に気が付いたが…
迷ってる上に西の街はまずいなぁw
210
:
◆/wyVLszwG6
:2010/08/08(日) 07:16:20 ID:6BFBiDco
アーチャ―、ダイ投下します。
211
:
考察(人それを深読みと言う)
◆/wyVLszwG6
:2010/08/08(日) 07:17:24 ID:6BFBiDco
月明かりが差し込む一室、そこはF-3:街の一角にある診療所の一室であった。
市街にたどり着いたアーチャーは、他の参加者と遭遇しない様細心の注意を払いながら街を探索する。
そして診療所を見つけるとダイを運びこんだ。
情報収集や殺し合いに乗った者の排除、負傷者や弱者の保護に協力者の確保等する事はいくらでもある。
だがその全てを一度にこなせる程、自分が万能ではない事を、他でもないアーチャー自身が一番良く知っている。
現時点で誰が殺し合いに乗っているかわからない上にこちらは負傷者を抱える身、そんな状態では他者との接触は避けたい所だ。
もし戦闘になったならば、意識の無い少年を一人抱えたまま戦う事になる。
それでもどうにかなる等と、アーチャ―は己の腕を過信していなかった。
仮にダイに意識があり、動ける状態ならば色々やりようがあったのだが。
◇ ◇ ◇
アーチャ―は室内のベットの一つに、そっとダイの体を横たえる。
ダイは痛みの為、いまだ呻き声をあげている。
当然だ、片腕を切り落としたのだ、こんな短時間に痛みが引く訳があるまい。
アーチャ―は室内の医療品を物色し、ダイに対して処置を施していく。
と言っても、傷口を消毒し薬を塗り、包帯を巻くくらい事しか出来ないのであるが。
最後に運よく見つける事が出来た一個の痛み止めを使おうとして、少し思案した。
これを使えばダイは一時的に苦痛から解放されるであろうが、その代わりしばらく目を覚さなくなるだろう。
そうなると、ある程度の時間この場に拘束される事になるが…さて。
212
:
考察(人それを深読みと言う)
◆/wyVLszwG6
:2010/08/08(日) 07:18:15 ID:6BFBiDco
思案の結果、やはり痛み止めを使う事にした。
このまま苦痛でいたずらに体力を消耗させるよりは、苦痛を取り除き少しでも体力を回復させた方がよいという判断の上でだ。
意識が戻っても、疲労仕切った体ではいざという時に自身の身を守る事すらままならない可能性もある。
そうすると、意識を取り戻してから体力を回復させる時間が必要となる。
ならば目を覚ました時に、すぐ行動ができる可能性を上げておいた方がいいだろうとアーチャーは判断した。
痛み止めは直ぐに効いたのか、ダイの呻き声は無くなり安らかな寝息を立てている。
それを確認するとアーチャ―は室内で物色した医療品、包帯、消毒薬、傷薬等の応急処置に必要な道具を纏め、自分とダイのディパックの中に入れておく。
「さて、あとはこの少年が目を覚ますの待つだけだが…」
しばらくは目を覚まさない事はわかっている、だからと言ってその間何もしないというのは時間の浪費にしかすぎない。
アーチャ―は虚空を見据え思考する。
街ならば人が集まりやすい、協力者の確保や弱者の保護の為動くべきではないか?
そうすればこの少年一人より、多くの犠牲を減らせるかもしれんぞ。
馬鹿な事を、友好的な参加者に会えるとは限らん。
ここに負傷した、殺し合いに乗ったものが来るのかもしれんぞ、そうなったらこの少年は確実に殺される。
救えるかどうかもわからん者の為に、眼の前の命を危険にさらすのか?
……否だな。
今は目の前の命を守ろう。
それは数瞬の葛藤。
正義の味方は味方したものしか救う事が出来ない。
誰かを救うという事は、誰かを救わないという事だ。
こんな時は何時も無き養父の言葉を思い出す。
今自分は目の前の少年を救う為に、助けられた誰かを切り捨てた筈なのだから。
213
:
考察(人それを深読みと言う)
◆/wyVLszwG6
:2010/08/08(日) 07:18:39 ID:6BFBiDco
◇ ◇ ◇
不本意ではあるが、何もすることが無い時間が出来てしまった。
ならばこの間を利用してやれる事をやっておくのが吉だろう。
この殺し合いを破綻させる為の必要事項に、まず首輪の解除がある。
この首輪による枷がある限り、ロワに対する反逆も逃亡もままならない。
無論首輪を解除しただけで、この殺し合いを破綻させる事など出来はしないが、まずこれを成さなければ次の段階に進む事も出来ないだろう。
「まあ、無駄だとは思うが…一応試してみるか。……解析――開始――(トレース・オン)」
そしてアーチャ―は己の魔術を発動させる。
アーチャ―の持つ魔術、固有結界『無限の剣製』はオリジナルを視認する事で、全く同じ剣を複製する事が可能である。
しかし、全く同じ複製を作ると言う事はその対象の構造を把握しなくてはいけない。
その為に、固有結界の能力に付随している構造把握能力を成す『解析魔術』により、首輪の構造を解析し用と試みるのだが…
「…ちっ、やはり無駄か」
解析を試みるものの創造の理念及び基本骨子、構成材質に製作技術いずれも読み取る事が出来なかった。
だが、それはそれで一つの収穫でもある。
解析の対して防御を行うという事は、解析されるとまずい物がある。
つまり、見る者が見れば首輪の解除は可能と言う事になる。
逆に何も防御されておらず解析できたとして、その構造がアーチャ―に全く理解出来なものである可能性もあった。
全員が一度に集められたあの場。
弓兵として他者より高い視覚能力を持つアーチャ―は、あの場で幾人もの姿を確認していた。
もっとも、位置が悪くはっきりと顔まで確認出来た人物数少ないが。
それでも、鎧兜をつけた者、女子学生、中世の西洋の服装の者と国も時代もてんでバラバラだったのを確認している。
アーチャ―の見立てでは、聖杯戦争の様に時代や国を超えて剣士たちが集められているのだろう。
ならば、ロワが自分の生きた時代の者だという保証はなく、アーチャ―にとって道の技術を使っている可能性もあるのだ。
魔術回路が固有結界をなすのに特化しているアーチャーは、お世辞にも優秀な魔術師とはいいがたい。
アーチャ―の生きた時代より未来の科学技術がつかわれている可能性や、神代の魔術が用いられていないとも限らないからだ。
まあもっとも、解析に対しての防御は式の直視の魔眼や、高代の”死線”を視る能力に対する防御付随している可能性もあるのが、彼らの存在を知らないアーチャ―にそれを判断しろというのは無理な話しである。
214
:
考察(人それを深読みと言う)
◆/wyVLszwG6
:2010/08/08(日) 07:19:36 ID:6BFBiDco
◇ ◇ ◇
思考に耽っていたアーチャ―は、ふとあの場に置いてロワのとった行動の一つに引っかかりを覚えた。
ロワの謎の力による、痛みで参加者全員の動きを封じたー仮に『苦痛の束縛』と名付けようか。
『苦痛の束縛』の発動に関しては、無詠唱・無動作であった。
にも関わらず、首輪の爆破には腕を振り下ろす動作を必要としていた。これは違いは一体何か?
腕を振り下ろしたのは単なる演出上都合であり、特に意味は無い。
というのであれば特に気にする必要はないだろう、だがもしそうではなかったら?
そう単に演出では無く、腕を振り下ろさざるを得なかったのだとしたらどうだ。
例えばそう、首輪の爆破を発動させる力はロワ自身には無く、ロワの主である剣もしくはロワの協力者が首輪を爆破させていた。
その為の合図である、そう読み取ることもできる。
伏兵という存在は何時だって厄介である、運用次第ではその場の流れを一気にひっくり返されてしまうのだから。
ロワと主である剣以外にこの殺し合い運営に携わる者。
例えば、この殺し合いを促進する為に参加者として紛れ込んでいる可能性もある。
だとしたら……
そこまで考えて、アーチャ―は思考を中断させる。
現在の思考はどれも確証が無く、空想の域を出ない。
最悪の事態に対応する為あらゆる事態を想定するのはいいが、深読みしすぎてどつぼにはまっては意味が無い。
今のはあくまで可能性の一つとして、思考の片隅に留めておく事にした。
勇者は未だ目覚めず、弓兵が動くのは何時になるか……
215
:
考察(人それを深読みと言う)
◆/wyVLszwG6
:2010/08/08(日) 07:20:01 ID:6BFBiDco
【F-3 市街地・診療所内/一日目/深夜】
【アーチャー@Fate/stay night】
【状態】健康 魔力消費(小)
【装備】赤の聖骸布
【道具】支給品 剣(詳細不明) ランダムアイテム(個数内容ともに不明) 医療品
【思考】基本:犠牲を減らす為に最適な行動を取る。
1:ダイの意識が戻るのを待つ。
【備考】受肉した肉体なので、物理攻撃の無効化・霊体化などは出来ません。
【ダイ@DRAGON QUEST-ダイの大冒険-】
【状態】気絶 疲労(小) 左腕喪失(応急処置済み)
【装備】ブレイブブレイド@ファイナルファンタジーⅤ
【道具】支給品 ランダムアイテム(個数内容ともに不明) 医療品
【思考】基本:元の世界へと戻り、大魔王を倒す。
1:この戦いを止める
【備考】ブレイブブレイド@ファイナルファンタジーⅤは持ち主が逃げるたびに攻撃力が落ちていきます。
216
:
考察(人それを深読みと言う)
◆/wyVLszwG6
:2010/08/08(日) 07:20:45 ID:6BFBiDco
投下終了です。
217
:
無銘の剣
:2010/08/08(日) 07:24:51 ID:Iqsi.jfY
投下乙です
奇しくも二組の対主催コンビが分散したか…
決意は強いが、悪い予感しかしねえw
メールというか携帯は……ちょっと非ファンタジー色が強すぎるような
海皇記にダンドーの耳という無線機があるのでそのへんで代用してみては?
これだとメールとかは無理ですが
218
:
無銘の剣
:2010/08/08(日) 07:32:37 ID:Iqsi.jfY
って、うお
投下があったか
乙です
アーチャーは頼りになるな
とりあえずはダイの味方か
しかしロワの言うところの主が剣だという事とはOPからでは結びつかなかったような?
考察すれば推定は出来るかもしれないけど
あと誤字指摘
>道の技術
未知かな
219
:
無銘の剣
:2010/08/08(日) 08:01:44 ID:qwpTEsRg
投下乙です
あぁ〜分裂したかぁ… イナズマは方向的に街に行けばアチャ達と会えそうだし、
本人が強い上に無傷だからまだ大丈夫そうだけど、筆頭は危ういなぁ…
怪我をしてるし、北に向かって会えそうなのが、ニケとぶっ倒れてるシグナム
そして大総統だもんな…… 出来れば再会まで生き残ってくれ!
220
:
無銘の剣
:2010/08/08(日) 12:03:19 ID:gTGggvWw
投下乙です
アーチャーは頼りになるし今はダイの味方だが…
上手くいけばイナズマと合流できそうだが…
携帯はあの二つだけと限定したらおkな気もするが
時代が違う連中から見たら携帯なんか未知の技術だから驚きそうw
北は他にもミズー、光、バッツがいるけどブーメランもいるぞw
221
:
無銘の剣
:2010/08/08(日) 12:33:20 ID:.Nv.0gGc
ショドウフォンもあるし三つだな。
まあ、これくらいがちょうどいいし
持ってても同じく持ってる人が居なきゃ基本的に無意味だしな
222
:
破壊の風
◆x.6zTnwIjo
:2010/08/08(日) 13:01:37 ID:uQpNlcpw
投下します
223
:
破壊の風
◆x.6zTnwIjo
:2010/08/08(日) 13:03:12 ID:uQpNlcpw
草原の真っただ中でリンディスは目覚めた。
「ここは……」
漠然と周囲を見渡し、全てを思い出す。
『只今より、皆さんには――殺し合いをして頂きます』
(そうだ、私は――!)
首に手を当ててみるとそこには冷たい金属の感触。
どうしようもなく囚われている。
リンディスはそのことを実感した。
「く、ロワ……!」
「呼びましたか?」
「!!?」
まさか反応があるとは思わず、リンディスは振り向いた。
そこにはやはり自分をここへと落とした張本人、ロワの姿があった。
「あなたは……! 殺し合いなんて馬鹿な真似を今すぐに止めさせなさい!」
「お断りします」
「なら!」
リンディスは剣を抜こうとして腰元に手をやる。
しかしそこには愛剣の存在はない。
「剣を探しているのですか? それなら、これを差し上げましょう」
ロワはリンディスに一本の剣を差し出した。
その剣はレイピアとサーベルの中間のような細身の剣。束には隼を象った装飾がなされている。
しかしその優美な姿と裏腹に凶悪なまでの妖気を発していた。
「これは破壊の妖気を宿した隼の剣。細身なれど破壊の力によって威力は申し分なし。
あなたの技と速度をさらに活かした戦闘が可能となりましょう」
「なんのつもり?」
当然のことながらリンディスはそれをすぐに受け取ることはせず、警戒の構えをとった。
「これを持ってあなたには積極的に参加者を狩ってもらいたいのです。
この『ゲーム』を管理する私の切り札、いわば【ジョーカー】となって欲しい」
「ふざけないで! 私は誇りある草原のサカの民、そんな真似するはずがないわ!」
「ですが、そうしなければあなたは祖父の下へは帰れない」
「!」
リンディスの声が止まる。
「よいではありませんか。ここは隔離された世界、あなたを知る者は誰もいない
ここでのあなたの行為が帰還した後、誰かに知られる怖れはないのです」
「そんな、事……」
「あなたの祖父の寿命はあと数カ月もないでしょう。その残された時間を共に過ごしたいのでしょう?
それがあなたが示せる愛の形なのでしょう?」
「う、うるさい……あなたに何が解るの」
「解ります。私の主は全能なのですから……」
ロワは再び禍々しい妖気の剣をリンディスへと差し出す。
224
:
破壊の風
◆x.6zTnwIjo
:2010/08/08(日) 13:03:39 ID:uQpNlcpw
「受け取りなさい、リンディス。あなたは選ばれたのです」
「何故……私なの……?」
「あなたには素質があると判断したからです、リンディス。あなたなら我が主の使い手として――」
そしてリンディスは剣を……取った。
「それで良いのです」
「そうね、これで私は――」
瞬間、リンディスの姿が消えた。
「あなたを斬れる!」
次にリンディスが姿を現したのはロワの背後だった。
刹那の間にリンディスはロワを瞬断していた。
しかし……
「!? そんな、手ごたえが――」
「受け取りましたね? その剣を」
ロワはリンディスの方へと振り向き、微笑んだ。
「このゲームはすでに止められません。既に死人も出ている。
解りますか、リンディス? 手遅れなのです。ゲームは止まらない、脱出の方法もない。
あなたの道は二つ、誰も斬らずに死ぬか――」
「黙れ!」
再びロワへと斬りかかるが、剣が届く前にロワの姿は消えていた。
――それとも、戦い抜くか――
その言葉を最後にロワの気配はリンディスの周囲から消失した。
リンディスは敗北感に打ちのめされ、地に膝をつく。
彼女の心は揺れていた。
帰りたい。殺したくない。死にたくない。逃げられない。
「私は……どうすれば……」
『破壊、破壊、破壊だ、全てを破壊せよ』
「は……壊…?」
リンディスが手にする妖剣。
それが囁きかけてくる。
『そうだ破壊だ、止められないのなら全てを終わらせろ』
「終わらせる……」
破壊の剣の呪い。
それは使用者の破壊衝動を極限まで高めてしまう。
普通ならばその呪いに抵抗するために、使用者はしばしばその動きを止められてしまう。
だがその呪いを受け入れたならば――
「そうね……止められないなら……手遅れなのなら……せめてもう二度とこんな事が起こらないように……」
『全てを破壊しろ』
「全てを破壊する」
そして一人の修羅が生まれた。
【B-4 村はずれの草原/一日目/深夜】
【リンディス@ファイアーエムブレム烈火の剣】
【状態】健康
【装備】破壊隼の剣@ドラゴンクエストⅡ
【道具】支給品一式 不明アイテム
【思考】基本:元の世界へ帰還する
1:全破壊
【備考】破壊隼の剣は破壊の剣の攻撃力(DQ2最強の威力)と隼の剣の二回攻撃の特性を併せ持つ剣です。
225
:
無銘の剣
:2010/08/08(日) 13:04:13 ID:uQpNlcpw
投下終了
226
:
無銘の剣
:2010/08/08(日) 14:15:14 ID:9dXQMVIE
はかぶさってバグ技で作る剣だろ
常識的にそういうもの出すか普通……
227
:
無銘の剣
:2010/08/08(日) 14:28:58 ID:gTGggvWw
投下乙です
リンディスはロワのそそのかされてジョーカー、いや無差別マーダーか
村はずれって村には大統領や光らもいるからどうなるやら
話的には悪くないと思います
剣については意見が別れそうですね
普通に破壊の剣支給の方が無難では
228
:
無銘の剣
:2010/08/08(日) 15:01:46 ID:6lmTnF2Y
ジョーカーの全能さを現す表現にはなる
ただ、ff7の強力な武器に連続斬りのマテリア装備状態でも
似たような結果にはなるぞ
229
:
無銘の剣
:2010/08/08(日) 16:00:15 ID:TLGpJgK.
しまった、こっちだと誤爆だ。投下乙です
折角なので感想を、リンディスこれは災難だ
ロワさんの人心の読めない怖さもよし
改めて読み直すと、装備自体は破壊の剣のほうが良いですね。
そのままだとバグ利用なので、マテリアの連続切が
組み込まれているってことにすれば特に問題はないかと
230
:
◆x.6zTnwIjo
:2010/08/09(月) 20:21:57 ID:S4u9DdWk
修正を投下します
231
:
◆x.6zTnwIjo
:2010/08/09(月) 20:23:35 ID:S4u9DdWk
すみません、少しトラブル
少々お待ちを
232
:
悪意の風
◆x.6zTnwIjo
:2010/08/09(月) 20:28:15 ID:S4u9DdWk
草原の真っただ中でリンディスは目覚めた。
「ここは……」
漠然と周囲を見渡し、全てを思い出す。
『只今より、皆さんには――殺し合いをして頂きます』
(そうだ、私は――!)
首に手を当ててみるとそこには冷たい金属の感触。
どうしようもなく囚われている。
リンディスはそのことを実感した。
「く、ロワ……!」
「呼びましたか?」
「!!?」
まさか反応があるとは思わず、リンディスは振り向いた。
そこにはやはり自分をここへと落とした張本人、ロワの姿があった。
「あなたは……! 殺し合いなんて馬鹿な真似を今すぐに止めさせなさい!」
「お断りします」
「なら!」
リンディスは剣を抜こうとして腰元に手をやる。
しかしそこには愛剣の存在はない。
「剣を探しているのですか? それなら、これを差し上げましょう」
ロワはリンディスに一本の剣を差し出した。
その剣はレイピアとサーベルの中間のような細身の剣。束には隼を象った装飾がなされている。
しかしその優美な姿と裏腹に凶悪なまでの妖気を発していた。
「これは破壊の妖気を宿した隼の剣。細身なれど破壊の力によって威力は申し分なし。
あなたの技と速度をさらに活かした戦闘が可能となりましょう」
「なんのつもり?」
当然のことながらリンディスはそれをすぐに受け取ることはせず、警戒の構えをとった。
「これを持ってあなたには積極的に参加者を狩ってもらいたいのです。
この『ゲーム』を管理する私の切り札、いわば【ジョーカー】となって欲しい」
「ふざけないで! 私は誇りある草原のサカの民、そんな真似するはずがないわ!」
「ですが、そうしなければあなたは祖父の下へは帰れない」
「!」
リンディスの声が止まる。
「よいではありませんか。ここは隔離された世界、あなたを知る者は誰もいない
ここでのあなたの行為が帰還した後、誰かに知られる怖れはないのです」
「そんな、事……」
「あなたの祖父の寿命はあと数カ月もないでしょう。その残された時間を共に過ごしたいのでしょう?
それがあなたが示せる愛の形なのでしょう?」
「う、うるさい……あなたに何が解るの」
「解ります。私の主は全能なのですから……」
ロワは再び禍々しい妖気の剣をリンディスへと差し出す。
「受け取りなさい、リンディス。あなたは選ばれたのです」
「何故……私なの……?」
「あなたには素質があると判断したからです、リンディス。あなたなら我が主の使い手として――」
そしてリンディスは剣を……取った。
「それで良いのです」
「そうね、これで私は――」
瞬間、リンディスの姿が消えた。
「あなたを斬れる!」
次にリンディスが姿を現したのはロワの背後だった。
刹那の間にリンディスはロワを瞬断していた。
233
:
悪意の風
◆x.6zTnwIjo
:2010/08/09(月) 20:29:23 ID:S4u9DdWk
しかし……
「!? そんな、手ごたえが――」
「受け取りましたね? その剣を」
ロワはリンディスの方へと振り向き、微笑んだ。
「このゲームはすでに止められません。既に死人も出ている。
解りますか、リンディス? 手遅れなのです。ゲームは止まらない、脱出の方法もない。
あなたの道は二つ、誰も斬らずに死ぬか――」
「黙れ!」
再びロワへと斬りかかるが、剣が届く前にロワの姿は消えていた。
――それとも、戦い抜くか――
その言葉を最後にロワの気配はリンディスの周囲から消失した。
リンディスは敗北感に打ちのめされ、地に膝をつく。
彼女の心は揺れていた。
帰りたい。殺したくない。死にたくない。逃げられない。
「私は……どうすれば……」
『帰ってきなさいリン……全てを終わらせて』
「お爺様?」
リンディスに誰かが囁きかける。
その声は懐かしき祖父、キアラン公ハウゼンの声だった。
『そうだ、草原の民は家族を、同胞を何よりも大切にする。リン、止められないのなら全てを終わらせればいい
そして祖父の元へ帰ってやるがいい』
「ああ、ラス……」
再び聞こえたのはかつて戦場で心を通わせた同じ草原の民、クトラ族の戦士ラスのもの。
だが彼の命はリンディスを守るために散ってしまったはずだった。
リンディスはそれを不思議に思わない。
何かに憑かれたかのようにその言葉は真実、ラスとハウゼンのものだと信じた。
「そうね……止められないなら……手遅れなのなら……せめてもう二度とこんな事が起こらないように……
この破壊の力を持つという剣で……」
『全てを破壊しろ』
「全てを破壊する」
今は亡き戦友ラスと祖父ハウゼン、そしてリンディスの声が重なった。
リンディスは駆ける。
この『ゲーム』を終わらせること。自分が最後の一人になることが正しい事なのだと信じて。
そんなリンディスの背を慈しむように微笑み見送る姿があった。
先ほどこの場から消失した筈の姿――ロワ。
「踊りなさい、リンディス。愛しい者の囁きによって、この『ゲーム』を加速するのです。
ふふふ、ですがそれは悪魔の囁きなのですけど……ねぇ?」
嘲るような口調でありながら、その声には確かに慈しみがこめられていた。
なぜならリンディスもまた主の望みである可能性があるからである。
彼女は主の為に行動する全てのものを愛していた。
そしてロワが見つめる、リンディスの背中。
その腰部にはいつの間にか黒い矢のような形をした尾が伸びている。
それはまるで人を誘惑し悪意へと陥れる悪魔が持つ尾のようであった。
風が悪意を孕み、この地を吹き荒れる。
これはその予兆であった。
【B-4 村はずれの草原/一日目/深夜】
【リンディス@ファイアーエムブレム烈火の剣】
【状態】健康
【装備】破壊隼の剣@ドラゴンクエストⅡ
【道具】支給品一式 あくまのしっぽ 不明アイテム一個
【思考】基本:元の世界へ帰還する
1:全破壊
【備考】・破壊隼の剣は破壊の剣の攻撃力(DQ2最強の威力)と隼の剣の二回攻撃の特性を併せ持つ剣です。
一度装備を外せば通常の隼の剣となり、破壊の剣の攻撃力は失われます。
・あくまのしっぽは呪いによりはずせません。常にリンディスの親しい者の声で悪意へと誘います。
身に付ける代償として常に魔法や、特殊能力に対する抵抗力を失います。
234
:
◆x.6zTnwIjo
:2010/08/09(月) 20:30:26 ID:S4u9DdWk
修正投下終了です
235
:
無銘の剣
:2010/08/09(月) 23:30:58 ID:0dDwTd/E
修正乙です
これならいいですよ
236
:
無銘の剣
:2010/08/10(火) 11:40:00 ID:MdND.py6
修正投下乙です。
呪い無し、装備解除で攻撃力も失われる、これなら納得でございます。
237
:
無銘の剣
:2010/08/10(火) 13:38:06 ID:AUiYRvGQ
一つ突っ込みを
なんでラスが死んでるんですか
ラスは烈火で死なないキャラです
封印時代は怪しいけどハウゼンが生きてるときはラスは死んでないはず
238
:
◆x.6zTnwIjo
:2010/08/10(火) 15:05:11 ID:/CHzTQkg
あ、本当ですね
殺したことなかったから知らなかった
この部分だけ後ほど微修正しますね
239
:
◆x.6zTnwIjo
:2010/08/11(水) 14:30:35 ID:mGnfknes
> 「ああ、ラス……」
>
> 再び聞こえたのはかつて戦場で心を通わせた同じ草原の民、クトラ族の戦士ラスのもの。
> だが彼の命はリンディスを守るために散ってしまったはずだった。
> リンディスはそれを不思議に思わない。
> 何かに憑かれたかのようにその言葉は真実、ラスとハウゼンのものだと信じた。
>
> 「そうね……止められないなら……手遅れなのなら……せめてもう二度とこんな事が起こらないように……
> この破壊の力を持つという剣で……」
>
>
> 『全てを破壊しろ』
> 「全てを破壊する」
>
>
> 今は亡き戦友ラスと祖父ハウゼン、そしてリンディスの声が重なった。
この部分を修正します。
//////////////////
「ああ、ラス……」
再び聞こえたのはかつて戦場で心を通わせた同じ草原の民、クトラ族の戦士ラスのもの。
彼は最後の戦いが終わった後、リンの前から姿を消していた。
ここにはいない筈の戦友と祖父の声。だがリンディスはそれを不思議に思わない。
何かに憑かれたかのようにその言葉は真実、ラスとハウゼンのものだと信じた。
「そうね……止められないなら……手遅れなのなら……せめてもう二度とこんな事が起こらないように……
この破壊の力を持つという剣で……」
『全てを破壊しろ』
「全てを破壊する」
リンディスの親しき者たちと、そして彼女のの声が重なった。
240
:
無銘の剣
:2010/08/11(水) 14:30:52 ID:mGnfknes
何度も失礼しました。
241
:
◆I2ss/4dt7o
:2010/08/11(水) 22:26:08 ID:UUVk7Mso
リンディス、十臓、トゥバン投下します
242
:
新たなる切り札
◆I2ss/4dt7o
:2010/08/11(水) 22:26:54 ID:UUVk7Mso
-Ⅰ-
「ぬ!?」
「どうした、トゥバン」
クラウドが去った後、まだ呑気に寿司を食べていた十臓とトゥバンサノオ。
結局寿司を全て喰われてしまい、少し悲しい顔をしていた十臓が、トゥバンの声に首を上げた。
「この塔……揺れておるぞ」
「地震など、そう珍しい事でもあるまい」
地震が多い国に住んでいた十臓は平然としていたが、トゥバンは違う。
トゥバンとて船に乗って自然の揺れを感じた事はある。
それとこの揺れとは、明らかに質が違っていた。
「この断続的な揺れ……何者かがこの塔に攻撃を加えておるのではないか!?」
「何を馬鹿な……二の目を出した外道衆ならともかく、このデカブツを動かせる者など……」
十臓が塔の縁に立ち、周囲を見渡す。
そこには巨大な怪物も、機械で構築された侍の王もいなかった。
だが、揺れは収まるところを知らない。
もしやと視線を下に向ける十臓にトゥバンも倣う。
常人を遥かに上回る二人の視力は、信じられない物を捉えていた。
「女……か?」
「塔の外壁に向けて剣を振るっているように見えるが……な!?」
揺れが、20倍ほどに膨れ上がる。
これは崩れる―――直感した時には既に遅い。
塔の天辺にいながら落下する感覚を覚えつつも、剣士二人は何故か笑っていた。
243
:
新たなる切り札
◆I2ss/4dt7o
:2010/08/11(水) 22:27:59 ID:UUVk7Mso
−Ⅱ−
「あはははははっ!凄いよこの剣ッッッ!!リスゥ!今帰るからね!?」
哄笑をあげながら崩れ落ちた塔を見つめる女、リンディス。
服がびしょ濡れであるところを見ると、橋を渡らずに川を泳いできたらしい。
彼女はあくまのしっぽから来る悪魔の囁きとの対話を続けたことにより、完全に狂気に陥っていた。
ロワの目論見どおり、凶悪な殺人者【ジョーカー】へと成り果てていた。
巨大な魔獣、ギガンテスをも屠る破壊の剣の圧倒的攻撃力を連撃として放てる破隼の剣。
その恐るべき威力の前に興奮を隠しきれず、リンディスは確信していた。
「全てを破壊すれば、皆の元に帰れるんだ……必ず帰れるんだ!」
だが、その笑いはやがて止まる。
崩れた塔の跡から、二人の剣士が何事も無かったかのように姿をあらわしていた。
これほどの崩壊から生還する相手がいるとは(それも二人もだ)、リンディスも身構える。
「ふん、期待してはいたが。ただ強大な力を得ただけの小娘とはな。笑わせる」
「そういうなジューゾー。力を持つ者に貴賎はない。
わしを満足させてくれるならば鉄屑だろうと小娘だろうと構わんよ」
ふてくされたように瓦礫の山の上に座る十臓を流し目で見ながら、トゥバンサノオは剣を抜く。
リンディスもまた破隼の剣を構え、塔を破壊した力を一人の人間に向けようとする。
だが、その激突に十臓がまったをかけた。
「待てトゥバン!貴様、志葉丈瑠の刀を小娘の血で汚すつもりか?こっちを使うがいい」
「勝手な奴だ……この女、慣れぬ剣で易々倒せる程度の相手ではないぞ」
言いつつ、トゥバンはシンケンマルを十臓に投げ渡し、放られたクレイモアを受け取ろうと手を伸ばす。
しかし、その瞬間を見逃すリンディスではない。
あくまのしっぽが呪いのように繰り返す友の声に従って敵の懐に飛び込み、
先ほど塔を落とした破隼の剣での奥義を放つ。
244
:
新たなる切り札
◆I2ss/4dt7o
:2010/08/11(水) 22:28:42 ID:UUVk7Mso
ロ ン ダ ル キ ア
「草原氷鳴散らす―――極寒の猛禽!」
ロンダルキア。邪神官ハーゴンが支配する異教にして魔境の地。
そも、破隼の剣はその地の中でも最も濃い悪意を孕む場所でしか存在し得ない、奇跡に等しい剣である。
否、剣だけではなく『呪い(デメリット)を無視して本来最高峰の性能を持つ呪具の真力を使う』秘技の産物の総称なのだ。
ロワが当然のようにこの殺し合いの地に地球の記憶が保管しているサーヴァントを呼び出せたのと同じく、
この剣もまたロワが行った奇跡によって召還された、いわばアーティファクト・サーヴァント。
僅かな力量の上昇や装備の変更でも霧のように効能が霧散する、儚くも無敵の装備群。
優れた戦士がそれらを以って放つ奥義は時代と気候を超えて、在りし日の威容(チート)を再現する。
刀身は音速に至り、直撃すれば150mmの厚さの鋼鉄壁をも砕く二連撃。
だが、それをトゥバンは容易くかわした。
「な……!?」
「全てにおいて森守以上の一撃ではあった。だが、借り物の一撃ではわしの心は恐怖に凍りはせん」
クレイモアを受け取り、振り上げたトゥバンが嘯く。
だが、この時点ではリンディスが未だ有利。
懐に飛び込んでいる相手を斬るには、クレイモアは大きすぎる。
なんだかんだと言っても、リンディスの渾身の一撃をかわしたのだ、トゥバンの体勢も乱れている。
トゥバンがあの剣を振り下ろす前に、もう一撃奥義を放つ余裕があると判断し、リンディスが剣を構える。
が、次の瞬間、トゥバンの左手がリンディスの細首を掴んでいた。
245
:
新たなる切り札
◆I2ss/4dt7o
:2010/08/11(水) 22:29:43 ID:UUVk7Mso
「―――」
「ぬん!」
トゥバンが力を込め、声も出せないリンディスの首を圧し折る。
操り師をなくした人形のように力なく崩れ落ちるリンディスを見届け、
トゥバンは背を向けて十臓の方へ歩き始めた。
(出来れば剣で決着を付けたかったが……ああしなければやられていたか。
あの男なら、こんな葛藤を感じることはないのだろうがな。
しかし、わしが剣だけで勝てぬ相手がこれほどおるのならば、世界最強などより
遥かに上の称号を、ここで見つけられるかもしれんのか……)
「トゥバン、油断したな」
「!?」
物思いに耽っていたトゥバンが、背後の気配を読み取る。
振り返るより先に、トゥバンの命脈は絶たれていた。
十臓は、それをつまらなそうに見届けつつも、シンケンマルを抜き放った。
246
:
新たなる切り札
◆I2ss/4dt7o
:2010/08/11(水) 22:30:24 ID:UUVk7Mso
−Ⅲ−
「ぎゃあああああああ!!!」
断末魔をあげてトゥバンが崩れ落ちる。
同時にクレイモアを、破隼の剣が粉々に砕いていた。
「トゥバン……貴様とは短い付き合いだったが、同じく修羅の道に墜ちた身。骨くらいは拾ってやるか」
トゥバンの死体を脇に蹴り飛ばして迫るリンディスに、十臓が外道衆の真の姿をもって向き直る。
リンディスは突如姿を変えた十臓に警戒したのか動きを止め、破隼の剣を持ち直した。
「回復のからくりは……それか」
「気付かないほうが悪いのよ、違う?」
リンディスの足元に転がった瓶。【エリクサー】と記されたその薬品によって、リンディスは不意打ちを敢行したのだ。
十臓が、異形の口で返答する。
「いや、悪いのはお前だ。治療の術を戦場に持ち込むなど、臆病者のやること。
トゥバンの意気に対し、貴様は奇策で返した……お前の罪は重い」
十臓の姿が掻き消える。
リンディスはとっさに破隼の剣を構えたが、本性を現した十臓のスピードはトゥバンの5倍以上。
人知を超えた動きの前に、リンディスの焦りが積もる。
剣戟は次第にリンディスの知覚限界を越え、もはや破隼の剣に頼った防戦一方である。
「く……これほど強いなら、なぜ仲間を助けなかったの……?」
「俺に仲間はいない」
247
:
新たなる切り札
◆I2ss/4dt7o
:2010/08/11(水) 22:31:36 ID:UUVk7Mso
防戦にも限界は来る。
リンディスの一縷の隙を突き、十臓がその脚の腱と、尻に付けられた尻尾を斬り飛ばした。
たまらず倒れこむリンディスの目に、光が戻る。友の声は聞こえなくなり、恐怖心だけが残る。
「やはり、その魔臭濃い尻尾が貴様の心を染めていたようだな……正気に戻ったか、娘」
「わ……わたしは、ロワにそそのかされて……」
「そんな事は聞いていない」
「い、いや!死にたくない!わたしはまだ死ぬわけにはいかないの!」
「……死ぬ覚悟もなく甘言に乗り、人を殺す貴様はもはや剣士とは言えん。介錯はせんぞ、小娘……!」
冷徹な声で断ずる十臓。
愛すべき家族が封じられた刀で多くの命を奪ってきた彼に、慈悲の心など存在しない。
リンディスを正気に戻したのは、出来る限り苦しめて殺すためだった。
まず、右足を切断する。それを横腹に倒れているリンディスの目の前にまで持っていき、八つ裂きにする。
悲鳴をあげるリンディスに一切構わず、十臓はその行為を淡々と行った。
「ばぱゃああああああああっ!!!」
「楽に死ねるとは思うな。これをあと三度繰り返し、達磨になったお前の身体の残りを少しずつ踏み砕く」
「あ……が……」
「頭を潰すまで、死ぬんじゃないぞ……む?」
左腕を切断した直後に、リンディスはショック死したようだった。
舌打ちして、破隼の剣を拾い上げる十臓。なるほど、これは名刀だ。
「あんな小娘に使われて辛かっただろう。これからは俺がお前を裏正のつなぎとして持っていてやろう」
『その通り……彼女はとんだ期待はずれでした』
「!?」
変身を解いた十臓の頭に、聞き覚えのある声が響く。
忘れるはずもない、この声の主は……!
目を凝らせば、謎の女がリンディスの死体の傍に立っていた。
248
:
新たなる切り札
◆I2ss/4dt7o
:2010/08/11(水) 22:32:36 ID:UUVk7Mso
「ロワ……とか言ったか。小娘の妄言は真実だったようだな」
『その通りです、腑破十臓。私はそこのゴミをこのゲームの管理人として選ぶつもりでした。
しかし彼女は弱かった……アイテムで補強しなければ殺し合いも出来ないような者を選択したのが
そもそもの間違いだったのかもしれません。次は、貴方を指名します。その剣を用いて、
思うままにこの殺し合いを加速させてください』
「それは別に構わんが、貴様はこの遊戯の主催者のはず。表に出てきすぎではないのか?」
『……やむを得ないことなのです。私の主に残された時間は少ない。
いつ奴らがここを嗅ぎつけるかも分かりませんし、出来る限り早めに最強の一人を決めねばならないのです』
十臓としては、戦えればそれでいい。
誰の顎で使われようとも、気に入らなくなればその顎を切り飛ばして次にいくまでだ。
「条件がある。このシンケンマルを志葉丈瑠―――本来の持ち主の下へ戻せ」
『……いいでしょう。しかし、彼の居場所は教えられません。貴方が満足して死んでしまっては、
またすぐにジョーカーを選びなおさなくてはならなくなりますから』
「チッ。まあいい。とっとと失せろ、貴様の存在は何故か気に障る」
『頑張ってください。なるべく早く、この剣は志葉丈瑠の元へ届けます』
ロワが、獅子ディスクをはめたシンケンマルを持って姿を消す。
十臓はトゥバンとリンディスの死体を放置し、あたらしい寝床を捜して歩き始めた。
日は昇り始めている。
【リンディス@ファイアーエムブレム烈火の剣 死亡確認】
【トゥバン・サノオ@海皇記 死亡確認】
【残り46人】
249
:
新たなる切り札
◆I2ss/4dt7o
:2010/08/11(水) 22:33:16 ID:UUVk7Mso
【B-2/廃墟(塔跡)/一日目/黎明】
【腑破十蔵@侍戦隊シンケンジャー】
【状態】疲労(小)
【装備】破壊隼の剣@ドラゴンクエストⅡ
【道具】基本支給品×3
【思考】基本:志葉丈瑠との決着をつける。斬り合いを存分に楽しむ。
1:とりあえず、拠点を探す。
【備考】
※シンケンレッドとの決闘直前からの参加。
※ロワの手により、シンケンマル@侍戦隊シンケンジャーと獅子ディスク@侍戦隊シンケンジャーが
志葉丈瑠の元へ送られました。いつ届くかは以後の書き手氏にお任せします。
250
:
◆I2ss/4dt7o
:2010/08/11(水) 22:33:35 ID:UUVk7Mso
投下終了です。
251
:
無銘の剣
:2010/08/11(水) 22:35:20 ID:XvB.8Lvk
おのれ外道衆!
にしても不運だなリンディス
252
:
無銘の剣
:2010/08/11(水) 22:47:08 ID:UUVk7Mso
◆hbgNtxXFuj8U氏、代理投下ありがとうございました
本スレ出来てたんですね
253
:
無銘の剣
:2010/08/11(水) 22:55:14 ID:rHVtvhfQ
投下乙
トゥバン・サノオも逝ったか…
254
:
折れた剣
:折れた剣
折れた剣
255
:
折れた剣
:折れた剣
折れた剣
256
:
無銘の剣
:2010/08/11(水) 23:16:54 ID:cPwiVcKY
発言が露骨すぎるぞ
不満が無い訳ではないが…
257
:
折れた剣
:折れた剣
折れた剣
258
:
折れた剣
:折れた剣
折れた剣
259
:
無銘の剣
:2010/08/11(水) 23:40:29 ID:Nrv8he76
とりあえずOTlTUKE
260
:
◆cBHS.HrQeo
:2010/08/12(木) 20:22:49 ID:wZvFqclY
ブルック、サイト投下します
261
:
人間だもの
◆cBHS.HrQeo
:2010/08/12(木) 20:23:58 ID:wZvFqclY
平賀才人は優しき人間である。
犠牲を厭い、犠牲に愛する人間が宛がわれるならば、己を犠牲する人間だ。
その優しき性根に併せ、神の左手、ガンダールヴの印をその左手に秘めており、困難を乗り越える力を身につけている。
だがそれをひけらかすこともせず、親しき者はそんな彼を身分の差を越えて扱い、慕い、接する。
まさに理想的な人間だろう。
だが欠点があるとすれば、良くも悪くもサイトの行動原理が「愛する人間」にあるということだ。
朝焼けが広がる頃、草原地帯を歩む彼の顔が晴れぬのもそのためである。
彼は迷い続けていた。
ロワから受信したメール。
“本当の願いは優勝すれば叶う。何も得ずに死にたくはないだろう?”という一文。
彼は理由は無いがセシリーには送られていないと確信していた。
だがその根拠の無い確信は自らの全てを見透かされているような気分にさせた。
日本のそれなりに豊かな学生としての日常を捨て、異世界ハルケギニアに飛ばされ、
使い魔として生きることになった自分の背景も事情も。
そして彼は「if」を考え始めた。
もしも平賀サイトが殺し合いに乗ったならばという「if」
彼の脳裏に過ぎったのは、一人目の仲間、セシリー・キャンベルである。
(セシリーはこんなこと絶対おもわねえだろうな……)
あの正義感の塊のような少女。
この殺し合いに乗った実力者グリフィスすら止めようとした彼女である。
今頃、反逆せんと意気込んでいるだろう。
短時間しか話せなかったが信頼するに値する人物。
しかし優勝するということは彼女すら、今差している刀で―――――――――
「……やめだやめだ」
はぁ、と深くため息をついた。
単独行に伴う緊張で短時間ながら疲れているのかもしれないとサイトは思った。
こんなことを想像して、良い事なんて無い。
考え方を変えて携帯をとりだし、ロワからのメールを再度開く。
人の弱みにつけこむ忌々しいメールを見つめ、『返信』を押した。
(こっちからも送れるか……?)
このメールがロワ自身によって送信されたものという確証はない。
しかし、もしも送信されたならば。
それは独自の交渉ツールを得たことになる。
交渉によって、このゲームから脱出する難易度を下げることができれば。
例えば、報酬も神の力を持つ剣を得るという権利も放棄し、ロワが指定する人数、もしくは人を殺すことができれば帰してくれるとか。
駄目で元々と自らを戒めつつ、サイトはそんな淡い期待を抱いた。
だからだろうか、目先の餌に釣られ警戒が疎かになっていたのは。
文字を入力しようとしたその時、サイトの目が大きく見開かれた。
その位置から離れるため、サイトの体が弾かれた様に左に飛んだ。
ガンダールブとして、戦士としての嗅覚がサイトを飛ばせた。
しかし遅い。
彼が反応するよりも数瞬早く、襲撃者は踏み込み、右へと切り払っていた。
サイトが動きに遅れて視界の片隅に剣戟を視認したときには、
切り口から血を撒き散らしながら携帯電話を持っていた右腕が宙を一回転していた。
262
:
人間だもの
◆cBHS.HrQeo
:2010/08/12(木) 20:24:50 ID:wZvFqclY
続けての一閃。
サイトはこれをかわした。というよりも襲撃者が外したというべきか。
根元から片腕を失い、うまくバランスを取ることができず転倒したサイトの動きを計算できなかったのだ。
7万の軍勢を相手どった時も腕を失えど戦い続けた経験を持つサイトだが、それは事前に覚悟していたため。
今回は死角から不意の一撃であり、その差は大きい。
それでも偶然ながら襲撃者の足元に潜り込んだサイトは、無我夢中で右足を前方の脅威の腹部につきだした。
バキ
その音はサイトの予想とは違った。
人間の柔らかい腹部を蹴った感触ではなく、むしろ物を蹴ったような感触。
しかも予想以上に軽く、蹴っただけで吹っ飛んだ。
そうして足元にいたので見えなかった全体像も、蹴られて後退した為見えた。
「なんだよ……こいつは……」
ギーシュやフーケが練成したゴーレムなどを撃破してきたサイトでも驚嘆を禁じえなかった。
その姿はあらゆる人々の終着点である死の象徴、骸骨。
あるいは右腕を奪われたサイトには命を刈り取りにきた死神にも見えた。
周囲への注意が散漫だった後悔と、傷口より零れ落ちる鮮血、切られた後になってからやってくる苦痛、
そして近づいてくる物言わぬ死神は彼に冷静さを取り戻す余裕すら与えなかった。
(剣を……剣をとらねえと!)
サイトが刀の柄を握ると骸骨が用心したように反応を示した。
サイトは震えが止まらなかった。
尻餅をついた体勢では不利ということで、立ち上がるために刀の柄を離そうとしても、吸い付いた様に離れることは無い。
「近づくな……!俺に近づくなぁ!!!!!!」
7万の軍勢を前にしても勇猛果敢に立ち向かった男が、恐れを顔に浮かべる。
7万の軍勢といっても、彼らは自分と違って魔術が使え、ルーンなど無いが確かに同じ人間だった。
だが目の前の者は違う、別次元の存在であった。
サイトに歩み寄る死の恐怖、一度経験したものとは性質が違う。
何も為せず、迷いを抱いたまま、無意味な死を遂げる事への恐怖。
意思に反し和道一文字は抜けなかった。
――――――――スィ〜〜〜〜〜〜
すると襲撃者はサイトの眼前で剣を動かし始めた。
サイトは突然のことで唖然として、前後左右に動くそれを目で追うしかできなかった。
頭がついていってないのだ。
動作を終えると襲撃者はサイトの脇を通り過ぎた。
その足取りは軽い。それがどれほどサイトを刺激したかは言うまでも無かろう。
刀で背後の死神を断て!!
左手のルーンがサイトを鼓舞するように光る。
だがサイトにはそれを実行することができなかった。
死神を見つめていた筈の視界が一転し、気づけば空を見ていたからだ。
―――――――――スゥゥ
立ち止まったブルックが剣を鞘に収め始めた。
「…鼻歌三丁…」
サイトとブルックには根幹で共有する部分がある。
人を殺すことを良しとしないこと。
戻るべき場所を有すること。
そのために殺し合いに乗るか考えたこと。
しかし、大きな違いもまた存在した。
サイトはセシリー・キャンベルを殺すことすらイメージできず
ブルックは鳳凰寺風を実際にその手に掛けた。
そんな二人の出会いは偶然であった。
しかしこの結果は必然であった。
平賀サイトの敗因は迷いを断ち切れぬ「人間」であったから。
ブルックの勝因は迷いを断ち切った「死神」であったから。
迷いのために彼は全てにおいて後手に回ってしまったのだ。
263
:
人間だもの
◆cBHS.HrQeo
:2010/08/12(木) 20:26:07 ID:wZvFqclY
矢筈切り!!!!!!!!!!!!
【平賀才人@ゼロの使い魔 死亡】
◇ ◇ ◇
ブルックがサイトを見かけたのは偶然だった。
違うことに気を取られているのか、つけられている事にすら気づかぬ少年。
初めは誘われているのか、とブルックは用心し疑ったが、彼の注意が右手に集中していると分かれば思い切り良く近づいた。
近づききった頃にようやく反応を示したが、遅い。
命を奪うことはできなかったが、右腕を奪い、終始ペースを保ちながら殺すことができた。
「喋らずに戦ってみましたが、調子が出ないですね……」
ブルックは今回、試みに声を漏らすことなく、戦った。
声を出して戦えばブルック自身の戦意も高まり、敵を恐れさせることができる。
それらの効果を捨て、あえて声を出さず戦うことで、相手に混乱をもたらした。
これは彼の外見をあってのことである。
風との接触で自分の外見の特異性を思い知らされた。
なるほど、死と隣り合わせの場に放り込まれ、これほど好ましくない外見をしている者もおるまい。
クレス・アルベインのようにあらゆるタイプのモンスターと戦いなれている人間でなければ
場合によってはブルックを人間から乖離した脅威として見なすこともありうる。
何よりも忘れてはならないことに奇襲の成功。
死角からの一撃で右腕を切り落としたことで、戦力を大幅に削ぐ事に成功した。
これが無ければ、どうなっていたか分からない。
何も言わぬことによる混乱、彼特有の外見と突然襲撃を受けたことでのパニック。
これらの要因あっての今回の結果なのだ。
「これは……」
ブルックは戦利品の回収を始めた。
最初に手にとったのは腰に差された、結局一度も抜かれることの無かった刀、和道一文字。仲間の愛刀である。
それを複雑な面持ちで回収したブルックは、サイトの支給品一式、謎の鍵、首輪、加えてサイトから衣服を奪った。
首輪も衣服も何かに使えるかもしれない。
デイパックはどうなっているのか、重量を感じさせず入れ放題であることだし、あるに越したことは無いだろう。
「これはなんでしょう……?」
次にサイトの腕が飛んだ際に零れ落ちた携帯電話をブルックは手に取った。
サイトが死ぬ原因ともなった携帯電話だが、ブルックの世界には存在しないため操作方法が良く分からない。
結局、今は保留ということでデイパックに入れた。
「にしても疲れましたね、休憩しますか……」
ブルックは首を回し、音を鳴らした。
短時間で2人。十分すぎるスコアである。
とはいえ、ギリギリであった。
風を殺せたことも、クレスから逃げられたことも、サイトへの奇襲が成功したことも。
彼の身体のみならず精神を疲弊させるには十分だったのだ。
「まだまだ死ぬわけにはいきませんからね……」
これだけ殺したのだから、しばらくは人目につかないところで休もう。
そう考え、去るブルックの頭上には時の経過に従って太陽が昇り、草原を照らす。
その草原の中、全てを奪われた悲しき使い魔の死骸があった。
【F-4/草原/一日目/朝】
【ブルック@ONE PIECE】
【状態】 健康、疲労(大)
【装備】 ドラゴントゥース@テイルズオブファンタジア
【道具】支給品×2 和道一文字 謎の鍵 携帯電話 首輪 平賀才人の衣服
【思考】基本:生き延びて約束を果たす
1: 優勝して元の世界に帰る
2: 休む
[備考]
※参戦時期はスリラーバークで影を取り戻した直後です
264
:
◆cBHS.HrQeo
:2010/08/12(木) 20:30:58 ID:wZvFqclY
投下終わりました。
問題があればお願いします。
265
:
無銘の剣
:2010/08/12(木) 20:39:29 ID:YCGKUudc
投下乙です
このロワでは
深夜:0:00〜3:00
黎明:300〜6:00
朝:6:00〜9:00
となっており、朝ですと放送後となってしまいます
黎明でよいかと思います
266
:
無銘の剣
:2010/08/12(木) 21:31:13 ID:X3Tr.ATo
投下乙です。
267
:
無銘の剣
:2010/08/12(木) 21:46:16 ID:nWRHFBQ6
投下乙です
お疲れさまでした
268
:
◆cBHS.HrQeo
:2010/08/12(木) 22:28:54 ID:wZvFqclY
【F-4/草原/一日目/朝】
から
【F-4/草原/一日目/黎明】
に変更させていただきます。
ご指摘ありがとうございました。
269
:
◆OnZTQOLVaU
:2010/08/19(木) 06:13:52 ID:7Hcg7rX2
2chが規制されているのでこっちで投下します
270
:
狂戦士
◆OnZTQOLVaU
:2010/08/19(木) 06:15:31 ID:7Hcg7rX2
セフィロス、クレアとの戦いを終え、アスカロンを解体していたガッツの前に、新たな人影が現れた。
鞘に入ったままの剣、フランベルジュを肩に担いだ黒髪の青年ユーリ・ローウェルである。
ガッツは少しだけ軽くなったアスカロンを構えた。
「てめえ、あの女の言いなりになるってのか」
「俺は急いでるんだ。さっさと帰りたいんだよ」
「そうか、だったら遠慮はいらないな!」
ユーリはフランベルジュを抜いてガッツへと走り出した。
ガッツはアスカロンを構え、横薙ぎに振るう。
ブゥン!とアスカロンが風を切る。
だがユーリは素早くしゃがみこみ回避していた。
「そんな大振りの攻撃に当たるかよ!」
ユーリがガッツに切りかかる。
ガッツはとっさにアスカロンから左手を放した。
キィン!
甲高い音を鳴らしユーリのフランベルジュは根元あたりをガッツの左手に受け止められた。
鋼鉄の義手と剣が噛み合い火花を散らす。
「くっ、鉄の腕だと!」
勝負あったと思ったユーリはガッツの反射神経と義手に驚いた。
だがガッツもまた、ユーリの意外な力に戦慄していた。
(こいつ、この細い体でなんて力だ!剣先を掴んでたら真っ二つになってたかも知れねぇ)
ガッツとユーリでは体格に大きな差がある。
ユーリも長身だがガッツは更に大きく、さらにドラゴンころしほどの大剣を片手で振るえる筋肉の持ち主でもある。
にも関わらず、ユーリは片腕でガッツとほぼ同レベルの怪力を発揮していた。
271
:
狂戦士
◆OnZTQOLVaU
:2010/08/19(木) 06:16:00 ID:7Hcg7rX2
(どうする、アスカロンを構える時間はねえ……つっ!?)
義手と繋がった生身の部分に痛みが走った。
切られたかと思ったがそうではなく、ユーリの剣とそれを掴んでいる義手が発熱していたのだ。
炎の魔剣フランベルジュが放つ炎はガッツの鋼鉄の義手へと高熱を伝導し、生身の部分にまで達していた。
「隙だらけだぜ、烈破掌!」
ガッツの気が緩んだ瞬間を逃さずユーリのもう片方の手がガッツの腹へ強烈な掌打を放った。
ガッツはアスカロンから完全に手を離し、右手で防御する。
「ぐおっ!」
どでかいハンマーで殴られたような衝撃がガッツを襲う。
一回り以上も大きいガッツの巨体が、ユーリの一撃で吹き飛んだ。
民家の壁へと激突し、さらに壁を突き破って屋内へと叩き込まれるガッツ。
「がはっ……」
ガッツは血反吐を吐いた。
ユーリの攻撃は頑丈な甲冑を砕いてガッツの肉体にダメージを与えていた。
(ちっ、烙印が反応しないから人間かと思ったが使徒並みの馬鹿力だと?)
ガッツは剣を手放したことを後悔し、立ち上がって辺りを見回す。
手頃な武器はないかと視線を窓の外へ向けたとき、ガッツは絶句した。
そこにはガッツが落としたアスカロンを振りかぶるユーリの姿があったのだ。
「冗談じゃねえ!」
今にも振り下ろされそうなアスカロン。その威力はガッツも十分に知っていた。
両手で顔をふさぎ窓へと飛び込むガッツ。
その一瞬後に、民家はまるで爆撃でも受けたかのように一瞬で粉々に破壊された。
ユーリはアスカロンをただ振り下ろすだけでなく、風の力をまとわせて叩きつけたのだ。
ただでさえすさまじい重量のアスカロンに爆風の衝撃波が加わり、その威力はもはや剣技の域を超えていた。
飛んできた瓦礫に全身を打たれ、ガッツは路上へと叩きつけられた。
272
:
狂戦士
◆OnZTQOLVaU
:2010/08/19(木) 06:17:09 ID:7Hcg7rX2
「ぐ……」
「勝負あったな」
ガッツの鼻先にユーリの剣が突きつけられた。
アスカロンではなく、ユーリが元々持っていた剣だ。
「お前にどんな理由があるのか俺は知らない。だがロワの言いなりになって人を殺すっていうなら、その前に俺がお前を殺す」
「……その声、どっかで聞いたな。そうだ、あの金髪の……フレンとかいうやつの名前を呼んだのはてめえか」
あのときガッツはロワを使徒、もしくはゴッド・ハンドの一人かと思い大砲で撃つべく機会を伺っていた。
フレン・シーフォが割って入ったことによりその目論見は実行に移されなかったが、もしそうならなければガッツが死んでいただろう。
だからフレンの存在は多少印象に残っていたのだが、ガッツは一体なぜあの金髪の男がフレンという名前だと知っていたのか。
それは誰かが彼をフレンと呼んだからだ。
その声は、今ガッツの目の前にいる男の声とよく似ていた。思い出してみればその後ロワと会話していたのもこの男だったはずだ。
フレンの名前を出すとユーリの決意に満ちた瞳が一瞬泳いだ。
「で、俺を殺してどうするんだ?結局てめえもあのフレンってやつを生き返らせるために最後の一人を目指すんじゃないのか」
「一緒にするな!俺は……俺はあいつを救うために誰かの命を奪ったりはしない!」
「そりゃご立派なこったな。つまりあのフレンってやつはお前にとってその程度の価値しかなかったってわけだ」
「……!」
不敵に笑い吐き捨てるガッツ。怒りのあまりユーリの顔がさっと赤くなる。
不利な状況をわかっていてガッツはあえてユーリを挑発していた。
ユーリは冷静なように見えて実はフレンの死をまだ乗り越えられていない。
戦いに没頭することで目を逸らしているだけだ。鷹の団が壊滅した後のガッツのように。
自分も経験したことのある痛みだから、ガッツはその辛さを知っていた。
だからこそ、ユーリのその傷を抉るのだ。
「知った風なことを……言うなぁっ!」
ユーリはガッツの鼻先に突きつけていた剣を大きく振りかぶった。
そのまま突いていれば死にはしないまでもガッツに残された片目を潰すことくらいはできただろう。
だがフレンの死を愚弄されたと感じたユーリはそれだけでは済まさないと、一刻も早くガッツを殺そうと全力の攻撃を放とうとした。
冷静さを失えば、いくら熟練の剣士だろうといくらでもガッツの付け入る隙があった。
273
:
狂戦士
◆OnZTQOLVaU
:2010/08/19(木) 06:17:54 ID:7Hcg7rX2
(今だ!)
ガッツは転がってユーリの攻撃を回避し、同時にバッグから奥の手を取り出した。
それは先端にフックのついた機械。
遺跡発掘の専門家トレジャーハンター御用達のワイヤーフックである。
持ち手の引き金を引くと、駆動したモーターが先端のフックを押し出した。
フックは瓦礫の中へと突き刺さる。
振り返るとユーリはガッツに止めを刺すべく全身の力を剣に集中させていた。
「絶風刃!」
「遅え!」
風をまとったユーリの剣がガッツを捉える前に、ガッツはワイヤーフックの引き金をもう一度引いてワイヤーを巻き戻す。
するとモーターが唸りを上げてワイヤーを巻き戻す。
その馬力はすさまじく、ガッツの巨体を引っ張って移動させた。
ガッツはそのまま民家へと侵入しアスカロンを拾い上げる。
「逃がすか!」
ユーリが追ってくる。だがガッツにも逃げる気などなかった。
たとえ使途ではないただの人間が相手だろうとガッツは手加減しない。
一度剣を向けたら後はどちらかが死ぬまで全力で戦う。それが剣士だ。
「オオオオオオっ!」
アスカロンを振り回し遠心力をつける。
そのまま、近寄ってくるユーリを狙い……ガッツはアスカロンから手を放した。
たっぷり遠心力のついたアスカロンは回転しながら飛んでいく。
途中にあった民家をすべて破砕しユーリへと迫るアスカロン。
「烈砕衝破!」
なんとユーリはその攻撃を回避せず、迎撃を選んだ。
地面から発生した衝撃波がアスカロンを下から突き上げる。
軸をずらされ、アスカロンはユーリの頭上へと進路を変えて通り過ぎた。
274
:
狂戦士
◆OnZTQOLVaU
:2010/08/19(木) 06:18:36 ID:7Hcg7rX2
「これでお前は打つ手なしだ!大人しく……」
武器を手放したガッツにもう戦闘力はない。
とどめを刺そうとガッツを睨みつけたユーリの呼吸が止まった。
ガッツはすぐ傍にいたのだ。
すぐ近く……ガッツの鋼鉄の拳が、ユーリの腹へと叩き込まれるほどの距離に。
「が、は……っ!」
ユーリがガッツに使った烈破掌に勝るとも劣らない威力の打撃。
違いはガッツがすさまじい加速を得ていたことだ。
「勝負あったな」
ガッツはユーリが取り落とした剣を拾い、吐血するユーリの背に突き刺した。
ユーリ・ローウェルは心臓を貫かれ、その意識は一瞬で途絶した。
苦しまずすぐに死ねるよう心臓を狙ったのは、ガッツなりの敬意の表しだった。
「名前くらい聞いときゃよかったかな」
ガッツはアスカロンを投げた後、すぐさまワイヤーフックを構えた。
ユーリほどの猛者ならばアスカロンを防ぐかも知れない、その保険として。
アスカロンがユーリを倒せればよし、避けられたらアスカロンへ向けてワイヤーフックを撃つ。
「しかしワイヤーフックか。こいつは使えるな」
アスカロンの総重量は200キロ。ガッツが解体して軽くなったとはいえ、それでも150キロはある。
ガッツは長身だがその肉体は鍛えられ絞られている。
1グラムも余計な脂肪はなく、アスカロンの方が重かった。
だからアスカロンにワイヤーフックを引っ掛けても、移動するのはガッツの方だったのだ。
275
:
狂戦士
◆OnZTQOLVaU
:2010/08/19(木) 06:19:14 ID:7Hcg7rX2
ユーリのバッグを漁ると、ユーリに支給された剣と道具の説明書きがあった。
剣の名前はフランベルジュ、炎の魔力を持った魔剣。
といってもガッツが振るうには少し軽すぎて物足りない剣だった。
予備には使えるかとフランベルジュを腰に挿し、ガッツはユーリの左手に巻かれたブレスレットへと目を向ける。
それはパワーリストというらしく、つけたものの腕力を増幅する力があるらしい。
ガッツと拮抗するほどの力をユーリに与えたものの正体はこれだった。
さっそくユーリからパワーリストを剥ぎ取って右手へと装着し、アスカロンを持ってみるガッツ。
「……こりゃいいな。さすがに重さを感じなくなるってわけじゃねえが、ドラゴンころしを持ってるときと大して変わらねえ感じだ」
ガッツは上機嫌でアスカロンを担ぎ直した。
「さて、さすがに疲れた。とりあえず休むか……狩りはまた夜になってからだ」
ガッツは休める場所を求めて歩き出した。
朝は魔が弱まる時間。ガッツが唯一剣を置ける時間なのである。
【ユーリ・ローウェル@テイルズオブヴェスペリア 死亡】
【F-2 市街地/一日目/黎明】
【ガッツ@ベルセルク】
【状態】疲労(中)、全身にダメージ(小)
【装備】アスカロン@とある魔術の禁書目録、フランべルジュ@テイルズオブファンタジア
【道具】支給品、ワイヤーフック@ワイルドアームズF、パワーリスト@FF7
【思考】基本:優勝してさっさと帰る
1:とりあえず 出会った奴は 斬り伏せる
2:休める場所を探す
【備考】
アスカロンはなんかいろいろやって50kgくらい軽くなったようです
ワイヤーフックは10メートルほど伸びる射出形のフックです。うまく引っ掛けて巻き戻せば高速で移動できます
引っ掛ける対象が固定されておらず、自分より軽いものなら引き寄せることもできます
276
:
無銘の剣
:2010/08/19(木) 06:21:15 ID:7Hcg7rX2
以上で投下終わりです
規制されてない方、本スレへ代理投下お願いします
あと、
>>273
の
>風をまとったユーリの剣がガッツを捉える前に、ガッツはワイヤーフックの引き金をもう一度引いてワイヤーを巻き戻す。
↓
風をまとったユーリの剣がガッツを捉える前に、ガッツはワイヤーフックの引き金をもう一度引いた。
に修正します
277
:
◆LwWiyxpRXQ
:2010/08/25(水) 14:05:24 ID:yPAiA/9s
規制中に付き、こちらに投下します。
278
:
荒ぶる者どもに吹き荒れろ嵐
◆LwWiyxpRXQ
:2010/08/25(水) 14:06:40 ID:yPAiA/9s
強さとは、力がある事ではない。優れている事でもない。
大きい事でも勢いがあることでもない。弱くないとういうことも負けた事を意味しない。
強さとは結局のところ、他の何者との関係の無い、それ自体が独立した概念であり、
それを手にいれようとするならば、
勝利や栄光といった他の全てを犠牲にする事を覚悟しなければならない
霧間誠一(-孤独と信念-)
1
不気味に三日月が輝く夜空の下、そこには無骨な橋があった。
流れゆく水の音をBGMにしながら、無機質な石造りの橋の上に立つ二人の人間が居る。
片や落ち着いた雰囲気を持つ初老の男。その腰には二対の剣が刺さっている。
片や鎧兜に身を包んだ鋭い目付きの男。その瞳はまっすぐと敵に向いていた。
彼らの共通点は眼帯をしていることだった。
二人の距離は決して遠くない、かといって近くもない。
剣を交えるには少しだけ、ほんの少しだけ遠い。そんな距離だった。
恐らくどちらかがあと一歩でも踏み出せば、次の瞬間には戦いの火蓋が切って落とされるだろう。
「ふむ、折角拾った命をわざわざ捨てに来たのかね」
最初に口を開いたのは初老の男だった。
厳しい口調で放たれた、明らかな挑発に対してもう片方の男はHA! と吐き捨てるように笑い、険しい眼差しと共に言葉を返す。
「あんたに負けたままにしとくワケにはいかないだろ、King」
そう堂々と告げる男の名は伊達政宗。
相対するは数時間前に邂逅した強敵、キング・ブラッドレイ。
前回見せ付けられた圧倒的な強さを前にしながら、全く臆する様子はなかった。
リンディスと別れて街を出たブラッドレイと、彼を追って北へ向かっていた正宗は再び出会うこととなった。
そして、それが意味することは即ち、闘争。
「下らぬ自尊心に縛られ死を急ぐか」
その言葉と共にブラッドレイは鞘から剣を抜く。
同時に正宗も黒竜を構え、戦闘態勢に入る。
「ゆくぞ、小僧よ」
「奥州筆頭、伊達正宗――推して参る」
そうして二刀と雷鳴の二度目の激突が幕を開ける。
その果てにあるものは――――――
279
:
荒ぶる者どもに吹き荒れろ嵐
◆LwWiyxpRXQ
:2010/08/25(水) 14:08:59 ID:yPAiA/9s
2
最初の一歩を踏み出したのはどちらだっただろうか。
地面を蹴る音から遅れること0.1秒、キィンと剣と剣のぶつかる甲高い音がそれに重なった。
そして、それから連続して剣がぶつかり合う音が続く。
音と音の間は均等ではなく不規則で、しかし途切れることはない。
正宗が黒竜を振るう。その一撃は鋭く、疾風のようにブラッドレイへと吸い込まれていったが、ブラッドレイはあくまで冷静にそれを受け流す。攻撃がいなされたことを知った正宗は、再度の攻撃に移る――前にブラッドレイが動き、隼の剣を走らせた。
「Shit!」
強引に体勢を変え、正宗は一撃を避ける。ブォン! 耳元を掠めた刃が空を裂き、そんな音を響かせた。回避は成功だ。しかし、ブラッドレイの剣はまだ残っている。もう一つの隼の剣が迫り、正宗はそれを何とか黒竜で受け止める。キィン。高い音。そして、衝撃。
「ふん!」
ただでさえ不完全な体勢だった正宗が一撃を完全に受け止めることなどできる筈もなく、ガードごとそのまま吹っ飛ばされた。追い討ちを掛けるべく動いたブラッドレイだが、防御しきれないと悟った正宗は衝撃の直前、敢えてその身から力を抜き、衝撃に身を任せた。
その結果、ブラッドレイの目測以上に距離が開き、剣は空を切った。
まさに紙一重の回避。そして、攻撃後の一瞬の隙を見逃すことなく、正宗は叫ぶ。
「HA!」
言葉と共に雷撃を打ち込んだ。
稲妻が空間を駆け抜け、爆音と共に衝撃がブラッドレイを襲い、砕かれた橋の破片が舞う。
やったか。正宗は吹き飛んだ身体を素早く立て直しながら、内心でそう呟いた。
「流石の威力だな。雷鳴の錬金術師よ」
だが、煙の中から聞こえた声が、戦闘の終了を否定する。
ぞわり、と正宗の背中を恐怖に酷似した感覚が駆け巡り、考えるよりも速く、本能に従うままに黒竜を構えた。
「だが、私を超えて王を名乗るにはまだ遠いな」
それが正宗の命を救うことになる。放たれた声を認識した時、目の前には既に凶刃が迫っていた。何度聞いたか分からぬ甲高い金属音が響かせながら、何とかそれを防御する。
しかし、ブラッドレイの猛攻は留まることを知らず、次の瞬間には既に二撃目が来ている。
キィンキィンキィンキィンキィンキィン。刃は次々と放たれ、鋭く、強く、そして疾い。
まさに隼のように攻撃は続き、正宗は身を守ることで精一杯だった。
剣の嵐の中、正宗はブラッドレイの顔に違和感を覚えた。眼帯だ。先ほどまで目を覆っていた眼帯がなく、その紅い瞳が晒されている。
(ッ! やっぱ、あの眼。あれがこいつのcrazyな動きを可能にしてやがる)
正宗は思い出す。一度目の戦いの際の驚異的な動きを。
特に眼帯を外した後の、あらゆる物を見切るような動きは圧倒的であり、一度自分は敗北したのだ。
状況は明らかに正宗に不利だった。ブラッドレイの攻撃に対し、正宗は防戦一方であり、次の瞬間には刃が身を切り裂いてもおかしくない。
そして、一度目の戦いで己の身を救ったイナズマはこの場に居ない。
正宗の額に冷たい汗が流れ、しかしそれを拭う余裕などある筈もなく、つぅと流れ落ちた。
「小僧、そのような体たらくで王を志すか」
280
:
荒ぶる者どもに吹き荒れろ嵐
◆LwWiyxpRXQ
:2010/08/25(水) 14:09:46 ID:yPAiA/9s
ブラッドレイは冷たく言い放つ。
対する正宗はニヤリと笑い、ブラッドレイの剣を捌きながら、臆することなく言った。
「独眼竜は伊達じゃねえ、you see?」
そして、動く。守りに徹していた正宗は、その言葉を放つと同時に攻めに転じた。
黒竜を放ち、刃がブラッドレイを捉え、まさにその身を斬ろうとするが――
「自棄になり、勝負を捨てたか」
赤い鮮血が舞った。
ブラッドレイの瞳がその隙を見逃す筈もなく、剣は正宗の左腕を抉っていた。
正宗の全身を痺れるような痛みが駆け巡り、悲痛な声を漏らした。
だが、その顔の笑いが消えてはいない。
「OK, Are You Ready?」
「ぬ……!」
そして、閃光。
3
橋が光に包まれた。
次の瞬間、爆音と共に石造りの橋が崩壊していく。
正宗が雷撃を放ったのはブラッドレイではなかった。仮にブラッドレイを狙っていたとしても易々と避けられていただろう。
狙ったのは橋だ。
それも既に一度雷撃を放った部分、即ち今正宗とブラッドレイが居る場を。
結果、爆音と共に橋は砕けることとなる。
「………………」
足場を失ったブラッドレイは、重力から開放される浮遊感を味わいながら険しい視線で周りを見渡した。
辺りは未だ暗く、加えて舞う土煙、視界は決して良いとは言えず、橋に戻ることは至難の技だろう。
しかし、水に落ちる訳にはいかない。それは致命的な隙になる。
ならば、取るべき道は一つ。
一秒にも満たない思考の末、ブラッドレイは視た。
憤怒のラース。ホムンクルスとして与えられた目を用いて、世界を深く覗く。
あらゆる物が遅く感じられ、崩れ行く橋、宙を舞う石の欠片、空気の流れさえも見切った。ブラッドレイはそこに一つの線を視た。
それからの行動は迅速だった。
足の筋肉を動かし、空中に飛び散っている橋の破片を仮の足場に跳躍する。
一歩、二歩、三歩、四歩。破片から破片へと飛び移り、空を歩いていた。
最強の目が視せた道を辿り、ブラッドレイは再び橋へと戻ろうと――
281
:
荒ぶる者どもに吹き荒れろ嵐
◆LwWiyxpRXQ
:2010/08/25(水) 14:11:01 ID:yPAiA/9s
「HA! やっぱあんたはcrazyだな!」
「ぬ……………!」
声がした。
そこにいたのは黒竜を振りかぶった伊達正宗。
月日に照らされ、奇妙な光を纏った剣を振りかぶっている。
普段のブラッドレイならば難なく避けられただろう。
それどころかそのまま反撃に転じ、それで勝負が決まったかもしれない。
だが、今この状況では無理だ。
今のこの不安定な足場では、動きようがなくその場に留まるしかない。
ブラッドレイの目はあらゆる物を視ることだけで見切ることが出来る。
故にどの道が最も無駄なく橋へ帰るかも分かる。分かってしまう。
だから、今の正宗には分かるのだ。ブラッドレイがどの道を通るかが。
一番無駄のない道に必ずブラッドレイがいる。
大体の位置さえ掴めれば、襲撃は簡単だった。
迫り来る刃を認識したブラッドレイが選んだのは、回避でも防御でもなく反撃。
前も後ろも右も左も行けないのなら、その場に留まるしかない。
故にブラッドレイは正宗を迎え撃つべく、隼の剣を振るう。
時間にすれば1秒にも満たない刹那の空中戦が始まり、剣が交錯する。
勝ったのは―――
282
:
荒ぶる者どもに吹き荒れろ嵐
◆LwWiyxpRXQ
:2010/08/25(水) 14:11:39 ID:yPAiA/9s
正宗は己の身体に衝撃を感じた。
左だ。ブラッドレイの刃が彼の身体を弾き飛ばしていた。
正宗の左腕は一度目の戦いでダメージを受けており、そしてこの戦いの中でも裂傷を負っている。
その負傷が、左腕をほんの僅かに動きを遅らせた。
その隙をブラッドレイは見逃さなかった。
「―――――ッ!」
正宗は声にならない叫びを上げ、自分の攻撃が失敗したことを知る。
とはいえ、その足場の崩れた場からの不安定な太刀筋だったことが幸いして、致命傷には至っていない。
痛みを堪えて、跳躍し何とか橋へと戻る。
途中落ちていくブラッドレイを見つけた。
どうやら橋に戻ることは諦めたらしく、このまま川へ落ちるつもりらしい。
ブラッドレイならばこの高さからのダイブなど容易にやってのけるだろうし、今の正宗の状態では追い討ちを掛けることもないと判断したのだろう。
二度目の戦いは終わり、自分は手負いで相手は無傷。
自分は再び負けたのだ。
「HA!」
自嘲気味に笑い、空を仰いだ。
夜明けが近くなっているのだろう、三日月は今にも落ちようとしていた。
4
バシャ。
そんな音と共にブラッドレイは川から這い出る。
そして、そのまま歩き続けようとした所で――膝を付いた。
その息は荒く体力の消耗を感じさせる。
「やはり年だな……」
そう漏らしながらも動く様子はない。
度重なる連戦、最強の目の酷使はブラッドレイをかなり消耗させていた。
あれ以上長引けば、危なかっただろうとブラッドレイは判断する。
夜明けも近い。しばらくは体力を回復するべきだろう。
膝を付き、しばしの休息を取っていると自分の手に赤い線が浮いていることに気づいた。
それは血だった。どうやら先ほどの退けたと思った空中での一撃は当たっていたらしい。
無論、かすり傷に近い、ブラッドレイからしたら何でもないものであるが、一撃には変わらなかった。
「ふむ………」
今日既に二度戦った青年の顔を思い出しながら、ブラッドレイは一人呟く。
もう一度戦うことになるかもしれない。そう理由もなく思った。
283
:
荒ぶる者どもに吹き荒れろ嵐
◆LwWiyxpRXQ
:2010/08/25(水) 14:12:33 ID:yPAiA/9s
【D-4 川の周辺 一日目 黎明】
【キング・ブラッドレイ@鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST】
【状態】疲労(大) ダメージ(中)
【装備】隼の剣@DQ2、隼の剣@DQ2
【道具】基本支給品×2、ランダムアイテム(個数、内容ともに不明)
【思考】基本:『お父様』の元に帰還するため、勝ち残る。
1:とりあえず人を探す。
2:介入してきた主催者への怒り。
3:休息を取る。
【備考】
※『最強の眼』を使用している間は徐々に疲労が増加。
【D-4 橋 一日目 黎明】
【伊達政宗@戦国BASARA】
【状態】疲労(大)、左脇腹に裂傷(応急手当て済み) 、左腕に裂傷
【装備】黒竜@戦国BASARA
【道具】基本支給品、ランダムアイテム(個数、内容ともに不明)
2:次回放送時に伊達政宗とD-4で合流する。(合流できなければ次の放送時に改めて合流する)
【思考】基本:主催者の首を獲る。誰だろうと挑まれれば受けて立つ。
1:島の北側を探索して殺し合いに乗らない参加者や首輪を解除できる者を探す。
2:次回放送時にイナズマとD-4で合流する。(合流できなければ次の放送時に改めて合流する)
3:ブラッドレイを倒す。
4:イナズマにいずれ借りを返す。
【備考】
※橋の一部が崩れましたが、通行に支障はありません。
284
:
◆LwWiyxpRXQ
:2010/08/25(水) 14:13:34 ID:yPAiA/9s
投下終了です。
規制されてない方、本スレへ代理投下お願いします。
285
:
無銘の剣
:2010/08/25(水) 19:41:43 ID:9xstVeCI
投下乙です
うおおっっ熱いな!!!最初の一行で「もしや?」と思ったが、
ここで『霧間誠一』を引用するのも良いな、凄く良いよ。
286
:
◆WoLFzcfcE.
:2010/08/25(水) 21:14:50 ID:laQZVyBQ
規制されたので残りをこちらに投下します
287
:
絆を紡いで
◆WoLFzcfcE.
:2010/08/25(水) 21:15:55 ID:laQZVyBQ
「やはりニンゲンはそうでなくてはな……それでこそ、打ち破る意義があると言うもの……」
「ん……? どういう意味だ」
独白を続けるブーメランに、バッツは訝しげな声を返す。
落ちていたナイフ――ミズーが投擲した二本目――を拾い、ブーメランは未だ倒れ伏していたニケを担ぎ上げた。
「こいつは預かる。助けたくば俺を追って来い」
「なっ……待て!」
バッツの足元にナイフが突き立った。
たたらを踏んで踏み出すのが遅れる。
体勢を回復したとき、ブーメランは既にこの場を走り去っていた。
人間にはとても追いつけない速度だ。
追おうとしたバッツだが、背後にミズーと光がいるのを思い出したか迷った末に近づいてきた。
「大丈夫か?」
「ええ……助かったわ。あなたは?」
「俺はバッツ、バッツ・クラウザー。話は後だ。とりあえずその娘を介抱しよう」
光は完全に気を失っていた。
出逢ったばかりのバッツに託すのは少々気が引けたが、ミズーの疲労も重く、申し出を断れる状況ではなかった。
「ええ、お願いするわ……」
バッツに光を預け、ミズーはその場に腰を下ろした。
疲労のせいか散漫になった思考で考える。
(あの子を……ニケを、助けなくては)
それをバッツに伝えようとする前に。
湧き上がる睡魔がミズーの意識を呑み込んだ。
288
:
絆を紡いで
◆WoLFzcfcE.
:2010/08/25(水) 21:16:39 ID:laQZVyBQ
【C-4/村/一日目/黎明】
【バッツ・クラウザー@ファイナルファンタジーⅤ】
【状態】健康
【装備】ディフェンダー@ファイナルファンタジータクティクス
【道具】支給品、宝の地図三枚セット
【思考】基本:脱出する。
1: ミズーと光を介抱し、話をする。
2: とりあえず地図を調べる。協力者に渡してもいい。
3: 首輪を外す方法を考える。
【備考】
※宝の地図はそれぞれ場所がバラバラでこの島の特定の場所の地形に謎の印が付いています
場所は何処で正確にはどういう地図かは次の書き手さんに任せます
※この首輪は魔法に属するものだと推測しています
【ミズー・ビアンカ@エンジェルハウリング】
【状態】疲労(中)、気絶
【装備】ダイの剣@ダイの大冒、ガッツの短剣(×8本)@ベルセルク
【道具】支給品
【思考】基本:ロワを倒し、神の剣を破壊する。
1:…………。
2:無駄な戦いは出来るだけ避けたい、が敵対する者は倒す(殺す)。
3:ブーメランを警戒。
4:ニケを助けたい。
【備考】
※参戦時期は原作9巻(ミズー編最終巻)アマワの契約が破棄された後からです。
※自身の制限を全て把握しています。
※念糸能力は制限により発動がとても遅く、本来の威力を発揮する事が難しくなっています。
※精霊の召喚、行使は制限により不可能です。
※ミズーはダイの剣を扱えます。他の人間が扱えるかは不明です。
【獅堂 光@魔法騎士レイアース】
【状態】疲労(大)、右肩に深い刺し傷(止血済み)、出血と治療(火傷)によるダメージ、気絶
【装備】魔法騎士の剣(光専用最終形態)、魔法騎士の鎧(光専用最終形態)
【道具】支給品
【思考】基本:主催に反抗し、殺し合いを止める。
1:…………。
2:海ちゃんと風ちゃんがいるなら合流したい。
[備考]
※参戦時期は光がセフィーロの柱になった以降(最終回後)です
※魔法騎士の剣は魔法騎士の鎧(手甲の宝玉)に収納可能です。(光の意思で自由に出し入れ可能)
※魔法騎士の鎧は光の意思で自由に纏う事が出来ます。
※魔法騎士の剣、魔法騎士の鎧を他の人間が扱えるか不明です。
289
:
絆を紡いで
◆WoLFzcfcE.
:2010/08/25(水) 21:17:52 ID:laQZVyBQ
◆
「あのー……オレはどうしてこんな目に遭っているんでしょうか」
「運が無かったな」
「それだけ!?」
元々ニケのものだった黒刀・夜を片手にブーメランは走る。
もう片方の手に無造作に掴まれているのは、勇者と呼ばれる少年の襟首だった。
「お前、気を失ってなどいなかっただろう」
「ぎくっ!」
「手加減したつもりは無いが……お前もまた、この場に招かれるに相応しい強者ということか」
「いえいえそんな! オレはただのしがない盗賊ですから!」
ブーメランの言うとおり、ニケは腹を殴られたときこそ一瞬意識が飛んだもののすぐに覚醒していた。
服の下に仕込んでおいたスケベ本が役に立った……のだろうか。
しかしあまりにも非常識な力を見せるブーメランにビビッてしまい、何となく起き上がらずにいたのだ。
そしてその罰とでも言うのか、こうして拉致されてしまっている。
馬もかくやというスピードで疾走するブーメランは、村から十分距離が取れたと判断すると足を止め勇者を解放した。
そして腰に差していた剣を外し、ニケの前へと放り出す。
「えーと、これをどうしろと?」
「武器が無くては戦えんだろう」
「えっ、あんたと戦えってこと? ……謹んでお断りします」
「今戦えと言っているわけではない」
村の方角を見つめ、ブーメランは言う。
「お前には餌になってもらう」
「え……餌?」
「奴らはお前を取り戻すために俺を追ってくるだろう。成り行きの遭遇戦ではなく、確固たる意志を持って俺を倒すべく、な。
俺と奴らの間にも、強く確かな絆が結ばれたと言うことだ」
「つまり……今、オレを殺す気は無いの?」
「お前が俺と戦いたいと言うなら話は別だが」
「いえいえいえいえ! そんな滅相も無いです!」
「ニンゲンは戦うために理由が必要な者もいるらしい」
「はあ」
「仲間を守るために限界以上の力を発揮する。それもまたニンゲンだけに許された力……」
290
:
絆を紡いで
◆WoLFzcfcE.
:2010/08/25(水) 21:19:46 ID:laQZVyBQ
独語するブーメランの背後、ニケはこっそりと距離を取っていく。
盗賊の面目躍如というか、実に見事な忍び足だったのだが、
「逃げても構わんぞ。ただしその場合、戦う意志があるとみなして全力で追撃するがな」
「……イエソンナ。ニゲルキナンテアリマセンヨー」
釘を刺され、ニケの足が止まる。
逃げ足には定評のあるニケだが、この化け物と追いかけっこをして逃げ切れる自信は
なかった。
剣を渡してきたことといい、ニケを拉致した行動といい、ブーメランは殺し合いに乗っていると言うより戦いそのものを求めているのだとニケも察する。
下手な行動を取らなければ危害を加える気はないというのもまあ本当なのだろう。
とりあえず今はブーメランに従っておくかと決めて(諦めて)、渡された剣をバッグに入れる。
やはりニケには合わない長剣だったが、夜よりは使いやすい。
そもそもニケに剣の才能は無いのだが……そんなことを言って利用する価値無しと断じられてはたまらないので黙ってもらっておいた。
「行くぞ」
「へ、どこへ? ミズーさんたちを待たないの?」
「最後に乱入してきた男はお前たちの仲間ではないのだろう。少し時間を置けばお互いの手を見せ合い連携することも可能になる」
「でもそれじゃあ、あんたが不利になるんじゃ……」
「俺はそれを望んでいる」
言ったきり口を閉ざし、黙々と歩を進めていくブーメランの背中を追いニケは考える。
ミズーたちがすぐに追いかけてきてくれるならいいが、光の容態ではそれも難しいだろう。
今はどうしたところでブーメランに
ついて行かざるを得ない。
もし誰かに襲われれば危険ではあるのだが、そうした場合おそらくこのブーメランこそが率先してその誰かと戦うことだろう。
見方を変えれば強力な護衛ができたと考えられなくもない。あるいはその隙に逃げ出すこともできるかもしれないし。
襲われるのを期待するのも変な話だったが。
(そうとでも思わなきゃ、やってらんないって……)
勇者は大きく溜息をついた。
勇者と魔族が仲良く旅をするなんて、一体何の悪夢なんだろう。
291
:
絆を紡いで
◆WoLFzcfcE.
:2010/08/25(水) 21:20:39 ID:laQZVyBQ
【D-5/平原/一日目/黎明】
【ブーメラン@ワイルドアームズ アルターコード:F】
【状態】胸に深い裂傷(再生中)、疲労(中)
【装備】夜@ONE PIECE、守りの指輪@FF5
【道具】支給品×2、ランダムアイテム×1
【思考】基本:ニンゲンと戦う。
1:次の相手を探す。
2:いずれバッツたちと再戦する。
3:ニケを害するつもりはないが、立ち向かってくるなら応じる。逃げれば追いかける。
【備考】
※守りの指輪の効果は常時リジェネがかかります。
【ニケ@魔法陣グルグル】
【状態】健康
【装備】フレイムタン@FF5、スケベ本@テイルズオブファンタジア
【道具】支給品
【思考】基本:この殺し合いから脱出したい。
1:ブーメランの隙を見て逃げ出したい……。
2:立ち向かう? ムリムリ!
【備考】
※参戦時期は魔王ギリを封印し、ククリと旅を始めてから1年経った頃。レベルも上がっている。
292
:
無銘の剣
:2010/08/25(水) 21:21:53 ID:laQZVyBQ
以上です。
よろしければ代理投下をお願いします。
293
:
◆k7QIZZkXNs
:2010/11/21(日) 21:16:44 ID:0bWuf0Uw
【G-4/平原/一日目/黎明】
【クラウド・ストライフ@ファイナルファンタジーⅦ】
【状態】健康
【装備】ドラゴンころし@ベルセルク
【道具】基本支給品、風のマント、ランダムアイテム(個数、詳細不明)
【思考】基本:殺し合いに乗る気はない。
1:丈瑠を十蔵の元へ案内する。
2:裏正の捜索。見つけたら十蔵に届ける。
【備考】
※原作終了後からの参加。
【志葉丈瑠@侍戦隊シンケンジャー】
【状態】疲労(中)、精神的に動揺
【装備】絶刀・鉋@刀語、ショドウフォン
【道具】レヴァンティン@魔法少女リリカルなのはシリーズ(待機状態)、
支給品、ランダムアイテム(個数内容ともに不明)、クレアのランダムアイテム×1
【思考】基本:争いを止めるため戦う。
1:外道は倒す。だが殺し合いに乗った人間は……?
2:十蔵と決着を着ける
294
:
無銘の剣
:2010/11/21(日) 21:17:26 ID:0bWuf0Uw
最後で規制されたのでこちらで。
投下終了です。タイトルは「受け継ぐ者へ」。
予約期限を過ぎてしまって申し訳ありませんでした。次はちゃんと間に合うように気をつけます……
295
:
◆k7QIZZkXNs
:2010/12/18(土) 18:38:06 ID:./todxkw
遅れてすみません。
規制されているのでこちらに投下します。
296
:
刃の亀裂
◆k7QIZZkXNs
:2010/12/18(土) 18:38:53 ID:./todxkw
思えば、あの城攻めの時から全ての歯車は狂い始めたのだろう。
何もかもが宝石のように輝いて見えた、あの時代。鷹の団が健在であったとき。
現世の理の外にある、不死の怪物との戦い。
その怪物から放たれた滅びの預言。
そう、預言を聞いたあの瞬間から――ガッツの世界は歪み始めた。
眼前にそびえ立つ古城を見上げ、ガッツは述懐した。
暁の空が白み始め、朝焼けの光が街を照らしている。
不思議とこの数時間、夜だというのにガッツの周りに悪霊は現れなかった。
生贄の烙印を刻まれたガッツに安息の眠りは決して訪れはしない。
現世と幽界の境界が曖昧になる夜の時間は、すなわち彼に絶えず付き纏う悪霊たちとの血で血を洗う闘争の時間だ。
当然、この場でもガッツはそれら魔的な存在の襲撃を警戒し、一睡もせず常に気を張って城下を忍び歩いていたのだが。
(夢魔の一匹も出やがらねえとは……あの女、使徒じゃねえくせにゴッド・ハンド並みの力を持っているってことか?)
ここまで完璧に幽世の存在の侵食を抑えられるというのなら、使徒どもの首領であるゴッド・ハンドと並ぶだけの力を有していると考えてもいいだろう。
そうしてみると、この戦い。
神の剣に相応しい剣士を見定めるというこの戦いは、ある意味ではゴッド・ハンド転生の儀式『触』に近いものと言えるかもしれない。
数多の人間を生贄に捧げたった一人の剣士を選び出す。その剣士は神にも等しい力を得る――触、そのものだ。
ギリッ、と奥歯が鳴る。
ガッツの中で、未だあの日の惨劇の記憶は薄れてはいない。
共に戦場を駆けた朋友たちが、ただ一人愛した女が、抗えない圧倒的な運命に呑み込まれ蹂躙されたあの日。
その中心にいた親友――親友だと思っていた、男のことも。
ユーリと名乗る男と戦った後、ガッツは一人夜の街を彷徨っていた。
目的は主に二つ。身を休める場所の確保、そして索敵である。
夜闘い朝眠るという昼夜逆転の生活を日常としていたガッツに取り、暗闇は長年連れ添った相棒のようなものだ。
黒い甲冑にマントは闇と同化し視認性を薄める。
悪霊にどれほど有効かはわからないが、今となっては黒でなければ落ち着かないというのもあった。
が、結局悪霊は現れず、敵の姿も見出せないままガッツは城下町の中で一番目立つ場所、すなわち城へとやってきた。
何か使えるものがあるかも知れないし、なくても一時身を休めるにはちょうどいい場所でもあったからだ。
297
:
刃の亀裂
◆k7QIZZkXNs
:2010/12/18(土) 18:39:44 ID:./todxkw
城門は開かれている。十分に周囲を警戒しつつ、ガッツは城の内部へと足を踏み入れていく。
背負う大剣アスカロンを振り回す空間があるかと危惧したものの、城内は意外なほどに広々としていた。
外見はともかく中身は、ガッツの記憶にあるあの城とは似ても似つかない。
まあそんなものかと適当に納得しつつ、ガッツは通路の奥へ進み二階へと続く階段に一歩足をかけた。
「ふあ……また、客か」
ガッツの足を止めたのは、気の抜けたような欠伸と気だるげな声。
視線を上に向けて数段階段を上がると、あぐらをかいた線の細い男がいた。
すっきりとした短髪のガッツと対照的に、背中まで伸びた長髪。
男は鞘に収まった刀を腰に差したまま、眠そうにガッツを見やる。
「……悪いな、起こしちまったか?」
「あんた、歩くたびにガチャガチャ鳴ってうるせえんだよ」
甲冑と背中のアスカロンは、ガッツが移動すれば当然のことこすれ合って音を立てる。
音には気をつけていたつもりだが、こればかりはどうしようもない。とはいえ、音が反響する屋内だから気づけるという程度のものだが。
「……ったくよ、さっきのにいちゃんと言いあんたと言い。おれをゆっくり眠らせちゃくれないのかい」
「オレの前に誰か来たのか」
「ああ、来た。名前はなんだったかな。忘れちまった」
「ふうん。斬ったのか?」
「……なんでそんなこと聞くんだ?」
「なんでって、そりゃおまえ」
両腕を突っ張ればそれでいっぱいだという、そんな狭い通路で。
ガッツは隠す素振りもなく腰を落とし、背中の剣に手を伸ばす。
「自分の前に立ったやつは誰だろうとすべて斬る。あんた、そんな目をしてるぜ」
鋭い刃のような殺気と共に、告げる。
「……あんたに言われたくねえな。むしろ、あんたこそ誰かを斬ってきた後じゃないのかい? 血の匂いがするぜ」
その殺気に動じることなく、男――宇練銀閣は平然と言い返す。
ガッツもそれを否定しない。ユーリ・ローウェルの返り血はべったりとガッツの全身に付着している。
何よりも、ガッツも銀閣も、ともに殺気を隠そうとはしていない。
仕合う気がある二人が出会ったのだから、仕合う。ただそれだけのこと。
両者ともに剣を振ることを生業にしてきた生粋の剣士。言葉もなくごく自然に同じ結論に行き着いた。
ガッツはアスカロンを構え、剣尖を上げて高い位置にいる銀閣を狙う。
「怖い怖い。まさに殺る気満々ってやつか」
「立てよ。そのくらいなら待ってやる」
「そいつはどうも……って、なんだそりゃ」
298
:
刃の亀裂
◆k7QIZZkXNs
:2010/12/18(土) 18:40:32 ID:./todxkw
立ち上がった銀閣にも下にいるガッツの剣が視認できたのだろう。彼は驚きの声を漏らした。
それもそのはず、ガッツが握るアスカロンは全長3.5m、総重量200kgというもはや剣と呼ぶことさえおこがましい代物だ。
施された装飾や多様なギミックなど、職人の精緻な仕事ぶりを暴力的な方法でガッツが否定した結果、やや軽くなってはいる。
なってはいるが、依然その主よりも重い質量を有しているこの剣は、戦国時代を生きていた銀閣にとっても初めて目にするほどに規格外だ。
「よくそんなもの持てるな……」
「まあな。おまえの得物はそれか?」
「ああ。ちっと物足りねえが……そうだ、あんた。斬刀『鈍』って刀を知らねえか?」
「知らねえな」
「そうかい」
「もういいだろ。行くぜ」
これ以上語ることもないと、ガッツはアスカロンを突き出した。
そう、ただ突き出しただけ。何の駆け引きもなく、ただ全力で大剣を前へと送り出す。
一階と二階をつなぐ階段通路には、とてもアスカロンを振り回せるだけの空間はない。
ガッツが繰り出せる攻撃は刺突のみ。だがアスカロンの刃は通路の半分を埋め尽くすほどに巨大。
そして刃渡りの上でも銀閣の刀より圧倒的にアスカロンが勝っている。
近づいてこなければ攻撃できない銀閣。遠間から攻撃できるガッツ。
防げるわけがない。ガッツはこのとき、確かにそう思っていた。
しゃりんしゃりんしゃりん! と、高く澄んだ音がした。
何の音だ――とガッツが思考した瞬間には、銀閣を串刺しにするはずのアスカロンは直進の軌跡を曲げ、銀閣の右手の壁へと突き立っていた。
ガッツの手には鈍い痺れ残る。ガッツが意図して外した訳ではなく、別の力が働いた証拠だ。
しかし対峙する銀閣の刀は未だ鞘の中にある。
(こいつ……ッ!)
ガッツはアスカロンに力を込め、壁から引き抜くと同時に後方へ跳んだ。
一息に階段を下り、茫洋とした瞳で見下ろしてくる銀閣と視線を絡ませる。
「いけねえな。こいつは斬刀じゃねえってのに、その剣を斬ってやろうと思っちまった」
「てめえ……!」
ガッツには銀閣が何をしたのか、はっきりと目で認識することはでいなかった。
が、鞘に収まったままの刀で繰り出せる攻撃となれば予想はつく。
(抜き打ち……か。グリフィスもたまに似たような技を使ってたな。だが、こいつの技は……グリフィスとは比べ物にならねえくらい速え!)
思い返せば、銀閣が刀の柄に手を伸ばしたあの瞬間。
あのとき響いた澄んだ音は、あれは鍔鳴りの音だったのではないか。
抜刀と納刀がほぼ同時という、想像を絶した速度。
これこそが因幡は下酷城の城主、宇練銀閣が誇る必殺の剣。
299
:
刃の亀裂
◆k7QIZZkXNs
:2010/12/18(土) 18:41:10 ID:./todxkw
「秘剣、零閃。この刀を手にして以来、おれの零閃をかわした奴はあんたで二人目だぜ」
「……ってことは、俺の前に来た奴もかわしたんだな。自慢げに言うことじゃねえぞ」
「そう言うなよ。そもそもがもう破られた技なんだ……今さら傷がついたところでどうということもねえよ」
まだ眠そうに、銀閣は呟く。その眼はガッツではなく、もっと別の誰か――を、見ているように思えた。
「ああ……そういや、名乗ってなかったな。おれは宇練銀閣ってんだ。おにいちゃんはなんてんだ?」
「……ガッツだ」
「変わった名だ。そして剣は見たこともないほどでかい。さしずめ、虚刀流ならぬ巨刀流……ってところか」
落ち着いて銀閣を観察すれば、その体格はガッツとは比較できないほどに細い。
腕力、体力、耐久力においては勝っているだろうが、瞬発力では一歩譲るかもしれない。
(だが、その一点……速さという点において、こいつの剣は俺のはるか上を行っていやがる)
銀閣の剣の正体は、視認できずともおおよそ掴むことはできた。
鞘を発射台にした神速の抜刀。
ガッツは居合い抜きという技術は知らないが、それでも起こった結果から事実を組み立てるとそういうことになる。
その神速を以て、こちらも高速で迫るアスカロンの剣尖を横から叩き強引に軌道をずらした――言うのは簡単だが、やれと言われてもガッツには不可能だろう。
まず質量からして違いすぎるのだ。多少の衝撃が加わったとてアスカロンの進撃を止めることなど不可能。
ならば銀閣の剣には、質量差を埋めるほどに凄まじい速度があった、と見るべき。
衝撃力とはすなわち重量×速度。どちらかが劣っているなら、もう片方を高めれば拮抗するのは道理だ。
つまりアスカロンの重量に匹敵するほどの速度を、銀閣の剣が叩き出したということになる。
「どうした巨刀流。もう終いか?」
「変な名で呼ぶんじゃねえ。オレの名はガッツだ」
「気にするな。おれは虚刀流に負けたんだ……だからあんた、巨刀流に勝って少しでも溜飲を下げさせろよ」
「知るか」
毒づく。が、ガッツはこの状況をまずいと感じていた。
横に動く空間はない狭い通路。前に進むか後ろに退くかしか選べない。
平地ならともかくここは階段、段差があるため自由に動くことも難しい。
開けた場所ならともかくここではアスカロンは突くことしかできず、そして軌道が読まれやすい刺突は速度に勝る銀閣の零閃にとり格好の餌食だ。
運良く銀閣が動かなかったから剣を引き戻せたものの、距離を詰められればガッツに打つ手は――
(いや、違う。こいつは動かなかったんじゃなく)
「気付いたか。そう、おれの零閃は待ち専門の剣法でな。自分から攻めるってことはできねえんだ」
「……そいつはどうも、ご丁寧なこった」
ガッツの瞳に閃いた思考を看破したか、銀閣が言い添える。
秘剣の正体を明かすということは、ガッツを取るに足らないと侮っているか、それともそれを知ったくらいで敗れはしないという自信があるのか。
どちらにせよ、生半可な手で突破できないという点は認めざるをえない。
腕のみならず、その腕を最大限に活かす戦場の選び方も見事という他ない。
300
:
刃の亀裂
◆k7QIZZkXNs
:2010/12/18(土) 18:41:44 ID:./todxkw
「以前、おれに勝った奴は……上から来たな。まさしく奇策ってやつだ。真上の敵に居合抜きも何もねえからな」
銀閣の言葉に、ガッツも頭上を仰ぎ見る。
階と階を繋ぐだけあり、十分な空間がある。が、もちろんガッツにはそんなところまで跳べる脚力などない。
隠し持っているワイヤーフックを使えばやれないこともない、が――
「……退くか。ふぁ……ま、良い判断じゃねえかな」
するすると後退していくガッツを眺め、銀閣は欠伸交じりにそう漏らした。
追ってきてくれればしめたものだったが、さすがにそこまで間抜けではないかとガッツは舌打ちする。
が、半分は予想通り。
待ちの剣と言うのなら、自分から攻めてくることはないはず。つまり逃げるのは容易ということだ。
勝てない相手から逃げることは別に恥ではない。相手が使徒ならともかく、ただの人間だ。危険を冒してまで討ち取る必要はない。
「なあ、にいちゃん。一つ聞いていいか?」
「……何だ?」
「いや、詰まらんことなんだが……にいちゃんは、何のために闘うのか、って思ってよ」
しかし、撤退しようとするガッツを、銀閣が呼び止めた。
こちらももう構えを解きあぐらをかいている。もちろんガッツが戦意を見せれば立ちどころに対応してくるだろうが。
「どういう意味だ?」
「おれはさ……結構、どうでもいいんだ。守ろうとしてたものも、もうないことだしな」
宇練銀閣は、砂に呑み込まれていく因幡にあって、最後の、そしてただ一人の住人だった。
自分以外は誰もいない下酷城の一室で、ひたすらに斬刀を守り続ける日々。訪ねてくる者は誰だろうと斬り捨てた。
役人だろうと、強盗だろうと、商人だろうと、そして忍者だろうと。誰一人として例外はなく。
ある日唐突に現れた二人組――奇策士と名乗る女と、その刀と名乗る虚刀流の使い手に敗れ、絶息する瞬間まで。
国も、城も、刀も、そして命も。すべてを失って、銀閣は眠りについたはずだった。
なのに、今もこうして刀を握っている。以前と何一つ変わることなく。
「にいちゃんには、何ていうか……そう、守りたいものがあるか? ってことなんだよ。
おれは守るものがあったから戦えた。でも今はもうない。だから……おれは何のために今ここにいるのか、わからねえんだ」
「…………」
「見たところ、あんたは誰に命令された訳でもなくおれを斬ろうとした。そうするだけの理由が、あんたにあるのかって、気になってな」
「……理由なら、ある。守りたいものも、斬るべき敵も」
「へえ。そいつは何だい?」
「おまえに言う気はねえ」
「そうかい」
301
:
刃の亀裂
◆k7QIZZkXNs
:2010/12/18(土) 18:42:17 ID:./todxkw
すげなく切って捨てたガッツに落胆するでもなく、銀閣はひらひらと手を振った。
「引き止めて悪かったな。話は終いだ」
「……じゃあな」
踵を返す。階段から離れ、そのまま数分歩き続ける。
銀閣は、追ってこない。
「……チッ。オレのことなんざ気にも留めてねえってことか」
おそらく銀閣はまた眠りに就いたのだろう。城の中は再び静寂に包まれている。
とはいえ、ガッツもまだ城を出る気はない。ここに来たのは休息のためでもある。
ガッツは目に付いた小部屋を片っ端から捜索し、役に立ちそうな物を探し始めた。
(守りたいもの……決まってる。キャスカだ。他にはねえ、何も……)
だが、そうしていながらもガッツの脳裏には銀閣の言葉が残響している。
そして――銀閣だけではなく、別の言葉も。
――おめえ……逃げてやしねえか。戦に……憎しみによ
ここに来る直前に立ち寄った、馴染みの鍛冶屋ゴドーの言葉を、銀閣の言葉を引き金にして思い出してしまう。
牧師でも何でもない鍛冶屋の言葉は、剣を鍛えることを生業とする故に、剣を振るうことを生業とするガッツの心中を正確に言い当ててもいた。
――おめえの心にゃでっけえ刃毀れが……恐怖って名の亀裂が走っていやがる
恐怖。
あのとき、ガッツからすべてを奪った『蝕』の恐怖は今もなおガッツの心身を蝕み続けている。
かけ替えのない仲間たちを襲った、無慈悲にして無残にして無常たる死の宴。
――そのかけ替えのないものをおっぽり出して、お前は一人で行ったんだ
悪夢を振り払うため、借りを返すため、落とし前をつけさせるため。
ガッツは一人、夜の世界へと飛び込んだ。
誰も頼らず、誰も信用せず、ただ己の剣にすべてを託して。
302
:
刃の亀裂
◆k7QIZZkXNs
:2010/12/18(土) 18:42:59 ID:./todxkw
――かけ替えのないものの傍らにいて、一緒に悲しみに身を浸すことに堪えられずに。お前は一人、自分の憎悪で身を焼くことに逃げ込んだ。違うか?
だが、それは――守りたいものを、本当に守っていたのだろうか。
ガッツと同じか、それ以上の傷を負ったキャスカを放り出して、一人悲しみから目を逸らして戦い続けることは。
本当に、キャスカを守っていたことになるのだろうか。
「肝心なときになると……オレは一人を、戦を選んじまう……か」
宇練銀閣とガッツとは、ある意味では同類なのだろう。
守りたかったものを奪われ、しかしそれを受け止めることなく戦いに逃避する。
違いがあるとすれば、ガッツには『まだ』守りたいものがあり、銀閣には『もう』何もないということか。
残ったものは剣だけ。剣があるから戦い続ける。剣があるから止まることもできない。
「……それでもオレは、今さら止まる訳にはいかねえんだ……!」
キャスカだけは――最後に残った大切な女だけは、失う訳にはいかない。
だから一刻も早くここから脱出せねばならない。
最後の一人になってでも、他の人間を殺し尽くしてでも――たとえ相手が自分と同じ傷を抱えていたとしても。
「……そうだ。迷ってる暇なんてねえ。立ち止まって手に入るものなんざ何もねえんだ」
いや、だからこそ。銀閣はガッツにとって、避けて通ることはできない敵なのだ。
自分自身と瓜二つだからこそ――逃げない。斬って乗り越える、でなければガッツは前に進めない。
背にあるアスカロンを意識する。
愛剣ドラゴン殺しとは違うが、アスカロンもまた竜を狩るべくして作り上げられた剣。
この大剣ならどんな敵が相手だろうと不足はない。
たとえ目にも留らぬ神速の剣が相手だろうと、ガッツの鋼鉄の意志と剣を砕くことはできない、それを証明するために。
「戦場がどうのとか、不利だからどうとか……そんなことは全部、どうでもいい。オレはただ、前に進むだけだ」
敵を斬り、使徒を斬り、最後にはあの女も斬って。ただキャスカの元へと参じるのみ。
無用な危険を冒す必要はない? 逆だ。危険だからこそ、飛び込み突き抜けなければ道は拓けない。
銀閣やユーリ――ガッツはこの名を知らない――には、悪いと思わなくもない。
が、剣士である以上、お互いに剣を抜いた以上はどちらかが散るのも覚悟の上のこと。
ガッツもまた、敗れれば命を落とすことに異を唱えるつもりはない。そもそも負けるつもりもないが。
医務室らしきところで適当に道具を頂戴し、ガッツは部屋を飛び出す。
駆けて、駆けて――たどり着いたのは、銀閣が眠る階段の間。
見上げる。ただし今度は、不退転の決意とともに。
303
:
刃の亀裂
◆k7QIZZkXNs
:2010/12/18(土) 18:43:54 ID:./todxkw
「うるせえな……また来たのかよ、巨刀流」
はたして、銀閣は――さっきと寸分変わらぬ体勢で、そこにいた。
おそらく何時間、何日、何年経とうともそうしているのだろう。そうするしかないのだろう。
剣にすがり、剣を振るうためだけに生きている。あり得たかもしれないもう一人のガッツの姿。
だからこそガッツは、迷いを消し去るために銀閣を斬ると決めていた。
「銀閣、って言ったな。オレもてめえに聞きたいことがある」
「あん……?」
「守りたいものがなくなって……てめえはどう思った。許せねえとか、復讐してやるとか思わなかったのか?」
「……ふぁ」
ガッツの問いに、銀閣を欠伸を一つ。
そして、おもむろに立ち上がり、構えを取る。
宇練一族の秘剣、零閃の構えを。
「いいや……肩の荷が下りた、ってところかな。正直……そう、重荷だったんだ。俺にとっては」
「……そうかい」
銀閣の答えを聞き、ガッツもまたアスカロンを構える。
先ほどと同じく、切っ先を押し出した突きの構え。
一度防がれた技を二度使うその無謀に、しかし銀閣は笑わない。
銀閣を見据えるガッツの瞳は、先の手合わせとは比べ物にならない戦意に燃えているからだ。
「その答えを聞いちゃあ、オレもいよいよ立ち止まる訳にはいかねえ。てめえみたいにはなりたくないから、な」
「ほう……あんたはどこか俺と似てるって、思ってたんだがな。あんたにゃ戦い続ける理由があるってことか……今は、まだ」
「ああ。そのために……悪いが、斬らせてもらうぜ」
「……いいぜ、来な。おれも本気で……相手してやるよ」
しゃりん!
ガッツはまだ攻撃していないにも関わらず、銀閣の剣が走る。
ただし斬ったのはガッツではなく、銀閣自身――左肩から、血が勢いよく噴出した。
銀閣の足元には見る見るうちに血だまりができる。かなりの出血と、一目でわかる。
突然の奇行に戸惑うガッツを尻目に、銀閣は苦痛に顔を歪めながらもにやりと笑みを浮かべた。
「生半可な零閃じゃ、あんたを止められねえだろうからな」
「訳がわからねえな。どういうつもりだ?」
「みんな同じことを聞く。いいぜ、教えてやる……こういう、ことさ」
銀閣が、後ろに置いていたバッグを放る。ガッツにも支給されている道具袋だ。
しゃりんしゃりんしゃりんしゃりんしゃりんしゃりんしゃりんしゃりん。
銀閣はそこに零閃を繰り出した。バッグは一瞬で両断――否、『八つ裂きにされた』。
304
:
刃の亀裂
◆k7QIZZkXNs
:2010/12/18(土) 18:44:54 ID:./todxkw
「な……っ!?」
ガッツはそこに、途方もない速さの斬撃が放たれたのだと直感する。
動体視力に優れたガッツの目にも、まったくの同時にしか映らない無数の斬撃。それが複数――
「八機だ。それが斬刀のない今のおれの、最高の零閃編隊」
ぽた、ぽたと傾けた刀から血の雫が零れ落ちていく。
傷を負えば剣を振るう速度は落ちる。そんな道理を、銀閣は鼻で笑って一蹴して見せた。
傷ついてなお、否、傷ついたからこそ速い。まさに戦場で真価を発揮する阿修羅の剣技。
「鞘内を血で濡らし、血を溜め、じっとりと湿らせることによって鞘走りの速度を上げる。刃と鞘との摩擦係数を格段に落として――零閃は光速へと達する。
まあ、そうは言ってもこの刀じゃ斬刀ほどの速さにはならないだろうがな。ともかくこれが、今のおれの限定奥義――斬刀狩りだ」
永く戦場に身を置くガッツですら、そんな剣は見たことも聞いたこともない。
血に濡れた剣は錆びて使い物にならなくなる、それが常識なのだ。
なのに銀閣は、その常識を逆手にとって自らの利とする――
(こいつは……読み違えたな。並の使徒なんざ比べ物にならねえ、強敵だ)
八回もの超高速の斬撃を同時に同じ個所へと叩き込まれたのなら――剛剣たるアスカロンとてあるいは砕かれかねない。
まさに、魔人。人の身で使徒すらも超えた、極限まで練り上げられた魔人の剣だ。
「逃げるか? いいぜ、それでも。おれは追わねえよ」
ガッツの戦慄を見取ったか、銀閣が嘲るように言う。
逃げる――そう、逃げればその時点でガッツの勝利は確定する。
あれだけの出血、今すぐに止血しなければ失血死は免れない。
仮に血が止まったとしても、大量の血を失った身体はまともに動かないはずだ。
どう考えても、ここで必然性はない。ついでに言えば勝率も低い。
だが――
「冗談だろ。言ったはずだぜ……てめえを斬る、ってな」
ガッツは、退かない。
逃げて、敵の自滅を待って、それで得た勝利など――勝利ではない。
何より、そんな形の勝利はすなわち、ガッツ自身が銀閣の生き様に勝てないと認めるようなものだからだ。
使徒ですらない、ただの人間に負ける?
断じて認める訳にはいかない。真っ向勝負で、勝つ。
長大な刀身の隅々まで、ガッツは気迫を行き渡らせる。
斬り裂くものは、敵と、幻影と、そして――
305
:
刃の亀裂
◆k7QIZZkXNs
:2010/12/18(土) 18:45:47 ID:./todxkw
「さあ……行くぜ! 見せてみろ、てめえの全力ってやつを!」
「ああ、良いぜ……ただしその頃には、あんたは八つ裂きになっているだろうけどな」
ガッツの気迫と、銀閣の気迫とが充満し、階段通路に満ち満ちる。
先手は――やはりガッツ。
「オオオオオオオッ!!」
先ほどと同じく、刺突――ただし今度は刃を横に寝かせた、平突き。
横からの攻撃には、刃を縦にして放つ突きより格段に被弾面積は狭くなる。
「甘いぜ――それで零閃を防げると、思っているのなら」
しゃりんしゃりんしゃりんしゃりんしゃりんしゃりんしゃりんしゃりん!
やはりまったくの同時に、八回もの鍔鳴りの音。
瞬間の間に一つの箇所に斬撃を叩き込まれ、アスカロンは――吹き飛んだ。
「……なに!?」
砕けず、吹き飛んだ――ただ、それだけ。
銀閣は手を抜いてなどいない。いや、斬刀ではない点を差し引けばまさに会心の出来の零閃だった。
なのに、アスカロンは形を留めたまま、横手の壁に深く突き立っている――
「……上か!」
かつての敗戦の記憶から、銀閣はいち早く気配を察知し横手に跳んだ。上階へ続く踊り場のもう半分へ。
そして、ガッツは――突きを放った瞬間、即座にアスカロンから手を離したガッツは。
腰に差していたフランベルジュを抜き、銀閣の頭上へと投擲していた。
一瞬視界を覆った影に気を取られ、銀閣が前方から警戒を解いた一瞬。
ガッツは銀閣が退いたため空いた空間へと深く踏み込み、アスカロンの柄を力の限りに握り締めていた。
「――っ!」
壁に突き立ったアスカロンを引き抜こうとしている――銀閣にはそう見えた。
306
:
刃の亀裂
◆k7QIZZkXNs
:2010/12/18(土) 18:47:00 ID:./todxkw
「く、お、お――!」
だが――違った。
ガッツはアスカロンを引き抜こうとしたのではない。
「おおおお、おおおおおおおああああああっっ!!」
ガッツは、アスカロンを――振り抜こうとしていたのだ。
石造りの壁に突き立ったアスカロンを。
力任せに、がむしゃらに。
速度で勝てないのならば、力で勝る。それがガッツの見出した、唯一つの零閃への勝利手。
直線的な突きでは容易く軌道を変えられても、薙ぎ払う斬撃なら、居合い抜きでは対処は不可能――
「ぜ――零閃編隊――八機!」
ガッツが何をしようとしているか察知した銀閣もまた、勝負を決するべく二度目の零閃を放つ。
だが――しかし。
鞘から抜き放たれた刀は、斬刀ではないのだ。
分子結合を破壊する、斬れぬものはない刀――斬刀『鈍』ではなく、質がいいだけのただの刀だ。
零閃は本来斬刀を用いることを前提に編み出された秘剣。当然、刀にかかる負担は想像を絶する。
銀閣の才覚があったからこそ、ただの刀でも八機編隊を可能としたその代償は、もちろん零ではない。
壁を粉砕しつつ迫るガッツの巨刀と、銀閣の零閃編隊八機が激突――すでにひび割れていた銀閣の刀を粉々に粉砕し、アスカロンが駆け抜けた。
勢い余って階段を軽く五、六段は粉砕し、アスカロンは停止した。
残ったのは右腕を斬り飛ばされた着流しの男と、荒く息をつく隻眼の男。
零閃編隊は、竜殺しの巨刀によって吹き散らされた。
『黒い剣士』対『零閃使い』――ここに決着である。
307
:
刃の亀裂
◆k7QIZZkXNs
:2010/12/18(土) 18:48:04 ID:./todxkw
「無茶苦茶しやがる……力押しで、おれの零閃を……破るとは、な」
「他に……思い、つかなかったんで、な」
アスカロンにもたれかかるようにして、ガッツは銀閣へと言葉を返す。
時間にすれば十秒もない戦いだったが、ガッツの疲労は頂点に達していた。
石壁を斬り裂くなんていう戦法は、ユーリ・ローウェルから奪ったパワーリストがなければ実行に移そうとは思わなかった。
代償は、今にも爆発しそうな筋肉と骨の軋みだ。
アスカロンを手放した理由は二つ。
一つは、剣を無理に固定して、零閃の衝撃を刀身に蓄積させるのを防ぐため。
二つは、銀閣に隙を作らせるべく、フランベルジュを投擲するため。
結果としてうまくいったにせよ、綱渡りだったことは間違いない。
それにしたって、二度目の零閃の速度が落ちていなければ間に合わなかっただろう。
「最初の突きは……鞘の中の血を、消費させるため……か」
「まあ、な。八回もあの技を使えば、そりゃあちょっとは血も減るだろうと思ってな」
速度にして、ほんの僅かな誤差だっただろう。
それでもそのほんの僅かな差が、ガッツと銀閣の生死を分けたことは疑いない。
もし銀閣の刀が斬刀だったなら、誤差程度は関係ないとばかりにアスカロンごとガッツは斬り裂かれていただろう。
しかし斬刀はここにはない。
つまり、それがすべてだった。
「まあ……いいか。これで今度こそ、ゆっくり眠れるって……もんだ」
「ああ、もう起こさねえよ。ゆっくり眠りな」
「頼むぜ……もう、生き返らせないで……くれよ。三度目は……御免だ」
そう、言って。
左右両方の腕から血を流し尽くし、宇練銀閣は死んだ。
「……おい、どういう意味だ」
安らかな顔で。
そう、まさしく眠りについた――そんな顔で。
「おい! 生き返らせるって……おい!」
当然、ガッツの声になど答えはしない。
もう、銀閣は涅槃に旅立ったのだから。
やがて諦め、ガッツは銀閣から手を離し、床に横たえてやった。
その辺の部屋から適当に調達したシーツを、死体にかけてやる。
ガッツなりの剣士への礼儀だ。
だがそうしている間も、ガッツの脳裏に渦巻くのは一つの言葉。
308
:
刃の亀裂
◆k7QIZZkXNs
:2010/12/18(土) 18:48:24 ID:./todxkw
生き返らせる。三度目。
あれをどう解釈するか。
三度目は嫌だというなら、今回は二度目だと考えていいだろう。
そして銀閣は『虚刀流』に敗れたとも言っていた。その敗北が命を落としたという意味なら、ここにいた銀閣は死んだ後に生き返ったということになる。
「死んだ奴を生き返らせる……そんなことが、本当にできるってのか……?」
ガッツ自身ロワという女の言ったことは話半分程度にしか信用していなかったが、実例が目の前にあるとなると話は別だ。
しかし、それはガッツが死者の蘇生を望むということではない。
そんなことができるのなら。
それだけの力があるのなら。
そう――あの忌まわしきゴッド・ハンドにすら、干渉できるのではないか?
剣士を集める。強い剣士を。
この条件に当てはまる剣士を、ガッツは自分以外に二人、知っている。
「グリフィス……キャスカ……!」
あの『触』以前の二人なら、十分に剣士としての資格を備えていたと言える。
ガッツがこうしてこの場に呼び出されたのなら、ガッツと因縁のあるあの二人がいる確率もまた――零ではない。
どうしてこの可能性に思い当らなかったのか。
グリフィスはともかく、キャスカがいなくなったのはこの戦いに呼び出されたからかもしれないというのに!
もちろん可能性の話だ。確証はない。
だがガッツにとっては、その二人が『いるかもしれない』というだけで――
「……休んでる暇なんてねえ!」
走り出す理由には、十分すぎる。
そして、弾丸のようにガッツは城を飛び出した。
頭の片隅に湧いたノイズは、ガッツという男の天秤を激しく揺らしている。
もし誰かに出会っても、今は戦うという選択肢を第一に持ってくることはまずい。そうしている間にキャスカの身に危険が迫るかもしれないからだ。
使徒相手ならともかく、銀閣のように戦わずに済む相手なら見送るのも一つの手。斬るにしても、まずは情報を取得してからだ。
もし、その二人がいたらどうするのか。
答えを出せないままに、ガッツはひたすらに思い人の影を求め、走り続ける。
その姿にはもはや敵をすべて斬り伏せるという鋼鉄の意志はなく。
ガッツという剣に、亀裂が入ったことを意味していた。
309
:
刃の亀裂
◆k7QIZZkXNs
:2010/12/18(土) 18:48:44 ID:./todxkw
【宇練銀閣@刀語 死亡】
【E-3/城/1日目/黎明】
【ガッツ@ベルセルク】
【状態】疲労(大)、全身にダメージ(小)
【装備】アスカロン@とある魔術の禁書目録、フランべルジュ@テイルズオブファンタジア
【道具】支給品、ワイヤーフック@ワイルドアームズF、パワーリスト@FF7、包帯・消毒液などの医療品
【思考】基本:優勝してさっさと帰る
1:グリフィスとキャスカの存在を確かめる
2:使徒、もどき、敵対的な人間以外はまず情報交換を持ちかけてみる
【備考】
アスカロンはなんかいろいろやって50kgくらい軽くなったようです
ワイヤーフックは10メートルほど伸びる射出形のフックです。うまく引っ掛けて巻き戻せば高速で移動できます
引っ掛ける対象が固定されておらず、自分より軽いものなら引き寄せることもできます
※ドルチェットの刀@鋼の錬金術師 は破壊されました。
310
:
無銘の剣
:2010/12/18(土) 18:49:15 ID:./todxkw
投下終了です。
規制されてない方、よければ代理投下をお願いします
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