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仮投下スレ
1
:
名無しさん
:2010/07/15(木) 00:08:08 ID:jM/W7I820
規制中の場合はこちらへどうぞ
2
:
◆egOgs3EjF.
:2010/07/16(金) 23:21:39 ID:jlUM6g5E0
OP案を投下します
3
:
◆egOgs3EjF.
:2010/07/16(金) 23:22:22 ID:jlUM6g5E0
その日、バッツ・クラウザーは草原を駆けていた。
相棒のチョコボ、ボコが大地を蹴るたびにぐんと加速し、全身に心地よい風を感じる。
戦いの日々が終わってしばらく経つ。
しかし長く旅の中で育ってきたバッツにとって平和な村の暮らしはいささか退屈であり。
きっかけなど何もなく、風の如く自由な男バッツは再び旅立つことを決めた。
故郷リックスの村を出発し、まずは二人の仲間がいるはずのタイクーン城へ。
レナとファリスに会うのは久しぶりだ。
いっそのこと二人も誘ってクルルに会いに行こう――そんなことを考えていたら、突然視界が揺れた。
ボコが何かに躓いたのか、なんて思う間も一瞬。
バッツの意識は一瞬で闇に落ちた。
4
:
◆egOgs3EjF.
:2010/07/16(金) 23:23:25 ID:jlUM6g5E0
そして今、目覚めたバッツの前に広がるのはどこまでも続く大草原ではなく、陽光射さぬ暗い大ホールだった。
慌てて目をこするも、眼前の光景は夢のように泡と消えることはない。
「ファファファ。久しぶりだな、バッツ・クラウザー。クリスタルの光に導かれし戦士よ」
「その声は……まさか、エクスデスか!?」
カッ、と闇に光が投げ込まれる。
その中心に立つのはバッツと因縁深き暗黒魔道士、エクスデス。
かつてバッツをはじめとする光の四戦士によって討ち滅ぼされたはずの。
「な、なんでお前が!? お前はあのとき無の力といっしょに消えたはず……!」
「ファファファ! 夢とは砕け散るもの……平和というつかの間の夢は楽しかったか?」
狼狽するバッツとは対照的に、エクスデスは悠然と光の下を進み出でて来る。
その姿はバッツの記憶にある最後の姿――大樹、そして無の獣――では、ない。
魔道士とは思えないほどに逞しい巨体を白い鎧に押し込めた、最初に出会ったころのカタチ。
「たしかに私はお前たちに一度滅ぼされた。だが、私を完全に滅することができるのは無の力のみ!
少々時間はかかってしまったが、私はついに無の力をすべて解明した! そして無の力をもって甦ったのだ!」
最後の戦いのとき、エクスデスは無の力に呑み込まれ外見のみならず記憶や人格までも変質し、無そのものとなっていた。
だが今のエクスデスは違う。その瞳には確固たる意志の輝きがあった。
「だったら、もう一度倒すだけだ!」
「おっと、大人しくしていてもらおうか! 貴様以外にも挨拶せねばならない者は大勢いるのでな」
バッツが腰の剣に手を伸ばす――が、空を切った。
彼は気づいていなかったが、愛剣はすでにエクスデスによって没収されていたのだ。
満足げにその様子を見ていたエクスデスが手を一振りすると、大ホールの照明が点火した。
夜から朝へ、闇から光へ。
急激な視界の変化に目を押さえながら慌てて周りを見回すと、気づかなかったがあちこちに人がいた。
(ここにいるのは俺とエクスデスだけじゃない?)
反射的に仲間の姿を捜し求めたが、レナやファリス、クルルの姿はなかった。
バッツはほっと息をついた。
5
:
◆egOgs3EjF.
:2010/07/16(金) 23:24:01 ID:jlUM6g5E0
「おい、貴様! これは一体どういうことだ!」
そのバッツの代わりにエクスデスに食ってかかったのは、青い髪を逆立てた15歳ほどの少年だった。
エクスデスを睨みつける瞳が示すのはこの異常な状況への戸惑いと怒りだ。
バッツと同じく武器を奪われたのだろうが、彼は怯むことなくエクスデスへと足を進めていく。
「どうやって僕をこんなところに連れてきたかは知らないが、ただで済むと思ってはいないだろうな!?」
「待ってよノヴァ! 迂闊に近づいちゃ危ない!」
「ダイか? ふん、君もいるとはな。ちょうどいい、そこで見ているがいい! この『北の勇者』の実力をな!」
ノヴァと呼ばれた少年は、呼びかけてきた少年――ダイというらしい――に構うことなく、エクスデスの真正面に立った。
「ふむ、自ら名乗り出てきてくれるとは。説明する手間が省けるな。ちょうどいい……」
「何をゴチャゴチャと――くらえ! マヒャド!」
魔法力が高まる。一流の魔道士でもあるバッツの目にはそれが氷属性の、それも相当強力な魔法であると知れた。
ノヴァが掲げた右手から氷塊が生まれ、エクスデスへと殺到する――が。
「な、何ッ!?」
氷の大河はエクスデスへと到達する前に次から次へと溶解していく。
かろうじて目標へと辿り着いた氷の刃はしかし、暗黒魔道士が何気なく振った杖に砕かれた。
「ま、魔法が弱まっている……? くそっ、だったらこいつだ!」
「馬鹿、止せッ!」
なおもノヴァは諦めることなくエクスデスへと挑む気らしい。察したバッツが止めようと走る。
だが遅い――バッツの視線の先、ノヴァの向こうのエクスデスの貌ははっきりと笑みの形を刻んでいた。
「武器を奪おうと関係ない! 闘気を剣にする僕のこの力なら……!」
ノヴァの何も握らない手に輝きが集う。
光は剣の形に伸びていき、神々しささえ漂わせる。
(魔法剣……違う! チャクラを剣にしたのか!)
バッツの知るどのジョブにもその技はない。強いて言うなら体内の気を活性化させるモンクのアビリティ、チャクラが近い。
だが体内に気を巡らせるのと、体外に形を固定するのとでは技の難度は段違いだ。少なくとも今のバッツにそんな芸当は出来ない。
驚愕するバッツをよそに、ノヴァは跳躍した。
「ノーザン・グラン・ブレードッ! くらえェェ――――ッ!」
天より降り注ぐ極十字の闘気剣。
一瞬の閃光のようにノヴァの闘気が膨れ上がり、飛竜すら両断できそうなほどの巨大な刃となる。
両手持ちのフレア剣にすら匹敵するかと思わせるほどの一撃が、エクスデスを強襲した。
6
:
◆egOgs3EjF.
:2010/07/16(金) 23:25:00 ID:jlUM6g5E0
「やったか!?」
思わず拳を握り締める。
歴戦の戦士バッツをして、今の一撃はそれほどに見事なものだった。
だが。
「……遅いな」
届かない。
どうしようもなく、エクスデスには届かない。
パチン、と指を弾く一刹那。
ノヴァの全霊を振り絞った闘気剣がエクスデスを断ち斬るより先に、その軽い音が鳴り響いた。
そしてパンと何かが爆ぜる音が続く。
「ファファファ……!」
ノヴァの必殺技はエクスデスの真横の地面を深く貫いていた。
バッツの見立てどおりその威力は大したものだ。まるで地割れでも起きたかのような破壊痕。
しかし、ではそれほどの腕を持つノヴァがなぜ狙いを外したか――疑問に顔を上げたバッツの目に、すぐさま答えが飛び込んできた。
「ノヴァ――――――――ッ!!」
ダイという少年の悲痛な叫びが響き渡る。
『北の勇者』ノヴァの、幼さを残した顔が、首から上が、きれいになくなっていた。
代わりにそこにあるのは真紅の噴水。
ノヴァの頚部から噴出する血のシャワーが、エクスデスの白い鎧とノヴァ自身とを真っ赤に染める。
その光景は、ノヴァに続いて我もとエクスデスに詰め寄ろうとしていた者たちの足を止めるには十分だった。
「さて……この場で私に逆らうことの愚かしさはわかってもらえたと思う。
諸君、首元を見たまえ。それは特別製の首輪でな……私の意志一つで自由に起爆させられるという訳だ」
バッツだけでなくそこにいたすべての人間が己が首に手をやり絶句する。
冷たい金属質の首輪がそこにある。
まるで、そう、狗の首輪だ。
逆らうことを許さない絶対のくびき。人の尊厳を奪い奴隷へと貶めるもの。
7
:
◆egOgs3EjF.
:2010/07/16(金) 23:25:50 ID:jlUM6g5E0
「今から貴様らには殺し合いをしてもらう。
最後に生き残ったただ一人の勇者には望むものを与えよう……我が無の力は万能であるがゆえに!」
暗黒魔道士は大きく手を広げ、その腕にすべてを包み込むように叫ぶ。
「さあ行くがいい、兵どもよ! 貴様らのあがきを、特等席で見物するとしよう!!」
そして、指を立て切り裂くように振り抜く。
その瞬間、バッツだけでなくすべての人間の足元に次元の渦が発生し、その体を呑み込んでいく。
「これは……デジョンか!」
「安心したまえ、害はない。戦場へと移動してもらうだけだ。ただ殺し合わせるだけではつまらんのでな。
友と離れ、命を狙う敵を前にして貴様らはどうするのか。フフフ……ファファファ――――――!!」
転送魔法が、50数名の人間をそれぞれどこか違う場所へと転移させていく。
すでに腰まで沈んでいたバッツは脱出は不可能と判断し、最後にこれだけはと声の限りに叫んだ。
「エクスデス! 俺が必ずお前を止める!
お前が甦るのなら何度でも、何度でも――絶対にだッ!」
肩が沈み、声が出せなくなっても指を突きつける。
エクスデスの喉元へと必ず喰らいつく――その決意を込めて。
とぷっ、と水面に落ちたようにバッツ・クラウザーの姿が消える。
その叫びを受けたエクスデスは――
「……ならば戦い、最後の一人となるまで勝ち残るがいい、クリスタルの戦士よ。それならば私が相手になろう。
だがな。この場に集った剣者たちは、たとえ貴様といえども容易い相手ではないぞ……」
ファファファ、と哄笑を残し、ホールの灯りが落ちる。
静寂の帳が落ち、絶望の宴の幕が開く――
【ノヴァ@ダイの大冒険 死亡】
【バトルロワイアル 開始】
・転移した先に武器とデイパックがあり、名簿・基本支給品・個別支給品が入っています。
・名簿にルールが記されています。
8
:
◆egOgs3EjF.
:2010/07/16(金) 23:26:54 ID:jlUM6g5E0
以上です
9
:
名無しさん
:2010/07/16(金) 23:37:52 ID:qC8d9n3s0
投下乙です!
ようやくOPが来たか!
10
:
◆I2ss/4dt7o
:2010/07/18(日) 23:35:18 ID:8e7uByJI0
最後にさる
投下終了ーしえんありー
おまけ
ttp://pc.gban.jp/img/21389.jpg
11
:
名無しさん
:2010/07/19(月) 15:13:06 ID:iDmammL.0
地図
ttp://www1.axfc.net/uploader/Sc/link.pl?dr=2165480678&file=Sc_135425.jpg
12
:
名無しさん
:2010/07/19(月) 15:14:18 ID:iDmammL.0
ビューアで見れないか
じゃあこっち
ttp://www.dotup.org/uploda/www.dotup.org1037300.jpg
13
:
ファンタジー剣士ロワOP案
◆Mc3Jr5CTis
:2010/07/19(月) 20:33:47 ID:oakNg4oo0
放送案投下します
14
:
ファンタジー剣士ロワOP案
◆Mc3Jr5CTis
:2010/07/19(月) 20:34:21 ID:oakNg4oo0
耳を叩く濁流の音。
不規則に、伏した身体を揺らす力強い水のうねり。
自己を取り巻く環境の、異変を察して志葉丈瑠は目を覚ます。
開いたばかりの眼にまず映るのは、奇妙に薄暗い朱の光。
夕暮れともまた違う、まるで血のような色素に包まれた世界に、丈瑠は存在していた。
足下にあるのは、太い丸太で組まれた巨大な筏。
その百メートル四方はあろうかという大きな筏を、時代遅れのぼろぼろの帆船が幾本もの太いロープで繋いで曳航していた。
周りでは、丈瑠と同じように目覚めたばかりの人々が辺りを見回している。
その全員の首に、銀色に鈍く輝くリングが装着されているのが妙に目に留まる。
それはもちろん、丈瑠の首にも装着されており……
「ここは、一体……」
見覚えのない周囲の様子に丈瑠が疑問の声を発すると、背後から低い男性の声がそれに応えた。
「ここは、三途の川だ」
聞き覚えのある声に、丈瑠は素早く振り向いて身構える。
「腑破十蔵ッ!!」
そこに居たのは、かつて丈瑠と幾度もの死闘を繰り広げたはぐれ外道、腑破十蔵であった。
構えた瞬間、自らの愛刀シンケンマルを腰に帯びていない事に気付いた丈瑠ではあったが、どうやら十蔵もその身に
寸鉄帯びていない様子。
どういう事かと訝りながらも、今は人の姿を取った男に仔細を訪ねる。
「三途の川だと……? 生きた人間は、この場所に来る事は出来ないと聞いていたが……俺は死んだのか?」
この男との斬り合いの果て、辿りついた所がこの場所だというのか。
志葉家当主の影たるその役目を解かれた今、丈瑠にやるべき事はなくなっていた。
流ノ介を初めとする家臣たちを騙していた事をちゃんと謝れなかった事が心残りではあったが、侍戦隊はようやく
その真の姿を取り戻したのだ。
姫という真の主の元、その務めを果たして欲しいと丈瑠は思う。
「勘違いをするな。俺とお前の決着は、未だ着いてはいない。
……俺も、気付いたらここにいた。仔細は判らん。だが――
そら、説明してくれそうな奴がおいでなすったぞ」
野性味あふれる野武士めいた風貌が、ぐっと上方を見上げる。
釣られて同じ方向を見上げた丈瑠の瞳に、帆船の船尾に姿を現した仇敵の姿が映った。
「血祭ドウコク……ッ!」
呻くように、丈瑠が呟く。圧倒的な力で叩き潰された記憶が蘇る。
血祭ドウコクという名の通り、血を浴びたような真紅の色合いに染まった物々しい意匠の鎧を身に着けた、この荒武者
こそ丈瑠たちシンケンジャーの敵である外道衆の総大将である。
右手には青龍刀の如き幅広の刀、昇竜抜山刀を担ぎあげ、左手には酒をなみなみと注がれた大きな杯を掲げたその男は、
妖しく発光する複眼で眼下の人間たちを睨め付けると、その巨体に似つかわしい大音声を張り上げた。
15
:
ファンタジー剣士ロワOP案
◆Mc3Jr5CTis
:2010/07/19(月) 20:35:02 ID:oakNg4oo0
「お前らああああああっ! よく集まったなあああああああぁ!
てめえらにはこれから、最後の一人になるまで殺し合いをして貰うっっ!!
存分に斬り合い、殺し合えぃっ!!」
一息も継がずに、言い切った。
その傍若無人な言葉の前に、筏の上に居並ぶ人々は言葉もない。
この状況を説明しようだの、その意図を語ろうなどというつもりは欠片も感じさせない態度であった。
それだけ言うと用は済んだと思ったのか、戻ろうとするドウコクを傍らに控えた骨のシタリが引き留める。
「お、お待ちよドウコク。それだけじゃ、判らないだろう?
ルールだとか、ちゃんと色々教えないと……」
「面倒くせぇ。お前が説明しとけ」
説明役をシタリに押し付けると、ドウコクはその場に座り込み、杯を呷りはじめる。
その様子から、もう喋るつもりはなさそうだとシタリは思い、渋々説明役を替わろうと進み出た。
「お待ちください。御大将に、御老体。その役、よろしければこの私が承りましょう」
が、それを一人の怜悧な印象を持つ、銀髪の男が遮った。
丈瑠には見覚えのない、外道衆とも思えぬ人の姿をした優男だったが、その姿を見た瞬間、傍にいた桜色の着物に
緋の袴といった、大正時代のような和装をした少女が声を上げた。
「おまえは……葵叉丹!! あの時、確かに倒したはずのあなたが、なぜ!?」
「フフフ……真宮寺さくらか。貴様らに敗れ、三途の川を漂っていた私を御大将が拾ってくれてな。
こうして再び貴様らと相見える事が出来たというわけだ」
顔見知りらしき少女とやり取りをかわす叉丹と呼ばれた男に、シタリは道を譲る。
確かに、この男ならば適役だろうと考えて。
隙間を通ってこの世とあの世を行き来する、外道衆の能力を更にさまざまな世界へと繋げる事が出来たのは
この男の齎したさまざまな技術や魔術のおかげなのだから。
そう、参加者たちの首に光る、金属製のリングを考案したのも、また――
「それでは、先ほどの御大将の言葉を補足させて貰う。
これから様々な世界から選りすぐった貴様ら剣士五十三名を、三途の川の中州へと解き放つ。
貴様たちは、その島で最後の一人となるまでお互いに殺し合って貰う。
島は、一定時間が過ぎる毎に水位が上がり、移動範囲が狭まっていく。
また、この空間では外道に堕ちれば堕ちるほど、貴様ら剣士たちの力は増していく。
つまりだ。のっけから広い島に散在する参加者たちを、各個撃破する事で貴様らの力は上がっていき
殺し合いを有利に進める事が出来るというわけだ。
時間がたてば、生き残った参加者たちは隠れる事も出来ずに島の中央部へと追いやられていくのだから、
下手に殺し合いに抗おうなどとは思わず、なるべく序盤の内に力をつけておく事を薦めておこう」
「誰が、おまえたちの言う事なんてっ!!」
「待つんだ、さくらくん!」
激昂し、食ってかかろうとする桜色の乙女を、傍らの男が押し止める。
正しい判断だと、丈瑠も思う。
なんの装備もない今、あの驚異的な力を誇る血祭ドウコクに立ち向かうのは不可能だ。
ましてやここは敵の本拠地とも言える三途の川。
なんとか機を窺い、脱出するより他にはない。
16
:
ファンタジー剣士ロワOP案
◆Mc3Jr5CTis
:2010/07/19(月) 20:35:53 ID:oakNg4oo0
だが、そこに乙女の考えに同調する、毅然とした声が響いた。
「そうだ。そのような言葉を聞く必要はない!」
聞く者の心を鼓舞するかのような、力強い少女の声がその場の空気を染め変える。
と同時に、どこからともなく聞こえてくる、重厚な陣太鼓の音が鳴り響いた。
白色の陣幕が筏の上に張り巡り、志葉家の家紋が染め抜かれたのぼりが立つ。
その声を聞き、まさか――と、丈瑠は思う。
まさか、姫までもが、この場に連れて来られたのかと。
声の主を包み隠していた陣幕が引き、その中から現れたのは白を基調とした上質な着物に身を包んだ年端もいかぬ少女の姿。
どこか凛とした気品を漂わせるこの少女こそ、本物の――
「ショドウフォンッ!」
姫の指示で、どこからともなく現れた黒子が、筆型の携帯端末を差し出した。
「一筆奏上! ハァッ!!」
超然とした掛け声とともに、見事な筆致で書かれた火という文字が中空に踊る。
文字が反転し、少女の全身が「火」のモヂカラに包まれると、そこには真紅のスーツを纏った一人の戦士が立っていた。
漢字をモチーフとしたゴーグルの形は火。
身体に張り付き、僅かに盛り上がったスーツの胸元が、この凛々しい戦士が先ほどの少女である事を示していた。
これが変身。
これが天下御免の侍戦隊、シンケンジャー。その頂点に立つ真の志葉家十八代目当主――
「シンケンレッド! 志葉 薫!!」
黒子が用意したシンケンマルを構え、この場に集う全ての者どもに対し、挑むように名乗りを上げた。
その立ち居振る舞いには、一分の隙もない。
まさにシンケンレッドを名乗って何の不足もない、珠玉の才。
だが、長年影武者として一人で戦い続けてきた丈瑠の経験が警鐘を鳴らす。
姫をこのまま一人行かせてはならないと。
「姫ッ!」
諌める意図を持って、呼びかける。
が、シンケンレッドへと転じた少女は、まかせよとでも言うかのように丈瑠に頷くと
「参る」
告げて、炎が燃え移るかのように鮮やかに、ロープの上へと飛び乗った。
奔る。
筏と船を繋ぐ、張り詰めたロープの上を軽業師の如く一瞬で渡り切ると、シンケンマルをその場の葵叉丹へと叩きつける。
腰間の光刀無形を引き抜き、その一撃を間一髪受け止めた叉丹ではあったが、助走混じりの一撃は重く、後方へと体が流れる。
一瞬の間の出来事にシタリは慌てふためき距離を取り、ドウコクは杯を床に叩きつけて立ちあがる。
17
:
ファンタジー剣士ロワOP案
◆Mc3Jr5CTis
:2010/07/19(月) 20:36:44 ID:oakNg4oo0
「やはり、貴様が来たかっ! 志葉の小娘がぁっ!」
主催者たる三者に生じた一瞬の隙を突き、シンケンレッドは刀にインロウマルを装着する。
全ての折神の力を宿した「真」のモヂカラの力により、陣羽織を纏ったスーパーシンケンレッドとドウコクの太刀が激突した。
ただ振るうだけで火のモヂカラを纏い、鮮やかな赤の剣閃を描くスーパーシンケンレッドの華麗な太刀捌き。
だが、それでもドウコクの剛剣には抗しえないのか、軽く剣を合わせるとすぐさま後方へと飛び退いた。
「てめえら手ェ出すんじゃねえぞ! この小娘は俺がやる!」
そこへ追撃を仕掛けようとしたシタリと叉丹の両名を、猛り狂うドウコクの警句が止める。
次いで口から衝撃波を――
出そうとした所へ、逆に炎の乱舞が襲い来る。
炎のモヂカラを斬撃に乗せて放つ、この技を使うためにレッドはドウコクの攻撃を軽くいなし、後ろへと退いて見せたのだ。
真・火炎の舞をまともに受けて仰け反ったドウコクが、次に見たのは宙に紅く輝く「門」構えのモヂカラであった。
「血祭ドウコクッ! 今こそ、貴様を討つ!!」
シンケンマルを右手に。
ショドウフォンを左手に構えたレッドが、渾身の力を込めて書いた、このモジカラこそ志葉家当主のみが使える
ドウコク封印のためのモヂカラの一部。
「――ッ!? いけないよ、ドウコク。あれを完成させては!」
その事に気付いたか、骨のシタリがドウコクに注意を促した。
それに応え、先ほど止め掛けた衝撃波を今度こそ口から放つ。
ドウコクの目前の空気が歪むように振動し、レッドの元へと殺到する。
「烈火大斬刀ッ! ハア!」
シンケンマルを巨大な大斬刀へと変化させ、それを床に深々と突き立てる事で、即席の盾とする。
瞬間、ニトログリセリンでも使ったかのような大爆発が、その場で発生した。
爆風に陣羽織がなびく。
華奢な身体を吹き飛ばされそうになりながらも、烈火大斬刀の影の中で、レッドは先ほど書いた門構えの中に
「悪」の変体仮名を書き込んだ。
「させるかよぉおおおっ!!」
昇竜抜山刀を振り回しながら、ドウコクの巨体が突撃する。
迎え撃つレッドは烈火大斬刀を蹴り上げる事で、刃の突き刺さった床を切り裂きながら、引き抜いた。
地中から擦りあげるように迫り来るレッドの斬撃。
それを受け止めた昇竜抜山刀と烈火大斬刀とが重なりあい、火花が散る様な鍔迫り合いとなる。
両者ともに、引く様子は見えない。
目と鼻の先で睨みあう。
ドウコクは封印のモヂカラの完成を止めねばならないし、レッドはそれをなんとしても完成させねばならない。
何百年も続いてきた侍と外道衆の因縁の戦い。
その頂点同士の決着が、今、ここにつこうとしていた。
「おおおおおおっ!」
「くぅっ!」
力比べでは、やはりドウコクに軍配が上がった。
一瞬でも拮抗出来た事が奇跡だったのか、小柄なレッドが押しつぶされて膝を着く。
が、そのゴーグルは未だ勝利を諦めないかのように上を向き、ドウコクの殺意に抗い続ける。
その意思ごと叩き切ろうとドウコクの刀に更に力が籠り――
18
:
ファンタジー剣士ロワOP案
◆Mc3Jr5CTis
:2010/07/19(月) 20:37:34 ID:oakNg4oo0
瞬間、抵抗を続けていた大斬刀から力が抜け、昇竜抜山刀が刃の上を滑った。
巧妙に変わった力の流れに戸惑うように、ドウコクがたたらを踏み、そこに隙が生まれる。
巨刀から小さなシンケンマルへと戻った刀が、ドウコクの鎧を一合、二合と切りつける。
刀に込められた火の力が、ドウコクを鎧ごと切り裂いて爆発を起こす。
「グッ、し、しまったッ!!」
もはや、剣が届かぬ間合いにまでドウコクを押し戻したレッドが、最後に「炎」の封印のモヂカラを――
「なあーんて、な」
発動させようとした時、ドウコクが緩慢に振った一撃が、その発動を阻んだ。
それは、その場に居並んだ英雄、剣豪たちの眼を持ってしても理解しがたい光景だった。
まるで力なく適当に振られた斬撃が、届くはずもない距離から行われた攻撃が、
スーパーシンケンレッドの首を、一撃のもとに刎ねていたのだった。
「ひ、姫ェェェーーーーーー!!」
誰かの絶叫が耳をつんざく。
それが自分の声なのかどうかすら、丈瑠にはわからなかった。
刎ねられた首から、大量の血が噴水のように飛び出てドウコクの鎧を更に朱に染める。
宿敵の一族、その最後の一人の血を心地よく浴びながら、ドウコクは満足げに哄笑していた。
強大な火のモジカラを宿していた、書きかけの封印のモヂカラが消滅し、同時にシンケンレッドの変身も解ける。
たった十四歳で、その短い生涯を終えることとなってしまった少女の首が、三途の川にぽちゃりと落ちた。
何が起きたのかも、わからぬままに。
ドゥと倒れた少女が握っていたショドウフォンが、床に叩きつけられてバウンドした勢いで船から落ちて丈瑠の
元へと転がってきた。
その血に塗れた遺品を手にして、丈瑠はゆっくりと理解する。
ここに、彼が生涯を懸けて守ろうとしていた志葉家の家系が途絶えた事を。
◇
19
:
ファンタジー剣士ロワOP案
◆Mc3Jr5CTis
:2010/07/19(月) 20:38:06 ID:oakNg4oo0
「……さて、御理解いただけたかな?
貴様たちに、反撃の機会など存在しない事が」
まるで何事もなかったかのように、騒動が起こる直前のままの口調で叉丹が説明を再開する。
「そう、気付いている者もいると思うが、先ほどの御大将の攻撃は、貴様らの首に嵌められたその首輪の機能を使ったのだ。
……御大将、よろしいですか?」
「応」
宿敵を倒し、どっしりと座りこんで祝い酒を呷っていたドウコクが、叉丹の声に答えて僅かに剣を引く。
すると、その場の全員の首に痛みが走り、一筋の血が垂れ落ちる。
理屈は判らないが、ドウコクの剣とこの首輪が繋がっており、逆らえば一刀でこの場全員の首が飛ぶ事を全ての剣士が理解する。
「島から逃げようとすれば、切る。
首輪を外そうとしても、切る。
死にたくなければ、全ての参加者たちを斬り殺し、このゲームに優勝する事だ。
改めて言うまでもないが、生き残れるのは一人だけ。
恋人、友人でも迷わず切れ。外道に堕ちれば、堕ちただけ優勝の可能性は跳ね上がる」
さきほど自分に反抗した二人を昏い眼で見やりながら、叉丹は淡々と説明を続ける。
自らの発言に端を発した凄惨な出来事に青褪めていた少女は、声もない。
傍らの男が少女を勇気づけるように、ぐっと肩を抱き締めた。
「さて、後は……六時間毎に死亡者の通知を放送で行う。
聞き逃さないように注意しろ。
島の水位が上がるのも、だいたいその頃だ。
その時間になったら水辺から離れよ。三途の川に触れたものは、逃亡の意思ありと見做して首を刎ねる。
……説明は、だいたいこんなところだろうか」
全ての説明を終えた叉丹が言葉を切り、その場に静寂が戻る。
「……待て」
鋭い男の声が、その静寂を裂くように響いた。
傍らより響いたその声の主は、はぐれ外道腑破十蔵。
「斬り合う事には何の異存もない。いずれ劣らぬ剣豪揃いだと言うなら、むしろ望む所よ。
だが、剣はどうした?
我が愛刀、裏正はちゃんと返して貰えるんだろうな?」
斬り合いを肯定する声に、彼の周囲の人々は息を呑む。
参加者の中に主催側の言葉を肯定する者が出た事で、本当に殺し合いが始まるという事を実感したのだ。
20
:
ファンタジー剣士ロワOP案
◆Mc3Jr5CTis
:2010/07/19(月) 20:38:52 ID:oakNg4oo0
「おお、これは失礼。
剣はもちろん支給される。だが、それが貴様らの望む剣、扱いやすい剣であるかどうかは我々は感知せぬ。
良い剣が欲しいのであれば、それを持つものから奪い取ればいい。
その意味でも、早々と殺し合いに乗る事は得策だと言えるだろう。
なお、剣と一緒に細々とした物を入れる袋も支給しよう。
鎧や、殺し合いに役立つさまざまな道具、殺し合いに参加する者たちの名前の載った名簿、食糧などが入っているはずだ」
支給品に関する事を説明しおえ、今度こそ説明が終わった事を確認すると叉丹は退く。
変わりにドウコクが立ちあがると、大号令を発した。
「それでは、これより参加者五十二名による殺し合いを始める。
者ども、存分に愉しめ!!」
参加者たちの首筋を、ちくりとした痛みが走ると眠気が襲う。
次にこの眠りから覚めた時、そこは地獄の底であろう事を皆は確信しながら、抗えぬ眠りへと落ちていった……。
【志葉薫@侍戦隊シンケンジャー 死亡】
【残り52名】
【主催者 血祭ドウコク@侍戦隊シンケンジャー】
【主催者 骨のシタリ@侍戦隊シンケンジャー】
【主催者 葵叉丹@サクラ大戦】
【ファンタジー剣士バトルロワイヤル 開幕】
21
:
ファンタジー剣士ロワOP案
◆Mc3Jr5CTis
:2010/07/19(月) 20:39:26 ID:oakNg4oo0
以上です
22
:
名無しさん
:2010/07/19(月) 21:45:25 ID:FikpIDqU0
最後にさるった
代理投下終了です
この三人が主催か。そして見せしめが姫とか丈瑠がカワイソスw
ルール説明が丁寧で心理描写もよく出来てていいなぁ
23
:
OP
◆Wf0eUCE.vg
:2010/07/19(月) 22:02:49 ID:2DAAdEgg0
私もOP投下しまふ
24
:
OP
◆Wf0eUCE.vg
:2010/07/19(月) 22:03:47 ID:2DAAdEgg0
「よくぞ集まった、三千世界に名を轟かす偉大なる剣士たちよ。
私は大神官ハーゴン。君らはこれより、鍛え上げたその腕を振るい、己が最強を存分に証明するがいい」
始まりは謳うような言葉だった。
セフィロスとの決着つけハイウィンドで帰還する途中、何時の間に眠っていたのか。
意識を取り戻し目を覚ました場所は、巨大な祭壇の上だった。
体を動かそうとするが、両腕両足は手錠のような何かで拘束されて思うように身動きが取れない。
それでも、足の拘束は若干の余裕があるようなので、立ち上がるだけならば支障はなさそうだ。
うまく身をよじり立ち上がると、辺りを見渡す。
辺りは暗く、頼りは祭壇の四方に灯された心許なく揺らめく松明の紅い灯のみである。
祭壇の各所には髑髏が配され、まるで悪魔信仰を掲げる黒魔術の儀式台のようにも思える。
その周囲には詳細こそわからないが、幾多の人影が見える。
そして、おどろおどろしい祭壇の中心には先ほどの言葉を放った大神官を名乗る男が両腕を広げている。
「突然の事態で混乱しているものも少なからずいるだろう。
君たちには私の儀式に少し協力してもらいたいだけだ。なに、やることは簡単だ先ほども言った通り、ただ己が最強を証明してもらえばいい。
端的にいえば、他のすべてを皆殺しにし、ただ一人となるまで殺し合うのだ!」
殺し合い不穏な、いや、あるいはこの悪魔じみた祭壇にふさわしい言葉。
ざわめきの走る群衆。
その中から、一人の蒼い青年が叫んだ。
「儀式だと!? ハーゴン! …………貴様っ。貴様はまた、あの破壊神を蘇らせるつもりかっ!?」
叫びをあげた青年の顔を見て、ハーゴンはニヤリと口の端を釣り上げた。
懐かしい友に出会ったように、あるいは憎むべき仇敵に出会ったように。
「破壊神? それは違うなぁロラン。
貴様に破壊される程度の破壊神など我が信仰には足りえぬ。
私が求めるのは破壊神を超えた究極の神だ」
「究極の、神?」
「そう、神だ!
戦いという名の祈りを捧げよ。生という名の渇望を捧げよ。死という名の絶望を捧げよ。そして全ての生と死を捧げよ。
貴様らの全ては神を召喚せしめる贄となるのだ!」
「貴様…………ッ」
ギリッと、青年が砕ける強さで奥歯をかみしめる。
「おっと。いらぬ動きはせぬ方がよいぞ、ロラン。他のものも同じく、抵抗など無意味だ」
ハーゴンは言う。
確かに、武器は奪われている上、拘束されている状況ではどうしようもない。
だが、完全に動きを封じられているわけではない。
戦おうと思えば素手で戦えるものもいるだろう。
だというのに、あのハーゴンの確信にも似た自信はどこから来るのか。
25
:
OP
◆Wf0eUCE.vg
:2010/07/19(月) 22:04:25 ID:2DAAdEgg0
「おい、ジジイ」
冷やかな声がした。
蒼い青年のものではない。
ハーゴンのものでもない。
「お前らの話なんぞ、どうでもいいし、どういうPSIでこの俺を連れてきたかは知らないが。
俺はこれでもいろいろと忙しいんだよ、さっさと帰せよ死にたくなければ」
声の方向にいたのは、奇妙なカブトを被った黒衣の男だった。
まるで、触れるものすべてを切り裂く刃の様な男だ。
その視線を真正面から受けながらも、ハーゴンの余裕は崩れない。
「おや? 話を聞いていなかったのかな?
元の世界に戻りたくば、最後の一人になるまで殺しあえと言ったはずだが。
そして貴様に私を殺すことはできない。絶対にな」
ワザとらしく見下すようなハーゴンの言葉。
男はその言葉を受けてハッ、と吐き捨てるように笑う。
「いいなお前、面白いよ」
パキン。という音。
見れば、男の手の中には有るはずのない刀が握られており、その刃が両腕両足を封じる拘束をり裂いていた。
「――――特に、こんな程度で俺を封じたと、本気で思ってるところが」
そう言った男が尋常ではない速度で動く。
その身のこなしは人のものとは思えない。
「そんなに欲しけりゃお前が味わえよ、絶望ってやつを」
漆黒の男が剣を振りかぶった。
彼我の距離は約二十メートル。
どう見ても剣の間合いではない。
だが、そんなことは知らぬと、男は横薙ぎに刀を振り抜いた。
それと同時に、男の手にした刀身が、ズルリと伸びた。
伸びた刃は、そのまま祭壇に構える男の首を狩らんと、"その軌跡にいた群衆を切り裂きながら"、一直線に伸びる。
その一撃をハーゴンは見た目にそぐわぬ素早い動きで悠々と躱した。
対照的に、突然、斬撃を打ち込まれた、群衆たちは様々だった。
不意打ちじみた一撃に反応した数名は拘束されながらも身を躱した。
だが反応の遅れた数名は、その首を地面へと落とした。
………………。
おい。
死んだぞ。
人が死んだぞ。
物のついでのように、人が、死んだぞ。
その事実を気にかけるでもなく、
周りの被害など気にせずに、黒衣の男は戦いを続け、返す刃で再度ハーゴンを切りつけた。
祭壇ごと切り落とす勢いで振り抜かれたその余波で、また、誰かの悲鳴が聞こえた。
血の臭いがひどい。
阿鼻驚嘆の地獄だった。
26
:
OP
◆Wf0eUCE.vg
:2010/07/19(月) 22:05:25 ID:2DAAdEgg0
「ちっ。かったりィな。さっさと死ねよ、お前」
思うように攻撃が当たらない苛立ちに舌を打つと、男の手の刀が消える。
戦意を無くしたのか、などと思うものはいない。
その表情から、男が諦めたのではない事は誰の目にもわかった。
「――――――毘沙門・叢」
次の瞬間、出現する。
刀。
刀。
刀。
刀。刀。刀。
刀刀刀刀刀。
刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀。
刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀。
刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀。
刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀。
刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀。
宙に浮かぶは、視界を埋め尽くすほどに敷き詰められた、無数の刀。
何のことはない、男が攻め手を単体攻撃から範囲攻撃に切り替えただけの話だ。
この無数の刀をどう使うつもりかは知らないが、こんなもの使われたら被害はこれまでの比ではないことくらいはたやすく理解できる。
そしてこの男はそんなことを歯牙にもかけないということも、この場にいる誰もが嫌というほど理解していた。
そう、祭壇に佇む大神官も含めて。
ここにきて初めてハーゴンがその表情から余裕というものを消した。
「やれやれ。多少の戯れであれば目をつむってやってもよかったのだが。さすがにおいたがすぎるな。
これ以上無駄に駒を減らされては困る。多少惜しいかしかたあるまい」
僅かに口惜しそうなハーゴンの声。
応えるように宙に浮かんだ刀が震え、泣き声のような音を放つ。
「―――――死ね」
指揮者のように男が全てに破壊をもたらす合図を送る
中に浮かぶ刀たちの振動は頂点まで極まり、
次の瞬間”攻撃をした黒衣の男の首が”天高くへと吹き飛んだ。
ボトリと、首が地面に落ちて、中に浮かんだ無数の刀は光の粒子になってかき消える。
僅かに遅れ、残されたからだが力なく横たわる。
「諸君。見ての通りだ、理解できたかな?
何度も言うように抵抗は無意味だ、君たちの命は文字通り私の手中にある。
私の意思一つで君たちの首はこのように、体と泣き分かれることになるのだ」
ハーゴンの自信の理由がこれだった。
奴は本当にこの場にいる人間すべての命を握る仕掛けを打ってあったのだ。
27
:
OP
◆Wf0eUCE.vg
:2010/07/19(月) 22:06:24 ID:2DAAdEgg0
「さて、それよりもルール説明が途中だったか、続きを始めるとしようか、」
「待て! 怪我人がいる、早く治療しないと、このままでは死んでしまう」
勇敢にも赤髪の少女騎士が声を上げた。
声の方を見れば、少女の足共には片腕を失い痛みに喘いでいる男の影があった。
それを見てハーゴンは思案するように顎に手を当てた。
「ふむ。確かに、今の些事で負傷したものも少なからずおるようだな。
確かに、開始前からいらぬハンデを抱えての戦いなど不平等。私もそのまま戦えなど酷なことは言わん」
そう言って慈悲深く大神官が笑う。
ゾッとするような冷たい笑みだった。
「よかろう。特別に負傷者には我が神の名のもとに救済を与えよう」
大神官が救いを下す。
次の瞬間、腕を失い呻きをあげていた男の首が吹き飛んだ。
「…………あ…………っ」
「さあ。これで”負傷者”はいないな?
他にいれば今のうちに言っておけ、同じく救いをくれてやろう」
返り血を浴びた少女は言葉を失い。
その光景に他の誰も何も言わない。
その様子に満足したのか。
ハーゴンは周囲を見渡し転がる死体を数え始めた。
「ひい、ふう、みい……ふむ。これで合わせて十名ほど駒が減ってしまったか。
まあよい。あんな程度の一撃にも反応できぬ雑魚が消えたと思えば、むしろ好都合。
足りぬ人数は新たに見繕うとしよう」
「この儀式では、6時間毎に放送を行う。
そこでは、連絡事項とその間に脱落した死者を発表、そして追加ルールの発表を行う。
そのルールに従わぬものはそいらに転がるモノどもと同じ末路をたどることになるが、心配するな。
そんなに難しいルールを追加するつもりはない、当面はな」
「舞台はここではなくとある小島を用意した。
貴様らを縛る拘束は舞台に着けばすぐにとこう。
そして貴様らの持っていた武器はすでに全て没収済みだが、没収物は後で支給品としてランダムに武器を配布する、その中に、貴様らの愛刀が含まれているだろう。
地図と名簿も全員に支給予定だが、名簿に関しては若干の修正が必要になったのでな、追加分は第一放送で発表することにしよう」
「終了条件は舞台上の生存者が一人になること。優勝者には我が神がどのような願いでも聞き遂げてくれるであろう!」
「さあ、ルールは以上だ。次に目が覚めたときは会場となる舞台の上だろう。
三千世界より集まりし剣士たちよ。その力を存分に振るい己が最強を証明するがいい」
大神官が始まりの言葉を繰り返す。
その声を聞きながら、オレの意識は再び闇に落ちた。
【ジュナス@PSYREN -サイレン- 死亡】
【残り42名 + 10名】
【主催者 ハーゴン@ドラゴンクエストⅡ】
【ファンタジー剣士バトルロワイヤル 開幕】
ジュナスを含め10名ほど死亡しました。
死亡者がだれかは後続にお任せします。
28
:
OP
◆Wf0eUCE.vg
:2010/07/19(月) 22:07:25 ID:2DAAdEgg0
出れそうにないのでジュナスさん無双がしたかった。後悔はしてない。
参戦作品じゃないけど見せしめなのでありですよね、多分。
まあ一案として。
29
:
戦鬼、再び……
◆k7QIZZkXNs
:2010/07/25(日) 19:23:21 ID:N2WA4OUU
最後で規制されましたが投下終了です。
本スレで支援してくださった方、ありがとうございました。
30
:
◆Ub.tayqwkM
:2010/07/26(月) 18:28:14 ID:nHPrCFwY
サルさん規制を喰らったので、続きをこちらで投下します。
31
:
◆Ub.tayqwkM
:2010/07/26(月) 18:28:50 ID:nHPrCFwY
「ふう、もういい。興が削がれた。続きはまた今度だ」
グリフィスはそれだけ言うと、剣を納め、戦闘中断を宣言した。
「一方的だな。何のつもりだ」
「理由など一つ。邪魔が入った。そしてこの場でこれ以上やっても、新たな邪魔者も入りそうなのでは」
グリフィスはそういいながら木にもたれかかっている式に目を向ける。
才人を見つけた際に、反対側にいる式も気配で感じ取っていたのだ。
「なんだ見つかったのか。でも俺は別に横槍も漁夫の利を狙うつもりも無いんだが」
「俺の気持ちの問題だ」
それだけ言い残し、グリフィスは背を向けて森の深遠の影へと姿を消していく。
「……やれやれ、なら俺も行くよ。これ以上ここにいても仕方が無いからな」
式も戦闘が終われば用は無いとばかりに、森の影へと姿を消していく。
そしてその場に残ったのはセシリーと才人の二人のみ。
「……俺も行く。じゃあ」
「待てっ!貴様は残れ。無粋にも決闘の横槍を入れてそれで去れると思うな」
「……殺し合いは駄目だ」
時間が置かれ、少しばかり落ち着いたのか、才人は前よりも落ち着いた声でやはり自分の主張を出す。
だが、セシリーはキョトンとした表情を見せる。
「お前は何を言っているんだ。私はあいつを止めようとしただけだ。殺そうなどとしていない」
「なっ」
才人は絶句する。
自分の空気を読んでいない行動に少しばかり赤面してしまう。
「つまりお前は勘違いで無粋な行動をした間男というわけだ」
「………………」
才人は思わずその場にしゃがむ。
(カッコつけて登場して間男かよ。冒頭でも俺カッコ良いって感じのモノローグ入ってるのに………シリアス路線で
登場したのに………間男って!)
「うわああああぁぁぁぁぁっっっ!!!」
思わず、自分の空回りと恥ずかしさに叫んでしまう。
過去の厨二病的行動を思い出してのた打ち回るような感じで叫ぶ男の姿がそこにはあった。
32
:
◆Ub.tayqwkM
:2010/07/26(月) 18:29:30 ID:nHPrCFwY
【F-5 森林 中部 一日目 深夜】
【セシリー・キャンベル@聖剣の刀鍛冶】
【状態】少しの疲労
【装備】エクスカリバー@Fate/stay night
【道具】支給品一式 ランダムアイテム(個数内容ともに不明)
【思考】基本:殺し合いをとめる。
1:何だこの間男(平賀才人)は?
2:グリフィスと決着をつける。
【平賀才人@ゼロの使い魔】
【状態】健康
【装備】剣(現時点での詳細は不明)
【道具】支給品一式 ランダムアイテム(個数内容ともに不明)
【思考】基本:殺し合いを止める
1:やべえ、恥ずかしい
2:殺し合いを阻止する方法を考える。
[備考]
登場時期は7巻で死亡後、蘇生される直後
ただし、ガンダールヴの刻印は継続されています。
【F-5 森林 北部 一日目 深夜】
【グリフィス@ベルセルク】
【状態】少しの疲労
【装備】ロングソード@ファイナルファンタジーⅤ
【道具】支給品 ランダムアイテム(個数内容ともに不明)
【思考】基本:ガッツを俺の物にする。
1:ガッツを見つける。
2:ガッツと闘い、倒して俺の物にする。
[備考]
登場時期は12巻〜13巻辺りでガッツに敗北〜拷問される直前のどこか。
【F-5 森林 南部 一日目 深夜】
【両儀式@空の境界】
【状態】健康
【装備】無し
【道具】支給品 剣(詳細不明) ランダムアイテム(個数内容ともに不明)
【思考】基本:元の世界へと帰る。
1:とりあえずここから帰る方法を探す。
[備考]
登場時期は殺人考察後編
白純里緒の一件が終わり、退院する幹也を迎えに行く直前。
33
:
◆Ub.tayqwkM
:2010/07/26(月) 18:31:23 ID:nHPrCFwY
投下終了です。
何方か代理投下をしていただければ幸いです。
またwiki収録時のタイトルは
最後の悪あがき/愛情か友情か憎しみか/騎士の誇りを胸に/とある魔眼の殺人鬼
でお願いします。
34
:
◆DzuK1MKXmE
:2010/07/28(水) 20:42:09 ID:/lOfSdHQ
ミズー・ビアンカ、諫山黄泉、獅堂光、本スレ規制中なのでこちらに投下します
35
:
弦月の下で/獅子邂逅
◆DzuK1MKXmE
:2010/07/28(水) 20:43:05 ID:/lOfSdHQ
「神の剣…ね、馬鹿馬鹿しいにも程があるわ」
人の姿をした、しかし人ではない存在──。
『どのような願いも叶えましょう』
ロワと名乗ったあの女の言葉や存在は、かつてミズー・ビアンカが対峙したモノを彷彿させるのに十分だった。
ソレは人々にとっての未知の存在。人々が世界の空白を既知によって埋め尽くしたと思い込んだ時、世界の空白地帯より現れる怪物。
ミズーはその存在、未来精霊アマワと関わった事により引き起こされた数々の事件と戦いの記憶に強く歯噛みをする。
「アマワの呪縛を打ち破り、全ては終わったはずなのに──」
アマワと似て非なるロワの存在を──そして、神の剣の存在を許せなかった。
かつてこの世に存在しない伝説の鋼を、その一振りを求める都市があった。
ミズーの出自であり、自身が全てを焼き滅ぼした錬金都市イムァシア。
究極の絶対殺人武器をただひたすらに追い求めた都市の錬金術師達は、幼少のミズーを冷たい牢獄へと監禁した。
「そして、私は絶対殺人者として、徹底的に今の私にさせられた──」
ロワの語った言葉は、死してなおイムァシアの狂人達を狂喜させるに十分すぎるモノだった。
それ故に、ミズーの怒りはその総てを許せない──。
「ロワ…私はお前を必ず打ち滅ぼすッ」
神の剣の破壊を誓い、その女の名を憎々しく叫びながら唇を噛み締める。
『剣の所有者がそれを望むのならば』
──幻聴。
否、その声は確かに聞こえてきた。
『でも貴方にそれが出来るのかしら』
剣を柄に手を重ねて、問い返してくる声に、ミズーは動じずうなずく。
「然るべき時に、然るべき場所であれば、必ず──」
『ならば最後の一人になりなさい、それがこのゲームのルールよ』
その言葉を最後にロワの声は消えていった。
「──ええ、そのつもりよ」
虚空に浮かぶ弦月を見つめて頭を振る。
(でも、それは最後の手段)
マントの下で剣の柄に手をかけて。
「そう易々とお前の言葉に乗るつもりは無いのよ!」
剣の宝玉が輝き抜刀、背後の闇へと一気に斬り付ける。
──ギイィン。
金属同士がぶつかる鈍い音が響き渡った。
「あはっ、どうして気付いたの?」
「ただの感よ、不意打ちには慣れているの」
一瞬の攻防後、不敵な笑みを浮かべた両者は同時に地面を蹴り、二つの刃が空気を切り裂いた。
36
:
弦月の下で/獅子邂逅
◆DzuK1MKXmE
:2010/07/28(水) 20:46:45 ID:/lOfSdHQ
☆ ★ ☆
うっそうと生い茂る木々の合間を月明かりの煌きが照らす。
そんな薄闇の中を荒い呼吸を吐き出したまま駆ける者が居た。
真紅の外套を纏い、炎のような長髪を振り乱してミズーが疾走する。
対峙する者は、夜の闇より濃い黒髪の美少女、諫山黄泉。
「はあぁッ!!」
裂帛の気合と共に凶刃が閃き、鳴り響く轟音が周囲の大気を震撼させる。
黄泉の放った一振りの斬撃が森の木々を次々と紙屑のように薙ぎ倒していく。
「冗談じゃないわよ! 馬鹿力にしたって限度があるでしょう!」
ミズーは軽く舌打ちをすると、倒壊する木々の残骸をかわして地を転がる。
その先へ回り込んだ黄泉は、地へと水平に刃を突き立て跳躍した。
その姿を認めたミズーは迎撃は間に合わないと即座に判断するや、剣を地に突き立てた。
黄泉が飛び、二人の身体が地上で交差する。その寸前に、ミズーは立ち上がりざま、手にした剣を逆手で構え、飛来する黄泉の刃を剣腹からその先端へと受け流す。
響く鈍い金属音、と同時に黄泉の背に蹴りを放つ。が、しかし無理な体勢で放たれた技は当たらず。受け流されるままに、黄泉はミズーの後方へと飛び退いた。
「あはははっ、なかなかやるじゃない」
戦いの最中で高笑いをあげるその姿は見る者に不快感を与え。
人の世の穢れを祓う為に、超自然災害対策室のエージェントとして悪霊と戦った諫山黄泉は既にいない。
此処に居るのは殺生石の妖力を持ち、人の限界を超えた膂力で刃を振るう、自身もが悪霊となった存在であり。
そして黄泉が振るう剣は、今は失われて久しい、古の技術で造られた一刀であり、それは鋼鉄をも断つファン・ガンマ・ビゼンのニホントウだった。
(あの腕力に、あの剣、なんて厄介な組み合わせなのよ!)
もしミズーが手にした武器が普通の剣であれば、初手の一撃で剣ごと両断されていたかもしれない。
不意に走った悪寒に背筋が震える。だが、ミズーがその手に握る武器も、とある名工が若き竜の勇者の為に伝説の金属で鍛え上げた一振りだった。
(この剣に、運に命を救われた?)
不意に湧き上がる疑念に、今は目の前の敵を倒す事に集中しろと、頭を振る。
幸いな事に、剣技そのものは決して対処できないものではない。
力を使わずに技量と視力だけでどんな相手にも対抗できる、剣術の基本だった。
それでも、本来なら障害物であろう森の木々をものともしない異常な膂力の相手には、
草木や枝に剣を制限されるているミズーの不利は否めない、上に距離が掴みにくい。
(此処は不味いわね、どこか拓けた場所を……)
森林の空白地帯を探してミズーが駆け出した。そして──。
「……見えた」
地面を駆ける靴の下で、小枝を踏み折る音を立てながら、ミズーは一気に森を抜ける。
足元に広がるは若草が揺れる草原、追撃をかけようとした黄泉の足がほんの一瞬だけ止まり。
「ここなら有利に戦えるとでも思ったの」
「そうかもね」
少なくとも、邪魔な障害物で相手の剣を見失う事は、無い。
「そう、じゃあ試してみようかしらねッ!」
小細工なしで、正面から突進を駆ける黄泉の刃、その速度と重量を受けきる気にはならない。
ミズーは大きく飛び退きその斬撃をかわす、が、逃がしはしない。とばかりに黄泉は更に踏み込み、振り下ろした刃が手の内で跳ね上がる。
黄泉の放った切っ先が迫り。それに抗うのは一瞬、ミズーは空で身体を旋廻させ、手にした剣をニホントウの腹へと横からぶち当てる。
甲高い金属の音が響き、体勢を崩した二人が左右に弾き飛ばされる。
体勢を崩しながら、外套の裏に隠した短剣を、ミズーが素早く放ち。
視界に鈍色の輝きを認めた黄泉は首を捻り、短剣を避けたか見えた。
が、飛来した残光が通り過ぎた後、その頬には赤い一筋の線が走る。
(……なんて無茶苦茶な刃の軌道をするのよ!)
上段からの斬撃を腕の内で翻し、更なる下段からの突き上げを行ったその刃に、ミズーは静かに戦慄する。
黄泉が今しがた放った技は、言うなれば彼の有名な剣豪、佐々木小次郎の燕返しを力技だけで再現したようなモノだった。
とはいえ、それは黄泉自身が幼き頃から神童と呼ばれた剣の腕を持ち、殺生石で人の限界を突破していたからこそ出来る技なのだろう。
(このままじゃあ……負ける?)
地面にニホントウを突き立てて体勢を保った黄泉が笑い。
頬から流れ出る雫を指で拭い、ぺろりと舐める。
それでも、相手が生きている以上は──。
(いいえ、私に殺せない者はいない……私は負けない)
37
:
弦月の下で/獅子邂逅
◆DzuK1MKXmE
:2010/07/28(水) 20:48:37 ID:/lOfSdHQ
★ ☆ ★
ミズーは真紅の外套を留める、獅子のレリーフが入った留め金を無意識に掴む。
炎の獅子、獣精霊ギーアが封じられた水晶檻、しかしその力は封じられていた。
「なかなか埒が明かないわねえ」
「それはお互い様よ」
ミズーと黄泉が戦いを始めてどれくらいの刻が過ぎたのか。
ほんの数分なのか、数十分なのか、それはわからないけれど。
時間の経過と共に、両者の身体に疲労が蓄積していくのだけは確かだった。
「そうね、それならこれはどうかしら?」
黄泉は楽しそうに笑いながら、手にしたニホントウを納刀すると、鞘を背に隠したままに腰を低く落とす。
抜刀術、居合いの構え。それはミズーとの切り結びにおいて、剣の腕は相手が上と見た、黄泉なりの戦略だった。
(剣を収めた? いえ狙いは判るわ……此処で決めるつもりなのね)
黄泉の構えを凝視したミズーは内心の動揺を隠しながらもあくまで平静を装う。
が、しかし。未だに動けないでいるミズーに黄泉は小声でほくそ笑む。。
「ふふ、これは狙い通りかしら。まるで御伽噺の中から出てきたようなその服装を見れば、ね」
ミズーとて居合いに似た技を見た事がない、経験がない訳ではない。
しかし諫山黄泉が尋常ではない膂力から繰り出すで居合いの距離が掴めずにいた。
そして、それが即座に自身の死へと直結する事も。
それでも抜刀術に対抗する手段がない訳ではない。
ミズーがあれこれ思考している間にも、黄泉はその距離をジリジリと詰めてくる。
(念糸能力を使うには…今はリスクが大きすぎる)
それならば打つ手は一つ、居合いを打ち破るものは、その攻撃圏外からの先制攻撃のみ。
ミズーは念糸の行使を即座に振り払い、己が持つ必殺の構えを選択する。
(そう、殺害はもともと困難なもの……)
ミズーは剣を持ち上げて、そしてつぶやく。
(殺害を可能にするのは、すべて距離にかかっている……)
持ち上げた剣を構える。普通に振りかぶるのとは多少、違う。
(すべての距離を自分のものにできれば、殺害は思いのままとなる……)
剣を水平にしたまま、大きく肩の上に担ぎ上げて、必殺の距離が迫り──。
「「ハアッ!!」」
それはミズーと黄泉の必殺の間合いが交錯した瞬間──。
腰溜から腕の筋肉を伝い、その力の一切を余す事なく指の先まで浸透させる。
極限まで引き絞られた技を、後はただ目の前の敵を打ち滅ぼすために解き放つのみ。
一撃必殺の投剣術、大気を切り裂くダイの剣が黄泉へ迫り──。
一撃必殺の抜刀術、大気を切り裂くニホントウがミズーへ迫り──。
極限の殺意が集う、無の一点、絶対の殺人領域に絶叫と残光が響き渡った──。、
38
:
弦月の下で/獅子邂逅
◆DzuK1MKXmE
:2010/07/28(水) 20:52:02 ID:/lOfSdHQ
☆ ★ ☆
瞬間の静寂。
極限まで引き絞られた殺意の余波が空間を攪拌させて──。
炎を纏った獅子が、真紅の閃光で薄闇を切り裂いた。
「「──なっ!!」」
激しい残響の後に起こった結末は、二人の予想を裏切った。
「間に合って良かった──」
勝者の剣が敗者の体を貫くであろう刹那、ミズーに劣らぬ真紅の輝きを煌せて。
黄泉のニホントウを炎の剣で、ミズーの刃をその身に纏った鎧で弾き、その少女が叫ぶ。
「みんな、戦っちゃダメだよ──殺し合いなんて絶対に間違ってるはずなんだッ!」
額にうっすらと汗を浮かべながら、少女──獅堂光はにっこりと二人に笑いかける。
思わぬ新たな乱入者に黄泉は距離を取り、ミズーは場違いな少女の笑みに戸惑い顔をしかめた。
「勘違いしないで頂戴、殺し合いに乗って襲い掛かってきたのはそっちの女よ」
「余計な邪魔が入ったと思えば子供か。いいよ私は、邪魔をするならお前も一緒に斬ってあげる」
光の鎧に弾かれた剣を隙なく拾うとミズーが声を張り上げて、黄泉が舌なめずりをする。
「そんな、どうして! あなたは人を殺してまであの剣が欲しいの!?
それに、あなただって襲われたとしても、それだけの強さがあれば戦わずに済む方法だってあったんじゃないないのか!?」
両手を広げて必死に叫ぶ光の姿は、この殺し合いの場にはあまりに似つかわしくない。
ミズーは黄泉を、黄泉は光を、光はミズーを止めようして、三人が睨み合う形となり、状況が膠着するかに見えた。
その中で、光の言葉にミズーの鼓動がどくんと跳ね上がる。
(わたしは殺そうとした…)
襲ってきたから殺す。それは最後の手段だと決めたのに。
無理に戦わず、逃げるという選択肢もあったはずなのに。
(やはり──私は絶対殺人者でしかないの? いいえ、違うわ!)
剣を黄泉へと構えたままに、ミズーの身体から剥離した銀色の糸が、黄泉の身体へと収束していく。
「なにっ!?」
咄嗟、身体に巻きつく銀糸を斬ろうとするが、半不可視のソレに黄泉は触れない。
「あなたは何をするつもりなんだ!」
「それは念糸──、私の切り札よ」
冷たい表情でミズーが告げる。
(もっとも、本当の切り札は──)
獣の瞬間──他にあるのだけれど、という事はおくびにも出さず。
「この三人の中で明確に殺し合いに乗っているのはあなただけよ。
この子が乱入してきた以上、このままじゃあますます埒が明かないわ。
だから、今は退きなさい──」
無言のまま、黄泉が光とミズーを見比べて思案する。
「……ふふ、ここで無茶をする必要もないか」
チンッ、という微かな金属音が響き、黄泉がニホントウを鞘に納める。
その姿を、殺意が消えた事を確認したミズーがゆっくりと念糸の力を解除する。
二人が戦いを止めたことに、光は微かな安堵が浮かべる。
「──ここは退くわ。でも、次はちゃんと殺してあげる」
その言葉を最後に、黄泉はその場から駆け出していく。
39
:
弦月の下で/獅子邂逅
◆DzuK1MKXmE
:2010/07/28(水) 20:58:19 ID:/lOfSdHQ
★ ☆ ★
(どうにか、ハッタリが効いたみたいね……)
ミズーが黄泉に対して仕掛けた念糸、その念糸能力は《発熱》である。
本来のそれは相手と自分を思念の道(念糸)でつないで、そしてさらに意思を注ぐというツーアクションが必要になる。
しかしその力はこの場で大きく制限されており、本来のアクションに加えて、
意思を注ぎ発熱が始まるまでのタイムラグと、発熱後に相手の戦闘力を封じるまでの威力を発揮するには更に時間を要する。
といった、言うなればフォーアクション、どころかファイブアクションさえ必要とする、戦闘ではとても使えない代物になっていたのだが。
「今だけでも…あなた達が殺しあわずに済んでよかった…」
黄泉が去ったのを見届けた光がそうつぶやき、そのままがくりと地に膝をつく。
その光景を見たミズーが光の元へと急いで駆け寄り、その肩を抱く。
「なんて無茶をするのよ! 一歩間違えば貴方が死んでいたのよ!」
地に倒れたて苦しげな表情を見せる光。その肩口からは左腕にかけておびただしい量の鮮血が溢れていた。
「いいんだ、これ位わたしは大丈夫だから…」
「動かないで頂戴、まずは私に傷を見せて」
「えっ、あっ、うん…」
真剣な表情で迫るミズーの言葉に光は胸の辺りで両手を合わせる。
すると薄桜色の虹彩が光の全身を廻り、淡い輝きが消えた後には真紅の鎧が消失していた。
「驚いたわね、それは貴方の魔法なのかしら?」
「これは導師クレフが授けてくれた魔法の鎧なんだ!」
さして興味の無い話でも多少の気休めにはなるだろうか。
そんな事を考えながら、ミズーは制服姿になった光の腕を見る。
それは思った以上に真っ赤に染まっていた。ミズーが負わせてしまった傷だった。
光は黄泉の刃を剣で受け止めたものの、ミズーの放ったオリハルコン製の剣は、魔法騎士の鎧を貫き光の肩を深く抉っていた。
(この傷は私が付けたのよね…)
その事実に多少の罪悪感が湧き上がる。
「光だよ…」
「うん?」
「わたしの名前…獅堂光っていうんだ」
「そう…それよりも、今は止血をするのが先ね」
「…どうするの?」
ミズーは光の腕を覆う制服を引きちぎると、意識を集中して、再び念糸を紡ぐ。
「…少し痛いけど我慢しなさい」
剥き出しになった肩口の傷に銀色の糸が絡みつき、そして。
「うあぁぁッ!」
光が悲鳴をあげて、脂肪が焦げる嫌な臭いが鼻をかすめる。
身を焼く痛みに奥歯を噛み締め必死に耐える。
(こんな華奢な身体で無茶をして…)
しばらくして、汗を拭ったミズーが顔をあげて告げる。
「傷口を焼いて接着したわ。多分……一時はこれで大丈夫なはずよ」
「あっ、ありがとう…お姉さん」
「礼を言うのは私の方、あなたが割って入らなければ、正直どうなっていたかのかわからないもの」
「光だよ、わたしの事は光って呼んでほしい」
いまだ激しい痛みに肩を震わせて、額を流れる冷や汗を拭いながら光はミズーの瞳を見つめる。
「そう…ヒカルね…」
「お姉さんの名前は?」
「…………」
ミズーは逡巡してしまう。このような殺し合いの場で名前を名乗ることに意味があるのかと。
(積極的に殺し合いをするつもりはないけれど、それでも私は殺人者なのよ……)
だとしても、ヒカル(光)という少女の笑みに──。
「…私はミズー、ミズー・ビアンカよ」
「へぇ、素敵な名前だね、えっとミズーさん?」
つい答えてしまい。ミズーの口からは何故か溜息が出る。
(私も甘いわね……)
そんなミズーの様子を光は不思議そうに眺める。
「ミズーでいいわよ。それに助けてもらったせめてもの礼ね。
とりあえず、あなたを安全な場所までは連れていくわ」
そうしてミズーは東に見える村を指す。
(何なのかしらね、コレは…)
やたらと人懐っこい光の様子に、ミズーは不思議な感覚を覚えてしまう。
その少女はミズーの半身ともいえる相棒、獣精霊ギーアに何故か似ているような気がした。
40
:
弦月の下で/獅子邂逅
◆DzuK1MKXmE
:2010/07/28(水) 20:59:07 ID:/lOfSdHQ
【C-4 草原/一日目/深夜】
【ミズー・ビアンカ@エンジェルハウリング】
【状態】健康、疲労(小)
【装備】ダイの剣@ダイの大冒険
【道具】基本支給品一式、ガッツの短剣(×8本)@ベルセルク
【思考】基本:最終目的はロワを倒し、神の剣を破壊する。
1:今はヒカル(獅堂光)を連れて東の村を目指す。
2:無駄な戦いは出来るだけ避けたい、が敵対する者は倒す(殺す)
[備考]
※参戦時期は原作9巻(ミズー編最終巻)アマワの契約が破棄された後からです。
※自身の制限を全て把握しています。
※念糸能力は制限により発動がとても遅く、本来の威力を発揮する事が難しくなっています。
※精霊の召喚、行使は制限により不可能です。
※ミズーはダイの剣を扱えます。他の人間が扱えるかは不明です。
【獅堂 光@魔法騎士レイアース】
【状態】疲労(小)、右肩に深い刺し傷(止血済み)出血と治療(火傷)によるダメージ、
【装備】魔法騎士の剣(光専用最終形態)、魔法騎士の鎧(光専用最終形態)
【道具】支給品、
【思考】基本:主催に反抗し、殺し合いを止める。
1: 今はミズーさん、ミズーと東の村へ向かう。
2:海ちゃんと風ちゃんがいるなら合流したい。
[備考]
※参戦時期は光がセフィーロの柱になった以降(最終回後)です
※魔法騎士の剣は魔法騎士の鎧(手甲の宝玉)に収納可能です。(光の意思で自由に出し入れ可能)
※魔法騎士の鎧は光の意思で自由に纏う事が出来ます。
※魔法騎士の剣、魔法騎士の鎧を他の人間が扱えるか不明です。
41
:
弦月の下で/獅子邂逅
◆DzuK1MKXmE
:2010/07/28(水) 21:00:17 ID:/lOfSdHQ
☆ ★ ☆
「ハァ…ハァ…」
ミズー達と別れ、戦いが終わり。極度の興奮状態から開放された黄泉は森の中を出鱈目に彷徨っていた。
「アアアァ…!!」
額に痛みが走り、身体を駆け巡る妖力に打ち震える。
「私は…一体…あの女は…どうしたんだ…」
不意に、制服の裾から零れ落ちたモノが視界に入る。
そこに落ちている赤い携帯を拾い、折りたたみ式のそれを指先で開くと、そこには黄泉と神楽が微笑んでいた。
「そうだ…今日は確か神楽と約束があって…」
記憶が混濁している。赤い携帯を制服のポケットに仕舞う。
「そうだ…私は神楽を本当は憎んで…いた。
違う、私はあの子を家族のように……!」
いつの間にか森を抜けると、虚空には弦月が変わらずに浮かんでいた。
その月光を浴びて、黄泉の額に赤い石が浮かび上がり、黄泉の両眼が妖しく輝く。
「そうだ、私は殺さなきゃ、あの子を守る為にすべてを…」
頬の傷はいつの間にか消え、その体内では殺生石が静かに脈動していた。
【D-3 草原/一日目/深夜】
【諫山黄泉@喰霊-零-】
【状態】健康、疲労(小)
【装備】ファン・ガンマ・ビゼンのニホントウ@海皇記
【道具】支給品、ランダムアイテム×1
【思考】 基本:神楽の為に他の参加者は皆殺し。
1:出会った者は皆殺し。
2:赤い髪の女(ミズー)はいつか殺す
[備考]
※参戦時期は三途川に殺生石を埋め込まれた後です。
※殺生石の妖力で身体能力が大幅に強化、軽症は時間経過で回復します。
※法術の類がどの程度使えるのか不明です(後の書き手氏にお任せします)
※ミズーと獅堂光の名前は知りません。
42
:
◆DzuK1MKXmE
:2010/07/28(水) 21:04:55 ID:/lOfSdHQ
以上で投下を終了します。
光は魔法騎士の剣と鎧が支給されているため、ランザム支給品は0としました。
本スレ規制中のため、どなかたお手すきな方がおらっしゃいましたら、本スレへの代理投下をお願いしたいと思います。
何卒宜しくお願い致します。
43
:
無銘の剣
:2010/07/28(水) 21:33:29 ID:YmOpTTQM
さる規制をくらっちゃいました。残りお願いします。
44
:
◆WoLFzcfcE.
:2010/07/28(水) 23:10:52 ID:nR.rRfHY
伊達政宗、キング・ブラッドレイ、高代亨
投下します
45
:
雷速剣舞/隻眼邂逅
◆WoLFzcfcE.
:2010/07/28(水) 23:12:06 ID:nR.rRfHY
「Hey,そこのおっさん。ちっと聞きたいことがあるんだが、いいかい?」
「不躾だな。何だね?」
「Sorry,あいにく俺の口の悪さは生まれつきでね。いや、大したことじゃないんだが……あんた、刀は持ってないかい?」
「刀か。いや、あいにく私に与えられたのはこれだ」
ヒュン。
「ちっ、おっさんのも南蛮モノか……刀はねえのかよ刀は」
「ふむ、シンの刀剣か。あれも悪くはないが、やはり私は反りのないこのような剣が好みだな」
「An,シンだぁ? おっさん、あんた変わった着物だな。それも南蛮モノか?」
「ナンバンというのが何を指しているか理解できんが、国軍の軍服くらいどこでも見られるだろう」
「国……軍? あんた、豊臣の人間か?」
「やれやれ、名も名乗らずに質問攻めかね。最近の若い者は礼儀を知らん」
「……Ha,こいつぁ失敬。俺の顔も存外売れちゃいないらしい」
スラッ。
「じゃあ改めて名乗らせてもらうぜ。俺は奥州筆頭・伊達政宗。いずれ天下を獲る男だ――You see?」
「……ハッハッハッ! これは驚いた……今どき珍しいほどに向こう見ずなことよ。若さゆえの蛮勇か、真に次代を担う力か――」
ジャリッ。
「――だが、私の前でその言葉を吐く勇気は認めよう。蛮勇でなければよいが」
「Hey,stop.俺にだけ名乗らせる気かい? あんたの名前も聞かせなよ」
「おっと、これはこれは。私も人のことは言えんな」
ジャキッ。
「私の名はキング・ブラッドレイ。小僧、天下を獲ると言ったな。私の国を獲りたいのなら、私を倒して力づくで奪い取るがいい!」
「OK, Are you Ready? ――癖になるなよ!」
46
:
雷速剣舞/隻眼邂逅
◆WoLFzcfcE.
:2010/07/28(水) 23:13:03 ID:nR.rRfHY
◆
「――MAGNUMッ!」
雷光纏う必殺の突きが虚空を裂く。
踏み込みは迅速、走る剣はまさに神速。
竜が振るうは名剣の誉れ高き稲妻の剣。
握る武将もその躯から蒼い雷を迸らせ、剣の放つ暴風とともに踊る。
一太刀ごとに空気を焦がし、煉瓦造りの家々を掠っただけで吹き飛ばす。
暴れ回る一匹の竜。
だがその顎は小癪な獲物を捕らえられない。
「Shit! チョコマカとウザってえなッ!」
三日月細工を拵えた兜に蒼い装束、右目に眼帯を着けた一人の男。
日の本は奥州摺上原を手中に収める若き武家の棟梁、奥州筆頭・伊達政宗。
隻眼の風貌から『独眼竜』と渾名され、天下にその人ありと謳われる勇将である。
「あいにく私には君のようなデタラメな力はなくてね……さしずめ雷鳴の錬金術師というところか。大した破壊力だが、当たらなければどうということはない」
その独眼竜の荒ぶる暴虐を一手に凌ぐ――否、かすりもしない一人の男が、刃を片手に高速で迫る。
政宗が砕いた建造物の、その舞い散る瓦礫の中を悠々と、まるで散歩するようにすり抜けて。
「King――へっ、大将を名乗るだけのことはあらぁな! だがッ!」
本来の獲物ではない、加えて本来のスタイルでもない。
伊達政宗が得意とするのは六本の刀を指先に挟み持ち同時に振るう人外の荒業、六爪流。
だが今手元にあるのは使い辛いことこの上ない西洋の長剣がただ一振り。
並みの相手ならそれでも十分だったろう。
奥州筆頭の武勇は少々の不利など物ともしない、そのはずだった。
「らぁっ!」
奥州筆頭の一刀を、対する敵手――キング・ブラッドレイは刃の上を滑らせて受け流す。
政宗と同じく眼帯を着けた壮年の男。手にするのは言葉通り反りのがなく装飾も控えめのシンプルな剣。
甲斐の虎よりもかなり上、あるいはもう孫などいてもおかしくなさそうな風貌のくせに、足捌きはやたらと速い。
身体能力は若い自分が上だという確信はあった。
だが、攻撃が当たらない。
何十何百と振るう剣の軌跡に、この隻眼の男の影すら浮かび上がらないのだ。
「そこだ」
「うおっ!?」
そして、時折り放たれる反撃がやたらと鋭い。
袈裟に来たと思えば次の瞬間には首を突かれる。
頭を振って避ければ跳ね上がってきた足刀を受け、自慢の兜が吹っ飛ばされた。
後方に宙返りし、崩れた瓦礫の上に着地した。
47
:
雷速剣舞/隻眼邂逅
◆WoLFzcfcE.
:2010/07/28(水) 23:13:52 ID:nR.rRfHY
(どうなってやがる……俺の技がちいとも当たりゃしねえ。読まれてるのか?)
動きの速さで勝っているのになぜ追いつけないのか。
そして一の太刀を放った後の返し刃がでたらめなほどに速いのも不可解だ。
あんな動きをすれば剣の重量に振り回されるはずなのに、ブラッドレイは筋力で押さえつけているのかまったく揺れ動かず隙もない。
(しかしやり辛え。片眼がねえって条件は同じだが、野郎……とてつもなく戦い慣れてやがる)
政宗は右目が、ブラッドレイは左目が欠落している。ゆえにお互いの死角が重なり合い、正面からの衝突を余儀なくされていた。
政宗が目にも止まらぬ連続攻撃を放っても、ブラッドレイはあらかじめその軌跡を知っていたかのように軽々と剣閃の下を潜り抜ける。
手数の多さで圧倒して近寄らせないようにしているものの、これでは千日手も同然だ。
「Ha,まどろっこしいねぇ! こういうのは好みじゃない――Go for broke! 一気に決めさせてもらうぜ」
「ほう、まだ切り札を残しているか。よろしい、受けて立とう」
「いいねぇ、楽しくなってきたぜ……奥州筆頭・伊達政宗、推して参る!」
だから政宗は勝負に出る。
己にあって敵にないもの――政宗自身から溢れ出る雷をフルパワーで放つ、最高にハイな一撃。
回避などする場もない必殺の一撃で仕留める。
「行くぜ、HELL DRAGON!」
咆哮とともに全身の闘気がスパークし、剣先から雷の竜となって放たれた。
雷竜は一直線にブラッドレイへと向かっていき、炸裂の瞬間夜の闇を白く染め上げる。
拡散し放電する閃光の刃。
どこに隠れようとこの暴虐の怒りから逃れることなど不可能だ。
家屋を藁のように薙ぎ倒し、まるで嵐が直撃したかのような様相を呈する。
「……Ya-Ha.これで決まったな」
ブラッドレイの姿はない。
それどころか村の一区画そのものが完全に焼き払われていた。
奥州筆頭の全力の一撃は、もはや人の身で成せる破壊を遥かに超えていた。
「ハッ……フゥ。やれやれ、しょっぱなからHeavyな相手だったぜ」
手近な瓦礫に腰を下ろす政宗。
つい理由もなくたまたま見かけただけのブラッドレイに戦いを吹っかけた理由は自分のことながらわからない。
ただブラッドレイの姿を眼にした瞬間、前触れもなく。
“こいつは敵だ”
と、思ったのだ。
口うるさいが背を預けられる無二の友――『竜の右目』片倉小十郎がいれば咎めたかもしれない。
だがこれだけは口では説明できない、本能的なものだった。
そう、かつて『魔王』織田信長と相対したときに感じたような、心底からの畏怖。
「っと、んなことより俺のTrademarkを忘れちゃいけねえな」
たとえ一瞬でも怯えを認めたことを忘れたいのか、政宗は軽く頭を振って勢いよく立ち上がる――その行動が、彼の命を救った。
瓦礫の影から放たれた一筋の流星、硬く尖ったガラスの刃が一瞬前まで政宗の左目があった位置、つまり左脇腹へと突き刺さった。
血飛沫、だが政宗が痛みに呻く暇などない。
ガラス片が投じられたのとほとんど同時に、目前に白刃が滑り込んできたからだ。
48
:
雷速剣舞/隻眼邂逅
◆WoLFzcfcE.
:2010/07/28(水) 23:14:32 ID:nR.rRfHY
「……What!? なんで生きていやがる!」
「ああ、素晴らしい威力だったよ。惜しむらくは精度が今ひとつということだ」
ギリギリと刃を合わせる政宗と――怪我一つないブラッドレイ。
外見だけが、青い軍服の上着は燃え尽きたか黒のインナーに変わっていたが。
「雷鳴の錬金術師よ、君にその雷火の牙があるように」
超至近距離で交わる二人の視線。
政宗は気付く。ブラッドレイの顔に、先ほどまであった眼帯がないことを。
大きな傷が走ってはいるが、ゆっくりと目蓋が開いていく。そこには確かな瞳があった――隻眼ではない。
若き武将は知る由もない、魔法陣を抱く竜の刻印。
ウロボロスの紋章を瞳に刻んだ、人でなきモノ、ホムンクルスの証。
「私にも最強の眼があるのだよ」
色のない瞳が若き武将を睥睨する。
音速を超える銃弾すらも視認できるほどの動体視力、それが“憤怒”のホムンクルス・ラースの能力。
乱れ狂う雷刃の軌跡を一つ一つ知覚し回避しきることすらも容易いことだ。
ブラッドレイの膝が政宗の腹部を抉り、強引に膠着を崩した。
延髄に振り下ろされた剣を勘だけで受け止め、政宗はこちらは正真正銘の隻眼でブラッドレイを睨め上げる。
「調子に……乗ってんじゃねえッ!」
渾身の技を苦もなく凌がれた屈辱が怒りとなって沸騰し、その激情とともに振るった稲妻の剣が風を生んでブラッドレイの自由を奪った。
政宗はその機を逃さず走り込み、両手に握った剣を縦横無尽に振るう。
「CRAZY STORM!」
本来六爪で使う技を一刀で放った。
威力も規模も落ちているが、そこは意地と矜持で押し上げる。
左右どちらからも襲い来る鋭刃の軌跡。
「おおっ、おおああアアアアアアアアッッ!」
いかに優れた眼を持っていようと、百を超える連撃のすべてを防げるはずがない。
たとえ眼で追えても体が、剣がついてこれるわけがない。
「――なッ!?」
その政宗の目論見を、キング・ブラッドレイは覆す。
刃鳴りの音が絶え間なく響く。
威力で勝る政宗の剣を、ブラッドレイは一瞬間に剣を何度も叩きつけて威力を分散させていく。
自在に走り回る剣をさらに追尾し、打ちのめす。神速をさらに越える、瞬速の剣。
トータルのスピードでは劣っても、ごく限定的な速さ――攻撃速度の一点において、キング・ブラッドレイは伊達政宗の上を行く。
それは奥州筆頭が遅いわけでも大総統が速いからでもない。
ブラッドレイが振るう一振りの剣。
それこそは銘をはやぶさの剣、剣にあるまじき羽のごとき軽さにて一瞬間に二度の攻撃を可能とする刃。
それほどの業物を、生まれ落ちて六十余年一日たりとも弛まずすべてを闘争に費やしてきたブラッドレイが振るうのだ。
人外の強者ひしめく戦国時代に名を上げた勇将と相対し、互角以上に争えることとて決して不思議ではない。
49
:
雷速剣舞/隻眼邂逅
◆WoLFzcfcE.
:2010/07/28(水) 23:15:08 ID:nR.rRfHY
そしてここで、先ほど全力の攻勢を仕掛けたツケが回って来る。
政宗の動きが途端に精彩を欠く。
握る剣がまるで巨大な鉄塊のように感じられ、電光の速さが見る影もなく。
絶え間なく刀身に走る衝撃も無関係ではない。ブラッドレイはこの数十秒で二百はくだらない斬撃を繰り出していた。
疲労しているのはお互い様だ。だが全力の一撃を放った分、政宗のほうがその度合いは大きかった。
そして今、均衡が崩れる。
「ガッ……!」
ブラッドレイがいつの間にか片手に隠し持っていた鞘で政宗の鳩尾を突いた。
全身が弛緩した一瞬を逃さず、ブラッドレイの剣が政宗のそれに絡み合い、跳ね上げる。
天高く稲妻の剣が舞う。
視線を追わせた政宗の視界に映ったのは、夜空の星ではなく拠って立つ大地。
瞬間的に懐にもぐりこんだブラッドレイに腕を取られ投げ飛ばされていた。
瓦礫に背中から落ち、激痛に一瞬息が止まる。
続いて腹を踏み抜く固いブーツの感触。
次いで視界に飛び込んだのは、美しく煌く白刃の輝き。
(やべぇ……!)
偽りなく、政宗は死を覚悟した。
戦場に身を置く者としてその覚悟はいつだってできている。
だがあまりにもそれは唐突で、政宗を以てして、
――ああ、こんなもんなのか。くたばる前の気持ちってやつは、こんなにも静かな……Un?
そう思わせるものだった。
瞬間で脳裏に浮かぶ奥州の光景。
この手で殺した父の顔、無二の朋友、己を慕う部下ども。
それらすべてが一瞬に政宗の脳裏に踊り、同じく一瞬で掻き消える。
最後に映った男の顔は――忘れもしない赤いヤツだ。
――政宗殿、某との決着をつけずに往生なされるおつもりか? 独眼竜とはその程度の器でござったか!
――Holy Shit! 言ってくれるじゃねえか真田の! 上等だ、俺はこんなところじゃ終わらねえぞ!
同時、胸に沸き起こる烈火の感情が再び政宗を突き動かした。
ブラッドレイが剣を振り下ろすに合わせて両の拳を打ち合わせる。
「ほう、芸が達者だな」
「こういうのが得意な野郎と散々やり合ってるんでな……!」
拳の甲を交差させた白羽取り。瞬間の判断で行ったにしては会心の一手だった。
腕から拳から剣へと伝う電撃を嫌い、ブラッドレイが後方へと飛び退った。
身を起こす。だがその動作はぞっとするほど緩慢で、まるで自分の体ではないように思えた。
脇腹の傷は深くはないが出血が止まらない。その上二度に渡って全力の攻撃を仕掛けたせいで一気に疲労が増してきた。
それでも、屈することだけはしない。
ギラギラと戦意燃ゆる瞳で独眼竜は敵を睨む。
50
:
雷速剣舞/隻眼邂逅
◆WoLFzcfcE.
:2010/07/28(水) 23:15:49 ID:nR.rRfHY
「やれやれ、まだ諦めんか。私もそろそろ疲れてきたので終わりにしたいのだがね」
「Ha,つれないこと言うなよ。最高のPartyじゃねえか……楽しもうぜ」
と、減らず口を叩くものの。戦況は明らかに政宗の劣勢だった。
脇腹の裂傷は深く、鳩尾の痺れは未だ取れず、瓦礫に叩きつけられた衝撃がまだ全身に残っている。
加えて剣を手放してしまった。
その剣がどこにあるかと言えば、最悪なことにたった今ブラッドレイが拾ってしまった。
どうやら礼儀正しく剣を返してくれるつもりなどないようで、左右両手に握った剣を二度三度振るい感触を確かめている。
しかもその様がなんというか――やたらと堂に入っている。
おそらくは二刀流こそがやつの得意とするStyleだ、と政宗は推測した。
(こいつはやべえ……野郎に風が吹いてやがる。クソッ、六爪がありゃあな)
現実は六爪どころか素手だ。鋼鉄の鞘は頑丈ではあるものの、あの業物二振りを相手取れるはずもない。
刀が欲しい、と奥州筆頭は切に願った。
「君は若いな。私などもう六十にもなる、あまり無理をさせんでくれ」
「おいおい、笑えねえJokeだぜ。俺の三倍も歳喰っててその動きかよ?」
「引退したらどうかとよく言われるよ」
ブラッドレイは稲妻の剣の剣先を転がっていた政宗の兜に引っ掛け、こちらへと振り上げる。
くるくると回転し放られた兜を受け取り、礼も言わずにかぶり直す。
おそらくは末期の情け――逝くときは晴れ姿で、とでも言いたいのだろう。
鳥が翼を開くようにブラッドレイが双刃を広げ、疾走の気配を見せる。
ただでさえ苛烈な剣撃が単純に倍になって襲い来る。
さすがに今度ばかりは命運尽き果てたか、とどこか納得しながらも体は迎撃の構えを取っていた。
「では、行くぞ。できるのならば凌いで見せろ」
「All Right,来やがれ……!」
鋼鉄の鞘を砕けよとばかりに固く握り締める。
一瞬後には両断され、役目を終えるのだとしても。
(どこまで追い詰められても絶対に諦めねぇ! それが俺の――ッ!)
意地で一撃くらいは叩き込んでやる、と突き進んでくるブラッドレイを視線で射る。
と――自身とブラッドレイの間に割り込んできたものがあった。
細長い、見覚えのある形。
そう、これは紛れもなく――
「そいつを使え!」
どこからか響いてきた声に後押しされるまでもなく、その物体が何であるかを看破した瞬間政宗は走り出していた。
宙にあって強く存在を主張するそれは、まさしく今このとき政宗が求めていたもの。
嬉しいことに、それは、その天からのPresentは政宗が良く知っているものでもあった。
「借りるぜ、小十郎……お前の刀をよ!」
銘を、黒竜。
奥州でも指折りの刀工が鍛えた大業物。
相棒が、『竜の右目』がいつも腰に佩いていた名刀を抜刀し、
51
:
雷速剣舞/隻眼邂逅
◆WoLFzcfcE.
:2010/07/28(水) 23:17:05 ID:nR.rRfHY
「――おおらあああああッッ!!」
無理を押しての、渾身の逆袈裟斬り――月煌。
これは捌けないと見たか、ブラッドレイが二刀を合わせて防御の構えを取る。
だが、止まらない。
『独眼竜』と『竜の右目』の合作と言えるその一刀は、人外のホムンクルスをして予想以上の威力を叩き出す。
瓦礫の山へとブラッドレイが叩きつけられ、土砂に埋まっていく。
それを見届けた政宗は今度こそ膝をついた。
「へっ……見たか、奥州魂ってやつをよ……」
力を出し尽くした政宗は、それでも笑いながら勝利を誇る。
次いで顔を巡らせた先には、激突の刹那政宗に刀を放り投げた男が歩み寄ってきていた。
長い蓬髪を風が弄ぶに任せた、背の高い痩せた男。
面白いことにそいつも右目が潰れているようで、目蓋の上に大きな傷が走っていた。
「Thanks,Brother.おかげで助かったぜ」
「余計な手出しではなかったか?」
「んなこたあない。正直、ヤバかった」
男が差し出した手を政宗は躊躇なく取った。
こいつが敵であるか味方であるかはっきりしないものの、こいつの介入がなければ政宗は間違いなく死んでいた。
政宗の命はこいつに救われた、つまりは借りができたということである。
騙まし討ちするならそれもいい、一度だけなら受けてやる――そんな気持ちでいたのだが、事実こいつは敵意などないようだった。
引き起こされ、改めて男と向かい合う。
「俺は奥州筆頭・伊達政宗。あんたはなんてんだ?」
「……名は捨てた。どうしても呼びたいなら、そうだな。イナズマとでも呼んでくれ」
「イナズマ? Lightningか。へっ、そいつはいい! あんたは俺とよく似てるよ!」
隻眼と隻眼、蒼雷と稲妻、そして言葉にしなかったが互いに十九歳。確かに二人は良く似ていた。
そのイナズマと名乗った男――本名・高代亨は、偶然見かけた伊達政宗とキング・ブラッドレイの闘いに介入すべきかどうか迷っていた。
『最強』との闘いから数ヶ月。
逃亡生活を続けていた亨が突如招かれた、この世のものとは思えぬ死の遊戯。
統和機構からの刺客を退けることにも疲れを覚えたころ、亨はふと目覚めればこんなところに連れて来られていた。
そして考えた、ロワと名乗った女の言うとおり殺し合いに乗るかどうか。
もし最強の剣とやらを手にすれば、もう逃げ回ることもなくもしかしたら統和機構そのものを叩き潰せるかもしれない。
だがそのためにはまったく関係のない五十人以上の人間を殺し尽くさねばならず――。
「一つ聞きたい。あんた、あの女の口車を信じるのか?」
「Un? ああ、殺し合って最後の一人になれってあれか。――そうだな、信じるって言ったらどうする?」
「悪いが、ここで倒れてもらう。闘うのも殺し合うのも、その覚悟があるやつだけがすればいい。だが、それを他人に強要することは許さない」
そう、乗るわけがない。
いかに強力な力を持っていようと、追手の屍をうず高く積み上げるほどこの手が血に塗れているとしても。
最後に残ったちっぽけなプライド――あの『炎の魔女』や親友に顔向けできなくなることだけは、絶対にしたくない。
だからこそ亨は『イナズマ』として闘う覚悟を決めていた。無駄な血が流されぬように、もう二度と大事なものを取りこぼさないために。
「OK,そんな怖い顔するなよ。俺も誰かの狗になる気はない。竜ってのは誰にも従わないから竜なんだ。
無論、先に向こうに襲われちゃあさっきみたいに応戦するが、俺から誰彼構わず喧嘩を吹っかけるってことはしねえよ」
「……そうか」
亨は全身を強張らせていた力を抜いた。
亨自身、自らの力に自信はあったがこの伊達政宗や先のキング・ブラッドレイと相対して確実に勝てる自身はなかったのだ。
52
:
雷速剣舞/隻眼邂逅
◆WoLFzcfcE.
:2010/07/28(水) 23:18:09 ID:nR.rRfHY
「しかし、あんたがこの刀を持っているとはな。これも運命ってヤツか……」
「そいつを知ってるのか?」
「ああ、まあ俺の相棒の獲物なのさ。どうだい、あんたさえ良けりゃこいつを譲っちゃくれねえか? 代わりに俺の使ってた剣をやるからよ」
「構わんが、その剣はどこだ?」
「Um,さっきのブラッドレイっておっさんに」
「すまんが返せと言われても拒否させてもらおう」
割り込んだ声は紛れもなく。
政宗と亨は一瞬で戦闘体勢へと移行する。
視線の先には瓦礫を風で跳ね除けて立つ王の姿。
「Fantastic! まだ生きてやがるのかよ!」
「君の剣のおかげだ。錬金術とも思えぬが便利なものだな」
ブラッドレイは何事もなかったかのように嘯いた。
稲妻の剣が持つ風の能力が、今度は本来の持ち主ではなく敵を救ってしまったのだ。
「チッ、なら今度こそあの世に蹴り落としてやるぜ……!」
「できるかね? その疲労困憊といった体で」
「So easy! 独眼竜を舐めんじゃねえ!」
黒竜を構え、再びブラッドレイと切り結ぼうとする政宗。
しかしその眼前に亨が立つ。
「その体では無理だ。ここは退くぞ」
「Huhn? 尻尾巻いて逃げろってのか!」
「負けるとわかっていて挑むのは愚か者だ。本当に勝ちたいなら、勝つために退くということも手の一つだ」
「……チッ、小十郎みてえなこと言いやがる。だが、やっこさんだって黙って俺らを見逃してくれるほど甘かないぜ?」
「大丈夫だ、任せろ」
政宗が捨てていた稲妻の剣の鞘を構え、亨はブラッドレイと向かい合った。
鞘を持つ手をだらんと下げたその構えは、控えめに言っても隙だらけ。
「イナズマ……と言ったか。二人同時にかかってきても私は構わんよ」
「あいにくだが、この場は退かせてもらおう。今はあんたに勝てる気がしないんでな」
「逃がすと思うか?」
「できる、と俺は踏んでいる。あんたの眼――おそらく俺と似たような能力だ。直接的な攻撃力はないだろう、だから」
異名の由縁、物体の隙を見出す『イナズマ』能力を発動させ、手にした鞘を一際大きな瓦礫の一点に突き立てる。
後ろから見ていた政宗は、鋼鉄の鞘が硬い瓦礫に抵抗もなく突き込まれたのを見て取った。
一瞬で、瓦礫が粉のように分解される。
即席の煙幕が戦場に拡がった。
「……めくらましか。この程度で私の眼から逃れることはできんぞ」
「だが、あんたの行動は一手遅れる!」
そう、その初動の遅れさえあれば十分なのだ。
稼いだ瞬間の間で、亨はデイバックから己に支給された切り札を引っ張り出す。
一見してキックボードのような形状の長い板。
後部に風を噴射する貝を取り付けた、とある世界の空島という場所で用いられるウェイバーという乗り物だ。
しかもこれは通常モデルではなく、さらに強力な噴風貝(ジェットダイアル)をセットした特別製。
煙幕を吹き飛ばすほどの猛烈な風が噴風貝から噴射される。
手綱を操るのは高代亨。
その腕が伸ばされ、伊達政宗へと差し伸べられる。
53
:
雷速剣舞/隻眼邂逅
◆WoLFzcfcE.
:2010/07/28(水) 23:19:25 ID:nR.rRfHY
「――ッ!」
走っても届かぬと見たブラッドレイが隼の剣を投擲した。
まっすぐ伊達政宗の心臓を抉る軌道を飛んだ剣は、肉を裂く手応えなく地に突き立つ。
そして瞬きの間に二人の青年は飛び去って行った。
「――ふむ、逃がしたか。人間も中々やるものよ」
さして残念でもなさそうに呟き、ブラッドレイは隼の剣を回収・納刀した。
もう片方の稲妻の剣は政宗から奪ったために鞘がないので、抜き身で持ち歩くしかない。
嘆息し、眼帯を着け直す。
さて、これからどうするか。
【C-5 村 一日目 深夜】
【キング・ブラッドレイ@鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST】
【状態】疲労(小)
【装備】隼の剣@DQ2、稲妻の剣(鞘なし)@DQ2
【道具】基本支給品、ランダムアイテム(個数、内容ともに不明)
【思考】基本:『お父様』の元に帰還するため、勝ち残る。
1:とりあえず人を探す。
【備考】
※『最強の眼』を使用している間は徐々に疲労が増加。
※村の一区画が完全に破壊されています。
54
:
雷速剣舞/隻眼邂逅
◆WoLFzcfcE.
:2010/07/28(水) 23:19:58 ID:nR.rRfHY
◆
「イヤッハァッ! こいつはゴキゲンなvehicleだ!」
「おい、あまり暴れるな。操縦が難しいんだ」
見たこともない乗り物に気勢を上げる政宗と対照的に、亨の顔は真剣だった。
風を噴射して移動する特性上、ウェイバー本体はとても軽く作られていて小さな波でも簡単に舵を取られてしまうのだ。
亨はイナズマ能力を駆使して波の動きを読み取れるので操縦できるものの、かなり神経を使う作業だった。
やがてウェイバーは河を越え対岸に辿り着く。さすがにここまで来ればブラッドレイも追ってはこなかった。
二人は陸地へと降り立ち、ようやっと落ち着くことができた。
「助かったぜ、イナズマ。お前さんにゃあ借りを作ってばかりだな」
「いいさ、気にするな」
ともに死線を潜ったためか、政宗は亨を信頼し始めていた。
亨はといえば、逆に政宗やブラッドレイをあまりの戦闘力のために統和機構の合成人間ではないかと疑っていた。
そもそも名前が伊達政宗ときた。三日月を模した兜といい隻眼といい、史実どおりの独眼竜が現実に出てきたようだ。
そして懸念はもう一つ。
亨自身は大した戦闘行動をしていないのに、ずっしりとその身に疲労が残っていた。
イナズマ能力を使ったせいだろう。だが普段ならここまで重い疲れを感じることはないはずだった。
政宗の雷を生み出す力も気になる。詳しく情報を交換する必要があった。
(厄介なことになった、な)
夜空を見上げため息をつく。
皮肉なことに、輝く月はちょうど三日月の形だった。
【D-5 岸辺 一日目 深夜】
【伊達政宗@戦国BASARA】
【状態】疲労(中)、左脇腹に裂傷
【装備】黒竜@戦国BASARA
【道具】基本支給品、ランダムアイテム(個数、内容ともに不明)
【思考】基本:主催者の首を獲る。誰だろうと挑まれれば受けて立つ。
1:ブラッドレイを倒す。
2:イナズマにいずれ借りを返す。
【高代亨@ブギーポップシリーズ】
【状態】疲労(小)、能力の不調に違和感あり
【装備】稲妻の剣の鞘
【道具】基本支給品、ウェイバー@ONE PIECE
【思考】基本:戦う力のない者を守る。
1:伊達政宗の手当てをしつつ情報を交換する。
2:町や村を捜索し、殺し合いに乗らない参加者を探す(対象が強ければ別行動、弱ければ同行して守る)。
3:ブラッドレイを警戒。
【備考】
※『イナズマ』能力を使用している間は徐々に疲労が増加。
※今のところ本名を名乗るつもりはない。
55
:
雷速剣舞/隻眼邂逅
◆WoLFzcfcE.
:2010/07/28(水) 23:20:37 ID:nR.rRfHY
『イナズマ』能力について
生物・物体の気配が線として見える能力。物体の線を突けば破壊し、人体においては弱点となる。
その他、自身に向けられる攻撃のラインを知覚する・離れた場所にいる敵の気配を察知する、など応用範囲は幅広い。
高代亨は隻眼だがこの能力を使用するのに視覚は必要ないらしく、閉じた右目には向かい合う相手の急所のラインだけが見える。
・隼の剣@DQ2
非常に軽く、一動作で二度の攻撃が出来る剣。
・稲妻の剣@DQ2
道具として使えばバギの効果が得られる剣。
・黒竜@戦国BASARA
「竜の右目」片倉小十郎の刀。特殊な能力は無い。
・ウェイバー@ONE PIECE
噴風貝(ジェットダイアル)をセットした、宙に浮くスケートボードのようなもの。
機能は制限され浮かび上がる高さはせいぜい民家一件分。
56
:
◆WoLFzcfcE.
:2010/07/28(水) 23:21:52 ID:nR.rRfHY
投下終了です。
57
:
◆ClAmicNkI.
:2010/07/29(木) 04:54:46 ID:nX3P2l4c
小川健太郎、真宮寺さくらを投下します。
58
:
最強の聖剣
◆ClAmicNkI.
:2010/07/29(木) 04:55:35 ID:nX3P2l4c
「今度の世界はどこなんだろう……」
頭に光るちょーちん、肩にはひつじを装備した妙にキラキラ光る衣装の青年はそう呟いた。
最早世界を跨いで移動するのは何回目になるのであろうか。
「きっと今回もどうにかなるさ!でも早く帰らないと美樹ちゃん怒るだろうなぁ」
いつもなら彼女である美樹を救う為に世界間を移動していたが、今回ばかりはどうも違うらしい。
剣の持ち主を選定する為に剣士を集めたと、ロワと名乗る女性は言っていた。
ならば剣士どころか、危なっかしくて刃物も持たせられない美樹が召還される理由は無い。
そんな彼女が安全な場所にいるという安心感が、健太郎の心を落ち着かせていた。
「剣士といえば、きっとランスさんも召還されているに違いない。ランスさんはきっと元気なんだろうなー(非情に空気読めてない)」
奇しくも同時刻、ランスは錆白兵に返り討ちに遭い息絶えていたのだが、健太郎はそんな事知る由もなかった。
59
:
最強の聖剣
◆ClAmicNkI.
:2010/07/29(木) 04:56:06 ID:nX3P2l4c
「石さん、僕の愚痴を聞いて下さい。美樹ちゃんとのデートに行く途中この世界に無理矢理連れてこられたって愚痴を。えっ、いつもラブラブ一緒に逃避行という愛のらんでぶーしてるじゃないかって?だからこそ待ち合わせ場所を決めてそこで落ち合うってデートが愉しみだったんですよ!きっと今頃美樹ちゃんは寂しくてわんわん泣いてるに決まってます。下手すると怒って辺り一面を吹き飛ばしてるかも知れません。いや、流石にそれは帰る場所がなくなるから困る……いやいやかといって寂しがっていてくれないとそれはそれで複雑な気も……」
運命さえも手繰り寄せる本当の強さを持った剣士を選び出すという儀式。
ロワが言ったようにまるで『ゲーム』の様なファンタジー設定だ。
ゲーム好きで、過去になんどか『剣と魔法のファンタジー世界』に拉致られた経験もある健太郎は、美樹が安全である事もあり今回の事態にも心を浮かせていた。
「っと、ずっと僕ばかり愚痴を話していたね。お礼に石さんの悩みの相談を聞いてあげよう!」
陽気な健太郎が目の前の巨大な石に話しかける。
勿論石は何も話しかけてはこない。
健太郎自身も石の声が聞こえる能力がある訳でもない。
健太郎にどうして石なんかに話しかけるのかと問いかければ、こう答えが返って来るであろう――「話さないといけない気がしたからさ」と。
60
:
最強の聖剣
◆ClAmicNkI.
:2010/07/29(木) 04:56:49 ID:nX3P2l4c
◆ ◆ ◆
太正時代から召還された着物と袴を着こなした少女、真宮寺さくらは隠れながら相手の様子を窺っていた。
取りあえず遠くから見えたモニュメントを目標にこちらに来てみたのだが、近くまできてようやくその正体が理解できた。
縁があまりなくて気がつくのが遅れたが、とんでもなく巨大な西洋の墓である。
大きさは民家二件を縦に積んだ位の大きさであろうか。
巨大すぎて近づき過ぎても、巨大な石としか認識できないであろう墓の近くで、見るからに怪しげな格好をした青年が鼻歌交じりに穴を掘っていた。
墓の近くで穴を掘っているとなれば、それは墓穴であろう。
日本にも土葬という文化は深く根付いており、容易に想像する事ができた。
墓穴を掘っているという事は、誰かを埋めるという事である。
だが目の前の青年からはこれっぽっちも悲痛な感情が見えてこなかった。
つまりは――彼が人を殺してそれを隠蔽する為にわざわざ墓の近くに埋めようとしているのではないか。
「大神さん、勇気を分けてください……」
心の支え、愛する人の名前を呟き少女は腰に差している剣を握りしめた。
61
:
最強の聖剣
◆ClAmicNkI.
:2010/07/29(木) 04:58:04 ID:nX3P2l4c
「北辰一刀流真宮寺さくら。遅ればせながら、この島の平和を守る為参ります!!」
馬鹿正直に名前と流派を叫びながら少女は、青年に向かい駆けていく。
腰に差した一本の西洋刀の重さを確かめながら、居合いに好ましい位置に剣をもっていく。
西洋刀は本来ならばその重さと丈夫さを利点とし、日本刀とは異なり力任せに殴打し、鎧ごと破壊する事を目的とした武器である。
そんな事は両手で構えないと刃筋すら安定しない程の重量と、刃から柄の部分まで同じ一つの金属から鍛え上げられているという製造法からさくらでも推測できた。
しかし手元に武器はこれしかないのだ。
いつも愛用していた真宮寺家に代々伝わる家宝、霊剣荒鷹はこの場所にない。
ならば自分の持てる技を出し切り、この武器の特性を引き出すしかない。
つまりさくらが選んだ戦術それは――西洋刀の重量を利用し、遠心力を利用し相手を叩き斬るという事。
ステップは遠心力に引っ張られる剣とは反対の方向に踏みしめ、下段から一気に相手を斬り上げる。
さくらの名乗りで健太郎が振り向いた時には、もう西洋刀の刃が健太郎の目前まで迫っていた。
咄嗟に身体を後方に捻り、剣が描くであろう軌跡から脱出しようとした健太郎であったが、さくらの有する剣は物理法則を無視した動きで健太郎に追尾してきた。
62
:
最強の聖剣
◆ClAmicNkI.
:2010/07/29(木) 04:58:50 ID:nX3P2l4c
――しかし。
「いてっ!何で急に襲いかかってくるんですか!」
重さも速さも乗った一撃必殺の攻撃は、生身の身体によって跳ね返された。
手応えは十二分にあった。
しかし相手にはまるでダメージを与えられていない。
物理法則を無視した展開にしばし呆気に取られていたさくらであったが、とある事実にようやく気がついた。
「す、すいません。あたしてっきり……」
墓の周りに穴が複数個存在するが、死体が一つも無い事に。
「僕が無敵結界持ちだから良かったものの、普通の人だったら死んでたよ」
さくらの振るった剣が当たった場所をさすりながら健太郎は不満を漏らした。
健太郎からしてみればほんの一ダメージ程の痛みであったが、勘違いとはいえ急に襲われたという不満は募る。
「あの……、こんな事言えた立場ではないのでしょうけど、お墓の近くで楽しげに穴を掘ってる方も悪いと思います」
「だってこんな広い草原に一つだけって、お墓が寂しそうじゃないか。どのみちこれから沢山の人は死んでいくのだろうし、僕が穴を掘っておいてあげようと思ってね」
ほら一石二鳥じゃないか、と空気が読めない青年は微笑んだ。
63
:
最強の聖剣
◆ClAmicNkI.
:2010/07/29(木) 04:59:23 ID:nX3P2l4c
「お墓があるって事は、この島で既に人が死んでるって事なのでしょうか」
「大きいって事は沢山の人を一遍に埋葬する為の慰霊碑に近い物だったのかな」
別に殺し合いにのってる訳ではない事、いつものさくらの早とちりだった事をお互いに説明し合った二人は、目の前の大きな建造物を見上げていた。
「一杯死んでる、つまりこの島での殺し合いは私達が最初って訳でもなかったのですね」
「人が一杯埋まってるとしたら、お墓は一つでも寂しくなかったのか」
どこか話が噛み合わない二人であったが、お互いに悪い人ではないという事は理解できた。
「それにしても無敵結界って凄いのですね」
心配になって傷口を見せて貰ったが、既に痣にもなってない。
無敵結界――それは物理・魔法の種を問わず、またどれほど凶悪な破壊力であろうと、お構いなしに外部からの攻撃の一切を無効化するという反則的なバリアである。
同じく無敵結界を持つ魔王、魔人同士や神や神の同族である悪魔には結界が中和され無効化されたり、リミッターの外れた勇者やカオス、日光といったルールを超越した武器でも無効化されたりはするが、弱点はそれだけである。
64
:
最強の聖剣
◆ClAmicNkI.
:2010/07/29(木) 04:59:56 ID:nX3P2l4c
しかし健太郎は些細ではあるが重要な矛盾点を見落としていた。
無敵結界の弱点はそれだけである筈なのである。
しかし破邪の血統に属するさくらではあったが、悪魔でも魔王でも勇者でも神でもない歴とした一般人である。
そのさくらに些細とはいえど一ダメージ、確かに与えられたのだ。
物理・魔法の種を問わず、またどれほど凶悪な破壊力であろうと、お構いなしに外部からの攻撃の一切を無効化するという反則的なバリアをも超越する武器。
それは『通常攻撃が必中になり、与えるダメージは一になる』という幻の聖剣。
無敵結界も含めランスの世界は創造神ルドラサウムが全てのルールを管理していた。
だがそれ以外の世界のルールは別に存在したのである。
『何物をも無効化される』という概念と『必ず一ダメージ与える』という概念がぶつかり、後者の世界の概念が勝ったという事実。
即ち無敵結界を持っている魔人であろうとも、この世界では必ずしも不死ではないという事を。
――その最強の剣の名前は聖剣『エクスカリパー』。
65
:
最強の聖剣
◆ClAmicNkI.
:2010/07/29(木) 05:00:29 ID:nX3P2l4c
【G-7 巨大な墓の下 一日目 深夜】
【小川健太郎@ランスシリーズ】
【状態】一ダメージ程の怪我
【装備】支給品の刀@不明、スコップ
【道具】支給品一式 ランダムアイテム(一つはスコップ)
【思考】基本:なるようになるさ!
1:美樹ちゃんに怒られない内に帰りたい。
2:さくらちゃんはうっかり屋さんだけど悪い人じゃないみたい。
【真宮寺さくら@サクラ大戦】
【状態】健康
【装備】エクスカリパー@FFV
【道具】支給品一式 ランダムアイテム(個数も種類も不明)
【思考】基本:この島の平和は私が守る!
1:大神さん、私に力を!
2:健太郎さんは何を考えてるかわからないけど、悪い人じゃないみたい。
66
:
◆ClAmicNkI.
:2010/07/29(木) 05:01:03 ID:nX3P2l4c
投下終了です
67
:
◆iCbn790uw2
:2010/07/29(木) 17:59:29 ID:9xUhTCHY
セシリー・キャンベル、平賀才人、グリフィス投下します
68
:
無銘の剣
:2010/07/29(木) 18:02:53 ID:9xUhTCHY
セシリー・キャンベルの慰めに平賀才人はもう何度目かのため息に肩を落とす。
「はぁー、いくらなんでも間男はないよな」
「そう嘆くことはないぞ才人、人は己の間違いを認めてこそ成長出来るものだからな!」
サイトの肩を叩きセシリーが励ます。
グリフィスと式が立ち去り、森の中を歩く二人はここまで漫才コンビのようなやり取りを延々と繰り返していた。
そこに予想外の声が聞こえてきた。
「その通りだ」
「グリフィス!」
思わぬグリフィスの登場にセシリーと才人が身構える。
「先程は済まなかった」
だが、グリフィス姿を現すなり、深々と謝罪の言葉を口にする。
そのあまりに礼儀正しい姿勢には逆にセシリーが面を喰らってしまう。
「先の俺はこの状況に混乱していたのだ」
「そうだったのか、私の方こそ済まなかった」
「いや、俺こそ冷静を欠いていた」
色々な理由を付けては頭を下げるグリフィスに負けじとセシリーも頭を下げる。
これこそが非を認めた騎士の正しい姿。
そう言わんばかりの様子はもはや謝罪の応酬合戦、これは放って置けばいつまで続くのか解らない。
そんな二人の様子、特に先程とは180度方向転換したようなグリフィスの態度に才人は居心地の悪さを感じてしまう。
才人はその胸の悪さを確かめるように疑問を口にした。
「なあ−−さっきのあんたは何であんなに殺気だっていたんだ?」
「それはガッツがここにいるからだ」
「その名前はグリフィスが始めに口にしたな、私はてっきり親友の名前だと思ったのだが、違うのか?」
「ああ−−ガッツは親友だった、だがあの男は俺や仲間を裏切った。あの時に感じた絶望感は計り知れないものだったよ」
69
:
手を取り合って
◆iCbn790uw2
:2010/07/29(木) 18:05:51 ID:9xUhTCHY
ガッツの名前を口にするや、複雑な感情が絡みあっているのか。
グリフィスの目線が辛そうに宙をさ迷う。
「あんたはその男を見つけたら殺すのか?」
「それはいけないぞグリフィス、殺すのはダメだ!」
「そんなつもりはない、俺はガッツにもう一度俺達の仲間に戻ってもらいたいだけだ。ガッツは−−何者にも変えがたい本当に大切な親友だったのだから」
拳を握り、ガッツへの想いを語るグリフィスの瞳は一切の嘘偽りが無く、断固たる意思を秘めていた。
その真実の表情に、どこかグリフィスを信用していなかった才人は自分を恥じながら、先程セシリーが語った言葉を思い出す。
人は己の間違いを認めてこそ成長出来る。
だからこそグリフィスは素直に謝罪の言葉を告げながら姿を現したのだ。
「そうだったのか、実は俺−−あんたの事を疑ってたんだ。ほら、最初に見たあんたは今にも切り掛かりそうなくらいギラついた眼をしていたからな」
「無理もない、事実そこにいるセシリー嬢に切り掛かりていたのだから、俺がお前でもそう思うさ」
グリフィスが柔和な表情で右手を差し出してくる。
才人はその手を握り。
「そういえば、あんたとは自己紹介が済んでいなかったな。俺は才人、平賀才人だ」
「改めて名乗ろう、グリフィスだ」
「それならば私だけ名乗らない訳にはいかないだろう、セシリー・キャンベルだ!」
殺し合いの島で笑みを漏らす、才人、グリフィス、セシリー。
異世界から集まった三人の騎士はここで堅く拳を重ねる。
その様子はまるで彼らが旧知の仲間であるかのようだった。
70
:
手を取り合って
◆iCbn790uw2
:2010/07/29(木) 18:08:21 ID:9xUhTCHY
しばらくして、お互いの信頼を確信したグリフィスがばつの悪い表情をする。
「セシリー、こんな事を俺が今更頼むのは都合のいい話かもしれない。だが、もしも力を貸して貰えるのなら。ガッツを捜すのに協力してくれないか?」
「グリフィス、私は最初に言ったはずだろう。一緒に探索に協力しても構わないとな!それに私にも親友がいる、グリフィスの気持ちは痛いほどよくわかる!」
セシリー軽く胸を叩き、うんうんと何度も頷く。
そんなセシリーの姿に男である才人が負けるわけにはいかないとばかりに。
「しょうがねーな、これで俺だけが協力しないなんて言えるかよ。俺も協力するぜグリフィス!」
「セシリー、才人、すまない!」
「なーに、どうせ俺はやる事もなかったからな。これだけ広い島なんだ、一人で捜すのは大変だろ!」
「ああ、私も人助けをするのは騎士の務めだからな!」
「そうなると、どこから捜すのか決めないといけないな」
71
:
手を取り合って
◆iCbn790uw2
:2010/07/29(木) 18:13:38 ID:9xUhTCHY
才人はさっそく島の地図を取り出して二人の前に拡げる。
セシリーが地図を覗き込み街や村を指さす。
「やはり人を捜すなら街からだろうな、お前もそう思うだろ、グリフィス」
セシリーはガッツを捜す為の行き先を決めようとグリフィスに同意を求めて振り返る。
ザクッ。
「え?」
おもわずそんな言葉が漏れてしまい、セシリーは間の抜けたような自分の声に驚く。
次に襲ってきたものは胸を貫く焼けるような熱い痛みだった。
セシリーが最後に見た光景は、無表情のまま冷たい鋼をセシリーの胸に突き刺したグリフィスの姿。
「セシリー、グリフィス、何して−−」
背後の気配に顔を上げようとした才人に、突然セシリーが覆いかぶさってきた。
「なにをふざけてるんだよ、セシ…リー?」
鼻をつく鉄臭さと衣服を濡らした赤い液体に異常を感じた才人はセシリーの体に構わずその場から逃れる。
ザクッ。
才人の背中を熱い痛みが駆け抜ける。
余りの衝撃に体が混乱をきたし、呼吸が出来ない。
眼前にはいつの間にかセシリーの持っていた剣を斜め上に構えたグリフィスが立っていた。
「どうして、グリフィ…」
言葉が終わる前に脳天へと打ち込まれた一撃でなぜ自分が殺されるのかも解らず才人は絶命する。
「言っただろう、ガッツを捜すために協力して欲しいと。それには他の人間は邪魔でしかない」
真っ二つに割れたの才人の頭蓋を見たグリフィスはセシリーの遺体から即座に奪った剣の切れ味に驚嘆する。
「やはりこの剣は素晴らしいな、最初に戦わなければ気付けずにいた。感謝するよセシリー」
72
:
手を取り合って
◆iCbn790uw2
:2010/07/29(木) 18:15:39 ID:9xUhTCHY
グリフィスの目的は最初からセシリーの持つ武器にあった。
そしてグリフィスが語ったガッツの話は嘘偽りのない真実、だからこそ二人は油断してしまったのだ。
多少の紆余曲折はあった、だが結論から見ればセシリーの存在は至高の剣をグリフィスに届けるために。
才人はセシリーの油断を誘う為に在ったのだろう。
そう、グリフィスを取り巻く運命は見ず知らずのうちに光の鷹を勝利へと導く。
セシリーと才人の支給品を回収すると、ガッツを取り戻しすべての栄光を掴むために。
約束された勝利の剣を抱え、グリフィスは夢の続きに向かって森の出口へと歩き出す。
【セシリー・キャンベル@聖剣の刀鍛冶 死亡】
【平賀才人@ゼロの使い魔 死亡】
73
:
手を取り合って
◆iCbn790uw2
:2010/07/29(木) 18:16:44 ID:9xUhTCHY
【F-5 草原 一日目 深夜】
【グリフィス@ベルセルク】
【状態】健康
【装備】エクスカリバー@Fate/stay night
【道具】支給品×3、ロングソード@ファイナルファンタジーⅤ、才人が所有していた剣(不明)ランダムアイテム×3
【思考】基本:ガッツを俺の物にする。
1:ガッツを見つける。
2:ガッツと闘い、倒して俺の物にする。
[備考]
登場時期は12巻〜13巻辺りでガッツに敗北〜拷問される直前のどこか。
74
:
◆iCbn790uw2
:2010/07/29(木) 18:18:04 ID:9xUhTCHY
投下終了です、代理投下願います。
75
:
◆DzuK1MKXmE
:2010/07/29(木) 22:31:15 ID:j/3RMDCM
こんばんは、昨夜は代理投下してくださったお二方、並びにWIKI収録どうもありがとうございました。
今後ともお世話になるかと思いますのでよろしくお願いします。
76
:
◆Bn4ZklkrUA
:2010/07/30(金) 00:19:40 ID:tUba4szQ
こんばんは
修正案ですがノヴァの持ち物を白楼剣は消して楼観剣と魔法使いのローブだけにしました。
変更したので変更部分の修正案を投下します
相手は外套の上から身に付けてるデイバッグに右手を突っ込み、一ふりの刀を取り出す。
そして左手に先程の光の剣を産み出し二刀流の構えを取る。
右手の長刀の方は支給品なのだろう。その長刀は妖夢にとって見覚えのある……。
「なっ! その刀は!」
そう、それはここで取り上げられた彼女の愛刀、楼観剣。参加者に配られた可能性は考慮はしていたが
まさかこの時、敵対している相手が持っているなんて…!
そして彼女の名乗りは続く。
「この魔法騎士『獅堂 光』にはね!」
まるでましらの様に一足飛びで間合いを詰める。想像以上のジャンプ力から繰り出される頭上からの一撃。
だが妖夢は半ば転ぶ様にしてそれを避ける。だが『獅堂 光』もすかさず追撃をかける。
二刀を巧みに使い、連続攻撃をかける『獅堂 光』。
それを時にはかわし、時にはひのきの棒で受け流そうとする妖夢。
「その刀を返せっ! その刀は私の物だっ!!」
「アハハハハハ、返して欲しければ取り返してみればいい! あんたに出来たらの話だけどねっ!」
更に激しく攻撃を繰り返す。なぜなら妖夢は完全に攻撃をかわし切れず、ひのきの棒で受け流そうとする。
だがその棒も相手の斬撃に耐え切れずに何時折れても不思議でないほどボロボロになり始めている。
「あはっ、あんたの武器はそんな棒きれなんだ。可哀そうにね。くすくすっ」
「黙れ!!」
だが実力は伯仲。いや、疲労していなければ結果は違ってたかもしれないが今の妖夢にはこれが限界。
普段から何十年も修行を積んだ妖夢だからこそ疲労しつつも相手の攻撃をかわせていたが相手の身体能力も並ではなかった。
そして『獅堂 光』は止めとばかりに振りかぶり二刀による同時交差攻撃。
かわせないと思い至り、棒を使い凌ぐ妖夢。それすら辛うじて受け流し距離を取るが…そのひのきの棒は半ばで切断されていた。
終わったとばかりに嘲笑を深める『獅堂 光』。
「ふふっ、そろそろ終わりだね。じゃあ……終わりにしてあげるっ!」
今度こそ相手を両断すべくダッシュで距離を詰めようと……する途中で相手の行動に疑問を抱く。
(おかしい。あいつ、まったく慌ててない。何で?)
棒が折れたというのにまったく慌てずに棒の残りをまるで刀の柄に見立てるように握りしめ振りかぶり……。
それを見た瞬間、慌てて後ろに飛び退るのと妖夢が腕を振り下ろしたのがほぼ同時。
折れたひのきの棒の先から鱗形の弾幕の雨が撒き散らされる。
「くッ!」
後方に飛び退り着地、その勢いを殺さないまま連続バク転を繰り返して慌てて弾幕をかわす。
弾幕の射程から大きく距離を取った『獅堂 光』は体勢を立て直すと忌々しげに妖夢を睨み返す。
妖夢も無事に弾幕を出せたことに内心ほっとしつつも油断なく構え直す。
しばらくお互いが睨み合い、膠着状態に陥っていたが……急に『獅堂 光』は表情を和らげ……
「あんた、思ったより強いんだ。それなりに面白かったよ。じゃあね」
そう言い据えると踵を返してとっとと逃走を開始する。
「待てっ!」
ここまでコケにされた挙句、愛刀の持ち逃げまでされたら堪らないとばかりにその背中に弾幕をぶつけようとする。
だが放たれた弾幕はある一定の距離まで放たれた後、相手の背中にぶつかる前に掻き消えてしまった。
それを見て妖夢は顔を歪める。すかさず追おうとして……諦めた。さすがに放され過ぎたと思ったからだ。
(おのれっ!、私の楼観剣をっ!! だが今からではもう間に合わない。それに私も疲労している。
一度休息してから追うべきか……だが、貴様の顔は覚えたぞっ!
その首洗って待ってるがいい……獅堂 光!!)
77
:
◆Bn4ZklkrUA
:2010/07/30(金) 00:20:41 ID:tUba4szQ
それとノヴァの状態表も変更しました
【C-8 遺跡付近 一日目 深夜】
【ノヴァ@魔法騎士レイアース】
【状態】 健康、疲労(小)
【装備】 楼観剣@東方Project、魔法使いのローブ@ドラゴンクエストⅡ
【道具】 基本支給品
【思考】
基本: ヒカルといっぱい遊びたい
1: まずはヒカルが困りそうなことをいっぱいする。方法は何でもいい
2: ヒカルの心の揺らぎをいっぱい感じたいのに……
3: ヒカルはすぐに見つからなくてもいいが、近くにいると知ったら……
4: 他の参加者をどうするかはその時の気分次第
[備考]
※参戦時期は光と和解して同化する前です。
※ここにいる獅堂光が同次元のヒカルだと思っています
ヒカルの存在や心のうねりを感じる事ができないのは制限のせいだと思っています
※光の剣を作る事は出来ます。『炎の矢』などの魔法は不明です
※魔法使いのローブ@ドラゴンクエストⅡは主人公らの装備品ではなくモンスターの魔法使いの方のローブです
顔の部分が影になってて目だけ映ってたアレ。何故妖夢が顔を確認できたかは至近距離だったからか美少女補正か…
78
:
◆Ops2L0916M
:2010/07/31(土) 00:19:47 ID:XZNvGem6
【G-6 森林/一日目/深夜】
【神裂火織@とある魔術の禁書目録】
【状態】疲労(小) 、全身に軽い打撲
【装備】秋水@ONE PIECE
【道具】支給品 ランダムアイテム
【思考】基本:この殺し合いで優勝する
1: 一刻も早く優勝して元の世界に帰る
※参戦時期は小説の一巻の上条戦後です。
【F-6 森林/一日目/深夜】
【サマルトリアの王子@ドラゴンクエストⅡ 】
【状態】疲労(小)
【装備】ダマスクスソード@テイルズオブファンタジア
【道具】支給品 ランダムアイテム
【思考】基本:ロランを捜す
1:海(名前は知らない)についていく
2:戦いはできるだけ避けるか適当にあしらう。どうしてもという時だけ戦う。
【龍咲 海@魔法騎士レイアース】
【状態】疲労(大) 魔力消費(大)
【装備】無し
【道具】支給品 ランダムアイテム
【思考】基本:光と風を捜す
1:サトリ(名前は知らない)を連れてロラン(名前は知らない)の所に戻る
2:身を守る剣が欲しい
79
:
◆Ops2L0916M
:2010/07/31(土) 00:20:34 ID:XZNvGem6
最後だけさるった……これで投下終了です。どなたか転載お願いします
80
:
勇者、たつ!
◆srgp..gN4g
:2010/07/31(土) 15:58:05 ID:w3ijl.aQ
ニケ投下します
81
:
勇者、たつ!
◆srgp..gN4g
:2010/07/31(土) 15:59:43 ID:w3ijl.aQ
「おおぉ…! これは……!」
一人の少年が鼻の下を伸ばしていた。
これでもかという程に伸ばしていた。
彼の名はニケ。
どこにでもいる、極々普通の勇者様だ。
わけの分からないまま殺し合いに参加させられたニケは、まず支給品の確認をした。
しかし箱を(鞄を)開けてビックリ。
そこには、際どいポージングをした女性が表紙を飾っている本が入っていたのである。
……いわゆるエロ本だった。
最初はニケも戸惑った。
自分のような純粋で汚れのない子供が、大人の世界に足を踏み入れていいわけがない。
それに、エロ本とお酒とタバコは二十歳になってから、とニケは心に決めていた。
……だが、『押すなよ!』と言われれば押したくなってしまうのが人間なのだ。
ダメ、絶対。と言われると逆にやりたくなってしまうのが人間の性だ。
結局、ニケは見てしまった。
だって仕方ないじゃない、人間なんだもの。
「………ふぅ」
どれだけ時間が経っただろうか。
エロ本を眺めていたニケが、パタンと本を閉じ唐突に立ち上がった。
ちなみに、やましい事はまだ何もしていない。
「少年漫画の主人公にこんなモノ支給するなーーーー!!!!」
そして、エロ本を片手に持って振り上げ地面に叩きつけた。
ツッコミである。
辺り一帯に響き渡る程の大きな大きなツッコミである。
「はあっ…はあっ……ったく、あのロワとかいうねーちゃんは何考えてんだ!
清楚で優しそうなねーちゃんだなーとか思って見惚れてた結果がこれだよ!
こんなもん役に立たないだろ常識的に考えて!」
その他にも色々と文句を言いながら、エロ本に背を向けるようにしてニケはどかっと腰を下ろした。
深呼吸をして気分を落ち着かせる。
今はふざけてる場合ではない。
状況を整理しなければならない。
82
:
勇者、たつ!
◆srgp..gN4g
:2010/07/31(土) 16:01:28 ID:w3ijl.aQ
「殺し合いか……。はぁ……ククリと旅をしてる途中だったのになー。
今ごろアイツ慌ててるだろうな」
魔王ギリを封印してから約一年。
ニケはククリとパーティを組み旅をしていたはずだった。
それなのにいつの間にかこのような殺し合いに参加させられてしまっていた。
突然のニケの失踪に、今ごろククリは慌てふためいているに違いない。
「あのねーちゃんは剣士を集めたって言ってたからな。
ククリもジュジュもオヤジもたぶんいないだろ。なら、急いで帰らねーとな…」
殺し合いに乗るつもりはない。
人を殺してまで自らの望みを叶えたいとは思わないからだ。
ニケの当面の目標は、この殺し合いから脱出することだ。
なんとしてでもオヤジやジュジュ、そしてククリが待つ元の世界に帰らなければならない。
先ほどから誰か一人忘れている気がするが、きっと気のせいだろう。
「そのためにはまず仲間を作らないとな。オレ一人じゃ脱出手段なんて思いつきそうもないし」
殺し合いに乗った奴に襲われた時のことも考えると、やはり頼れる仲間がほしい。
そう思ったニケは、早速仲間を探しに行こうとしたのだが、すぐに足を止めた。
「って、そうだ。まだ道具を確認し終えてないぞ。武器はないのか武器は」
最初に出てきた物のインパクトが強すぎたせいで、他の道具を確認するのを忘れていた。
まさか、支給品がエロ本のみなわけがないだろう。
これから仲間を探して歩き回らなければならない。
となると、最低でも自分の身を守れるだけの武器がほしかった。
「できれば扱いやすい小振りの剣がいいんだけどな。
でもまあ、武器があればよしとするか。背に腹は代えられねーし」
とか言いつつも、心の中では短剣が支給されてることを願いながらニケは鞄を漁った。
83
:
勇者、たつ!
◆srgp..gN4g
:2010/07/31(土) 16:04:05 ID:w3ijl.aQ
「うおっ!? 重……いや長えよ!!」
ニケに支給されたのは短剣ではなく、2メートルほどの黒い長刀だった。
思わずツッコんでしまう。
『夜』
世界最強の剣士ミホークが愛用していた最上大業物の黒刀である。
先端へと少しずつ反り返っていく刀身をもったその刀は、見ようによっては十字架のようにも見える。
自分の身長よりも長い刀をニケはなんとか構えてみせた。
だが足元は覚束なく腕もプルプルと震えている。
「ふ、振れねーぞ……」
重量はそれほどではないのだが、あまりに長すぎてニケにはその刀を振るうことができなかった。
ましてや、この刀を持ったまま動き回ることなどできそうにもない。
屈強は戦士ならこの刀を使いこなすことができるのだろうが、ニケにとってこの刀は文字どおり無用の長物だ。
体が小さく桁外れの筋力があるわけではないニケにとっては最悪といってよいだろう。
素早さという盗賊のメリットがなくなってしまうため、ニケは刀をしまった。
2メートルを超す刀が鞄の中に入っていく様が冗談にしか見えなかったが、あえてそこにはツッコまない。
大人の事情というものがあるのだろう。
版権キャラの件も然り。
「オヤジなら……いや、やめとこう」
キタキタ親父がこの刀を尻に挟んで戦うという気持ちの悪い想像をしてしまった自分を嫌悪した。
彼なら本当にやってしまいそうなのが怖い。
「!! 待てよ、まさかオヤジも呼ばれてるのか!? 剣士じゃないけど盗賊のオレも呼ばれてるしな…もしかしたら……
ってか盗賊呼ぶって人選ミスだろ!!」
心細さを隠すように、ニケはツッコミを続ける。
内心では、ニケも怖がっているのだ。
世界を救った勇者であるとはいえ、ニケはまだまだ子供だ。
これからどうなるのか不安で不安で仕方がない。
虚勢を張っていなければ、心が圧し潰されそうだった。
84
:
勇者、たつ!
◆srgp..gN4g
:2010/07/31(土) 16:05:37 ID:w3ijl.aQ
「……でも、そんな事言ってられねーよな」
使える武器も防具もない。
装備は貧弱……というか何もないけれど。
それでも、ビクビクと怯えて何もしないのは嫌だ。
今自分にできる事を精一杯やりたい。
そう思ったニケは辺りを見回し、あるモノに目を向けた。
「そうだ! これも、こうすれば使えるんじゃないか!?」
そう言ってニケが手に取ったのは、先ほど投げ捨てたエロ本だ。
するとニケは、それを服の中に忍び込ませる。
何ということでしょう。
全く使い道がないと思っていたエロ本は、即席の防具へと早変わりしてしまいました。
「わりと厚さがあったからな。これで少しは安心だろ」
これなら、腹部へのダメージを少しは減らせそうではある。
こうして、刀を鞄にしまいエロ本を装備した奇妙な勇者が誕生した。
【C-4/川沿いの平原/一日目/深夜】
【ニケ@魔法陣グルグル】
【状態】健康
【装備】スケベ本@テイルズオブファンタジア
【道具】基本支給品、夜@ONE PIECE
【思考】基本:この殺し合いから脱出したい。
1:頼れる仲間をみつける。どこへ向かうかは次の書き手さんに任せます。
※参戦時期は魔王ギリを封印し、ククリと旅を始めてから1年経った頃。レベルも上がっている。
『夜@ONE PIECE』
ミホークが使っていた黒い長刀。
ミホークの身長が198センチで、それより長いので2メートルちょいの長さがあると思われる。
『スケベ本@テイルズオブファンタジア』
内容はその名の通り。
大した防御力はないかもしれない。
85
:
◆srgp..gN4g
:2010/07/31(土) 16:07:22 ID:w3ijl.aQ
投下終了です
>>80
の名前欄ミスってしまいました。SSの一部ではありません
どなたか、代理投下していただけたら幸いです
86
:
◆oOOla1DQxY
:2010/08/01(日) 00:02:57 ID:CITL./vA
遅くなってすみません……
これより風、クレス、ブルック 投下します
87
:
◆oOOla1DQxY
:2010/08/01(日) 00:04:02 ID:CITL./vA
市街地と城を取り囲むようにそびえ立つ外壁のそばで、少女が一人うずくまっていた。
年の頃は十代前半といったところだろうか。その表情は硬く、ひどく青ざめている。
「う、……っ」
この場所に飛ばされる直前の惨劇を思い出し、少女──鳳凰寺風は思わず口元を右の手で押さえた。
人が、死んだ。それもあっけなく、残酷に。
あの時少女は不幸にも集団の前方におり、事の一部始終を鮮明に見てしまっていたのだ。
「光さん……海、さん……」
初めにいた場所からここに転移させられる直前のこと。ほんの一瞬ではあったが、風は異世界セフィーロで心を通わせあった親友2人の姿を確認している。
それなのに、ロワと名乗った女性はあろうことか最後の一人になるまで殺しあえと言い放ったのである。
人を殺す事なんてできない。まして…………
──ん〜んん〜〜、ん〜んん〜ん〜 ♪
不意に聞こえた何者かの声にはっとし、風は身を固くした。
(もしもあの声の持ち主が殺し合いに乗っているような方だったら……)
深夜で視認がしづらいとはいえ、見通しがいい道路沿いにいるのだ。さらに声は市街地の方から聞こえており、建物の影に隠れようにもそこへ移動するまでに気付かれてしまう可能性が高い。
どうすれば、と半ばパニックを起こしかけそうになる心を奮い起こし、己のすぐ傍に置かれていたデイパックを探りだす。
あの女性によって『説明』されたルールによれば、最低でも一つは武器──剣が入っているはず。何が起こるか分からない以上、警戒するべきだと判断したのだ。
こうしている間にも謎の声……もとい鼻唄は近づいてきている。少女の緊張は否応なしに高まっていった。
(剣は魔法騎士としての私のものしか扱ったことがないけれど……)
そして取り出したのは、両手でも片手でも使用できることから片手半剣とも呼ばれる全長120センチほどの西洋剣、バスタード・ソード。
(っ、重たい……)
その平均的な重さは約2,2キログラム。大の大人ならともかく年頃の少女が扱うには少々荷が過ぎる代物である。
(でも、やるしかない)
しかし短い間ながらも慣れ親しんだ形状の剣でよかった、と頭の片隅で風は思った。
剣先を地面につけるようにして構え──長時間持ち上げて構えることは少女の細腕には厳しかった──、ぼんやりとだがこちらへと歩いてきているらしい人影をその視界に収める。
(光さん、海さん……私に、力を貸して!)
逃げる事も隠れる事もできないのなら、迎え撃つのみ。先手必勝、と風は声を張り上げた。
「そこにいるのはどなたですか!!」
──ん〜んん〜〜、ん〜んん〜……ん?
どうやら鼻唄の主はこちらが声を張り上げるまで気付いていなかったようだ。人影は歩みを止めると、その頭を少女のいる方向へと向ける。
その影が黒ずくめの格好をしているからだろうか、それとも月明かりのいたずらか。やけに白い顔の人物もいたものだ、と風はぼんやりと考えた。
──確かこっちから声が聞こえたような……
(……え、)
事実は小説よりも奇なり。人影がだんだん近づいてくるにくれ、風は昔の格言を思い知る事となった。
背格好からして男なのだろう。それはいい。黒いスーツにアフロヘア、シルクハットが意外と似合っている。これも問題ない。
「……おお! 貴女のようなお嬢さんと出会えるなんて、私はなんと幸せなのだろう!! ……おっと失礼、自己紹介がまだでした。“死んで骨だけ”ブルックです!!」
(導師クレフ、こんなことって……こんなことってあるのでしょうか?)
剣を取り落として取り乱すなどという失態を犯さなかった事に少女は自分を誉めたくなった。とはいえ、その胸中は異世界での恩師に思わず問い掛けてしまう程度には混乱していたのだが。
「あ、そうだ。一つお願いしたいことがあるのですが……」
セフィーロというファンタジー世界での経験をもってしても、はたしてこのような事が起こりうるなど想像できただろうか。
「パンツ見せて貰ってもよろしいですか?」
(開口一番にセクハラ発言をする、アフロを生やした動くガイコツが存在するなんて……っ!!!)
直後、風は剣を置いて己のデイパックをむんずと掴むと、手にしたそれを緊張の反動やら羞恥その他諸々の感情の赴くままにブルックの顔へ叩き付けるという、普段の彼女からはとても考えられない行動を取ったことを付け加えておく。
88
:
◆oOOla1DQxY
:2010/08/01(日) 00:05:11 ID:CITL./vA
「それでは、この場所にブルックさんのお知り合いはいらっしゃらないのですね」
「ええ。この場に連れて来られてもおかしくない者には一名ほど心当たりがありますが、少なくともあの場所で見かける事はありませんでした。って私、目ないんですけどー!」
「は、はぁ……」
あれから数分後、そこには仲良く情報交換をしあっている二人の姿が!(某番組ナレーション風)
「ところでフウさん、貴女はこれからどうするおつもりなんです?」
「私は……。先程申し上げた通り、私は殺し合いなどしたくありません。光さんや海さんと一緒に、無事に東京へ帰りたい。今思い浮かぶのはそれだけです。
……ただ、もう二度とあんな悲しい出来事が起きてはいけない。それだけは確かですわ」
「……あの騎士のような、ですか」
「……はい」
始まりの場所で無惨にも命を奪われた、フレンと呼ばれた騎士らしき青年。しかし風の脳裏に浮かんでいたのは何も彼だけではなかった。
(エメロード姫……)
ザガートを倒したことで無事東京へ帰れる。そう思っていた魔法騎士たちを待ち受けていたのは、その称号を持つ者の真の使命であった。
世界の平穏のみを願わなければならない身でありながら一人の男を愛する事を知ってしまった『柱』を殺さなければ、風たち三人は東京へ帰る事が叶わなかったのである。
誰かの願いや幸せのために他の誰かが犠牲になるということ。それは魔法騎士たちの心に深い傷を残し、よって風にはどうしても受け入れる事が出来なかったのだ。
「そうですか……。出来ることなら私もご一緒してヒカルさんやウミさんを捜してさしあげたい! ですが、あいにくと私にはせねばならない事がありまして。……申し訳ありません」
「いいえ、そんな! そのお心遣いだけでとても嬉しいですわ」
「そう言っていただけると助かります。では、私はこの辺で。……あ、そうだ。ここで会ったのも何かの縁! これを貴女にお贈りしましょう!!」
そういって立ち上がったブルックは、自身のデイパックから手のひら大の何かを取り出すと風に手渡した。
「これは……ぬいぐるみ?」
「ヨホホホ、私が持っていても不気味なだけでしょう? その人形だって貴女のようなお嬢さんに持ってもらう方が嬉しいでしょうし、ね」
可愛らしくデフォルメされた、赤いマントとバンダナを身につけた少年の姿をしたそれはどうやら誰かの手作りのようだった。
「それじゃあ、ありがたく頂戴いたしますね。……そうですわ! 私だけが頂くのも何なので、少しだけ待って頂けますか?」
そう言うと、風はブルックに背を向け己のデイパックを漁り始めた。
(暗くてよく見えませんね……)
微かな月明かりではよく見えず、目当ての物を取り出すのに苦労している時だった。
──そこの女の子、危ない!!
(え?)
後ろにいるブルックのものでも、まして自分のものでもない声が少し離れた場所から聞こえたかと思うと、
──鳳凰っ
突然、周囲がかがり火を焚いたかのように明るくなる。
「天駆!!」
どこからか現れた火の鳥はそれまで暗闇に慣れていた少女の目をくらませるには充分過ぎた。
(いったい何が?!)
直視はしていなかった分、ものの数秒で視界が戻ってきたのは幸いだった。そしてそこに映った己を守るように刀を構える何者かの後ろ姿に、風は驚きを隠せなかった。
それもその筈。デフォルメとリアルの差こそあれ、その人物はつい先程ブルックから貰った人形と全く同じ姿形だったのだから。
89
:
◆oOOla1DQxY
:2010/08/01(日) 00:06:22 ID:CITL./vA
その光景をクレス・アルベインが見たのは偶然だった。
しゃがみ込んで何かをしているらしき少女の後ろに黒ずくめの人物──恐らくは男だろう──が立っている。
(何かイヤな予感がする)
宿敵ダオスを倒すための旅で培われた戦士としての勘だったのか、あるいは俗に言う『虫の知らせ』だったのか。それを見た時、胸の内に何か引っかかるものを感じ取った。
そして何かを握りしめている男の左手が血の通った人間のそれではない事に気付くと、クレスは二人目掛けて走り出した。
その間にも男の腕は動き、手にしている何かを胸元で水平に構えている。それに少女が気付いている様子はない。
このままだと少女が危ないが、少年と二人の間にはまだ距離がある。時間がなかった。
魔神剣で牽制? 剣圧が向こうへ届く頃には手遅れになっているだろう。
空間翔転移で直接叩くか? 発動までには一呼吸以上の時間が必要、論外だ。
(どうか間に合ってくれ……っ!)
「そこの女の子、危ない!!」
ならば向こうの意識をこちらに向けさせることで時間を稼ぐ、これしかない。それにあの技を使えば移動しつつ攻撃も行える。
「鳳凰っ」
予め身につけていた刀を鞘から抜いて大地を蹴り、跳び上がる。少女を助けるという想いを剣気に変え、さらに炎に変えて全身に纏う。
「天駆!!」
そして刀を突き出し、そのまま滑空しながら急降下。名に冠する火の鳥の如き一撃はしかし男を捕らえる事はなかった。男が少年の想像していた以上に身軽な動きで後ろへ跳び退いたからである。
しかし少女から引き離すことには成功している。ひとまずはそれで良しとし、クレスは相対する者を注意深く観察した。
(服を身につけたスケルトン、あるいはドラゴントゥース……どうしてここにモンスターが?)
しかしその疑問はすぐに解消する。首もとを覆っているスカーフの影から、自分達のそれより小振りな首輪が頸骨にはめられているのが見えたからだ。
(つまり、こいつも僕らと同じ参加者。それも、ロワの説明が確かなら剣士ってことになる……)
考えてみれば不可解な点があった。もしモンスターならば問答無用で襲いかかって来るはず、いかな少女とて無防備に背中をさらしたりはしないだろう、と。
現に目の前の骸骨はそんなそぶりを見せもせず鞘に収まったままの得物を左手に持ち、静かにこちらの様子をうかがっているのみ。
「……一つだけ答えて欲しい。お前は『ゲームに乗って』いるのか?」
だからこそクレスは口を開いた。目の前に立つ人にあらざる者が取った行動の真意を問うために。
「待って下さい、その方は……ブルックさんは危険な方ではありません!」
風は声を荒げた。
確かにブルックは魔物と間違われてもおかしくない外見をしている。目の前の少年はきっと、自分が襲われていたと勘違いをしているのだろうと考えた故の言動である。
「でも僕は確かに見たんだ。しゃがみ込んで何かをしている君の背に、手にしている剣を突き立てようとしていたところを」
「え……?」
思わずブルックを見上げる風。まだ名も知らぬ少年剣士が警戒の構えをゆるめる様子はなく、当のブルック本人は沈黙を貫いていた。
「……お答えする前に、貴方の名前をお聞かせ願えませんか」
「……クレス。クレス・アルベイン」
そのまま数秒は経っただろうか。沈黙を破ったのは問い掛けられた骸骨剣士。
「クレスさん、ですか……。貴方の仰る通りです。確かに私はそちらのお嬢さん……フウさんの命を奪うため、この剣を構えていました」
90
:
◆oOOla1DQxY
:2010/08/01(日) 00:07:55 ID:CITL./vA
「そんな、ブルックさん……っ」
「っ……。それが、お前の答えなんだな? ブルック」
(どうして)
頭が思うように働かない、声を出す事が出来ない。足の力が抜け、そのまま舗装道路に座り込む。この時、風の心は衝撃と悲しみで白く塗りつぶされていた。
「フウさん。貴女を騙していた私が言うのもおこがましいですが、私を恨んでくださって構いません。……まことに申し訳ありませんが、あなた方には死んでいただきます」
ブルックが剣を抜いて構えるのにあわせ、クレスと名乗った少年も刀を正眼に構え直す。
「……どう、して」
そして少女の呟きを皮切りに、相対する剣士は同時に地を蹴った。
ギィン!!
「どうして殺し合いに乗るんだ! ロワと名乗ったあの女の言う事を信じているとでも!?」
「私には何としてでも果たさねばならない『約束』がある! そのためには生きてここを出なければならないのです!!」
ぶつかり合うこと、一合。ブルックが持つ竜牙兵の名を持つ直剣とクレスが持つニバンボシという銘の刀がぎりぎりと鍔競りあう。
「ならッ、どうして立ち向かおうと思わない!? みんなが助かる道を考えようとしないんだ!?」
膠着状態が続く中、クレスはあることに気が付いていた。剣士の魂ともいえる剣同士が触れあっている今、その違和感をはっきりと感じ取る事ができたのだ。
(口では殺すと言っていた割に殺気があまり感じられない……? いや、これは殺気というよりもむしろ……)
「死合いの最中だというのに考え事とは、とんだ余裕の持ち主ですね……ッ!!」
(ッ! しまった!!)
キイィッ!!
それは剣士として致命的な隙。想像以上の力で刀を押し払われてバランスを崩し、クレスは二、三歩たたらを踏む。
(くッ、ここまでなのか……っ!)
だが、死を覚悟した少年にとどめの一撃が来る事はなかった。間合いを広げたブルックが攻撃の手を止めていたからである。
「……若いというのは素晴らしい。あなた方のように夢を持ち、それを力に羽ばたく事ができるのですから」
ブルックは話を続ける。
「私は、そのような夢を持つには年老い過ぎてしまいました……。
皆が助かる道? そのようなものがあるのなら……およそ50年前、私は独りこの姿になってでも生き延びようと考えたりはしなかった!!」
「?!」
クレスの身体は金縛りに遭ったかのように動かなくなった。いや、魂の慟哭を前にして動けなくなったのだ。
「……おしゃべりが過ぎてしまいましたね。
これで終わりです」
竜の牙がクレスに襲いかかる。
「『戒めの風』!!」
しかしその身体に届く事はなかった。
質量のある風がブルックの身体にまとわりつき、捕らえていたのである。
91
:
◆oOOla1DQxY
:2010/08/01(日) 00:10:54 ID:CITL./vA
「フウ、さん……」
「ブルックさん。どうか、ここは退いて頂けないでしょうか?」
ブルックの顔を見つめ、静かに涙しながら風は語る。
「もう、嫌なんです。誰かの為に誰かが傷つけたり、傷ついたりするのは……っ」
そして、静かにくずおれた。『魔法』の行使者が気を失い、ほどなくブルックを戒めていた風もかき消える。
その様を、クレスはただ見ていることしかできなかった。
【鳳凰寺 風@魔法騎士レイアース】
【状態】 健康、精神疲労(極大) 気絶中
【装備】 バスタード・ソード@現実
【道具】支給品、 マスコット(@テイルズオブファンタジア)、ランダムアイテム×1
【思考】基本:光、海と共に生きて東京に帰る。
1: 誰かの為に誰かが傷つけたり、傷ついたりするのは嫌だ
2: ブルックには殺し合いに乗らないでいて欲しい
[備考]
※参戦時期はエメロードを撃破して東京に帰った後(第一章終了後)です
【クレス・アルベイン@テイルズオブファンタジア】
【状態】 健康、疲労(少)
【装備】 ニバンボシ@テイルズオブヴェスペリア
【道具】支給品、 ランダムアイテム×1
【思考】基本:仲間を募り、会場から脱出する
1: いったい何が起こったのかを知りたい
[備考]
※参戦時期は本編終了後です
【ブルック@ONE PIECE】
【状態】 健康、疲労(小)
【装備】 ドラゴントゥース@テイルズオブファンタジア
【道具】支給品
【思考】基本:生き延びて約束を果たす
1: 優勝して元の世界に帰る
2: フウの言葉を受け入れるか考える
[備考]
※参戦時期はスリラーバークで影を取り戻した直後です
92
:
◆oOOla1DQxY
:2010/08/01(日) 00:13:20 ID:CITL./vA
これにて投下終了です。題名は「哀しき鼻唄」で
規制されていたので、どなたか代理投下をお願いします
93
:
無銘の剣
:2010/08/01(日) 00:21:36 ID:1I987GYI
城近辺でしょうが、場所が書いてないですよ
94
:
◆oOOla1DQxY
:2010/08/01(日) 00:26:15 ID:CITL./vA
げ、本当だ
三名の現在地は
【G-3 市街地 外壁傍/一日目/深夜】
です。重ね重ねすみません……
95
:
無銘の剣
:2010/08/01(日) 00:26:48 ID:CliEra5.
場所は正確に書いてくれよ…
96
:
◆sV2PTzTYLA
:2010/08/01(日) 00:59:47 ID:KApa0y4s
すいません。遅れました。
アグリアス・オークス、ギルガメッシュ
投下します。
97
:
無銘の剣
:2010/08/01(日) 01:04:32 ID:.0.qcsqo
どした?
98
:
無銘の剣
:2010/08/01(日) 01:06:53 ID:KApa0y4s
「ふう……」
アグリアス・オークスは砂漠地帯を抜け、額の汗を拭う。
靴には砂が入り、心地よいとは言えなかった。
失った水分を補給するためにデイパックを漁り水を取り出す。
水が入った透明のペットボトルは彼女にとって未知のもの。訝しがりながらもキャップを回転させ、水を飲んだ。
彼女は聖大天使アルテマとの戦いに身を投じていた。
長き戦いを終え光に包まれた後に、待ち受けていたのはこのような殺し合いである。
愛剣セイブザクィーンを失い、デイパック一つを渡され砂漠地帯に独り。
(これがラムザ達との旅で砂漠にも慣れていた私だったから良かったものの)
しかしアグリアスにはこの度の非道なる催しは許せなかった。
会場にいた年端も行かぬような子供を巻き込んだことも。
この首輪を嵌めて、畜生に貶めようとすることも。
名簿を見れば、知る名は二つ。
シドルファス・オルランドゥ、クラウド・ストライフ。
ここに来るまでには、背を預け共に戦った二人である。
異世界より召還されたクラウドはなぜか火山の頂上に武器を隠しているなど謎多き男だったが、あれで仲間思いなところもある。
オルランドゥ伯に関しては言うまでもあるまい。
なにより両者とも腕はたつ。
「まずは二人を探すとするか……ん」
今後の方針について考えていたアグリアスの顔に緊張感が走る。
あのうっそうとした木立から気配を感じた。
いつのまにやら、気配を感じ取れるほどのレンジに入っている。
実力の程までは分からぬ。接触するリスクは高いかもしれない。
(だが……)
彼女は接触することを選んだ。情報が重要であったからだ。
最初に爆殺された男の鎧などは、彼女のいた世界のどの騎士団にもあてはまらぬ。
おそらくイヴァリースには存在しないものであろう。
つまり今では自分こそが以前のクラウドのように、何も分からぬ立場に立っているのだから。
99
:
無銘の剣
:2010/08/01(日) 01:10:55 ID:CliEra5.
ここはさるさんはないぞ
100
:
無銘の剣
:2010/08/01(日) 01:11:43 ID:KApa0y4s
近づけばそこにはジョブ「侍」と酷似した人がいた。
否、顔が人のそれではない。つまり、人型モンスター。
人外がいるとは会場にいた時点で気づいていたが、まさか最初に出会うとは。
(どうする。交戦するか、それとも見逃すか)
接触することを考えていたアグリアスだが、モンスターと分かればそうも行かぬ。
チョコボのようなまだ可愛げのあるモンスターならばまた違ったのかもしれないが、その男の凶相が災いした。
一人で戦って死ぬようなことがあればどうしようもない。しかし見逃せば、他のものが襲われるかもしれない。
アグリアスは結局選択することができず、剣を抜き音を立てず近づく。
剣は<カリバーン>。同じくこの地に立つ騎士王の紛う事なき名剣である。
息を殺し聖剣技の射程まで近づく。
そして陰から、モンスターの様子を伺っていた。どうやらデイパックを漁り、剣を探しているようである。
しかしモンスターがデイパックから意識をそらすと、同時にアグリアスの視線に気づいた。
その目が緊張していたアグリアスには非常に獰猛に見え、そして選択を促す。
(不味い!!気づかれた!)
無双稲妻突き。
ホーリーナイト特有のアビリティ、聖剣技の中でも射程範囲の広い技である。
チャージすることなく瞬時に魔力を練り、剣に纏わせる。
剣を以ってして招雷。その一振りは雷をモンスターに落とした。
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