したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | |

0さん以外の人が萌えを投下するスレ

499名無しさん:2014/08/01(金) 14:25:05 ID:L/kx8W/Q
香水テーマで一足遅かったので、こちらに



「(ハルくんは、いつもいい匂いがするなぁ)」
穏やかな風が吹くたび感じる、柔らかな香り。
嫌味のない、清潔感溢れる春の匂いが大好きだった。
高校1年生。周りの友人達はオシャレに関心を持ち始め、少しずつ大人に近付いているような気がする。
それに比べ、自分は。いつまでも垢抜けず、子供っぽく感じる。
「ナツ、どうしたの。」
小さく笑い、落ち着いた雰囲気のハルは周りの友人達より抜きん出て大人に見える。
恋する相手に対し、男としての憧憬の気持ちが益々大きくなる夏は小さくため息をついた。

帰宅し、制服を脱いで全身鏡の前に立ってみる。ひょろくてもやしみたいで、頼りなくて。
そんなに体格差はないはずの春とは、一体何が違うのだろう。運動部に属していない事も同じなのに。どうしてハルは、あんなにも綺麗な男の子なのだろう。
リビングに向かい、出されたおやつを頬張りながらテーブルにあるものに気付く。
「これ、姉さんのかな。」
薄紫色の綺麗な小瓶の蓋を開けると、柔らかな石鹸のような香り。何故だかその香りを身に纏うだけで、ハルに少し近付けたような気がしたのだ。ナツはポケットにそれを忍ばせ、こっそり自分の部屋に戻るのだった。

「よし、これくらいかな。」
翌朝、姉が先に家を出たのを見計らい、ナツは香水の蓋を開けた。姉が前に手首に付けていたのを真似てみる。それだけでは手首を鼻に近付けない限り香りがわからない。試しにシャツにも染み込ませてみるとふわりと柔らかな香りが漂う。何と無く大人になれた心地でナツはウキウキと学校へ向かうのであった。

「げっ、誰だよ香水付けてるやつ!」
近くの席の級友達がおはよう、の挨拶代わりのように口を揃えて非難する。ナツは眉を下げて身を小さくした。まさか、付けすぎだとは思わなかったのだ。良い匂いだと思っていたし、非難される事なんて考えもしなかった。犯人捜しのような空気にナツは居た堪れなくなる。
手首だけでも洗い流そう、と後ろの扉からこっそり出て行くと。
「ナツ、おはよう。そんなに慌ててどうしたの。」
ナツの返事を待たないまま、ハルはすんと鼻を鳴らす。ナツは慌てて距離を取る。
「や、やっぱり臭いかな!?」
「ううん、いい匂いだよ。」
ハルはそう言うが、それでも級友の反応からして、とんでもなくキツイ香りなのだろうとナツはトイレへ向かう。後ろからハルもついてくる。
「ナツ、香水付けたの?」
「うん…」
手首を強くこするナツの手を、ハルは止めた。
「赤くなってるよ。」
ナツを覗き込むと、鼻が赤い。拗ねたような、情けない顔。
「上手くいかないな。ハルくんに少しでも近付きたいと思っただけなのに。」
「僕に?」
「大人っぽくなりたいんだ。ハルくんに釣り合うような。」
ナツのへの字に曲がった口元を見て、ハルは小さく笑った。
「ナツはわかってないのかな。君はどんどん大人になっていってるんだよ。」
「…僕も?」
「うん。いつの間にか背も伸びて、声も変わってて。僕の方が少し、寂しくなるくらいに。」
ハルは蛇口を締め、濡れたナツの手を取る。
「背伸びしなくても、一緒に大人になろうよ。僕は、そのままのナツが好きだよ。」
ハルの優しい言葉に、一人焦ったナツの心は解きほぐされる。ふにゃりとした笑顔に戻ったナツを見て、ハルもホッと息をつくのであった。
「皆、臭いって言うんだ。そんなに臭うかなあ。」
「香水は、自分で感じないくらいが丁度良いと聞いたよ。」
「そうなんだ。どうしよう、シャツにまで付けちゃったよ…」
ナツの手首を取り、ハルはもう一度くんくんと鼻を鳴らした。
「まだ香り、残ってるね。それなら…」
「ハルくん!?」
ハルは突然カッターシャツを脱ぎ、ナツのそれも脱がした。
「今日一日、シャツを交換しようよ。お揃いの香りだし、二人で疑われるなら怖くないよ。」
慌てるナツに無理矢理被せ、ハルは可笑しそうに笑った。その笑顔に子供らしさが垣間見え、ハルも自分と同じだとナツは安心したのであった。


新着レスの表示


名前: E-mail(省略可)

※書き込む際の注意事項はこちら

※画像アップローダーはこちら

(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)

掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板