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0さん以外の人が萌えを投下するスレ

46628-449 リアリスト×オカルト好き 2/2:2014/02/03(月) 00:06:57 ID:0LFcBspc
機関銃のように捲くし立てられて、俺は頷くことしか出来なかったが、
「ま、そういうわけだから。俺がこれをくだらねえと思ってようがどうしてようが、中身がよけりゃいいんだよ。
 飽きられたらおまんま食い上げだろ。飯のタネを捨てるほど俺は愚かじゃないし、平穏に暮らしたいからな」
という締めではっとし、思わず自分のデスクをバンと叩いた。
「ですから!そういう言い方しないでくださいよ!」
「うるせえなあ。中身がいいんだからいいだろ」
「もう誤魔化されませんよ!?」
この編集長はいつもそうなのだ。
もっともらしいことを次々と並べ立てて煙に巻く。相手をのせて自分のペースに巻き込んで、我を押し通す。
俺がこの出版社に入社したのだって、この編集長の口先八寸が原因だし。(俺がここの雑誌を愛読していた経緯もあるにはあるが)
「そもそもなんでオカルト信じてないのにオカルト雑誌の編集長してるんだっていう話をしてるんです!」
「……。お前、たまにめんどくせえよな」
飄々と肩を竦めて見本誌をデスクに放ると、編集長はやれやれと呟いて立ち上がった。
そして長い溜め息を吐きながら俺の方へと近づいてきたかと思うと、座ったままの俺の両肩に手を置く。
「なっ、なんですか」
やばい噛み付きすぎて怒らせたか?まさかクビなんてことは…と
内心びくつく俺の心を見透かすように目を細めて、編集長はこちらを覗き込んでくる。
「信じてないって、なんだ?」
「は?」
「お前はお前であることについて信じるとか信じないとか考えたことがあるのか?」
「なんですかその質問。て、哲学ですか」
さっき彼が言ったセリフをそっくり返すと、編集長はにっこりと笑う。
なぜだか、ぞっとした。
「あんまり駄々をこねるとこうなるってことだよ」
そう言ってから彼は更に屈み込んで顔を近づけてきて、俺にキスをした。
唇に。思い切り。キスを。
十秒後。フリーズしたままの俺から顔を離すと、編集長はまたいつもの雰囲気に戻って皮肉っぽい笑みを浮かべた。
「仕事熱心なのはいいが、ほどほどにしとけよ。深みに嵌ると抜け出せなくなるぞ。現実見ろ、現実」
「…………」
「つって、テメエが言うなって話だな」
ははははと豪快な笑い声をあげて、俺の肩をぽんぽんと叩いて、編集長はまた自分のデスクへ戻っていく。
俺は呆然とその後ろ姿を見つめていた。
(な、なんだ今の)
顔が熱い。頭の中が混乱の極みでぐちゃぐちゃしている。ついでに体もだるい。
締め切り前の追い込みによる肉体疲労と(考えたくないが)さっきのあれによる精神疲労でどっと疲れが出たのか。
反論する気力を削がれた俺は、その後は大人しく次の取材について企画書を書き始めた。
あんなセクハラかまされたら身の危険を感じて仕事を即辞めてもいい筈なのに、そのときの俺はそんなこと毛ほども考えていなかった。
いつものように「また煙に巻かれた」と思う程度で済ませていた。

今思えば、おかしいと思うべきだったのだ。自分の思考と認識がほんの少し方向付けされていたことに。
しかし同時にそれは無理な話でもあった。

『それ』に気付く頃には、俺は抜け出せなくなっている。


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