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0さん以外の人が萌えを投下するスレ

441恋心を自覚する攻めと天然受け:2013/09/29(日) 22:18:09 ID:zZxKt.vc
「痛いじゃないですか。そういうところは嫌いですよ」
「だよねぇ」
 でこピンしてきた腕をつかんでも、楽しそうに笑っている。
「なんか、腹立ちますね。そんなに、俺に嫌われたいんですか。でもね、そうはいきませんよ。俺は、先輩が好きなんですから!」
 最初、罰ゲームの説明をされたときはぶん殴ってやりたかったけれど、その時にくらべれば。
 ぶっちゃけると、意外にスッキリした。宮間は勢いのまま、思っていることをぶちまけた。
「だっ、だいたい、山神先輩は自覚がないのかもしれないですけど、面白がっているようで、案外俺のこと見てくれてるし、心配してくれるし、相談にのってくれるし、優しいじゃないですか。それに、ほら、昼ご飯にメロンパンくれたこともあるじゃないですか」
「……餌付かされてるだけでしょ」
「違います。それだけじゃなくて、あと、山神先輩とのスキンシップも嫌いじゃないです。にこにこしているわりに排他的なところがあるけど、髪の毛を撫でてくれたり、落ち込んでたら肩組んでくれたりしてくれますよね。あとでおどけてみせてますけど、山神先輩なりの励ましだって分かってるんですから! そういうの、バレバレなんですよ。ま、意地悪な顔されると、いらっとしますけど、たまに優しい表情したときは恰好いいなと思うし。あと」
「いや……もういいから」
 腕をつかまれてはっとする。宮間が山神を見ると、下を向いてぷるぷると震えていた。髪から覗く耳が真っ赤になっている。
「どうしました? あ、やっぱり褒められるの、嫌だったんでしょ?」
 返事がない。
 しばらく待っていると、突然、眉間に皺を寄せ、怒った表情の山神が顔を上げた。耳同様、顔も真っ赤になっている。
 宮間は、怒りで血がのぼったんだなと解釈した。嫌がらせが成功したことに満足する。
「ね。これに懲りたら、山神先輩も、嫌がらせはやめることです」
「お前……それ、本気でいってんの」
「もちろんです。じゃないと、勿体ない。山神先輩は、アレですけど、恰好いいし、優しいし、それから、んぐっ」
 続きを言おうとしたら、山神の手に口を塞がれてしまう。もごもごと口を動かして、手を離すように抗議しても、聞いてもらえなかった。それどころか、一人言をぶつぶつ呟いている。
「なにこいつ、本気で言ってるのか……ていうか俺はどうした……あんなもん、さらっと流せばいいだろ」
 何を言っているのか聞き取れなかった。ただ、山神が自問自答しているのは、宮間にもわかった。抵抗しても無駄だと学習した宮間は大人しく待つことにした。
「顔が熱い……なんだこれ、まるでこいつのこと……いや、いやいや、有り得ないから。こいつが無自覚に恥ずかしいこと言ってきたから、それで……そう、有り得ないから」
 とりあえず落ち着いたのか、まだ顔は赤いが、山神はいつもの笑顔を貼り付けた。
「いやー、参った」
「わっ」
 がしがしと髪を掻き回される。
「照れちゃうなあ」
「全然、照れてないじゃないですか」
「照れてるよー。でもね、罰ゲームとはいえ、一応、畠中と付き合ってるんだから、他の人を好きとか言っちゃ駄目だと思うんだよねえ。畠中に言ってもいいの?」
「あ」
 宮間が顔を青くする。それを見て、山神の眉がぴくっと動いた。
「……まー、言わないけど。これからは気を付けなよ」
「う、はい」
 返事をしたところで、予鈴がなった。
「あ、教室に、戻ります」
 宮間は出口に向かった。
「あーうん、じゃあ、また放課後。畠中と行くわ。今日、カラオケ行くんだっけ?」
「はい。……あ、そうだ」
 前を歩く宮間が、にっと白い歯を見せて山神を振り返る。
「あと2日たって、罰ゲームが終わったら、畠中先輩と友達になろうと思ってます。あの、山神先輩とも友達になれますよね」
「んー? ……あー」
 一瞬考え、にこっと山神も笑顔で返した。
「……そだね」
 山神の返事を聞いて、宮間は納得したのか、また前を歩き始めた。なんだか足取りが軽い。

 山神は足を止めた。空を仰ぎ、目を閉じる。はあ、と息を吐き出す。
「友達……ね。んー、初めて嘘ついたかも」
 今までなんとなく目をそらしてきたが、もう、誤魔化すことはできなさそうだった。
「こうなったら、長期戦かなあ」
 あいつ、鈍そうだし。
 山神は一歩、足を踏み出した。


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