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0さん以外の人が萌えを投下するスレ

39826-949 セクサロイドとインキュバス:2013/07/04(木) 17:35:54 ID:bN0kX93U
また、夜が変わった。
ほんの一眠りしてる間、加速度的に世界は人工の光で満たされていく。
以前は赤や緑など雑然とした色にまみれていたが、今はただ青く白く統一され、どこか病的な印象を受ける。
あれからどれほどの時間が流れただろう。なんにせよ、目覚めたということは餌が必要になっているということだ。
感覚を広げ、ややあって一つの魂を見つける。好都合にも近くに他の反応はない。
さっそくその場に跳躍すれば、瓦礫とともに一人の若い男が横たわっていた。
浮浪者だろうか、酔いどれだろうか。そういう類の者にしては身なりは整っているように思える。
しかし、そんなことは久々の食事にあっては瑣末なことにすぎない。端正な上物とあってはなおのことだ。
「さあ、お前はどんな夢を望むんだろうな……?」
女か、それとも男か。無意識に潜む理想の姿を探ろうとする。
しかし、いくら意識の同調をはかっても、なんの反応も返ってこなかった。
焦りとともに額を合わせる。
その時、間近で閉じられていた瞼が開き、暗闇の中にちかりと赤い瞳がまたたいた。
「――……こんばんは。あなたが今日の私のマスターですか?
 あなたの望む、一夜の夢を叶えてさしあげます」
不意の輝きに身をのけぞらせる。男は緊張した空気をかき消すように、ふわりと笑みを浮かべた。
この状況で人間が目を覚ますなど、初めての状況だ。
夢を見ない。支配下におけない。そんな人間がいるものか。
あり得ない事態に動けずにいると、一瞬で顔の形が組み替わり、今度は女性的な顔で微笑んだ。
「今宵は、どのような夢をお望みですか?」
本来、血や骨や筋繊維でできているはずの人間の内部が、鋼鉄の骨組みに置き換わっているのが見えた。
戸惑っているうちに、目の前の人物は何度も何度も姿を変えて同じ問いを発する。
最終的にまた元の顔へと形を変わったとき、ようやく腰が据わった。
「どのような夢をお望みですか?」
「……それはこちらの台詞だ」
そうだ。人間がどういう進化を遂げたかは知らないが、要は精さえ搾り取れればよいのだ。
「おまえこそ、どんな夢を望むんだ」
「私の望みですか?それに答えられるようにはできておりません」
「いいから、言ってみろ」
「私の、望みですか?」
「ああ」
「……私の…………望み……」
急速に眼の光が失われ、体から力が抜けていく。
「おい、どうした、おいっ!」
呼びかけても返事はない。勝手に起きたり寝たり、ままならない奴だ。
体を揺さぶってみたり、ばしばしと頬を叩いてみたり、額で熱を測ってみたり、いろいろ試してようやく目を覚ました。
ぶうんという羽虫の飛ぶような音が、かすかに聞こえたような気がする。
「こんばんは。あなたが今日の私のマスターですか?
 あなたの望む、一夜の夢を叶えてさしあげます」
「おまえは一体何なんだ……」
「私は個体番号M-TR1098、ユーフォビア社のセクサロイド“アルプ”です」


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