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0さん以外の人が萌えを投下するスレ

392890-2/2:2013/06/26(水) 03:51:27 ID:eO3ad2tU
出会ってから付き合うまで約二年。付き合ってから結婚するまで一年と少し。結婚生活は一年足らず。
妻が亡くなって、もう二年以上が過ぎてしまった。
今日は3回忌の法要で久々に妻の眠る墓所を訪れた。妻がこの世で誰より大切にしていた義弟と一緒に。
妻を見送った日は、ひどい雨が降っていた。
傘を差し、最後まで墓石の前を離れなかった義弟は、一粒の涙も流していなかった。
僕は泣き腫らした目で「君は強いね」と声をかけた。
義弟は振り向きもせず、真っ直ぐに立って「もう三人目ですから」と呟いた。
その声があまりに淋しげで、僕は傘を放り出して義弟の肩を抱いた。
嗚咽を上げる僕に、義弟は自分の傘を差しかけてくれた。肉親全てを失った彼のほうが、ずっと辛いはずなのに、慰められたのは僕のほうだった。
妻がいなくなった家に、今は二人で住んでいる。大学を出るまでは面倒を見させてほしいと、僕が願い出たからだ。大学を卒業するまで、自分がしっかり世話をしたいと言っていた妻の気持ちを、僕が成し遂げてやりたかった。
――けれど、本当は僕自身が淋しかったのだ。淋しさに耐え切れなかったのだ。
義弟の強さに、僕は知らぬうちに甘えていた。
一回り以上も歳が離れている彼に、自分の淋しさを押し付け、背負わせてしまった。
悲しみを分かち合えるのは義弟しかいなかった。義弟の存在だけが、僕の生きる支えになってくれた。
涙を流して悼むほどの悲しみは通り過ぎたというのに、未だに薬指の指輪をつけているのは、半分は妻への思いだが、もう半分は義弟への依存心からだった。
もしも指輪を外してしまったら、義弟は僕の側から離れていってしまうかもしれない。僕を残して、どこか遠くへ行ってしまうかもしれない。
妻を悼み続けることで、義弟を縛っておけると考える僕は、誰から見ても最低の人間だ。
けれどもう少しだけ、彼の強さに甘えて、縋っていたかった。
こんな僕の心を知ったら、彼はどう思うだろう。
大切な姉を預けた男が、こんな脆弱な心の持ち主だとわかったら、失望し、軽蔑するだろう。
だから隠し続けなければならない。今はまだ、彼を失うわけにはいかないのだから。
墓石の前に並んで立ち、僕と義弟はそっと手を合わせる。
こんな僕に、大切な弟を残して逝ってしまった妻への、懺悔の時間だった。


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