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0さん以外の人が萌えを投下するスレ

38726-819 旅行先で出会った運命の人 2/2:2013/06/15(土) 23:11:22 ID:XFt/5UKs
 社員旅行×社員旅行。まさかのバッティング、である。予想して然るべきだった、シーズン真っ盛りに観光地なのだから。
 しかし同旅館とは酷い。運命の悪戯、或いは本気?
 驚愕と混乱と焦燥に無言の俺とは対照的に、あいつは、
 いつも通りの――いつも? 一年前までの話だろう、と俺は自嘲する――馴れ馴れしい口調で話し掛けてきた。
「わー久し振りっすね、三百七十二日振り? あは、ちょっと痩せた? 髪の長さ変えた?
 幽霊見たみたいな顔すね、足ちゃんとあるよ、俺。見る?」
「……驚かないんだな。君は」
「あー。だって絶対、此処で会えると思ってたし?」
「……何故だ?」
 あいつは笑みを消して真顔で答える。
「『天秤座のアナタは、旅先で運命の人に会えるカモ☆』俺の運命の人つったら決まってるじゃないすか」
 俺は黙り込む。あんなのはただの占いだ。だが、その占いを信じてこいつに告げたのは誰だ?
 実際に俺達は此処で会ってしまった。偶然? 必然? 運命? それとも。俺は混乱したまま言葉を絞り出す。
「……まだあの番組見てたんだな」
「あんたの所為で習慣になっちゃってんすよ、責任取って結婚しろよな」
 聞き慣れた軽口。だが、目は笑っていない。その口調も表情も、台詞に似つかわしくないほど真面目だった。
 ……ああ、こいつはまだ、俺を。馬鹿が。諦めろよ。ブーメランのように自分に戻ってくる言葉が頭に幾つも浮かぶ。
「さっき仲良くなった山田さんって人、あんたの同僚でしょ?
 ふーんそっか、日本海側まで逃げたんだ。随分畑違いに就職したんすね」
 俺はくるりと背を向けた。逃げよう。そう、今度はもっと遠くに逃げる。
 苦労して就職した会社だが、仕方がない。こいつが諦めるまで、
「逃げるの? 別にいーよ」
 意外な言葉に、俺は思わず立ち止まって振り向く。
 あいつは追い掛けようとする素振りも見せずにさっきのままでさっきの場所に立っていた。
「何度も何度も何度も何度も何度も逃げれば……。俺は全然構わねーすよ。だって、」
 俺はあいつから目を離すことができない。
「もしも俺とあんたが運命だったら、何処に逃げたって消えたって死んだって追いつける。
 十年後でも五十年後でも千年後でもいつか絶対一緒になれる」
 それが運命ってもんでしょ、とあいつはけたけた笑う。
 俺は、何かに押さえつけられるような錯覚を感じながら、月並みな文句で抗おうとする。
「君は……、俺といない方が、幸せになれるだろう。運命なんか、忘れて」
「そうかもね。あんた卑屈だし、根暗だし、一方的だし、考え方が馬鹿だし。でもさ、」
 あいつは一歩も動かないまま、俺を見据えて笑った。ぞっとするほど綺麗に。
「知らねーの? 運命は、抗えないから運命なんすよ」


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