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0さん以外の人が萌えを投下するスレ

38326-739 美男と野獣2/2:2013/06/02(日) 17:30:00 ID:CfRdt7eo
そして僕の前に進み出てきた魔女――男だから魔法使いだろうか?――は近くで見ても
やっぱりとても綺麗な人だった。
その人は、立ったまま僕を見下ろしてきた。
「おい子供。森へ入ってはならないと、親に教わらなかったか」
決して大きな声を出しているわけではないのにその声音は威圧的で、僕の身体は竦み上がる。
まるで教会にある聖母様の像のように綺麗な顔なのに、浮かんでいる表情は酷く冷たい。
なぜか、この人の方が化け物よりももっともっと怖いもののような気がした。
「森には怖いものが居て住処に勝手に入ると殺される、そう教えてはもらわなかったのか?」
その言葉に僕ははっとなる。
魔女に捕まって毒薬の材料にされる、というのはどこか遠い世界の話のように頭のどこかで思っていた。
しかし今「殺される」という直接的な言葉で、絵空事は現実に引き寄せられた。
全身が震えだす。
後退りする僕を見て、男は端正な顔に笑みを浮かべた。
「そうか、言いつけを守らなかったのか。悪い子だな」
言いながら杖をくるりと回して、杖の頭を僕の方へ向ける。
周囲の木々がざわざわと騒ぎ始めた。
得体の知れない恐怖が襲ってくる。何か途轍もなく怖いものがくる、そんな予感がした。
許しを乞おうとしても声がうまく出せない。
(神様……!)
目の前が真っ暗になった。と同時に身体が地面から浮かび上がる感覚。
これが魔女の魔法なのだろうか。僕はこのまま死んでしまうのだろうか。
そんなことが思い浮かんで……けれど、僕の意識は数瞬後もそのままだった。
身体のどこも――森に入ったときに転んで挫いた足以外は――痛くない。
「……。聞き分けの無い奴だ」
魔女の人の低い声が耳に入ってきて、僕はゆっくり首を動かして辺りを見回した。
そして気付く。
僕は、あの毛むくじゃらの化け物に抱きかかえられていた。
顔のすぐ傍に鋭い爪が見えたが、それは僕の身体に食い込んだりはしていない。
寧ろ爪が触れないように、手首から先が反らされている。
「お前はいつまで経っても甘い」
こちらを……いや化け物の方だけを見て、魔女の人が溜め息をつく。
「子供だからと目こぼししたところで、何の得もないというのに。無事に森の外へ出したとしても
 感謝などされず、お前が余計に恐れられるようになるだけだと何故わからない。本当にお前は馬鹿だな」
厳しい口調だったが、さっき感じたような冷たさは無い。
ただ、表情はとても苦々しいもので、まだどこか怖さを感じる。

僕はこれからどうなるのだろう。
殺されるのだろうか、助かるのだろうか。村へ帰れるのか、もう森の外へ出られないのか。
頭のすぐ上から荒い呼吸音が聞こえてくる。
僕は恐る恐る、化け物の顔を見上げた。


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