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0さん以外の人が萌えを投下するスレ

30624-369 背中合わせ(1/2):2012/06/25(月) 00:46:46 ID:kZUnIqKQ
扉をぶち破った俺の目に飛び込んできたのは、剥き出しの背中に焼印を押し付けられている彼の姿だった。


「他人の背中というものは、こんなにも温かかったのですね」
彼はそう言って、こちらに身体を傾けてきた。
俺は少しだけ前のめりになったが、ぐっと腹に力を入れて押し留まる。
すると彼はくすくす笑いながら、更に体重をかけてくる。まるで子供がふざけているようだ。
「おい」
軽く諌めると、背中から「すみません」と苦笑交じりの声が返って来た。
「こういう事は初めてなものですから、とても新鮮で」
「俺だってこんな状況ねえよ」
男二人、後ろ手に縛られてまとめて鎖でぐるぐる巻きに拘束される状況など。
目の前にある鉄の扉に思い切り蹴りを入れた。当たり前だがびくともせず、足に痺れがはしる。
全身に力を込めてみたが、鎖の戒めが緩むこともなかった。人の身ではどうすることも出来ない。
不自由なことこの上なかった。暴れだしたい衝動を舌打ちしてやり過ごす。
と、こちらが大きく動いた所為か、背中越しに彼が小さく呻いた。
俺ははっとして緊張させていた背の力を抜き、後ろに問いかける。
「傷むのか、背中」
「いえ、大丈夫です。なんともありません」
すぐに答えが返ってきたが、それはきっと嘘だ。

あのとき。
牢獄に踏み込んだあのとき、彼の背中にあった羽は既に斬り落とされていた。
純白の、綺麗な羽だった。
俺はその柔らかさがとても気に入っていた。俺には無いものだったから。
本人には一度も言ったことがなかったが。
今、その羽のあった場所には、忌々しい烙印が焼き付けられている筈だ。
背中越しにあの焼印の熱が伝わってくるような気がして、俺は顔をしかめた。

「……勿体無いことしたな」
半分は本音、半分は誤魔化しで、俺はそう言った。
彼は可笑しそうに「勿体無い、ですか」と笑う。
「そうですね。貴方に撫でて貰えなくなるのは、確かに少し残念です」
彼らにとっては命に等しいものの筈なのに、背中から聞こえる声に陰りはない。
「けれど失わなかったとしても、撫でてくれる人がいなくなっては、意味がありませんから」
どちらにせよ同じことです、と軽い調子で返される。
一体、羽と何を天秤にかけたのか――かけさせられたのか、俺は訊かなかった。
聞けばおそらく、俺は衝動を抑えられなくなる。


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