したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | |

0さん以外の人が萌えを投下するスレ

27423-689 枕返し(1/2):2012/03/23(金) 00:43:39 ID:nZxK1Rxo
「あれま、まだ起きてんのか」
深夜。能天気な声が頭上から聞こえてきて、僕は机の上の問題集から顔をあげた。
振り返ると、男が一人、まるで鉄棒にぶら下がっているかのように天井から釣り下がっている。
男の腕は天井を透過していて、その先の手までは見えない。天井裏の梁にでも掴まっているのだろうか。
ものすごく異様な光景だが、僕は動じない。もう慣れたからだ。
黙ったままの僕に痺れを切らしたのか、男は場の空気を取り繕うようににかっと笑った。
「いやはやどうも。なんかよーかい?」
「……それはこっちのセリフ」
僕は溜息をついた。
「いつから天井下りに転職したんだよ」
問えば、男は更に愉快そうに笑う。
「天井から下がれば天井下りだろうなんて、安直だねえ。奴らが聞いたら怒るよ?」
そう言って、両腕を上げたまま身体を大きく前後に揺らしたかと思うと
男は「えいっ」という掛け声と共に前方に飛び出して、空いていたベッドの上に着地した。
見た目にはそれなりの衝撃がありそうなのに、ベッドからは軋む音ひとつしない。
ふざけたようにポーズをとって「十点」などと呟いている男に向かって、僕は言葉を投げる。
「何しにきたんだよ」
「何って、俺が人様の家にあがる目的は一つでしょうよ。知ってる癖に」
笑いながら傍にあった枕に手を伸ばして、男はベッドに腰を下ろす。すぐ降りるつもりはないらしい。
「僕はまだ起きてるけど」
「いやあ、あんたいつもこの時間には寝てるからさ、ちょっくらご機嫌伺いにと思ったんだけどね」
へらへら笑う男は自分と同い年か少し上にしか見えないのに、喋り方は妙に老けている。
身に着けているのもあまり見かけない類の服で、強いて言えば作務衣に似ていた。
まだ夜中は肌寒いというのに、寒そうな様子はない。こっちはどてらを着込んでいるというのに。
(見てるこっちが寒い)
そんなことを思っていると、男は背筋を伸ばして僕の手元を窺うような仕草をした。
顔にニヤニヤとした笑みが浮かんでいる。
「けどあんたが夜更かしなんて珍しいな。なんだい、いやらしい本でも読んでるのかい」
「試験勉強中だ。邪魔しにきたのなら帰れ」
むっとして机に向き直ると、男が苦笑する気配がした。
「冗談だよ。本当にお前さんはこの手の冗談が通じないな。そういうところは弦一郎にそっくりだ」
弦一郎というのは祖父の名だ。この男は祖父の代からうちを訪れていたらしい。
一体いくつなのかという疑問は、随分前に通り過ぎた。
「もっとにこやかにならないとモテないよ。寡黙なんて今の世は流行りじゃないだろう」
「うるさい」
「けど真面目な話、夜更かしは身体に毒だよ」
その言葉に、男を横目で見る。


新着レスの表示


名前: E-mail(省略可)

※書き込む際の注意事項はこちら

※画像アップローダーはこちら

(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)

掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板