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0さん以外の人が萌えを投下するスレ

26223-359 日本刀2/2:2012/02/05(日) 01:45:53 ID:v.TLS2Xc
数年経ち、僕は滑り止めの大学に辛うじて引っかかった。
あれ以来、楽しいものや美しいものに心を留めることもなくなった。上の空になることが増えた。
ただ、あの時の輝きを思い出すだけの数年だった。
妖刀とはこうやって人を惑わすものなのかとどこか感心しつつ、
この件に決着をつけなければならないと感じていた。
そのためには彼に――そうだ、本能的にあの刀が男であることを知っていた――
彼に、もう一度会う必要があった。
さすがに高校生のときの一件があったからか、例の桐箱はあの和室にはなかった。
しかし、僕は祖父の所有している離れの蔵があることを知っており、
そこへの忍び方も、昔の悪戯の経験から、これまた分かっていた。
今はもうたやすく思い出せる箱。今度は一人きりで紐を解く。
彼を持ちあげる手が震えて震えて仕方なかった。
力を込めてゆっくりと鞘から引きぬくと、月明かりを受けて刃の上を光が流れていく。
そうして現れた全身を目にした時、
僕は、彼が妖刀だということを忘れた。――刀であるということさえ頭から消し飛んだ。
彼の姿はほっそりと澄んだ鈍色をして、久しく忘れていた美への感動を思い出した。
あの時とは違う優しい目の輝きと、ただただ見つめ合っていた。
どれほど時が経ったか、不意に彼の先端が服の襟元に触れた。
そのままボタンをぷつぷつと弾けさせながら降りていき、彼の目の前に裸の胸が晒されることになった。
彼自身を握っているのは僕なのに、彼の動きに僕の意志は全く関与していない。
肌に触れる、冷たくぴりぴりとした指先。
喉仏や胸元を特に好んでくすぐっている。
こうして彼は人を愛してきたのだろう。触れられたところからじわじわと深い陶酔が広がっていく。
その胸を撫ぜた手は鳩尾を滑り、くっ、と腹の上で止まった。
お前を鞘にしてもいいのかと、決意を問われているのが分かった。
ここまで強引に事を進めておいて、何を今さらと笑う。
彼にされることならば何も怖くはない。与えられる全てを愛することができる。
手に力を込めて、受け入れる。


ぐわん、と脳が揺さぶられる感覚がし、数瞬遅れて頬の熱さと兄の姿を知覚した。
気づけば彼は既に僕の手の中にはなく、真っ赤な顔をした兄がぶるぶると震えるほど固く握りしめていた。
あのとき探険をしなければ、祖父の言いつけを守っていれば、刀を抜かせなければ、
俺が兄だから止めなければ、守らなければならなかったんだと、全てを悔いて泣いていた。
夢心地の中で聞いた兄の独白も、僕の何を変えることもなかった。
ただ彼を納めるはずの体の中心から、とうとうと血が流れ出ていくのを感じていた。


あれから祖父の手により彼は二度と僕の目に触れないようにと、どこか遠いところへ追いやられてしまった。
だけど僕は彼を探し求め、程なく彼を見つけることができるだろう。
なぜなら、腹の傷が今もうずいて呼んでいる。呼ばれている。


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