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0さん以外の人が萌えを投下するスレ

26123-359 日本刀1/2:2012/02/05(日) 01:45:13 ID:v.TLS2Xc
あの箱には決して触れてはいけない。
子供の頃、探険ごっこと称して、家の中を荒らし回ったことがある。
その遊びは和室の一部屋に隠すように置かれていた桐箱を手に取ったとき、祖父の一喝と共に終わることになった。
祖父は僕たちの悪戯を叱りつけながら、きつくきつく言い含めた。
あの箱には決して触れてはいけないよ、と。
次にその箱を目にすることになったのは高校生の時だった。
兄と何かの会話の弾みにふいと、昔見たあの箱を覚えているかという話になった。
一度思い出してしまえば中身が気になって仕方がない。
二人の記憶をすり合わせ、かつてと同じ場所にあった桐箱を引っぱり出した。
箱を閉じていた紐を解き、いざ蓋を開けてみれば中にあったのは一振りの日本刀だった。
電光を受けて黒光りする鞘。手に取るとずっしりと重い。
何故こんなものが家にあるのだろうと訝しがったが、
僕たちの目は初めて見る「道具」に恐れながらも惹かれていた。
おまえ、ちょっと抜いてみろよ。
兄の提案に逆らえず、少しだけ、柄を持つ手を引いた。
瞬間、ぎらりとした凶悪な光に僕は息を飲んだ。
ただの電光の照り返しとは思えないほどの異様な輝き。
それはどんなものよりも僕の目を焼いた。
――睨みつけられた。そう思った瞬間にばしんと強く障子が開け放たれた。
振り向いた僕たちが見たのは、その刀を抜いたのかと問う祖父の姿だった。
祖父は昔より強い調子で僕たちを叱り飛ばし、
これは妖刀だから決して鞘から抜いてはいけない、と告げた。
そして、もうこれのことは忘れてくれと、祈るような声でこぼした。
祖父が去り気まずい静寂が続く中、僕はただ、見たか?とだけ問うてみた。
兄は、何を?と返した。何を見たかは、答えられなかった。
突然の乱入に驚いた拍子で刀を鞘に納めたため、刀身を見たと祖父が知ることはついになかった。


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