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0さん以外の人が萌えを投下するスレ

2018-959 殺し愛 2/2:2010/06/06(日) 18:55:45 ID:6g9eFhCI
その反応が嬉しくないこともなかったが、あの最初の殺し合いを見てからは素直に喜べなくなっていた。
(あの人に向けていた笑顔とは、比較にすらならない)
男は、手首をカクカクやりながら、機嫌良さげに包帯の巻かれた右腕を眺めている。
――まるで、大事な相手から貰った大事なプレゼントでも見つめるように。

その様子を見て、少年は無意識のうちに口を開いていた。
「……そんなに気に入っているなら」
「ん?」
「そんなに、あの人が気に入っているのなら。もっと平和的な手段があるんじゃないですか」
「平和的、だぁ?」
男は眉を顰め首を傾げて少年の顔を見る。少年は、そんな男の目を真っ直ぐに見返した。
組織の意向はあの男の『抹殺』だ。それを分かっていながらも、少年は言葉を紡ぐ。
「握手して、ハグして、キスして、どちらかがどちらかに突っ込めばいいんです」
「…………」
男はぽかんと目を丸くして少年の顔を見つめ、数秒後、盛大な笑い声をあげた。
「ぎゃはははは、なに言ってんのお前。俺はお前みたいな変態じゃねえよ」
「言うに事欠いて、僕を変態呼ばわりですか」
「だってそうだろ?突っ込めって、お前。俺はアイツを殺すんだよ、キスしてどうすんだ」
心底可笑しそうに大爆笑する男を前にして、少年は今自分が言ったことを即後悔する。
そして、後悔を誤魔化すように小さく咳払いしてから、素直に頭を下げた。
「血迷いました。つい馬鹿なことを言いました。すいません」
「つい、で言うことがソレかよ。ははは、まあいいって。ちょっとだけ面白かったぜ」
「すいませんでした」
「じゃあ、変態なお前に一つ命令。うん、罰だな、上司をからかった罰」
「……はい。なんなりとどうぞ」
「アイツを囲ってるナントカいう連中な。あれの本隊が今どこに居るのか捜せ」
「え?」
少年は少し驚いて顔をあげ、男を見る。
「いい加減、鬱陶しい。潰すぞ」
そう言った男の表情からは、人懐っこい笑顔は消えていた。
「俺らがあいつら潰せば、上も当分はうるせーこと言ってこなくなる。一石二鳥だろ」

ヘラヘラとしながらも、彼は気付いている。
結果を出さない自分達に組織が痺れを切らして、あの男に別の人間を差し向けるかもしれないことも。
最初の殺し合いであの男の『友軍』がそうしたように、遠方からの狙撃などで決着を図るかもしれないことも。
気付いた上で、極めて冷静に判断し動いている。多少の遠回りも雑用も我慢も厭わない。

「アイツとやり合うはそれからだ」

全ては、あの男を殺すために、または殺されるために――あるいは永遠に、殺し合うために。

(やっぱり、上層部は判断を誤った。あの人の抹殺は、もっと別の人間に命令するべきだったんだ)
(だってこの人は、あの人の事を一番に考えていて、一番に憎んでいて、一番に……)


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