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非リレーのオリキャラでバトルロワイアルPart2
1
:
名無しさん
:2012/12/17(月) 20:30:26
このスレは非リレー書き手によるリレー小説を投下する場です。
予約スレはこのスレと一体化しておりますので、書き手のみなさまはこちらで予約をお願いします。
予約テンプレ。
相川友、勇気凛々、矢部翼 の三名を予約します。
なお、当ロワを2chパロロワ辞典等に載せるのはご遠慮ください。
217
:
◆9n1Os0Si9I
:2013/04/16(火) 22:18:37
「臭いが、鮮明になった」
「え?」
エレベーターに乗り四階に来てまず思ったことはそれだった。
男とアルコールの臭いが先ほどより強くなっていた。
「臭いを追ってるんだよ……男が二人、って感じだね」
「二人、も?」
「そうだね……臭いが混じってる、少なくとも血の臭いはしないから大丈夫だとは思うんだけどね」
あと、アルコールの臭いが僅かに鼻につく。
酒を飲んだ奴が2人のうちどっちかにいるのか。
上からまだその臭いがある、1階に微かに残っていたアルコールの臭いと類似していた。
「――――とりあえず見ていこうか」
「そう、ですね」
一番近くにあるのは事務室……だが臭いはそんなに強くはない。
一応後で捜索するにしても、この臭いの元を探している今すぐに捜索する意味はない。
ナースステーションは後でいいだろう、と通り過ぎる。
あとは手術室が数か所、と言う感じだ。
そこのどこかに、この臭いのもとが隠れているのか。
と、一つの手術室前で足を止める。
そして確信した、ここに誰かがいると。
「――――笑子ちゃん、下がっていてくれ」
小声で言うと、笑子ちゃんは察してくれたようで数歩後ろに下がる。
扉に手をかける、下手をすると開けた瞬間銃で撃たれる可能性もある。
だが、そうやって止まっていても、どうしようもない。
思い切り、ドアを開けた。
◆ ◆
218
:
◆9n1Os0Si9I
:2013/04/16(火) 22:21:39
周りを見ると、とても暗かった。
一体俺はどうしてこの場所にいるのだろうか。
さっきまで、俺はカインツに運ばれて病院に来たはずだった。
という事は、ここは俺の夢の中なのだろうか。
「ああ……なんかクラクラしやがる」
とてつもなく、怠い。
夢の中ならばせめて心地よい感じであってほしいものなのだが。
まぁ、あの男に負けた俺が悪いんだがな。
「……しかしなんつーか、情けねーな……俺」
先ほどまでの自分を思い出す。
守るだなんてたいそうなこと言いつつ、結局は俺は何もやれてねぇ。
ただ守ってもらっていただけだ。
こんな思いしたのは何時ぶりだろうか。
笑子を守れなかった――――あの時だろうか。
いや、俺がまだ弱かったあの時だろうか。
「――――はぁ」
ため息が出てくる。
とりあえず夢が覚めるまで待てばいいのか。
「――――ふ、どうした正人。 溜息とはお主らしくない」
「え?」
後ろから聞こえてきた声に耳を疑った。
すぐさま後ろを振り向くと、声の主がそこにはいた。
加藤清正――――俺の師匠だった。
「人の夢に出てくるとは……なんというか師匠も趣味が悪いですね」
「なんだ? お主の女子にでも出てきてほしかったのか?」
「いや、そう言うわけじゃないんですが……というか、普通にバトルロワイアルにも参加しているのに、夢にも出てくるってね……」
「――――まぁ、良いではないか。 それに儂はもう死んでしまったのでな」
「……………………は?」
何か違和感があることが聞こえてきたんだが。
師匠が、死んだだって?
いやいや……そりゃあねぇだろ。
「おいおい、エイプリルフールはまだまだ先だろ……師匠が死んだ……なんて」
「残念じゃが、誠の事である。 儂は、死んだんじゃよ」
あり得るわけがない、こんな化け物が殺されるなんてさ。
相手はどんな重装備持ってたんだよ、拳銃じゃ絶対足りない。
戦車でもない限り、倒せる気がしない。
「誰が……アンタを殺したんだ」
「残念ながら……それは言えぬ。 言ってしまえば儂の残留思念としての仕事は終わってしまう」
「――――は?」
「儂はもうこのまま消えゆく運命なのだが……何故か、このように残留思念としてお前と話すことが許されたらしい」
いまいち、言っている意味がわかんねぇ。
残留思念だとか、話すと仕事が終わるとか。
「折角なのだ……儂はお主と話がしたかったのだよ、正人よ」
「――――やめろよ、そんな冗談なんて……アンタらしくないぞ」
「お主がそう思うのならば、そう思えばいい……だが、放送を聞けば分かる。
儂は、もうすぐ……名前を呼ばれるはずじゃ」
「……」
ただ、その話を聞いて黙る事しかできなかった。
信じられないはずなのに、嘘に聞こえない。
本当に、師匠は真だとでも言うのかと。
「――――儂は、お前さんに頼みたいことがある」
「……なんですか」
「市街地、地図で言う下の方にある方の市街地なのだが……そこに向かってもらいたい」
「…………理由は?」
「言えぬ」
やはり、さっきと同じだ。
理由が言えない。
これでは話もクソもないというのに。
219
:
◆9n1Os0Si9I
:2013/04/16(火) 22:24:07
「――――まぁ、信じるも信じないもお主次第である。 儂の仕事ももう終わる……お主ももうすぐ目覚めるであろう」
「なぁ、師匠」
俺は、いつの間にか口を開いていた。
先ほどまであまり喋ることも考え付かなかったってのに。
「――――なんじゃ」
「俺は、弱いまんまだ……。 師匠に拾われてから、腕っぷしだけは強くなったかもしれねーけど……。
守ってやると言った相手も守れずに、それどころが守られてるんだよ……。
笑っちまうだろ、どうしたら俺はアンタみたいに強くなれるんだよ」
その考えたことを、一気にぶちまける。
それを師匠が答えてくれるかはわからない。
その前にこの師匠が本物とは限らない。
だが、その師匠は俺に対し言い放った。
「強さは、力ではない……お主は、守りたいものがおるのだろう? ならば、そのものを守り抜け。
たとえ命が尽きようとも、それで守り切れば……お主は紛れもなく『強い』と言えよう」
そう言うと、師匠は笑いながら消えてしまった。
仕事が終わった、という事なのだろうか。
どちらにしろ、さっきの師匠の言った感じであるのならば……俺はもうすぐ目覚めるだろう。
とりあえず……カインツに、礼……を言、っておかねぇ、と……な。
◆ ◆
「……ん」
目が覚めると、白色の天井が目に入ってくる。
鼻だったり口だったりに違和感を覚え、触ってみると管のような何かが通っているようだ。
そのおかげであろうか、酷かった時より頭痛はだいぶ楽になっている。
カインツがここまでしてくれたのだろう、感謝するしかないな。
「――――起きたかい?」
と、そこで横から声が聞こえてくる。
声の主は予想した通り、カインツだった。
「よぉ……カインツ、まさかここまでやってくれるとはな」
「いや、僕は医者だ……それくらいは当然するよ」
「……すまねぇ、本当は俺がなんとかしないといけなかったんだろうがよ……こんなことになっちまって」
「だから大丈夫だよ、とりあえず……無事に目覚めたようなら大丈夫だ、体調はどうだい?」
「頭痛だけになった、って感じだ……お陰様でな」
「そうか、安心したよ。 それじゃあ、僕はこの病院を探索してくるよ」
カインツは部屋から出て行ってしまった。
ああ、思ったより暇になった。
そういや、今時間どれくらいなのか。
時計は――――!?
「12時、8分?」
放送をとうに過ぎてしまっていたらしい。
しまった……というかさっきの夢が本当か調べようとしたのだが。
カインツはすでに行ってしまったようだし、変に大声出すとまた症状が戻ってくるかもしれない。
どうしたもんか……そう考えているうちに眠気が襲ってくる。
ああ、まぁいいか……起きてからでも知れるし。
それにカインツが焦ってなかった辺り、別に今いるここも禁止エリアでもないのだろう。
「――――おやすみ」
とりあえず、もう一眠りしよ――――。
220
:
◆9n1Os0Si9I
:2013/04/16(火) 22:26:34
「正人っ!!」
――――う?
と、ドアの方を見る。
始めは、目を疑った。
そんなことがあり得るのかと。
目の前で死んでいった、大事な人が、間違いなくそこにいるから。
「笑……子、なのか?」
「よかった……すごく心配したんだから……!」
「は、はは、マジかよ……お前、生きててくれたのか」
少なくとも、この瞬間は神様という物を、信じていいかもしれないと思った。
◆ ◆
「――――なるほどな」
笑子との再会を喜ぶ数分後、カインツとなんか狼が入ってきた。
最初はまぁ驚いたが、その狼……レックスは笑子を守ってくれていたと聞いて礼を言うしかなかった。
そして、放送の情報をまとめた紙を見せてくれた。
確かにそこには『加藤清正』の名前があった。
師匠が死んだという事実は、間違いなく現実のものだろう。
「ねぇ、正人君……君が言っていた、その加藤清正さんはどれくらい強いのかを教えてほしい」
「あぁ……それだけいうのだから、かなりの出来る奴だとは思うんだが……」
カインツとレックスが俺に向かって聞いてくる。
そう言われても、あまり例が浮かばないのだが。
俺が全然勝てないと言っても、レックスあたりはわからないだろうし。
「まぁ、具体的に言えば……銃弾を刀で弾ける、って感じか」
「「――――は?」」
なんか二人からあり得ないと言わんばかりの声が聞こえたんだが。
うん、まぁ俺もそんな離れ業は出来ないからな。
こんなのができるのは師匠くらいのはずだし……。
「まぁ、どっちにしろ……その師匠が死ぬんだ。 そんだけの奴がこの殺し合いには参加してる、っていう事だろう」
そう、師匠は殺されたんだ。
実は自殺だったとか、そんなのは考えられない。
あれだけの精神力を持つ人間が自殺とかありえな。
あの酒瓶野郎のような、化け物がここにはもっといるのだろう。
「これからどうする……? まだ禁止エリアにはなってないが、誰かがこっちに向かってくる可能性もある。
それに……俺も探している人がいるんだ、ここでいつまでも待っていられない」
などと考えていると、レックスが話を変え、これからの事に焦点を変えた。
そう言われれば、そうだ。
俺は多少体調不良でもこの殺し合いを止めるために動かなければならない。
レックスさんが言うとおり、早めにいく場所を決めておきたいが――――。
そこで、先ほどの夢を思い出す。
市街地に行け……いや、禁止エリアになってしまったんだけどな。
あの夢は本当のことを言っていたと考えれば、市街地に師匠が遺した『何か』があるはずだ。
だからこそ、その『何か』を探さなくてはならない。
「――――市街地方面に向かおうと思うんでしょうが、どうでしょうか」
「市街地……? 禁止エリアになった方か?」
「ああ、そうだ。 市街地丸々禁止エリアになったという事は、禁止エリアで何かがあったと考えられる。
そこに向かってみれば、案外探し人がいるかもしれない……って考えたんだが、問題は俺達が向かうまでにきっとそこにいる人が違うところに行ってしまってると思われることだ」
そう、それが一番の問題だ。 少なくとも、師匠が言っていた『何か』は探したい。
だがエリア的にここから市街地は離れすぎている。
とはいっても、それで探さずにいればその『何か』が参加者だった場合、殺されてしまうかもしれない。
物品だとしたらそれこそ早く取りに行かないともう二度と取りに行けなくなる。
「……そうだな、それじゃあそっちの方面に向かうとするか……でも、そんな遠いのにお前もその状態だし大丈夫か?」
「それについては心配いらない……と思う」
「なんでだよ」
「一応、ここは病院だからな……大規模な」
俺の予想通りならば、アレがあるはずだ。
多少細工されてたりした場合は諦めるしかないが。
施設にまでわざわざ来たんだ、それくらいの恩恵はあるだろう。
221
:
◆9n1Os0Si9I
:2013/04/16(火) 22:29:40
「カインツさん、レックスさん。 病院の地下または周りを捜索して、救急車、というか白い大きな車を探してください」
◆ ◆
「――――うん、一応は動くっぽいかな……?」
探させて30分ほどが経ったころ、救急車が見つかったと聞き、治療に使ってた管やらを外してもらった。
完全にアルコールが抜けきったわけではないが、そんな悠長なことは言ってられない。
一刻も早く、師匠が遺したと思われる『何か』を探しに行きたかった。
「救急車……いちおう車だし使えないかもと思ってたら、そうでもなかったんだね」
「一応、俺も駄目元だったんだが……まぁよかったよ」
乗り物を獲得できたのは、だいぶ俺たちにとって良点だ。
機動力だけではなく、戦闘力としても車は重宝する。
そして……次の問題は……。
「誰か、運転できないか?」
「「「――――」」」
「いや、何も全員だまらないでも」
笑子が運転できるわけないのはわかる。
だからと言って俺が運転するかと言われても無理だ。
多少はできるかもしれないが……この頭痛がある状態で運転なんてしたくない。
だから、カインツかレックスが出来ればいいんだが……。
「一応、葉月が運転してたのを見てたしたまーに俺も運転するけど……大丈夫かわかんないからなぁ」
「それでもいいです……レックスさん、お願いします」
「――――ああ、わかった」
そう言うと、レックスさんは運転席に乗り込んだ。
なんか調べたりしているようだが……大丈夫だと信じよう。
カインツや笑子と一緒に患者が乗り込む場所に乗り込む。
多少狭いけれども、現状我慢するしかない。
「よし! 出るぞ!!」
「了解、頼んだよレックス君」
レックスの大声に、カインツが反応する。
その少し後にエンジン音がし、揺れが生じる。
(――――師匠、貴方が守った『何か』を……俺は守る。
貴方が守るほどの価値を見出したんなら……俺も、そうしなくてはならないはずだ)
黒作大刀を握り、決意を新たにする。
もう絶対、目の前で守れないのだけは嫌だから。
【A-1/病院付近/一日目/日中】
【レックス@新訳俺のオリキャラでバトルロワイアル】
[状態]:腹に銃創(応急処置済)、運転中
[服装]:特筆事項なし
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品(1〜3)
[思考]
基本:殺し合いはしたくない、襲ってくる奴には容赦しない?
1:市街地方面に行く。
2:緑髪の女に警戒。
3:葉月を早く探したい。
[備考]
※新訳俺のオリキャラでバトルロワイアル、開始前からの参加です。
【三瀬笑子@DOLバトルロワイアル2nd】
[状態]:健康、不安
[服装]:特筆事項なし
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品(1〜3)
[思考]
基本:正人に会うまで死にたくない。
1:市街地方面にいく。
2:正人、良かった……。
3:私は死んだはずじゃ………?
[備考]
※DOLバトルロワイアル2nd死亡後からの参加です。
※名簿を確認していません。
222
:
◆9n1Os0Si9I
:2013/04/16(火) 22:30:27
【カインツ・アルフォード@オリキャラで俺得バトルロワイアル】
[状態]:疲労(中)、
[服装]:特筆事項無し
[装備]:催涙スプレー
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品(1)
[思考]
基本:なるべく多くの人間と脱出
1:病院二階の集中治療室にて正人君を治療する。
2:正人君と行動、多くの人間と同盟を組む。
3:「取引」は守る。
4:危険にさらされたら、刺し違えてでも危険人物を止める。
[備考]
※俺得オリロワ参加前からの参戦です。
※古川正人と「取引」しました。
※白崎ミュートン、酒々楽々、愛崎一美の名前と容姿を記憶しました。
【古川正人@DOLバトルロワイアル2nd】
[状態]:アルコールが体内に残っている(二日酔い状態)
[服装]:特筆事項無し
[装備]:黒作大刀@俺得ロワ3rd
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品(1〜2、刀剣類は無い模様)
[思考]
基本:今度こそ笑子を守る。
1:師匠が言っていた『何か』を探したい。
2:そのために、まずは市街地方面に向かう。
3:師匠が殺された――――?
[備考]
※DOL2nd死亡後からの参戦です。
※カインツ・アルフォードと「取引」しました。
※白崎ミュートン、酒々楽々、愛崎一美の名前と容姿を記憶しました。
※アルコール中毒による命の危機は心配いらなくなりました。
[備考]
※現在レックスが運転している救急車に病院から取ってきた医療セット(中身不明)が積まれています。
投下終了です。
現在タイトル考え付いてないので、wiki編集時に決めて、再びレスします。
223
:
◆9n1Os0Si9I
:2013/04/22(月) 19:50:42
タイトルは 夢想空虚のロスタイム という事にします。
遅れて申し訳ありませんでした。
224
:
◆ymCx/I3enU
:2013/04/23(火) 02:53:53
投下乙です。よかったね正人と笑子再会できて
レックス事故るなよw
柄部霊歌、守谷彩子、熊本潤平、新藤真紀、巴御前を予約します。
xz氏が以前予約してましたが詰まってしまったので書きたければ書いても良いみたいな事を言っていたので
225
:
◆ymCx/I3enU
:2013/04/23(火) 05:57:48
投下します。
タイトル:この胸の奥深くともした炎は
元ネタ:LUNA SEAの楽曲「FOREVER&EVER」の歌詞の一節
226
:
この胸の奥深くともした炎は
◆ymCx/I3enU
:2013/04/23(火) 05:58:29
ラブホテルの前で、柄部霊歌、守谷彩子、熊本潤平、新藤真紀、巴御前の五人は放送を聞いた。
死者として呼ばれた名前の中に、潤平の捜していた「飯島遥光」の名前があった。
「……」
潤平は呆然としていた。
いや、溢れ出しそうな感情を必死に抑えているように、真紀達には見えた。
「……潤平」
恐る恐る、真紀が潤平に声を掛ける。
「……いや、覚悟はしていたんだ。だけど、だけどさ、いざ、その時になってみると……。
……う……うっ……」
ふらふらと歩き、潤平はキャンピングカーの車体に顔を押し付け、両手を車体に叩き付けた。
「……ッ……あ……真紀ちゃん、みんな」
震えに震えた声で、潤平が真紀達に言う。
顔こそ見えなかったが、もうどんな様子になっているのか真紀達は想像出来た。
「必ず、必ず立ち直るから、い、今だけは……う、あああ、うおおおおぉおおああぁあぁあ!!」
それはまさしく「慟哭」。
大声を出す事が危険だと言う事も、女の子達の目の前だと言う事も全て承知の上で、潤平は涙を流す。
この殺し合いのどこかで死を遂げた最愛の人のために泣く。
どのような最期を遂げたのか、最期に何を思ったのかは分からない。
分からないが、それを考えれば考える程、溢れる涙は増えていった。
「うぉぉおおおぉおおお……!! おおぉおおおおおぉおお……!!!」
地面に崩れ落ち、突っ伏して、潤平は涙を流し続けた。
真紀達は、言葉も掛けられずただ見守るしか出来なかった。
どれくらい時間が経ったであろうか。
潤平の慟哭は止まった。
ゆっくりと立ち上がり、服の袖で顔を乱暴に拭う。
そして、真紀達の方に振り向いた。
目と頬は赤くなり、涙と鼻水の跡が残るその顔はお世辞にも男らしいとは言えない。
「……潤平、大丈夫?」
真紀が尋ねる。
大丈夫では無い事は分かってはいたが聞かずにはいられなかった。
深呼吸してから、潤平が口を開く。
「ああ……みっともない所、見せちまったな。
本当にすまない、みんな……でも、大声で泣いたおかげかな、ちとスッキリしたよ……。
……もう、大丈夫だ」
「……そんなくしゃくしゃの顔で言われても、説得力あらへんけど」
「はは……まあ、許してくれよそれは」
巴御前の指摘に、力なく笑いながら潤平は返す。
◆◆◆
227
:
この胸の奥深くともした炎は
◆ymCx/I3enU
:2013/04/23(火) 05:59:00
大切な人を失った悲しみ、潤平の気持ちは、柄部霊歌にもよく理解出来た。
霊歌もまた、この殺し合いで最愛の兄を失ったからである。
兄が死の直前に言い残した言葉によれば、主催者の差金――ジョーカーとして参加したため死んでも名前は呼ばれない、と。
確かに放送では兄の名前――柄部霊貴の名前は呼ばれなかった。
だが、兄を失った事は、事実であった。
「……熊本さん、大丈夫でしょうか」
「霊歌ちゃん?」
「立ち直ったように見えますが……相当ショックを受けているのは確かです。
悪い方向に向かわなければ、良いのですが……」
「そうだね……」
潤平を心配する霊歌を見て、彩子は心中で彼女の成長を少し喜んでいた。
出会った時は殺し合いに乗る決意までしていたのが、今は他人を気遣えるまでになったのだから。
心なしか、表情もかなり優しくなったように見える。
霊歌の兄から、霊歌の事を頼まれた身としては嬉しい事であった。
「どうかしましたか?」
「え? いや、何でも無いよ」
「……?」
◆◆◆
五人はキャンピングカーに乗り込む。
運転は新藤真紀、助手席は熊本潤平。居住スペースに巴御前、柄部霊歌、守谷彩子。
「仲間捜すと言ってもどこへ行くん? 結構広いでこの島。禁止エリアとかにも注意せなあかんやろうし」
巴御前が潤平に訊く。
潤平は地図を広げながら思案する。
「うーん……人が集まりそうなら、ショッピングセンターか、このでかい建物のある市街地か……。
南の方の市街地は全部禁止エリアになったからなあ、他にも幾つか禁止エリアになっているし、
人の移動も相当あるだろうし……」
「どうすんねんって」
「まあ、道路走ってるんだからそれに沿って色々回ってみようぜ。
な、真紀ちゃん。それで良いだろ?」
「……そうね。元々宛ても無いんだし……」
「よし、それじゃ出発しようぜ」
「はいはい」
真紀がエンジンを起動させ、ギアをドライブに入れサイドブレーキを外し、アクセルを踏み込む。
キャンピングカーはゆっくりと発進した。
「……潤平」
「何だい、真紀ちゃん」
「本当にもう、大丈夫なの?」
「……悲しみはもう和らいできたよ、むしろ、今は……」
「……ッ」
228
:
この胸の奥深くともした炎は
◆ymCx/I3enU
:2013/04/23(火) 06:00:00
運転をしているため、真紀は横目で助手席の潤平を見た。
そして思わず息を呑む。
底冷えするような殺意の籠った双眸が、微かに見えたからだ。
「……人無を、殺してやりたい。遥光を殺した奴を、殺してやりたい」
「……」
「いや、絶対に、殺す。根絶やしにしてやる。絶対にだ」
「潤平……」
「ん? あああ、悪い悪い、怖がらせちまったかな。ははは……余り気にしないでくれ」
取り繕って笑う潤平だったが、目は全く笑っていないのを真紀は見逃さなかった。
数時間前、まだ潤平と二人で行動していた時、
「飯島遥光が死んだらどうするか」と言う真紀の問いに対して、潤平は、
「殺した奴を殺す。主催者も殺す。この上なく酷いやり方で殺す」と答えた。
そして飯島遥光の死は現実のものとなった、潤平は答えた言葉通りの事をやるだろう。
(まあ、止める気は無いけど……余り仇討ちにこだわり過ぎて、取り返しのつかない事に、なんて事にはならなきゃ良いけどね)
基本的に真紀は、潤平の好きにさせるつもりではあった。
全く心配事が無い訳では無かったが。
自分も以前の殺し合いで何人もの命を屠ってきたので余り偉そうな事も言えない、と言うのもあった。
五人を乗せたキャンピングカーは、仲間を求めて殺し合いの舞台を走る。
【F-1/ラブホテル城周辺/一日目/日中】
【熊本潤平@数だけロワ】
[状態]:主催者及び飯島遥光を殺害した者への憎悪と殺意、精神的ショック(中)、キャンピングカーの助手席に乗っている
[服装]:少し砂埃で汚れている
[装備]:ウィンチェスターM1897(3/5)
[道具]:基本支給品一式、12ゲージショットシェル(5)、M1917銃剣、ベルグマン・ベアードM1908(2/6)、
装弾クリップ(9mmラルゴ弾6発入り×3)、こけし、ベレッタM92(12/15)
[思考]
基本:女を守る。主催者達と、遥光を殺した奴を殺す。
1:真紀ちゃん、巴さん、霊歌ちゃん、彩子さんと行動。
2:凛々ちゃんは……。
3:仲間を探していく。ただし、殺し合いに乗った人物に情はかけない。
[備考]
※数だけロワ29話「無題――――NoTitle――――」以後からの参戦です。
※矢部翼の外見のみ記憶しました。
【新藤真紀@俺のオリキャラでバトルロワイアル】
[状態]:健康、キャンピングカーを運転中
[服装]:特筆事項なし
[装備]:キャンピングカー(車体に若干の破損あり)
[道具]:基本支給品一式、ベレッタM92予備弾薬(30/30) 、ケンタッキーフライドチキンの皮入り箱
[思考]
基本:一応殺し合いには乗らないことにする。
1:一応潤平についていく。
2:ただし、強そうな、面倒そうな人物にはなるべく関わらないようにする
3:何とかして潤平から銃を返してもらう。
[備考]
※本編終了後からの参加です。
229
:
この胸の奥深くともした炎は
◆ymCx/I3enU
:2013/04/23(火) 06:00:40
【巴御前@夢オチだったロワのキャラでバトルロワイアル】
[状態]:疲労(大)、腹部にダメージ(中)、右足に裂傷、キャンピングカー後部スペースに搭乗中
[服装]:白装束
[装備]:安物の弓
[道具]:基本支給品、シャベル
[思考]
基本:殺し合いには乗らない
1:熊本たちと行動する
2:刀の女(詩織)には警戒
[備考]
※夢オチロワ「怠慢な革命家」より登場。傷は主催により治っています。
※固有能力には大幅な制限がかかっています。
【柄部霊歌@サイキッカーバトルロワイアル】
[状態]:健康、キャンピングカー後部スペースに搭乗中
[服装]:特筆事項なし
[装備]:フランベルジェ
[道具]:基本支給品、カレーの材料セット、大量の包丁(現地調達)
[思考]
基本:バトルロワイアルを破壊する。
1:彩子さんを守る。熊本さんたちも、全員守ってみせる
[備考]
※登場時期はサイキッカーバトルロワイアル開始後、福沢正也と出会ってから。
※守谷彩子への勘違いは解けました。
※辻斬り思考が消えました。
【守谷彩子@需要なし1st】
[状態]:健康、キャンピングカー後部スペースに搭乗中
[服装]:特筆事項無し
[装備]:M1ガーランド(8/8)
[道具]:基本支給品、鍋、皮むき器、調味料一式
[思考]
基本:自分らしくお気楽に生きよう。
1:霊歌ちゃんを守る。潤平くんたちと行動。
2:なにか罪滅ぼし的なことは出来ないだろうか。
3:あのAV衝撃的すぎたわ……。
[備考]
※需要なし1st死亡後から登場。
※柄部霊歌への勘違いは解けました。
※稲垣葉月とレックスのAVを見てしまいました。
※キャンピングカー及び五人がどこに向かうかは次の書き手さんにお任せします。
230
:
◆ymCx/I3enU
:2013/04/23(火) 06:09:38
投下終了です。
続いて、璃神妹花、銀丘白影、被検体01号、稲垣葉月、被検体00号、佐原裕二、神谷茜、早野正昭予約します。
231
:
◆ymCx/I3enU
:2013/04/23(火) 06:28:02
あ、被検体00号は抜いて下さい間違いです
232
:
◆ymCx/I3enU
:2013/04/29(月) 15:33:25
予約分投下します。
タイトル:EVE 元ネタ:真・三國無双3のBGM「逃亡劇-EVE-」
233
:
EVE
◆ymCx/I3enU
:2013/04/29(月) 15:34:21
とある民家の浴室で、璃神妹花と神谷茜は身体を洗っていた。
特に身体の汚れが酷い妹花は隅々まで念入りに洗う、出来れば湯船にも浸かりたい所であるが時間的な余裕が無い。
先の放送で現在いる市街地全域が禁止エリアに指定されたためだ。
放送から一時間後の午後一時までにエリアC-6、D-6の市街地を脱しなければ首輪が作動し、死に至る。
放送を聞いた時点で早急に避難を始めるべきだったのだがそれが出来ない理由があった。
それが、妹花と茜が身体を洗っている理由に繋がる。
放送前の出来事で、二人、特に妹花の身体と衣服は酷く汚れそのまま共に行動する事が憚られる程の悪臭を放つまでになった。
茜はまだましだったがそれでも着替えと湯浴みが必要な状態だった。
そのため、適当な民家に侵入し、二人は入浴、そして茜の同行者である佐原裕二と、グループの仲間である稲垣葉月が、
民家を家探しして二人の着替えを調達する事になった。
「妹花ちゃんそろそろ……」
「うん」
お互い身体が綺麗になった事を確かめるとシャワーで身体を流し、浴室を出る。
浴室の暑い空気から脱衣所の冷えた空気に幼い二人の裸体は晒され身震いをする。
「二人共出た? 一応着替え見繕ってきたんだけど」
脱衣所には二人分の衣類を持った稲垣葉月。
早急にバスタオルで身体を拭き、妹花と茜は葉月から手渡された衣類を受け取り、着始めた。
「サイズどうかな?」
「私は大丈夫です……妹花ちゃんは」
「だいじょうぶ……」
サイズが合うかどうか心配していた葉月だったがどうやら問題は無いようだ。
二人と葉月は脱衣所から出る。
裕二が三人を出迎えた。
「綺麗になったじゃないか、茜ちゃんに妹花ちゃん」
茜と妹花を見て裕二が言う。
茜は両肩部分が青くそれ以外は白い半袖シャツと、紺色のホットパンツ。
妹花は淡い桃色のパーカーと、チェック柄のスカート。
下着も調達品である。余り汚れていなかった靴下と靴はそのままではあるが、
身体も洗い着替えも終えすっかり綺麗になったその姿は風呂に入る前を知る裕二や葉月には別人にも見えた。
少し二人は照れ臭そうにした。
「さて、時間が余り無い。こっちへ」
刻限である午後一時は刻々と迫っているため、裕二達は早々に行動を始める。
民家のガレージには銀色のミニバンがあり、脇に銀丘白影と被験体01号が立っていた。
ミニバンは民家の家主の物だろうが、銀丘が民家の中で鍵を見付けたらしく、
既に乗り込める状態になっていた。
「これでこの街から出るぞ。さあ乗るんだ」
「あ、あの、銀丘さん……」
「? 何だ妹花」
「須藤のお兄ちゃんや、一刀両断のお姉ちゃんは……」
妹花はグループから脱した二人、須藤凛と一刀両断の事が気がかりだった。
凛は先刻の戦闘の時、どさくさに紛れていなくなってしまい、
一刀両断は、それより以前に単独行動を申し出ていなくなってしまった。
それ以外にも、飯島遥光がグループから抜けてしまっていたが、彼女の名前は先の放送で死亡者として呼ばれた。
凛と一刀両断の名前は呼ばれなかったため今もどこかで生きていると思われる。
ただ、現在いるメンバーの中で凛と一刀両断の両方を知っているのは、銀丘だけだった。
その銀丘は、さして二人の事を気にしている様子は無い。
234
:
EVE
◆ymCx/I3enU
:2013/04/29(月) 15:35:22
「探している暇は無い。あいつらも放送を聞いているのなら避難するだろう。
私達は私達の安全を考えるべきだ、分かるな?」
「……」
「悪いが議論している余裕は無いんだ、乗ってくれ」
まだ何か言いたげな妹花を車の中に押し込むように乗せると、次に茜、裕二、葉月を誘導して乗せる銀丘。
そして銀丘は運転席に、01号は助手席に乗り込んだ。
「行くぞ」
銀丘がキーを回すと、エンジンが唸りを上げた。
一行を乗せたミニバンは民家のガレージを出て、走り出す。
運転しながら銀丘はこれからの行動指針について考える。
放送で発表された死者は二十一人。
自分や01号のように名簿に載っていない参加者も何人かいるらしい。
他にもジョーカーがいる可能性は否定出来無いがそれは今は考える必要は無いだろう。
かつて一緒に行動していた飯島遥光の名前も呼ばれた。
どういう経緯で自分達のグループから離れたのかは、銀丘はその場にたまたま居合わせていなかったため、分からない。
当事者である須藤凛からは詳しい事は聞いていない。聞く気も無かったのだが。
その須藤も、放送前の戦闘のどさくさに紛れ消え失せてしまった。
放送で名前は呼ばれなかったのでまだ生存はしていると思われるが、銀丘には彼を捜す気は毛頭無かった。
元々役に立たないようなら切り捨てる算段はしていた、彼にも彼なりの事情はあっただろうが、
仲間を見捨てて一人で逃げてしまうような者を無理に捜し出す理由は無い。
もう一人、一刀両断については、役立たずとは思わなかったがやはり捜すつもりは無かった。
やはりその場に居合わせていなかったので、一刀両断が単独行動を取り始めた理由も不明だったが、
彼女の戦闘能力は銀丘も一時共闘した故に知っており、簡単に死ぬとも思えない。
思慮深い訳では無さそうだが浅慮と言う訳でも無いようなので単独行動にもそれなりの理由があるのだろうと銀丘は考えた。
二人共、多少理由は違えど、禁止エリアの刻限が迫っている時に捜索しなければならない程の重要度は低い。
今は一刻も早く、禁止エリアに指定されたこの市街地から脱する事を優先するのが得策だろう。
妹花は心配しているようだったが、それを歯牙にかける銀丘白影では無い。
「取り敢えずどこに行くんだ? 銀丘」
助手席の01号が銀丘に尋ねる。
「北に向かおう。施設が比較的多い、それに別の市街地もある」
「成程……」
「他に案があるなら聞くが?」
「別にねぇよ。訊いただけだ、気にすんな」
助手席の01号は、座席の背もたれに身を任せリラックスしているように見えたが、
その実周囲に気を配り続けていた。
車での移動は非常に目立つ。
機関銃のようなもので狙撃されると最悪全滅する可能性もある。
銀丘も周囲を警戒はしているようだったが、運転をしているため行動は制限される、それ故に助手席の彼が辺りの様子を窺っていた。
後部座席。
中列のシートには窓側に葉月、中央に妹花、後列のシートにはやはり窓側に裕二、中央に茜が乗っていた。
少女二人を中央に乗せるのは銃撃された時、少しでも被弾の危険から遠ざけるためであった。
どれぐらい有効なのかは葉月にも裕二にも分からなかったが。
235
:
EVE
◆ymCx/I3enU
:2013/04/29(月) 15:36:07
(レックスはまだ無事みたいだけど……二十一人も死んでるなんて)
葉月は放送で自分の愛狼、レックスの名前が呼ばれなかった事を喜ぶのと同時に、
全体の四分の一近くがたった六時間の内に死亡した事実に衝撃を受けた。
この殺し合いで初めて仲間になった浅倉翔も死に、名前が呼ばれた。
彼の友達らしい須藤凛は現在行方知れず。
自分はまだマシかもしれないが、この殺し合いで家族や友人、恋人を失った者もきっといるだろう。
もし、放送で「レックス」の名前が呼ばれたら、その時自分は、きっと冷静ではいられないと葉月は思う。
絶望し、悲嘆に暮れ、選ぶ道は愛する者を追うか、愛する者を生き返らせるために優勝を目指すようになるか、
狂って自分を失うか、何にせよ暗い未来しか無いだろう。
だが、いずれかの道に堕ちてしまった参加者もいるかもしれない。
本当に恐ろしいゲームだと、葉月は改めて思った。
◆◆◆
早野正昭は放送を聞いた後、市街地から出るために歩き続けていた。
北部の市街地全域が午後一時から禁止エリアになってしまう。
その前に街から避難しなければならない。
彼の衣服は変わっていた。
元々着ていた水色のパーカーと灰色のカーゴパンツから、紺色のトレーナーとジーパンになっている。
適当な民家で失敬した物だ。
前の衣服は血塗れで目立つため、着替えた。
それに、主催に抗おうとする者達の中に潜入する気もあったので、血塗れの衣服では都合が悪い。
右手骨折と言う重傷を負っている中で、着替えるのは困難を極めたが。
その骨折した右手も一応の処置は済ませてある。
「急がないとな……」
現在いるエリアが表示される機能が付いた懐中時計で時刻を確認しながら、
正昭は足早に道路を進んで行く。
「ん……?」
正昭の耳にある音が入り、彼は足を止める。
場所は交差点、音は正昭から見て左折側の道から聞こえる。
その音は車の音だった。
「!」
正昭の目の前を銀色のミニバンが通り過ぎる。
誰が乗っているのかはよく見えなかった。
ミニバンは止まる気配も見せず、そのまま走り去って行った。
「車か……俺も、何か乗り物調達しとくべきだったかな」
ここに来て足替わりの乗り物を確保しておいた方が良かったと正昭は思ったが、
今更探す余裕も無い。
何とか自分の足で市街地から避難するしか無いと、再び足を進め始めた。
◆◆◆
とある交差点を通り過ぎる時、人影があった。
それは裕二と、銀丘、葉月が目撃した。
「おい、今誰かいなかったか」
「ああ、いたな」
後部座席にいた裕二が運転席の銀丘に人影の事を言うが、返事は素っ気無いものだった。
「無視して良いの?」
「構ってる暇は無い。少なくとも須藤や一刀両断では無かった。
殺し合いに乗っているかもしれんしな」
葉月が人影を確認した方が良いのではと意見を出すが、あくまで銀丘は冷静に返答する。
銀丘にとっては、例え人影が須藤や一刀両断だったとしても車を停めるつもりは毛頭無かったが。
余りに冷徹で情を介さない銀丘の物言いには裕二達も眉をしかめたが、無駄に争っても何の利も無い事も分かっていたため、
それ以上は何も言わなかった。
236
:
EVE
◆ymCx/I3enU
:2013/04/29(月) 15:36:47
【C-6/市街地/一日目/日中】
【銀丘白影@サイキッカーバトルロワイアル】
[状態]:疲労(中)、全身にダメージ(小)、爆弾残量1、ミニバンを運転中
[服装]:特筆事項無し
[装備]:同田貫正國
[道具]:基本支給品一式、ガソリン(5ℓ)、ラハティL-39(9/10)
[思考]
基本:勝算がない。よってゲームへ反逆する。
1:C-6エリアから避難し、北へ向かう。
2:場の流れに任せる。険悪になりそうだったら自分は抜けてもいい。
3:須藤凛、一刀両断については割とどうでもいい。
[備考]
※ロワ参加前からの参加です。
※主催者と契約した『ジョーカー』なので首輪の解除と支給品での援助を受けています。
※01号がもう片方のジョーカーであることを把握しました。
【被験体01号@新・需要無しロワ】
[状態]:疲労(中)、全身各所にダメージ(中)、銀丘白影の運転するミニバンに乗っている(助手席)
[服装]:特筆事項なし
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、栄養ドリンク(9)、鶴嘴、首輪のサンプル
[思考]
基本:あいつの鼻を明かしてやるぜ。殺人は……あんまやりたくないな。
1:銀丘達と行動。C-6エリアから避難する。
2:とりあえず、場の流れ次第でどうするか考える。
3:あの獣(須牙襲禅)とはもう会いたくねぇな。
[備考]
※ロワ参加前からの参戦です。
※ジョーカーの特権として、首輪を装着していません。
※銀丘がもう一人のジョーカーであることを把握しました。
※人影(早野正昭)の姿は見ていません。
【稲垣葉月@新訳俺のオリキャラでバトルロワイアル】
[状態]:健康、銀丘白影の運転するミニバンに乗っている(中列座席窓側)
[服装]:特筆事項なし
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、治療道具、ランダム支給品(1〜3)
[思考]
基本:レックスに会いたい、死にたくない。
1:01号さん達と行動。C-6エリアから避難する。
2:凛君は余裕があったら捜したい。
[備考]
※新訳俺オリロワ参加前からの参加です。
※高原正封の外見と名前を記憶しました。
※須牙襲禅の容姿のみ把握しました。
※人影(早野正昭)の容姿はほんの一瞬見ただけなのでほとんど把握していません。
【神谷茜@需要無し、むしろ−の自己満足ロワ3rd】
[状態]:健康、入浴済、銀丘白影の運転するミニバンに乗っている(後列座席中央)
[服装]:着替え済(両肩部分が青くそれ以外は白い半袖シャツと、紺色のホットパンツ)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品(1〜3)
[思考]
基本:佐原さん達についていく。
1:妹花ちゃんはもう大丈夫かな?
[備考]
※死亡後からの参戦です。
※人影(早野正昭)の姿は見ていません。
237
:
EVE
◆ymCx/I3enU
:2013/04/29(月) 15:37:17
【佐原裕二@サイキッカーバトルロワイアル】
[状態]:疲労(小)、背中に裂傷(処置済)、銀丘白影の運転するミニバンに乗っている(後列座席窓側)
[服装]:特筆事項なし
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品(1〜3)、ピッケル、青木林の支給品一式
[思考]
基本:《ヒーロー》としてこの殺し合いをハッピーエンドで終わらせる。
1:茜ちゃんを守る。
2:銀丘さん達と行動。
3:これ以上人を死なせたくない。
[備考]
※サイキッカーバトルロワイアル開始前からの参戦です。
※サイキックに制限はありません。
※人影(早野正昭)の容姿はほんの一瞬見ただけなのでほとんど把握していません。
【璃神妹花@サイキッカーバトルロワイアル】
[状態]:健康
[服装]:着替え済(淡い桃色のパーカーと、チェック柄のスカート)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品(1〜3)
[思考]
基本:殺し合いをする気はない。
1:分かんないけれど、間違った存在なりに正しく生きてみたい。
2:清正おじちゃん――まいかは、がんばります。
3:茜おねーちゃんについていく。
[備考]
※ロワ参加前からの参加です。
※《うにゃー》の食欲そのものがいけないことであると理解しました。よって、今後彼女が人を食物と認識することはまずないと思われます。
※入浴と着替えをした事で、悪臭と口臭は消えました。
※人影(早野正昭)の姿は見ていません。
【C-6/市街地/一日目/日中】
【早野正昭@個人趣味ロワ】
[状態]:右手骨折(応急処置済)、全身にダメージ(中)、精神疲労(大)
[服装]:着替え済(紺色のトレーナーにジーンズ)
[装備]:M4カービン(16/30)
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品(1〜2)
[思考]
基本:優勝して自らが殺した全ての人間を蘇らせる。
1:C-6エリアから避難する。
2:対主催グループに潜入して、隙を見て一網打尽にする。
[備考]
※個人趣味ロワ、死亡後からの参加です。
※ミニバンに誰が乗っていたかまでは見ていません。
《調達品》
【ミニバン】
銀丘白影がC-6市街地の民家より入手。
車種は日産・セレナ(3代目C25型、2005年5月-2007年12月の前期型)。カラーはシルバー。
238
:
◆ymCx/I3enU
:2013/04/29(月) 15:39:18
投下終了です。
239
:
悶絶狐少女
◆ymCx/I3enU
:2013/07/10(水) 16:19:36
27話 悶絶狐少女
狐の少女、都賀悠里は変電所に隠れていた。
隠れて気付けば夜が明け、殺し合いが始まってから4時間近く経っていた。
(このままずっとここに隠れてようかな……??)
そんな事を考え始める悠里。
殺し合いに乗っている人も大勢いるであろう外にわざわざ出ていく理由も無い。
可能な限り一箇所に留まっていた方が命も危険に晒されずに済むのだと、悠里は思った。
「ふぅ、暇だし……ちょっと、しちゃおうかな」
完全に危機感が薄まった狐少女は、
着ている制服を脱いで、裸ニーソの状態となり、自分の乳房と秘部をまさぐり始めた。
「あっ、はぁん……くぅん」
いつ襲われるか分からない状況下でのその行為は、
悠里にいつも以上の快楽を感じさせる。
淫らな水音が、機械の動作音に混じって響き、悠里は舌と涎を垂らし恍惚とした表情を浮かべる。
もはや周囲に気を配ってなどいない、今の彼女の思考は快感を求める事のみに集中していた。
「あ、あ、い、いくぅ! い……ふぁ?」
「……」
悠里のエクスタシーは、途中で強制的に止められた。
目の前に自分に散弾銃を向ける、自分と同年代と思われる、自分とは違う学校の制服を着た犬狼獣人の少女がいたから。
いつからいたのか分からないがここに来て悠里は自分の愚かさに嫌でも気付かされる事になる。
今までここに誰も来なかったからと言ってこれからも来ないとは限らない。
そんな事、考えれば分かる事だと言うのに。
「こんな状況で、そんなコトするなんて、変態だねー」
「あ、あ」
「どうしたの? 怖い? んー、殺し合いの時にハダカになって、オナるぐらいだから、
それなりのカクゴあるのかなと思ったんだけど。
ほらほら、イクまで待ってあげるから、早くイキなよ。
イったら、これで胸とお腹撃って、逝かせてあげる」
犬狼少女は愉快そうな口調で、散弾銃を向けながら言う。
「い、いやぁ……殺さないで」
ぶるぶると震え、涙を流しながら狐少女は犬狼少女に嘆願した。
股間とまさぐっていた右手を愛液でべっとりと濡らし、
口元と乳房は涎塗れ、それで涙を流す様は滑稽であり、見る人によっては加虐の心を煽られる様だった。
犬狼少女は、後者だった。
240
:
◆ymCx/I3enU
:2013/07/19(金) 02:35:37
あれ、誤爆してる……見なかった事にして、すみません
241
:
◆9n1Os0Si9I
:2013/08/10(土) 23:05:04
番外編、というか没ネタという事で投下します。
題名:ロストワンの号哭〜あの子の心象は読めますか〜
登場人物:熊本潤平、新藤真紀、巴御前、柄部霊歌、守谷彩子、須藤凛、狭山雪子
242
:
ロストワンの号哭〜あの子の心象は読めますか〜
◆9n1Os0Si9I
:2013/08/10(土) 23:05:34
00
マイナスとマイナスを組み合わせてプラスになるわけがない
01
どこからか流れてくる放送をただただ、意思もなく聞いていた。
この6時間という短時間とも長時間ともとれる時間で、すでに10人以上もの人が死んでいった。
その中には、さきほどまで共闘した浅倉翔の名前もあった。
それでけではない、飯島遥光という名前も、放送で流れたのを耳にした。
そのとき、いったい俺はどう思ったのだろうか。
悲しい――――とは思ったかもしれない。
悔しさは――――たぶんなかった。
最初に自分が出会って、そのままいなくなってしまった。
そのまま、帰ってくることはなかったというわけだ。
別に皮肉というわけではない。
彼女は、弱かったのだから。
いつ殺されたっておかしくはなかった。
彼女がただ、死に急いだだけの話である。
だから、俺が責任を受ける理由はない。
これは仕方がなかったことなんだ。
翔は、あの男が来なければ死ななかった。
俺は何も悪くないのだ。
遥光ちゃんも、あの時自分勝手にするから死んだんだ。
俺にわざわざ止める理由なんてない。
だから俺は何も悪くないのだ。
それを、アイツらは、俺が悪いようにいう。
なんで俺が悪いんだよ、俺は被害者だよ。
お前らの勝手な価値観を、人に押しつけるな。
俺は、俺は悪くない。 俺は悪くない。
悪いのは、こういう風に仕向けたあの主催者だろう。
殺し合いに乗っている、あの男のような奴らだろう。
俺にどうしろというんだよ、理想を俺に押しつけるな。
遥光ちゃんも、両断さんも、あの詐欺師も、みんな俺に理想を押しつける。
それがうまく行くはずなんてないのに。
「さぁ、行こう――――須藤君」
そんな絶望に押しつぶされている中、声が響いた。
目の前に立っていたのは、『彼女』だった。
いつもの笑顔で、俺に話しかけてくれる。
俺に、変な理想を押しつけたりしない。
俺を俺であると認めてくれる。
「あぁ、そうだな」
だから、そんな彼女に協力しなくてはならない。
彼女の考えた、最高の計画に。
マイナスであるバトルロワイアルをプラスにしたりするのではない。
ゼロ、無にするのだ。 この殺し合い自体をなかったことにする。
そうすれば、それほど幸せなことはないのではないか。
だからこそ俺は協力するのだ。
『彼女』――――●△◇■と。
俺が好きになった、その子と。
243
:
ロストワンの号哭〜あの子の心象は読めますか〜
◆9n1Os0Si9I
:2013/08/10(土) 23:06:11
02
車に揺られながら考える。
俺はいったいどうなっているのだろうと。
本当は今にも壊れそうなのに、なんとか保たせている精神状態では答えは出ない。
いや、平常時でも答えは出ないかもしれない。
俺は今、どうなっているのだろう。
先ほどまで、放送を聞き、そこで得た事実に悲しんでいた。
悲しんでいたとかいうレベルではないが……まぁ、そこはいいとしよう。
あくまでそれは俺だけのことである、そんな重要なことではない。
問題は、遥光が死んだというのに、思ったより平常でいられる自分だ。
今までの自分であれば、間違いなく俺は同行しているこの子たちに手を出しかねなかっただろう。
それが、今となってはああ叫ぶだけで終わらせれる。
叫ぶだけ……というわけではない。
だが、少なくともあの場で俺は想像したよりショックも受けなかった。
遥光じゃあ、生き残れないだろうと心の奥で思っていたからなのだろうか。
わからない、わかりたくもない。
結局今俺たちはデパート方面に向かっている。
最初は市街地に行こうという考えもあったが、危うきには近寄らずだ。
禁止エリアにうっかりは入り込んで、出れずに死ぬなんて最悪だからな。
復讐も果たせぬまま死ぬのは、嫌だ。
復讐はなにも生み出さない、生み出すとしても新たな恨みだけだ、というような言葉がある。
でも、俺にはそんな言葉は関係ないし気にしていられない。
大事な人を奪われて、その誰かの恨みを生み出さないために黙っていろと言うのか。
少なくとも、ガキである俺にはそんなことはできない。
まぁ、どうであれだ。
ここで死ぬわけにはいかないという話だ。
デパートに行ったところで危険人物に遭遇してしまえば死ぬだろうが、戦闘に関しては問題ないはずだ。
ある程度俺も武器は持っている、それに巴さんは強いと聞いている。
多少被害は受けるとしても、死ぬと言うことは薄いだろう。
……それも希望的観測であることにはかわりないけれど。
ガタガタと揺られながら、そんなことを考えていると車が急に止まった。
一体何があったのかと思いながら隣の真紀を見る。
「どうしたんだい、なんか急に止まったけど」
「窓の外見ればわかるわよ、誰かいるわ」
そう言われ、前を見る――――と、そこにいたのは1組の男女であった。
片方は多少ボロボロになっている男、もう片方はいたって外傷も見られない女の子だった。
しかもなかなか可愛い←ここ重要
なんというのか、感じ的に話をしようと俺たちを止めようとしてる感じな気がする。
少なくとも、武器を持っていないあたりは好戦的というわけではなさそうだが。
そう見せるために隠している可能性もあるが……まぁ、それならなんとかなるだろう。
「……俺が行って話をするよ、真紀は何か俺に異変とかあったらよろしく」
「このまま無視する、という選択もあると思うんだけど」
「それもいいんだけどね」
女の子の方をハーレム(俺の)に引き入れたいとか、そう言う思考もあるにはあったのだけれども。
一番の目的は、情報だった。
飯島遥光を殺した奴や、遥光が生前どこにいたのかとか。
そう言う情報が、少しでも欲しかったのだ。
まぁ、あまりメタな内容を言うのもなんだけれども。
この行動は正解でもあり不正解でもあった。
244
:
ロストワンの号哭〜あの子の心象は読めますか〜
◆9n1Os0Si9I
:2013/08/10(土) 23:06:42
03
少なくとも、今までの彼ならどうしていたのだろうか と考える。
あまり人の観察とかが得意ではない私も、熊本潤平の変化は目に見えていた。
原因はやはり、恋人の死なのだろう。
運転してる車の前に飛び出し無理矢理止めるような危ないようなことを普通にやってのけるような奴らと話とか、私なら絶対にしない。
しかし、熊本潤平は普通に話をするために外に出てしまった。
だが、考えてみれば彼にそんな常識は通用しなかったような気がする。
最初に自分に会ったときも、かなりの無茶をした。
ならばこの行動も彼にとって普通である、と考えられるかもしれないが。
なんというのだろうか、今までとその無茶の方向性が違うというのだろうか。
今までは、女の子のため、自己満足のため『だけ』に動いていたようだったのだが。
今はただ死に急いでいるような、そんな感じに見える。
死に急ぐ、というのはあくまで比喩表現だからこの場で使うのには適さないだろうが、そう言う感じなのだ。
自己満足から、復讐のために、方向転換したような。
自己満足のための手段から、復讐のための手段に変わったような。
このまま彼を放っておいて大丈夫なのだろうか、と少し心配になる。
別に彼が死のうと関係はないのだが……いや、関係なくはないか。
少なくとも、この殺し合いを生き抜く上での戦力が減る。
それだけでも、かなりの痛手なのだ。
だからこそどこかで、彼を止めるまではしないとしても話をして彼の状態を知ることも重要だろう。
「あの……」
と、後ろの方から声がする。
守谷さんと巴さんだった、柄部ちゃんはキャンピングカーに付けられているベッドで寝ていた。
先ほどの放送から、少し顔が暗かったあたり、きっと放送で何か引っかかる点のようなものがあったのだろう。
そう言うときは、寝るに限る……のだろうか。
まぁ、どうであれ今は守谷さんと巴さんに現状を説明する方が先であろう。
運転をしていたら、急に男女の2人組が飛び出してきたこと。
熊本潤平がその2人組と話に行ったこと。
簡単に言ってしまえばこの2点である。
というより、これ以外に話すことがない。
彼がどんな話をしているかとか、そう言ったところまで聞けるわけがない。
盗聴機でも用意して彼に付けていれば別だが、そんな道具は現在ない。
「……それ、かなり危ないんじゃないのかな」
「だから、俺に変な様子があったら来てくれって言われたんだけど……」
「少なくとも、こんな移動しとる巨大なもんの前に飛び出そうとか思わへんやろ……図太いっちゅー事なんか、無謀っちゅーんか……マトモな神経しとる奴がすることじゃああらへんで」
まぁ、武器は持って行っているはずだから最悪の状態にはならないと信じたい。
再び窓から熊本を見ると、何かもめているようではあった。
不穏だった、今にも何か事件が起きてしまいそうな。
そんな予感が自分の中に生まれた。
その自分の予感は捨てたものではないと思うようになり、同時にそう感じたならば対応をとるべきであったとこの数分後思うことになる。
245
:
ロストワンの号哭〜あの子の心象は読めますか〜
◆9n1Os0Si9I
:2013/08/10(土) 23:07:15
04
さて、話を変更してだ。
俺の目の前には2人の男女がいる。
片方は、ボコボコにされているような男――――こっちは興味ない。
いや……興味ないっつーのもおかしいな。
どうでもいいって言った方がいいか。
それよりも俺が気になったのは、その隣にいる女の子の方だ。
笑っている、だがその笑いに違和感を感じる。
なんというのだろうか、笑っているのに笑っていない。
まるで笑顔で働いているけれど実際は今にも死にそうなメンタルになっている社畜のような。
その例えもどうかと思ってしまうが……言いたいことは一つだ。
この子はおかしい と。
まぁ、おかしかったところで現状俺には関係ないわけだ。
とりあえず俺がするべきことは目の前の二人の対処ってわけだからな。
女の子の方を引き入れたいという願望はあるから、まぁ勧誘は考えには入れておこう。
「いきなり止めてすみません、少し話がしたかったもので」
「話がしたくて、キャンピングカーの前に飛び出すとか危ない事はしない方がいいよ。
それこそ、某なんたらプロジェクトのパクリとか言われちゃうからね、そういう輩に目を向けられるのは危険だぜ」
「……?」
おっと、メタネタは通用しないという事か。
なかなか手厳しいというのか、まぁ俺も時間軸的にこういうのを言うのはよろしくないんだけどな。
――――とりあえず話を戻そうか。
「まぁ、それはいいとしてだ。 そんなにしてまで言いたいことなんだろう?
ただ世間話がしたいとかいう訳じゃないだろう、もしその気だったならば俺は君達を病院に連れて行きたくなるね
ここの病院に行ったところで、どうせ医者なんかいないんだろうけどな」
「……私たちは提案があって貴方たちを止めたんですよ」
「へぇ、なんだい? とりあえず聞くだけは聞くけれど」
そう言った瞬間、その女の子の表情が変わった。
スイッチが入ったかのように。
そしてそれと同時に彼女はこんなことを言ってのけた。
「皆を生き返らせるために、死んでくれませんか」
多分俺はこれ以上なく、顔を凍らせたと思う。
あまり動揺を顔に出すのはしたくないんだけれども、これは少しばかり驚かざるを得ない。
こう、堂々と死んでくれませんかと言うのか。
どうせなら何も言わずにとっとと俺を凶器で殺した方が早そうだというのに。
わざわざ殺害予告をするというのか。
「おいおい、なんというか笑えない提案だね。 そんなのを俺が受けると思ってるのかい?
いくら可愛い女の子の提案だとしても少しばかり飛躍しすぎな気がするけれど」
「いや、言い方が悪かったかね」
と、そこで口を出してきたのは隣にいる男の方だった。
お前は黙っててくれていいんだけどな。
むしろそのまま消えてくれていいぞ。
「俺達が言いたいのは、そういう事じゃないんだ。 この殺し合いで優勝者に願いがかなえられるっていう奴があっただろ」
「ああ、あったような気がするな。 正直俺にとってはどうだっていいんだけどな」
「その願いで、この殺し合いをなかった事にすればいいんだよって話だ」
「――――ふーん」
「馬鹿じゃねぇの?」
口火を、切った。
確実にこれが不協和音を生み出すのを、確信していながら。
246
:
ロストワンの号哭〜あの子の心象は読めますか〜
◆9n1Os0Si9I
:2013/08/10(土) 23:08:09
05
「大体お前らはこの殺し合いを企画するような奴がちゃんと願いを叶えると思ってんのか?
いくらでも嘘は口から出るだろうよ。 口八丁に俺達に殺し合いさせようと騙すくらいするだろ。
その願い事だってその一つに決まってんだろ、あんな奴らのいう事を真に受けるとか、馬鹿じゃねぇのかって話だ。
それに、もしあの糞野郎が願いを叶えてくれるにしてもだ。 その願いを聞き入れる可能性はほぼ0だろーよ。
何のために殺し合いをしたんだ、って事になるからな」
目の前の男は、これだけ言ってふぅと息を吐く。
なるほど、交渉はほぼ無理だろうな。
元々期待はしてなかったが、仕方ない。
コイツは――――殺そう。
これ以上喋らせてたまるものか、コイツは危険だ。
狭山さんの正しさに、気付けないんだ。
だから、殺してやろう。
――――だが、今は間違いなく分が悪い。
コイツの乗ってた車には、少なくともあと1人は乗っているはずだ。
ソイツに俺がこの男を殺そうとしてることに気付かれたら、間違いなく危険だ。
「……おっと、そういやまだ名乗ってはいなかったな。 俺は熊本潤平、そこの子の名前を聞きたいと思ってたし、先に名乗っておいてやるぜ」
と、そこでその男が名乗ったのを俺は間違いなく聞いた。
熊本潤平――――飯島遥光から聞いた、その名前。
「――――お前が、遥光ちゃんの彼氏か」
俺がそう呟いたのと同時に、俺は見た。
熊本潤平の顔が、先ほどまでのヘラヘラとしたような顔から、背筋が凍るほどの無表情になったのを。
「テメェ、遥光を知ってるのか?」
「知ってるも何も、少し前まで一緒に行動してたよ――――死んだらしいけどね」
と、言い放った時だった。
俺の左頬に鈍い衝撃を受ける。
そして、そのまま吹き飛ばされた。
急にな事に受け身も取れず、俺の体は地面に落ちた。
「……何が、死んだらしい……だぁ?」
「ッ、痛ぇじゃねーかよ……何しやが……」
「なんで、お前はアイツから離れた!?」
「……あ?」
重い体を起こし、睨みつける。
何も知らない奴の言葉にここまでイラつくのは良くねぇが、それでもだ。
これだけは、間違えなく言える。
やっぱり、コイツは殺す
06
嫌な予感はしていた。
だが、その予感はこの時をもって確信に変わった。
熊本潤平が、少年を殴り倒した。
間違いなく、これは不穏の表れだ。
即刻止めに行かなくてはならない。
今の彼をこのまま放置して得策になるわけがない。
「待て、真紀! ウチが行った方が……」
「いいです、ここで大人数で詰めかけてもそれはそれで面倒だから。
万一だけれど、相手が手榴弾とかを隠し持っていたら……と考えると最悪だし」
本当なら、他の人に熊本を止めに行ってもらった方が自分が安全のはずだ。
もしあの2人組が言った通りに武器を隠し持っていたら、確実に交戦になる。
だが、それでも自分が行こうとしたのは、ただ焦っていて判断が鈍くなっていたからなのだろうか。
すぐにキャンピングカーを降り、熊本の所に走る。
「お前が見殺しにしただけなんだろ!? 何があったかは知らねぇが、お前は遥光を助けれなかっただけだろ!
一緒に行動してたなら、なんでそんな他人事として見れる!」
「……勝手に言ってくれんなよ、向こうから勝手に出て行っただけだ。
俺は悪くない……悪いのはアイツなんだ……!」
「だったら引き止めろよ!」
「引き止めたさ!」
2人の応酬が続けられる。
間違いなく、2人とも周りが見えていない。
このまま放置した場合、確実に危険が伴う。
「引き止めきれなかったのはお前のせいだろうが! それを遥光のせいにしてんじゃねぇ!」
「……うるせぇ」
「弱いくせに、何もできないくせに、俺達を崩しやがった! あんな奴、生きてたって邪魔になるだけだろうが!!」
その瞬間、乾いた音が ぱぁん と鳴った。
すべてが崩れ落ちるような、そんな感じがした。
遅かったのだ、何もかもが。
247
:
ロストワンの号哭〜あの子の心象は読めますか〜
◆9n1Os0Si9I
:2013/08/10(土) 23:09:01
07
「ッ――――!!」
パァン、と言う音とともに受けた衝撃で我に返った。
ふと横を見ると、真紀が立っていた。
今までになく真っ青な顔で、俺を見てる。
「何、してんのよ!」
「……え?」
何をした? いやいやそんなんわかんないよ。
さっきまで俺はあのゲスい男と話していたはずだ。
それで意識が飛んで、あれ……。
俺の右手に持っているモノはなんだ?
何で俺は、こんな物持っているんだ。
まさか、ありえねぇ。
そんなことがあってはならない。
少しづつ、視界を前の方に移す。
「――――あ」
嘘だと思いたかった。
だが、現実と言うのは常に非常な物だった。
先ほどまで話してた奴の周りを、赤色が彩っていた。
腹部を中心にソイツの制服を黒く染めている。
赤と黒、それは紛れもなく血の世界。
その中でソイツは痛い、痛いと喚いている。
「――――あぁ」
腹部には、穴が開いていた。
誰かに撃たれたような、そんな感じだった。
「う、あ……ああああああああああああああああああああああああ!!?」
俺は、叫んだ。 喉が嗄れるかもしれないほど。
その時、俺の右手から『ソレ』が落ちた。
ベレッタM92――――新藤真紀を『守る』という約束のもと、預かった品だ。
それを、俺は自分のために使った。
殺人という、俺が否定してきたことを。
「ああああああああああ、あ、ああ……あ」
叫び声はいつしか涸れ、涙へと変わっていった。
前までだったら、こんなことはなかったはずなのに。
気に入らなければ、暴力で、知力で、詭弁で、誰でも変えていた。
自分の思い通りに、『壊して』いたのだ。
俺がしたのは、規模は違えど『壊す』行為だ。
だが、俺は今自分が許せなくなっていた。
壊して、全部思い通りにしようとしていたのに。
遥光を殺した奴や音無の野郎を殺そうとまで考えていたのに。
いつの間にか――――俺自身が『壊れて』いた。
人を殺していたという事実に、耐えられなくなって。
元々壊れていたのに、さらに壊れて。
自分自身が、わからなくなる。
ああ――――誰か。
俺のこの雑念を、壊してくれ。
248
:
ロストワンの号哭〜あの子の心象は読めますか〜
◆9n1Os0Si9I
:2013/08/10(土) 23:10:04
08
被害は、甚大だった。
熊本潤平は傷はないものの、先ほどから目が死んでどこか遠くを見ている。
話しかけても、呆然としているだけ。
撃たれた少年……須藤凛と言うらしいが、彼は付き添いの女の子が連れて行った。
治療をすると言っても、全然聞かずにどこかへ行ってしまった。
「――――大丈夫なんですか? 熊本さん」
「ああ、守谷さん……。 大丈夫か大丈夫じゃないかで言えば、大丈夫じゃないわね……少し前までの空元気が嘘みたい」
元々、放送の後からおかしいとは思っていた。
それに、仇討ちに執着して彼は不安定だったのだ。
いくら強い奴であろうとも、人間は人間だ。
人を殺すというのは、完全に目的と言う物があってやっていられるものではない。
少なくとも自分はそれを知っているつもりだった。
かつて7人を殺した、殺人鬼として。
と、いつの間にか守谷さんがいなくなっていたのを確認し、再び熊本潤平に声をかける。
「――――ねぇ、潤平」
「……」
「まぁ、聞いてるだけでいいわ。 今の貴方に話をしろなんて言っても非情だろうし」
「貴方と彼がいったい何を話したのかはわからない。 でも、貴方はこんな人を殺した程度で壊れるような人だったの?
あんなに偉そうに私に説教かましておいて、偉そうなものね……」
「……」
少しキツい事を言うかもしれないけれど。
彼が立ち直ることを、信じるしかない。
間違いなく、このチームは彼あってのものだ。
その彼が立ち直らなければ、自分自身も危ない。
「私を守る、と言う約束は……忘れてないわよね?」
「……」
コク、と彼の首が少し動いた。
完全に、聞こえていないわけではないようだ。
さっきから反応なかったから独り言喋ってるだけになるかもと思ってたんだけれど。
「――――じゃあ、立ち直りなさい。 面倒事は御免だっていうのに面倒事に巻き込んで……そのまま駄目だっただなんて、許さないから」
それだけ言って、私はキャンプカーの運転を始める。
どこに向かうのか、まったく決めずに。
ただただキャンプカーを走らせるしかなかった。
【熊本潤平@数だけロワ】
[状態]:主催者及び飯島遥光を殺害した者への憎悪と殺意、精神崩壊(重度)、キャンピングカーの助手席に乗っている
[服装]:少し砂埃で汚れている
[装備]:ウィンチェスターM1897(3/5)
[道具]:基本支給品一式、12ゲージショットシェル(5)、M1917銃剣、ベルグマン・ベアードM1908(2/6)、
装弾クリップ(9mmラルゴ弾6発入り×3)、こけし、ベレッタM92(11/15)
[思考]
基本:女を守る。主催者達と、遥光を殺した奴を殺す。
1:――――
[備考]
※数だけロワ29話「無題――――NoTitle――――」以後からの参戦です。
※矢部翼の外見のみ記憶しました。
※この殺し合いで彼自身が『壊れて』しまっているようです。
【新藤真紀@俺のオリキャラでバトルロワイアル】
[状態]:健康、キャンピングカーを運転中
[服装]:特筆事項なし
[装備]:キャンピングカー(車体に若干の破損あり)
[道具]:基本支給品一式、ベレッタM92予備弾薬(30/30) 、ケンタッキーフライドチキンの皮入り箱
[思考]
基本:一応殺し合いには乗らないことにする。
1:ただ今は、運転してどこかに向かう。
2:強そうな、面倒そうな人物にはなるべく関わらないようにする
3:銃……今なら取っても問題なさそうだけど。
[備考]
※本編終了後からの参加です。
【巴御前@夢オチだったロワのキャラでバトルロワイアル】
[状態]:疲労(中)、腹部にダメージ(中)、右足に裂傷、キャンピングカー後部スペースに搭乗中
[服装]:白装束
[装備]:安物の弓
[道具]:基本支給品、シャベル
[思考]
基本:殺し合いには乗らない
1:熊本たちと行動する
2:刀の女(詩織)には警戒
3:熊本については……どうにかなるやろ、多分
[備考]
※夢オチロワ「怠慢な革命家」より登場。傷は主催により治っています。
※固有能力には大幅な制限がかかっています。
249
:
ロストワンの号哭〜あの子の心象は読めますか〜
◆9n1Os0Si9I
:2013/08/10(土) 23:11:05
【柄部霊歌@サイキッカーバトルロワイアル】
[状態]:健康、キャンピングカー後部スペースで睡眠中
[服装]:特筆事項なし
[装備]:フランベルジェ
[道具]:基本支給品、カレーの材料セット、大量の包丁(現地調達)
[思考]
基本:バトルロワイアルを破壊する。
1:彩子さんを守る。熊本さんたちも、全員守ってみせる
[備考]
※登場時期はサイキッカーバトルロワイアル開始後、福沢正也と出会ってから。
※守谷彩子への勘違いは解けました。
※辻斬り思考が消えました。
【守谷彩子@需要なし1st】
[状態]:健康、キャンピングカー後部スペースに搭乗中
[服装]:特筆事項無し
[装備]:M1ガーランド(8/8)
[道具]:基本支給品、鍋、皮むき器、調味料一式
[思考]
基本:自分らしくお気楽に生きよう。
1:霊歌ちゃんを守る。潤平くんたちと行動。
2:なにか罪滅ぼし的なことは出来ないだろうか。
3:潤平くん……大丈夫かな。
4:あのAV衝撃的すぎたわ……。
[備考]
※需要なし1st死亡後から登場。
※柄部霊歌への勘違いは解けました。
※稲垣葉月とレックスのAVを見てしまいました。
※キャンピングカー及び五人がどこに向かうかは次の書き手さんにお任せします。
09
痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い
痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い
痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い
ふざけるな、俺は悪くないのに。
何で俺がこんな目に遭わなくちゃならないんだ。
絶対に、絶対に許さない。
アイツは、熊本潤平は俺が殺してやる。
そうでもしなくては、許すこともできねぇ。
「――――狭山、さん」
「はい」
「応急処置、手伝って……くれないかな」
「……」
なんで黙っているんだろう。
ああ、先ほどの奴を思い出しているのか。
狭山さんの考えに対して、馬鹿らしいなんて一蹴して。
「――――狭山さ」
パン、と乾いた音が鳴る。
先ほども耳に入ってきたような音と共に、俺の腹部に痛みと熱さが拡がる。
一瞬何が起きたのかわからなかった。
だが、言えることは一つだけ。
俺は、撃たれたんだ。
それじゃあ、いったい誰に?
俺の周りには狭山さんしかいない。
他の奴が狙撃してきたとでも言うのか。
いや、それだったら狭山さんが先に殺されているはず。
じゃあ――――まさか。
ありえない、そんなことはあってはならない。
だって、彼女が俺を撃つはずがない。
そんなことが、あっていいはずが、ないんだ。
――――――――パン
嘘、だ。
250
:
ロストワンの号哭〜あの子の心象は読めますか〜
◆9n1Os0Si9I
:2013/08/10(土) 23:11:49
俺は、そこに立っていた。
どこかで見たような光景、そうだ……一回あの狐のような奴にボコられた時だ。
俺はここに来たんだ。
あの時、俺を再び立ち上がらせた場所に。
ここならば、俺を助けてくれる奴がいるはずだ。
総規模yを持った時だった。
――――お前のせいだ
そこで、俺の耳元でそんな声が聞こえる。
とっさに耳を塞ぐ、その言葉は俺にとってとてつもない嫌な言葉だったから。
だが、声は止まない。
それどころがどんどん大きくなる。
お前のせいだ
お前が止めていれば
人のせいにするな
助けられた命だってあるはずだ 結局は自分勝手じゃないか
弱いくせに
様々な声が、俺に向かってその言葉の弾丸を放ってくる。
「うるさい、うるさい、うるさい……!」
テメェのせいで、俺が死んだ……お前のせいだ
最初に襲いかかってきた男の声で俺に話しかけてくる。
お前が襲い掛からなければ済んだ話だろう。
黙れよ。
須藤殿、己の失態を償ってこそ強くなれるのだ……なのにお主は
加藤清正の声で俺に話しかけてくる。
なんだよ、偽善者面して正論でも言ったつもりか。
黙れよ。
お前が、そんな奴だったなんて思わなかったよ
浅倉の声で俺に話しかけてくる。
黙れよ。
おにーさん……私は、そんな風になってほしかったんじゃないの
飯島ちゃんの声で俺に話しかけてくる。
黙れよ。
なんだよ、結局は俺が悪いっていうのか。
俺は悪くない、悪いのはあいつらじゃないか。
「なんで、寄ってたかって、俺ばかり悪いと言う! いい加減にしてくれ!!」
「……りん」
251
:
ロストワンの号哭〜あの子の心象は読めますか〜
◆9n1Os0Si9I
:2013/08/10(土) 23:12:20
後ろから、救いとも思える声が聞こえた。
そこにいたのは俺の親友、津村匠だった。
コイツなら、匠ならわかってくれるはずだ。
俺が正しいってことを。
あいつらが間違っているという事を。
「しょうじき、こんなりんみたくなかったよ……ぼくがあこがれたきみは、どこにいったの?」
だから、なんで皆俺を責めるんだ。
お前もあいつらと同じだっていうのか。
俺が悪いっていうのかよ。
「ああああああああああああああああああああああああああああ!!
うるさい、うるさい! 黙れ! 消えろ、俺の目の前から、消えろ!!
俺は、俺は悪くない、悪いのは、アイツらじゃねぇかよおおおおおおおおおおおおおおお!!」
と、叫んだ瞬間周りが暗くなった。
目の前には、拳銃が一丁。
他には何もなかった。
苦しかった、もうこの世に味方はいないんだって。
分かってくれる人なんかいないんだって。
その銃を手に取って、俺は、自分を……。
『壊した』
10
「さようなら、須藤君……大丈夫、安心して……生き返らせてあげるから」
私は、目の前の彼に言った。
殺した理由は単純にして明解、邪魔だったからだ。
これ以上彼を生かしておいても怪我のせいで邪魔になる。
だからこそ、私の支給品に入っていたこの銃で殺した。
今までずっと隠してきた、私の武器で。
「大丈夫……阿見音様の導きは正しいんだから……必ずあなたを生き返らせる、待っていてね須藤君」
少年に、救いはなかった。
少女に、救いはあるのか。
【須藤凛@変哲もないオリキャラでバトルロワイアル 死亡】
【狭山雪子@変哲もないオリキャラでバトルロワイアル】
[状態]:マインドコントロールによる洗脳
[服装]:三日月中学の女子制服
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、カッター、スタンガン、ストレイヤーヴォイトインフィニティ9mm×21(16/17)
ストレイヤーヴォイトインフィニティ9mm×21のマガジン(3)、ランダム支給品×2
[思考]
基本:すべてのものを取り戻す
1:新しい協力者を探す
2:マーダー、足手まとい、邪魔者については排除する
[備考]
※変哲もないオリキャラでバトルロワイアル参加前からの参加です
※支給品に武器の類はないようです
※阿見音弘之のマインドコントロールにかかりました
252
:
◆9n1Os0Si9I
:2013/08/10(土) 23:14:36
投下終了。
ボツネタの理由としては
1.熊本君が殺し合いで出会いや別れなどあたってこんなメンタル弱くなるわけがない
2.現在位置が全然違う
などなどで、ifストーリーであります、完全に。
という事で終了です。
253
:
◆9n1Os0Si9I
:2014/02/10(月) 22:08:32
おまけSS第二弾、投下します。
メンバーは古川、カインツ、レックス、三瀬、一ノ瀬、川田、氷室です。
254
:
◆9n1Os0Si9I
:2014/02/10(月) 22:09:07
一体俺は、何故強さを求めたのだろうか。
まだ知らぬ誰かのため? いや、そんな訳はない。
俺はそんなに強い人間じゃないから。
妹のため? いや、実際どうなんだろうな。
あのクソババアから守るために強くなった、のかもしれない。
俺達を見捨てて消えた、あの母親と言いたくない母親を。
でも、きっとそんな事を考えている余裕はなかっただろう。
結局、色々考えてきたが……結論で言えばだ。
自分のため、という事になるだろう。
最初は俺も、師匠に鍛えられた後、強くなったのを振りかざしたりしただけだった。
そこから、色々あって今の俺になった。
ふと、ぼーっとしながら昔の事を思い返していた。
今できることはないから、ただこういう感じに暇をつぶすしかない。
実際車を運転してるのはレックスさんだし(どうやって運転できてるのかはわからないが)
俺がするのは、何かがあったときのために万全に体調を戻すことだ。
「正人、大丈夫?」
「……ん、あぁ……大丈夫だ。 一時期よりも戻っているっつーか、ほぼ万全には動けるはずだ。
心配はいらねぇさ……もう油断はするつもりもないし」
笑子がわざわざ心配してくれている。
守ると決めた女に心配されるようでは、俺もまだまだである。
車に揺られてから、どれくらい経ったのだろうか。
先ほどまで文字通りぼーっとしていたから時間経過の感覚がおかしくなっている。
救急車は運転の座席の所以外は外が見えないようになっている。
景色が見えないというのも原因の一つなのだろう。
変わらない景色は人間の時間間隔を狂わせる。
「……なぁ、カインツ」
「どうしたんだい、体調不良ならば気兼ねなく言ってくれ」
「いや、すこぶる好調だよ……そうじゃなくて、出発からどれくらい経ったか聞きたかったんだ。
半分寝てたから、時間間隔が狂ってるし。 あんま車の中で機械いじって酔いたくないし」
「正人君は車にあまり強くないタイプなのかい? ……まぁ、それはともかく、せいぜい30分と言ったところだよ。
他に車がいないというか、交通が機能していないからノンストップだし結構移動はしているけれどね」
「そっか、あんがとな」
まぁ、そんな焦るようなものでもないからな。
師匠が死んで、ピンポイントで夢に出て、オカルトもいいところだが、師匠は俺に伝えたかったのかもしれない。
その、伝えたかったものを、俺は探しているのだけれども。
そんなすぐに探したって見つかるわけもなく。
そもそも師匠がどこで死んだとか情報がないと大まかな目星もつけられない。
結果的に俺は何もできずにただ探すだけ、って事になるんだよな。
悔しいとは思わないが、探さなくてはいけないというような気にもなる。
結局焦るようなものでないと言いつつ、俺は焦っている感じになるのだ。
矛盾とはこういうのを言うのだろう……。
「おーい、お前らちょっといいか?」
「……ん? どうしたんだレックスさん」
運転席から声が聞こえる、声の主は言わずもがなレックスさん。
どうやら、なんか施設みたいなものを見つけたそうだ。
そこに行ってみるかどうか、というのがレックスさんが俺達を呼んだ真意だった。
島民ふれあいセンター、地図を見るとそこらしい。
多目的施設との事らしくきっと探せば何かあるだろう。
だが、同時にこの殺し合いに乗っている人間がいる可能性もある。
けれどそんな事を気にしていたら探せるものも探せない。
多少のリスクは負うべきもの、であろう。
「行きましょう、誰かいるかもしれませんし……俺もそろそろ体を動かしたかった頃ですから」
「そうだね、何も行動を起こさずに動いても始まらないし。 住宅街もあるからガソリン補充もできそうだ」
「私は特に意見は……主張できるような立場じゃあないので」
「ま、賛成多数って感じで決まりか。 了解、んじゃ入ることにするぜ」
と、言ってる間に住宅街に突入した。
俺は、一瞬嫌な予感をしたのを抑え込んだ。
用心をしなくちゃいけない、それだけ考えて歩き回るための準備を始めた。
255
:
愛とエゴの終着点
◆9n1Os0Si9I
:2014/02/10(月) 22:09:44
◆ ◆ ◆
市街地を回っているが、特にこれと言って目を見張るものがない。
動き回って今の所収穫があったのが、殺し合いに乗っていない参加者との合流だ。
戦闘能力については期待できないが、これに関してはぜいたくは言えない。
「とりあえず……探すだけは探した感じかな」
「で、これからどうすんだ?」
「……どうしたものかな」
これからどうするか、それが今の現実的問題だ。
俺、一ノ瀬進個人としては青髪の少年と銀髪の青年を殺したいところだ。
だが、今の戦力では……精々5分5分と言ったところ、もし負けた場合川田さんもロクな目に遭わないだろう。
傭兵として今まで戦ってきたときは、護るものがたいしてなかったから戦えたが、今は違う。
殺し合いに逆らう、その時点で護るべきものは増えていくのだ。
だからこそ軽率に動くことが出来ない、それは承知しているつもりだが。
(……もう少し仲間がいれば、そういう仮定になっちまうなぁ)
結局言ってしまえば、こういう結論になってしまう。
戦闘能力が高い人間がせめて、もう一人いれば変わる。
あの2人が協力体制をとっていた場合2VS2に持ち込める。
もしどちらかが殺され死亡していた場合は、2VS1と数で圧倒できる。
数が多いといいというわけではないが、戦いに置いて数は戦況を見る際の一つとして考えるものだ。
「……ん? なんか音がしねぇか……?」
「音、本当だ……車……か?」
川田さんの発言のおかげで、車の接近に気付けた。
とりあえず身を隠しておいた方がいいか、接触を図るべきかだが。
「……川田さん、隠れておいてください。 俺が接触してきます」
「な、大丈夫なのか……? もし殺し合いに乗ってる奴だったら、殺されるかもしれねぇんだぜ?」
「俺はそんな簡単に殺されません、それに……もし殺された場合は、貴方が逃げて危険を誰かに伝えればいい。
でも、先ほど道中で話した2名については近づかないようにお願いします、それでは」
道路に出ると、そこにいたのは救急車だった。
運転している奴の顔は見えないが、俺が出るとともに車が止まる。
向こうもこちらに気付いたのだろう、少なくとも向こうが殺し合いに乗っているならば間違いなく車で俺を轢こうとしているだろう。
だが、向こうが殺し合いに乗っていない確証はない。
油断をせずに、救急車から誰かが降りてくるのを待つ。
と、そこで誰か一人降りてきた。
刀を持った少年、武器を持っているのは俺を殺そうとしているからか、念のための武器という事か。
だが、それに関しては今気にしている場面ではない。
実際に向こうが動いたら、そうなるだろう。
「……俺は古川正人だ、殺し合いには乗っていない。 アンタは?」
「一ノ瀬進、殺し合いには乗っていない。 情報交換がしたいのだが、いいか?」
「問題はない……と思うが、一存じゃ決められないね。 レックスさん、どう思う?」
256
:
愛とエゴの終着点
◆9n1Os0Si9I
:2014/02/10(月) 22:10:26
と、そこで運転席から一人降りてきた。
いや……一人、ではない。 一匹と言うべきだろうか。
狼が二足歩行で立っていた、いやはや……驚いた。
仕事柄獣に育てられた少年とか、そう言うのは見たことあるが、獣が二足歩行して喋っているとは。
というか隣の少年はそれを平然と見ているのか、驚いたことだ。
元々俺に常識と言う物は薄い(仕事柄のせい)が、それでもこれは異常だと分かる。
「俺は問題ないと思うぜ……アイツからは、嫌な感じがしないからな」
「嫌な感じってのもわかんないけどさ……まぁ大丈夫って事だろ?」
「なら、そちらに向かわせてもらう。 というか、その様子なら来ても大丈夫そうだな。
川田さん、出てきてくれ……この人たちは殺し合いには乗っていない」
「……と、そういうわけだ……騙してるようですまねぇが、念のために隠れさせてもらってたぜ」
この時点で、少しだけ俺は心に余裕を持てた。
数で押せる仲間が増えた、その事実が目の前にあったからだ。
だが、そんな幻想は――――そのまま現実になるとは限らなかった。
◆ ◆ ◆
青髪の少年と銀髪の青年に気をつけろ。
それが一ノ瀬さんから言われた言葉だった。
いや、というか気をつけろって言う問題ではなかった。
殺せれば殺しておきたい、そうとまで一ノ瀬さんは言ってのけたのだ。
「……殺したい、ねぇ」
外の空気を吸ってくる、そう言って俺は外に出ていた。
暖房の聞いていた市民ホールとは違った新鮮な空気が俺の頭を冷やしてくれた。
先ほどの会話を思い出しながらあたりを散歩する。
彼、一ノ瀬さん自身、危険人物というわけではない。
それどころがかなり温厚と言った感じだ。
その彼をあそこまで感情的なまでに殺しておきたいと言わせる人物。
一体どんな人物なのだろうか、気になるというより、少しばかり恐れもある。
「……ん」
そろそろ戻ろうか、そう考えていた時だった。
向こう側から、誰かが来ているのが見えた。
血を服に着けた、銀髪の男。
さっき聞いた話を繋げれば、間違いなく危険とわかる人物。
危険だ――――そう俺の中で何かが告げた。
逃げるべきだとは分かっているが、向こうは俺の方を見据えている。
皆が集まっている市民ホールに入れば、最悪逃げ場も無くなってしまう。
だが、今の俺に戦って殺すだけの余裕があるのか。
行動不能の状態からなんとか復活した俺に、万全の状態で戦うことが出来るのか。
無理だ、せめてあと数時間休めば問題ないと思うが……今の状態はボロボロで戦うのと同じだ。
どちらにしろ、ほとんどの場合が戦わなければ生き残れないという事である。
ならば、取るべき選択肢は一つである。
「急げば、まだなんとかなる……か!」
一ノ瀬さんやレックスさんに協力を仰げば、何とかなるかもしれない。
向こうがこちらに気付いているかまではわからない……いや、気付いていると考えるべきだ。
走って、先ほどまで集まっていた民家を目指す。
「……ッ!!」
パララララッ、と背後から音が聞こえる。
威嚇射撃だというのはわかっている、だからあまり傷を負うことについては問題としていない。
だが、今一番脅威となっているのはその射撃ではない。
向こうがこちらの存在を認識していた、という事実なのだ。
257
:
愛とエゴの終着点
◆9n1Os0Si9I
:2014/02/10(月) 22:11:00
◆ ◆ ◆
「ッ、着いた!」
市民ホールの自動ドアが開き、中に入ると5人がまだ話をしていた。
その5人が一気にこちらを見る、急いで説明しなくてはいけないが声が上手く出ない。
「どうしたんだい、正人君……その様子だと、何かあったようだけれど」
「は、はぁ……はぁ……ぎ、銀髪の……男が、こっちに来てる!」
「ッ!!」
5人とも全員が同じ反応を見せる。
それはそうだ、危険人物と認識している人物がこちらに向かってきているとなれば当然だ。
「レックスさん、何かがあった場合が怖いから川田さん達を車に乗せて出発する準備をしてくれ」
「な……アンタはどうすんだよ」
「ここで、迎え撃つ。 ここでなんとかしておかないと、最悪の状況になる可能性もある」
「おいおいおいおい……なぁんだかいろんな人がいるじゃないか」
一瞬で場の空気が凍りついた。
入口に男が立っていたから、ただそれだけの理由である。
だが、その理由が圧倒的な絶望であった。
氷室勝好――――化物と渡り合い、四字熟語と生還者を殺した張本人。
「ん、んんんんん? おぉおぉ! 古川君! ひっさしぶりだねー……元気してたかい?」
「……誰だお前」
なぜか馴れ馴れしくしてくる銀髪の男に対し、俺はまったくその意味が理解できなかった。
少なくともこんな知り合いを作った覚えはないし、いたとしたら絶対に忘れないだろう。
だが、向こうは俺の事を知っていて俺は知らない。
それにただ名前を知っているとかそう言うモノじゃなかった。
『久しぶり』、と銀髪の男は言った。 つまり俺とこの男は一度会っていることになる。
じゃあ、それはいつだ?
全く理解できないが、今そのことについて考えている余裕はそれ以上なかった。
銀髪の男がこちらに銃口を向けたからだ。
「良い目してるじゃねぇの、あの時と似たような……そんな目してやがるな」
「……ごちゃごちゃ言ってんじゃねぇ。 俺はお前の事なんざ知らねぇよ」
「ふーん、ま……いいか。 古川君、君が何言ってようがここで死ぬのは確定してんだ、覚悟はできてるよな?」
「……負けねぇよ」
黒作大刀を鞘から抜き、構える。
相手は機関銃、真正面で戦えば間違いなく蜂の巣になる。
拳銃レベルだったら何とかなるかもしれないけれど、機関銃となるとそうはいかない。
師匠だったら避けるとかもできなくはないかもしれないが、俺はそんな化物みたいな戦い方は不可能だ。
「んじゃー、行きますよ――――っと!」
バララララッ、と弾丸が発射される。
物陰に隠れてなんとか避ける、他の皆は大丈夫かと思ったが、すでにこの場に残っているのは俺と一ノ瀬さんだけだった。
他の皆の危険はない、それだけ確認できたのは上等だ。
あとはどうにかしてあの銀髪の男を処理するだけ。
捕縛か殺害、機会を見て逃走して……なんて選択肢も浮かんだが間違いなく一ノ瀬さんがそれを許さないだろう。
既に彼の仲間が一人殺されたと聞いている、許せないのはわかる。
だが、俺としては皆を危険な目に遭わせるわけにはいかないのだ。
笑子も護らなくてはいけないのに、あんな銃火器を持っている人間と立ち向かうのは御免被りたいのが本音である。
258
:
愛とエゴの終着点
◆9n1Os0Si9I
:2014/02/10(月) 22:11:42
「一ノ瀬さん、一旦この場から離れましょう。 この距離で戦ってもまず勝てません」
「……そうだな。 確かに今この状況は好ましくない」
そう決めてすぐ、物陰から飛び出る。
銃弾が俺達に襲い掛かるが、運よく当たらずに回避できた。
だが、この場を回避できたというだけで武器の有利は変わっていない。
こちらにも銃はあるが一ノ瀬さんが使っていないあたり射撃できる範囲に向こうがいないのだろう。
というより向こうは下手な鉄砲数撃ちゃ当たる、といった感じに撃ってきている。
まったく以て、考えれば考えるだけ悪い方向にしか思考が傾かない。
対策をとるにしても向こうが弾切れになるまで避け続けるくらいしかない。
まぁ、それは100%と言っていいレベルで不可能である。
今までなんとか避けれているが、このまま行けばどこかで負傷し、ジリ貧になり殺される。
だったら、賭けで特攻して行った方がいい。
「……なぁ、古川君……超単純な作戦だが、考えがある」
「一応、聞くだけ聞いておこう。 神風特攻とかほざいたこと言ったら殴るぞ」
「そんなバカな真似はしないさ……だが、十分にやれる作戦ではあるさ」
◆ ◆ ◆
「ふんふんふーん、どっこかなーでっておいでー」
氷室勝好は余裕綽々と言ったように歩いていた。
だが、別段余裕があるというわけではない。
慢心が自分を殺す可能性があることはすでに青髪の少年から学んでいた。
古川正人ともう一人、彼が一度見逃した一ノ瀬進の装備は確認している。
古川は刀、一ノ瀬はサブマシンガンと言った感じのはずだ。
(……さーて、どう出るか? 面白くしてくれよ、お二人さん)
1VS2という通常考えれば不利な状況である。
だが、氷室勝好は焦らない、焦りは敗北を生む。
慢心もせず焦りもせず、確実に標的を殺す。
「……っと、そこにいるのかな、っと!」
バララララララッ、と撃った瞬間物陰から一人飛び出してきた。
刀を持った少年、古川正人の方だった。
もう一人の姿は見えない、どこかに隠れているのだろうか。
それとも、挟み撃ちでもするつもりだろうか。
「もう一人はどこ行ったのかなー?」
と、一応牽制をするが古川は反応しない。
何かを仕掛けてくることは確定だ、だが何を仕掛けてくるのかはわからない。
だったら、今するべきは一つだろう。
ここで、殺しあう――――その一点に尽きる。
「まぁ、そんじゃやりましょうかねぇ……っと!」
発砲すると同時に古川も動く。
と、同時にだった。
背後に感じた気配、間違いなくもう一人の男のモノだった。
挟み撃ち、単純にして数と地の利を生かせる最高の作戦だ。
だが、それは相手が普通の人間に限った場合である。
氷室勝好にとって、それはただ『面白い作戦』でしかない。
まず古川の方に数発発砲し、威嚇する。
その次の瞬間、振り返りもう一人に対し発砲する。
その弾丸は一ノ瀬に当たることはなかったが、持っていたサブマシンガンに直撃した。
勢いに弾かれ、一ノ瀬は武器を落としてしまう。
たった一瞬、されど一瞬である。
1VS2という不利な状況からまず一人の武装を解除した。
次に対面するは古川正人、まだ距離は氷室勝好の距離であった。
刀が届かない範囲、この距離で銃弾を放てばまず避けられず自分に攻撃も届かない。
259
:
愛とエゴの終着点
◆9n1Os0Si9I
:2014/02/10(月) 22:12:50
勝ちを確信した――――はずだった。
無音の痛みが、氷室勝好を襲った。
◆ ◆ ◆
聞いた作戦は単純明快、挟み撃ちだった。
だが、ただの挟み撃ちでは失敗するから念には念をと一ノ瀬さんが俺に教えてくれた。
銀髪の男は、左腕に傷を負っている、と。
移動しているときに奴は左腕をほとんど動かさなかったと言っていた。
それに合せて、服についている血痕……幾度も戦場を切り抜けた一ノ瀬の観察眼の賜物だった。
傷を負っていて、動かさなかったと推理したようだ。
そこで一ノ瀬さんは俺にこう告げた。
「もし俺が攻撃不能になったら、何か投擲できる物で血痕の付近の部分に攻撃してほしい」
もし一ノ瀬が攻撃できなくなれば、銃と刀では間違いなく銃に分があるに決まっている。
だからこそ、その差を埋めるための策を立てたのだ。
しかしながら、この作戦には穴があった。
もし銀髪の男が左腕に傷を負っていなかったら。
少しの衝撃は与えられても、銃撃を止める一手にはならない。
それに、もし投擲に失敗したらどうなるか。
間違いなくお陀仏になるのは見えていた。
だが、そんなことは承知であった。
圧倒的武器の差を埋めるには、多少の賭けは必要だ。
それに、特攻するより幾分も生存率は高い。
投擲するものは探し始めたところですぐに見つかった。
デイバックの中から出てきた野球ボール、甲子園優勝投手のウイニングボールとの事らしい。
他に使えそうなものがないため、これでいいと考える他なかった。
その結果が、今出ている。
野球ボールはうまく銀髪の男の左腕に直撃していた。
「ッ、があああああああああ!!」
銀髪の男から、苦痛を抑え込むような叫びが放たれる。
ここが勝負だった、迷いを捨てて俺は男に斬りにかかる。
対して銀髪の男もこちらに向かって発砲をする。
「うおらあああああああああああああああああああ!!」
「ああああああああああああああああああああああ!!」
視界がブレていた。
手に残ったのは、何かを斬る感覚だった。
同時に、左肩に鈍い痛みを襲う。
何が起きたのか、一瞬わからなかった。
「おい、おい! 古川!!」
声が聞こえる、一ノ瀬さんの声で間違いはない。
重い体を起こすと、左肩の痛みが強くなり俺に襲い掛かってきた。
「……俺、どうなったんですか?」
「左肩を撃たれている。 だが……大丈夫、かすり傷程度だ」
「……銀髪の男は」
「安心しろ、もう……大丈夫だ」
「……そうですか」
という事は、死んだのだろう。
なんとか生き残った、死なずに済んだ。
それだけで喜ぶべき事態なのだろう……だが、喜べない。
人を、殺したからだろうか。
わからない……何もわからない。
「行こう……そして、これからの事を考えよう」
でも、今は……こうして生きていることを実感しよう。
喜べなくてもいい、俺はまた笑子と生きたまま会えるのだ。
それだけでもきっと、素晴らしい事なんだから。
◆ ◆ ◆
260
:
愛とエゴの終着点
◆9n1Os0Si9I
:2014/02/10(月) 22:13:32
「……もう皆準備してるようだな」
「そうだな」
駐車場に出ると、すでに救急車が出発準備完了と言わんばかりの状態であった。
エンジンはかけてあり、レックスさんが運転席にいる。
何かあった場合すぐに出発できるようにしておけ、と言ってた通りである。
「正人!」
救急車の中から、笑子が出てきた。
他のメンツも続々車外に出てきた、お出迎えみたいな感じだ。
だが、悪い感じはしない。
そりゃあ出迎えてもらって気分が悪くなる奴はいないけれど。
なんというのか……生きている、そう言う感じがした。
「んじゃ……行きましょうか」
これから、やるべきことは多い。
この殺し合いを潰すために動いたり、師匠と関わった人を探すとか。
だが今はただ休むことに専念しよう。
――――だが、現実は『非常』であり『非情』である
バララララッ、と。
乾いた音が笑顔を湿らせた。
俺の体は――――思うように動かなかった。
◆ ◆ ◆
261
:
愛とエゴの終着点
◆9n1Os0Si9I
:2014/02/10(月) 22:14:06
私は、見てしまった。
いや……見えてしまった。
目の前で、古川正人が――――崩れ落ちていくのを。
「……え?」
何があったのか、まったくわからなかった。
だが、今目の前にあることだけがわかる事実だった。
『古川正人が撃たれた』――――誰に?
「カ、ハ……ハ!! ざまぁ、みや、が、」
薄い笑い声が上から聞こえてきた。
市民ホールの二階の窓、そこから覗いていた。
銀髪の男――――氷室勝好が。
「てめぇええエエエエエエエエエエ!!」
一ノ瀬さんが、持っていたサブマシンガンで銀髪の男を射撃する。
男の頭に弾丸が当たり、そのまま男は前のめりになるように倒れて落ちてきた。
グチャ、という音が耳に入ってくる。
間違いなく、銀髪の男は絶命しただろう。
「……嘘だろ、ほぼ死んでたのに……脈も消えかけてたのに」
一ノ瀬のつぶやきも耳に入り記憶に残るが、今はそんな場合ではない。
今目の前で倒れた、古川正人の方が心配だから。
「正人! 起きてよ、正人!!」
揺らすといけない、というようなドラマで見た知識を思い出しながら声をかける。
だが、ほとんど反応がない。
生きているけれど、もう死が訪れる。
そう表すのにふさわしいような、状態だった。
「……ん、だよ、ったく……痛ぇ、な」
「ま、正人……!」
弱弱しい声で、正人は反応した。
いつの間にか私の目には、涙が溜まっていた。
それが雨のように、正人の頬に当たった。
よく映画では、これで生き返ったり傷が消えたりするなんて事があるけれど、そんなことはない。
これは、現実なのだから。
「……泣く、なよ……ゴフッ、ゴホッ、笑ってろよ」
「なんで……笑えなんて言うの……正人が死んじゃうかもしれないのに!!」
「は、決まってんだろ……」
「好きな奴の泣き顔なんざ、死に際に見たい訳、ないだろうが……!」
「笑えよ、笑ってるお前が……俺は好きなんだ」
「――――お前の笑顔に俺は惹かれたんだからさ」
そこで、正人は眼を閉じた。
動かない、動いてくれない。
声をかけても返事してくれない。
「……どいてくれ、三瀬さん」
そこで、後ろからカインツさんが私を押しのけ正人の体を調べ始めた。
少しすると、カインツさんは首を振った。
その意味が、いったいどういう意味なのか。
わかっている、けれども理解したくなかった。
「……正人」
呼んでも、帰ってこないのはわかっている。
けれども……信じたくなかった。
また一緒にどこかに遊びに行ったり、ご飯食べたり、そういう事が続くと思っていたから。
こんな――――非情な現実は、あってほしくなかった。
「さて、それじゃあ……始めようか」
そう言ったのは、カインツさんだった。
次の瞬間、彼は――――。
古川正人の肉体を、『喰い始めた』のだ。
262
:
愛とエゴの終着点
◆9n1Os0Si9I
:2014/02/10(月) 22:14:41
◆ ◆ ◆
幕間
カインツ・アルフォードは優秀な医者だ。
だが、そんな彼でも救えない命は当然ある。
そんな彼がとる行動、それは『掬えなかった命を喰らう』事だ。
自分の中に肉体を取り込んで、せめて少しでも自分の中で生かそうという彼なりの考えである。
だが、それは――――彼にとっては日常であっても、他人にとってはそうではないのだ。
きっと悲劇は起こる、起こらないはずがない。
このまま物語が終わるなんて、あってはならないのだから。
◆ ◆ ◆
「な、カインツ! 何やってやがる!!」
まず最初にカインツに対し声をかけたのはレックスだった。
川田さんは驚きのあまり白目をむいている。
一ノ瀬さんも衝撃を受けて黙っている。
私なんか、声を出せるわけがなかった。
「見てわからないか――――彼をの命を『掬っている』んだよ」
「わかるかよ! んな、死んだ奴を食うだとか、ふざけたこと……」
「ふざけていない、これは……彼を救うための僕の行動だ。 否定される理由がない」
否定される理由がない、そんなことがあってたまるかと言わんばかりにレックスさんはカインツさんを見る。
稲垣さんに助けてもらう前はゴミを漁ってでも生活していたらしいが、そんな彼でも人は食うわけがない。
元々レックスは色欲魔ではあるが常識は持っている。
人を食べるのは倫理上に反している、それくらいはわかっている。
だが、カインツの言う事を完全に否定できない。
いや、否定しても全く持って意味がない。
常識が少しでも違えば、通じ合えないのだ。
それが普通であるがゆえに不通、通じ合えない。
「……やめて」
いつの間にか、私は声を出していた。
やめてと言って、止まってくれるわけがないのはわかっていた。
でも、耐えられなかったのだ。
「何故だい、何故止める理由がある。 このまま行けば、古川君は誰にも救われることはない」
「……………いで」
「……ハッキリ物は言ってくれ」
263
:
愛とエゴの終着点
◆9n1Os0Si9I
:2014/02/10(月) 22:15:19
.
「私から、正人を、これ以上大事な人を、奪わないでよっっっ!!!!!!!」
パァン、と一つ。
乾いた音が私の手から、響いた。
手にじんじんとした衝撃が残っていた。
「――――――――え?」
全部覚えている、全部覚えている。
忘れるわけがない、だって私は、物覚えだけはいいんだから。
手には、私のバックに入っていた拳銃。
目の前には、転がった『カインツさん』がいた。
赤い水たまりを作っている。
どくどくどくどくどくどくどくどく。
その水たまりは、どんどん広くなっていく。
あぁ――――そうか。
私は――――。
人を、殺したんだ。
【氷室勝好@俺得ロワ6th 死亡】
【古川正人@DOLロワ2nd 死亡】
【カインツ・アルフォード@オリキャラで俺得バトルロワイアル 死亡】
264
:
愛とエゴの終着点
◆9n1Os0Si9I
:2014/02/10(月) 22:15:54
【E-3/市街地:市民ホール駐車場/一日目】
【レックス@新訳俺のオリキャラでバトルロワイアル】
[状態]:腹に銃創(応急処置済)、衝撃(大)
[服装]:特筆事項なし
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品(1〜3)
[思考]
基本:殺し合いはしたくない、襲ってくる奴には容赦しない?
1:……
2:緑髪の女に警戒。
3:葉月を早く探したい。
[備考]
※新訳俺のオリキャラでバトルロワイアル、開始前からの参加です。
【三瀬笑子@DOLバトルロワイアル2nd】
[状態]:????
[服装]:特筆事項なし
[装備]:ワルサーP99(14/15)
[道具]:基本支給品一式、9mmパラベラム弾(30)、ランダム支給品(0〜2)
[思考]
基本:????
1:????
2:????
3:????
[備考]
※DOLバトルロワイアル2nd死亡後からの参加です。
※名簿を確認していません。
※彼女の完全記憶により『人を殺した記憶』が消えなくなりました
【一ノ瀬進@需要なし、むしろ-の自己満足ロワ2nd】
[状態]:健康、衝撃
[服装]:紺色の背広、白いカッターシャツ(若干サイズが小さいが行動に支障無し)
[装備]:H&KMP5A2(26/40)
[道具]:基本支給品一式(水と食糧少量消費)、MP5予備弾倉(2)、ランダム支給品(1)
[思考]:
基本:脱出の手段を探し、達成を目指す。危険人物はそうと分かり次第排除。
1:……
2:川田さん達と行動。
3:ゆくゆくは仲間を集め、首輪を外したい。
[備考]
※エピローグ後からの参戦です。
※切磋琢磨の話に少し疑問を抱いています。
※島民ふれあいセンターの構造を大まかに把握しました。
※切磋琢磨から四字熟語バトルロワイヤルについて、大まかに聞きました。
※着ていたパジャマは放棄しました。
【川田喜雄@俺のオリキャラでバトルロワイアル】
[状態]:気絶、顔に殴られた痕(処置済)
[服装]:特筆事項無し
[装備]:特殊警棒(調達品)
[道具]基本支給品一式(水と食糧少量消費)、麦わら帽子、小玉スイカ(3)、水鉄砲(高濃度塩水入り、残り850cc)、煙草(調達品)、100円ライター(調達品)
[思考・行動]
基本:脱出を目指す、ただし自分の命を最優先
1:一ノ瀬さん達と行動。
[備考]
※俺オリロワで泥酔している状態からの参加です。
※沖崎翔に『理性の感覚』を引き上げられました。よって自暴自棄、理不尽な勘違いなどの『理性的でない行動』を大分取らないようになっています。
※酔いは覚めました。
※沖崎翔、加賀咲の名前と容姿は記憶しています。
※市民ホール2階の廊下に氷室勝好の所持品(基本支給品一式、RP-46軽機関銃予備弾薬(50/300)、牛刀包丁、電動釘打ち機(0/20)、相川友のデイパック)が落ちています。
※駐車場にRP-46軽機関銃(112/250)、黒作大刀、救急車内に古川とカインツの支給品が残っています。
265
:
◆9n1Os0Si9I
:2014/02/10(月) 22:17:05
投下終了です。
カインツ君の設定だったりは作者さんからいただいた情報を使わせてもらいました。
久々に書いたのでゴッタゴタしてますね。
266
:
◆ymCx/I3enU
:2014/02/15(土) 20:19:31
投下乙です。
一気に死んだ……俺も続かなきゃ(使命感)
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