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避難所スレPart3

1名無しさん:2012/03/20(火) 23:53:23
何らかの事情で本スレ投下が出来なかった時に投下するためのスレです。

71146◇おはなし(3/4) ◆YOtBuxuP4U:2015/03/30(月) 04:23:40
 
「他人の夢の中から意識が出れないのならば、脳は死んだようなものでしょう」
「……ふーん」
「より正確に言えば、現実世界からそのヒトの意識が消えること――それが文字をヒトにできる条件。
 夢の中に連れ込まれた時点で、全員がその条件下に置かれてたってことですよね?」

 実験が、殺し合いの舞台が夢の中であることも、天飼千世は利用したのだ。

「それだけじゃなく、夢の中で実験を進行することで、現実の身体は、器は守ることが出来る。
 普通に殺し合うのでは器が破損して使い物にならなくなるかもしれないけれど、
 この方法なら夢の中で文字とヒトを取り換えるだけでいい。ずいぶんと。都合の良い、話ですね」
「……あはは、見抜かれちゃってますね。でも急にずいぶん、よくしゃべりますねえ。
 どうしたのかな。そんなに私を殺したいのかな? それともやっぱり講義は眠くなるタイプ?」
「黙って聞いているのが辛くなってきただけです。……怒っているので」

 少年はぶっきらぼうに言葉を投げつけた。人差し指で、膝をたたく。
 いらついている動作をしていた。いや、むしろ、これが怒れないでいられようか。
 天飼千世のルール能力は言い換えれば、ヒトと文字とを入れ替えてしまう能力。
 文字でヒトを乗っ取るような行為だ。
 生き様だけを盗んで、文字人形に降ろして遊んでいる? それどころじゃない。
 この実験はもともと居たはずのヒトを完全に器として、道具として扱っている。
 尊厳踏みにじりも甚だしい。普通に生きていくはずだった人たちから、人生を奪うだけでなく。

「意識を殺して、残った身体に文字を入れて。自分の手駒にするための殺し合い。
 そんなものに参加させられていたと長々と説明させられて、怒らない方がおかしいです」
「手駒? そこまでは思ってませんよぉ。仲間、仲間です。大事な仲間が私は欲しい」

 真っ白な紙の真ん中に、ひとりぼっちは寂しいから。

「たとえ、すべてがひとつの文字で表せたとしても、
 私は私の世界の空白を、埋めようとするでしょうね。怒られるのはまあ――承知の上、でね」

 そう言って天飼千世は軽く笑った。
 少年は、天飼千世をやはり何としても殺さねばならないと思った。

(この人は……いや、この文字は。“敵”だ。
 知ってしまったらもう、避けて通ることのできない、僕の敵だ……)
 
 ヒトと文字との戦争だなんて大局的な話ですらない。結果的にはそうかもしれないけれど。
 自分が、ただ自分が、紆余曲折にされた××××が、ヒトとして生きるために。
 リョーコさんにあの屋上で宣言したように、あるいは凛々ちゃんにあの駐車場で説いたように、
 幸せに生ききるためには。天飼千世の計画と思想は、あまりにも“敵”すぎる。

 選んだ道は間違いではなかったと少年は安堵する。
 少年が、ここに来ることを選んだのは。
 自分の未来のために、この実験の主催者を殺すためだ。

 目の前にいるのは、倒さなければならない“敵”。
 語られている「おはなし」は、いますぐにでも打ち切らないといけない物語だ。

(――――でも、“打ち切りかたがまだ見えない”)

 少年は天飼千世を注視する。天飼千世は少年ににこりと笑い返す。
 隙が見えない。いや、読めない。
 何をすれば、殺せるのか。いま相手はこちらの手に対し何ができるのか。
 ルール能力と文字のヒト化についての講義を聞きながら考えはしたが、当然のように読めなかった。

71246◇おはなし(3/4) ◆YOtBuxuP4U:2015/03/30(月) 04:24:29
 
 百発百中の銃弾は《外れて》、
 少年は《銃を知らぬ間に奪われ》、《知らぬ間に椅子に座らされていた》。
 これらがすべて同じ能力によるものなのか、違う能力によるものなのかすら、分からない。
 天飼千世がこれを行ったことだけは確かだとして、それが天飼千世自身の能力なのか、
 それとも他の文字を懐に忍ばせているのか。さっぱり分からない。
 でも、分かったこともないわけではない。傍若無人の紙にも書いてあったことだ。
 “脱出者には逃げる権利がある”。少年の読みでは、おそらくこれには裏移りしたもう一つの意味がある。

「ひとつ質問をしても」
「いいですよ?」

 ……しびれを切らしたフリをして、少年は少し、探ることにした。
 まずは自分が置かれている状況の、レギュレーションの確認だ。

「ええと、それでですね……僕は一体。どうやってあなたを殺せばいいんですか?」

 ・
 ・
 ・
 ・

「るぇ?」

 少年がそう言うと、天飼千世の見てくれはまた《変わった》。
 今度は、若干広がりのある白髪を肩あたりまで真っ直ぐ伸ばした女性だ。
 奇々怪々と同じような白衣を着て、同じように研究者風の雰囲気をまとわせている。
 かすかにくたびれた感じと、その髪色から、年齢は若くなさそうだが、眼は妙に輝いていた。

「え、ええと……ずいぶん飛躍したと言うか……それをこちらに問うのかな、きみは。
 こちらの話を聞きながら、考えてくれていたんじゃないの? 考えるの、嫌になったの?」

 きょとんとした表情のその瞳には、異常なほどの光。
 虹彩がまるで虹色に輝いているかのような……純粋さを忘れないまま育った大人のような、眼をしている。
 少年は唾を呑む。――これは、“引きずり出した”か?
 ならば、畳みかけるだけだ。少年は喉の中で慎重に言葉を選びながら、天飼千世を睨んだ。

「考えてましたよ。暗闇の中で上から垂らされた糸を掴もうとするような思索に、迷いかけました。
 でも、そうして考えられるということ自体がなぜなのかを、少し考えてみたら、ひとつ気付いたんですよね。
 そもそも……どうして僕はこうして、考えられる時間を与えられているのか?」

 扉をくぐる前、先手必勝だった男は最後に少年をこう励ました。
 優勝者は実験からの解放が約束されている。だから、少年は主催と対等なのだと。
 どういう意味なのか分からなかった。
 でも、最初の最初に発されたおはなしの内容と。
 それから散々に説明を受ける中で、その“対等”の意味が少しだけ分かった。
 
「結論から言えば。あなたは、僕をゲームの対戦相手に……“勇者”にしようとしているんだ」

 この、テーブルを挟んで椅子に座った対面形式。
 まるでチェスかなにかの対戦を行うようなシチュエーションも、その思考にたどり着かせた一助になった。
 天飼千世は言った。実験は“勇者”の裁定でもあると。

71346◇おはなし(3/4) ◆YOtBuxuP4U:2015/03/30(月) 04:25:21
 
「ゲームの内容は、“魔王”を殺せるか、殺せないか。
 つまりはあなたという人類の脅威を、僕と言う人間が取り除き、平和を守れるかどうか。
 そういうこと――なんでしょう? だからあなたは僕をここでは殺さないし、たくさんのことを僕に教える」

 だから天飼千世は“勇者候補”に。いつでも殺せるはずの少年に、おはなしをする。

「ルール能力の成り立ちと文字のヒト化、その条件、あなたがやろうとしている征服の内容まで、さらけ出す。
 普通に考えたら、不利になることだ。これもただの娯楽で、おはなしが終わった後に殺されるのではとも考えた。
 でもあなたたちの娯楽にはいままでずっとしっかりとした裏の意味があったことも、知らされた。
 それなら。これが、すべてが、ゲームを成り立たせるための初期説明――チュートリアルであるなら。筋は通る」

 それならば、おはなしは、意味を持つ。
 “ゲームのための準備”という名の、意味を持つ。

「だから教えてください。“にやけてないで教えてください”、天飼千世さん。
 僕はもう、回りくどいのはこりごりなんです。あなたのもったいぶりに付き合わされるのはたくさんだ。
 この世界の人間全部を賭けたふざけた規模のゲームだろうと。僕は絶対に、乗りますから。
 あなたを殺す方法があるなら、さっさと教えてください」

 少年は、少年が喋り始めてから徐々に徐々に口角を上げ、
 今や歓喜の表情を見せようとしている天飼千世を前に、堂々と言いのけた。

「最初から、言っているじゃないですか。僕はあなたとおはなしをしに来たんじゃない。
 文句を言いに来たわけでもなければ、凛々ちゃんを逃がしたくて代わりに来たわけでも、ない。
 僕はあなたを殺しに来たんだ。僕は僕のために、僕のこれからのために」

 ・
 ・
 ・
 ・

「僕は“それだけの理由であなたを殺す”。――絶対にだ」

 ・
 ・
 ・
 ・

「あは」

 少年がそこまで言い終わると。
 言われた天飼千世は、くしゃりと顔をゆがめた。
 紙がくしゃくしゃになるときのような勢いで、その顔を変形させた。
 口を最大限ににやけさせ。嬉しそうに眉を垂らし。眦から涙をこぼしながら、びくびくと身体を震わせる。

71446◇おはなし(3/4) ◆YOtBuxuP4U:2015/03/30(月) 04:27:09
 
「ふふ……あはっ、あはは、あはははは、……あはは、は♪」
「……?」
「ふはっ、ははは、ひぃ――ああああっ、あ、あっ♪ う、うれし、すぎてっ♪
 なにそれっ、知らないよそれ、ああ、あふっ、ぐじゅ……るるぇ……う、うううぁ♪」

 涎をすすり、四肢をぱたぱたと痙攣させて、
 もはやそれは、絶頂していると言って差し支えのないような、卑しくいやらしい動きだった。
 天飼千世は歓喜に打ち震えていた。絶対に殺すと言われて――嬉しがっていた。

「やっぱり、きみだ。きみだったんだ!
 間違ってなかった! 《千世の読み》は、正しいんだ!
 きみだけがどうしても分からなかった。
 きみが世界を変える力を持っていることは《分かった》けど、けどね、
 どうしてきみが世界を変えうるかだけは、最後まで見えなかった……でもそんなの、当然だね、だって今!
 たった今、その理由が生まれちゃったんだから……っ! 自分の感情! それが答えだったんだ!!」
「……あの」
「でもそれでも《千世の読み》はきみの敗北を見るよ。
 でもでもでもその上できみは、ううん、アナタは――きっと1001個目を選んでくる!
 きっと!! ――だからホントはダメなんだけど! ダメなんだけどね? ダメなんだけど、最高なんだ!
 それを乗り越えるくらいじゃないと……きっと望みも叶わない!
 最高だよ、ああ、大好きだよ……アナタとはもう、友達なんてものじゃない……もっと上の、言葉で相対しなきゃ」
「……一人で興奮しないでほしいんですけど」
「うぅ、あ、ごめんね!? ごめんごめん、ホントにね、嬉しかったから……。
 あの……えっと、ここまでの非礼、詫びるよ。紆余曲折なんて、雰囲気作りだなんて、もういらないね。
 アナタの読みで、正解だ。
 アナタを勇者に仕立て上げる。ううん、実験の優勝者を勇者に仕立て上げる。
 そして《天飼千世》がもうひとつのルール能力で《見る》“1000の未来”を、1の未来に収束させる」

 残りの目的は、簡単に言えばそういうことだと。
 心底楽しそうに嬉しそうに、天飼千世はそう言った。

「……つまり、あなたは」
「うん。そうだよ。天飼千世にはね。《見える》んだ。
 その文字の意味通りに、全てをつかさどる天を、運命を、飼うような行為が出来る。
 《わずか1000パターンではあるけれど。天飼千世は未来を見ることが可能だ》」
 
 《1000パターンだけ未来が見える》。
 天飼千世の、ルール能力、そのに。

 ・
 ・
 ・
 ・

715 ◆YOtBuxuP4U:2015/03/30(月) 04:32:35
投下終了です。
けっこう主催さんもファンキーなキャラになった感があります

次回は四字熟語ロワが開かれるに至る流れをダイジェストでお届けする感じになりそうです。

716 ◆ymCx/I3enU:2015/04/03(金) 22:30:35
投下乙です よ、読んで頂けてるのですか…わぁ顔赤くなる
そしてここまでしっかり世界観を構築するのは俺には無理だなあ……凄い
自分もこっちに連投規制怖さで途中からのを投下します

717しょくしゅ注意報 其の七 〜 ◆ymCx/I3enU:2015/04/03(金) 22:31:53
「離れろって、うんち漏らすからかな?」
「茶化してる場合か。まずいな、MURさん達に言った方が……」

ノーチラスがそう言いかけた時。

ビクッ

KBTITの身体が大きく揺れ動いた。

「ん?」
「……拓也さん?」

意識を取り戻したのかと二人は思った。その二人の目の前でゆっくりとKBTITは起き上がる。
しかし二人の声に反応する気配は全く無い。

「どしたの?」

巴が再び声を掛けるがやはり返事は無かった。
返事の代わりにある事が起きた。

KBTITの身体のあちこちから、皮膚を突き破り黒っぽい触手が生えた。

「「は?」」

突然の、予想だにしていなかった事態に巴とノーチラスの二人が間の抜けた声を出す。
その姿に二人は見覚えが有る――――巴の時とノーチラスの時で宿主に違いは有ったが、
紛れも無く、かつて戦った触手の怪物と同じ様相に、KBTITはなっていた。

「……あ゛あアあ……」

歪んだ声色で唸りながらゆっくりとKBTITは二人の方へ向き直る。
ゴーグルのせいで分かり難いが、自我はもう消え去っていると言う事は二人はすぐに察した。
察して、とにかく一旦狭いトイレから出た方が良いと判断し、巴とノーチラスは出口へと走る。

廊下に飛び出すと、遠野と彼から報告を受けKBTITに会いに来たMURがすぐ近くに居た。
トイレから必死な様子で飛び出した巴とノーチラスに、遠野とMURは戸惑いの表情を見せる。

「どうしたんだゾ?」
「何か有ったんですか? あれ、拓也さんは」
「はぁ、はぁ、た、拓也さん、が」
「まさかあんな事になるなんて」

巴とノーチラスがMURと遠野に状況を説明しようとした。
しかし、それはトイレの入口から黒い触手が何本も伸びてきた事により中断させられる。
変わり果てたKBTITの姿にMURと遠野は一瞬言葉を失った。

「こ、これは」

718しょくしゅ注意報 其の七 〜 ◆ymCx/I3enU:2015/04/03(金) 22:32:31
遠野が呻く。
KBTITがかつて戦ったひでと同じ、触手の怪物と成り果ててしまった事実に衝撃を隠せない。
一体何故、彼がこんな事になってしまっているのか。
余りの事態に、四人全員逃げる事を忘れ「それ」を考える事に気を取られてしまう。

「ウオア゛ァ゛アアア゛ア゛!!!」

すぐにそれどころでは無い事を四人は思い出した。
雄叫びを発しながらKBTITが四人目掛け突進してきたのだ。
かつて「触手の怪物」と呼称された小崎史哉とひでのように、右手から触手の束を出現させ、それを四人目掛け振り下ろす。
長く飛び出た触手の束は天井ボードを抉り、配線やダクトを破壊しながら、四人の居る位置の床に派手な音を立てて直撃した。

グシャアッ!!

幸いにも四人は二人ずつ分かれる形で左右に回避する事が出来た。
直撃した部分の床は大きく凹み、威力を物語る。
しかし。

「サイごのいっパツ、くれテヤルヨオラァアアア!!」
「「「「!!」」」」

脈絡の無い言葉を発しながら、KBTITは触手の束を左右に思い切り振り回した。
振り下ろし程では無いにしろ、太く重い触手の束は四人を軽く吹き飛ばしそれぞれ壁に強か身体を打ち付けてしまう。
四人のダメージはかなり大きく、痛みですぐには身動きが取れない。

「何? どうしたの……うわっ」

尋常ならざる音に、何事かと様子を見に来た沙也が惨状を目の当たりにして驚きの声を発する。
彼女だけでなく、サーシャ、フグオ、小鉄、ト子もやって来ていた。
MUR達にとっては最悪この上無い状況と化してしまう。

「みんな、来ちゃ駄目だゾ! 逃げ……」

逃げろとMURが叫ぼうとしたが、もう手後れで、KBTITは沙也達に向かって、勢い良く触手を伸ばした。
鋭利な槍の如き触手の先端が、とても生々しく嫌な音を立てて、二人の肉体を刺し貫く。
被害者は、フグオと沙也。

「キャ……プ……?」
「か、は……嘘……」

フグオと、沙也の胸元からそれぞれの肉体を貫いた触手に呆然とするフグオと沙也。
じわりじわりと、刺された場所から赤黒い染みが広がり床に同じく赤黒い液体が垂れ落ちる。
避ける事に成功した小鉄、サーシャ、ト子は、その様を見て、絶句した。
ずるりと、フグオと沙也の身体から触手が引き抜かれ、傷口から鮮血がどばっと溢れ出た。

「小鉄っ、ちゃ、ん」

血を吐きながら、フグオは小鉄の名前を彼の目を見ながら言い、崩れ落ちて、死んだ。
沙也もほぼ同時に、全て悟って諦めたような表情のまま、同じように崩れ落ちて、息が絶えた。

719しょくしゅ注意報 其の七 〜 ◆ymCx/I3enU:2015/04/03(金) 22:33:13
【鈴木フグオ@漫画/浦安鉄筋家族  死亡】
【君塚沙也@オリキャラ/自由奔放俺オリロワリピーター  死亡】
【残り  10人】


「フグオ、フグオ……この野郎!!」

友人を眼前で殺され、小鉄が激高した。
MURやサーシャが制止の声を上げるが、聞き入れず、怒りに任せKBTITに突進していく。
その目には涙が滲んでいた。悪乗りして良く虐めていたが、フグオは大事な友達だったのに、よくも、よくも――――!
KBTITの触手を持ち前の健脚で避け、彼の懐に潜り込んだ小鉄は、持っていたドスを貧相な左太腿へと思い切り突き刺した。

「ぐおおおオオオおオ!!」

大きく悲鳴を上げよろめいたKBTIT。しかし動きを完封するには至らず、KBTITの右手が小鉄の首根っこを掴んだ。

ぐしゃり。

「あっ」

目と鼻の先で、小鉄が頭から壁に叩き付けられ、頭部が四散する様を見せられ、MURが口を開いたまま絶句する。
ノーチラス、遠野、サーシャ、ト子も、同様の反応を示した。


【大沢木小鉄@漫画/浦安鉄筋家族  死亡】
【残り  9人】


KBTITが何故怪物化したのかは分からない、だが、今の彼はもう元の彼では無く、
例えその命を奪ってでも止めなければ、自分達は皆殺しにされてしまうと言う事は分かる。

「拓也さん、止めろぉ!(建前) 止めろぉ!(本音)」

身体の痛みを堪えてMURは立ち上がり、Stg44突撃銃をKBTITに向け発砲する。

「サーシャ、ト子! 壁に寄れ!」

続いて立ち上がったノーチラスが、銃撃に巻き込まれないよう二人に命令した。
サーシャとト子は言う通りにしつつ、サーシャはローバーR9自動拳銃、ト子は遠野から譲り受けた、
コルト オフィシャルポリス回転式拳銃にて加勢。
ノーチラス、巴もそれぞれ持った銃で続く。

「これは……」
「何これ!?」

ラトと、彼を肩で支える樹里も駆け付けた。

「あれって……」

720しょくしゅ注意報 其の七 〜 ◆ymCx/I3enU:2015/04/03(金) 22:33:59
総攻撃を浴びている触手の生えた男に樹里が釘付けになる。
触手の様はかつて同行者の蓮を殺した時のひでやその傍に転がっていた小崎史哉の死体と同じだが、
今前方に居るのは全く別の男だ。どうなっているのか。
いや、そんな事よりどうやら今はあの男を全員で倒さなければならないらしい。
ラトと樹里は程無く状況を把握し、銃を構えMUR達に加勢した。

「ヴオオオオオオオオオ!!」

全身に拳銃弾、散弾、小銃弾を満遍無く浴び、血肉を飛散させ、苦鳴を上げるKBTIT。
だがそれでもまだ彼の動きを止めるには至らない。
「寄生虫」の力によりその生命力、耐久力は異常な程高まっていた、そのせいである。

「モウユるさねェからナぁ!!」

KBTITは矛先を樹里に向ける。彼女に向けて触手の槍を伸ばす。

「危ない!!」

ラトが叫び、樹里を突き飛ばした。
樹里の代わりに、ラトが串刺しとなった。
包帯を巻いた腹部に、更なる穴が空く形となり、ラトは大量に吐血し悶絶の表情を浮かべる。

「ラト!!」
「ラト君!!」

サーシャとMURが叫ぶ。
ラトの身体から触手が引き抜かれ、その小柄な体躯がボロ切れのように床に投げ出される。
そしてKBTITは間髪入れず、身体を捻り、次の標的――――遠野に向け、ラトと同じく触手の槍を突き刺した。

「あっ……ぐぁ……」
「遠野!!」
「遠野さん!!」

悲痛な声を上げる、MURと樹里。

「……もう、もう……やめて、下さい……拓也、さん!!」

串刺しになったその体で、遠野はKar98Kを構え、薬室に残った最後の一発を発砲した。

「ウグ、ア」

その最後の一発は、KBTITの心臓部分を撃ち抜いた。
頭を撃ち抜く事も出来た、だが、やはり今までクラスメイトとして共に過ごしてきた人物の顔を吹き飛ばす勇気は出なかったのである。
例え、自分に致命傷を与えた張本人だったとしても。
その一撃が止めになったのか、遂にKBTITはその動きを止め、がくりと両膝をついて床に倒れた。
同時に、触手に貫かれたままの遠野も床に伏す。

721しょくしゅ注意報 其の七 〜 ◆ymCx/I3enU:2015/04/03(金) 22:34:58
――――まさか、こんなに早く壊れてしまうとは。

――――役立たずめ、さっさと次の肉体を――――


KBTITのズタズタになった傷口から、鮮血に塗れた虫が這い出てくるのを、巴が見付けた。

「あっ」
「どうしたゾ巴ちゃん」
「それ、タクヤさんの身体に入った虫が」
「……! 確か、拓也さんの様子がおかしくなったのは」
「うん、あの虫が身体に入ってから」

巴からそれを聞いて、MURは閃き、叫ぶ。

「その虫が元凶だゾ! 潰せ!!」

その声に、ト子が応えた。
床に赤い痕を残しながらずりずりと這うその虫を、思い切り、何度も何度も踏み付けた。


――――な、何? 何だと?

――――まさか、そんな、おい、やめろ、やめろ

――――ヤメロ、ヤメロ、ヤメ、ヤメロ、ヤ――――メ――――


生物の肉体に入り込みそれを支配すれば絶大な脅威となる「寄生虫」も、何も無い素の状態では、
単なる虫と大差無く、呆気無く潰されてしまった。
こうして、触手の脅威はようやく終わりを告げた。

「……う……ぁ……俺は……」
「タクヤさん? まだ生きてるの? って言うか元に戻ったの?」

KBTITはまだ辛うじて息が有った。
触手の怪物では無い、元の彼としての意識を取り戻していた。
ラトも、遠野も、まだ息が有る。
だが、三人共、もう長くは無い事は明らかだった。

KBTITと遠野の元にMURと巴、ラトの元にノーチラス、サーシャ、ト子、樹里が寄り添う。

「お、俺は……」
「悪い虫に身体を操られてたんだゾ……」
「あの時の虫、か……少し、だけ……がはっ……記憶が、有るんだ……俺は、何て、事を……」

フグオ、沙也、小鉄を殺した時の事、ラトと遠野に致命傷を負わせた時。
操られていた時の記憶が、それも嫌な場面ばかりピンポイントで、KBTITには僅かながら残っていた。

「拓也、さん、貴方は……ゲホッ、ゴホッ!」
「喋っちゃまずいよ遠野さん」
「良いんです、言わせ、て、下さい……拓也さ、ん、貴方は悪く、ありません……あな、たは、はぁ、はぁ、
操られていただけ、です……」
「遠野……」

操られていたとは言え、最早助からぬ傷を負わされたのにも関わらず、遠野はKBTITの事を気遣った。
それを聞いたKBTITは「本当に人間の鑑だ」と遠野の優しさに感謝し、ふっと笑みを浮かべる。
また、仲間を殺し、傷付けた罪悪感から、少し、ほんの少しだけ救われたような気がした。

722しょくしゅ注意報 其の七 〜 ◆ymCx/I3enU:2015/04/03(金) 22:35:47
「MUR、遠野、みん、な……俺、を……人間に戻して、くれて……あり、がと、ナス……」
「拓也さん!」
「タクヤさん……おやすみ」

怪物と化した自分を「人」に戻してくれた仲間達に感謝しながら、KBTITは逝った。


【KBTIT@ニコニコ動画/真夏の夜の淫夢シリーズ/動画「迫真中学校、修学旅行へ行く」  死亡】
【残り  8人】


「……MUR、さん……僕も、もう……」
「遠野……!」

遠野の命もまた、もうすぐ潰えようとしていた。
血に塗れた口で、最期のメッセージをMURに伝える。

「どうか、この殺し合い、から……生きて、脱出、して下さい」
「ああ、当たり前だよなぁ?」
「先輩に、怒られて、しまうかもしれ……ません、が……僕は……せん、ぱいの……ところ……に……――――」
「……遠野」

台詞が言い終わる事無く、遠野の息は絶えた。
これで愛する野獣の元へ行けると思い、安心したからか、その死に顔はとても安らかで、
口元の血が無ければ眠っているようであった。
MURは、声を押し殺して泣いた。
巴はその様子を黙って見ていた。


【遠野@ニコニコ動画/真夏の夜の淫夢シリーズ/動画「迫真中学校、修学旅行へ行く」  死亡】
【残り  7人】


そして、ラト。
彼の傷もまた、手の施しようが無く、クラスメイト達が見守る中ゆっくりと命が消えて行く。

「ラト……」
「サーシャさん……また、会えたのは、本当に、嬉しかった……」
「私も……だよ」

これで最期だと言う事を察した話し方が、サーシャはとてもとても悲しかった。
以前の殺し合いで、ゲームが始まる前に死別して、何の因果かお互いに蘇生し、この殺し合いにて再会した。
しかし、また今ここで彼と死に別れようとしている。
これは神様の悪戯なのだろうか、死なないで、死なないで――――サーシャは泣き叫びたかったが、
そんな事をしてもどうにもならない事位、分かっても居る。

「皆……どうか……生きて……く……れ……」

ラトもまた、力尽きた。
サーシャは、彼の身体に顔を埋め、嗚咽を漏らした。
他の三人も、沈痛な面持ちを浮かべ、ラトの、いや、死んでいった仲間達を悼む。

突如起きた騒乱は、大きな爪痕を残し、沈静した――――。


【ラト@パロロワ/自作キャラでバトルロワイアル  死亡】
【残り  6人】


【午後/D-5イベントホール】

【MUR】
【貝町ト子】
【ノーチラス】
【サーシャ】
【北沢樹里】
【原小宮巴】
【生存者 残り6人】

723 ◆ymCx/I3enU:2015/04/03(金) 22:37:24
投下終了です。
長い…… 連投規制不可避だった
状態表はもう必要無さそうなんでもう有りません 許して

724名無しさん:2015/04/08(水) 01:49:05


ようやく来た〜!ありがとー!

僕のロワ立てるけど来てくれないか!

最高!非リレーの復活!

725 ◆84AHk0CknU:2015/07/31(金) 03:06:46
連投規制されて悲しいなぁ…(諸行無常)
続きをこちらに投下します

726 ◆84AHk0CknU:2015/07/31(金) 03:08:29
「どうしよう…このままじゃゼロさんが…!」

今外へ飛び出しても間に合いそうに無い。大声で危険を知らせようにもこの戦闘音では聞こえるかどうか怪しい。
焦りが募る中ふと支給品の存在を思い出した。
バッグから蝶ネクタイを取り出すと、音量のダイヤルを最大まで上げる。
そして息をすぅと吸い込み叫んだ。

『ゼロさん上です!逃げて!!』





ゼロとAKYSが見上げる先に居る謎の赤い怪物。

「ウェイ!」

そいつはこちら目掛けて、奇妙な声を発しながら光弾を撃ってきた。
ゼロはすかさず、羽ばたく鳥のような紋章を右手に光らせ、それを光弾へと向ける。
すると光が当たった瞬間光弾は消失した。
傍に居たAKYSも攻撃を免れる形となったが、別に意図してやった訳ではない。偶然だ。
怪物が一瞬驚いたような仕草を見せるが、直ぐにまた連続して光弾を発射する。
しかしまたしても、ゼロの掌から発せられる光に当たると全て消え失せる。
埒が明かないと判断したのか、怪物は標的をガソリンスタンドの方へと変える。
ゼロもそれを察し己の能力を発動する。

「っ!?え、え?」
「話は後だ。行くぞ」

外に居た筈のゼロが突然目の前に現れたため、雪華綺晶目を白黒させる。

「エ゛エ゛ーイ!」

だが移動する暇は無い。掛け声と共に無数の光弾がこちらへ発射された。

ドッゴォォォン!!

発射された光弾は給油機やハードボイルダーに着弾、大爆発を起こす。

「きゃっ」
「チィッ!」

雪華綺晶とゼロの姿は爆風に包まれ、あっという間に見えなくなった。


…………


燃え盛るガソリンスタンドを暫し見つめていた怪物だったが、やがて視線をAKYSの方へ移す。
しかし、既にAKYSの姿はどこにも無い。
ドサクサに紛れて逃げたか。短時間でそこまで遠くに行けるとは思えないが、何か支給品を使ったのだろうか。
まぁいい、次に会ったら確実に息の根を止めてやる。
浮遊していた異形は道路へ静かに降り立つと変身を解く。

727 ◆84AHk0CknU:2015/07/31(金) 03:12:05
「結構使えるな、これ」

その言葉と共に現れたのは青い服を着た茶髪の美少年。
彼の名は星君。
チャージマン研こと泉研の学校に転校してきたスポーツ万能の少年…というのは表向きの話で、その正体は地球侵略を目的とした宇宙人、ジュラル星人の一派である。
人気の無い場所に研を呼び出し抹殺しようと正体を明かした直後、この殺し合いに拉致された。
とりあえず現状把握に努めようと名簿を確認したところ、知っている名は宿敵の泉研ただ一人。
ジュラルの同胞が呼ばれていないのならば、優勝を目指すのに抵抗は無い。
それにあのロン毛はどんな願いも叶えてくれるらしい。正直半信半疑だがもし本当ならばその力で地球の完全征服も夢ではないかもしれない。

「早速二人殺せたし、幸先良いスタートだな」

星君に配られたタブーメモリという名の支給品。
これを使い変身したタブードーパントという異形の力は、ジュラル本来の姿の時よりも強力な力を持っていた
星君は知らない事だがタブーメモリはゴールドメモリと呼ばれる特別な代物であり、通常のメモリとは一線を画する力を秘めている。
想像以上のアタリ武器を手に入れられた事に星君はほくそ笑む。
とはいえいつまでもここでのんびりしているわけにもいかない。

「さぁ出発DA☆」

爆発に気付いた参加者が集まってくる可能性は十分にある。
やや駆け足気味で星君はその場から離れていった。


【星君@チャージマン研!】
[状態]:健康
[装備]:ガイアドライバー+タブーメモリ@仮面ライダーW
[道具]:共通支給品一式
[思考]
基本:優勝する
1:この場から離れる
2:参加者を全て殺す
3:チャージマン研は優先的に殺す
4:胴着の男は次に会ったら確実に仕留める
[備考]
※参戦時期は研に正体を知られた後





「……そろそろいいか」

星君が去り、バチバチという燃え盛る音のみに支配されたガソリンスタンド付近。
蚊の鳴くような声がしたと同時にAKYSが姿を現す。
AKYSは逃げてはおらず、ずっと燃えるスタンドの付近にずっと居た。
手甲の他にもう一つバッグに入っていたもの。
とある世界の魔法少女が自分の体の大きさを変化させる際に用いたステッキ。
AKYSはあの怪物からは逃げ切れないと判断し、ステッキで体を小さくし、息を潜め星君が去るのを待っていたのだ。

「あいつらは死んだのか?」

自分を追い詰めた仮面の魔人と一緒に居た白い少女。
爆発に巻き込まれ死んだのだろうか。とてもじゃないがあの爆発で生き残れるとは思えない。

728 ◆84AHk0CknU:2015/07/31(金) 03:19:44
「…」

負けるつもりは無かったがかなり苦戦を強いられた。
気味の悪い怪物に横槍を入れられ、無様に隠れる羽目になった。
自分自身を守るだけでも命がけなこの状況で、本当にあいつらを生き残らせることができるのだろうか。

「…チッ」

つい情けないことを考えてしまった自分に舌打ちをする。
そんな姿勢では教え子たちを守るなど無理に決まっている。
相手が誰だろうと関係ない。たとえどんな化け物がいようと全てを叩き潰す。
今一度決意を固めるように拳を握り締めると、激しく燃える建物を背にAKYSもその場を離れていった。


【AKYS@真夏の夜の淫夢】
[状態]:疲労(大)、全身にダメージ(中)、両腕に若干の痺れ(徐々に回復)
[装備]:徳川家康の手甲@戦国BASARA
[道具]:共通支給品一式、スモーラージ・Mのステッキ@魔法少女オブ・ジ・エンド(体を小さくする魔法2時間使用不能)
[思考]
基本:野獣、MUR、KMRの三人を生き残らせる
1:ガソリンスタンドから離れる
2:誰が相手だろうと容赦せずに殺す
3:野獣たちには会いたくない
[備考]
※迫真空手部の師範代をしている設定です。遠野とも面識があります

※ガソリンスタンドで火災が発生中です
※ハードボイルダー@仮面ライダーWは大破しました





会場北部にある園咲邸。だがそれとはまた違う豪邸が、この会場には存在する。
日焼けをするには持って来いの屋上や、後輩を昏睡レイプするのに最適な地下室を兼ね備えた快適な空間。
「はえ^〜」と思わず感嘆の声を出してしまいそうなその豪邸、名を野獣邸という。
本来ならばクッソ汚い野獣一家の住まいである場所だが、この地では会場にある一施設でしかない。
ひっそりと静まり返っている野獣邸だが、静寂を破るように玄関の扉が乱暴に開けられ、黒尽くめの男が押し入る。
男は邸内に人が居ないのを確認すると、抱きかかえていた少女をリビングのソファーに寝かせ、自分も近くの椅子に腰を落ち着ける。

「…散々だな」

男――ゼロはため息を吐くと、視線を天井へ浮かべつつ先程のガソリンスタンドでの一件を思い出す。
赤い怪物が攻撃の対象をガソリンスタンドへ変えた時、すぐさま瞬間移動で雪華綺晶の元へと移動。
給油機の爆発に巻き込まれる直前再び瞬間移動を使い、隣のエリアへと跳んだ。
本当はもう少し遠くへ移動しようとしたのだが、何故か隣のエリアで強制的に瞬間移動が解除されてしまった。
身体能力の不調といいつくづく面倒なことに巻き込まれたな思い、同時にあのロン毛が一筋縄ではいかない相手だと再認識する。

(ゲームに乗った者を二人、取り逃がしてしまったか)

優れた戦闘力を持つ胴着の男と赤い怪物。
元々の能力か支給品の効果かは不明だが、奴らを仕留めることはできなかった。
とはいえ、雪華綺晶を守りながら二人を同時に相手にしては流石にこちらが不利なので、撤退せざるを得なかったが。
だがバイクという貴重な移動手段を失ってしまったのは痛い。

729 ◆84AHk0CknU:2015/07/31(金) 03:26:42
「ん…」

と、雪華綺晶が小さく寝息を立てたのを聞き、ゼロは顔をそちらに向ける。
エリアを移動した時には彼女は気を失っていた。
一般人が現実離れした戦闘を間近で目の当たりにし、そのうえ爆発で死に掛けては無理も無い。
一先ず彼女を寝かせられる場所を探すことにしたゼロは周囲を探索し、野獣邸に辿り着いた。
眠り続ける雪華綺晶を見ながらゼロは今後の事考える。

このまま雪華綺晶を守り続ける義理など自分には無い――が、同時に見捨てる理由も無い。
会場に居る間は彼女に同行し、知人を探すのにある程度協力してやってもいい。
こんな選択をするのは魔王となった今でも良心を捨て切れていないからだろうか。

「ふん…」

浮かび上がった疑問を打ち消すように鼻を鳴らすと、雪華綺晶が目を覚ますまで一階の探索でもしようかと思い立ち上がった。


【雪華綺晶@やる夫スレ】
[状態]:精神疲労(中)、気絶
[装備]:無し
[道具]:共通支給品一式、蝶ネクタイ型変声機@名探偵コナン、FN ブローニング・ハイパワー(13/13)@現実、予備マガジン×4
[思考]
思考:姉さんとやる夫さんに会いたい
0:気絶中
1:姉さんたちを探す
2:胴着の男(AKYS)と赤い怪物(星君)に恐怖
[備考]
※以下本ロワでの設定
・人間の女子高生で一般人
・水銀燈→雪華綺晶たち7人姉妹の長女
・やる夫→二つ上の学年で幼い時から姉妹とは親交がある
・伊藤誠→二つ上の学年。面識は無いが悪い噂は時々耳にする

【ゼロ@コードギアス ナイトメア・オブ・ナナリー】
[状態]:疲労(大)、両手に鈍い痛み、回復中
[装備]:無し
[道具]:共通支給品一式、篠崎咲世子のクナイ×10@コードギアス 反逆のルルーシュ
[思考]
基本:主催者の殲滅、元の世界で魔王の役割を果たす
1:野獣邸一階を探索する
2:雪華綺晶と行動し、互いの知り合いを探す
3:他の参加者を探し情報を集める
4:胴着男(AKYS)、赤い異形(星君)は殺す
5:首輪と能力の不調をどうにかしたい
[備考]
※参戦時期はLAST CODE『ゼロの魔王』終了時
※瞬間移動は最大で隣のエリアまで。また連続使用や移動距離が遠いほど疲労増加

730 ◆84AHk0CknU:2015/07/31(金) 03:28:00
投下終了です
規制解除されたら本スレに続きを投下します

731 ◆84AHk0CknU:2015/07/31(金) 03:34:57
追記
本スレに投下したい方がいたら、自分のは無視して投下していただいて構いませんので

732 ◆ymCx/I3enU:2015/08/01(土) 21:15:38
投下乙です
AKYSが教え子の為とは言えゲームに乗るなんて!
星君のニコニコ大百科を覗いてみたら草が生えた

733魔法少女育成計画twilight ◆TOWNwDBZa.:2015/10/14(水) 02:24:04



「ある魔法少女を探してる」

 日本中を渡り歩いた。
 星が導くままに、街の隅々を探し求めた。
 けれどあの子はいなかった。
 やがて、あの子がもうどこにもいないことを知った。
 でも、人探しが終わったわけじゃない。
 あの子の代わりになった、どこかの女の子を探している。聞きたいことがある。
 だから、私はその魔法少女に会わなきゃならない。
 そうしなきゃ――終われないんだ。

 新番組!『星に引かれてPleiades』
 最終話「流れ星」
 なあ、キミはあの時――





規制されたのでひとまずこちらに。
続きは解除次第あっちにも落としておきます。
本編は今週中に……できたらいいなあ。

734 ◆84AHk0CknU:2015/10/14(水) 04:15:00
新ロワ投下乙です!
クオリティ高くてすげぇ面白そう(こなみ)

735 ◆YOtBuxuP4U:2015/11/10(火) 22:52:54
ageまして投下します

736 ◆YOtBuxuP4U:2015/11/10(火) 22:57:27
小まとめ(前回がかなり前なので正直自分でもあまり覚えてない……)

・四字熟語バトルロワイヤル……ゲーム終了済み
・娯楽施設は夢の中だった
・紆余曲折は優勝したので、主催者を殺しに来ている
・主催者は天飼千世という文字で、いろいろ思惑があったらしいが……?

73746◇おはなし3 ◆YOtBuxuP4U:2015/11/10(火) 22:58:55
 

 この世界に生まれ描かれた時、天飼千世は一人だった。
 どこかも分からぬ研究室に、気が付けば文字は存在していて。
 天飼千世を生み出した「何か」あるいは「誰か」は、どこかへ消えてしまっていた。

 ただ自分が文字であることと、文字なのに人間の姿をしていることだけが分かって、
 そのアンバランスさに天飼千世は戸惑い、不安を覚え、自らの未来を憂いに憂いた。
 どうすればいいのか。何をすればいいのか。この先、何が起こるのか。

 知りたくなって。

 気が付けば天飼千世の視界には、《1000パターンの未来が映っていた》。
 はっきりと、見えていた。現在点、現在状況からの――《天飼千世の、結末》。死の瞬間の千が。

「正直言って、最初の《1000》は、全く好いものではなかったよ」

 天飼千世はその《結末の羅列》によっていくつかの事を知ることになった。
 天飼千世の血が虹色であること。
 食事を取らずとも生きていけること。
 年も取ることはなく、身体が衰えるということもないこと。
 身体を動かせばその身体能力は、人間の限界以上まで引き出せること。
 そして、心臓を貫かれれば……人間の身体と同じように、普通に死んでしまうこと。

 それが分かったのは天飼千世が多くの《結末》で血を流していたからだ。
 《結末の1000》のうち1000全てが、天飼千世の死を予見していた。
 発見され、実験動物にされた果ての死。
 気味悪がれ、化け物扱いされた果ての死。
 見つからないよう逃げ続け、孤独に耐えきれなくなって自ら選んだ死。
 近くて数年後、遠くて千年後、どのパターンであろうとも、
 天飼千世はその生き様の中で、弄ばれ、苛まれる結末に至るようだった。

「ふふ、分かってるよ。もともと学者だしね、論理的に考えたらそうなることくらい分かってた。
 ヒトの形をしてても、文字はあくまで文字。ヒトじゃない。
 そんな「にせもののばけもの」がいつまでも楽しく暮らそうなんて、できっこないって、普通はそうなる」

 でも。

「だからこそ、天飼千世は望んだ。……アナタとおなじように。 
 たとえ何を犠牲にしようとも、自らが楽しく生き続けることを望んで、選んだ」

73846◇おはなし3 ◆YOtBuxuP4U:2015/11/10(火) 22:59:32
 
 天飼千世は、そんな未来を否定した。結末を棄却した。
 戦うための資料は近くにあった。
 天飼千世を生み出すために、重ねられた実験の資料の数々。
 それらは何年もかけたらしいわりにはお粗末なものだったが、参考にはなった。
 虹色の血で描いた文字を誰かに解釈してもらえば、それが力になる――ルール能力のシステムことはここで知った。

 任意の《未来》は見えず、《自己の結末》だけだったが、《1000の未来》も参考になった。
 たとえば、天飼千世が殺される《結末》なら、その殺害者は知ることが出来る。
 それ以外にも、多くの場合天飼千世は、誰かを恨みながら死んでいた。
 その恨み言に浮かんだ名前も、ヒントだった。天飼千世が生き抜くために邪魔になる者は、リストアップできる。

 天飼千世自身には、《未来が見える》以外になんの力もない。
 しかしその血液で綴った文字に力を持たせれば、何だって出来る。誰とだって何とだって、戦える。
 そこまでは、分かった。
 だけどそれでも、そう簡単には未来は変えられなかった。

「いくつかの可能性で、天飼千世を拘束し、研究施設に売り渡す役をする教授がいた。
 人間だったころの「天飼千世」の恩師だったらしいけれど、天飼千世にとっては害成すものでしかない。
 殺すことにして、いくつかの文字を用意した。自らの身を護り、相手を確実に殺すための、文字」

 天飼千世が懐から紙を三枚取り出す。
 虹色のインクで描かれているのは、
 《八方美人》、《高論卓説》、そして、《生殺与奪》。

「たとえば、アナタの銃弾を避けたのは、《八方美人》の解釈能力。
 これは《所有者と会話をした人は、その後、所有者を殺せなくなる》強力な能力で――」

 と、天飼千世は《八方美人》の紙に手を伸ばしてきた少年からひらりと紙を躱す。
 少年はなおも追いかけようとするが、硬直する。《椅子から身体が離れない》のだ。

「ふふ、油断も隙もないね。こちらにも、ないけれど。
 今体感している通り、アナタを椅子に座らせたのは、《高論卓説》。
 《所有者が説明している間、聞いてる人を卓から離れられなくする》解釈能力だ」

 ならばと耳を塞ごうとする少年を、天飼千世は愛しそうに見つめる。
 指でふさいだ程度では完全に声を遮断など出来はしない。
 鼓膜を潰せばいいが、そのディスアドバンテージを負うリスクを少年は「まだ」取れないだろう。
 そこまでは考えただろう上で、なお試行をためらわない少年が、天飼千世にはかわいく見えた。
 だから? いや、だからこそ。
 天飼千世は最後の文字まできちんと説明し、少年に対等を押し付ける。

「そしてアナタから銃を奪ったのが、《生殺与奪》の解釈能力、だよ。
 これによって天飼千世は、《目の前の一人が持っている、命を含む持ち物の所有権を、握ることが出来る》」
「……」

73946◇おはなし3 ◆YOtBuxuP4U:2015/11/10(火) 23:00:10
 
「まあ、これはあくまで例であって、実際その時は他の文字で殺したんだけど」

 話しを戻そう。
 天飼千世はそこまで言って一旦言葉を区切ってから、上を向いて言った。

「言ってしまえば。障害を殺した程度じゃ、たいして変わらなかったんだよね。
 得るものはあったけれど、この方法は明らかに効率が良くなかった」

 未来を変えることの、難しさ。
 予知能力者のジンクスとでも言うべき現象は、どんな生命にも平等に発生した。
 天飼千世がその《結末》に影響を与える・与えるであろう存在を排除したとしても、未来は好転しなかった。
 恩師たる教授を殺した天飼千世が見たのは――およそ二百の《結末》が、別の《結末》に差し替えられる瞬間だった。
 でも、差し替えられた先も望んだ《結末》ではなかった。
 なにせたった一人の文字に対して、人間は七十億いる。
 一人を未来から消したところで、《結末》に現れる名のリストには、代わりの誰かが入ってくるだけだった。
 
 好転ではないが、変化といえば変化はあった。
 殺害のために「解釈能力つきの文字」という武器を手に入れたことで、天飼千世が殺される確率は減ったのだ。

「未来は人を殺すより、文字を増やした方がよく変わった。
 天飼千世はそこに希望を見出して、まず「使える」文字を増やしていった」

 天飼千世は文字を増やすことにした。
 ルール能力を纏い、天飼千世単体の戦力を強化していく。
 誰にも邪魔されないように。誰にも止められないように。銃火器でなく理論でもなく、文字で武装をしていく。
 結果、少し経ったころにはもう、
 《1000の未来》の中に天飼千世が殺される《結末》はほぼ存在しなくなった。

「そしたらそこで、終わりかなと……天飼千世も思ったよ。
 でも、終わりじゃない。《死の結末》が1000パターン見えているということは、結局は死ぬということで。
 殺されることは一切なくなった代わりに、
 今度は、“天飼千世のせいで人類が滅ぶかもしれない”ことになっていたんだ」

 そりゃあそうだよね、と天飼千世は呆れ笑いする。
 当たり前の話だ。
 人類がどう頑張っても倒せない存在が居るのであれば、それは人類の敵だ。
 敵として認定され続け、戦いに直面し続け……気が付くと人類が滅んでいたパターン。
 あるいは畏れられ、崇められるというパターンもあった――しかし天飼千世の血が「文字の力」を生む以上、
 天飼千世が存在する限りその「力の使い方」をめぐって争いは絶えなかった。

74046◇おはなし3 ◆YOtBuxuP4U:2015/11/10(火) 23:01:04
 
 常に銃口を向けられるか、常に顔色を伺われるかの、二択。
 そんな未来は天飼千世は望んでいなかった。
 望んでいるのは、安寧と、退屈しない世界。ただそれだけなのに。
 殺されなくなった先の《1000の未来》では、天飼千世はすべてに嫌気がさして、
 人類を滅ぼしたあと、または一人でひっそりと、自決することを選んでしまっていた。
 
「ここに至って――天飼千世は気付いてしまった。文字が1人きりである限り、望む幸せは訪れないのだと。
 個人ならともかく、人間全体と分かりあうことなんて、文字には出来ないのだと。
 そこで、天飼千世は手詰まりを感じて……《文字に話しかけた》。初めて助けを、求めた」

 すると不思議なことに……《文字が人になった》。

「天飼千世が《文字をヒトにする》ルール能力に気付いたのは、ここからだ」

 ・
 ・
 ・
 ・

 文字をヒト化することで、その文字はほぼ完全に天飼千世の支配下に置くことが出来る。
 ヒト化させた文字に意識を与えるかどうかのオン・オフ権限は、天飼千世が握っていたからだ。
 絶対に刃向かうことのない駒は、それでいて自分ではなく、ヒトとしての意識も持つ。
 それはとても平和で。
 しかも退屈しないことができる。
 天飼千世にとって、素晴らしい発見だった。

「それだけじゃない。《ヒトを文字に挿げ替える》ことで、
 天飼千世は未来の《1000》に対して新たなアプローチが出来るようになった」

 これまでは、天飼千世の邪魔となる因子を天飼千世は殺すことしかできなかった。
 しかし《文字のヒト化》は、《ヒトを文字へと挿げ替える》方法とも呼べるものだった。
 つまり。
 天飼千世のジャマをするヒトをただ殺すのではなく、しかし《文字のヒト化》は、《ヒトを文字へと挿げ替える》方法とも呼べるものだった。
 つまり。
 天飼千世のジャマをするヒトをただ殺すのではなく、
 それをそのまま《文字にして》、「こちら側」にしてしまうことで。
 ヒトそのものの外形を殺さず、それがもたらす未来だけを殺すことができるようになったのだ。

「《未来は減った》。結末を導く因子を《文字へ替える》たびに、
 1000あった未来は、900になり、800になった。
 それは、減った分の未来可能性線では、《結末が訪れない》ことを意味する。
 天飼千世が生き続けられていることを意味する。
 天飼千世にとっての理想の未来が、ここにきてやっと導けるようになったんだ」

74146◇おはなし3 ◆YOtBuxuP4U:2015/11/10(火) 23:01:41
 
 そうとわかれば後は効率化だ。
 文字をヒトにするためにはヒトに文字を与えて歴史を刻まなければならないのは、すでに語った。
 それを最も効率よく行えるのは殺し合いであることも説明済みだ。

 あとは、「天飼千世にとって障害となる沢山の因子、
 および因子へ影響を与えることができる周囲の人物」からランダムに人間を選び取り、集めて殺し合わせるだけだ。
 次へ生かすため実験データを取り、かつ死んだ因子は《文字へと挿げ替え》ることで未来を良いものへ替える。
 文字の仲間も増え、殺し合いの中継と管理で天飼千世は退屈せず、
 さらに新たな戦闘向けの解釈能力が手に入ることで天飼千世の戦力はさらに充実する……。

「お陰さまで、残りの悪い未来は400を切った。でもまだまだだ。
 《1000の未来》のどれにたどり着くかは、平等じゃない。天飼千世の予測では、
 残った400の未来のどれかにたどり着いてしまう確率の方がまだ多い。
 ここに至って、ただ《文字に挿げ替える》だけでも未来が変わりにくくなった。
 未来は減った、減ったけれど、この方法だけで可能性を全て消すには、足りないらしい」

 決定的な何かが必要なんだ、と天飼千世は言う。

「そこで――勇者だ」

 勇者。
 天飼千世に対して因縁を持ち、自分から天飼千世を殺しに来る存在。
 それが400を1にする、鍵。

「天飼千世はそれまで殺して文字に変えていた“殺し合いの優勝者”を、ここ数回は野に放つことにした」

 それどころか、自分の目的を伝え、弱点すら伝え、殺しに来るように仕向けた。
 するとどうなったか。
 情報が共有され、単純に天飼千世の死亡確率が上昇する? そんなことはない。
 四字熟語の殺し合いが行われているなどそれこそ都市伝説めいた話、簡単には信じられない。
 “殺し合いの優勝者”は自然、一人で天飼千世に立ち向うことになる。

 優勝者が増えて徒党を組むこともあろうが、それでも数人。
 その数人だけが――天飼千世を倒すすべを知っていて。
 いずれ訪れてしまう天飼千世と人類の終末戦争に、参加せざるを得ないとなれば。

74246◇おはなし3 ◆YOtBuxuP4U:2015/11/10(火) 23:02:19
 
「人間ってのはさ、誰かが代わりにやってくれるなら、自分は後ろに下がる生き物なんだよね。
 そのくせその誰かが失敗すると、自分がやってすらいないのに非難して悲観する。もうそれは出来ないものだと思いこむ。
 学習能力が高いというのも考え物だ。押し付ける術を、生贄を作る術を、理性が心得てしまっている。
 さらに押し付けられたほうは押し付けられたほうで、それが自分にしかできないことであるならば、
 やらなければならないのではないかという義務感を感じてしまったりする。よく出来ているよ、本当に」

 勇者がいるならば、勇者に任せて人類は後ろから見るだけになる。
 400ある結末は「勇者との戦い」というひとつに集約する。
 さらに、その勇者がひどく、とにかくひどく、無惨にやられれば――折れる。

「まあ、そうゲームのように単純にはいかないから、いまはバランス調整の段階だけれど。
 アナタで何人目だったか――“勇者”たちはすでに、天飼千世を倒そうと動いてくれているよ。
 それによる未来可能性線の減少も天飼千世は確かに感じている。進歩がある。とても嬉しいことだ」

 なにより殺し合いの優勝者をそのまま勇者とする発想がよかったかもしれない――と天飼千世は述べた。

「――だって、理不尽に開催した殺し合いを生き抜いてくれれば、間違いなくこちらを恨んでくれるからね――」






「そろそろ、まとめてもいいですか?」

 と、紆余曲折は言った。
 長く身の上を喋っていた天飼千世に対して、ずっと興味なさそうな顔で話を聞いていたが、
 ここでついに言葉を差し挟んだ。
 
「ん? ああ、いいよ? 長話してすまなかったね、しかも一方的に。そうだなあ、アナタの意見も聞きたいかな。
 今の話、まあすべて本当な訳だけどさ――どう思った?」
「そりゃあもうあれですよ」

 当たり前の反応であるかのように嫌そうな顔をしながら一言、紆余曲折は斬って捨てるように言う。

「うだうだ言って周りに迷惑かけてないで勝手に死ねとしか言いようがありません」

743 ◆YOtBuxuP4U:2015/11/10(火) 23:03:33
つづきは11/14までに頑張ります。

744 ◆ymCx/I3enU:2016/01/12(火) 00:14:21
チャットの方にも書きましたがこちらにも一応
Part36が一杯になったのでPart37立てました
ttp://hayabusa6.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1452525053/l50

745 ◆84AHk0CknU:2016/02/04(木) 17:47:46
規制されそうなのでこっちに投下します

746パラレルワールド から の 刺客 ◆84AHk0CknU:2016/02/04(木) 17:54:07
【全てが終わったあと】


「ふえ〜…」
「え、何これは(困惑)」

神によって引き起こされた殺し合いゲーム。
その会場にある住宅地が密集したエリアで、MURと未央は困惑の声を出した。
彼等は地図に載っていた野獣の自宅を最初の目的地とし行動開始。
しかし、野獣邸に近付くにつれ轟音が響き閃光が煌くのが確認できた。
何が起こっているのか分からず、慎重に近付いた二人の前には驚きの光景があった。


原形を留めない程に破壊されたクッソ哀れな野獣邸。
その破壊の巻き添えを食らったであろう近辺の家々。
頭部が潰れたスイカのようになった人間の死体。

そして、その惨状の真っ只中に立つ黒い巨人、その肩に乗る黒尽くめの男と背負われた少女。

男が困惑する二人に気付いたのだろう。巨人の肩から飛び降り近付いてくる。
すると奇妙なことに巨人は黒い影に包まれるようにして消えてしまった。
その現象に呆然とするMURたちの下へゆっくりと近付く黒尽くめの男。
男の存在にハッと意識を戻したのか、MURが静止の声をかける。

「あっおい待てぃ(江戸っ子)。俺達はこの殺し合いに乗ってないゾ。あんたはどうだ?」

万一男が乗っていた場合直ぐに銃を向けられるよう密かにグリップを握るMURと、特に警戒することもなく不思議そうな目を向ける未央。
男は歩みを止めじっと仮面越しに二人を見据える。背中の少女は気を失っているのか、先程からピクリとも動かない。
やがて男はため息を吐くと疲れたように言った。

「そう警戒するな。こちらも殺し合いに乗ってはいない」





【全てが終わるまえ】


「ここまでだゼロ!諦めて大人しくするんだ!」

扇要は黒の騎士団の元リーダーであり、今は裏切り者となったゼロへ銃を突きつけ叫ぶ。
この卑劣な悪魔へ正義の弾丸を撃ち込むべく引き金に力を込める。

「ヒエー!」

奇声を上げながら咄嗟にベッドの脇に身を隠すゼロ…否、ひで。
間一髪銃弾は左腕を軽く掠めた程度に終わった。
腕の痛みに顔を顰めるひでにしてみれば何がなんだか分からない。
何故知らない男にいきなり撃たれなければならないのか。あのモジャモジャ男は自分を誰かと勘違いしているのだろうか。

「無駄な抵抗はやめろ!」

しかし、ひでの困惑など知ったことではないとばかりに扇は再び引き金を引く。
弾は意外と薄かったベッドを貫通しひでの頭部へ当たった。
おじさん家のベッドは実は安物だった可能性が微レ存…?

747パラレルワールド から の 刺客 ◆84AHk0CknU:2016/02/04(木) 17:55:54
「ア゛ッ!」

仮面で貫通は防いだものの衝撃までは殺せなかった。
痛みに悶えながらひでは思う。何故自分がこんな目に遭わなければならないんだろうか。
何故あのモジャモジャ野郎はこんな可愛い(ヴォエ!)自分に惨い仕打ちをするのだろうか。
沸々と怒りが湧き上がるひでへ、扇はトドメを刺すべくベッドを乗り越え銃を向ける。
しかし――。

「痛いんだよォォォォ!!」

叫びながらひでがBARを勢い良く振り回す。
思わぬ反撃をマトモに受けベッドから転げ落ちる扇。
痛みに耐えながら立ち上がろうとするが、今度は顔面をBARで殴り飛ばされる。

「ガッ…!」

相当堪えたのか扇は殴られた箇所を押さえ呻き苦しむ。
その隙にひでが奇声を上げながら外へと逃げ出す。

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!」
「ま、待て…ゼロぉ……!」

静止の声も無視し全速力で虐待おじさん宅を飛び出したひではそのまま一目散に駆けて行く。
追いかけようにも打ち所が悪かったのか、扇はそのまま気を失ってしまった。





野獣邸にてゼロは探索を続けていた。
しかし1階と2階、ついでに屋上も見て回ったがこれといって目ぼしいものは見つからなかった。
強いてあげれば意外と広い家である事と、冷蔵庫に大量のアイスティーが入ってた事くらいか。

(わざわざ地図に名を載せるくらいだ。他の家とは違う何かがあると思ったが…)

その考えは無駄だったらしい。尤もそれ程期待していた訳ではないが。
野獣邸という名前から推測するに、名簿にあった野獣先輩なる人物と関係があるのだろうか。
チラリとリビングを覗くと未だ目を覚まさない雪華綺晶がソファで横になっている。

(そろそろ動くべきか)

残る地下室を調べたら、彼女を起こし今後の方針を決め移動する。
そう考えつつゼロは地下への階段を下りていった。

扉を開けるとこれまた意外と広い地下室があった。
歩きながらざっと見回すと奥にあるベッドに何かが置いてあるのを見つける。
近付いて確認するとそれは袋に入った白い粉と何冊かのアルバムだった。

「…やけに大きい枕だな」

クソデカ枕くんへ訝しげな視線を向けつつアルバムを開いてみる。
そこには浅黒い肌の青年と角のようなモノが生えた少女、中年の男女の4人が仲睦まじげに写っている写真が貼られていた。
少女の角が気になったもののそれ以外はごく普通の家族写真だ。写真の背景が今居る野獣邸ということはこの4人の内の誰かが野獣先輩なのだろう。
他のアルバムも同じようなものでページをパラパラと捲り流し見ている。が、最後の一冊には別の人物の写真があった。
リビングのソファに座っている浅黒肌の青年と、顔長の見知らぬ青年が何かを話している写真。
屋上で二人揃って肌を焼いている写真。

(待て、この男……最初に殺された奴か)

あの薄暗い部屋で神々しいロン毛に詰め寄り、見せしめに殺された男。名前は確か遠野だったか。
となると遠野と親しげにしている浅黒肌の青年が野獣先輩であり、最初の部屋で悲痛な叫びを上げていた本人なのだろう。
と、次のページでは野獣先輩が飲み物に白い粉をサーッ!(迫真)と入れている姿が写されている。

748パラレルワールド から の 刺客 ◆84AHk0CknU:2016/02/04(木) 17:58:26
「ん?」

思わずベッドの上の酷似したものを見る。
そしてページをめくる毎にその後の出来事がはっきりと分かった。
気分が悪くなったであろう遠野に肩を貸す人間の鑑先輩。と思いきや地下室で拘束しレイプする人間の屑。
語ることのできないクッソ汚いアレコレが続いていき、目が腐るようなイキ顔を晒し、最後は幸せなキスをして終了。

「……」

無言でアルバムを閉じ乱暴に投げ捨てるゼロ。
いくつかの情報は得られたがそれ以上に汚くて不要な物が多すぎる。というか一体誰がこんなおぞましい場面を撮影したのだろうか。
こんなんじゃ思い出のアルバムになんないよ、こっちの事情も考えてよ(棒)

そろそろ戻るかと思った時、大声が上の階から響く。
それを耳にした瞬間ゼロは急いで地下室を出た。





時間を少し遡る。
扇から全速力で逃げたひでは野獣邸の前で荒い呼吸を整えていた。
そのあからさまな疲れてますアピールは非常に演技臭かったが、多分本当に疲れてるんだろう。

「ねーもうほんと暑い…」

愚痴を零しながらひでは休息の為野獣邸に入る。
歩きながら汗でグショグショになった服と半壊した仮面を脱ぎ捨てブリーフ一丁となる。深夜の冷気が火照った体を程よく冷まして気持ちが良い。
恐らくはこの衣装のせいであのモジャモジャが勘違いをしたのだろう。
最初に見つけた時の嬉しさは消え去り、今はただ忌々しいという感情しか湧かない。
デイバッグからペットボトルの水を取り出し豪快に飲み干す。

「あ〜」

小学生というよりオッサンのような声を出し奥へ進むと、ソファに横たわる少女を見つけた。
さっきのモジャモジャの件もあるだけに一瞬緊張で固まる。
BARを構え警戒しながら歩み寄るが、相当近くまで来ても全く反応しないので一旦銃を下ろす。

「ここ、このお姉さんのお家なのかなぁ?」

この奇妙な場所に連れて来られてから出会ったのは、いきなり発砲する危険なモジャモジャ野郎のみ。
当初は自分へのサプライズか何かだと思っていたひでも、流石にこの地が異常な場であると感じ始めていた。
眠っている少女からはモジャモジャのような危険な感じは無かったので、安心して話ができると思った。

「ねーねーおねーさーん。起きてよー」

少女の体を揺すって声を掛けるが反応はゼロ。
時折小さく声を漏らすがよほど深い眠りに落ちているのか、一向に目を覚ます気配はない。

「もー!起きてったらー!」

目を開けない少女に業を煮やしたひでは先程よりも強く服を掴み揺する。
しかし、BARを軽々と振り回す剛力(某女優は関係ないだろ!)で強く揺すったせいで少女の衣服が破けてしまった。
胸から腹部にかけてがほぼ丸見えな少女と、両手にある衣服の切れ端を交互に見てポカンと口を開けて眺めるひで。
暫くすると小学生特有のキラキラとした目で少女の身体を見やる。

「ワーオ!大人のおっぱい始めて見た〜。ツンツン」

小学生男子特有のスケベ心で少女の大き目の乳房を指で突く。
更には柔肌に自分の頬を滑らせたり、形のいい臍を指でいじったりとやりたい放題な人間の屑。
だが調子に乗って少女の体を触りまくったせいか、それが彼女の目覚めを促すことになる。

「んん……」

少女――雪華綺晶が目を覚まして最初に感じたのは体の違和感。
お腹と胸の辺りが妙に冷える。
それに誰かの吐息のようなものを顔の近くに感じる。

(ゼロさん…?)

直前まで一緒に居た仮面の魔人を頭に浮かべつつ目を開けるが。


「――――――え」

749パラレルワールド から の 刺客 ◆84AHk0CknU:2016/02/04(木) 18:01:15
次の瞬間寝ぼけ半分だった彼女の意識は急速に覚醒した。
見知らぬ家で歯茎をむき出しにして笑う気味の悪いパンツ一丁の男が自分の体を弄っている。
おまけに自分は服が裂かれていて上半身はほぼ裸。
「あ、起きたんだ〜」と言う変態の声が耳に入った途端、一気に嫌悪と恐怖が湧き上がった。

「っ!?や、やだっ!離してっ!」
「わわっ!?」

変態ことひでを必死に引き離そうともがく。
相手が突然暴れた事に戸惑いつつも、ひでは雪華綺晶に覆い被さったまま離れようとしない。
不思議そうに顔を近付けるが雪華綺晶にとってはただただ嫌悪感を引き起こすだけだった。
必死に顔を逸らし空いている方の手で平手打ちをした。

「いやぁ!」
「ぶえっ!」

頬を叩かれたひでは体をよろめかせた挙句、受身を取れず床に頭を打ちつけ悶絶する。
雪華綺晶は未だ恐怖でガクガクと震える体を動かし、ひでから逃げるため立ち上がろうとする。
が、その前に憤怒の形相をしたひでが立ち塞がり、絶叫と共に雪華綺晶の腹部目掛けて蹴りを叩き込む。

「痛いんだよォォォォ!!」
「あぐっ…」
「お前もあのモジャ公と一緒かよぉ…。ちょっと悪戯しただけだろ……。ふざけんなよもぉ…(小声)」

痛みに崩れ落ちる雪華綺晶へひでが悪態を吐きつながらBARを手に取る。
ここには親友のたるとや、優しいゴーグル先生のような人達は居ない。
変わりに居るのは自分を傷付けようとするゲスゥイ!大人ばかりだ。

「お姉さんが悪いんだにょ。僕をぶったりするからさぁ!」

どう考えても100%ひでが悪いんだよなぁ。
そんな悪い大人は良い子の自分が倒してやると意気込むひでの顔には狂った笑みが張り付いている。
怯える雪華綺晶を見下ろし、ブリーフ一丁でゆっくりと銃を構える姿はまさに狂人だ。

「お姉さんさっさと消えちくり〜」

尤もその歪んだ意気込みは―――

「貴様が消えろ只人が」

駆けつけた魔王によって呆気なく阻止されるのだが。

「ダイナマイッ!」

自身の放った拳による一撃でガラスをぶち破り、奇声を上げて外へ吹き飛ぶホモガキを無視し、ゼロは同行者の少女の安否を確かめる。

「無事か雪華綺晶」
「ぇ…あ、ゼロ、さん……?」
「あの男は私が撃退した。立てるか?」
「…………」
「雪華綺晶?どうし――」

その問いに答えず雪華綺晶は俯き、装甲に包まれたゼロの右腕を強く掴む。
その行動に一瞬戸惑うゼロだが、掴まれた腕を通して彼女の震えが伝わるのを感じ、開きかけた口を閉じる。
破かれた衣服を見るにあの変態に何をされたかは聞くまでもない。
人を捨てたゼロだが人の痛みが分からない訳では無い。掴まれるまま雪華綺晶が落ち着くのを静かに待った。

暫くして雪華綺晶が弱弱しくも顔を上げた。
顔色は決して良いとは言えないが、震えは大分治まっている。

「落ち着いたか?」
「はい……ありがとう、ございます」
「気にするな。…これから移動しようと思うが大丈夫か?」
「大丈夫、です。姉さん達だって危ない目に遭ってるかもしれないですから、急がないと」

そう。危険に晒されているのは自分だけではない。
こうしている間にも姉達や友人が危険人物に襲われているかもしれないのだ。
ならば一刻も早く探さなければと立ち上がる。
だが、神はどこまでも彼らに厳しかった。


「そこまでDA!ジュラル星人め!」

750パラレルワールド から の 刺客 ◆84AHk0CknU:2016/02/04(木) 18:03:23



時を更に遡る。
気絶から覚めた扇要は痛みが残る体を動かし外へ飛び出した。
しかし既にゼロ(ひで)の姿は見えず、逃げられる形となってしまった。

「クソォォォ!!もう少しで奴を殺せたのに…!」

悔しさと痛みで顔を歪めるも、時計を見てまだそう遠くへは行ってない筈と思い直す。
扇は憎悪を滾らせ強く握り締めた銃を片手に、あの悪魔を始末するため走り出す。
と、その直前彼に待ったが掛かる

「あのーすみません」

突然背後から声を掛けられ驚きながら振り向く。
どうやらゼロの抹殺に意識が行き過ぎて周囲への警戒が疎かになっていたようだ。
騎士団の幹部がこの様ではいかんと首を振り目前の参加者を見る。

「君は…」
「僕は泉研っていいます。この殺し合いを開いた奴を倒そうと思ってます」

泉研と名乗った日本人の少年。デカデカとKのマークが付いた黄色の全身スーツというおかしな格好だ。
だがその決意に満ちた目は、大人の扇をして只者ではないと思わせるだけの熱いなにかが秘められている。
こんな小さな子まで巻き込む主催者に怒りを抱きつつ、研に名乗り返す。

「研君か。俺は扇要だ。俺もこんな残虐な事をするあの男は許せないと思ってる。ヨロシクな」
「ハイ!ところで扇さん。何だか急いでるみたいでしたけど」
「ああ、まぁな…」

流石にこんな小学生ほどの少年に騎士団内部でのゴタゴタを話すのは躊躇われるのか、扇は言い辛そうにする。
なので危険人物が逃げたという事だけを伝えることにした。

「それと、信じられないと思うけど奴はギアスっていう危険な能力を使うんだ」
「ギアス?」
「ああ。ギアスを掛けられた人間はどんな命令も聞く奴の操り人形にされてしまう。恐ろしい能力なんだ…!」
「な、なんですって!?」
「だから研君。俺は一刻も早く奴を追って――――」










「ジュラル星人の仕業に違いない!」










「――はぇ?」
「ギアスなんて恐ろしい力を使うのはジュラル星人以外には考えられない」
「け、研君?」
「そしてこの殺し合いを開いたのもジュラル星人だ。許さないぞ!」
「け、研君少し落ち着いてくれ!というかその、ジュラなんとかって何だ?」

唐突に意味不明な事を言う研に扇が静止の声を挟む。
困惑する扇へ研がジュラル星人の事を熱心に説明する。

曰く、地球侵略を目的とした宇宙人。
曰く、ジュラルの科学力は地球よりも500年進んでいる。
曰く、この殺し合いもジュラルが邪魔な地球人を殺すために開いたもの。
曰く、ギアスとかいうのもジュラルが新たに開発した装置か何かにより手に入る力。
曰く、自分はそんなジュラル共を滅ぼす使命を背負ったヒーロー、チャージマン研である。

「という訳なんです。だから扇さん、そのギアスを使うジュラルは僕が追いかけて滅ぼしてみせます!」
「い、いや研君、幾らなんでも」

751パラレルワールド から の 刺客 ◆84AHk0CknU:2016/02/04(木) 18:05:12
有りえない子どもの妄想と言い掛けるが、ふと本当にそうだろうかと考え直す。
そもそもギアスという能力自体が冷静に考えればありえないオカルトの産物ではないか。
だがルルーシュは実際にその能力を我が物としている。

(それに俺がここに居るということ。これだってよく考えればおかしいじゃないか)

第四倉庫でルルーシュがヴィンセントに連れられ逃げるのを見たその直後に、あの薄暗い会議室に自分は立っていた。
カレンや藤堂など多くの団員が居たあの倉庫から、あんな一瞬でどうやって拉致できるというのか。
それこそ研の言うジュラルの超科学でも無い限りは……。

「じゃ僕、先に行くよー」
「へ?あっおい!」

頭を悩ませる扇を放置して研はズンズンと進んでしまった。
その後ろを扇は慌てて追いかける。
本当にジュラルが関わっているかどうかは不明だが、仮にそうだとしてもゼロを殺す事に変わりはない。
それに大人として子ども一人を危険な場所へ向かわせるなんて以ての外だ。
あの卑劣極まりないゼロなら、相手が幼い子どもだろうと容赦なしにギアスで手駒にするに決まっている。

(そんな真似は俺がさせない。奴を殺し本当の日本を取り戻してみせる!)


研に追いつき暫く歩いた先で、扇たちの前に人間が吹っ飛ばされてきた。
何故かブリーフ一丁の男は驚く二人の前でどこか嘘泣きっぽい泣き方で、痛みと苦しみを訴えている。

「うぅ……ぐすっ」
「どうしたの君?誰かにいじめられたの?」
「あ、あっちで変な仮面の奴に…」

仮面。その単語を聞き扇の顔色が変わる。
研は既にブリーフ男が指差した方へ走り出していた。

「なぁあんた大丈夫か!?仮面の奴にやられたって本当か!?」
「う、うん。本当だ……ゲッこいつかよ(小声)」
「え?今なにか「なんでもないよお兄さん!」」

ブリーフ男改めひでは扇に聞こえないように悪態を吐く。
よりにもよってまたこのモジャモジャ野郎に遭遇するとは何て不運なのだろう。
幸いあの衣装を脱いでいるお陰で向こうからは初対面と思われているが。

「あんた立てるか?」
「う、うん。何とか」
「そうか。すまんが俺はあの子を追わなきゃならない。だから」
「分かった!安全な所に隠れてるね!」

勘違いとはいえ自分を撃ったクサれモジャモジャ男と一緒に居たいはずがない。
最早自分の小学生設定を半ば忘れつつ、立ち上がり素早くその場を後にするひで。
彼の耐久力は並大抵のものではない。あの筋肉質なボディは決して飾りではないのだ。
意外と元気な姿に驚いた扇だが、あの様子なら大丈夫かと急ぎ研とゼロが居る所へ走り出した。




752激突!チャージマンvs魔王 ◆84AHk0CknU:2016/02/04(木) 18:11:17
泉研は激怒していた。
殺し合いなどという卑劣な催しを行うジュラル星人に。
ギアスとかいう能力で人間を陥れるジュラル星人に。
当然GOもゼロもジュラル星人ではないのだがそんな事研は知らないし、知ったとしても絶対に信じないだろう。
何せ彼の周囲で起こる奇怪な事件は全てジュラル星人の仕業だったのだ。
故に無関係の人物や事件までジュラルの仕業と断定してしまうのも仕方ない事なのだろう。

「その人を放せジュラル星人!」

今研の前には見るからに怪しい黒尽くめの怪人が存在する。
扇が言っていたギアスを使うというのは間違いなくこいつだろう。こんなふざけた格好の奴は間違いなくジュラル星人だ。
しかもジュラル星人のすぐ傍には衣服を引き裂かれた少女の姿もある。
ジュラルというだけでも許せないのに、女性に乱暴までする輩など生かしてはおけない。
今すぐ自分が滅ぼさなくては。

「待て。何か誤解しているんじゃないか?」

一方ゼロと雪華綺晶からすれば訳が分からない。
いきなり出てきたかと思えば、こちらをジュラル星人とかいう意味不明なモノ扱いする全身黄色の少年。
何か勘違いをしているのではと思い問いかけるが、向こうは知ったことかとばかりに睨み付けてくる。


「チャージングGO!!」


右手を上げ高らかに叫ぶ研。
すると全身スーツのKマークがVへと変化し、頭部にはヘルメットが装着される。
ジュラル星人を抹殺する正義のヒーロー、チャージマン研への変装がここに完了した。

「さぁジュラル星人覚悟しろ!」

右手に握られた光線銃アルファガンをゼロへ向け、台詞と共に引き金を引く。
ゼロは雪華綺晶を抱え黄色の光線を回避、そのまま玄関まで走り外へと出る。
雪華綺晶を下ろすと追いかけてきた研へ向き直る。

「逃がさないぞジュラル星人め」
「話を聞け」

753激突!チャージマンvs魔王 ◆84AHk0CknU:2016/02/04(木) 18:13:40
今度はヒーローよりも魔王の方が速かった。
言い終わるや否や超人的な速度で走り出し拳を振るうが、研はガドロシューズから炎を噴出し上に避ける。
しかし研が上昇し切る前に跳躍し再び拳を繰り出す。
研は咄嗟に両腕でガードするが、思ったよりも強力な一撃に吹き飛ばされる。
好機を逃さずゼロが追撃しようと近付くが、研はガドロシューズから先程よりも勢いよく炎を噴射し牽制、相手が怯んだ隙に体勢を直す。

「これでどうだ!」

研が再びアルファガンを撃つが、発射された光線をゼロはギアスを発動させた光る掌で掻き消す。
驚愕する研だがすぐに顔を引き締め光線を連射する。
だがその全てがゼロの光る掌で消滅させられ、またしても距離を詰められる。
研に装甲で覆われた脚で蹴りが襲い掛かるも紙一重でそれを交わし、逆に一撃殴りつけた。

「ほう、中々やるな」

だがその一撃は呆気なく掴まれた事で防がれてしまい、そのまま研を投げ飛ばそうとする。
が、その前に研は腰のビジュームベルトから光線を発射、予期せぬ一撃をモロに食らったゼロは研を掴んだ手を離してしまう。
解放された研はビジュームベルトを更に回転させ竜巻を発生させ、ゼロの動きを封じた。

「ここまでだジュラル星人!」

研は今度こそ勝ちを確信し竜巻の中のゼロへ銃を向ける。
しかし引き金が引かれるよりも先に、ゼロはギアスを発動させ竜巻を消滅させた。
あらゆるエネルギーを無に還す己のワイアードギアスならばこの程度何てことはない。
そしてマントを四方から射出しアルファガンを向けたままの研を拘束した。

「くっそー!離せー!」
「離せばまた暴れだすだろう」

マントの中でもがく研をゼロは呆れたように眺める。
ジュラル星人とやらが何なのかは知らないが、この少年は冷静さを欠いている。
意味不明な勘違いで殺されるなんて堪ったものではないが、誤解を解こうにも此方の話など聞く耳持たずだ。
その為に拘束した研を見下ろし、さてどうしようかとゼロは考えるが。

「扇さんの言っていた人間を操る邪悪なジュラルめ!僕が滅ぼしてやる!」
「何?」

研の口から出た名前に思考を打ち切られる。
どういうことか問い質そうとした時、後方から声が聞こえた。

「は、離してください…!」
「奴と一緒に居ては危険だ!とにかく今は俺と来てくれ!」

振り返るとそこには前髪アフロが特徴的な男、扇が雪華綺晶を無理やり連れて行こうとする光景があった。
扇は自分達を見るゼロに気付くと、左腕で雪華綺晶を捕らえ反対の手に持った銃をゼロへ向ける。

「今すぐ研君を放せゼロ!」
「…扇。この少年に何を吹き込まれたかは知らんが少し落ち着け。君はもっと冷静な人間だったはずだろう?」
「今更そんな言葉で引き下がると思ってるのか?こんな女の子に乱暴までするなんて、とことん堕ちたなゼロ!いや、それともルルーシュって言った方がいいか!?」

仮面の下でゼロは驚愕の表情を浮かべる。
自分の正体はナナリーやスザクといった限られた人間しか知らないはず。
騎士団に正体を明かした事は無いというのに、何故それを知っている?
それに扇がここまで自分へ憎しみの篭った目を向けるのも理解できない。あれほどの恨みを抱かせる何かをした覚えなど全く無いのだが。

754激突!チャージマンvs魔王 ◆84AHk0CknU:2016/02/04(木) 18:15:49
(やはりゼロはジュラル星人だったのか!?)

憎悪の視線とデザートイーグルをゼロへ向ける扇も内心驚愕していた。
研の後を追いかけた先で見たのは、まるでマンガの中で行われるかのような超人同士の戦闘だった。
何時の間にか服装が変わっていた研にも驚いたが、それ以上に驚いたのはゼロの方だった。
自分が知るゼロの姿とはかけ離れた巨漢。そして見た事の無い化け物染みた戦闘力。
思考がフリーズしかけたが、ふと研が話していたジュラル星人のことを思い出す。
荒唐無稽だが、もしも本当にゼロの正体がジュラル星人ならばあの姿や能力にも納得がいく。

(とにかく今は研君とこの娘を助けないと)

ゼロに乱暴されたであろう白い少女を横目で見る。
錯乱しているのであろう、先程から扇の腕から逃げ出そうとしているが成人男性の腕力には敵わず、拘束されたままである。
実際にはさっき吹っ飛ばされたブリーフ男こそが、雪華綺晶を襲った真犯人なのだが扇は知る由も無い。
拳銃一丁で勝てる相手では無いと悟りながらも、必死に二人を助ける策を模索する。
ゼロもまた予想外の事態にどう対処するか決めあぐねていた。

その硬直状態を破ったのは、第三者による銃撃だった。





研とゼロの戦闘をひっそり観察していたクソデカ小学生、ひで。
自分を傷付けた連中がどうなったか気になったひでは、扇が去った後野獣邸の近くに戻って来たのだ。
野獣邸の向かいにある家の塀の隙間からこっそりと覗き、さてどうしようかと考える。

(あの男の子は多分良い人だよね)

マントに拘束されているチャージマン研。
ジュラルがどうのこうのと言っている事はキチガイ染みていたが、ゼロと敵対しているならば悪人ではないと思う。
自分を殴り飛ばした仮面男、ちょっと悪戯しただけでぶった少女、勘違いで撃ってきたモジャモジャ。
どいつもこいつも悪い大人ばかりだ。正直全員死んで欲しい。
それにここで研を助け恩を売っておけば、今後は自分の心強い味方になってくれる可能性は十分ある。
やはり付くなら彼以外には居ないだろう。

(そうと決まれば早く助けなきゃ(使命感))

BARを取り出すと仮面男へ照準を合わせる。
仮にも小学生なのに悪知恵働きすぎィ!と思われるかもしれないが、ひでに限っては不思議ではない。
正史において虐待おじさんに拷問を受けた際、助かる為に従順な振りや嘘泣きという姑息な手を使っているのだ。
その悪どい一面が、殺し合いという極限状況で急速に開花したと思えばまぁ多少はね?

「あ〜。(弾が)出る〜」

クッソ気の抜けた声と共に銃弾が撃ち出された。





予期せぬ方向からの銃撃に全員が機を取られる。
自分に向かってくる銃弾をゼロは拳で弾き防ぐが、ほんの一瞬研の拘束を緩めてしまった。
研はその隙を逃さずビジュームベルトを回転、拘束していたマントを纏めて吹き飛ばす。
そしてゼロが行動を起こす前に己の愛機を呼んだ。

「来い!スカイロッド!」

研の呼びかけに応じ、飛行メカ『スカイロッド号』が飛んで来る。
そのままの勢いでゼロに激突、ぶっ飛ばし扇の元へ着陸した。

「扇さん。貴方はスカイロッドでその人を安全な場所まで届けてください」
「け、研君しかし君は…」
「僕はあのジュラル星人を倒します!だから扇さん、あなたは早く!」

自分よりもずっと下の少年を戦場に残す事を躊躇した扇だが、ややあって分かったと頷く。
悔しいが今の装備ではあのジュラルの本性を現したゼロには勝てないだろう。
また、銃撃した謎の人物も気がかりだが今の所は特に何もしてこない。意図は不明だが逃げるなら今がチャンスだ。
それに一般人の女の子を放っておく訳にもいかない。抵抗する雪華綺晶を強引に引き摺り扇はスカイロッド号に乗り込む。

755激突!チャージマンvs魔王 ◆84AHk0CknU:2016/02/04(木) 18:18:40
「研君無茶はしないでくれ!マズいと思ったらすぐに逃げるんだ!」
「大丈夫です扇さん。チャージマン研は無敵ですよ!」

ガッツポーズをしてみせる研に頷き返し、スカイロッド号の操縦桿に手を掛ける。。
KMFとは違う操縦方法に苦戦しながらも何とか上昇する事に成功した。
スカイロッド号の発進を阻止すべくゼロが駆け寄るが、こちらを狙って光線が飛んできた為足を止めざるを得なくなる。

「どけ、貴様の遊びに付き合っている暇は無い」
「黙れジュラル星人!今度こそ終わりだ!」

立ち塞がる研を睨みながら、面倒な事になったと内心舌打ちをする。
キチガイ染みた研の言葉を丸々信じるなど、今の扇はどう考えてもマトモではない。
そんな扇と精神的に疲弊している雪華綺晶を二人きりにすれば、取り返しの付かない事になるだろう。
急いで二人を止めたいところだが、しつこく光線で攻撃してくる研が非常に邪魔だ。
接近戦は不利と判断したのだろう、ガドロシューズで距離を開けながら光線を乱射しててくる。
ワープ能力を使おうにも、今一瞬でも動きを止めれば確実にアルファガンのキツい一撃を貰う事になる。
僅かに焦燥感に駆られながらも、ゼロは光線をギアスで消滅させスカイロッド号へと走る。

一方扇は野獣邸の屋根を見下ろす位置までスカイロッド号を上昇させたものの、トラブルに見舞われていた。

「降ろしてください!お願い戻って!」
「駄目だと言っているだろう!君はゼロに騙されているんだ!あいつは善良な人の心を操る悪魔なんだぞ!」

雪華綺晶が操縦桿を奪い取ろうと詰め寄ってきたせいで、扇はその対処に追われていた。
何度説明しても分かってくれず、ゼロは悪人などではないと言い返してくる。
どうして分かってくれない?ギアスで操られているのか?ここでウダウダしていたら研君の意思を無駄にしてしまうのではないか?

「このっ!」
「あっ…」

焦りと苛立ちに身を任せ、扇は衝動的に彼女に手を上げていた。
強くぶたれジンジンと痛む頬を抑える雪華綺晶へ罪悪感を覚えるが、それでも努めて冷静に彼女を説得する。

「叩いてすまない、でもゼロは本当に危険な男なんだ。後で必ず詳しく説明する。だから今は俺を信じてくれないか?」

そう言うと安心させる為に優しい笑顔を作ってみせる。
俺も研君も君を守りたいだけなんだと、だから今だけでも信じて欲しいとその顔は語っている。
ゼロが悪であり自分達が正しい存在だと信じて疑わないその笑顔。
だからこそ扇は気付かない。目の前の少女が今自分達へどんな感情を抱いているかなど。





(こわいよ……もうやだ…)

雪華綺晶は争いとは無縁の一般人である。
姉妹同士で戦う宿命や究極の少女になる使命など持ち合わせてはいない。
7人姉妹の末っ子として、普通に家族や友人と仲良く暮らしてきた極普通の少女だ。
そんな彼女にとってこのバトルロワイアルは、短時間で恐怖の連続だった。

首を吹き飛ばされたグロテスクな死体。
高い身体能力で襲ってきた胴着の男。
宙に浮き光弾を発射する赤い怪物。
気持ち悪い笑みで自分の寝込みを襲った変態。
とても話が通じそうに無い光線銃を持った少年。
同じく話が通じず暴力を振るう前髪アフロの男。

気の弱い人間なら到底耐えられないであろう現実に、それでも彼女が正気を保っていられたのはゼロが居てくれたからだ。
何度も命の危機を助けてもらい、恐怖で動けない時には何も言わず傍に居てくれた。
姉と友人以外では唯一この場で信頼できる存在となっていた。
けれどその彼ともこのままでは遠ざかってしまう。
代わりに隣に居るのは助けてくれた人を悪党呼ばわりする胡散臭い男。
あの研という少年と一緒になりゼロを攻撃し、罵声を浴びせた人間など信じられるはずが無い。
ぶたれた痛みが残る頬を押さえながら思う。

(はやく、はやく逃げないと…)

焦る気持ちをそのままに、笑顔を見せて屈む扇を突き飛ばす。
不意をつかれた扇は背中から転倒し、情けない悲鳴を上げる。
その隙に急いで操縦桿を動かすが、慣れない操作のせいで機体は思うように動かない。
すると立ち上がった扇が背後から雪華綺晶を押さえ付ける。

「いやぁ!離して!はなしてぇ!」

密着する扇の体の感触にあのブリーフ男を思い出し、嫌悪感に襲われ必死で逃れようとする。
すぐにこの男から逃げたいという一心で片っ端からレバーやらボタンやらを操作する。

756激突!チャージマンvs魔王 ◆84AHk0CknU:2016/02/04(木) 18:21:23
繰り返し言うが彼女は争いとは一切無縁の世界で過ごして来た一般人だ。
この殺し合いという異常な場所で信頼できる者から急に引き離されれば、当然錯乱し冷静な判断はほぼ不可能となる。
故にこの時彼女が何をしたとしても、一概に責められるものではない。
だからそう。


「なっ」



押したボタンの一つが機内の人間を外部に投棄する仕掛けのもので



「――――――え?」



扇がかつてのボルガ博士のように、突如開いた床の穴から外へ投げ出されても



「あ――――」



これは不幸な事故なのだ。


(千草……)


グシャリ


此方を覗く青い顔をした少女を見ながら、最期に愛した女を想い、扇要は呆気なく死んだ。


【扇要@コードギアス 反逆のルルーシュ 死亡】





その様子は当然地上の者たちも目撃していた。
研が悲痛な表情で扇の名を叫んでいる隙に、ゼロは行動を起こす。
ワープ能力を発動しスカイロッド号の上に移動、ハッチを強引にこじ開け中に侵入。
雪華綺晶の様子を見ると、自分のせいで人が死んだ事実が相当ショックだったらしく意識を失っている。
ゼロは構わず抱きかかえ外へ飛び出ると同時に大きく叫ぶ。

「ガウェイン!」

その呼び掛けに応じ、6mを超えるゼロの愛機『ガウェイン』が出現する。
ゼロは宙に浮くガウェインの肩に着地すると、操縦者を失い墜落するスカイロッド号を見た。
しかし地面に激突する前にガドロシューズで飛行した研が素早く搭乗、慣れた手付きで動かしガウェインへ突っ込む。

「扇さんの仇だ!くらえ!」

体当たりを仕掛けるスカイロッド号をガウェインは難なく回避。
スカイロッド号は直ぐに方向を変え搭載されたビーム砲を発射する。
再び回避するガウェインだが、避けた事で野獣邸他付近の家々が消滅させられた。

「これで終わりにしてやる!」

スカイロッド号から再びビームが発射されガウェインを襲う。
今度は避けきれないと悟ったゼロは迎え撃つため、ガウェイン両肩のハドロン砲を撃ちだす。
拮抗する両名の必殺兵器だったが、耐え切れず双方を吹き飛ばした。

「ぐっ…!」
「うわぁぁぁぁぁぁァァァァァァぁぁぁぁぁ!!」

ゼロはマントを幾重にも展開し被害を可能な限り抑え、研は絶叫を上げながらスカイロッド共々ふっ飛ばされていった。
ゼロは彼方へ飛ばされた研を見送るとガウェインを地面に降り立たせる。
銃を撃ち介入した人物の気配はもうどこにもない。逃げたか或いは研のビームに巻き込まれたのどちらかだろう。
周囲を見回しているとこちらを見る二人の参加者を発見した。
ガウェインを下がらせ、警戒する坊主頭の男とキョトンとした瞳をの少女へ近付き話す。

「そう警戒するな。こちらも殺し合いに乗ってはいない」




757激突!チャージマンvs魔王 ◆84AHk0CknU:2016/02/04(木) 18:23:49
【全てがおわったあと】


一先ずMURが警戒を解き、お互い軽く自己紹介をする。
本題であるこの惨状の理由に付いて聞こうとしたが。

「ねーねー、コレぜーんぶあなたがやったのー?」

MURよりも先に、未央が知り合いに対するような気軽さでゼロに質問する。

「話すと長くなる。できれば場所を移して話をしないか?彼女を休ませる必要もある」
「そのお姉ちゃん怪我してるの?」
「いや、目立った外傷は無いが色々と訳ありだ」
「ふーん」
「分かったゾ。とりあえずここから離れよう。未央ちゃんもそれでいいか?」
「んい!」

野獣邸跡を立ち去り、ようやくマトモな参加者に会えた事にゼロは溜飲が下がる思いだった。
地図を取り出し周辺の施設を確認するMURと未央を横目で見つつ、背負った雪華綺晶の事を考える。
恐らく扇と揉み合いになり、何かの弾みで彼を突き落としてしまったのだろう。
あの扇は思い出してみても、急におかしくなったとしか思えない。尤も本人が死んだ以上その原因も分からず終いだが。
故意に殺したのではないだろうが、扇の死んだ原因が雪華綺晶にあるのは否定できない。
その事実を果たして彼女は受け止められるのだろうか。
MURたちに聞こえないように、ゼロはもう一度ため息を吐いた。


【MUR@真夏の夜の淫夢】
[状態]:健康
[装備]:ポッチャマの着ぐるみパジャマ@現実、雑賀孫市のリボルバー(8/8、予備弾×32)@戦国BASARA
[道具]共通支給品一式、不明支給品×1(武器ではない)
[思考]
基本:主催者に怒りの鉄拳をブチ込む
1:未央と行動し守る
2:近場の施設へ移動しゼロから事情を聞く
3:未央と自分の仲間を探す(できれば野獣優先)
4:未央のウサちゃんを探す
[備考]


【未央@NEEDLESS】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:共通支給品一式、不明支給品1〜3
[思考]
基本:お兄ちゃん達に会いたい
1:ペンギンのおじちゃんと一緒に行動
2:ウサちゃんとクルス君達を探す
[備考]
※参戦時期はセツナ・梔との決別以降


【雪華綺晶@やる夫スレ】
[状態]:疲労(中)、精神疲労(大)、扇を殺した事へのショック(大)、ひでへの強い嫌悪感、ゼロに背負われている、気絶
[装備]:
[道具]:共通支給品一式、蝶ネクタイ型変声機@名探偵コナン、FN ブローニング・ハイパワー(13/13)@現実、予備マガジン×4
[思考]
基本:姉さんとやる夫さん達に会いたい
0:気絶
1:姉さん達を探す
[備考]


【ゼロ@コードギアス ナイトメア・オブ・ナナリー】
[状態]:疲労(極大)、全身にダメージ(中)、ガウェイン3時間召喚不可
[装備]:
[道具]:共通支給品一式×2(ゼロ、扇)、篠崎咲世子のクナイ×10@コードギアス 反逆のルルーシュ、デザートイーグル(5/7)@現実、予備マガジン×7
[思考]
基本:主催者の殲滅、元の世界で魔王の役割を果たす
1:近場の施設へ移動する
2:雪華綺晶と行動し、互いの知り合いを探す
3:他の参加者を探し情報を集める
4:胴着男(AKYS)、赤い異形(星君)、ブリーフ一丁の変態(ひで)、泉研を警戒
5:首輪と能力の不調をどうにかしたい
6:扇の言動と態度に違和感
[備考]
※参戦時期はLAST CODE『ゼロの魔王』終了時
※野獣邸地下のアルバムで野獣一家の容姿と野獣先輩と遠野の関係を把握しました


【ガウェイン@コードギアス ナイトメア・オブ・ナナリー】
ゼロが召喚する6.57mの人型兵器。
両肩にハドロン砲、両手にスラッシュハーケン、背中にフロートシステムをそれぞれ搭載している。
本編ではロロに一撃で破壊されたり、移動用の足場としか使われなかったりとクッソ情けない無様を晒している。
搭乗者にインパクト負けするロボットの屑。



吹き飛ばされたスカイロッド号は付近の家を破壊しながら墜落した。
墜落の衝撃で痛む体に顔を顰めながら研は外へ出た。
するとスカイロッドが勝手に動き出し、明後日の方向へと飛んで行く。

758激突!チャージマンvs魔王 ◆84AHk0CknU:2016/02/04(木) 18:26:13
「あっ待て、待つんDA!」

研の叫びも空しく、スカイロッド号は戻る素振りを見せずに遥か彼方へ消えてしまった。
愛機の突然の暴走に驚愕する研だったが、すぐにこれがジュラル星人の仕業だと確信する。
爆弾首輪を付けて拉致し、スカイロッドにまで細工するとはどこまでも卑怯な連中だ。

「扇さんを殺すなんて……。許さないぞ卑怯なジュラル星人め!」
扇を突き落として殺したあの白い少女も、仮面の仲間のジュラル星人なのだろう。
乱暴されたか弱い少女を装って男を誘惑する卑劣な手段を用いてるに違いない。
さらに厄介な事に名簿には死んだはずの星君とボルガ博士の名があった。
おそらく星君はジュラルの科学技術により蘇り、ボルガ博士は忠実な人間ロボットとして復活させられたのだろう。
グズグズしてはいられない。一刻も早く奴らを滅ぼさなくてはと野獣邸に戻ろうとした所で声を掛けられた。

「あ、いたいた。無事だったんだね」
「君はさっきの…」

心配してたんだよー、などと言いながら小走りで近付くクソデカ小学生、ひで。
ひでは今の所唯一自分の味方になってくれそうな研を追いかけここまで来たのだ。
研もあの仮面ジュラルに傷付けられたひでが無事でいた事に、ひとまずホッとする。
しかしのんびりしている暇は無いので、直ぐにゼロの元へ戻ろうとする。

「ごめん、僕は急いで奴を倒しに戻らないといけないんだ。だからもう行くよ」
「ちょっと待っちくり〜(懇願)。君一人じゃ幾らなんでも危ないよ。それに怪我だってしてるし、やられちゃうよ」

ひでの言葉に研はそんな事はないと反論しようとするが、言いかけた言葉を飲み込み思い直す。
あの仮面を付けたジュラルは、今まで倒してきたどの敵よりも遥かに手強い。
桁外れな身体能力や、アルファガンとビジュームベルトを無効化するあの光は非常に厄介だ。
対策もなしに突っ込むのはいささか無謀ではないだろうか。
考え込む研にひでが明るく話す。

「よかったら僕といっしょにあいつらをやっつける仲間を探さない?」
「仲間を?」
「うん。君みたいな正義の味方に協力してくれる人とか、強い武器を探してそれから悪いやつらを倒すんだ」

そうだ、この地にはジュラル星人だけでなく扇のような善良な人間も居る。
となると他にもジュラル星人を倒す事に協力してくれる、正義の心の持ち主が現れる可能性は高い。
そしてスカイロッド号に細工をされた自分は戦力的に不利な状態だ。ひょっとすると他の装備にも手を加えられたかもしれない。
ならばひでの言うとおり可能な限り武器を集めておくべきだろう。

「分かった。まずは君の言うとおり仲間と武器を探そう。ええっと…」
「ぼくひで」
「じゃあひでくん、僕は泉研だ。これから宜しく頼むよ」
「こちらこそよろしく。絶対にあいつらを倒そうね!」
「うん!」

ひでと握手を交わしながら研は誓う。
扇の無念は必ず晴らしてみせる。
この地に居るジュラル星人を全て抹殺し、主催者のジュラルも滅ぼしてやると。

(扇さん。あなたの仇は僕が討ちます。待っていろジュラル星人ども!お前達に生きる道は無いと思い知れ!)

研が打倒ジュラル星人の決意を再び固めている横で、ひでは邪悪な顔でほくそ笑んでいた。
強い能力を持った研を味方にできたのは実に幸運だ。
この調子でどんどん仲間を増やしていけば、自分の安全はほぼ確実に保障される。
さらにあのモジャモジャ野郎も無様に死んだ。実にいい気味だ。

(でもあの仮面男と女は生きてるんだよね。僕を殴った事を今に後悔させてやる)

研と共にあの二人の悪評を流し追い詰める。
そうして逃げ場が無くなった所を、自分を殴った罰として大勢で嬲り殺しにしてやろう。

暴走気味な正義の味方と、逆恨みで憎悪を滾らせる人間の屑。
今ここに、危険極まりない二人の少年が手を組んでしまった。
ひでしね

759激突!チャージマンvs魔王 ◆84AHk0CknU:2016/02/04(木) 18:27:43
【ひで@真夏の夜の淫夢】
[状態]:疲労(大)、全身に軽度の打撲、左腕に掠り傷、パンツ一丁
[装備]:グレーテルのBAR(11/20)@BLACK LAGOON
[道具]共通支給品一式、予備マガジン×5
[思考]
基本:とにかく生きる
1:研と行動
2:自分を助けてくれる仲間を集める
3:仮面の男(ゼロ)と白い少女(雪華綺晶)の悪評を流し追い詰めた上で殺す
[備考]
※虐待おじさんに拉致された所からの参戦です
※ここが何となく異常な場であることは理解しました


【泉研@チャージマン研!】
[状態]:疲労(大)、全身にダメージ(中)、ジュラル星人への激しい怒り
[装備]:スペクトルアロー@チャージマン研!、スカイロッド号(現在使用不可)@チャージマン研!
[道具]:共通支給品一式、不明支給品0〜1
[思考]
基本:ジュラル星人を全滅させる
1:ひでと行動し仲間と武器を集める
2:ジュラル星人やその協力者は見つけ次第始末する
3:夜が明けるまでは変装可能な光がある場所を捜索する
4:スカイロッドに細工をされたのか?
[備考]
※参戦時期は第35話『頭の中にダイナマイト』終了後
※スカイロッド号は10分間経過すると強制的に使用者の元を離れます。
再使用には3時間のインターバルが必要です
※ゼロ、雪華綺晶をジュラル星人と考えています


【スペクトルアロー@チャージマン研!】
研がいつも来ている黄色のスーツ。光のエネルギーを浴びる事でチャージマン研に変装する。

【アルファガン@チャージマン研!】
研が変装すると装備される光線銃。非常に強力で、これで撃たれた相手は毎回一撃で死んでいる。
催眠モードに切り替える事ができるが、それで撃たれたジュラル星人は蒸発し普通に死んだ。

【ガドロシューズ@チャージマン研!】
研が変装すると装備される靴。ジェット噴射機能が搭載されており、飛行や攻撃に使用する。

【ビジュームベルト@チャージマン研!】
研が変装すると装備されるベルト。光線を発射したり、竜巻を発生させることができる。
難聴なホモには虹裏ベルトと聞こえる。

【スカイロッド号@チャージマン研!】
研が愛用する飛行メカ。陸海空及び宇宙空間での飛行が可能。また、日帰りで日本とアフリカを行き来する事もできる。
装備された光線砲は非常に強力で、ジュラル星人の戦艦を一撃で破壊する。
こっちが強すぎるのか向こうが弱いのかこれもう分かんねぇな。お前どう?

760 ◆84AHk0CknU:2016/02/04(木) 18:30:53
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