[
板情報
|
カテゴリランキング
]
したらばTOP
■掲示板に戻る■
全部
1-100
最新50
|
1-
101-
201-
301-
401-
501-
601-
701-
この機能を使うにはJavaScriptを有効にしてください
|
避難所スレPart3
660
:
41◇最終戦Ⅴ(2/2)
◆YOtBuxuP4U
:2014/05/23(金) 17:32:46
「……」
でも。
僕はまだ。
引き金を、引けていない。
引けて、いない。
――指が。全く動かない。
「どうしたんですか、紆余さん」
凛々ちゃんが僕に問う。
「わたしに手はもうありません。確かに、わたしの負けです。早く終わらせて、ください」
それは僕も知っている。
もう、胸にボウガンを押し当てた。
どこからでも現れる《りんりんソード》が生成されきる前に、
僕は凛々ちゃんを殺すための引き金を引くことができる。
相討ちもありえない。凛々ちゃんの攻撃を《曲げている》間に彼女を殺せばいいだけ。
だから詰みなのだ。もう王手はかけたのだ。
それなのに。僕は最後の一つのハードルを、越えられていない。
自分の引き金で人を殺すという、それだけのハードルを。
こんなところまできておいて。――――越えることが、できていない。
「ふざけないで、ください」
凛々ちゃんは僕に怒った。
「優柔不断さんに渡した銃。あれに、細工していたんでしょう。
あれを撃った瞬間に優柔不断さんが不利になる様な細工を。でなければ渡しませんもんね」
「……うん」
「そんなことをしておいて自分は引けないんですか」
「……うん」
「優柔不断さんには引き金を引かせて殺しておいて。自分は引き金を引いて殺せないんですか」
「……うん」
「ふざけないでください」
怒りながら、涙を流して。
「わたしは。貴方を軽蔑しましたよ、紆余さん」
と、凛々ちゃんは言った。
当たり前だと思う。
僕は頷く。言葉もない。
……凛々ちゃんは、言葉を続ける。
「全部。嘘だったんですよね」
「うん」
そうだ。全部嘘だった。
「タクマさんは。あなたのことを仲間だと信頼してました。それも嘘だった」
「うん」
そうだ。それも嘘だった。
661
:
41◇最終戦Ⅴ(2/2)
◆YOtBuxuP4U
:2014/05/23(金) 17:34:16
「わたしと優柔不断さんは、あなたの作戦についていった。でもそれも嘘だった」
「うん」
そうだ。でもそれも嘘だった。
「あなたはみんなを駒みたいに扱って」
「うん」
そう。
「一刀両断さんも駒みたいに扱って、傍若無人すらも駒にして。もてあそんで!!」
「そうだ」
うん。
「みんな、あなたが殺したんじゃないんですか。ぜんぶあなたのせいじゃないですか」
「そうだね」
うん。そうだね。
「なのに、面と向かって殺すのだけ出来ないだなんて……っ!!」
「そんな道理、通るわけないよね。……僕もそう思うんだ。僕も、そう思うんだよ、凛々ちゃん」
でも僕は。
「でも僕は……殺せないんだ」
――事故みたいな形で殺した猪突猛進さん。
――腔発事故を僕が仕組んで、遠隔的に殺した優柔不断さん。
僕が殺すことができたのは、
こんなふうに僕の意志が、最後の一手では必要ないような場面でだけ。
“僕のせいじゃない”と思えるような形で、だけだ。
勇気凛々ちゃんに向かって引き金を引くのはこれらのケースとは違う。
ルール能力のせいでも、銃のせいでもない。
僕のせいだ。
僕が引き金を引くせいで、凛々ちゃんはこの世からいなくなる。
そう思うだけで。僕の腕は硬直し目から涙が溢れて呼吸は荒くなり心臓は跳ねて身体が震えた。
でもこんなの、一刀両断さんを、
リョーコさんを僕の駒にしたときからずっと分かっていたことだ。
ひどく単純な話。僕の手じゃ、僕は殺せない。
僕は“殺せない人間”なんだって突き放すつもりももうない。
弱虫なだけ。何かのせいにしなきゃ、間接的じゃなきゃ、人を殺せないってだけだ。
僕は弱いのだ。なによりも。誰よりも。
662
:
41◇最終戦Ⅴ(2/2)
◆YOtBuxuP4U
:2014/05/23(金) 17:35:49
「だけど……でも。成長しなきゃ、いけないんだ」
「……」
「これを成長だなんて言っちゃいけないのかもしれないけれど。
こんな……こんなことまでやってしまったんだから。やったんだから。
……僕はきみを殺さないとダメなんだ。僕が、終わらせなきゃ、ダメなんだ。
じゃないと……いままで僕が殺してきた人たちに。申し訳が、たたないじゃないか」
「そうですね。肯定するしか、ないです」
「……」
「でもたぶんそれ、無理ですね」
言われて僕は自分の手が自分の思い通りに動いていないことに気付く。
うわあ。……何だこれ。
僕、引き金に指すらかけれてないじゃないか。
「う、わ……あ……」
「情けないですね。たくさんのひとを殺しておいて。
こんなちっぽけな女の子ひとり、殺せないなんて」
「……ぅあ……」
「最低です」
「……」
「あなたは最低です、紆余曲折さん」
うつむきながら、憎らしげに。
自分でもさんざん思っていることを言われて僕は。
自分でもさんざん思っていた通りに言葉を心に突き刺されて。
そして。
ボウガンを、取り落として、負けを認める……
……それすら、そんなことは、できなかった。
もどれない。
止まれない、動けない。
進めないのに、退けない。
「…………」
僕はもう殺してしまった。猪突猛進さん、優柔不断さんだけじゃない。
凛々ちゃんが言った通り、タクマさんや傍若無人も僕が殺したようなものだし、
例えば殺し合いを打倒するって僕が本気で思ってさえいれば、
その上で話せば、青息吐息さんや先手必勝さんとだって分かり合えたかもしれない。
でも、信じられなかった。
僕は信じられなかった。
たった数人頑張ったところでこんな理不尽な実験をどうにかできるだなんて信じられなかった。
みんなでがんばればどうにかできるとか、そういう感情論を信じられなかったし、
傍若無人がぶらさげた脱出への希望も、倒せば教えてやるなんて都合の良い条件(ルール)も、
検討するまでもなく信じられなかった。
最初から他の全てを疑ってかかって。だからこそ作戦は成功した。
信じたのは一刀両断、リョーコさんだけだ……いや、そう言えるかどうかは、かなり怪しい。
だって他の人が信じられてないのにどうしてリョーコさんだけ信じられたって言うんだ。
きっと、信じているという体で突き放していただけだ。
リョーコさんを信じているふりをすれば他の人を信じなくていいから、信じていただけ。
むしろ裏切って欲しいって思ってた節さえあるかもしれない。
僕なんかみじめに裏返されて、簡単に信じすぎだぜって、殺されるのが関の山だろうなんて。
疑っていたんだろう僕は。馬鹿にしてほしかったんだろう。
投げやりに問えば心は肯定していた。ほら、やっぱりそうだ。……最低だ。
663
:
41◇最終戦Ⅴ(2/2)
◆YOtBuxuP4U
:2014/05/23(金) 17:38:14
けど。残念ながら、上手くいってしまったんだ。
僕が知らないうちに僕の作戦は完璧なものになっていて。
誰もがそれを疑うことなく、騙され、僕はそれに従うしかなくなった。
それはもうぜんぶまとめて誰かのせいにしたいくらいに。
自分でも自分が信じられなくなるくらいに、すべて思い通りに、なってしまった。
でも、元をただせば全部僕のせいだし。僕はそうしなければ生き残れていないだろう。
紆余曲折は何も、何もかも、自分さえも信じずに。
それでも生きたいとだけ願って。
すべて疑ってすべて騙した。
人を駒にして、弄んで、紆余曲折の果てに殺した。
その事実だけは確実だ。絶対に信じられるものだ。
だからその現実を受け入れて、
前に進まなきゃいけないのに。どうして僕は、僕の手は。……僕は、動けないんだ。
「……」
床に涙が落ち続けている。
凛々ちゃんはただ、まっすぐ僕の目を見据えている。
もう凛々ちゃんは泣いていなかった。ただ、見定めるように、僕を見ている。
床に落ちる涙は僕のものだ。
自分でもびっくりするくらいぼろぼろと、僕は情けなく泣いてしまっていた。
どうにもできない現実に駄々をこねる子供のようだった。
どうしようもなくダメな僕は子供だった。
僕はゲームに勝って勝った気になっているだけの、現実に負けた子供だった。
「――――」
ぶざまに泣き叫びながら凛々ちゃんの胸に飛び込みたい衝動に駆られた。
もう三秒、いや四秒もすれば、何も考えずにそうしていたかもしれない。
あるいは何も覚悟を決めぬままに、時間に突き動かされるまま引き金を引いていたかもしれなかった。
それは放棄だ。そんなことをすれば何もかもダメになる。それは分かっていたけれど。
僕は押しつぶされるように、そうなろうと、していた。
けれどその一秒前に。
タイムリミットが、やってきた。
「――どうしたよ、紆余。まだ殺してないのか? なあ。それは、ルール違反じゃないか」
リョーコさんだ。
「あ……」
「“最後の二人になって。あたしを殺す”んだろ、紆余。
だったら。だったら、そいつを殺せないようじゃだめだよな? なあ?」
「……リ、リョーコ、さん」
隠れる場所をここにするとか、そういう段取りは決めていないはずなのに。
リョーコさんが。あまりにも早く。僕と凛々ちゃんの前に、現れた。
この早さはいったい――と思ったところで僕は周りの騒がしさを思い出す。
そうだ、ここはゲームセンター。
ゲームセンターと僕に関わりがあることは、もうリョーコさんには話していたんだっけ。
664
:
41◇最終戦Ⅴ(2/2)
◆YOtBuxuP4U
:2014/05/23(金) 17:41:30
「そいつを殺せないのは……ルール違反だよなァ。
で、ルール違反は……契約(ルール)破棄とみなすぜ、紆余……!」
リョーコさんは不遜に笑っていた。
僕はおそろしくなった。
そう、僕はリョーコさんが来るまでに凛々ちゃんを殺せなかった。
チャンスがやってきたのに、すぐ殺して二人きりになればいいものを、殺さなかった。
殺せなかったも殺さなかったもこの場合は同じだ。
リョーコさんから見てみれば、これは……優柔不断どころじゃない僕のこれは、裏切り行為だ。
そして。そのしっぺがえしはどうなるか――分かっていた、はずじゃじゃないか。
日本刀が、構えられる。
「あたしを殺したはずの男を、あたしが殺すことになるとはな」
「一刀両断、さん……やめてください!!」
「わめくな小娘。これはあたしと紆余の問題だ」
「……でも! もう、もう……やめてくださいよ、こんなの!
おかしいです! 約束だから殺さなきゃなんて! なんで、なんでこんな!」
「――止めないで、凛々ちゃん」
僕はボウガンを捨てて、凛々ちゃんを制止した。
当然だと思ったからだ。
「きっと……これが僕の、因果往訪ってやつなんだよ。誰も信じきれずに、
自分すらも信じられなきゃ……結局は誰かを裏切って、殺されるだけなんだ」
「紆余さん!!」
「遺言はそれでいいな? それじゃあ……行くぜ、紆余」
「はい……ごめんなさい、リョーコさん」
僕は実は見えていたその両目をこのときばかりはしっかり見開いた。
リョーコさんは一歩で距離を詰め、構えていた日本刀をさらに大上段へ。
二歩目を踏み込むと同時に、
勢いよく、日本刀を振る――凛々ちゃんにもそれは、止められなかった。
ごめんなさい、と僕は呟き。
リョーコさんは刀を振った。
日本刀の刀身は。
奇麗な直線を描いて。
僕の頭を、ぱしんと叩いた。
「……え?」
そして、僕は。《斬られ》……なかった。
リョーコさんが振り下ろしたのは刀の、刃ではなく。峰のほうだった。
「え?」「……え」
え?
665
:
41◇最終戦Ⅴ(2/2)
◆YOtBuxuP4U
:2014/05/23(金) 17:42:42
「あー、驚いたか? っはは、最後まで騙されんのが上手い奴らだよ、お前らは」
「……どう、いう、こと、ですか?」
けっきょく直前に目を瞑ってしまっていた僕がその目を開けると、リョーコさんが笑っている。
さっきのように切迫した、怒りをはらんだかようなものではなく、むしろ場違いなほどに朗らかに。
笑いながらリョーコさんは、僕の髪の毛をわしゃわしゃしてこう言った。
「お前が凛々を殺せるわけねーなんて、読めてたんだよあたしには。
むしろ平気な顔してあたしに“僕には無理なんで殺してください”って言うかと思ってた」
「な……」
「っていうか! あたし以外殺すなよ! それこそ契約(ルール)違反だっての。
二人になるまではお前は守られ続けるっていう話だろ、何がんばって凛々を殺そうとしてんだ。
お前に殺されていいのはあたしだけなんだよ! いいかげんにしろ、妬けんだろーが!」
「そ、そんな……で、でもちょっと待ってください、リョーコさん!
どっちにしたって、凛々ちゃんを殺さないと二人になれないじゃないですか!」
「あー、もう……言うぞ、それは間違いだったんだよ!
分かってろよ。推理不足にも程がある。疑いすぎのうえに適当に流しすぎ。解釈不足だぞ、紆余!」
「……なっ!?」
「嘘じゃねーんだよ。“脱出口”は! 存在するんだよ!
そして――このバトルロワイヤルで生き残れるのは、一人じゃねえ!」
乱暴に、リョーコさんが言い捨てたその言葉を――僕は受け入れるのに時間がかかった。
え、嘘。
それは嘘のはずで。
最終戦のエサとして使われた、撒き餌のはずじゃ……?
「……どういうことですか、リョーコさん!?」
「右に同じです!! それじゃ、どうしてあなたたちはタクマさん達を殺したんだって話になるじゃないですか!」
「それは必要だったんだよ、凛々。脱出口の出現には条件(ルール)がある」
リョーコさんは続けて提示した。
“第三放送の後”。
誰でも行ける、特定の場所に、脱出口は現れる、と。
「つまり、残り二人まで減る必要はあるんだ。――ま、もちろん脱出口を通れるのは一人だけだぜ?
じゃなきゃそのタイミングで出す意味はないからな。ただそのルールには“裏”がある。
ロワのルールを読み込んだ紆余になら、この意味は分かるとあたしは思ってるが……どうだ」
「……」
「ちなみにこれは全部、前回優勝者かつ主催側でもある傍若無人に聞いた言葉だ。
信頼性って意味じゃこれ以上はほぼないはずだろ? さあ、紆余……考えてみろよ」
「……ええ……?」
「……」
話しについていけない凛々ちゃんが目を点にして制止する。
そのそばで、いまだに信じられない気持ちになりつつも、
僕はリョーコさんによって新たに提示された条件をよく咀嚼して、
最初の最初、屋上へ進むスロープを見ながら読んだルール用紙のルールと照らし合わせた。
……確かに。本当にそんな展開になるのであれば、可能だ。
脱出口を通れるのは一人だけ。
しかしそれ以上の人数で生き残ることは、事実上可能だ。
だけど。
それでも、生き残れるのは、結局二人だけ、だ。
666
:
41◇最終戦Ⅴ(2/2)
◆YOtBuxuP4U
:2014/05/23(金) 17:50:18
「それでも、二人だけ、」
「そうだな」
「……な、なら……!」
「あたしと、お前で生き残る。凛々を殺す。そう言いたいんだろ。
でも残念ながらそれは無理だ。もうひとつ、お前は勘違いしていることがある」
「……?」
「“あたしは傍若無人を裏切ってなんかない”」
「?」「!?」
「あたしは。一刀両断もといリョーコさんは。
このバトルロワイヤル、全部の約束、契約を! ここまで全部、ちゃんと守ってんだよ。
つまりどういうことか? めんどいからシンキングタイムは一刀両断して、一気に言うぜ。
傍若無人は“自分が殺されることも契約に含んでいた”んだ。そして。傍若無人とあたしが結んだ契約は!」
リョーコさんは、いろいろ置いてけぼりの僕“たち”を指差して。
「お前ら“二人”を、生き残らせることだったんだよ。紆余。そして……凛々!」
この最終戦が開かれた、本当の意味を――ついに知らされる、ことになった。
(最終戦Ⅴ「殺せない」 終わり)
(第42話、「別れ言葉」――の前に)
(EX28.5「得意料理は、焼き魚」へ 続く。)
667
:
◆YOtBuxuP4U
:2014/05/23(金) 17:54:43
投下終了、です!
脱出口については32話「最期通牒」を、
そして傍若無人さんがなんのために戦っていたかは、
25話「鬼気迫る」をそのつもりで読めばなんとなく分かるかもしれません。
一応ぶっとびすぎてるかなあって思うので、
次回、28話「焼魚定食」の裏話でその辺を補完してから次に進む予定です。
ああ、やっっとここまできたー!
668
:
◆YOtBuxuP4U
:2014/05/31(土) 01:19:35
四字熟語ロワ投下します。
おまけというには確信めいてるおまけSSですが、自分の中での状況を整理するためにも。
669
:
◆YOtBuxuP4U
:2014/05/31(土) 01:20:40
◆◆◆◆
C-1、2階。
「和食の店」と書かれた看板がある、和食メインの店。
日本の古き良き食卓を再現しますの宣伝文句のもと、メニュー表にはそれらしき食事が並ぶ。
中でもとくに目を引くのが、Aランチ・焼魚定食だった。
メニュー表のいちばん目立つところに載っているくせに質素で、かつ目新しさは全くなし。
焼き魚。塩味のもの。
味噌汁。わかめと豆腐。
つけもの。白菜の簡単なもの。
そして銀シャリのどんぶり。ふりかけは無し。
もちろんこの質素さ通りの安さだが、誰がこんなのわざわざ食いに来るのだろうか?
一刀両断は店に入ってメニューを見た瞬間そう思ったものだが、
意外にも、傍若無人がリクエストしたのはその焼魚定食だった。
“――――ex28.5♯得意料理は、焼き魚”
味噌汁の仕込みは終わり、炊飯器も残り10分で炊けるとサインを出した。
漬け物は最初から出来上がったものを冷蔵庫から出して盛り付けるだけなので、残りは焼き魚だけだ。
一刀両断は鉄網に油を軽く塗り、
グリルに少々の水を入れたあと、魚の切り身を網にくっつかないように上手く載せる。
この載せ方がコツといえばコツ、あとは火加減の調整と、どれくらい焼くかの調整がすべてだ。
料理は得意だった。
とくに焼き魚は完璧に出来る自信がある。
「おい。味付けは」
「薄めで頼む」
「りょーかい」
見知らぬ人に合わせた味付け方のバランスすら、一刀両断にとっては朝飯前だ。
自分にとっては慣れ親しい家庭的なキッチンに酷似しているこの厨房もやりやすい。
そう、慣れと親しみ。
それがすべてだ。疑問に思っていたことももう解けた。
料理を始めたときにはすでに一刀両断は、この「和食の店」のコンセプトを完全に理解していた。
質素かつ安い、しかし家庭的な食事は、それを作ってくれる人が居ない人のためにある。
昭和時代のキッチンのような形になっている厨房は、客席から見えるようになっており、
そこで料理を作っている人が居ることを客に見せることもパフォーマンスの一つになっている。
人がいる。自分のために料理を作ってくれている。
あたたかみ、やさしさ、その気持ちこそを、ここは売っている。
「和食の店」は、「和」を「食」べる店でもある、ということだ。
「にしても、契約結んで最初の仕事がこれとはな……」
一刀両断は厨房からテーブルの方を見る。
傍若無人がテーブルに座って、焼魚定食が出来上がるのをじっと待っている。
正規の参加者ではなく――主催側、なのだという。
娯楽施設のことは細かく理解している、と言っていた。
それでいてわざわざこんな店に入るなんて、あいつはよほど寂しい奴なのだろうな。
一刀両断はため息をついた。
「料理作ってやんなら、別の奴が良かったぜ」
670
:
ex28.5
◆YOtBuxuP4U
:2014/05/31(土) 01:22:17
でもそのため息は白くはならない。
娯楽施設内の空気は基本的にちょうどよい温度に保たれている。
代わりに、横にあった味噌汁の鍋から白い蒸気煙が勢いよく出始めた。
火を弱めてもよい合図だ。一刀両断はガスコンロを操作した。
◇◆◆◆
この少し前。
紆余曲折達から離れて娯楽施設を駆けていた一刀両断は、
中央階段下で勇気凛々をいたぶる傍若無人の姿を視界にとらえた。
なんてでけえやつだ。が第一印象だった。
大男、という形容がぴったりのその存在感や威圧感は、離れた場所からも感じ取れた。
一刀両断は思案した。どうするか。
このとき、彼女がするべきことはすでに二つあった。
ひとつは日本刀を探すこと。
そうでなくとも、今後のことを考えると武器は必要だ。
もう一つは、破顔一笑の殺害。
紆余曲折の切り札を機能させるために、
一刀両断は破顔一笑を第二放送までの死者に加えようと考えていた。
これらの目的を鑑みれば、ここで一刀両断が中央階段の戦いに関わるのは、
目的達成パーセンテージを下げる危険な行為である、と言える。
傍若無人にちょっかいを出し、相討ちしやすくなるよう操作できれば悪くはないのだが……と。
「……!?」
より広く周りを検分した一刀両断は、新たな思考材料を見つけた。
階段の影に隠れて何か迷っているもうひとりの参加者が、優柔不断。
彼が持っている、日本刀。
そして中央階段から少し離れた場所にある4つの死体。
軽妙洒脱に一望千里、首がつぶされて誰だか分からない物、そして――破顔一笑の首無し死体。
奇しくも彼女が別行動を取った理由の全てがこの場所に集約しているのに、気づいたのだ。
「な、なんっつーおあつらえ向きな……」
こうなれば、一刀両断の選択肢は一つに絞られる。
「こんなん、後は待ってるだけでいいじゃねーか」
――傍若無人は勇気凛々をいたぶっている。このまま待てば少女は死ぬだろう。
優柔不断はおそらく彼女を助けようとしているのだろうが、
日本刀一本で傍若無人に勝てるとは思えない。返り討ちでこちらも殺されるだろう。
結果、この場には二人の死体と傍若無人が残る。
その結果が出る瞬間の隙をついて一刀両断が日本刀を奪い、
傍若無人になんらかの挑発やら、傷を与えてから逃げれば、仕込みは完了する。
もし優柔不断が勇気凛々が殺されるまで迷い続けて動かないようならば、
それはそれでいい。一刀両断にはレストラン街で調達しておいた長包丁がある。
優柔不断をこれで殺すのみだ。
どう転ぼうと、紆余曲折と一刀両断にとっては上手い状況に好転するだろう。
「いや、むしろ優柔不断をさっさと殺して日本刀を手に入れるってのもありか……?
さすがに傍若無人には感づかれるだろーけど、
すぐ立ち去ればまだ生きてる勇気凛々に対処せざるを得ねーし……」
671
:
ex28.5
◆YOtBuxuP4U
:2014/05/31(土) 01:23:28
彼女が思案している間にも、中央階段下では勇気凛々と傍若無人の不毛なシークエンスが続いていた。
見つけてからの時間範囲だけでも、もう三回。
少女が大男に馬鹿な突撃を仕掛け、大男がそれをいなして、弾き飛ばす流れが続いていた。
度重なる傍若無人からのカウンター攻撃をもろに食らい続けて、勇気凛々はボロボロだ。
力尽きた彼女が傍若無人に殺されるのも時間の問題だろうと思えた。このままならば。
「……にしても。……なんかおかしくねーか?」
しかし、そのシークエンスを眺めていた彼女は、微かな違和感を覚えた。
勇気凛々には違和感は覚えない。
何故あんなに自暴自棄になってるのかは少し気にかかるが、それだけだ。
問題なのは傍若無人の方だ。
勇気凛々を蹴り飛ばしたり、殴り飛ばしたりしながら、
大男はひどくイライラしているように見える。
普通は嬉しそうな顔をしたり、見下すような顔をするのではないか?
おそらく首の切り口からみて破顔一笑をも殺した大男が、
ボロボロの勇気凛々を殺すことが出来ないわけがないのだが……?
『いい加減に負けを認めろ、娘。これ以上抗うな。
静かにせねば、まともに”送って”やることができないだろう』
いや、待て……。
「まさか、あいつ……?」
勇気凛々に対して投げかけられた傍若無人の言葉に、
一刀両断は考えかけていた行動の全てを、考え直さざるを得なくなった。
「……なんだか分からねーが、あたしと“同じ”ってことか――?」
◆◇◆◆
一刀両断は作戦を変えた。
優柔不断の背中を蹴り飛ばし、勇気凛々を助けさせることにした。
「いただき、っと」
次いで自分も用意しておいた手すりのがれきを降らせて援護し、
さらに隙を突いて傍若無人の手から日本刀を奪い取った。
慣れ親しんだ、というほどではないが、懐かしさを感じる感触がした。
「あんたがタクマが言ってた傍若無人だな。悪いが、この日本刀は返してもらったぜ。大切なものなんだ。
出来ればこのままとんずらしたいところだが……許してくれたりする?」
「……冗談は冥土で言え」
「メイドでなら言えるぜ。かしこまりました、お客様」
床へ舞い降りた一刀両断は傍若無人に対峙する。
戦場への参加にこんな方法をとった時点で、これは避けられない交戦だ。
ただ、ガチでやりあう気はない。
一刀両断はうまくいなして逃げようとした。しかし、
「会計は命だ、一刀両断」
「……あたしが払うのかよ」
672
:
ex28.5
◆YOtBuxuP4U
:2014/05/31(土) 01:24:40
わずか数分後、喉に斧が当てられる。
その背後、日本刀は壁に刺さっている。
《蟷螂の斧》の能力で、日本刀が弾かれたのだ。
一刀両断は両手を挙げて降伏のポーズをとった。そして、深く息を吐いた。
そうそう上手くはいかないものだ。だが、まだ策はある。
作戦を変えた理由、
変えざるを得なかった理由を、この大男にぶつけるという策が。
「なあ、傍若無人」
「何だ」
「中々どうして、無機質な殺戮マシーンだと思っていたけどよ。
お前、けっこう人間らしい感情も持ってんだな?
その受け答えといい……あたしを“すぐ殺さない”ことと言い」
「……」
傍若無人の眉間にしわが寄った。図星なのだろう。
そう、一刀両断には逃げられずとも、すぐには殺されない確信のようなものがあった。
――勇気凛々たちを助けた形になる一刀両断を、傍若無人はすぐには殺さないと。
「あの小せえのもずいぶんといたぶってたなあ、さっきまで。
本当にじわじわと殺すつもりだったんだろうなあ。助けられて行っちまって、悔しいな?
なあんて……実際にゃ、ほっとしてるんじゃねーか、お前?」
「……!」
「なあ、傍若無人。お前――何か知られちゃいけねえことがあるんじゃねえか?」
一刀両断は、斬り込んだ。
「お前の行動、ちょいとおかしいぜ。普通の参加者の動きじゃねえ。
あたしがタクマから聞いた話だけなら、大した疑問にゃならなかったが。
さっきまでのここでの戦闘――それにお前の“言動”。明らかにおかしいよな。
お前は勇気凛々のことだけ“特別扱い”している。あたしが紆余を特別扱いするように、だ」
「……待て」
「それだけじゃない。あたしの推測が正しいんなら、お前は。
勇気凛々当人には、自分がしている特別扱いを……知られたくないみたいだな?
じゃなきゃ、殴りながらあんな“鬼みたいな表情”しないもんなあ」
「待て。それ以上の発言をするな」
傍若無人の顔に焦りの色が浮かんだ。
脈アリだ。一刀両断はダメ押しの論理を展開していく。
「あたしの推測を軸に考えてみれば、お前の行動にはすべて説明がつく。
つまり、一見してただの無差別マーダーにも見えるお前は、ただのハリボテであって。
何らかの事情で隠している本性……本当の目的は――――――」
「――黙れ、一刀両断」
突然だった。
狼狽えながらの勢いに任せた突き。
「っと」
一刀両断は冷静にしゃがんで、斧の攻撃から身をかわした。
風になびいたポニーテールだけが斧の刃に触れて、綺麗に切り裂かれて風に舞う。
急に頭が軽くなり、はらり、はらり。
673
:
ex28.5
◆YOtBuxuP4U
:2014/05/31(土) 01:26:45
「わっ……あちゃー、あたし自慢のポニテが……」
「……」
「まあいいや。でだ、えっと。こうきたってことはだ。
つまりお前は……“目的を誰かに言われた瞬間に、ペナルティがある”、そうだな?」
「……そうだ」
「じゃあたったいまあたしは、お前の心臓を掴んだことになるなァ、傍若無人」
ざっくばらんになった髪を左手で確かめながら、
勝利を確信した一刀両断は、右手で見せつけるように、宙を掴んだ。
「お前は、あたしたちの計画に――駒として組み込まれても、文句は言えないわけだ」
「そうだな」
掴まれた傍若無人は、何かを諦めたようなぶっきらぼうな返答をすると、
中央階段下広間の隅に向かって歩きながら、こう続けた。
それは、張子の車と同じくらい見せかけの外見を作ってきた、
人をモノとして扱わう演技を徹底して、中身を隠してきた男の……内情の吐露だった。
「もはや隠す意味も無い。己は、正規の参加者とは別のルールで動いている。
己は奇々怪々に――あの娘に、実験ではなく、ゲームを申し込まれたのだ。
本人に知られることなく、助けられるか、助けられないか。人の意志など無視した、ふざけたゲームをな」
憂いを含んだ表情で歩き、
とある地点で立ち止まった傍若無人は、
しゃがみこんで、床に落ちていたモノを拾う。
「……お前という四字熟語に敬意を表し、言おう。……一刀両断。感謝する。
お前がああしていなかったら、己は――大切な存在を、自らの手で殺していた」
傍若無人の大きな手の中で、照明の光を反射しながら小さく輝くそれは、
不毛なシークエンスの果てに勇気凛々の髪から外れた、彼女の鈴なりの髪留めの一つだ。
大男はそれを、悲しそうな目で見つめ……、
意を決したように、一刀両断のほうに振り返る。
「一刀両断。お前が生き残らせたいのは、一人か」
「ん? ……ああ。そうだが」
「ならば己は。たった一つの条件の下にお前の駒と成ることができる。
――己が知っていて、お前に教えることができる、すべての情報を伝えることも。
お前たちの作戦に組み込まれることも、いといはすまい。
しかしひとつだけ。己からの要求を、聞くことだけはして欲しい」
傍若無人は懇願した。
「この実験で生き残ることができる、“二人”。その片割れに成る権利を、
あの娘に、あげてほしい。……己の望みは。己には……もう、それだけなのだ」
大きい身体を窮屈そうに折り曲げてお辞儀をする傍若無人の姿を見ながら、
一刀両断はほんの一瞬、告げられた情報に動揺した。
しかしすぐに取り戻す。「ふうん」と鼻で笑えるような、刃のような冷たさを。
「そうか。それなら別に、あたしも問題ないぜ。よろしくな、傍若無人」
生き残ることを諦めた二人が、
満足する死へと向かうための同盟が、こうして結成された。
674
:
ex28.5
◆YOtBuxuP4U
:2014/05/31(土) 01:28:13
「んじゃ、詳しい話を聞こうじゃねーか……ランチでも食いながら、な」
「いいだろう。だが己は料理は苦手だ」
「どのレベルで?」
「ハンバーガーを作ろうとしたことがある。爆発した」
「ちょっと意味わかんないぞそれ!?」
――なお、料理担当は一刀両断になった。
◆◆◇◆
「最終戦を開く」
出来上がった焼魚定食を持っていったところ、猫舌なのでもう少し待つと言われた。
お前にそんな属性いらねえよとツッコみたくなった一刀両断だったが、
それならそれで、このあとどうすんだと促してみたところ、傍若無人は自らの考えを述べた。
「最終戦だ?」
「そうだ。最初から、人数が減ったところでそうしようと考えていた」
娯楽施設に主催側のために隠してある放送施設を使い、傍若無人は放送を行う。
様々な嘘で自分を戦闘狂に見せかけ、
傍若無人に勝てば脱出できるという嘘で参加者を釣り上げ、
そこまでに生き残っているすべての参加者を団結させ、傍若無人と戦わせる。
傍若無人vsその他の構図を作り出す。
「こうすれば、あの娘が他の参加者に殺される可能性は絶無になる。
あとは、あの娘以外を己が殺害することで全てを終わらせる……はずだった」
「……なるほどな。それであいつを、“偶然生き残っただけ”ってことにすれば、
疑われることも無く残り二人まで持っていけるってわけか」
厨房から持ってきた緑茶を飲みながら、
一刀両断は傍若無人の話す「最終戦」構想を脳内で整理した。
非常に危険だが、悪くない作戦ではある。
成功させることができたなら、今後の展開を完全にコントロール出来るだろう。
タクマのことを思えば一人では難しかっただろうが、今回この作戦を行うのは、ひとりではない。
675
:
ex28.5
◆YOtBuxuP4U
:2014/05/31(土) 01:29:14
「僥倖なことに、この作戦の成功率は上がっている。己が一人ではなくなったからだ」
「だな。あたしが居るし、紆余も話を通せば協力するだろ。ってことは」
一刀両断は焼魚をほおばってもぐもぐし、嚥下する作業を挟んで、
「1対5に見せかけた3対3ってわけだ。これで騙しきれなかったら、逆にダメだぜ」
「では……これで行く、ということで良いか」
「ああ」
「……感謝する」
「ありがとうはいらねーよ」
白米をかきこんで、味噌汁で流した。
「お前はお前のために、あたしはあたしのためにやるだけだ。
利害の一致以外の何の感情も差し挟まないほうがいいだろ、互いにさ。
特にあたしは、お前を殺す役目を負うんだろ。そんな奴に対して、感謝なんてすんなって。
・……殺しにくくなるだろーが」
「……」
「おい。なに見てんだよ」
「頬に白米が付いている」
「げ」
「嘘だ。己には見えん」
「あっそうか。ってお前、変なとこで冗談キメんじゃねーよ……あ」
一刀両断は、このとき確かに見た。
たったひとりで抱え込んでいたものを分け合うことができ、余裕を持ったのか。
どこまで行っても崩れないだろう仏頂面をしていた傍若無人が、
楽しそうに笑ったのを、見た。
◆◆◆◇
――それから二人は細かい段取りを詰めていった。
最終戦を開くタイミング、行う最期通牒の内容、
また、一刀両断が流すニセ情報の厳選……その他にもいろいろなことを。
方針としては、一刀両断にあえて疑いの目を向けさせる方法を取る。
最終戦を開いた目的や、こちら側が取っている作戦を、
“一刀両断と結託した全滅作戦である”と推理させることで、
その裏に隠した真の目的を絶対に悟られないようにする。
その上で紆余曲折にだけは、真の目的を“ずたずた”で端的に伝える。
一刀両断が圧倒的に疑わしくなることで、逆に彼は疑われない。
そのまま対主催側の推理を誘導してもらう。
676
:
ex28.5
◆YOtBuxuP4U
:2014/05/31(土) 01:30:51
対主催の最高戦力――想定では切磋琢磨――には傍若無人が当たる。
最期通牒にて脱出口の存在をちらつかせ、
傍若無人は生け捕りにしないといけないルールを設定することで、
倒したあとに“捕まえる作業”をしなければいけないようにするのだ。
全力で迎え撃ち、傍若無人は倒される。
そして捕まえられている隙をついて、一刀両断に殺害してもらうという手筈である。
「しかしタクマはあいつ、戦いの中で成長するからな……それに最終戦の作戦を取ると、
先に仲間と戦って今より何段階も《強く》なってくるわけだろ? お前、持つのか?」
「分からん。だがやるしかない」
「いや、やるしかないじゃなくてだな……」
切磋琢磨戦についてはとくによく話し合った。
機械系に強い傍若無人は修理したレーダーを作って奇襲を防ぎつつ直線で迎え撃つことを提案、
一刀両断は《蟷螂の斧》であらかじめ床を抜いて落とし穴を作っておくことなどを提案した。
詰めの話し合いはかなりの密度で行われた。
そうこうしている内に、一刀両断は焼魚定食を食べ終える。
食器をしっかりと厨房に戻し、日本刀を再び携えた。
「じゃあ――行くぜ。紆余のことだ、面倒なことに巻き込まれてるかもしれねえ。
“盾”としての仕事をしっかりしなくちゃな」
「残りの情報は、ルール用紙の裏に書いておく。上手く事が運んだら使え」
「運ばせるさ。そうじゃなきゃあたしが生きてる意味が無い」
「頼もしい言葉だ」
「あと! 冷めないうちにちゃんとそれ食えよ! ぜってー美味いからな」
「ああ、食べる。……ときに、一刀両断」
「何だ?」
今にも店から出ようとしている一刀両断に、ここで傍若無人が語りかけてきた。
「お前は……」
傍若無人にはひとつだけ、気にかかっていることがあったのだ。
一刀両断はどうして、自分と「同じ」ように。
他人のために命を捨てるほどの覚悟を……いったいどうして得ているのか。
「……いや、なんでもない。行け」
「? ああ」
だが、それを質問している時間も惜しいと判断し、やめた。
ダッシュで駆けていく一刀両断を見送ったあと、傍若無人は改めて、焼魚定食に向き直った。
色。形、盛り付け。
見るだけで美味しいと分かる素晴らしい出来だ。
きっちりとしている。そうしなければ我慢できないという心が、透けて見えるほどに。
――そう、見れば分かる。
一刀両断はただ、自分に課したものを守ろうとしているだけなのだ。
自分の意志すら時に押し殺して、彼女は何かを守ろうとしている。
「その守るべきものと、いま守りたい気持ちが、一致していれば良いのだがな」
傍若無人は呟くと、手を合わせた。
「では……頂こう」
これも一つの感謝だったな、と、少しばかり思いながら。
677
:
◆YOtBuxuP4U
:2014/05/31(土) 01:36:47
投下終了です。このあと28話「焼魚定食」に続くSSですね。
こうしてみると最終戦はいろいろと複雑すぎたと思いますねー。
もうちょいすっきりする方法を取れたと思います。複雑すぎてすごい時間も開いたし…
ともかく、次回42話「別れ言葉」、そして43話「第三放送」、
44話にエピローグを置いてたぶん本編は終了になります。けっこうこれが長そうだけど。
678
:
◆otqteD3gTs
:2014/06/12(木) 19:35:23
連投規制のため此方に続きを。
あとで転載しておきます
心底鬱屈としたものを感じつつ、追手の代わりに派遣されたらしき蝙蝠の使い魔を射殺する。
ここでふと、彩月は違和感を覚える。確かに人込みは消えたし、皆家に引っ込んでしまったようだが……それでもまだ黄昏時だ。誰もが寝静まる深夜ならばまだしも、こんな時間からあれほど銃声を鳴らしているのにどうして誰も異変と思わないのか?
疑問を察知したのか、問いを彩月が投げかけるより先に少女が説明した。
「心配は要りません――というのも、なんだか皮肉な話ですが。どれだけ暴れても、直接的に危害でも加えない限りはここら一帯を覆っている魔術が解けることはないと思われます。
ティンダロスの猟犬……第三帝国の鬼畜の末裔までもが、この地へ降り立つ聖杯を欲しているらしい」
「第三帝国……聖杯……? それに、魔術って」
「監督役がそこまで講義してくれれば良いんですけど、あれはどうにも信用ならない男です。教会へ着いた後にでもざっとお教えしましょう。今は、ただ一つだけ覚えていれば十分ですよ。――そう、ただ一つ。貴女はもう、逃げられない」
どくん。
その言葉には――まるでこちらの心臓を鷲掴みにするような重みがあった。
それっきり、何か喋ろうとしても言葉が浮かんでこなくなる。走り続ける疲れはいつの間にか感じなくなっていた。でも自分よりずっと小さいのに、この子は凄いなあ……そんなことを考えていると、彩月は「あ」と漏らす。
「ねえ」
「はい?」
「私、相沢彩月っていうんだけど……君は?」
「杏紅花(シン・ホンファ)」
少女は、顔だけでちらっとこちらを振り返って、締めるように言った。
「それが、私の名前です」
679
:
◆otqteD3gTs
:2014/06/12(木) 19:36:54
投下終了です。
しかし2chとトリップが違くなってしまうのは何故なんだろう。酉変えしたほうがいいかなあ……
あと、後半は携帯で書いたのをそのままパソコンへ持って来たからか改行が見辛くなっているのでwikiで修正したいと思います
680
:
◆ymCx/I3enU
:2014/06/23(月) 13:24:11
何だか「さくらが咲いてますよ」と出て書き込めないのでこっちに投下します
681
:
オカァーサン……オカァーサン……。
◆ymCx/I3enU
:2014/06/23(月) 13:26:04
29話 オカァーサン……オカァーサン……。
AOKは特に宛も無く小学校の中を彷徨いていた。
「……とは、神が与えし大罪……逃れられぬカルマ……」
ぶつぶつと独り言を呟き、拳銃を右手に持って、まだ夜も明けきらぬ暗い校舎の中を歩くその姿は、
誰から見ても近寄ろうとは思わないであろう。
事実彼の精神は狂ってしまっていて、既に一人の少女を手に掛けた危険人物であった。
「うふふふ……うふふふふふ」
しかしわざわざそんな状態のAOKに接触する者が居た。
不気味に笑う女性、野原みさえ。
我が子を目の前で爆死させられ、彼女もまた壊れてしまった。
そして壊れた心は彼女を凶行へと走らせる。
右手にサーベルを持ち正気とは思えない笑いを浮かべながら歩くみさえもまた、誰もが忌避する存在と言えた。
そんな二人が出会ってしまって平穏無事でいられようか、いや、そんな筈は無い。
「ああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」
叫び声を上げながらAOKはM56オートをみさえに向けて引き金を引いた。
暗い廊下が一瞬マズルブラストにより明るくなり、発砲音が響く。
みさえはすぐに身を屈めた為、銃弾は虚空を切り裂くのみに留まった。
尤もそのまま立っていたとしても、銃口はみさえから逸れていたので弾が当たる事は無かっただろうが。
「当たってないよぉ!」
みさえはサーベルを振り翳してAOKに襲いかかった。
AOKは更に二発発砲、その内一発がみさえの肩を掠めた。
一瞬顔を歪めるみさえだったがその動きは止まらず。
グサッ
サーベルの刀身が、AOKの胴体を刺し貫いた。
AOKの背中から血塗れのサーベルの刃が生える。
声にならない悲鳴を上げ、AOKは呆気無く絶命しその身体は床に転がり血溜りを作った。
これで野原みさえはこの殺し合いにおいて、いや、人生において初めての殺人を犯した事になる。
「はははっ……ごめんねぇ……ひまの為なのよぉ」
しかし、狂っている今のみさえに罪悪感も後悔の念も無い。
自分の最終目標に一歩近付いた事を喜ぶのみだった。
「この銃、もう死んじゃったんなら要らないわよね? 私が貰っちゃおっと」
AOKが持っていた自動拳銃、及びその予備弾倉を回収するみさえ。
その後、次の獲物を探すべくその場を後にした。
【AOK@ニコニコ動画/真夏の夜の淫夢シリーズ/動画「迫真中学校、修学旅行へ行く」 死亡】
【残り 41人】
【黎明/B-2小学校】
【野原みさえ@アニメ/クレヨンしんちゃん】
[状態]発狂、左肩に擦過銃創
[装備]サーベル@パロロワ/自作キャラでバトルロワイアル
[所持品]基本支給品一式、S&W M56オート(11/15)@パロロワ/自作キャラでバトルロワイアル、S&W M56オートの弾倉(3)
[思考・行動]基本:優勝してひまわりを生き返らせる。
1:しんのすけ、ひろし、シロはひまわりと一緒に生き返らせる。
[備考]※発狂し正常な思考が出来ません。
※ソフィアの容姿のみ記憶しました。
682
:
◆ymCx/I3enU
:2014/06/23(月) 13:26:34
投下終了です。
683
:
◆193R5b5IKU
:2014/08/23(土) 17:36:12
お久しぶりです。
無鉄砲・適当ロワの最終話を投下します。
684
:
◆193R5b5IKU
:2014/08/23(土) 17:37:28
16話 『最終話』
前回からこの話まであったこと!
なんやかんやで主催者との対決が始まったのであった!
道程や経緯など……書かなくてもよかろうなのだぁぁぁぁ!!
(要約すると・・脳 内 補 完 推 奨)
そして、なんやかんやでA-1。主催本拠地の戦いは佳境を迎えていた。
……
…………
………………
「真・108式波動球!!!」
「もうやめるんだ、銀さん!!」
石田銀渾身の波動球が凄まじい勢いで主催者の一人、セワシ君(故人)が開発した『メカデューク渡邊(AI1搭載)』に迫る。
しかし、ともに行動を共にしていたケンが止めようとする。
なぜならばこれまで放った進化した波動球は打ち返された。
データは嘘をつかない。しかし、人はそのデータを超えてくる。
が、そのデータを基に機械が成長したらどうなるだろうか?
答えは簡単である。
「 メ カ デ ュ ー ク ホ ー ム ラ ン ! ! 」
打ち返された。
打球は光速を超え、威力が数倍になり、石田銀の身体に命中し、石田の消滅した。
そら、光の速度で放れた打球なんて、触れただけで死ぬわな。
「銀さぁぁぁぁぁん!!!!」
「センメツデスナァ……センメツデスナァ……」
「クッソォォォォ!!! 俺は天才なんだぁぁぁぁ!!」
「センメツデスナァ……センメツデスナァ……」
迫りくるメカデューク渡邊はしっかり仕事をする。
おかしな速度で振られた卓球ラケットがケンの身体を切り裂いた……。
「遅かったか……!」
小泉ジュンイチロー(外部勢力)と鬼兄貴(外部勢力)はこの惨状を見て、悔しさを露わにする。
助けられる命が救えなかったのだ。悔しいに決まっている。
「センメツデスナァ……センメツデスナァ……」
「……っ! 危ない……!」
ジュンイチローの豪盲牌の摩擦熱によって、メカデューク渡邊のメインカメラ潰しが決まった。
その直後、鬼による1トン近くあった金属片を投げつけられ、メカデューク渡邊は大破した。
「センメツデスナァ……センメツデスナァ……センメツデスナァ……センメツデスナァ……
セン、メツ……デス……ナァ……ガガッガガガガ…………センメサレマシタナァ……」
「……所詮は機械(マシーン)だったようだな」
まるでバグったかのようにそう言い続け、その場で爆散した。
「急ごう」
「おうよ!」
「俺もいるぜ!」
「テリーマン!」
「お前だけにいいカッコさせるかよ」
「ブロッケンJr.……!」
「正義超人は、お前だけじゃないんだぜ!」
「コーホー」
「これが正義超人の友情パワーじゃい!!」
「ウルフマン以外のアイドル超人たち……」
※ウルフマンのメディカルサスペンションはまだ完了していません。
そして、二人と正義超人たち(外部勢力)は上の階に向かった。
まだ生きているかもしれない参加者がいることを信じて……
◆
685
:
◆193R5b5IKU
:2014/08/23(土) 17:38:26
◆
「樺地も八坂も死んだぜよ……」
「そうなの……?」
「というか、アンタは今までなにしてたんぜよ?」
「……どうやら、放置されてたらしい」
あの時、樺地が核ミサイルの特攻でようやくベーオウルフに致命傷を与えた。
そこで通りかかったテリーの『神の拳(サニーパンチ)』でワンパンでキョウスケごと機体を破壊した。
そして……
┏━━━┓
┃━ ━┃ ┏┓ ┏━┓
┃━ ━┃ ┏┛┗┓┏┓ ┏╋━┛
┗┳┳━┛ ┗┓┏╋╋┛ ┃┗━━┓
┏┛┗━┓ ┃┣┛┗┓ ┗━━┓┃
┗┓┏┓┃ ┗┫━┏┛ ┏━━┛┃
┗┛┗┛ ┗━┛ ┗━━━┛
\ /:.:.:.:.:.:,r-------- 、:.:.:.:ヽ /
\ /:.:.:.:.:./l、ll二.l⌒l 「ヽr-ヽ、! /
__ l:.:.:.:.:/ |ヽ||_ l、_ノヽコ|ー 「 l:| _―
 ̄l__L.:-―――――-二ヽリ _―
ミヽ、l;=、シ ヽ、__:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.: ̄\
=ミ:|{入| l └” ゞノフヒテ==___) ―
三ミ|!ヽ (|l /_ ̄ ハヽヽヽ ―
に_そ/~l、_,,. -'" ̄;;;;/ヽL_l | l| l | 三
、 ~>''";;;;;;;/;;;ー、;/ `ヾリリ \
::_>''";;;;;;;;;;;;;/;;_;;;;;/`丶、__ , 人`ヽ、
#;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;/;;;;;;;;;;;入、 Υ~ )
;;;;;;;;;;;;;;;;;;/;;;;;;ー、/ `ヽ、ノ`ー-'/
;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;/`丶、 ト、リ^ー^ーイ_
―ー┬ー―-く-、 }J か 勝 拳
/ 、ヽ l | `ー―'J い 負 ひ
/ /ヽ \_ヽ 〉 ! ! せ と
/ |、  ̄ヽ | ん つ
/ | / - _ !く で
/ | // |l  ̄う_ /
| // |l / 丶----"
| // |l / |! \
と、だけ言い残してどこかに去って行った。
まあ彼のことですし、きっと脱出したのでしょう。
だが、彼らは多くの仲間を失った。
加奈子、樺地(+ずっと寝ていた紫)、そして、最終的に会場中を埋め尽くしたワカメと豪ヒロミ(ゴリラ)。
激しい戦いの中でその命が散ってしまった。
「行くぜよ」
そして、ついに真の主催のいるであろう部屋の扉の前に辿り着き。
扉に手を掛け、扉を開けた!
686
:
◆193R5b5IKU
:2014/08/23(土) 17:39:30
「今度こ…そ…… 我が……う…ん…めい……を……」
「貴様の辞世の句ならその程度だろうよ」
主催戦は終わっていた。
なにやら瞬殺だったっぽい。
迷いなく仮面の男(主催者)を殺していたっぽい。
飛竜は宿敵・冥王グランドマスターとの決着を着け……
さっさと真の主催者であった(であろう)ユーゼス・ゴッツォを倒していた。
「長くて厳しい戦いじゃったのう……」
「ええ……」
これには少々の二人は戸惑ったが、なんとなく状況を把握した。
主催者が倒されてロワが終わったのだ。
「ん、なんだ貴様ら?」
「主催者を倒しにきたぜよ」
「もう終わったが?」
「みたいね」
そして、生き残った四人は主催本部にあったクロス・ゲートを潜り元の世界に帰った。
仁王雅治は元の世界に帰った。
その次の日、跡部様とダブルスを組み高校生と戦った。
そこに死んだはずの樺地がいたのには少々驚いたが、あそこには平行世界の別人であると断定した。
だが、それでも少々の寂しさはあった……。
八意永琳は幻想郷に戻った。
一先ず、持ち帰ったテニスラケットでテニスを始めた。
後に幻想郷で『弾幕テニスごっこ』というものが、流行ったのかどうかは不明である。
飛竜は元の世界に帰った後……その後を知る者は誰もいない。
そして、マンソン。彼については言うこと何もない。
まあ、なんやかんやで。
『無鉄砲・適当ロワ 終劇!』
687
:
◆193R5b5IKU
:2014/08/23(土) 17:40:46
生還者
【仁王雅治@テニスの王子様 生還】
【八意永琳@東方Project 生還】
【飛竜@ストライダー飛竜 生還】
【シドニー・マンソン@人造昆虫カブトボーグ V×V 生還】
死亡者(参加者)
【龍昇ケン@人造昆虫カブトボーグ V×V 死亡確認】
【石田銀@テニスの王子様 死亡確認】
【八雲紫@東方Project 死亡確認】
【八坂神奈子@東方Project 死亡確認】
【豪ヒロミ@魁!!クロマティ高校 死亡確認】
【冥王グランドマスター @ストライダー飛竜 死亡確認】
【キョウスケ・ナンブ@スーパーロボット大戦OGシリーズ 死亡確認】
死亡者(主催者)
【野比セワシ@ドラえもん 死亡確認】
【ユーゼス・ゴッツォ@スーパーロボット大戦OGシリーズ 死亡確認】
688
:
◆193R5b5IKU
:2014/08/23(土) 17:41:20
その少し後の話である。
「おう、主催者、倒しに来たぞ!」
「これ以上 死人は出させねえ!」
「セワシ君が死んでしまったら、僕はどうすればいいんだ!!!」
(……なんか全部終わったみたいだな)
四人が脱出した後、前田くん達とテリー・ボガードも主催本部に乗り込んできたが……何もかも遅かった。遅すぎた。
その後、彼らは外部勢力に保護されて、無事に元の世界に脱出したんだとさ。
【前田彰@魁!!クロマティ高校 脱出】
【メカ沢新一@魁!!クロマティ高校(支給品) 脱出】
【ドラえもん@ドラえもん(支給品) 脱出】
【テリー・ボガード@ボンボン餓狼 脱出】
【小泉ジュンイチロー@ムダヅモ無き改革(外部勢力) 脱出】
【鬼十次郎@新テニスの王子様(外部勢力) 脱出】
【キン肉スグル@キン肉マン(外部勢力) 脱出】
【ザ・テリーマン@キン肉マン(外部勢力) 脱出】
【ブロッケンJr.@キン肉マン(外部勢力) 脱出】
【ロビンマスク@キン肉マン(外部勢力) 脱出】
【ウォーズマン@キン肉マン(外部勢力) 脱出】
`守ニ=z-_
寸三三ニ-
_ Ⅷ三三三} _
}弋 _Ⅷ三ニニ〈 _ -=´ニ=-_
}三三三三三三三三三三三三三三三三三\
_}三三三三二ニ= ¨¨¨¨¨¨¨¨ ̄7三三三三',
{三三三} ,4=-_ ./三三三少´
}三三7 _ -=ニ二三三ニヽ/´¨¨¨¨´
ⅧニⅣ `寸三三三三彡゚´ ̄
. ⅧⅣ `¨¨¨¨¨¨¨´ __
`¨´ _ -=≦三三三三≧+.
`寸三三三三三三三三三三三三三}
`マ三三三≦´ ̄ |三三}  ̄`¨´
`¨ ̄}三ニ}. l三三{
/i三Ⅳ .l三三l ヽ
,4i三Ⅳ l三ニ{ 》.、
/三三/ l三ニ} l三{__
.+ニ,+゚ lニニ{ }三ニ}
4三/ Ⅵニ\___ _ -=≦三ニむ
4E/ `寸:三三三三三三三三三い}
_/>゚ `マ三三三三三三三ニ彡´
 ̄ `¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨´
689
:
◆193R5b5IKU
:2014/08/23(土) 17:42:31
以上で投下終了&無鉄砲・適当ロワは完結です。
ありがとうございました。
690
:
◆ymCx/I3enU
:2014/08/28(木) 11:29:35
お疲れ様でした
はぇ〜すっごい怒涛っぷり……
691
:
◆ymCx/I3enU
:2014/10/20(月) 02:06:19
連投規制されたのでこちらに残り投下します
規制解除されたら残りも本スレに投下します
・・・・
今の状態で無理に行動しようとすれば今度こそ命の危険が有る、交戦など以ての外。
無茶は厳禁なのは、良く考えなくても分かる。
(放送が終わって、行動始めたばかりだけど……これじゃしょうがない……どこかに隠れて手当して……休むしか……)
まだ行動開始からそれ程経っていないが、事ここに至っては致し方無い、と、
翼は再び身を潜められそうな場所を探し始めた。
「小鉄っちゃん、ごめんね……」
どこかで生きているであろう、自身が尊敬している少年に謝りながら。
【朝/B-2市街地】
【銀鏖院水晶@パロロワ/自作キャラでバトルロワイアル】
[状態]疲労(大)
[装備]鉄パイプ(調達品)
[所持品]基本支給品一式、文化包丁(調達品)、鎌(調達品)
[思考・行動]基本:優勝し「愚民と自分は違う」事を証明する。
1:一先ず三人(原小宮巴、KBTIT、ソフィア)から距離を取る。
[備考]※本編死亡後からの参戦です。
※野原一家の名前を記憶しています。
※能力には特に制限は無いようです。
※原小宮巴、KBTIT、ソフィアの容姿のみ記憶しました。
※金子翼(名前未確認)が死んだと思っています。また、彼から既に離れています。
【朝/B-2市街地】
【金子翼@漫画/浦安鉄筋家族】
[状態]頭部にダメージ(出血、打撲、頭痛、目眩有)
[装備]ピッケル@現実
[所持品]基本支給品一式、牛刀包丁(調達品)、大沢木小鉄のリコーダー@漫画/浦安鉄筋家族
[思考・行動]基本:小鉄っちゃんを優勝させる為に皆殺しにする。自分は自害する。
1:どこかに隠れて手当して休む。
2:小鉄っちゃんには会いたくない。
[備考]※元祖! にて小鉄達と仲良くなった後からの参戦です。
※原小宮巴、KBTIT、ソフィア、銀鏖院水晶の外見のみ記憶しました。
692
:
◆ymCx/I3enU
:2014/10/20(月) 02:06:58
投下終了です。
693
:
◆ymCx/I3enU
:2014/11/06(木) 04:27:06
またしても連投規制食らったので最後の部分こちらに投下します
前と同じく規制解除されたら残りも本スレに投下します
・・・・・・・・・・・・・・・
程無く少年の仲間と思われる二人の猫獣寛の少女も現れる。
三人の獲物を見付け、傍からはそうは見えないだろうが、史哉は俄に喜び、その三人を殺しに掛かった。
灰色の猫の少女が、史哉に向け拳銃を発砲したものの、もはやライフル弾を撃ち込まれてもびくともしない史哉の肉体が、
拳銃弾を三発撃ち込まれた程度でどうにかなる筈も無い。
間も無く、形勢不利と見た三人が史哉に背を向け逃げ出した。
無論黙って史哉が見逃す筈も無い。
先程自分に銃撃を食らわせた灰猫少女の背中目掛けて高速で触手を伸ばす。
「あっ、が……!?」
見事に触手は少女の胴を刺し貫いた。
「こ、のおおおおお!!」
しかし直後、激高した少女が反撃に出た。
大きな氷柱を作り出しそれを史哉目掛けて飛ばしたのだ。
「グガァアア!」
氷柱は史哉の腹部に突き刺さりその衝撃で史哉は仰向けに倒れ込んだ。
さしもの史哉も巨大な氷柱を勢い良く腹に打ち込まれたらただでは済まなかった。
彼にしては珍しい苦しげな声を発し、氷柱を引き抜こうとする。
その間に三人は逃げて行ってしまう。
「ウグウウウッ……あ゛あ゛あ゛っ!!」
どうにか腹に刺さった氷柱を引き抜く事に成功する史哉。
しかし、傷口からは少なくない量の血液が溢れ、床に飛び散る。
普通の人間なら死亡してもおかしくない傷だが、身体に寄生し彼の触手の元となっている寄生虫のおかげで、
生命力が増大している史哉は致命傷にはならずに済んでいた。
かと言って、不死身では無い。
彼に巣食う寄生虫の「以前の宿主」のように肉体が重度のダメージを受けて損傷が酷くなれば、
史哉の肉体は活動を停止してしまう。
「肉体」は。
しかしながら、寄生虫そのものはそう簡単に死滅せず、
宿主の身体が限界に近付いた時、宿主を操って次の宿主に成りうる次の肉体を探すのだ。
「……つぎ……を……つぎの……から、だを……」
史哉の口から漏れたその言葉は、紛れも無く寄生虫自身の物。
ふらりふらりと史哉の身体を歩かせ、寄生虫は次の寄り代を探し始めた。
【午前/E-4洋服屋住居部分】
【小崎史哉@オリキャラ/エクストリーム俺オリロワ2ndリピーター】
[状態]ずぶ濡れ、右肩に貫通銃創、腹部に大穴(出血多し)、身体中から触手が生えている
[装備]???
[所持品]基本支給品一式、???
[思考・行動]基本:皆……殺し……。
1:次の……宿主……。
[備考]※本編死亡後からの参戦です。
※身体を特殊な寄生虫に乗っ取られています。乗っ取られる前の記憶は殆ど有りません。
※本能的にある程度言葉を発しますが意思疎通は不可能に近いです。
※ノーチラス、君塚沙也、テト、サーシャ、大沢木小鉄の外見を記憶しています。
※肉体のダメージが大きくなってきた為、次の「宿主」となる人物を探しています。
694
:
◆YOtBuxuP4U
:2015/03/04(水) 22:43:40
「実験結果報告書」
695
:
実験結果報告書
◆YOtBuxuP4U
:2015/03/04(水) 22:44:22
―-第n回 文字能力開発試験 結果報告書――
執筆:実験番号030 奇々怪々
1.はじめに
本実験はヒトによる文字の解釈能力を開発する目的で、
2010/10/10に行われた実験の結果報告書である。
前回より導入した専用実験場の生成による初期効率の
上昇は今回の実験においても問題なく確認できた。また、
前回実験の優勝者の協力により、後期においても効率よく
実験を進行させることができ、実験環境下では初の「文字
化け」も確認することができた。以下に詳細資料を示す。
2.実験詳細
文字を与えた十六名の参加者および二名の協力者を極
限状態に置くことにより、文字の解釈能力を深めさせる実験
を行った。実験は実験番号165「無我夢中」の解釈能力を
用いて生成した娯楽施設により執り行い、監督と進行は奇
々怪々が担った。
第一放送への到達時間は4時間52分と43秒で、前回
の7時間弱を大きく上回るペースとなった。これは、心機一
転の解釈能力となった心理の反転効果に因るものが大き
いと思われる。第二放送はさらに早く、7時間41分00秒で
の放送となった。中央階段付近の混戦や駐車場A地区で
の拡声器の使用により戦闘行為が途切れなかったことが大
きな要因であると考えられる。
その後実験協力者の傍若無人の進言によって4時間の休
憩を挟み、残った参加者と傍若無人の総力戦という形を取る
ことによって、スムーズに最終局面へと実験を進めることに成
功した。最終的に、実験番号017紆余曲折が最後に残った
一人となることで、13時間37分51秒に渡る実験は終了した。
時間に着目すると、これまでの最速記録である22時間(第
b回実験)を大きく上回る結果となった。
解釈能力の開発という点を見ると、交戦回数が十分に取れ
ていたことや、最終総力戦に向けた鍛錬時間がとられたことも
合わせ、実験番号080切磋琢磨(五級→特級相当、文字化
け)や148勇気凛々(四級→準一級相当、継続)の解釈深度
は期待を大きく上回るものになった。深度は下がるものの017
紆余曲折(四級→二級相当、継続)なども進行と共に解釈が
深まった例として挙げられる。また085先手必勝(四級→四級
相当)については、解釈の再定義時に利点と弱点が同時に付
随した特殊な例であった。
074心機一転、063酒々落々、115破顔一笑はさらに特殊
で、こちらの予想した解釈の中でも極めてイレギュラーに近い
解釈が為され、実験の成果として興味深いものになった。
最後まで解釈をほぼ拡大せず長く生き延びた014一刀両断
や四字熟語に馴染むことを放棄した149優柔不断などの例も
データとしては参考になるものが取れた。初期解釈で最も深い
解釈をしたのは、今回は040鏡花水月(一級相当)であった。
696
:
実験結果報告書
◆YOtBuxuP4U
:2015/03/04(水) 22:45:35
3.結果
3.1 階級
解釈能力には、特級から六級までの九段階の評価を独自に
行っている。解釈の自由度が高く、解釈が深いものほど階級の
高い能力とみなし、実験の進行と共に解釈が発展した場合は
再評価している。
3.2 適合率
被験者と被験者に与えた文字との適合率も装置にて観測し
ている。適合率が高いほど解釈を深めやすく、またヒトから文字
へと化けやすい=ヒト離れしやすい傾向にある。
697
:
実験結果報告書
◆YOtBuxuP4U
:2015/03/04(水) 22:46:18
3.3 参加者及び協力者の最終的な資料
3.3.1 実験参加者
参加者の選定は、本研究の到達目標である、理想の可能性
線へ至るための障害となる因子および、因子に近しいヒトの中
からランダムに行った。その際、参加者同士では近親者はいな
いことをひとつの条件として定めている。
000 焼肉定食
階級:データ無し 最終適合率:0%
見せしめとして使用されたため解釈データ無し。見せしめの
窮地に解釈能力が開花するパターンがない訳ではないが、これ
までのデータに照らし合わせれば、一般的に四字熟語として認
識されていない四文字の熟語からの解釈能力は浅いものにな
る場合が多い。もし発現していたとしても、六級相当の解釈能
力であったと思われる。なお、発生した死体は別所で再利用す
る予定。
002 青息吐息
階級:四級→三級相当 最終適合率:57%
吐息が氷になる、文字から感じ取れるイメージを具現化した
タイプの素直な解釈。交戦により、吐息の影響範囲について解
釈が拡大され、範囲が「吐息の音が届いた範囲」まで拡大され
た。細かい所では、唇が腫れてしまったときに能力を発動できな
くなるという現象が見られた。冷たい息が吐ける状態であること
が、発動の意識的なトリガーになっていたのだろうか?
009 一望千里
階級:三級相当 最終適合率:48%
文字通りに解釈して文字通りに強力なパターンの解釈能力。
ただ、範囲は千里先ではなく、自分がフィールド内と認識して
いる範囲までに留まった。逆に言えば、フィールド=地球と認
識できれば、地球のどこにでも目が届くということにも成りえる
可能性を残している。
014 一刀両断
階級:五級相当 最終適合率:92%
物理的特性などを全て無視して刀で切り裂く、比較的文字通
りの解釈。刃物を持っているときにしか発動しないという縛り付け
も常識の範囲内であり、解釈階級は低い。ただ、文字とヒトの適
合率では参加者の中でも初期から高いレベルにあり、その影響
か、身体能力への補正が見られた。
017 紆余曲折
階級:四級→二級相当 最終適合率:75%
攻撃を4秒間迂回させるが、最終的には当初の位置へ攻撃
は行われる、という少々複雑な解釈。文字そのものより文字の
意味に解釈が左右されたパターン。4秒という縛り付けは出自
不明だが、時間あるいは回数制限のある解釈だった場合4か7
の付く数字になる例が多いため、そう特別な解釈の結果という
わけではないのかもしれない。攻撃の定義について数回、解釈
が拡大された。
040 鏡花水月
階級:一級相当 最終適合率:81%
幻覚を見せるのが主という非常に意味に寄った解釈だが、
本人の文字になろうという意思と文字への深い理解が強力な
解釈能力の発現を実現したようで、範囲も展開力も申し分ない
ものになっていた。スタンス次第ではもっと強度のある幻覚を
見せるものになっていたかもしれない。
698
:
実験結果報告書
◆YOtBuxuP4U
:2015/03/04(水) 22:47:06
044 軽妙洒脱
階級:二級相当 最終適合率:39%
当人の本質との不一致か、適合率は低かったものの、痛みを
軽くする能力と酒に強くなる能力の二種類の解釈能力を行使
できた点は注目すべきである。二種類目の能力は文字とも意
味とも厳密には全く合っていないものだが、後述の洒々落々に
対抗するために後から足された解釈となるため、そちらの項で
説明する。
063 洒々落々
階級:準一級相当 最終適合率:17%
アルコールを操る能力と落下を操る能力の二種を独自解
釈により行使した。文字の「洒」は「酒」とは似て非なる意味を
持つ言葉なのだが、観察の結果、文字をあえて誤解釈したよ
うだ。一応酒好きなことを分かっていて与えてみたこちらの思
惑の範疇ではあったが、比較的意外な結果が導きだされた
例の一つとなった。
074 心機一転
階級:準二級相当 最終適合率:42%
胸に手を当てなければならない縛りがあるものの、相手の心
の動きを反転させてしまう能力という、かなりひねくれた解釈
能力となった。この能力によって実験に大きな影響を与えたが、
解釈が拡大されるなどの進展はなかった。
080 切磋琢磨
階級:五級→特級相当 最終適合率:100%(文字化け)
初期こそ強く解釈されていなかったが、その結果として得
た文字通りの能力は戦うほど強くなる=階級と適合率を増
すという、実験が進むごとに解釈が深まるタイプの能力だっ
た。これが功を奏し、最終的に実験初の文字化けを果たす
ことに成功した。また身体系の能力であったこともあるのか、
参加者の中で、身体能力の上昇も最も著しいものとなった。
085 先手必勝
階級:四級→四級相当 最終適合率:48%
初期解釈は、先手の攻撃で勝利を確定させるものだった。
この解釈には、先手を取られると負けるという欠陥も付属し
ていた。その後、さらにゲームカウントの概念を導入した再解
釈がなされたため、最終的には良い結果となった。弱点も新
たに付加され、強制力があまり無くなってしまったため階級
は変わらず四級相当。
096 猪突猛進
階級:五級相当 最終適合率:60%
比較的高めの適合率。座右の銘に挙げられるような四字
熟語とは性格さえ一致していれば適合率が高くなる傾向に
ある。能力は身体をイノシシに変化させる肉体変化型の安
直な解釈。牙のみや片手のみなど、部位のみの変化も出来
るようで融通の利く能力だが、完全に猪と化してしまうと元に
戻れなくなるという縛り付けがある。
699
:
実験結果報告書
◆YOtBuxuP4U
:2015/03/04(水) 22:47:43
104 東奔西走
階級:六級相当 最終適合率:3%
恣意的に当人の望まぬ文字を与え、マイナス解釈の発現
を誘導したパターン。狙い通り移動制限の解釈をさせること
が出来た。本来の四字熟語の意味とも真逆になるような解
釈はあまり前例がなく、貴重なデータである。
115 破顔一笑
階級:三級相当 最終適合率:26%
東奔西走と同様、被験者にはそぐわない文字を与えたパ
ターンだが、こちらは四字熟語を一文字単位で別解釈し、新
たな意味を作り出すという結果になった。被験者は職業上の
関係で、無我夢中でも特定の他人のためという思いを消し切
れなかった(一刀両断もこれに該当)。真の笑顔に憧れなが
ら、自らに笑顔は許されないという矛盾する心情が残ってい
たことが複雑な解釈の発現に一役買った可能性を鑑みると、
心情の全排除も一長一短かもしれない。
148 勇気凛々
階級:四級→準一級相当 最終適合率:79%
解釈の深化という点では、進化する解釈だった切磋琢磨を
除外すれば、本実験で最も解釈を深めたのは勇気凛々であ
る。深化のきっかけとなる出来事に恵まれたのもあるが、元々
の解釈を発展させる形で二つ目の意味を見出すのはあまり
例のない現象(一つ目の解釈で使用されていない文字を別
解釈して二つ目の意味を得るパターン。軽妙洒脱など)で、
使い勝手も良く準一級相当の評価となった。
149 優柔不断
階級:五級相当 最終適合率:16%
本来なら適合率が一二を争うほど高くなる目論見だったが、
被験者が四字熟語との同化をも優柔不断したために解釈も
適合率も全く深化しなかった。途中で心機一転の影響を受け
なければ解釈能力が発現しないまま生き延びる可能性すら
あった。
3.3.2 実験協力者
今回は実験の進行を補助する目的で、前回の優勝者であ
る実験番号092泰然自若に別の四字熟語を与えたうえで、
前回の延長戦として実験の舞台に送った。
134 傍若無人
階級:六級相当 最終適合率:67%
協力者については、こちらの用意した解釈の押し付けを行
い、その上で実験に協力してもらう形を取った。前回優勝の
ハンデとしての強烈なマイナス解釈能力だったが、四字熟語
との同化に積極的に取り組んだ結果適合率は高く、身体能力
への補正が見られた。
あらかじめ解釈が用意された文字を被験者に与えた場合、
一般的に適合率も解釈の深化も行われない。しかし、本人に
文字になるつもりがあれば適合率は深めることが出来る。
165 無我夢中
階級:特級相当 (文字化け済み)
舞台装置としての協力。再現される舞台は本人の体験した
記憶に大きく左右されるため、女子が入れない男子トイレや
車の内部構造に欠陥や差異がでること、時間を示すものが
否定されてほぼ存在しないことなどを見抜く参加者が今回は
現れていた。また一部には別口で恣意的な改造を施し、内
部から放送および別所の夢空間との連絡が取れるようにして
いる。
700
:
実験結果報告書
◆YOtBuxuP4U
:2015/03/04(水) 22:48:24
3.4 物質に付加した文字
今回の実験では支給品にもいくつか文字を付加した。
020 鎧袖一触
紆余曲折に支給した盾に付加。触れた攻撃を弾く効果が
付与されていたが、一刀両断の解釈との解釈合戦に敗北し、
ただの鉄の盾となった。
123 百発百中
先手必勝に支給した銃に付加。誰が使用しても狙った場所
に弾が飛んでいく効果が付与されている。
166 蟷螂之斧
傍若無人に支給した斧に付加。ルール能力の影響をおよ
そ四割ほど無効化する。こちらは解釈合戦を行わず解釈を否
定する意味合いが強いため、一刀両断の刀を弾くことが出来
た。
4.実験の影響
実験終了の現時点で、理想の可能性線へ進む確率は0.7%
上昇した。また、天飼千世教授の見た千の未来のうち、22の
未来が消滅し、8つの新たな未来が現れた。未来可能性線の
総計は382束となった。
理想可能性線については、今回の優勝者あるいは脱出者が
因果の収束を許諾することで確率はさらに上方修正され、16%
ほどになる予定。
5.まとめ
5.1 文字の増減
前回の実験終了から今回の実験開始までで、他力本願、
空穴来風の二つの文字化け済み文字が消去された。実験に
泰然自若を協力者として使用するに当たり、泰然自若も消去し
たため、文字に戻ったのは三つ。
新たにデータから起こせる文字は十五で、併せて十二の文字
がこちら側に増えることとなった。
5.2 収集データ
至上でも類をみない短いスパンに濃い内容の実験となった。
詳細なデ-タを今後まとめていき、次回の大規模実験に生か
す。
5.3 謝辞
実験の遂行に当たり、天飼教授の他、他力本願、空穴来風、
流言飛語などの協力を得ている。この項を持って謝辞を述べる。
.
701
:
◆YOtBuxuP4U
:2015/03/04(水) 22:49:04
投下終了です。
702
:
◆ymCx/I3enU
:2015/03/22(日) 23:31:16
連投規制されたよ畜生!
と言う訳でこちらに投下します
703
:
◆ymCx/I3enU
:2015/03/22(日) 23:32:09
86話 PARADE OF DEATH
市街地を西に進み、E-4からは離れられた事を確認する巴とKBTITこと拓也は、次は南下を始める。
「うっ、腹の調子が……」
市街地を外れた辺りで、KBTITが腹痛を訴え出す。
「大丈夫? やっぱりさっきの変な虫がやばかったんじゃ」
巴の言う「変な虫」とは、先刻、ひでを倒した時に現れ、KBTITの口から彼の体内へと入って行ってしまった謎の虫の事だ。
恐らくと言うか腹痛の原因はその虫であろうと巴が言う。
「どっかで糞くするしか無ぇかな、糞漏らしてうんこ野郎になっちまうのは勘弁だぜ」
「もしかして虫が内臓喰い散らかしてるんじゃないの?」
「いや流石にそんな事なったら俺死ぬだろ……普通にうんこ出る時の腹の痛みだ」
「うーん、あ、でかい建物有るじゃん」
そう言って巴が指差すのは前方に見える大きな建物。
恐らく地図で言うD-5に有るイベントホールであろう。
「あそこまで行ってトイレ行こうよ」
「よーし、何とかなっかな……」
イベントホールまで行きそこで用足しを行う事に決めるKBTIT。
わざわざイベントホールまで行かなくてもすぐ近くの市街地に幾らでもトイレは有るのだが、
二人はその思考には至らなかった様子。
尤も、KBTITの腹痛はトイレに行ってどうにかなる類の痛みでは無い事など二人は知らない。
彼の体内に入り込んだ「寄生虫」は着々とその肉体と精神を蝕む。
普通もその過程によって引き起こされた物だ。
――――支配は確実に上手く行っている。精神の方が遅れているが、時間の問題だ。
――――トイレに行った位でどうにかなる訳が無いだろう、見た目通り馬鹿な男だ。
着実に自分の肉体を侵蝕して行く「寄生虫」の事など気付かず、気付く筈も無く、
KBTITと巴はイベントホールへと歩を進める。
704
:
◆ymCx/I3enU
:2015/03/22(日) 23:34:37
【午後/D-5イベントホール周辺】
【原小宮巴@オリキャラ/俺のオリキャラでバトルロワイアル3rdリピーター】
[状態]健康、衣服が消火剤と血で汚れている
[装備]ウィンチェスターM1912(6/6)@オリキャラ/俺のオリキャラでバトルロワイアル3rdリピーター
[所持品]基本支給品一式、FN P90(0/50)@現実、FN P90の弾倉(4)、古びたショートソード
[思考・行動]基本:殺し合いはしない。
1:KBTIT(拓也)と行動。イベントホールへ向かう。
2:KBTIT(拓也)をトイレに行かせたい。
[備考]※本編死亡後からの参戦です。
【KBTIT@ニコニコ動画/真夏の夜の淫夢シリーズ/動画「迫真中学校、修学旅行へ行く」】
[状態]鼻を負傷(鼻血有)、ゴーグルにヒビ、衣服が消火剤と血で汚れている、「寄生虫」に寄生されている(進行中、腹痛発生)
[装備]ニューナンブM66短機関銃(30/30)@オリキャラ/エクストリーム俺オリロワ2ndリピーター
[所持品]基本支給品一式、ニューナンブM66短機関銃の弾倉(3)、56式自動歩槍(25/30)@オリキャラ/俺のオリキャラでバトルロワイアル3rdリピーター、
56式自動歩槍の弾倉(4)、 サーベル@パロロワ/自作キャラでバトルロワイアル
[思考・行動]基本:殺し合いはしない。
1:巴と行動。イベントホールでトイレ借りたい。
2:残りのクラスメイト、殺し合いに乗っていない参加者を探す。
[備考]※動画本編、バスで眠らされた直後からの参戦です。
※動画準拠なので中学生であり、平野源五郎とは面識が無い設定です。
※「寄生虫」に寄生されています。現段階ではまだ腹痛程度です。精神はまだ問題有りません。
705
:
◆ymCx/I3enU
:2015/03/22(日) 23:36:11
投下終了です。
タイトル付け忘れました「PARADE OF DEATH」です。
それとYO氏投下乙です。
706
:
◆YOtBuxuP4U
:2015/03/30(月) 04:15:13
ym氏投下乙です〜
俺得7thいま半分くらいまで読んだから追いついたら感想書くぞ
四字熟語ロワですが
諸事情で2chに書き込めないためこちらでの投下になります、投下します
前回投下分のなんか主催が説明始めたあたりから修正したのでそこから再投下です
707
:
46◇おはなし(3/4)
◆YOtBuxuP4U
:2015/03/30(月) 04:18:48
「さて、じゃあまずひとつ目だけど、これはぼくから解説しよう」
椅子に座る壮年の男が、向かいの椅子に座る少年に礼儀正しく話しかけた。
《先程まで、特徴のない女性の外見だったそれは、今はそのような外見になっている》。
口調も合わせて変わったようで、《銃を取り上げられ》《椅子に座らされた》少年は少し混乱した。
銃弾は――どうなったのだっけ。外れた? 当たっても跳ね返された?
それともそもそも撃たせてすらもらえなかった? いや、確か引き金は引けた。
銃弾は飛んで行った。そこまでは覚えている。そのあと、《当たるはずのそれが当たらなかった》のだ。
「ひとつ目……四字熟語のデータを取りたいという理由だね。
これを説明するにはまず、きみが知るルール能力とは何なのかというところから、説明する必要がある」
さらにその後《気付いたら椅子に座らされていて》、《銃が奪われていた》。
……混乱は整理できたけれどやはりというかなんというか、意味不明で不条理だ。
苦い顔をする少年の前で、壮年の男に《なった》天飼千世は、少年から奪った銃をくるくると回す。
「まず、ルール能力をこの世にひとつ産むには二つのものが必要になる。
ひとつは文字、ひとつはそれを解釈する人間だ。ただ、どんな文字でもいいわけではない。
きみも知っているとおり、指定のインクで描く必要がある。そのインクは――」
かちり、と急に銃の引き金が引かれる。
ドン。
「こうやって作られている」
撃たれたのは少年ではなく、天飼千世の、銃を持っていないほうの手だった。
少年は目を見張った。
天飼千世――今は男の姿の、その文字の前腕に大きな穴が空いて、その先から血が流れている。
虹色の、血が。噴きだすように流れている。
もちろん撃ち間違いでも腔発でもないようで、男は平然としていた。
少年も驚いたが動揺はしない。インクが血液――想像はしていなかったが、
明らかに人の世界のモノではないインクだ、フラスコで作ったと言われるよりは説得力がある。
「そのインクで書いた文字に、力が宿るってことですか?」
……とにかく今は、相手にできることとできないことを知る必要がある。
少年が確認のために問いかけると、天飼千世は頷いた。
頷きながら、テーブルに流れた血を指につけて文字を書き始める。
「そうだ。これはぼくの……最初の文字の身体からしか出ない、文字の原液だ。
これがすべての能力を形作る素材となる。だがそれには、人間の解釈を必要とする。
しかもただ意味を解釈するのではない。文字の力を信じてもらった上で、
自分ならその文字にどんな力を見出すか、を解釈してもらわなければならない」
「ルール能力があるということを知っておかないといけない、ってことですか。
文字の力についての講義を最初にして、首輪を付けるのにそれを使ったのは」
「ああ、そのためさ」
不思議な虹色の血は指筆でもテーブルによく伸びて、四字熟語を描き出した。
文字は「焼肉定食」。
最初の講義にも“使われた”四字熟語とはいえないような気もする四文字。
「さて、この文字。きみに解釈してもらおう」
「……僕にやらせるんですね。あなたは“文字”で“人間”ではないから、できないと?」
「その通りだ。文字は新たにルール能力を定義することができない。さあ、やってみてくれたまえ」
「……」
「文字は身体に近い方がいい。触って」
708
:
名無しさん
:2015/03/30(月) 04:19:50
言われるがままに少年は文字を触りにいきながら、念じる。
しかし、触れようとしたその指が、電流のような光に弾かれた。
「痛ッ」
「ははは、だめだよ。その文字からぼくを殺すような能力を連想しようとしたのだろうけれど、
そういう無理で恣意的な解釈の押し付けは文字に拒絶される。
文字が力を持つと知ってしまった後に、“文字に能力を持たせよう”と――文字を“使おうとする”のは悪手だ。
文字の意思をないがしろにしてもらっちゃあ、困る。ぼくたちはもっと対等な関係を望んでいるのさ」
思考を読まれたダメ出しに少年は眉をひそめた。
なるほど――それを理解させるために、わざわざ塩を送るようなマネをしたらしい。
「……恣意的な能力の決定には、限界があるってことですか。
いや……文字を”使おう”とするなら、という枕詞がつくのなら、あの実験のように、
自分が文字だと思わされる、”文字になろうとする”ことで、ある程度は自由な解釈ができるんでしょうけど」
少年はもう一度指で文字に触れながら言う。今度は文字は拒絶しなかった。
《テーブルの上に、焼肉定食が現れる》。少年が行った定義は、《その場に焼肉定食を出す》というものだった。
つまり、文字を“使おう”とした場合は、また使うものだと認識してしまった後は、
こんな風に単純で弱い解釈しかできないということだ。百発百中のように。また、蟷螂の斧のように。
天飼千世はテーブルの上に《出てきた》焼肉定食を見るとまた、はは、と笑った。
「察しがいいとは知っていたが、本当にいい解釈力だね。
そう、そういうことだよ、紆余くん。大正解だ。
だからこそ我々は、参加者に“文字になってもらう”ための手を尽くしていると言うわけだ。
そしてここまで説明すれば――察しのいいきみなら分かったんじゃないかな?」
少年を試すような目で天飼千世は言った。
少年は、分かった、と答えようとしたが、その言葉にもっと深い意味を読みとった。
天飼千世はここまでの説明から、もっと深く読みこめと言ってきたのだ。
実験の理由のひとつが「文字のデータを取るため」だというのはだいたい理解できた。
文字のルール能力を定義できるのは人間だけ。
だから「人間」を使う。
そして、ルール能力について詳しく知らないまま、自分を文字だと思いこませるようにすることで
より多彩な能力を生み出せるし、多彩なデータを取れる。
だから主に「初参加の人間」を使う。そこまでは、分かった。
だがそれだけでは“殺し合い”を開く理由にはならない。
殺し合いの中でルールを定義させる意味が必要だ。
普通にデータを取るだけなら、
初参加の無知な被験者にルール能力のしくみを教えないまま文字だけを与えて、
何かの拍子に能力が定義されるのを見守ればいい。
それを殺し合いまで開く意味。極限状態でルール能力を定義させた、理由。
娯楽でもあろう。でも、合理的な理由も、含まれているはずだ。
殺し合いなんて倫理にも法律にも違反するようなことを、娯楽だけの理由で取るとは考えづらい。
……ヒントは、殺し合いは極限状態だということだろう。
非日常状態であると言うこと、一触即発の戦闘状態だということ。
その中でのふるまい。それを期待しているのだとしたら。
何を期待しているのか?
見えてきた。そう――例えば今回の実験では、
先に定義されたものを与えられたのだろう傍若無人を除けば――どういう能力が定義されていた?
そして、たったいま。この目の前の存在は、実験で能力を培った文字を、どうしている?
「……戦うための、能力」
いずれ、なにかと戦う時のための、能力を。
“手に入れる”のが、狙いなら。
709
:
46◇おはなし(3/4)
◆YOtBuxuP4U
:2015/03/30(月) 04:20:32
「そうだ。ひとつめの、殺し合いの中でデータを取る理由は、それだよ。
ぼくたちは文字として……“人と戦うための力”が欲しい。そのための解釈と、人のデータが欲しい」
人間の解釈のデータだけでなく。
人間の戦闘のデータ。人間の生き方のデータも、その戦いには使用できる。
だから殺し合わせて、殺し合うときの反応を見る。
あとで使うために。
……そう、殺し合うつもりなのだ。予行演習なのだ。
ぼくたちはもっと対等な関係を望んでいると、言っていた。
文字がヒトの下に造られたとは、天飼千世は認めていない。
「文字だって、人を使っていいはずだ」
天飼千世はあっけらかんと。されど真剣に、そう信じて疑わないといった顔で、言った。
「すべては、ぼくのため。ぼくはこの世界を。
ぼくの住みやすい世界に、変えようとしているのさ」
少年はその言葉を聞いて、矢に撃たれたような衝撃を受けた。
スケールが大きいなんてものじゃない。自分がいま、やっていることは。
自分の立場は、ヒト代表だった。
これは――ヒトと文字との、戦争だったんだ。
・
・
・
・
まあ、だからといってなんだという話ではあるけれど。
・
・
・
・
「……あれ? あんまり驚いたり、焦ったりとか、しないんですねー。そのへんはさすがなのかな?
あ、えっとですね。別に私、人間と全面戦争して打ち倒すのが最終目的ってわけじゃないんですよん?
まあ結果的にそうなってしまうだろうというのは否定しませんが、ね……理由があるんです、理由が。
ああ、ではふたつめの理由を説明しましょう! 今度は私が説明しますよ〜♪」
今度の天飼千世は、《桃色の髪にアンテナのような飾りを付けた黄色の服の女》になっていた。
シャツには電波が何本立っているかのアンテナ表示がプリントされている。
ずいぶん通信状況の良い服だ。
そういえば最初の説明の時、奇々怪々が「以心伝心」や「意思疎通」がどうのと言っていたような気がする。
もしかしたら、この外見はそれらの、主催側にいる四字熟語の姿なのか?
では最初の姿すら、本当の天飼千世ではないかもしれない……?
それに先ほどの壮年の男は……などと、少年が考えていたところ、
「ふたつめは、四字熟語の形成……といってもなんのことやらでしょうから、
さて、やはりまずは実演からいきましょうかね〜っと」
急に天飼千世がその手を伸ばし、「焼肉定食」の文字に触れた。
「《私の名前は、天飼千世。あなたの名前は――焼肉定食。
私はあなたを、愛している。私はあなたの、声が聴きたい》」
710
:
46◇おはなし(3/4)
◆YOtBuxuP4U
:2015/03/30(月) 04:21:03
《文字が光る》。
テーブルの上の焼肉定食の下に書かれたままの焼肉定食の文字が
天飼千世の言葉に反応するかのように虹色に発光する。
そして次の瞬間、テーブルがひっくり返されてもいないのに、焼肉定食(実物)が宙を舞った。
焼肉が放物線を描いて周囲へと散らばり、ご飯や漬け物が床に落下する。
テーブルの上には代わりに、いた。
虹色の。人の形をした、ぐずぐずの流動体が、いた。
「……これは?」
「焼肉定食です♪」
「え、焼肉定食は今、床に落ちて無残な状態になりましたよね?」
「文字のほう、ですよ〜。分かってるでしょうに。
さて、私はこのように、《文字をヒトの形にすることができる》。
これが私、天飼千世の……「天飼千世」の、ひとつめのルール能力ですよ」
ぐずぐずと模様を揺らす虹色のヒトガタを指差し、天飼千世は宣言した。
《自分の血から出来た文字をヒトの形にすることができる》。
天飼千世の、ルール能力、そのいち。
「ただ、見てもらえれば分かるように、この文字は特定の人の姿を為してませんね〜?
これは、文字にヒトとしての歴史が刻みこまれていないから、です。
背景のない文字では、人形にしかなれないんです。
ただの人形では会話が出来ませんし意味もありません。
ちゃんと文字にヒトが刻み込まれるようにする必要がある。だから、“実験”です」
「……というと?」
「先ほどのルール能力の説明と同じことです。
“文字を使う”ような使い方では、文字に使用者の情報は刻まれないんです。
自分が“文字になったつもりになる”こと。ヒトと文字が同化すること。これが大切なんですよ」
「同化……」
「ああ、ちなみにこれは我々の学説では、文字とヒトとの適合率が上がる、ともいいますね♪
さらに殺し合う中で、文字の力をより引き出そうとすれば、自然とつながりは強くなる。
解釈も深まってルール能力が深化する場合もあるし、いいことずくめなんですよねえ……」
重要なのは適合率。使い手が文字と適合すること。
それには自らが文字となり、自らの意味を想像し、見出すことがもっともストレートな方法である。
だから武器に刻んだ文字なんかも、基本的にはヒトにすることはできないのだという。
「ここまでオーケーかな?」
「ええ」
「うん、じゃあさらにさらにいくよ。
ヒトを文字に刻んだ後、その文字をヒトにするには――もうひとつ条件があるんだけど」
「ヒトが死んでいること、ですか」
「何だか分かりますかって、え〜♪」
天飼千世はがっくりと肩を斜めらせる。
説明されっぱなしの現状への意趣返しか、天飼千世が問いかけるより前に少年が答えを放った。
「おかしいなー、いや推測はできるけど」
きょろきょろと部屋を見回す天飼千世。そう、推測はできる。
この部屋に置かれている文字人形は、十四個。
居ないのは紆余曲折と勇気凛々で、これは殺し合いを生き残ったヒトと同じだ。
単純に生き残った文字にはまだルール能力が使われていないだけとも捉えられるし、
実際その可能性もあるが、ほかに条件があると言われたらこれしか思いつくルールは無かった。
ただ、推測への反証は、さっき会った。
「先手必勝についてはどう考えるんです? 生きてたでしょう?」
もちろん少年はそれへの回答もすでに用意している。
711
:
46◇おはなし(3/4)
◆YOtBuxuP4U
:2015/03/30(月) 04:23:40
「他人の夢の中から意識が出れないのならば、脳は死んだようなものでしょう」
「……ふーん」
「より正確に言えば、現実世界からそのヒトの意識が消えること――それが文字をヒトにできる条件。
夢の中に連れ込まれた時点で、全員がその条件下に置かれてたってことですよね?」
実験が、殺し合いの舞台が夢の中であることも、天飼千世は利用したのだ。
「それだけじゃなく、夢の中で実験を進行することで、現実の身体は、器は守ることが出来る。
普通に殺し合うのでは器が破損して使い物にならなくなるかもしれないけれど、
この方法なら夢の中で文字とヒトを取り換えるだけでいい。ずいぶんと。都合の良い、話ですね」
「……あはは、見抜かれちゃってますね。でも急にずいぶん、よくしゃべりますねえ。
どうしたのかな。そんなに私を殺したいのかな? それともやっぱり講義は眠くなるタイプ?」
「黙って聞いているのが辛くなってきただけです。……怒っているので」
少年はぶっきらぼうに言葉を投げつけた。人差し指で、膝をたたく。
いらついている動作をしていた。いや、むしろ、これが怒れないでいられようか。
天飼千世のルール能力は言い換えれば、ヒトと文字とを入れ替えてしまう能力。
文字でヒトを乗っ取るような行為だ。
生き様だけを盗んで、文字人形に降ろして遊んでいる? それどころじゃない。
この実験はもともと居たはずのヒトを完全に器として、道具として扱っている。
尊厳踏みにじりも甚だしい。普通に生きていくはずだった人たちから、人生を奪うだけでなく。
「意識を殺して、残った身体に文字を入れて。自分の手駒にするための殺し合い。
そんなものに参加させられていたと長々と説明させられて、怒らない方がおかしいです」
「手駒? そこまでは思ってませんよぉ。仲間、仲間です。大事な仲間が私は欲しい」
真っ白な紙の真ん中に、ひとりぼっちは寂しいから。
「たとえ、すべてがひとつの文字で表せたとしても、
私は私の世界の空白を、埋めようとするでしょうね。怒られるのはまあ――承知の上、でね」
そう言って天飼千世は軽く笑った。
少年は、天飼千世をやはり何としても殺さねばならないと思った。
(この人は……いや、この文字は。“敵”だ。
知ってしまったらもう、避けて通ることのできない、僕の敵だ……)
ヒトと文字との戦争だなんて大局的な話ですらない。結果的にはそうかもしれないけれど。
自分が、ただ自分が、紆余曲折にされた××××が、ヒトとして生きるために。
リョーコさんにあの屋上で宣言したように、あるいは凛々ちゃんにあの駐車場で説いたように、
幸せに生ききるためには。天飼千世の計画と思想は、あまりにも“敵”すぎる。
選んだ道は間違いではなかったと少年は安堵する。
少年が、ここに来ることを選んだのは。
自分の未来のために、この実験の主催者を殺すためだ。
目の前にいるのは、倒さなければならない“敵”。
語られている「おはなし」は、いますぐにでも打ち切らないといけない物語だ。
(――――でも、“打ち切りかたがまだ見えない”)
少年は天飼千世を注視する。天飼千世は少年ににこりと笑い返す。
隙が見えない。いや、読めない。
何をすれば、殺せるのか。いま相手はこちらの手に対し何ができるのか。
ルール能力と文字のヒト化についての講義を聞きながら考えはしたが、当然のように読めなかった。
712
:
46◇おはなし(3/4)
◆YOtBuxuP4U
:2015/03/30(月) 04:24:29
百発百中の銃弾は《外れて》、
少年は《銃を知らぬ間に奪われ》、《知らぬ間に椅子に座らされていた》。
これらがすべて同じ能力によるものなのか、違う能力によるものなのかすら、分からない。
天飼千世がこれを行ったことだけは確かだとして、それが天飼千世自身の能力なのか、
それとも他の文字を懐に忍ばせているのか。さっぱり分からない。
でも、分かったこともないわけではない。傍若無人の紙にも書いてあったことだ。
“脱出者には逃げる権利がある”。少年の読みでは、おそらくこれには裏移りしたもう一つの意味がある。
「ひとつ質問をしても」
「いいですよ?」
……しびれを切らしたフリをして、少年は少し、探ることにした。
まずは自分が置かれている状況の、レギュレーションの確認だ。
「ええと、それでですね……僕は一体。どうやってあなたを殺せばいいんですか?」
・
・
・
・
「るぇ?」
少年がそう言うと、天飼千世の見てくれはまた《変わった》。
今度は、若干広がりのある白髪を肩あたりまで真っ直ぐ伸ばした女性だ。
奇々怪々と同じような白衣を着て、同じように研究者風の雰囲気をまとわせている。
かすかにくたびれた感じと、その髪色から、年齢は若くなさそうだが、眼は妙に輝いていた。
「え、ええと……ずいぶん飛躍したと言うか……それをこちらに問うのかな、きみは。
こちらの話を聞きながら、考えてくれていたんじゃないの? 考えるの、嫌になったの?」
きょとんとした表情のその瞳には、異常なほどの光。
虹彩がまるで虹色に輝いているかのような……純粋さを忘れないまま育った大人のような、眼をしている。
少年は唾を呑む。――これは、“引きずり出した”か?
ならば、畳みかけるだけだ。少年は喉の中で慎重に言葉を選びながら、天飼千世を睨んだ。
「考えてましたよ。暗闇の中で上から垂らされた糸を掴もうとするような思索に、迷いかけました。
でも、そうして考えられるということ自体がなぜなのかを、少し考えてみたら、ひとつ気付いたんですよね。
そもそも……どうして僕はこうして、考えられる時間を与えられているのか?」
扉をくぐる前、先手必勝だった男は最後に少年をこう励ました。
優勝者は実験からの解放が約束されている。だから、少年は主催と対等なのだと。
どういう意味なのか分からなかった。
でも、最初の最初に発されたおはなしの内容と。
それから散々に説明を受ける中で、その“対等”の意味が少しだけ分かった。
「結論から言えば。あなたは、僕をゲームの対戦相手に……“勇者”にしようとしているんだ」
この、テーブルを挟んで椅子に座った対面形式。
まるでチェスかなにかの対戦を行うようなシチュエーションも、その思考にたどり着かせた一助になった。
天飼千世は言った。実験は“勇者”の裁定でもあると。
713
:
46◇おはなし(3/4)
◆YOtBuxuP4U
:2015/03/30(月) 04:25:21
「ゲームの内容は、“魔王”を殺せるか、殺せないか。
つまりはあなたという人類の脅威を、僕と言う人間が取り除き、平和を守れるかどうか。
そういうこと――なんでしょう? だからあなたは僕をここでは殺さないし、たくさんのことを僕に教える」
だから天飼千世は“勇者候補”に。いつでも殺せるはずの少年に、おはなしをする。
「ルール能力の成り立ちと文字のヒト化、その条件、あなたがやろうとしている征服の内容まで、さらけ出す。
普通に考えたら、不利になることだ。これもただの娯楽で、おはなしが終わった後に殺されるのではとも考えた。
でもあなたたちの娯楽にはいままでずっとしっかりとした裏の意味があったことも、知らされた。
それなら。これが、すべてが、ゲームを成り立たせるための初期説明――チュートリアルであるなら。筋は通る」
それならば、おはなしは、意味を持つ。
“ゲームのための準備”という名の、意味を持つ。
「だから教えてください。“にやけてないで教えてください”、天飼千世さん。
僕はもう、回りくどいのはこりごりなんです。あなたのもったいぶりに付き合わされるのはたくさんだ。
この世界の人間全部を賭けたふざけた規模のゲームだろうと。僕は絶対に、乗りますから。
あなたを殺す方法があるなら、さっさと教えてください」
少年は、少年が喋り始めてから徐々に徐々に口角を上げ、
今や歓喜の表情を見せようとしている天飼千世を前に、堂々と言いのけた。
「最初から、言っているじゃないですか。僕はあなたとおはなしをしに来たんじゃない。
文句を言いに来たわけでもなければ、凛々ちゃんを逃がしたくて代わりに来たわけでも、ない。
僕はあなたを殺しに来たんだ。僕は僕のために、僕のこれからのために」
・
・
・
・
「僕は“それだけの理由であなたを殺す”。――絶対にだ」
・
・
・
・
「あは」
少年がそこまで言い終わると。
言われた天飼千世は、くしゃりと顔をゆがめた。
紙がくしゃくしゃになるときのような勢いで、その顔を変形させた。
口を最大限ににやけさせ。嬉しそうに眉を垂らし。眦から涙をこぼしながら、びくびくと身体を震わせる。
714
:
46◇おはなし(3/4)
◆YOtBuxuP4U
:2015/03/30(月) 04:27:09
「ふふ……あはっ、あはは、あはははは、……あはは、は♪」
「……?」
「ふはっ、ははは、ひぃ――ああああっ、あ、あっ♪ う、うれし、すぎてっ♪
なにそれっ、知らないよそれ、ああ、あふっ、ぐじゅ……るるぇ……う、うううぁ♪」
涎をすすり、四肢をぱたぱたと痙攣させて、
もはやそれは、絶頂していると言って差し支えのないような、卑しくいやらしい動きだった。
天飼千世は歓喜に打ち震えていた。絶対に殺すと言われて――嬉しがっていた。
「やっぱり、きみだ。きみだったんだ!
間違ってなかった! 《千世の読み》は、正しいんだ!
きみだけがどうしても分からなかった。
きみが世界を変える力を持っていることは《分かった》けど、けどね、
どうしてきみが世界を変えうるかだけは、最後まで見えなかった……でもそんなの、当然だね、だって今!
たった今、その理由が生まれちゃったんだから……っ! 自分の感情! それが答えだったんだ!!」
「……あの」
「でもそれでも《千世の読み》はきみの敗北を見るよ。
でもでもでもその上できみは、ううん、アナタは――きっと1001個目を選んでくる!
きっと!! ――だからホントはダメなんだけど! ダメなんだけどね? ダメなんだけど、最高なんだ!
それを乗り越えるくらいじゃないと……きっと望みも叶わない!
最高だよ、ああ、大好きだよ……アナタとはもう、友達なんてものじゃない……もっと上の、言葉で相対しなきゃ」
「……一人で興奮しないでほしいんですけど」
「うぅ、あ、ごめんね!? ごめんごめん、ホントにね、嬉しかったから……。
あの……えっと、ここまでの非礼、詫びるよ。紆余曲折なんて、雰囲気作りだなんて、もういらないね。
アナタの読みで、正解だ。
アナタを勇者に仕立て上げる。ううん、実験の優勝者を勇者に仕立て上げる。
そして《天飼千世》がもうひとつのルール能力で《見る》“1000の未来”を、1の未来に収束させる」
残りの目的は、簡単に言えばそういうことだと。
心底楽しそうに嬉しそうに、天飼千世はそう言った。
「……つまり、あなたは」
「うん。そうだよ。天飼千世にはね。《見える》んだ。
その文字の意味通りに、全てをつかさどる天を、運命を、飼うような行為が出来る。
《わずか1000パターンではあるけれど。天飼千世は未来を見ることが可能だ》」
《1000パターンだけ未来が見える》。
天飼千世の、ルール能力、そのに。
・
・
・
・
715
:
◆YOtBuxuP4U
:2015/03/30(月) 04:32:35
投下終了です。
けっこう主催さんもファンキーなキャラになった感があります
次回は四字熟語ロワが開かれるに至る流れをダイジェストでお届けする感じになりそうです。
716
:
◆ymCx/I3enU
:2015/04/03(金) 22:30:35
投下乙です よ、読んで頂けてるのですか…わぁ顔赤くなる
そしてここまでしっかり世界観を構築するのは俺には無理だなあ……凄い
自分もこっちに連投規制怖さで途中からのを投下します
717
:
しょくしゅ注意報 其の七 〜
◆ymCx/I3enU
:2015/04/03(金) 22:31:53
「離れろって、うんち漏らすからかな?」
「茶化してる場合か。まずいな、MURさん達に言った方が……」
ノーチラスがそう言いかけた時。
ビクッ
KBTITの身体が大きく揺れ動いた。
「ん?」
「……拓也さん?」
意識を取り戻したのかと二人は思った。その二人の目の前でゆっくりとKBTITは起き上がる。
しかし二人の声に反応する気配は全く無い。
「どしたの?」
巴が再び声を掛けるがやはり返事は無かった。
返事の代わりにある事が起きた。
KBTITの身体のあちこちから、皮膚を突き破り黒っぽい触手が生えた。
「「は?」」
突然の、予想だにしていなかった事態に巴とノーチラスの二人が間の抜けた声を出す。
その姿に二人は見覚えが有る――――巴の時とノーチラスの時で宿主に違いは有ったが、
紛れも無く、かつて戦った触手の怪物と同じ様相に、KBTITはなっていた。
「……あ゛あアあ……」
歪んだ声色で唸りながらゆっくりとKBTITは二人の方へ向き直る。
ゴーグルのせいで分かり難いが、自我はもう消え去っていると言う事は二人はすぐに察した。
察して、とにかく一旦狭いトイレから出た方が良いと判断し、巴とノーチラスは出口へと走る。
廊下に飛び出すと、遠野と彼から報告を受けKBTITに会いに来たMURがすぐ近くに居た。
トイレから必死な様子で飛び出した巴とノーチラスに、遠野とMURは戸惑いの表情を見せる。
「どうしたんだゾ?」
「何か有ったんですか? あれ、拓也さんは」
「はぁ、はぁ、た、拓也さん、が」
「まさかあんな事になるなんて」
巴とノーチラスがMURと遠野に状況を説明しようとした。
しかし、それはトイレの入口から黒い触手が何本も伸びてきた事により中断させられる。
変わり果てたKBTITの姿にMURと遠野は一瞬言葉を失った。
「こ、これは」
718
:
しょくしゅ注意報 其の七 〜
◆ymCx/I3enU
:2015/04/03(金) 22:32:31
遠野が呻く。
KBTITがかつて戦ったひでと同じ、触手の怪物と成り果ててしまった事実に衝撃を隠せない。
一体何故、彼がこんな事になってしまっているのか。
余りの事態に、四人全員逃げる事を忘れ「それ」を考える事に気を取られてしまう。
「ウオア゛ァ゛アアア゛ア゛!!!」
すぐにそれどころでは無い事を四人は思い出した。
雄叫びを発しながらKBTITが四人目掛け突進してきたのだ。
かつて「触手の怪物」と呼称された小崎史哉とひでのように、右手から触手の束を出現させ、それを四人目掛け振り下ろす。
長く飛び出た触手の束は天井ボードを抉り、配線やダクトを破壊しながら、四人の居る位置の床に派手な音を立てて直撃した。
グシャアッ!!
幸いにも四人は二人ずつ分かれる形で左右に回避する事が出来た。
直撃した部分の床は大きく凹み、威力を物語る。
しかし。
「サイごのいっパツ、くれテヤルヨオラァアアア!!」
「「「「!!」」」」
脈絡の無い言葉を発しながら、KBTITは触手の束を左右に思い切り振り回した。
振り下ろし程では無いにしろ、太く重い触手の束は四人を軽く吹き飛ばしそれぞれ壁に強か身体を打ち付けてしまう。
四人のダメージはかなり大きく、痛みですぐには身動きが取れない。
「何? どうしたの……うわっ」
尋常ならざる音に、何事かと様子を見に来た沙也が惨状を目の当たりにして驚きの声を発する。
彼女だけでなく、サーシャ、フグオ、小鉄、ト子もやって来ていた。
MUR達にとっては最悪この上無い状況と化してしまう。
「みんな、来ちゃ駄目だゾ! 逃げ……」
逃げろとMURが叫ぼうとしたが、もう手後れで、KBTITは沙也達に向かって、勢い良く触手を伸ばした。
鋭利な槍の如き触手の先端が、とても生々しく嫌な音を立てて、二人の肉体を刺し貫く。
被害者は、フグオと沙也。
「キャ……プ……?」
「か、は……嘘……」
フグオと、沙也の胸元からそれぞれの肉体を貫いた触手に呆然とするフグオと沙也。
じわりじわりと、刺された場所から赤黒い染みが広がり床に同じく赤黒い液体が垂れ落ちる。
避ける事に成功した小鉄、サーシャ、ト子は、その様を見て、絶句した。
ずるりと、フグオと沙也の身体から触手が引き抜かれ、傷口から鮮血がどばっと溢れ出た。
「小鉄っ、ちゃ、ん」
血を吐きながら、フグオは小鉄の名前を彼の目を見ながら言い、崩れ落ちて、死んだ。
沙也もほぼ同時に、全て悟って諦めたような表情のまま、同じように崩れ落ちて、息が絶えた。
719
:
しょくしゅ注意報 其の七 〜
◆ymCx/I3enU
:2015/04/03(金) 22:33:13
【鈴木フグオ@漫画/浦安鉄筋家族 死亡】
【君塚沙也@オリキャラ/自由奔放俺オリロワリピーター 死亡】
【残り 10人】
「フグオ、フグオ……この野郎!!」
友人を眼前で殺され、小鉄が激高した。
MURやサーシャが制止の声を上げるが、聞き入れず、怒りに任せKBTITに突進していく。
その目には涙が滲んでいた。悪乗りして良く虐めていたが、フグオは大事な友達だったのに、よくも、よくも――――!
KBTITの触手を持ち前の健脚で避け、彼の懐に潜り込んだ小鉄は、持っていたドスを貧相な左太腿へと思い切り突き刺した。
「ぐおおおオオオおオ!!」
大きく悲鳴を上げよろめいたKBTIT。しかし動きを完封するには至らず、KBTITの右手が小鉄の首根っこを掴んだ。
ぐしゃり。
「あっ」
目と鼻の先で、小鉄が頭から壁に叩き付けられ、頭部が四散する様を見せられ、MURが口を開いたまま絶句する。
ノーチラス、遠野、サーシャ、ト子も、同様の反応を示した。
【大沢木小鉄@漫画/浦安鉄筋家族 死亡】
【残り 9人】
KBTITが何故怪物化したのかは分からない、だが、今の彼はもう元の彼では無く、
例えその命を奪ってでも止めなければ、自分達は皆殺しにされてしまうと言う事は分かる。
「拓也さん、止めろぉ!(建前) 止めろぉ!(本音)」
身体の痛みを堪えてMURは立ち上がり、Stg44突撃銃をKBTITに向け発砲する。
「サーシャ、ト子! 壁に寄れ!」
続いて立ち上がったノーチラスが、銃撃に巻き込まれないよう二人に命令した。
サーシャとト子は言う通りにしつつ、サーシャはローバーR9自動拳銃、ト子は遠野から譲り受けた、
コルト オフィシャルポリス回転式拳銃にて加勢。
ノーチラス、巴もそれぞれ持った銃で続く。
「これは……」
「何これ!?」
ラトと、彼を肩で支える樹里も駆け付けた。
「あれって……」
720
:
しょくしゅ注意報 其の七 〜
◆ymCx/I3enU
:2015/04/03(金) 22:33:59
総攻撃を浴びている触手の生えた男に樹里が釘付けになる。
触手の様はかつて同行者の蓮を殺した時のひでやその傍に転がっていた小崎史哉の死体と同じだが、
今前方に居るのは全く別の男だ。どうなっているのか。
いや、そんな事よりどうやら今はあの男を全員で倒さなければならないらしい。
ラトと樹里は程無く状況を把握し、銃を構えMUR達に加勢した。
「ヴオオオオオオオオオ!!」
全身に拳銃弾、散弾、小銃弾を満遍無く浴び、血肉を飛散させ、苦鳴を上げるKBTIT。
だがそれでもまだ彼の動きを止めるには至らない。
「寄生虫」の力によりその生命力、耐久力は異常な程高まっていた、そのせいである。
「モウユるさねェからナぁ!!」
KBTITは矛先を樹里に向ける。彼女に向けて触手の槍を伸ばす。
「危ない!!」
ラトが叫び、樹里を突き飛ばした。
樹里の代わりに、ラトが串刺しとなった。
包帯を巻いた腹部に、更なる穴が空く形となり、ラトは大量に吐血し悶絶の表情を浮かべる。
「ラト!!」
「ラト君!!」
サーシャとMURが叫ぶ。
ラトの身体から触手が引き抜かれ、その小柄な体躯がボロ切れのように床に投げ出される。
そしてKBTITは間髪入れず、身体を捻り、次の標的――――遠野に向け、ラトと同じく触手の槍を突き刺した。
「あっ……ぐぁ……」
「遠野!!」
「遠野さん!!」
悲痛な声を上げる、MURと樹里。
「……もう、もう……やめて、下さい……拓也、さん!!」
串刺しになったその体で、遠野はKar98Kを構え、薬室に残った最後の一発を発砲した。
「ウグ、ア」
その最後の一発は、KBTITの心臓部分を撃ち抜いた。
頭を撃ち抜く事も出来た、だが、やはり今までクラスメイトとして共に過ごしてきた人物の顔を吹き飛ばす勇気は出なかったのである。
例え、自分に致命傷を与えた張本人だったとしても。
その一撃が止めになったのか、遂にKBTITはその動きを止め、がくりと両膝をついて床に倒れた。
同時に、触手に貫かれたままの遠野も床に伏す。
721
:
しょくしゅ注意報 其の七 〜
◆ymCx/I3enU
:2015/04/03(金) 22:34:58
――――まさか、こんなに早く壊れてしまうとは。
――――役立たずめ、さっさと次の肉体を――――
KBTITのズタズタになった傷口から、鮮血に塗れた虫が這い出てくるのを、巴が見付けた。
「あっ」
「どうしたゾ巴ちゃん」
「それ、タクヤさんの身体に入った虫が」
「……! 確か、拓也さんの様子がおかしくなったのは」
「うん、あの虫が身体に入ってから」
巴からそれを聞いて、MURは閃き、叫ぶ。
「その虫が元凶だゾ! 潰せ!!」
その声に、ト子が応えた。
床に赤い痕を残しながらずりずりと這うその虫を、思い切り、何度も何度も踏み付けた。
――――な、何? 何だと?
――――まさか、そんな、おい、やめろ、やめろ
――――ヤメロ、ヤメロ、ヤメ、ヤメロ、ヤ――――メ――――
生物の肉体に入り込みそれを支配すれば絶大な脅威となる「寄生虫」も、何も無い素の状態では、
単なる虫と大差無く、呆気無く潰されてしまった。
こうして、触手の脅威はようやく終わりを告げた。
「……う……ぁ……俺は……」
「タクヤさん? まだ生きてるの? って言うか元に戻ったの?」
KBTITはまだ辛うじて息が有った。
触手の怪物では無い、元の彼としての意識を取り戻していた。
ラトも、遠野も、まだ息が有る。
だが、三人共、もう長くは無い事は明らかだった。
KBTITと遠野の元にMURと巴、ラトの元にノーチラス、サーシャ、ト子、樹里が寄り添う。
「お、俺は……」
「悪い虫に身体を操られてたんだゾ……」
「あの時の虫、か……少し、だけ……がはっ……記憶が、有るんだ……俺は、何て、事を……」
フグオ、沙也、小鉄を殺した時の事、ラトと遠野に致命傷を負わせた時。
操られていた時の記憶が、それも嫌な場面ばかりピンポイントで、KBTITには僅かながら残っていた。
「拓也、さん、貴方は……ゲホッ、ゴホッ!」
「喋っちゃまずいよ遠野さん」
「良いんです、言わせ、て、下さい……拓也さ、ん、貴方は悪く、ありません……あな、たは、はぁ、はぁ、
操られていただけ、です……」
「遠野……」
操られていたとは言え、最早助からぬ傷を負わされたのにも関わらず、遠野はKBTITの事を気遣った。
それを聞いたKBTITは「本当に人間の鑑だ」と遠野の優しさに感謝し、ふっと笑みを浮かべる。
また、仲間を殺し、傷付けた罪悪感から、少し、ほんの少しだけ救われたような気がした。
722
:
しょくしゅ注意報 其の七 〜
◆ymCx/I3enU
:2015/04/03(金) 22:35:47
「MUR、遠野、みん、な……俺、を……人間に戻して、くれて……あり、がと、ナス……」
「拓也さん!」
「タクヤさん……おやすみ」
怪物と化した自分を「人」に戻してくれた仲間達に感謝しながら、KBTITは逝った。
【KBTIT@ニコニコ動画/真夏の夜の淫夢シリーズ/動画「迫真中学校、修学旅行へ行く」 死亡】
【残り 8人】
「……MUR、さん……僕も、もう……」
「遠野……!」
遠野の命もまた、もうすぐ潰えようとしていた。
血に塗れた口で、最期のメッセージをMURに伝える。
「どうか、この殺し合い、から……生きて、脱出、して下さい」
「ああ、当たり前だよなぁ?」
「先輩に、怒られて、しまうかもしれ……ません、が……僕は……せん、ぱいの……ところ……に……――――」
「……遠野」
台詞が言い終わる事無く、遠野の息は絶えた。
これで愛する野獣の元へ行けると思い、安心したからか、その死に顔はとても安らかで、
口元の血が無ければ眠っているようであった。
MURは、声を押し殺して泣いた。
巴はその様子を黙って見ていた。
【遠野@ニコニコ動画/真夏の夜の淫夢シリーズ/動画「迫真中学校、修学旅行へ行く」 死亡】
【残り 7人】
そして、ラト。
彼の傷もまた、手の施しようが無く、クラスメイト達が見守る中ゆっくりと命が消えて行く。
「ラト……」
「サーシャさん……また、会えたのは、本当に、嬉しかった……」
「私も……だよ」
これで最期だと言う事を察した話し方が、サーシャはとてもとても悲しかった。
以前の殺し合いで、ゲームが始まる前に死別して、何の因果かお互いに蘇生し、この殺し合いにて再会した。
しかし、また今ここで彼と死に別れようとしている。
これは神様の悪戯なのだろうか、死なないで、死なないで――――サーシャは泣き叫びたかったが、
そんな事をしてもどうにもならない事位、分かっても居る。
「皆……どうか……生きて……く……れ……」
ラトもまた、力尽きた。
サーシャは、彼の身体に顔を埋め、嗚咽を漏らした。
他の三人も、沈痛な面持ちを浮かべ、ラトの、いや、死んでいった仲間達を悼む。
突如起きた騒乱は、大きな爪痕を残し、沈静した――――。
【ラト@パロロワ/自作キャラでバトルロワイアル 死亡】
【残り 6人】
【午後/D-5イベントホール】
【MUR】
【貝町ト子】
【ノーチラス】
【サーシャ】
【北沢樹里】
【原小宮巴】
【生存者 残り6人】
723
:
◆ymCx/I3enU
:2015/04/03(金) 22:37:24
投下終了です。
長い…… 連投規制不可避だった
状態表はもう必要無さそうなんでもう有りません 許して
724
:
名無しさん
:2015/04/08(水) 01:49:05
乙
ようやく来た〜!ありがとー!
僕のロワ立てるけど来てくれないか!
最高!非リレーの復活!
725
:
◆84AHk0CknU
:2015/07/31(金) 03:06:46
連投規制されて悲しいなぁ…(諸行無常)
続きをこちらに投下します
726
:
◆84AHk0CknU
:2015/07/31(金) 03:08:29
「どうしよう…このままじゃゼロさんが…!」
今外へ飛び出しても間に合いそうに無い。大声で危険を知らせようにもこの戦闘音では聞こえるかどうか怪しい。
焦りが募る中ふと支給品の存在を思い出した。
バッグから蝶ネクタイを取り出すと、音量のダイヤルを最大まで上げる。
そして息をすぅと吸い込み叫んだ。
『ゼロさん上です!逃げて!!』
◇
ゼロとAKYSが見上げる先に居る謎の赤い怪物。
「ウェイ!」
そいつはこちら目掛けて、奇妙な声を発しながら光弾を撃ってきた。
ゼロはすかさず、羽ばたく鳥のような紋章を右手に光らせ、それを光弾へと向ける。
すると光が当たった瞬間光弾は消失した。
傍に居たAKYSも攻撃を免れる形となったが、別に意図してやった訳ではない。偶然だ。
怪物が一瞬驚いたような仕草を見せるが、直ぐにまた連続して光弾を発射する。
しかしまたしても、ゼロの掌から発せられる光に当たると全て消え失せる。
埒が明かないと判断したのか、怪物は標的をガソリンスタンドの方へと変える。
ゼロもそれを察し己の能力を発動する。
「っ!?え、え?」
「話は後だ。行くぞ」
外に居た筈のゼロが突然目の前に現れたため、雪華綺晶目を白黒させる。
「エ゛エ゛ーイ!」
だが移動する暇は無い。掛け声と共に無数の光弾がこちらへ発射された。
ドッゴォォォン!!
発射された光弾は給油機やハードボイルダーに着弾、大爆発を起こす。
「きゃっ」
「チィッ!」
雪華綺晶とゼロの姿は爆風に包まれ、あっという間に見えなくなった。
…………
燃え盛るガソリンスタンドを暫し見つめていた怪物だったが、やがて視線をAKYSの方へ移す。
しかし、既にAKYSの姿はどこにも無い。
ドサクサに紛れて逃げたか。短時間でそこまで遠くに行けるとは思えないが、何か支給品を使ったのだろうか。
まぁいい、次に会ったら確実に息の根を止めてやる。
浮遊していた異形は道路へ静かに降り立つと変身を解く。
727
:
◆84AHk0CknU
:2015/07/31(金) 03:12:05
「結構使えるな、これ」
その言葉と共に現れたのは青い服を着た茶髪の美少年。
彼の名は星君。
チャージマン研こと泉研の学校に転校してきたスポーツ万能の少年…というのは表向きの話で、その正体は地球侵略を目的とした宇宙人、ジュラル星人の一派である。
人気の無い場所に研を呼び出し抹殺しようと正体を明かした直後、この殺し合いに拉致された。
とりあえず現状把握に努めようと名簿を確認したところ、知っている名は宿敵の泉研ただ一人。
ジュラルの同胞が呼ばれていないのならば、優勝を目指すのに抵抗は無い。
それにあのロン毛はどんな願いも叶えてくれるらしい。正直半信半疑だがもし本当ならばその力で地球の完全征服も夢ではないかもしれない。
「早速二人殺せたし、幸先良いスタートだな」
星君に配られたタブーメモリという名の支給品。
これを使い変身したタブードーパントという異形の力は、ジュラル本来の姿の時よりも強力な力を持っていた
星君は知らない事だがタブーメモリはゴールドメモリと呼ばれる特別な代物であり、通常のメモリとは一線を画する力を秘めている。
想像以上のアタリ武器を手に入れられた事に星君はほくそ笑む。
とはいえいつまでもここでのんびりしているわけにもいかない。
「さぁ出発DA☆」
爆発に気付いた参加者が集まってくる可能性は十分にある。
やや駆け足気味で星君はその場から離れていった。
【星君@チャージマン研!】
[状態]:健康
[装備]:ガイアドライバー+タブーメモリ@仮面ライダーW
[道具]:共通支給品一式
[思考]
基本:優勝する
1:この場から離れる
2:参加者を全て殺す
3:チャージマン研は優先的に殺す
4:胴着の男は次に会ったら確実に仕留める
[備考]
※参戦時期は研に正体を知られた後
◇
「……そろそろいいか」
星君が去り、バチバチという燃え盛る音のみに支配されたガソリンスタンド付近。
蚊の鳴くような声がしたと同時にAKYSが姿を現す。
AKYSは逃げてはおらず、ずっと燃えるスタンドの付近にずっと居た。
手甲の他にもう一つバッグに入っていたもの。
とある世界の魔法少女が自分の体の大きさを変化させる際に用いたステッキ。
AKYSはあの怪物からは逃げ切れないと判断し、ステッキで体を小さくし、息を潜め星君が去るのを待っていたのだ。
「あいつらは死んだのか?」
自分を追い詰めた仮面の魔人と一緒に居た白い少女。
爆発に巻き込まれ死んだのだろうか。とてもじゃないがあの爆発で生き残れるとは思えない。
728
:
◆84AHk0CknU
:2015/07/31(金) 03:19:44
「…」
負けるつもりは無かったがかなり苦戦を強いられた。
気味の悪い怪物に横槍を入れられ、無様に隠れる羽目になった。
自分自身を守るだけでも命がけなこの状況で、本当にあいつらを生き残らせることができるのだろうか。
「…チッ」
つい情けないことを考えてしまった自分に舌打ちをする。
そんな姿勢では教え子たちを守るなど無理に決まっている。
相手が誰だろうと関係ない。たとえどんな化け物がいようと全てを叩き潰す。
今一度決意を固めるように拳を握り締めると、激しく燃える建物を背にAKYSもその場を離れていった。
【AKYS@真夏の夜の淫夢】
[状態]:疲労(大)、全身にダメージ(中)、両腕に若干の痺れ(徐々に回復)
[装備]:徳川家康の手甲@戦国BASARA
[道具]:共通支給品一式、スモーラージ・Mのステッキ@魔法少女オブ・ジ・エンド(体を小さくする魔法2時間使用不能)
[思考]
基本:野獣、MUR、KMRの三人を生き残らせる
1:ガソリンスタンドから離れる
2:誰が相手だろうと容赦せずに殺す
3:野獣たちには会いたくない
[備考]
※迫真空手部の師範代をしている設定です。遠野とも面識があります
※ガソリンスタンドで火災が発生中です
※ハードボイルダー@仮面ライダーWは大破しました
◇
会場北部にある園咲邸。だがそれとはまた違う豪邸が、この会場には存在する。
日焼けをするには持って来いの屋上や、後輩を昏睡レイプするのに最適な地下室を兼ね備えた快適な空間。
「はえ^〜」と思わず感嘆の声を出してしまいそうなその豪邸、名を野獣邸という。
本来ならばクッソ汚い野獣一家の住まいである場所だが、この地では会場にある一施設でしかない。
ひっそりと静まり返っている野獣邸だが、静寂を破るように玄関の扉が乱暴に開けられ、黒尽くめの男が押し入る。
男は邸内に人が居ないのを確認すると、抱きかかえていた少女をリビングのソファーに寝かせ、自分も近くの椅子に腰を落ち着ける。
「…散々だな」
男――ゼロはため息を吐くと、視線を天井へ浮かべつつ先程のガソリンスタンドでの一件を思い出す。
赤い怪物が攻撃の対象をガソリンスタンドへ変えた時、すぐさま瞬間移動で雪華綺晶の元へと移動。
給油機の爆発に巻き込まれる直前再び瞬間移動を使い、隣のエリアへと跳んだ。
本当はもう少し遠くへ移動しようとしたのだが、何故か隣のエリアで強制的に瞬間移動が解除されてしまった。
身体能力の不調といいつくづく面倒なことに巻き込まれたな思い、同時にあのロン毛が一筋縄ではいかない相手だと再認識する。
(ゲームに乗った者を二人、取り逃がしてしまったか)
優れた戦闘力を持つ胴着の男と赤い怪物。
元々の能力か支給品の効果かは不明だが、奴らを仕留めることはできなかった。
とはいえ、雪華綺晶を守りながら二人を同時に相手にしては流石にこちらが不利なので、撤退せざるを得なかったが。
だがバイクという貴重な移動手段を失ってしまったのは痛い。
729
:
◆84AHk0CknU
:2015/07/31(金) 03:26:42
「ん…」
と、雪華綺晶が小さく寝息を立てたのを聞き、ゼロは顔をそちらに向ける。
エリアを移動した時には彼女は気を失っていた。
一般人が現実離れした戦闘を間近で目の当たりにし、そのうえ爆発で死に掛けては無理も無い。
一先ず彼女を寝かせられる場所を探すことにしたゼロは周囲を探索し、野獣邸に辿り着いた。
眠り続ける雪華綺晶を見ながらゼロは今後の事考える。
このまま雪華綺晶を守り続ける義理など自分には無い――が、同時に見捨てる理由も無い。
会場に居る間は彼女に同行し、知人を探すのにある程度協力してやってもいい。
こんな選択をするのは魔王となった今でも良心を捨て切れていないからだろうか。
「ふん…」
浮かび上がった疑問を打ち消すように鼻を鳴らすと、雪華綺晶が目を覚ますまで一階の探索でもしようかと思い立ち上がった。
【雪華綺晶@やる夫スレ】
[状態]:精神疲労(中)、気絶
[装備]:無し
[道具]:共通支給品一式、蝶ネクタイ型変声機@名探偵コナン、FN ブローニング・ハイパワー(13/13)@現実、予備マガジン×4
[思考]
思考:姉さんとやる夫さんに会いたい
0:気絶中
1:姉さんたちを探す
2:胴着の男(AKYS)と赤い怪物(星君)に恐怖
[備考]
※以下本ロワでの設定
・人間の女子高生で一般人
・水銀燈→雪華綺晶たち7人姉妹の長女
・やる夫→二つ上の学年で幼い時から姉妹とは親交がある
・伊藤誠→二つ上の学年。面識は無いが悪い噂は時々耳にする
【ゼロ@コードギアス ナイトメア・オブ・ナナリー】
[状態]:疲労(大)、両手に鈍い痛み、回復中
[装備]:無し
[道具]:共通支給品一式、篠崎咲世子のクナイ×10@コードギアス 反逆のルルーシュ
[思考]
基本:主催者の殲滅、元の世界で魔王の役割を果たす
1:野獣邸一階を探索する
2:雪華綺晶と行動し、互いの知り合いを探す
3:他の参加者を探し情報を集める
4:胴着男(AKYS)、赤い異形(星君)は殺す
5:首輪と能力の不調をどうにかしたい
[備考]
※参戦時期はLAST CODE『ゼロの魔王』終了時
※瞬間移動は最大で隣のエリアまで。また連続使用や移動距離が遠いほど疲労増加
730
:
◆84AHk0CknU
:2015/07/31(金) 03:28:00
投下終了です
規制解除されたら本スレに続きを投下します
731
:
◆84AHk0CknU
:2015/07/31(金) 03:34:57
追記
本スレに投下したい方がいたら、自分のは無視して投下していただいて構いませんので
732
:
◆ymCx/I3enU
:2015/08/01(土) 21:15:38
投下乙です
AKYSが教え子の為とは言えゲームに乗るなんて!
星君のニコニコ大百科を覗いてみたら草が生えた
733
:
魔法少女育成計画twilight
◆TOWNwDBZa.
:2015/10/14(水) 02:24:04
◆
「ある魔法少女を探してる」
日本中を渡り歩いた。
星が導くままに、街の隅々を探し求めた。
けれどあの子はいなかった。
やがて、あの子がもうどこにもいないことを知った。
でも、人探しが終わったわけじゃない。
あの子の代わりになった、どこかの女の子を探している。聞きたいことがある。
だから、私はその魔法少女に会わなきゃならない。
そうしなきゃ――終われないんだ。
新番組!『星に引かれてPleiades』
最終話「流れ星」
なあ、キミはあの時――
◆
規制されたのでひとまずこちらに。
続きは解除次第あっちにも落としておきます。
本編は今週中に……できたらいいなあ。
734
:
◆84AHk0CknU
:2015/10/14(水) 04:15:00
新ロワ投下乙です!
クオリティ高くてすげぇ面白そう(こなみ)
735
:
◆YOtBuxuP4U
:2015/11/10(火) 22:52:54
ageまして投下します
736
:
◆YOtBuxuP4U
:2015/11/10(火) 22:57:27
小まとめ(前回がかなり前なので正直自分でもあまり覚えてない……)
・四字熟語バトルロワイヤル……ゲーム終了済み
・娯楽施設は夢の中だった
・紆余曲折は優勝したので、主催者を殺しに来ている
・主催者は天飼千世という文字で、いろいろ思惑があったらしいが……?
737
:
46◇おはなし3
◆YOtBuxuP4U
:2015/11/10(火) 22:58:55
この世界に生まれ描かれた時、天飼千世は一人だった。
どこかも分からぬ研究室に、気が付けば文字は存在していて。
天飼千世を生み出した「何か」あるいは「誰か」は、どこかへ消えてしまっていた。
ただ自分が文字であることと、文字なのに人間の姿をしていることだけが分かって、
そのアンバランスさに天飼千世は戸惑い、不安を覚え、自らの未来を憂いに憂いた。
どうすればいいのか。何をすればいいのか。この先、何が起こるのか。
知りたくなって。
気が付けば天飼千世の視界には、《1000パターンの未来が映っていた》。
はっきりと、見えていた。現在点、現在状況からの――《天飼千世の、結末》。死の瞬間の千が。
「正直言って、最初の《1000》は、全く好いものではなかったよ」
天飼千世はその《結末の羅列》によっていくつかの事を知ることになった。
天飼千世の血が虹色であること。
食事を取らずとも生きていけること。
年も取ることはなく、身体が衰えるということもないこと。
身体を動かせばその身体能力は、人間の限界以上まで引き出せること。
そして、心臓を貫かれれば……人間の身体と同じように、普通に死んでしまうこと。
それが分かったのは天飼千世が多くの《結末》で血を流していたからだ。
《結末の1000》のうち1000全てが、天飼千世の死を予見していた。
発見され、実験動物にされた果ての死。
気味悪がれ、化け物扱いされた果ての死。
見つからないよう逃げ続け、孤独に耐えきれなくなって自ら選んだ死。
近くて数年後、遠くて千年後、どのパターンであろうとも、
天飼千世はその生き様の中で、弄ばれ、苛まれる結末に至るようだった。
「ふふ、分かってるよ。もともと学者だしね、論理的に考えたらそうなることくらい分かってた。
ヒトの形をしてても、文字はあくまで文字。ヒトじゃない。
そんな「にせもののばけもの」がいつまでも楽しく暮らそうなんて、できっこないって、普通はそうなる」
でも。
「だからこそ、天飼千世は望んだ。……アナタとおなじように。
たとえ何を犠牲にしようとも、自らが楽しく生き続けることを望んで、選んだ」
738
:
46◇おはなし3
◆YOtBuxuP4U
:2015/11/10(火) 22:59:32
天飼千世は、そんな未来を否定した。結末を棄却した。
戦うための資料は近くにあった。
天飼千世を生み出すために、重ねられた実験の資料の数々。
それらは何年もかけたらしいわりにはお粗末なものだったが、参考にはなった。
虹色の血で描いた文字を誰かに解釈してもらえば、それが力になる――ルール能力のシステムことはここで知った。
任意の《未来》は見えず、《自己の結末》だけだったが、《1000の未来》も参考になった。
たとえば、天飼千世が殺される《結末》なら、その殺害者は知ることが出来る。
それ以外にも、多くの場合天飼千世は、誰かを恨みながら死んでいた。
その恨み言に浮かんだ名前も、ヒントだった。天飼千世が生き抜くために邪魔になる者は、リストアップできる。
天飼千世自身には、《未来が見える》以外になんの力もない。
しかしその血液で綴った文字に力を持たせれば、何だって出来る。誰とだって何とだって、戦える。
そこまでは、分かった。
だけどそれでも、そう簡単には未来は変えられなかった。
「いくつかの可能性で、天飼千世を拘束し、研究施設に売り渡す役をする教授がいた。
人間だったころの「天飼千世」の恩師だったらしいけれど、天飼千世にとっては害成すものでしかない。
殺すことにして、いくつかの文字を用意した。自らの身を護り、相手を確実に殺すための、文字」
天飼千世が懐から紙を三枚取り出す。
虹色のインクで描かれているのは、
《八方美人》、《高論卓説》、そして、《生殺与奪》。
「たとえば、アナタの銃弾を避けたのは、《八方美人》の解釈能力。
これは《所有者と会話をした人は、その後、所有者を殺せなくなる》強力な能力で――」
と、天飼千世は《八方美人》の紙に手を伸ばしてきた少年からひらりと紙を躱す。
少年はなおも追いかけようとするが、硬直する。《椅子から身体が離れない》のだ。
「ふふ、油断も隙もないね。こちらにも、ないけれど。
今体感している通り、アナタを椅子に座らせたのは、《高論卓説》。
《所有者が説明している間、聞いてる人を卓から離れられなくする》解釈能力だ」
ならばと耳を塞ごうとする少年を、天飼千世は愛しそうに見つめる。
指でふさいだ程度では完全に声を遮断など出来はしない。
鼓膜を潰せばいいが、そのディスアドバンテージを負うリスクを少年は「まだ」取れないだろう。
そこまでは考えただろう上で、なお試行をためらわない少年が、天飼千世にはかわいく見えた。
だから? いや、だからこそ。
天飼千世は最後の文字まできちんと説明し、少年に対等を押し付ける。
「そしてアナタから銃を奪ったのが、《生殺与奪》の解釈能力、だよ。
これによって天飼千世は、《目の前の一人が持っている、命を含む持ち物の所有権を、握ることが出来る》」
「……」
739
:
46◇おはなし3
◆YOtBuxuP4U
:2015/11/10(火) 23:00:10
「まあ、これはあくまで例であって、実際その時は他の文字で殺したんだけど」
話しを戻そう。
天飼千世はそこまで言って一旦言葉を区切ってから、上を向いて言った。
「言ってしまえば。障害を殺した程度じゃ、たいして変わらなかったんだよね。
得るものはあったけれど、この方法は明らかに効率が良くなかった」
未来を変えることの、難しさ。
予知能力者のジンクスとでも言うべき現象は、どんな生命にも平等に発生した。
天飼千世がその《結末》に影響を与える・与えるであろう存在を排除したとしても、未来は好転しなかった。
恩師たる教授を殺した天飼千世が見たのは――およそ二百の《結末》が、別の《結末》に差し替えられる瞬間だった。
でも、差し替えられた先も望んだ《結末》ではなかった。
なにせたった一人の文字に対して、人間は七十億いる。
一人を未来から消したところで、《結末》に現れる名のリストには、代わりの誰かが入ってくるだけだった。
好転ではないが、変化といえば変化はあった。
殺害のために「解釈能力つきの文字」という武器を手に入れたことで、天飼千世が殺される確率は減ったのだ。
「未来は人を殺すより、文字を増やした方がよく変わった。
天飼千世はそこに希望を見出して、まず「使える」文字を増やしていった」
天飼千世は文字を増やすことにした。
ルール能力を纏い、天飼千世単体の戦力を強化していく。
誰にも邪魔されないように。誰にも止められないように。銃火器でなく理論でもなく、文字で武装をしていく。
結果、少し経ったころにはもう、
《1000の未来》の中に天飼千世が殺される《結末》はほぼ存在しなくなった。
「そしたらそこで、終わりかなと……天飼千世も思ったよ。
でも、終わりじゃない。《死の結末》が1000パターン見えているということは、結局は死ぬということで。
殺されることは一切なくなった代わりに、
今度は、“天飼千世のせいで人類が滅ぶかもしれない”ことになっていたんだ」
そりゃあそうだよね、と天飼千世は呆れ笑いする。
当たり前の話だ。
人類がどう頑張っても倒せない存在が居るのであれば、それは人類の敵だ。
敵として認定され続け、戦いに直面し続け……気が付くと人類が滅んでいたパターン。
あるいは畏れられ、崇められるというパターンもあった――しかし天飼千世の血が「文字の力」を生む以上、
天飼千世が存在する限りその「力の使い方」をめぐって争いは絶えなかった。
740
:
46◇おはなし3
◆YOtBuxuP4U
:2015/11/10(火) 23:01:04
常に銃口を向けられるか、常に顔色を伺われるかの、二択。
そんな未来は天飼千世は望んでいなかった。
望んでいるのは、安寧と、退屈しない世界。ただそれだけなのに。
殺されなくなった先の《1000の未来》では、天飼千世はすべてに嫌気がさして、
人類を滅ぼしたあと、または一人でひっそりと、自決することを選んでしまっていた。
「ここに至って――天飼千世は気付いてしまった。文字が1人きりである限り、望む幸せは訪れないのだと。
個人ならともかく、人間全体と分かりあうことなんて、文字には出来ないのだと。
そこで、天飼千世は手詰まりを感じて……《文字に話しかけた》。初めて助けを、求めた」
すると不思議なことに……《文字が人になった》。
「天飼千世が《文字をヒトにする》ルール能力に気付いたのは、ここからだ」
・
・
・
・
文字をヒト化することで、その文字はほぼ完全に天飼千世の支配下に置くことが出来る。
ヒト化させた文字に意識を与えるかどうかのオン・オフ権限は、天飼千世が握っていたからだ。
絶対に刃向かうことのない駒は、それでいて自分ではなく、ヒトとしての意識も持つ。
それはとても平和で。
しかも退屈しないことができる。
天飼千世にとって、素晴らしい発見だった。
「それだけじゃない。《ヒトを文字に挿げ替える》ことで、
天飼千世は未来の《1000》に対して新たなアプローチが出来るようになった」
これまでは、天飼千世の邪魔となる因子を天飼千世は殺すことしかできなかった。
しかし《文字のヒト化》は、《ヒトを文字へと挿げ替える》方法とも呼べるものだった。
つまり。
天飼千世のジャマをするヒトをただ殺すのではなく、しかし《文字のヒト化》は、《ヒトを文字へと挿げ替える》方法とも呼べるものだった。
つまり。
天飼千世のジャマをするヒトをただ殺すのではなく、
それをそのまま《文字にして》、「こちら側」にしてしまうことで。
ヒトそのものの外形を殺さず、それがもたらす未来だけを殺すことができるようになったのだ。
「《未来は減った》。結末を導く因子を《文字へ替える》たびに、
1000あった未来は、900になり、800になった。
それは、減った分の未来可能性線では、《結末が訪れない》ことを意味する。
天飼千世が生き続けられていることを意味する。
天飼千世にとっての理想の未来が、ここにきてやっと導けるようになったんだ」
741
:
46◇おはなし3
◆YOtBuxuP4U
:2015/11/10(火) 23:01:41
そうとわかれば後は効率化だ。
文字をヒトにするためにはヒトに文字を与えて歴史を刻まなければならないのは、すでに語った。
それを最も効率よく行えるのは殺し合いであることも説明済みだ。
あとは、「天飼千世にとって障害となる沢山の因子、
および因子へ影響を与えることができる周囲の人物」からランダムに人間を選び取り、集めて殺し合わせるだけだ。
次へ生かすため実験データを取り、かつ死んだ因子は《文字へと挿げ替え》ることで未来を良いものへ替える。
文字の仲間も増え、殺し合いの中継と管理で天飼千世は退屈せず、
さらに新たな戦闘向けの解釈能力が手に入ることで天飼千世の戦力はさらに充実する……。
「お陰さまで、残りの悪い未来は400を切った。でもまだまだだ。
《1000の未来》のどれにたどり着くかは、平等じゃない。天飼千世の予測では、
残った400の未来のどれかにたどり着いてしまう確率の方がまだ多い。
ここに至って、ただ《文字に挿げ替える》だけでも未来が変わりにくくなった。
未来は減った、減ったけれど、この方法だけで可能性を全て消すには、足りないらしい」
決定的な何かが必要なんだ、と天飼千世は言う。
「そこで――勇者だ」
勇者。
天飼千世に対して因縁を持ち、自分から天飼千世を殺しに来る存在。
それが400を1にする、鍵。
「天飼千世はそれまで殺して文字に変えていた“殺し合いの優勝者”を、ここ数回は野に放つことにした」
それどころか、自分の目的を伝え、弱点すら伝え、殺しに来るように仕向けた。
するとどうなったか。
情報が共有され、単純に天飼千世の死亡確率が上昇する? そんなことはない。
四字熟語の殺し合いが行われているなどそれこそ都市伝説めいた話、簡単には信じられない。
“殺し合いの優勝者”は自然、一人で天飼千世に立ち向うことになる。
優勝者が増えて徒党を組むこともあろうが、それでも数人。
その数人だけが――天飼千世を倒すすべを知っていて。
いずれ訪れてしまう天飼千世と人類の終末戦争に、参加せざるを得ないとなれば。
742
:
46◇おはなし3
◆YOtBuxuP4U
:2015/11/10(火) 23:02:19
「人間ってのはさ、誰かが代わりにやってくれるなら、自分は後ろに下がる生き物なんだよね。
そのくせその誰かが失敗すると、自分がやってすらいないのに非難して悲観する。もうそれは出来ないものだと思いこむ。
学習能力が高いというのも考え物だ。押し付ける術を、生贄を作る術を、理性が心得てしまっている。
さらに押し付けられたほうは押し付けられたほうで、それが自分にしかできないことであるならば、
やらなければならないのではないかという義務感を感じてしまったりする。よく出来ているよ、本当に」
勇者がいるならば、勇者に任せて人類は後ろから見るだけになる。
400ある結末は「勇者との戦い」というひとつに集約する。
さらに、その勇者がひどく、とにかくひどく、無惨にやられれば――折れる。
「まあ、そうゲームのように単純にはいかないから、いまはバランス調整の段階だけれど。
アナタで何人目だったか――“勇者”たちはすでに、天飼千世を倒そうと動いてくれているよ。
それによる未来可能性線の減少も天飼千世は確かに感じている。進歩がある。とても嬉しいことだ」
なにより殺し合いの優勝者をそのまま勇者とする発想がよかったかもしれない――と天飼千世は述べた。
「――だって、理不尽に開催した殺し合いを生き抜いてくれれば、間違いなくこちらを恨んでくれるからね――」
・
・
・
・
「そろそろ、まとめてもいいですか?」
と、紆余曲折は言った。
長く身の上を喋っていた天飼千世に対して、ずっと興味なさそうな顔で話を聞いていたが、
ここでついに言葉を差し挟んだ。
「ん? ああ、いいよ? 長話してすまなかったね、しかも一方的に。そうだなあ、アナタの意見も聞きたいかな。
今の話、まあすべて本当な訳だけどさ――どう思った?」
「そりゃあもうあれですよ」
当たり前の反応であるかのように嫌そうな顔をしながら一言、紆余曲折は斬って捨てるように言う。
「うだうだ言って周りに迷惑かけてないで勝手に死ねとしか言いようがありません」
743
:
◆YOtBuxuP4U
:2015/11/10(火) 23:03:33
つづきは11/14までに頑張ります。
744
:
◆ymCx/I3enU
:2016/01/12(火) 00:14:21
チャットの方にも書きましたがこちらにも一応
Part36が一杯になったのでPart37立てました
ttp://hayabusa6.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1452525053/l50
745
:
◆84AHk0CknU
:2016/02/04(木) 17:47:46
規制されそうなのでこっちに投下します
746
:
パラレルワールド から の 刺客
◆84AHk0CknU
:2016/02/04(木) 17:54:07
【全てが終わったあと】
「ふえ〜…」
「え、何これは(困惑)」
神によって引き起こされた殺し合いゲーム。
その会場にある住宅地が密集したエリアで、MURと未央は困惑の声を出した。
彼等は地図に載っていた野獣の自宅を最初の目的地とし行動開始。
しかし、野獣邸に近付くにつれ轟音が響き閃光が煌くのが確認できた。
何が起こっているのか分からず、慎重に近付いた二人の前には驚きの光景があった。
原形を留めない程に破壊されたクッソ哀れな野獣邸。
その破壊の巻き添えを食らったであろう近辺の家々。
頭部が潰れたスイカのようになった人間の死体。
そして、その惨状の真っ只中に立つ黒い巨人、その肩に乗る黒尽くめの男と背負われた少女。
男が困惑する二人に気付いたのだろう。巨人の肩から飛び降り近付いてくる。
すると奇妙なことに巨人は黒い影に包まれるようにして消えてしまった。
その現象に呆然とするMURたちの下へゆっくりと近付く黒尽くめの男。
男の存在にハッと意識を戻したのか、MURが静止の声をかける。
「あっおい待てぃ(江戸っ子)。俺達はこの殺し合いに乗ってないゾ。あんたはどうだ?」
万一男が乗っていた場合直ぐに銃を向けられるよう密かにグリップを握るMURと、特に警戒することもなく不思議そうな目を向ける未央。
男は歩みを止めじっと仮面越しに二人を見据える。背中の少女は気を失っているのか、先程からピクリとも動かない。
やがて男はため息を吐くと疲れたように言った。
「そう警戒するな。こちらも殺し合いに乗ってはいない」
◇
【全てが終わるまえ】
「ここまでだゼロ!諦めて大人しくするんだ!」
扇要は黒の騎士団の元リーダーであり、今は裏切り者となったゼロへ銃を突きつけ叫ぶ。
この卑劣な悪魔へ正義の弾丸を撃ち込むべく引き金に力を込める。
「ヒエー!」
奇声を上げながら咄嗟にベッドの脇に身を隠すゼロ…否、ひで。
間一髪銃弾は左腕を軽く掠めた程度に終わった。
腕の痛みに顔を顰めるひでにしてみれば何がなんだか分からない。
何故知らない男にいきなり撃たれなければならないのか。あのモジャモジャ男は自分を誰かと勘違いしているのだろうか。
「無駄な抵抗はやめろ!」
しかし、ひでの困惑など知ったことではないとばかりに扇は再び引き金を引く。
弾は意外と薄かったベッドを貫通しひでの頭部へ当たった。
おじさん家のベッドは実は安物だった可能性が微レ存…?
747
:
パラレルワールド から の 刺客
◆84AHk0CknU
:2016/02/04(木) 17:55:54
「ア゛ッ!」
仮面で貫通は防いだものの衝撃までは殺せなかった。
痛みに悶えながらひでは思う。何故自分がこんな目に遭わなければならないんだろうか。
何故あのモジャモジャ野郎はこんな可愛い(ヴォエ!)自分に惨い仕打ちをするのだろうか。
沸々と怒りが湧き上がるひでへ、扇はトドメを刺すべくベッドを乗り越え銃を向ける。
しかし――。
「痛いんだよォォォォ!!」
叫びながらひでがBARを勢い良く振り回す。
思わぬ反撃をマトモに受けベッドから転げ落ちる扇。
痛みに耐えながら立ち上がろうとするが、今度は顔面をBARで殴り飛ばされる。
「ガッ…!」
相当堪えたのか扇は殴られた箇所を押さえ呻き苦しむ。
その隙にひでが奇声を上げながら外へと逃げ出す。
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!」
「ま、待て…ゼロぉ……!」
静止の声も無視し全速力で虐待おじさん宅を飛び出したひではそのまま一目散に駆けて行く。
追いかけようにも打ち所が悪かったのか、扇はそのまま気を失ってしまった。
◇
野獣邸にてゼロは探索を続けていた。
しかし1階と2階、ついでに屋上も見て回ったがこれといって目ぼしいものは見つからなかった。
強いてあげれば意外と広い家である事と、冷蔵庫に大量のアイスティーが入ってた事くらいか。
(わざわざ地図に名を載せるくらいだ。他の家とは違う何かがあると思ったが…)
その考えは無駄だったらしい。尤もそれ程期待していた訳ではないが。
野獣邸という名前から推測するに、名簿にあった野獣先輩なる人物と関係があるのだろうか。
チラリとリビングを覗くと未だ目を覚まさない雪華綺晶がソファで横になっている。
(そろそろ動くべきか)
残る地下室を調べたら、彼女を起こし今後の方針を決め移動する。
そう考えつつゼロは地下への階段を下りていった。
扉を開けるとこれまた意外と広い地下室があった。
歩きながらざっと見回すと奥にあるベッドに何かが置いてあるのを見つける。
近付いて確認するとそれは袋に入った白い粉と何冊かのアルバムだった。
「…やけに大きい枕だな」
クソデカ枕くんへ訝しげな視線を向けつつアルバムを開いてみる。
そこには浅黒い肌の青年と角のようなモノが生えた少女、中年の男女の4人が仲睦まじげに写っている写真が貼られていた。
少女の角が気になったもののそれ以外はごく普通の家族写真だ。写真の背景が今居る野獣邸ということはこの4人の内の誰かが野獣先輩なのだろう。
他のアルバムも同じようなものでページをパラパラと捲り流し見ている。が、最後の一冊には別の人物の写真があった。
リビングのソファに座っている浅黒肌の青年と、顔長の見知らぬ青年が何かを話している写真。
屋上で二人揃って肌を焼いている写真。
(待て、この男……最初に殺された奴か)
あの薄暗い部屋で神々しいロン毛に詰め寄り、見せしめに殺された男。名前は確か遠野だったか。
となると遠野と親しげにしている浅黒肌の青年が野獣先輩であり、最初の部屋で悲痛な叫びを上げていた本人なのだろう。
と、次のページでは野獣先輩が飲み物に白い粉をサーッ!(迫真)と入れている姿が写されている。
748
:
パラレルワールド から の 刺客
◆84AHk0CknU
:2016/02/04(木) 17:58:26
「ん?」
思わずベッドの上の酷似したものを見る。
そしてページをめくる毎にその後の出来事がはっきりと分かった。
気分が悪くなったであろう遠野に肩を貸す人間の鑑先輩。と思いきや地下室で拘束しレイプする人間の屑。
語ることのできないクッソ汚いアレコレが続いていき、目が腐るようなイキ顔を晒し、最後は幸せなキスをして終了。
「……」
無言でアルバムを閉じ乱暴に投げ捨てるゼロ。
いくつかの情報は得られたがそれ以上に汚くて不要な物が多すぎる。というか一体誰がこんなおぞましい場面を撮影したのだろうか。
こんなんじゃ思い出のアルバムになんないよ、こっちの事情も考えてよ(棒)
そろそろ戻るかと思った時、大声が上の階から響く。
それを耳にした瞬間ゼロは急いで地下室を出た。
◇
時間を少し遡る。
扇から全速力で逃げたひでは野獣邸の前で荒い呼吸を整えていた。
そのあからさまな疲れてますアピールは非常に演技臭かったが、多分本当に疲れてるんだろう。
「ねーもうほんと暑い…」
愚痴を零しながらひでは休息の為野獣邸に入る。
歩きながら汗でグショグショになった服と半壊した仮面を脱ぎ捨てブリーフ一丁となる。深夜の冷気が火照った体を程よく冷まして気持ちが良い。
恐らくはこの衣装のせいであのモジャモジャが勘違いをしたのだろう。
最初に見つけた時の嬉しさは消え去り、今はただ忌々しいという感情しか湧かない。
デイバッグからペットボトルの水を取り出し豪快に飲み干す。
「あ〜」
小学生というよりオッサンのような声を出し奥へ進むと、ソファに横たわる少女を見つけた。
さっきのモジャモジャの件もあるだけに一瞬緊張で固まる。
BARを構え警戒しながら歩み寄るが、相当近くまで来ても全く反応しないので一旦銃を下ろす。
「ここ、このお姉さんのお家なのかなぁ?」
この奇妙な場所に連れて来られてから出会ったのは、いきなり発砲する危険なモジャモジャ野郎のみ。
当初は自分へのサプライズか何かだと思っていたひでも、流石にこの地が異常な場であると感じ始めていた。
眠っている少女からはモジャモジャのような危険な感じは無かったので、安心して話ができると思った。
「ねーねーおねーさーん。起きてよー」
少女の体を揺すって声を掛けるが反応はゼロ。
時折小さく声を漏らすがよほど深い眠りに落ちているのか、一向に目を覚ます気配はない。
「もー!起きてったらー!」
目を開けない少女に業を煮やしたひでは先程よりも強く服を掴み揺する。
しかし、BARを軽々と振り回す剛力(某女優は関係ないだろ!)で強く揺すったせいで少女の衣服が破けてしまった。
胸から腹部にかけてがほぼ丸見えな少女と、両手にある衣服の切れ端を交互に見てポカンと口を開けて眺めるひで。
暫くすると小学生特有のキラキラとした目で少女の身体を見やる。
「ワーオ!大人のおっぱい始めて見た〜。ツンツン」
小学生男子特有のスケベ心で少女の大き目の乳房を指で突く。
更には柔肌に自分の頬を滑らせたり、形のいい臍を指でいじったりとやりたい放題な人間の屑。
だが調子に乗って少女の体を触りまくったせいか、それが彼女の目覚めを促すことになる。
「んん……」
少女――雪華綺晶が目を覚まして最初に感じたのは体の違和感。
お腹と胸の辺りが妙に冷える。
それに誰かの吐息のようなものを顔の近くに感じる。
(ゼロさん…?)
直前まで一緒に居た仮面の魔人を頭に浮かべつつ目を開けるが。
「――――――え」
749
:
パラレルワールド から の 刺客
◆84AHk0CknU
:2016/02/04(木) 18:01:15
次の瞬間寝ぼけ半分だった彼女の意識は急速に覚醒した。
見知らぬ家で歯茎をむき出しにして笑う気味の悪いパンツ一丁の男が自分の体を弄っている。
おまけに自分は服が裂かれていて上半身はほぼ裸。
「あ、起きたんだ〜」と言う変態の声が耳に入った途端、一気に嫌悪と恐怖が湧き上がった。
「っ!?や、やだっ!離してっ!」
「わわっ!?」
変態ことひでを必死に引き離そうともがく。
相手が突然暴れた事に戸惑いつつも、ひでは雪華綺晶に覆い被さったまま離れようとしない。
不思議そうに顔を近付けるが雪華綺晶にとってはただただ嫌悪感を引き起こすだけだった。
必死に顔を逸らし空いている方の手で平手打ちをした。
「いやぁ!」
「ぶえっ!」
頬を叩かれたひでは体をよろめかせた挙句、受身を取れず床に頭を打ちつけ悶絶する。
雪華綺晶は未だ恐怖でガクガクと震える体を動かし、ひでから逃げるため立ち上がろうとする。
が、その前に憤怒の形相をしたひでが立ち塞がり、絶叫と共に雪華綺晶の腹部目掛けて蹴りを叩き込む。
「痛いんだよォォォォ!!」
「あぐっ…」
「お前もあのモジャ公と一緒かよぉ…。ちょっと悪戯しただけだろ……。ふざけんなよもぉ…(小声)」
痛みに崩れ落ちる雪華綺晶へひでが悪態を吐きつながらBARを手に取る。
ここには親友のたるとや、優しいゴーグル先生のような人達は居ない。
変わりに居るのは自分を傷付けようとするゲスゥイ!大人ばかりだ。
「お姉さんが悪いんだにょ。僕をぶったりするからさぁ!」
どう考えても100%ひでが悪いんだよなぁ。
そんな悪い大人は良い子の自分が倒してやると意気込むひでの顔には狂った笑みが張り付いている。
怯える雪華綺晶を見下ろし、ブリーフ一丁でゆっくりと銃を構える姿はまさに狂人だ。
「お姉さんさっさと消えちくり〜」
尤もその歪んだ意気込みは―――
「貴様が消えろ只人が」
駆けつけた魔王によって呆気なく阻止されるのだが。
「ダイナマイッ!」
自身の放った拳による一撃でガラスをぶち破り、奇声を上げて外へ吹き飛ぶホモガキを無視し、ゼロは同行者の少女の安否を確かめる。
「無事か雪華綺晶」
「ぇ…あ、ゼロ、さん……?」
「あの男は私が撃退した。立てるか?」
「…………」
「雪華綺晶?どうし――」
その問いに答えず雪華綺晶は俯き、装甲に包まれたゼロの右腕を強く掴む。
その行動に一瞬戸惑うゼロだが、掴まれた腕を通して彼女の震えが伝わるのを感じ、開きかけた口を閉じる。
破かれた衣服を見るにあの変態に何をされたかは聞くまでもない。
人を捨てたゼロだが人の痛みが分からない訳では無い。掴まれるまま雪華綺晶が落ち着くのを静かに待った。
暫くして雪華綺晶が弱弱しくも顔を上げた。
顔色は決して良いとは言えないが、震えは大分治まっている。
「落ち着いたか?」
「はい……ありがとう、ございます」
「気にするな。…これから移動しようと思うが大丈夫か?」
「大丈夫、です。姉さん達だって危ない目に遭ってるかもしれないですから、急がないと」
そう。危険に晒されているのは自分だけではない。
こうしている間にも姉達や友人が危険人物に襲われているかもしれないのだ。
ならば一刻も早く探さなければと立ち上がる。
だが、神はどこまでも彼らに厳しかった。
「そこまでDA!ジュラル星人め!」
750
:
パラレルワールド から の 刺客
◆84AHk0CknU
:2016/02/04(木) 18:03:23
◇
時を更に遡る。
気絶から覚めた扇要は痛みが残る体を動かし外へ飛び出した。
しかし既にゼロ(ひで)の姿は見えず、逃げられる形となってしまった。
「クソォォォ!!もう少しで奴を殺せたのに…!」
悔しさと痛みで顔を歪めるも、時計を見てまだそう遠くへは行ってない筈と思い直す。
扇は憎悪を滾らせ強く握り締めた銃を片手に、あの悪魔を始末するため走り出す。
と、その直前彼に待ったが掛かる
「あのーすみません」
突然背後から声を掛けられ驚きながら振り向く。
どうやらゼロの抹殺に意識が行き過ぎて周囲への警戒が疎かになっていたようだ。
騎士団の幹部がこの様ではいかんと首を振り目前の参加者を見る。
「君は…」
「僕は泉研っていいます。この殺し合いを開いた奴を倒そうと思ってます」
泉研と名乗った日本人の少年。デカデカとKのマークが付いた黄色の全身スーツというおかしな格好だ。
だがその決意に満ちた目は、大人の扇をして只者ではないと思わせるだけの熱いなにかが秘められている。
こんな小さな子まで巻き込む主催者に怒りを抱きつつ、研に名乗り返す。
「研君か。俺は扇要だ。俺もこんな残虐な事をするあの男は許せないと思ってる。ヨロシクな」
「ハイ!ところで扇さん。何だか急いでるみたいでしたけど」
「ああ、まぁな…」
流石にこんな小学生ほどの少年に騎士団内部でのゴタゴタを話すのは躊躇われるのか、扇は言い辛そうにする。
なので危険人物が逃げたという事だけを伝えることにした。
「それと、信じられないと思うけど奴はギアスっていう危険な能力を使うんだ」
「ギアス?」
「ああ。ギアスを掛けられた人間はどんな命令も聞く奴の操り人形にされてしまう。恐ろしい能力なんだ…!」
「な、なんですって!?」
「だから研君。俺は一刻も早く奴を追って――――」
「ジュラル星人の仕業に違いない!」
「――はぇ?」
「ギアスなんて恐ろしい力を使うのはジュラル星人以外には考えられない」
「け、研君?」
「そしてこの殺し合いを開いたのもジュラル星人だ。許さないぞ!」
「け、研君少し落ち着いてくれ!というかその、ジュラなんとかって何だ?」
唐突に意味不明な事を言う研に扇が静止の声を挟む。
困惑する扇へ研がジュラル星人の事を熱心に説明する。
曰く、地球侵略を目的とした宇宙人。
曰く、ジュラルの科学力は地球よりも500年進んでいる。
曰く、この殺し合いもジュラルが邪魔な地球人を殺すために開いたもの。
曰く、ギアスとかいうのもジュラルが新たに開発した装置か何かにより手に入る力。
曰く、自分はそんなジュラル共を滅ぼす使命を背負ったヒーロー、チャージマン研である。
「という訳なんです。だから扇さん、そのギアスを使うジュラルは僕が追いかけて滅ぼしてみせます!」
「い、いや研君、幾らなんでも」
751
:
パラレルワールド から の 刺客
◆84AHk0CknU
:2016/02/04(木) 18:05:12
有りえない子どもの妄想と言い掛けるが、ふと本当にそうだろうかと考え直す。
そもそもギアスという能力自体が冷静に考えればありえないオカルトの産物ではないか。
だがルルーシュは実際にその能力を我が物としている。
(それに俺がここに居るということ。これだってよく考えればおかしいじゃないか)
第四倉庫でルルーシュがヴィンセントに連れられ逃げるのを見たその直後に、あの薄暗い会議室に自分は立っていた。
カレンや藤堂など多くの団員が居たあの倉庫から、あんな一瞬でどうやって拉致できるというのか。
それこそ研の言うジュラルの超科学でも無い限りは……。
「じゃ僕、先に行くよー」
「へ?あっおい!」
頭を悩ませる扇を放置して研はズンズンと進んでしまった。
その後ろを扇は慌てて追いかける。
本当にジュラルが関わっているかどうかは不明だが、仮にそうだとしてもゼロを殺す事に変わりはない。
それに大人として子ども一人を危険な場所へ向かわせるなんて以ての外だ。
あの卑劣極まりないゼロなら、相手が幼い子どもだろうと容赦なしにギアスで手駒にするに決まっている。
(そんな真似は俺がさせない。奴を殺し本当の日本を取り戻してみせる!)
研に追いつき暫く歩いた先で、扇たちの前に人間が吹っ飛ばされてきた。
何故かブリーフ一丁の男は驚く二人の前でどこか嘘泣きっぽい泣き方で、痛みと苦しみを訴えている。
「うぅ……ぐすっ」
「どうしたの君?誰かにいじめられたの?」
「あ、あっちで変な仮面の奴に…」
仮面。その単語を聞き扇の顔色が変わる。
研は既にブリーフ男が指差した方へ走り出していた。
「なぁあんた大丈夫か!?仮面の奴にやられたって本当か!?」
「う、うん。本当だ……ゲッこいつかよ(小声)」
「え?今なにか「なんでもないよお兄さん!」」
ブリーフ男改めひでは扇に聞こえないように悪態を吐く。
よりにもよってまたこのモジャモジャ野郎に遭遇するとは何て不運なのだろう。
幸いあの衣装を脱いでいるお陰で向こうからは初対面と思われているが。
「あんた立てるか?」
「う、うん。何とか」
「そうか。すまんが俺はあの子を追わなきゃならない。だから」
「分かった!安全な所に隠れてるね!」
勘違いとはいえ自分を撃ったクサれモジャモジャ男と一緒に居たいはずがない。
最早自分の小学生設定を半ば忘れつつ、立ち上がり素早くその場を後にするひで。
彼の耐久力は並大抵のものではない。あの筋肉質なボディは決して飾りではないのだ。
意外と元気な姿に驚いた扇だが、あの様子なら大丈夫かと急ぎ研とゼロが居る所へ走り出した。
◇
752
:
激突!チャージマンvs魔王
◆84AHk0CknU
:2016/02/04(木) 18:11:17
泉研は激怒していた。
殺し合いなどという卑劣な催しを行うジュラル星人に。
ギアスとかいう能力で人間を陥れるジュラル星人に。
当然GOもゼロもジュラル星人ではないのだがそんな事研は知らないし、知ったとしても絶対に信じないだろう。
何せ彼の周囲で起こる奇怪な事件は全てジュラル星人の仕業だったのだ。
故に無関係の人物や事件までジュラルの仕業と断定してしまうのも仕方ない事なのだろう。
「その人を放せジュラル星人!」
今研の前には見るからに怪しい黒尽くめの怪人が存在する。
扇が言っていたギアスを使うというのは間違いなくこいつだろう。こんなふざけた格好の奴は間違いなくジュラル星人だ。
しかもジュラル星人のすぐ傍には衣服を引き裂かれた少女の姿もある。
ジュラルというだけでも許せないのに、女性に乱暴までする輩など生かしてはおけない。
今すぐ自分が滅ぼさなくては。
「待て。何か誤解しているんじゃないか?」
一方ゼロと雪華綺晶からすれば訳が分からない。
いきなり出てきたかと思えば、こちらをジュラル星人とかいう意味不明なモノ扱いする全身黄色の少年。
何か勘違いをしているのではと思い問いかけるが、向こうは知ったことかとばかりに睨み付けてくる。
「チャージングGO!!」
右手を上げ高らかに叫ぶ研。
すると全身スーツのKマークがVへと変化し、頭部にはヘルメットが装着される。
ジュラル星人を抹殺する正義のヒーロー、チャージマン研への変装がここに完了した。
「さぁジュラル星人覚悟しろ!」
右手に握られた光線銃アルファガンをゼロへ向け、台詞と共に引き金を引く。
ゼロは雪華綺晶を抱え黄色の光線を回避、そのまま玄関まで走り外へと出る。
雪華綺晶を下ろすと追いかけてきた研へ向き直る。
「逃がさないぞジュラル星人め」
「話を聞け」
753
:
激突!チャージマンvs魔王
◆84AHk0CknU
:2016/02/04(木) 18:13:40
今度はヒーローよりも魔王の方が速かった。
言い終わるや否や超人的な速度で走り出し拳を振るうが、研はガドロシューズから炎を噴出し上に避ける。
しかし研が上昇し切る前に跳躍し再び拳を繰り出す。
研は咄嗟に両腕でガードするが、思ったよりも強力な一撃に吹き飛ばされる。
好機を逃さずゼロが追撃しようと近付くが、研はガドロシューズから先程よりも勢いよく炎を噴射し牽制、相手が怯んだ隙に体勢を直す。
「これでどうだ!」
研が再びアルファガンを撃つが、発射された光線をゼロはギアスを発動させた光る掌で掻き消す。
驚愕する研だがすぐに顔を引き締め光線を連射する。
だがその全てがゼロの光る掌で消滅させられ、またしても距離を詰められる。
研に装甲で覆われた脚で蹴りが襲い掛かるも紙一重でそれを交わし、逆に一撃殴りつけた。
「ほう、中々やるな」
だがその一撃は呆気なく掴まれた事で防がれてしまい、そのまま研を投げ飛ばそうとする。
が、その前に研は腰のビジュームベルトから光線を発射、予期せぬ一撃をモロに食らったゼロは研を掴んだ手を離してしまう。
解放された研はビジュームベルトを更に回転させ竜巻を発生させ、ゼロの動きを封じた。
「ここまでだジュラル星人!」
研は今度こそ勝ちを確信し竜巻の中のゼロへ銃を向ける。
しかし引き金が引かれるよりも先に、ゼロはギアスを発動させ竜巻を消滅させた。
あらゆるエネルギーを無に還す己のワイアードギアスならばこの程度何てことはない。
そしてマントを四方から射出しアルファガンを向けたままの研を拘束した。
「くっそー!離せー!」
「離せばまた暴れだすだろう」
マントの中でもがく研をゼロは呆れたように眺める。
ジュラル星人とやらが何なのかは知らないが、この少年は冷静さを欠いている。
意味不明な勘違いで殺されるなんて堪ったものではないが、誤解を解こうにも此方の話など聞く耳持たずだ。
その為に拘束した研を見下ろし、さてどうしようかとゼロは考えるが。
「扇さんの言っていた人間を操る邪悪なジュラルめ!僕が滅ぼしてやる!」
「何?」
研の口から出た名前に思考を打ち切られる。
どういうことか問い質そうとした時、後方から声が聞こえた。
「は、離してください…!」
「奴と一緒に居ては危険だ!とにかく今は俺と来てくれ!」
振り返るとそこには前髪アフロが特徴的な男、扇が雪華綺晶を無理やり連れて行こうとする光景があった。
扇は自分達を見るゼロに気付くと、左腕で雪華綺晶を捕らえ反対の手に持った銃をゼロへ向ける。
「今すぐ研君を放せゼロ!」
「…扇。この少年に何を吹き込まれたかは知らんが少し落ち着け。君はもっと冷静な人間だったはずだろう?」
「今更そんな言葉で引き下がると思ってるのか?こんな女の子に乱暴までするなんて、とことん堕ちたなゼロ!いや、それともルルーシュって言った方がいいか!?」
仮面の下でゼロは驚愕の表情を浮かべる。
自分の正体はナナリーやスザクといった限られた人間しか知らないはず。
騎士団に正体を明かした事は無いというのに、何故それを知っている?
それに扇がここまで自分へ憎しみの篭った目を向けるのも理解できない。あれほどの恨みを抱かせる何かをした覚えなど全く無いのだが。
754
:
激突!チャージマンvs魔王
◆84AHk0CknU
:2016/02/04(木) 18:15:49
(やはりゼロはジュラル星人だったのか!?)
憎悪の視線とデザートイーグルをゼロへ向ける扇も内心驚愕していた。
研の後を追いかけた先で見たのは、まるでマンガの中で行われるかのような超人同士の戦闘だった。
何時の間にか服装が変わっていた研にも驚いたが、それ以上に驚いたのはゼロの方だった。
自分が知るゼロの姿とはかけ離れた巨漢。そして見た事の無い化け物染みた戦闘力。
思考がフリーズしかけたが、ふと研が話していたジュラル星人のことを思い出す。
荒唐無稽だが、もしも本当にゼロの正体がジュラル星人ならばあの姿や能力にも納得がいく。
(とにかく今は研君とこの娘を助けないと)
ゼロに乱暴されたであろう白い少女を横目で見る。
錯乱しているのであろう、先程から扇の腕から逃げ出そうとしているが成人男性の腕力には敵わず、拘束されたままである。
実際にはさっき吹っ飛ばされたブリーフ男こそが、雪華綺晶を襲った真犯人なのだが扇は知る由も無い。
拳銃一丁で勝てる相手では無いと悟りながらも、必死に二人を助ける策を模索する。
ゼロもまた予想外の事態にどう対処するか決めあぐねていた。
その硬直状態を破ったのは、第三者による銃撃だった。
◇
研とゼロの戦闘をひっそり観察していたクソデカ小学生、ひで。
自分を傷付けた連中がどうなったか気になったひでは、扇が去った後野獣邸の近くに戻って来たのだ。
野獣邸の向かいにある家の塀の隙間からこっそりと覗き、さてどうしようかと考える。
(あの男の子は多分良い人だよね)
マントに拘束されているチャージマン研。
ジュラルがどうのこうのと言っている事はキチガイ染みていたが、ゼロと敵対しているならば悪人ではないと思う。
自分を殴り飛ばした仮面男、ちょっと悪戯しただけでぶった少女、勘違いで撃ってきたモジャモジャ。
どいつもこいつも悪い大人ばかりだ。正直全員死んで欲しい。
それにここで研を助け恩を売っておけば、今後は自分の心強い味方になってくれる可能性は十分ある。
やはり付くなら彼以外には居ないだろう。
(そうと決まれば早く助けなきゃ(使命感))
BARを取り出すと仮面男へ照準を合わせる。
仮にも小学生なのに悪知恵働きすぎィ!と思われるかもしれないが、ひでに限っては不思議ではない。
正史において虐待おじさんに拷問を受けた際、助かる為に従順な振りや嘘泣きという姑息な手を使っているのだ。
その悪どい一面が、殺し合いという極限状況で急速に開花したと思えばまぁ多少はね?
「あ〜。(弾が)出る〜」
クッソ気の抜けた声と共に銃弾が撃ち出された。
◇
予期せぬ方向からの銃撃に全員が機を取られる。
自分に向かってくる銃弾をゼロは拳で弾き防ぐが、ほんの一瞬研の拘束を緩めてしまった。
研はその隙を逃さずビジュームベルトを回転、拘束していたマントを纏めて吹き飛ばす。
そしてゼロが行動を起こす前に己の愛機を呼んだ。
「来い!スカイロッド!」
研の呼びかけに応じ、飛行メカ『スカイロッド号』が飛んで来る。
そのままの勢いでゼロに激突、ぶっ飛ばし扇の元へ着陸した。
「扇さん。貴方はスカイロッドでその人を安全な場所まで届けてください」
「け、研君しかし君は…」
「僕はあのジュラル星人を倒します!だから扇さん、あなたは早く!」
自分よりもずっと下の少年を戦場に残す事を躊躇した扇だが、ややあって分かったと頷く。
悔しいが今の装備ではあのジュラルの本性を現したゼロには勝てないだろう。
また、銃撃した謎の人物も気がかりだが今の所は特に何もしてこない。意図は不明だが逃げるなら今がチャンスだ。
それに一般人の女の子を放っておく訳にもいかない。抵抗する雪華綺晶を強引に引き摺り扇はスカイロッド号に乗り込む。
755
:
激突!チャージマンvs魔王
◆84AHk0CknU
:2016/02/04(木) 18:18:40
「研君無茶はしないでくれ!マズいと思ったらすぐに逃げるんだ!」
「大丈夫です扇さん。チャージマン研は無敵ですよ!」
ガッツポーズをしてみせる研に頷き返し、スカイロッド号の操縦桿に手を掛ける。。
KMFとは違う操縦方法に苦戦しながらも何とか上昇する事に成功した。
スカイロッド号の発進を阻止すべくゼロが駆け寄るが、こちらを狙って光線が飛んできた為足を止めざるを得なくなる。
「どけ、貴様の遊びに付き合っている暇は無い」
「黙れジュラル星人!今度こそ終わりだ!」
立ち塞がる研を睨みながら、面倒な事になったと内心舌打ちをする。
キチガイ染みた研の言葉を丸々信じるなど、今の扇はどう考えてもマトモではない。
そんな扇と精神的に疲弊している雪華綺晶を二人きりにすれば、取り返しの付かない事になるだろう。
急いで二人を止めたいところだが、しつこく光線で攻撃してくる研が非常に邪魔だ。
接近戦は不利と判断したのだろう、ガドロシューズで距離を開けながら光線を乱射しててくる。
ワープ能力を使おうにも、今一瞬でも動きを止めれば確実にアルファガンのキツい一撃を貰う事になる。
僅かに焦燥感に駆られながらも、ゼロは光線をギアスで消滅させスカイロッド号へと走る。
一方扇は野獣邸の屋根を見下ろす位置までスカイロッド号を上昇させたものの、トラブルに見舞われていた。
「降ろしてください!お願い戻って!」
「駄目だと言っているだろう!君はゼロに騙されているんだ!あいつは善良な人の心を操る悪魔なんだぞ!」
雪華綺晶が操縦桿を奪い取ろうと詰め寄ってきたせいで、扇はその対処に追われていた。
何度説明しても分かってくれず、ゼロは悪人などではないと言い返してくる。
どうして分かってくれない?ギアスで操られているのか?ここでウダウダしていたら研君の意思を無駄にしてしまうのではないか?
「このっ!」
「あっ…」
焦りと苛立ちに身を任せ、扇は衝動的に彼女に手を上げていた。
強くぶたれジンジンと痛む頬を抑える雪華綺晶へ罪悪感を覚えるが、それでも努めて冷静に彼女を説得する。
「叩いてすまない、でもゼロは本当に危険な男なんだ。後で必ず詳しく説明する。だから今は俺を信じてくれないか?」
そう言うと安心させる為に優しい笑顔を作ってみせる。
俺も研君も君を守りたいだけなんだと、だから今だけでも信じて欲しいとその顔は語っている。
ゼロが悪であり自分達が正しい存在だと信じて疑わないその笑顔。
だからこそ扇は気付かない。目の前の少女が今自分達へどんな感情を抱いているかなど。
◇
(こわいよ……もうやだ…)
雪華綺晶は争いとは無縁の一般人である。
姉妹同士で戦う宿命や究極の少女になる使命など持ち合わせてはいない。
7人姉妹の末っ子として、普通に家族や友人と仲良く暮らしてきた極普通の少女だ。
そんな彼女にとってこのバトルロワイアルは、短時間で恐怖の連続だった。
首を吹き飛ばされたグロテスクな死体。
高い身体能力で襲ってきた胴着の男。
宙に浮き光弾を発射する赤い怪物。
気持ち悪い笑みで自分の寝込みを襲った変態。
とても話が通じそうに無い光線銃を持った少年。
同じく話が通じず暴力を振るう前髪アフロの男。
気の弱い人間なら到底耐えられないであろう現実に、それでも彼女が正気を保っていられたのはゼロが居てくれたからだ。
何度も命の危機を助けてもらい、恐怖で動けない時には何も言わず傍に居てくれた。
姉と友人以外では唯一この場で信頼できる存在となっていた。
けれどその彼ともこのままでは遠ざかってしまう。
代わりに隣に居るのは助けてくれた人を悪党呼ばわりする胡散臭い男。
あの研という少年と一緒になりゼロを攻撃し、罵声を浴びせた人間など信じられるはずが無い。
ぶたれた痛みが残る頬を押さえながら思う。
(はやく、はやく逃げないと…)
焦る気持ちをそのままに、笑顔を見せて屈む扇を突き飛ばす。
不意をつかれた扇は背中から転倒し、情けない悲鳴を上げる。
その隙に急いで操縦桿を動かすが、慣れない操作のせいで機体は思うように動かない。
すると立ち上がった扇が背後から雪華綺晶を押さえ付ける。
「いやぁ!離して!はなしてぇ!」
密着する扇の体の感触にあのブリーフ男を思い出し、嫌悪感に襲われ必死で逃れようとする。
すぐにこの男から逃げたいという一心で片っ端からレバーやらボタンやらを操作する。
756
:
激突!チャージマンvs魔王
◆84AHk0CknU
:2016/02/04(木) 18:21:23
繰り返し言うが彼女は争いとは一切無縁の世界で過ごして来た一般人だ。
この殺し合いという異常な場所で信頼できる者から急に引き離されれば、当然錯乱し冷静な判断はほぼ不可能となる。
故にこの時彼女が何をしたとしても、一概に責められるものではない。
だからそう。
「なっ」
押したボタンの一つが機内の人間を外部に投棄する仕掛けのもので
「――――――え?」
扇がかつてのボルガ博士のように、突如開いた床の穴から外へ投げ出されても
「あ――――」
これは不幸な事故なのだ。
(千草……)
グシャリ
此方を覗く青い顔をした少女を見ながら、最期に愛した女を想い、扇要は呆気なく死んだ。
【扇要@コードギアス 反逆のルルーシュ 死亡】
◇
その様子は当然地上の者たちも目撃していた。
研が悲痛な表情で扇の名を叫んでいる隙に、ゼロは行動を起こす。
ワープ能力を発動しスカイロッド号の上に移動、ハッチを強引にこじ開け中に侵入。
雪華綺晶の様子を見ると、自分のせいで人が死んだ事実が相当ショックだったらしく意識を失っている。
ゼロは構わず抱きかかえ外へ飛び出ると同時に大きく叫ぶ。
「ガウェイン!」
その呼び掛けに応じ、6mを超えるゼロの愛機『ガウェイン』が出現する。
ゼロは宙に浮くガウェインの肩に着地すると、操縦者を失い墜落するスカイロッド号を見た。
しかし地面に激突する前にガドロシューズで飛行した研が素早く搭乗、慣れた手付きで動かしガウェインへ突っ込む。
「扇さんの仇だ!くらえ!」
体当たりを仕掛けるスカイロッド号をガウェインは難なく回避。
スカイロッド号は直ぐに方向を変え搭載されたビーム砲を発射する。
再び回避するガウェインだが、避けた事で野獣邸他付近の家々が消滅させられた。
「これで終わりにしてやる!」
スカイロッド号から再びビームが発射されガウェインを襲う。
今度は避けきれないと悟ったゼロは迎え撃つため、ガウェイン両肩のハドロン砲を撃ちだす。
拮抗する両名の必殺兵器だったが、耐え切れず双方を吹き飛ばした。
「ぐっ…!」
「うわぁぁぁぁぁぁァァァァァァぁぁぁぁぁ!!」
ゼロはマントを幾重にも展開し被害を可能な限り抑え、研は絶叫を上げながらスカイロッド共々ふっ飛ばされていった。
ゼロは彼方へ飛ばされた研を見送るとガウェインを地面に降り立たせる。
銃を撃ち介入した人物の気配はもうどこにもない。逃げたか或いは研のビームに巻き込まれたのどちらかだろう。
周囲を見回しているとこちらを見る二人の参加者を発見した。
ガウェインを下がらせ、警戒する坊主頭の男とキョトンとした瞳をの少女へ近付き話す。
「そう警戒するな。こちらも殺し合いに乗ってはいない」
◇
757
:
激突!チャージマンvs魔王
◆84AHk0CknU
:2016/02/04(木) 18:23:49
【全てがおわったあと】
一先ずMURが警戒を解き、お互い軽く自己紹介をする。
本題であるこの惨状の理由に付いて聞こうとしたが。
「ねーねー、コレぜーんぶあなたがやったのー?」
MURよりも先に、未央が知り合いに対するような気軽さでゼロに質問する。
「話すと長くなる。できれば場所を移して話をしないか?彼女を休ませる必要もある」
「そのお姉ちゃん怪我してるの?」
「いや、目立った外傷は無いが色々と訳ありだ」
「ふーん」
「分かったゾ。とりあえずここから離れよう。未央ちゃんもそれでいいか?」
「んい!」
野獣邸跡を立ち去り、ようやくマトモな参加者に会えた事にゼロは溜飲が下がる思いだった。
地図を取り出し周辺の施設を確認するMURと未央を横目で見つつ、背負った雪華綺晶の事を考える。
恐らく扇と揉み合いになり、何かの弾みで彼を突き落としてしまったのだろう。
あの扇は思い出してみても、急におかしくなったとしか思えない。尤も本人が死んだ以上その原因も分からず終いだが。
故意に殺したのではないだろうが、扇の死んだ原因が雪華綺晶にあるのは否定できない。
その事実を果たして彼女は受け止められるのだろうか。
MURたちに聞こえないように、ゼロはもう一度ため息を吐いた。
【MUR@真夏の夜の淫夢】
[状態]:健康
[装備]:ポッチャマの着ぐるみパジャマ@現実、雑賀孫市のリボルバー(8/8、予備弾×32)@戦国BASARA
[道具]共通支給品一式、不明支給品×1(武器ではない)
[思考]
基本:主催者に怒りの鉄拳をブチ込む
1:未央と行動し守る
2:近場の施設へ移動しゼロから事情を聞く
3:未央と自分の仲間を探す(できれば野獣優先)
4:未央のウサちゃんを探す
[備考]
【未央@NEEDLESS】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:共通支給品一式、不明支給品1〜3
[思考]
基本:お兄ちゃん達に会いたい
1:ペンギンのおじちゃんと一緒に行動
2:ウサちゃんとクルス君達を探す
[備考]
※参戦時期はセツナ・梔との決別以降
【雪華綺晶@やる夫スレ】
[状態]:疲労(中)、精神疲労(大)、扇を殺した事へのショック(大)、ひでへの強い嫌悪感、ゼロに背負われている、気絶
[装備]:
[道具]:共通支給品一式、蝶ネクタイ型変声機@名探偵コナン、FN ブローニング・ハイパワー(13/13)@現実、予備マガジン×4
[思考]
基本:姉さんとやる夫さん達に会いたい
0:気絶
1:姉さん達を探す
[備考]
【ゼロ@コードギアス ナイトメア・オブ・ナナリー】
[状態]:疲労(極大)、全身にダメージ(中)、ガウェイン3時間召喚不可
[装備]:
[道具]:共通支給品一式×2(ゼロ、扇)、篠崎咲世子のクナイ×10@コードギアス 反逆のルルーシュ、デザートイーグル(5/7)@現実、予備マガジン×7
[思考]
基本:主催者の殲滅、元の世界で魔王の役割を果たす
1:近場の施設へ移動する
2:雪華綺晶と行動し、互いの知り合いを探す
3:他の参加者を探し情報を集める
4:胴着男(AKYS)、赤い異形(星君)、ブリーフ一丁の変態(ひで)、泉研を警戒
5:首輪と能力の不調をどうにかしたい
6:扇の言動と態度に違和感
[備考]
※参戦時期はLAST CODE『ゼロの魔王』終了時
※野獣邸地下のアルバムで野獣一家の容姿と野獣先輩と遠野の関係を把握しました
【ガウェイン@コードギアス ナイトメア・オブ・ナナリー】
ゼロが召喚する6.57mの人型兵器。
両肩にハドロン砲、両手にスラッシュハーケン、背中にフロートシステムをそれぞれ搭載している。
本編ではロロに一撃で破壊されたり、移動用の足場としか使われなかったりとクッソ情けない無様を晒している。
搭乗者にインパクト負けするロボットの屑。
吹き飛ばされたスカイロッド号は付近の家を破壊しながら墜落した。
墜落の衝撃で痛む体に顔を顰めながら研は外へ出た。
するとスカイロッドが勝手に動き出し、明後日の方向へと飛んで行く。
758
:
激突!チャージマンvs魔王
◆84AHk0CknU
:2016/02/04(木) 18:26:13
「あっ待て、待つんDA!」
研の叫びも空しく、スカイロッド号は戻る素振りを見せずに遥か彼方へ消えてしまった。
愛機の突然の暴走に驚愕する研だったが、すぐにこれがジュラル星人の仕業だと確信する。
爆弾首輪を付けて拉致し、スカイロッドにまで細工するとはどこまでも卑怯な連中だ。
「扇さんを殺すなんて……。許さないぞ卑怯なジュラル星人め!」
扇を突き落として殺したあの白い少女も、仮面の仲間のジュラル星人なのだろう。
乱暴されたか弱い少女を装って男を誘惑する卑劣な手段を用いてるに違いない。
さらに厄介な事に名簿には死んだはずの星君とボルガ博士の名があった。
おそらく星君はジュラルの科学技術により蘇り、ボルガ博士は忠実な人間ロボットとして復活させられたのだろう。
グズグズしてはいられない。一刻も早く奴らを滅ぼさなくてはと野獣邸に戻ろうとした所で声を掛けられた。
「あ、いたいた。無事だったんだね」
「君はさっきの…」
心配してたんだよー、などと言いながら小走りで近付くクソデカ小学生、ひで。
ひでは今の所唯一自分の味方になってくれそうな研を追いかけここまで来たのだ。
研もあの仮面ジュラルに傷付けられたひでが無事でいた事に、ひとまずホッとする。
しかしのんびりしている暇は無いので、直ぐにゼロの元へ戻ろうとする。
「ごめん、僕は急いで奴を倒しに戻らないといけないんだ。だからもう行くよ」
「ちょっと待っちくり〜(懇願)。君一人じゃ幾らなんでも危ないよ。それに怪我だってしてるし、やられちゃうよ」
ひでの言葉に研はそんな事はないと反論しようとするが、言いかけた言葉を飲み込み思い直す。
あの仮面を付けたジュラルは、今まで倒してきたどの敵よりも遥かに手強い。
桁外れな身体能力や、アルファガンとビジュームベルトを無効化するあの光は非常に厄介だ。
対策もなしに突っ込むのはいささか無謀ではないだろうか。
考え込む研にひでが明るく話す。
「よかったら僕といっしょにあいつらをやっつける仲間を探さない?」
「仲間を?」
「うん。君みたいな正義の味方に協力してくれる人とか、強い武器を探してそれから悪いやつらを倒すんだ」
そうだ、この地にはジュラル星人だけでなく扇のような善良な人間も居る。
となると他にもジュラル星人を倒す事に協力してくれる、正義の心の持ち主が現れる可能性は高い。
そしてスカイロッド号に細工をされた自分は戦力的に不利な状態だ。ひょっとすると他の装備にも手を加えられたかもしれない。
ならばひでの言うとおり可能な限り武器を集めておくべきだろう。
「分かった。まずは君の言うとおり仲間と武器を探そう。ええっと…」
「ぼくひで」
「じゃあひでくん、僕は泉研だ。これから宜しく頼むよ」
「こちらこそよろしく。絶対にあいつらを倒そうね!」
「うん!」
ひでと握手を交わしながら研は誓う。
扇の無念は必ず晴らしてみせる。
この地に居るジュラル星人を全て抹殺し、主催者のジュラルも滅ぼしてやると。
(扇さん。あなたの仇は僕が討ちます。待っていろジュラル星人ども!お前達に生きる道は無いと思い知れ!)
研が打倒ジュラル星人の決意を再び固めている横で、ひでは邪悪な顔でほくそ笑んでいた。
強い能力を持った研を味方にできたのは実に幸運だ。
この調子でどんどん仲間を増やしていけば、自分の安全はほぼ確実に保障される。
さらにあのモジャモジャ野郎も無様に死んだ。実にいい気味だ。
(でもあの仮面男と女は生きてるんだよね。僕を殴った事を今に後悔させてやる)
研と共にあの二人の悪評を流し追い詰める。
そうして逃げ場が無くなった所を、自分を殴った罰として大勢で嬲り殺しにしてやろう。
暴走気味な正義の味方と、逆恨みで憎悪を滾らせる人間の屑。
今ここに、危険極まりない二人の少年が手を組んでしまった。
ひでしね
759
:
激突!チャージマンvs魔王
◆84AHk0CknU
:2016/02/04(木) 18:27:43
【ひで@真夏の夜の淫夢】
[状態]:疲労(大)、全身に軽度の打撲、左腕に掠り傷、パンツ一丁
[装備]:グレーテルのBAR(11/20)@BLACK LAGOON
[道具]共通支給品一式、予備マガジン×5
[思考]
基本:とにかく生きる
1:研と行動
2:自分を助けてくれる仲間を集める
3:仮面の男(ゼロ)と白い少女(雪華綺晶)の悪評を流し追い詰めた上で殺す
[備考]
※虐待おじさんに拉致された所からの参戦です
※ここが何となく異常な場であることは理解しました
【泉研@チャージマン研!】
[状態]:疲労(大)、全身にダメージ(中)、ジュラル星人への激しい怒り
[装備]:スペクトルアロー@チャージマン研!、スカイロッド号(現在使用不可)@チャージマン研!
[道具]:共通支給品一式、不明支給品0〜1
[思考]
基本:ジュラル星人を全滅させる
1:ひでと行動し仲間と武器を集める
2:ジュラル星人やその協力者は見つけ次第始末する
3:夜が明けるまでは変装可能な光がある場所を捜索する
4:スカイロッドに細工をされたのか?
[備考]
※参戦時期は第35話『頭の中にダイナマイト』終了後
※スカイロッド号は10分間経過すると強制的に使用者の元を離れます。
再使用には3時間のインターバルが必要です
※ゼロ、雪華綺晶をジュラル星人と考えています
【スペクトルアロー@チャージマン研!】
研がいつも来ている黄色のスーツ。光のエネルギーを浴びる事でチャージマン研に変装する。
【アルファガン@チャージマン研!】
研が変装すると装備される光線銃。非常に強力で、これで撃たれた相手は毎回一撃で死んでいる。
催眠モードに切り替える事ができるが、それで撃たれたジュラル星人は蒸発し普通に死んだ。
【ガドロシューズ@チャージマン研!】
研が変装すると装備される靴。ジェット噴射機能が搭載されており、飛行や攻撃に使用する。
【ビジュームベルト@チャージマン研!】
研が変装すると装備されるベルト。光線を発射したり、竜巻を発生させることができる。
難聴なホモには虹裏ベルトと聞こえる。
【スカイロッド号@チャージマン研!】
研が愛用する飛行メカ。陸海空及び宇宙空間での飛行が可能。また、日帰りで日本とアフリカを行き来する事もできる。
装備された光線砲は非常に強力で、ジュラル星人の戦艦を一撃で破壊する。
こっちが強すぎるのか向こうが弱いのかこれもう分かんねぇな。お前どう?
新着レスの表示
名前:
E-mail
(省略可)
:
※書き込む際の注意事項は
こちら
※画像アップローダーは
こちら
(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)
スマートフォン版
掲示板管理者へ連絡
無料レンタル掲示板