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「都市伝説と戦う為に、(ry 代理投下スレ
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規制中・本スレが落ちている、など本スレに書き込む事ができなかったり
ちょっと、みんなの反応伺いたいな〜…って時は、こちらにゆっくりと書き込んでいってね!
手の空いている人は、本スレへの転載をお願いいたします
ぶっちゃけ、百レス以上溜まる前に転載できる状況にしないときついと思うんだぜー
ってか、50レス超えただけでもきっついです、マジで
規制されていない人は、そろそろヤバそうだと思ったら積極的に本スレ立ててね!
盟主様との約束だよ!!
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『一応、儂らは悪魔じゃから、変身くらいはできるがの』
「まだ呼んでない誰かに、召喚者に変身してもらえばいいんじゃないかな」
ストラスも続けてそう言ってきた
…確かに、そうするしかないだろう
悠司は独りしかないのだ
カインを守りつつ「組織」の仕事をこなすなどできない
ならば……誰かに、変わってもらうしかない
それも、「組織」にバレないようにしながら…
「え、えぇと、それじゃあ…まだ呼んでないのは…」
『ヴァッサゴと、オリアス候じゃが……オリアス候に、契約者の演技をしてもらうのは無理じゃな』
「無理だね」
「無理だにゃ」
まさかの悪魔三体からの全否定
……どれだけ演技が苦手なのだろう、そのオリアスと言う悪魔は
『でもよ、カインにバレずに呼び出せるのか?』
『ヴァッサゴは、儂の弟のようなもんじゃからの。儂が話をつけて、こっそり呼んでおくよ』
それくらいはできる、とでも言うように、少年の顔で笑うアガレス
すみません、と悠司はこっそりと苦笑した
『それでは、ヴァッサゴと言う悪魔に、主様に代わってもらうと言うことで……主』
「うん、黒服さんに連絡するよ」
と、悠司は携帯電話の操作を始めた
……その背後で、カインが不安げに雷が天に上った方向を見つめている事に、気づかないまま to be … ?
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†前回のあらすじ†
ローゼちゃんはロリ様に隠れてるところをバレてしまったのでした byリジェ
(ローゼ>チェリーさんと仰るの?
お初にお目にかかりますわ〜、ローゼ・ラインハルトと申しますの
先程トライ・ミニッツ・ライトニングさんが仰ってたけれど、
「組織」ではR-No.0の地位を頂いてますわ♪
(レクイエム>・・・自己紹介している場合か;
ローゼが女性―チェリー・ハーヴィーに名を教えている途中に、
呆れた様子でレクイエムも傍に寄った
(ローゼ>えー、まずは互いに打ち解けた方が宜しいと思ったのだけど
(レクイエム>まぁ、否定はせんが・・・そっちの容態は?
(ローゼ>あぁそうでしたの!
思い出したかのように手をぽんと叩くと、「お代わり致しますわ」と言って、
チェリーから彼女が手を貸している男性―ロリス・カスティリオーニを背負おうとした
が、
(ロリス>・・・さわ、るな
(チェリー>ロ、ロリス・・・
(ローゼ>大丈夫ですわ、ワタクシも貴方に恩がありますの
恩返し、という程のことでもないけれど、ワタクシは貴方達の手助けがしたいから・・・
優しく、微笑みかけながらローゼは言うが、
レクイエムだけは、ロリスの浮かべた表情に何やら違和感を感じて、
(レクイエム>・・・?
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ローゼが説得している間に、携帯電話を取り出して、その姿を撮影し、
胸にしまって自らの能力を発動した
(レクイエム>(・・・あぁ、そういうことか)
ふふっ、と小さく笑い、
(レクイエム>ローゼ、「蝦蟇の油」は残っているか?
(ローゼ>ほえ?
(レクイエム>トライ・・・っと、ロリスと言ったか、筋組織が酷く傷ついている
下手に動かすととんでもないことになるぞ
(チェリー>えっ・・・!?
(ローゼ>あらぁ、困りましたわぁ、先程切らしてしまって・・・
(レクイエム>そうか・・・なら、私の方で治療しよう
(ローゼ>へ? そんなこともできましたの?
(レクイエム>まぁな。 チェリーと言ったな、そこでじっとしていてくれ、ロリスを動かさぬように
(チェリー>は、はい!
再び能力を発動する、前に、ちらとロリスの顔を伺った
表れていたのは、謝罪と少しの感謝の色
実は、レクイエムが言っていた事は殆ど嘘である
ロリスは先刻のエイブラハムとの戦闘による極度の疲労――所謂、筋肉痛で苦しんでいたのだった
(レクイエム>(・・・流石に、筋肉痛で歩けないとなると男が廃るだろう)
そんなことを考えつつ、彼女はロリスの治療に当たった
...To be Continued
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【上田明久の星霜5〜怪理姫エリー〜】
「明久さん、こんな所にいましたか……ってなんですそのコイン?」
「おう、当てたんだよ。」
河伯葵との邂逅の後から数分。
サンジェルマンがサキと一緒に彼を迎えに来た。
その時、上田明久は嘘をついた。
理由はわからない。
サンジェルマンという男を心の底から信用していなかったから、
少しでもあの少女と彼の間に縁が出来ないようにしたかったのかも知れない。
それともただ単に恥ずかしくて知られたくなかったのかも知れない。
どちらかなんて解りはしない。
「か、勝手にどっか行くなよぉ……。」
「なに泣きそうな顔してるんだよ、俺は大人だ、どこ行ったって良いだろうが。」
「私は彼女と一緒に行動するように言ってましたけど……」
「ああ悪い、うっかり忘れていたみたいだ。謝る。すまなかった。
迷惑かけてごめんなサキ。」
「うぅ……。」
悪びれもせず上田明久は平然と謝ってみせる。
外見は正々堂々たる侍そのものなのだがこれで案外狸である。
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「まったく……それはそうとして、彼女に会えることになりました。
フォーカードのジョーカー担当。」
「ファイブカードだな。」
「良いじゃないですか、主力+切り札で戦力バランス最高です。」
「成る程。」
「私が白魔導士、明久さんが戦士、太宰さんは暗殺者、エヴァさんが黒魔導士、ケインは射手。」
「そいつは?」
「狂戦士ってところですかね。」
「使いこなせる自身は?」
「手伝っていただける自信なら有ります。」
危ういなあ、と明久は思う。
彼自身一流の戦士として場数を踏んできた。
そんな戦場の中でさまざまな戦士と出会ってきた。
彼らは一貫して味方あるいは自分のために戦うという理念があった。
しかし狂戦士というものはその理念が無い。
戦うためだけに戦い続ける。
屠る物は敵である必要がない、的でさえあればいいのだ。
「サキさんは先にホテルで待っていていただけますか?」
「どういうこと?」
「彼女、危険なんですよ。下手したらあなたが食われるかも知れない。」
「……解った。じゃあ帰っているぜ。」
「俺は危なくないのかよサンジェルマン。」
「あなたは自衛くらいできるでしょ。」
「ったく……」
「というかですね。」
サンジェルマンはサキがホテルに帰ったのを確認する。
それから彼は非常に言いづらそうに口を開いた。
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「エリザベスはあなたをご所望なのですよ。」
「は?」
「侍と戦ったことがない。侍と戦いたいって。」
「はぁ?」
明久は気づいた。
最初からそういう約束だったのか。
俺に一部伝えないままに連れてきたのか。
姉さんも気づいていたんじゃないだろうか。
いや、気づいていたんだったら止めるよな。
本当にこいつは勝手だな、と溜息をつく。
「解ったよ、戦ってやる。俺より弱かったら仲間にする意味もないしな。」
「申し訳ありません……。」
「構わん、俺は剣(スペード)のエースだ。戦わないでどうする。」
実を言えば明久自身も強敵との戦いに少しばかり心が躍っていた。
「ところで抜刀解放は何本までだ?」
抜刀解放。
上田明久は十三本の霊刀に加えて一領の鎧と契約している。
村雨、雷切、正宗、村正、いずれも霊験灼かな日本の名刀だ。
これを抜き放つ度に明久は刀剣の加護を与えられる。
その加護が幾重にも彼を包み込むことで彼は加速度的に身体能力や反応速度を上げられるのだ。
刀を十三本抜いた時の彼に触れられる物は速度特化型の契約者や都市伝説くらいだろう。
刀を十三本抜いた時の彼の斬撃をしのげるのは剛力特化型のそれのみだろう。
抜けば即ち勝つ、そう思って明久はサンジェルマンにその問を投げかけたのだ。
簡単に勝てばつまらない、どれくらい加減してやろうか。
そう思ってサンジェルマンに質問したのだ。
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「勝負開始と同時に全部抜いてください。
鎧も装着した方が良いかもしれません。
追いつけなかったら外して身体能力強化を保ったまま重量を落とし、
一時的な高速移動をしてもいいでしょうね。
キャストオフなんて私は呼んでいますが……。」
「全部?」
「ええ。」
「全部、ねえ……。」
「死んでも生き返らせますから大丈夫ですよ。」
「はっ、お前はその女の生死を心配した方が良いぞ。」
「まったく……、ああ着きましたよ。」
上田明久とサンジェルマンの目の前には巨大な城が建っていた。
門番とおぼしき男達はサンジェルマンと明久の姿を見ると慌てて城の奥に通した。
誰もいない城の中を二人は歩く。
「ベス!私です!呼んだのは貴方なんですよ?
出迎えたらどうですか?」
サンジェルマンの声が場内に響き渡る。
すると彼らの目の前の廊下が突然せり上がって階段になった。
「ほう……。」
「成る程、彼女らしい。」
二人は階段を上る。
足音だけが反響する。
-
「来たかサンジェルマン、そして日の本の戦士よ。」
幼い子供のような声が響く。
明久は思わず拍子抜けしてしまった。
「子供?」
「子供ねえ……会えば解りますよ。」
「ていうか日本語話せるの?」
「私たちの心に直接語りかけているだけです。」
「殺気が全然感じられない……。」
そいつが弱いのか。
それとも俺が弱すぎてそいつの殺気を感じ取れないのか。
明久は判じかねていた。
二人の目の前の扉が開く。
「待ちかねたぞ?」
開いた扉の向こう。
明久の瞳に映ったのは全裸で人間の上に座る豊満な肉体を持った黒人の女性だった。
まあ人間の上に座ると言っても、椅子があってその座る部分に生きた人間が入っているだけなのだが。
彼女はその黒く艶やかな肌を見せつけるようにして足を高く上げてから組み替える。
彼女は足を座っている人間の手のひらの上に載せて堂々と己の身体を誇示する。
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「お久しぶりですねエリザベス。」
「我を頼るとは中々切羽詰まっているみたいじゃないかぁ、え?」
「ええ、ナチスの残党、教会だけならまだしも、今回は大英博物館(ミュージアム)まで……」
「それだけじゃなかろう?」
「……組織内部も一枚岩とは言い難い。
過激派からは単独行動に目くじらを立てられ、
影を潜めた穏健派も私のやり口が嫌いなようで……。」
「はっ、孤立無援か!これだから貴様と関わるのはやめられん!」
「一騎当千ですけどね。」
「ご託は良い、そこのそれが侍か。」
「ええ、このご時世に珍しい侍の生き残りです。」
「ほう……滅び行く種族という意味では我と変わらぬな。」
エリザベスは近くに置いてあったウイスキーを一息に飲み干す。
「で、使うのか?」
「ええ。」
「おい侍。聞いているとは思うが我と戦え。」
「まあそれくらい良いが……。」
エリザベスは明久の困ったような顔を見て笑う。
「女は切れぬか?」
「戦いを挑むなら礼を尽くすべきだと思っただけだ。」
「おい、貴様はシロアリに礼を尽くすか?」
エリザベスはテキーラを飲み干すと瓶をそこら辺に投げ捨てる。
-
「他人様を呼んでおいてシロアリ、なあ?」
「勘違いするな侍、貴様は立派な人間だ。
ただ我が吸血鬼であると言うだけで貴様は尊厳も人権も有る人間だ。
ただ我に吸血鬼権があるだけで貴様は一切悪くない。
貴様は我と戦えばそれだけで良い。
なにせここのところ強い戦士が居なくて暇だったのだ。
スパルタの男どものように精力溢れる雄々しい者もとんと見かけないしなあ。」
「はあん……二度と偉そうな口叩けなくしてやる。」
「うむ、恐れはないな、良い目をしている。」
彼女はすっくと立ち上がった。
「ハンデをくれてやる。先手は貴様から、貴様が我を倒す以外にも貴様が我に服を着せられたら勝ちにしてやろう。
戦場はこの城全域、服はそこらへんに脱ぎ捨ててた気がするから適当に探せ。
貴様が勝ったら聖杯集めの手伝いでも何でもしてやろう。
だがつまらぬ戦いをしたらサンジェルマンごと肉片にしてやる、良いな?」
「おう!」
「ところで貴様の名は?」
「シロアリに名乗る名前はねえよ。」
上田明久は村雨と雷切を抜き放った。
紫電と虹が入り交じり、絵画の如く世界を彩る。
真冬の月より冷たい切っ先がエリザベスに向けられた。
「来い人間(シロアリ)!」
「行くぞ吸血鬼(シロアリ)!」
……ちなみに、その様子を見ていたサンジェルマンは二人の殺気に気圧されてそそくさと逃げ出した。
【上田明久の星霜5〜怪理姫エリー〜fin】
-
「ねぇ、聞いてる?」
少女は、自分がイスにしている男に問いかけた。
しかし応える声はなく、怪訝に思った少女は男の顔を覗き込む。
「あ、気絶しちゃってた」
男が気絶したことで興味を失ったのか、単に飽きただけなのか、それきり少女はその男の事を気にしなくなった。
少女は大きく背伸びをしたあと立ち上がり、服の埃を手で軽く掃った。
「ちょっと寒くなってきたかなぁ。……ん?」
少女が冷たい風に身震いし、何気なく後ろを振り向いた時。
少女は腹部に衝撃を感じて、目をやった。
そこには大振りのナイフが生えていた。
ナイフの柄は、先ほどまで気絶していた男の内の一人が握っていた。
直後、男がナイフを切り払ったことで腹部からは血が溢れる。
少女は明らかな致命傷に対し、痛みに顔をしかめながらも笑みを浮かべてままだ。
「く、ぅ……起きるの、早いね……」
「さっきのは不意打ちで油断していただけだ! あの程度で俺が――」
「トビオ――」
「させるか!」
-
男のナイフが少女の喉へと突き刺さった。
少女は喋ろうとするも口からは血が溢れるのみ。
膝から前のめりに倒れ込み、動かなくなった。
男はナイフの血を振り払い、まだ気絶した時の衝撃が抜け切らない頭に手を当てた。
「はぁ、いつまでもニヤニヤと気味悪い女だった……。くそっ、まだ頭がクラクラする」
「じゃあ、また不意を打ってみよっかな。トビオリさん!」
少女の死体を見ていた男は、後ろからの声を聞くと同時に、地面へと激突した。
起き上がろうともがく男の背を、後ろから来た少女が踏んで押さえつける。
「あ、やっぱり不意を打たれると弱いんだね」
男の視界には、衝撃で離れた所に落としてしまったナイフを拾う少女が見えていた。
しかし声は背中の上から聞こえてくる。
「でもあなたは、不意を打たれると弱いんじゃなくて、2度も不意を打たれる程弱かっただけだね」
ナイフを拾った少女が、ナイフを男の真上に放り投げる。
男を踏んでいた少女は、そこから退いた後、ナイフに向けて、「トビオリさん」と呟いた。
放物線を描いていたナイフは直下に向きを変え重力に従って加速し、男の背を貫き、地面と縫い付けた。
「ぐぁあっ!」
「痛いよね、お腹刺すんだもの。これはお返し」
「じゃあね、バイバイ」
二人いた少女はいつの間にか一人だけになっていた。
少女はクルリと男に背を向けまた歩き出した。
続け
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レクイエムの治療が、終わって
ようやく、まともに体を動かせる状態になったのだろう
ロリスが、ふらりと自力で立ち上がる
「………すまない」
「これくらい、かまわんさ」
この会話、純粋に治療してくれたことへの感謝とその返事でもあるのだが…もう一つ、意味がある
まぁ、ローゼにはわからない事だし、気づいても特に意味のない事だが
「えぇと…ロリスさんは、エイブラハムを裏切りましたの?」
「……俺の上司は元々、あの男ではない」
ローゼの問いかけに、ロリスは短くそう答えた
その答えに、ローゼは小さく首をかしげる
「…?それは、どういう事ですの?」
「あの…ロリスは元々、「教会」上層部の……その「上」の、直属の存在なんです」
直接は言わず、やや遠回しの答えをするチェリー
…それは、つまり
「教会」のトップ直属、と言うことか
ロリスの戦闘力ならば、納得ではあるが…
……あぁ
なるほど、とレクイエムは納得する
「そちらの命令で、エイブラハムの懐に潜り込んでいた……ようは、スパイか」
「…そうだ。あの男が真に救世主候補であるかどうかの調査と……いざと言う時の始末を任されていた」
-
この様だが、と皮肉気に、ロリスは笑う
手も足も出なかった
それは、事実
……そして
己の能力では、エイブラハムを殺せない
それを、実感させられたのだ
「あなたの能力でも倒せない、となると、厄介ですわね…」
「……あれは、通常の攻撃では、殺せない。いくつか方法は思い浮かぶが……少なくとも、俺はその手段を持っていないし、それで殺せるかどうかの確信もない」
手詰まりだ、と
そう、ロリスは口にした
ローゼもレクイエムも、やや深刻に眉を寄せる
通常の攻撃では殺せない
…ならば、どうすれば倒せるのか、殺せるのか
方法がわかれば、対処のしようもあるが…
「……あ、そうですわ」
ふと、思い出したようにローゼは口を開く
「今、学校町のあちらこちらで、エイブラハムの子飼いが暴れているようですの……止められません?」
「…無理だ。あいつらへの命令権限はゲルトラウデとメルセデスに任せられている」
「………また、あの男か」
メルセデスと言う名前に反応したように、レクイエムがぽつりとつぶやいた
やけに濃密な憎悪を感じたような気がしたのは気のせいだろうか
「殺しておくべきだった…!」とか呟いているようにも見えたが
-
「どちらにせよ……あの子飼い連中は、本来「教会」への所属が許されないような存在も多い。説得して止めるつもりなら、覚悟が必要だろう」
「そうですの…」
やや、悲しそうな表情をうかべたローゼ
優しい少女なのだろう、そう、ロリスは判断した
倒す事よりも、説得する事を望んでいる
……それですべて片付くならば、どれだけ、世界は平和になれるだろうか
甘い、と思うと同時に、その純粋な願いを羨ましくも思う
倒すことなく、自主的に破壊活動をとめさせる方法は、ない訳ではない
ただ…その方法は、「エイブラハム・ヴィシャスを倒す事」だ
あの男の権威にすがって暴れている子飼い連中は、それで大人しくなるだろう
だが、現状、その手段がないだけだが
……小さく、ため息をつく
今は、思い悩んでいる場合ではない
…自分にできる事を、やるべきだ
「…「組織」の上層部よ。俺に、協力できることはあるか?」
「協力…ですの?」
「……そうだ。エイブラハム・ヴィシャスを倒す為ならば、いくらでも協力しよう」
「わ、私も!」
せっかく、「組織」の上層部と接触できたのだ
自分に協力できるならば、いくらでも協力しよう
この街を、焦土へと変えてしまわぬ、その為にも
to be … ?
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【ケモノツキ_COA編2話_ある朝の目覚め】
橘野悠司は夢を見ていた。
ソファーに座った女性が、5,6歳くらいの少年を膝の上に乗せている。
少年はとても幸せそうな顔をしながら、女性の腕に抱かれている。
あれは誰?
そう思った直後、悠司は自分が誰かの膝の上に座っていることに気付いた。
体を抱く女性の腕は、暖かく、柔らかく、優しく悠司を包み込んでいる。
ふと前を見ると、先ほどの少年と女性の姿はいつの間にか消えていた。
悠司は首を捻って後ろの女性を見上げる。
女性は悠司に微笑みかけるが、その顔は白いもやがかかったようにぼんやりしている。
あなたは誰?
そう問いかけた悠司の頭に女性の手が乗せられ、そのまま優しく撫でられる。
その感覚がたまらなく心地よく、悠司は撫でられるままに目を閉じた。
悠司は女性の胸に抱かれながら、まどろみの世界へといざなわれた。
・
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・
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どこからか鳥の鳴き声が聞こえ、まどろみの中で朝が来たことを知る。
規則正しい柔らかい風が、悠司の顔をくすぐる。
くすぐったさに身をよじろうとすると、誰かに頭を抱きかかえられている感覚を覚えた。
悠司がゆっくりと目を開くと、眼前10cmのミズキと目があった。
「あ、おはよー主さま―――」
「うわぁ!?」
びっくりして飛び起きた悠司。
その勢いでベッドから盛大に転げ落ちた。
「ちょ、ちょっと!大丈夫、主様!?」
ミズキは慌ててベッドの縁から悠司に手を伸ばす。
したたかに打ち付けた後頭部をさすりながら、悠司はその手をとって起き上がった。
「み、ミズキ、なんで僕のベッドに?」
「あー…えへへー。主様ともっと触れ合いたくて。だってこんな機会、他にないんだもん。」
「いやそういうことじゃなくて……あ、そっか、僕たちCoAに……。」
宿屋で黒服からCoAについての説明を受けたあと、悠司たちはそのまま宿屋で夜を明かした。
今はその翌朝である。
「うるせえなぁ……。朝っぱらからキーキーわめいてんじゃねーよ。」
声のした方を見ると、灰色の大型犬がベッドの上で大口を開けてあくびをしていた。
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「あれ?タイガ、いつの間にそっちの格好に?」
「……こっちの方が落ち着くんだよ。それに、いつまでもあんな格好でいられるかっての。」
「最初は人型で寝ていたのですが、三回ベッドから転げ落ちたところで獣型に変わって寝てましたね。」
紅茶を啜りながらしれっと暴露するタマモ。
それを見て悠司はふと、部屋に紅茶とトーストの香りが漂っていることに気付いた。
「んなっ!てめぇ起きて……余計なこと言ってんじゃねえよ女狐!」
「ま、まぁ慣れない体なんだし、仕方ないんじゃないかな?」
「あたしは主様と一緒だったから大丈夫だもんねー。」
「ミズキも次からは一人で寝なさい。あまり主様に迷惑をかけないでくださいね。」
「えー、別にいいじゃん。主様は、あたしと一緒のベッドはイヤ?」
「い、イヤじゃないけど困るというか…えっと……。そ、そうだ!エイダはどこ?姿が見えないけど。」
顔が熱くなるのを感じつつ、無理矢理に話題をそらす。
「足を確保すると言って、しばらく前に出て行きました。」
「足?」
「行方不明者の捜索とユグドラシルルートへの移動を兼ねて、フィールドを横断するそうです。距離があるため、徒歩ではなく移動手段を用いる、と。」
-
タマモが言い終わると同時に、部屋にノックの音が響いた。
ドアが開いた先には悠司の担当黒服――と全く同じ容姿をしたエイダが立っていた。
「あ、おはようエイダ。」
「おはようございます、橘野悠司。移動手段を確保しました。1時間後に出発しますので、準備をお願いします。」
「はーい!主様主様、一緒に朝ごはんにしよっ!」
「えっと、その前に顔洗ってきていい?」
「うん!その間に朝ごはんの準備してるね。主様は何飲む?」
「ん……じゃあタマモと同じ、紅茶で。」
「りょーかい!すぐ用意するから待っててね主様!」
ウキウキという擬音が浮かびそうな勢いで支度を始めるミズキ。
その様子に顔をほころばせながら、悠司は洗面所へと向かった。
・
・
・
-
5/5*********************************
身支度を済ませ、悠司たちはエイダに導かれるまま町の外へ集まった。
そこには鞍と手綱が取り付けられた、ダチョウのような体躯の黄色い鳥が繋がれていた。
それが、全部で3匹。
「あれ、3匹だけ?」
「はい。おそらくはこれで十分と判断しました。」
「え?だって全部で5人……」
「主様はあたしと一緒!あたしは主様の後ろね!」
「俺は主の中に戻るぞ。文句ねーな?」
「1匹目に主とミズキ、2匹目がエイダで、3匹目に私。ちょうど良さそうですね。」
「予想通りです。」
「あはは…タイガとミズキのことも予想してたんだ。」
悠司は苦笑しつつ、黄色い鳥にまたがる。
当然ながらいきなり暴れだすようなことはないようだ。
「主様頑張ってね!」
「お、落ちないように頑張るよ。ちゃんと捕まっててね。」
「では出発しましょう。目標『ユグドラシルルート』へのナビゲーションを開始します。私についてきてください。」
エイダを先頭に、悠司たちはCOAのフィールドに踊り出た。
【ケモノツキ_COA編2話_ある朝の目覚め】 終
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あふん、コピペミスってるorz
>>970の上2行くらい、代理投下の際に削ってもらえるとありがたいです
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気がつくと、一般的な住宅の廊下に立っていた。
目の前には扉がある。
扉を認識した瞬間、ことみの心を恐怖が支配した。
開けるな、と脳が警鐘を鳴らす。
――やだ
――行きたくない
けれど、意思に反して足が歩を進めていく。
―――やだ、やだ!
開けてしまったら確実に何かが終わる。
腕が上がり、取っ手を掴む。
扉が開かれた。
目に付いたのは、赤。
壁やテーブル、床に至るまで真っ赤に染まっていた。
鉄の匂いが鼻をついた。
床に、頭部も手足も無い胴体と、下顎が毟り取られた上半身のみの死体が転がっていた。
各部が人間の形を保っているだけに、それらは人間に対する冒涜だとしか言いようがない。
「あ……」
-
――気付いてしまった。
胴体が転がっているすぐ近くに、レンズがひび割れて壊れた眼鏡が落ちていることに。
下顎が毟り取られた上半身のみの死体が、母がいつも付けていたエプロンを付けていることに。
「いやああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」
自分の悲鳴で目が覚めた。
「組織」で、黒服に宛がわれた自室だと認識した。
震えが止まらない。
全部、思い出した。
思い出してしまった。
また叫ばないように口元を抑えつけながら、ギュッと目を閉じる。
その拍子に、涙が頬を伝って落ちて行った。
過去は変わることはない。
それは、夢という形で真実を突き付ける。
忘れていた事を責め立てるかのように。
逃げる事など許さないとでも言うように。
続く…?
-
時々、夢を見る
それは、悪夢と呼べるような記憶
仲の良い友達がいた記憶
よく、三人で一緒に遊んでいた
三人で、よく笑っていた
男の子の事が大好きだった
いつも一緒に遊んでいた男の子
最初は、二人で遊んでいた
いつも、二人で一緒だった
ある時から、三人になった
男の子が、その子を見つけて、自分達の仲間の輪にいれた
着物を着た、男の子か女の子か、よくわからない子
その子が加わってから、男の子は前よりもよく笑うようになった気がする
それが、ちょっとつまらなかった
ある日、男の子が風邪を引いた
お見舞いに行った時、男の子の家には、先に着物を着た子の姿があった
自分よりも先に、その子が先にお見舞いに来ていた
その事実がつまらなかった
キッカケが、何だったのか
よく、わからない
ただ、そのお見舞いの鉢合わせの直後辺りであった事は確か
-
男の子が、傷だらけの血塗れで倒れている
着物を着た子も、血塗れで倒れている
男の子の両親も、血塗れで倒れている
みんな、死んでいる
みんな、死んでしまった
みんな、殺してしまった
そうだ
私が、つまらないヤキモチ焼いて
着物を着た子を、罵倒して
その、瞬間
私の言葉は、見えない刃になって、着物を着た子を傷つけて
それを助けようとした男の子と
男の子の両親も
みん
な
「−−−−−−−−−−−−−−−−−−−っ!!」
悪夢はいつもここで終わる
私は、最期に私を罵倒して
私自身をズタズタに切り裂いて終わる
これが、いつもの私の悪夢の終わり
そして、この悪夢を見るたび、思い出す
-
そうだ、私は
人間だった、その頃に
大切な人達を殺し
「ちーちゃん」
そっと、目元に手が触れた
酷く優しい手
涙を流す私の目元を覆うような、その手
その手が、誰のものか
かけられた声が、誰のものか
私は、理解する
「……ゆーちゃん」
「大丈夫だよ、ちーちゃん」
手が、そっと離れていく
あぁ、あの子だ
あの男の子が、私を見下ろしているんだ
私は、それを理解して
男の子に、手を伸ばそうとして
………がしり
頭を、鷲掴まれた
-
「…っゆー、ちゃ……」
「大丈夫」
とても、とても、優しい声
けれど、私を見下ろしてくる男の子の、顔は
笑顔じゃなくて
優しい顔じゃなくて
ただ、ただ
憎悪に、染まっていて
「ちーちゃんは、まだ、何も思い出さなくていいんだよ」
優しい、けれど、憎悪に染まった声
直後……ばちっ!と、小さな音がして
私の意識は、闇へと落ちた
「……まだ、思い出すには早い」
気を失ったC-No.893を見下ろして、悠里は呟く
彼女を見下ろすその眼差しはどこまでも冷たく、どこまでも憎悪に染まっている
「思い出すのは、俺が死ぬ時だよ…………俺の復讐は、それで完成するんだから」
くつくつと、暗く笑って
悠里は、電子ロックで施錠されていたはずのC-No.893の自室から、退室していった
扉が絞められると同時に、電子ロックにより部屋は再び施錠され……悠里が侵入した形跡は、何も残らない
-
気を失ったC-No.893は、その内小さく寝息を立て始めた
眠りへと落ちた彼女は、直前まで見ていた悪夢の記憶を完全に失い、安らかな眠りに包まれる
彼女は、何度も悪夢を見る
人間だった頃の、罪の記憶を
彼女は、何度も護られる
逃げ出したくなる悪夢の記憶から
彼女は。気づける事はない
自分が、護られているのは
自分が復讐される為だと言う、その真実に
to be … ?
-
「いやー、思わぬ海外旅行。流石に北極は初体験だったわー」
「出口は北極と南極が一番メジャーなんだよ、『地球空洞説』って」
重装備の防寒具を抱え、やや春めいた学校町に降り立つ旗上詩卯と黒服の男
「それにしても、恐竜はいるわ地底人はいるわ巨人はいるわ、バラエティに富んでたねー、地球の中って」
「それだけ人間が色んな事を想像してたって事さ」
そう言って黒服の男は、駅の公衆電話へと向かい直属の上司へと電話を掛ける
「あ、もしもし? すいません俺です、Z-No.999です」
《お前が突然消息を絶つのはいつもの事だ、仕方あるまい》
「地球の内側だと衛星通信も届かないですからね。ともあれ例のアレに遭遇した一般人を保護してたんですけど、その後どうなってます?」
《駆除は順調に進んでいる。奴は人間にとっては脅威だが、我々のような黒服には擬態は通用せんからな》
その言葉に、Z-No.999は首を傾げる
「えっと、状況がちょっと飲み込めないんですが」
《何を言っている。昨今の失踪事件の原因の話だろう?》
「ええ、そうなんですがなんか何か違和感が」
《違和感? まさか私が擬態した奴らと入れ替わっているとでも言うつもりかね》
「いや、そうじゃなくて。今、一体何を駆除してるんです? 俺が遭遇した奴、擬態とかするなんて話は聞いた事無いですよ?」
その言葉に、上司が僅かに息を呑む
《こちらは現在、学校町に潜伏中の『物体X』の駆除活動中だ。炎や熱を操れる契約者と担当黒服のツーマンセルでローラー作戦中だ》
「げ……あー、でも『物体X』なんてのも放置しといたら大惨事確定だし……」
Z-No.999が妙な声を上げて言葉に詰まる
《どうした。報告は簡潔に述べろ》
「俺が遭遇したのは『物体X』なんかじゃないですよ。下手すりゃもっと厄介な奴です」
―――
-
人間の頭部から節足動物のような足を生やした物体が、きちきちと触手をくねらせ炎の中で消し炭となっていく
体液の一滴からでも甦り、あらゆる生物に寄生、擬態するこの『物体X』
だが擬態を用意に見破る事が出来て、弱点を把握されている状況ではその利点も無意味である
「汚物は消毒だー☆ なんちって」
自らの周辺一体を凄まじい炎で覆いながらも、対象である『物体X』以外は熱すら帯びていない
『泣く少年の絵』の契約者である少女は、大量の炎を自在に呼び寄せながらも、その炎で焼く対象を自在に選択できる
その敏捷性と擬態能力で不意打ちを得意としていた『物体X』だが、問答無用の広範囲攻撃には為す術も無かった
「黒服さーん、ターゲットはあと何匹ぐらい?」
「そうですね、あと」
担当の黒服がそう言い掛けた、その時
その上半身が、ぞぶりと消えた
「へ? 黒服さん?」
炎で紅く染まる世界の中、黒服の立っている場所で何かが蠢いているのが判る
「なんだかわかんないけど……焼けろっ!」
少女が焼却制限を解除すると、蠢いている物体が炎に包まれる
だがそれはぐつぐつと沸騰するかのように泡立つだけで、全く意に介した様子は無い
「何よ……聞いてないわよ、こんなの!? 燃えなさいよ、焼けなさいってば!」
悲鳴じみた声と共に炎の渦は更に強く熱く燃え上がるが
それは大きく膨れ上がり
炎も少女も
全てを飲み込んで
町のどこかへと消えていった
-
●
オルコット、エレナ、ユーグ、弘蔵は、≪テンプル騎士団≫と、凍死隊の中でも騎馬を有する者達を先頭にして、
各種の罠や散発的に行われる正体を現さない敵の攻撃を捌きながら≪ピリ・レイスの地図≫が指し示していた地点を目指して進軍していた。
先程から行われている敵の攻撃は随分と独特なものだった。
銃弾が飛んできたかと思うと、矢やスリングショットの類で投擲されてくると思しき石や木の実まで飛んでくる。
これでは敵の主な武器も、相手がどんな都市伝説なのかも一切分からない。
凍死兵達もそれぞれ攻撃に対して対応を取る事が出来るとはいえ、射かけられる攻撃は進軍のペースに若干の影響を与えていた。
弘蔵は≪テンプル騎士団≫達と攻撃を弾く役目をしていたが、やがて一人戦列から離れて正体不明の敵の正体を暴こうと行動し始めた。
……これほど探しても見つからないか……。
弘蔵は敵の姿を求めて攻撃が飛来してきた場所を探していたが、
攻撃が飛んできた所に辿りついた時には既に敵は姿を消しているという事ばかりだった。
今も道の両脇にずらりと並んでいる建物の一つに侵入した弘蔵だが、そこには既に何者かが居るような気配はない。
また逃げられてしまったようだ。
ここは敵が用意した戦場だ。何らかの抜け道がこの建物の内部に用意してあってもおかしくはない。
そう思いながら弘蔵は先程からこの異界を覆う冬が弱まっているのを感知していた。
-
……これは出鼻をくじかれたかな?
相手も馬鹿では無いという事だろう。こちらに対しての対処法を組んできているようだ。
建物の窓から見下ろすと、大きな道を長大な戦列が行進を続けている。
今のところ進軍自体にはなんら問題は起こっていないが、このまま敵がすんなりと徹心の異界の入り口まで通してくれるとは思えない。
……危険な要素を取り除く為に早くこの射撃の正体を掴みたい……。
思いざま、弘蔵は背に担った二本ある槍の内の一本を引き抜いた。
「〝小松明〟」
弘蔵の身体を炎が覆い、その姿が景色に溶ける。
その効果を確認しながら、弘蔵は違和感を抱いた。
……? 隠行の炎が広範囲に広がらない?
普段ならば他者の姿をも隠させる効果を付与する能力をもつ〝小松明〟の能力が、ぎりぎり弘蔵を隠す事が出来る程度にしか広がらないのだ。
……能力が……食われている? この空間の力か?
おそらくそうだろう。槍の様子からそう判断し、弘蔵は建物の窓から外へと飛び出した。
目指すのは道路を挟んだ向かいの建物の屋上だ。
跳躍一つで辿りついた屋根の上で、弘蔵は姿を消しているこちらの気配を敏感に察して
逃亡を図ろうとしていた気配へと即座に〝小松明〟を打ち振るった。
――捉えた! ……?
奇妙な悲鳴らしきものを上げて槍に貫かれた敵の姿に、弘蔵は眉をひそめた。
-
●
「オルコット、敵の正体……らしきものを掴んだ」
姿を隠していた火の粉を散らせ、オルコットのもとへと現れた弘蔵の歯切れの悪い台詞にオルコットは合点のいかない表情を浮かべた。
「曖昧だな、捕らえたのか?」
「ああ」
弘蔵は槍の穂先に刺して炎で焼きながら引き連れてきた敵をオルコットへと見せた。
「これは……?」
エレナが困惑顔で呟く。
それは大人一人分の大きさをしたきぐるみだった。
デフォルメしたリスを模ったと思われるそれは、頭部を貫かれた状態で炎に炙られて既にぐったりとしている。
オルコットはそのリスを見て呟く。
「マスコット……≪夢の国≫か」
「≪夢の国≫……以前学校町で暴れたという都市伝説か」
「だとしたらこの異界の情景にも説明がつく」
ユーグが言ってオルコットが頷く。
「彼の国にはこのリスのような兵、――彼等の流儀では住人が多くいるらしい。
武器がそれぞれ違うのは住人達が一番扱いやすい武器を使っているからだろう」
これはとんだ隠し玉を用意していたものだとオルコットは思う。
……大規模な戦力の増強は無いと踏んでいたが、これはやられた。
「〝小松明〟の隠蔽が上手く働かなくなっている。≪冬将軍≫の冬もどうやら似たような状況のようだ。これも≪夢の国≫の影響か?」
「≪夢の国≫は話の元となった娯楽施設の事業拡大の話に関連して国の領域を侵す能力を妨害する能力を保持していると以前聞いた。おそらくはそれが原因だろう」
得心したように弘蔵は唸る。オルコットもどうしたものかと思考する。
……国を治める者の力故の冬の緩和というわけか……王権とはまた厄介な代物を投入してくれたものだ。
-
恐るべきはこの土壇場で≪夢の国≫の協力を取り付けた敵の顔の広さだろう。
オルコットはリスの姿をした住人を件で叩き斬る。
光となって住人は消えていくが、彼等は王が滅びない限りは死なない住人として蘇って来るのだろう。
急がなければならない。そう心に思い、オルコットは軍全体に喝を入れる意味も兼ねて号する。
「この空間に居る間は敵の攻撃の主体は≪夢の国≫の住人と思え!」
同時に弘蔵へと顔を向ける。
「弘蔵、お前に雷の主の討伐を任せたい。降って来る数は少ないが目ざわりだ」
「了解した」
先程まで鳴り響いていた驚霆は既になりをひそめている。雷の主は無駄弾を撃たない主義らしい。
しかし未だ空には雷の気配が漂っている。この後敵の将とぶつかる時に邪魔をされるわけにはいかない。
応じた弘蔵はどこか楽しげに腰に差した刀を引き抜く。
「〝抜丸〟、探せ」
引き抜かれたのは大蛇が襲いかかった時、勝手に鞘から抜けて大蛇を切ったという霊刀だ。
雷の主を追わせるつもりだろう。弘蔵は宙に浮き、断つべき敵を捉えようとしている刀に視線をやりながらオルコットに言う。
「いくらか兵をもらっていくぞ」
「必要なだけ持って行くといい」
「景気がいいな。では武運を祈る、オルコット」
「そちらも、佳い戦を」
「ああ、――首を取って来る」
そう言い置いて100からの兵と共に離脱する弘蔵を見送って、ユーグが本隊に注意を促す。
「礫の類は目くらましだ! 雷撃と銃矢にだけ注意しろ!」
オルコット達本隊は進軍を続ける。≪夢の国≫内部、見方によっては不気味にも綺麗にも映るこの国は、
オルコット達にとっては戦いづらい戦場であるようだった。
-
●
Tさんは水路を花弁が一枚流れていくのを視界の端に捉えた。
……氷が融けている。
「夢子ちゃんがやってくれたか」
重い防寒具を脱ぎ棄ててTさんは最初の面倒は処理できたな、と一息をつく。
≪夢の国≫の能力をもってしても冬の影響が少なからず出ているのか、
多少の肌寒さは感じるが、戦いが始まって体が温まればちょうど良い気温になるだろう。
進軍の、地響きにも似た音が徐々に近づいてくる。視界には両脇を水路で挟まれた道の奥の方から突き進んでくる軍勢が映っていた。
……来る。
大所帯で進軍してくる彼等はオルコットやエレナやユーグ、そして≪テンプル騎士団≫と騎馬隊を先頭にして道を猛烈な勢いで駆けて来る。
徹心の異界への入り口がある場所までの道を一直線に駆け抜けていく算段だろう。
……最初から≪ピリ・レイスの地図≫を無効化しなかった恩恵だな。
≪ピリ・レイスの地図≫によって徹心の異界の入り口の位置が判明しているため、
彼等は分隊をこしらえて≪夢の国≫中を捜索する必要もなく一丸となって目的地までの直線距離を駆け抜ける事が出来る。
それは敵の全勢力が固まっているということであり、勢いに気を呑まれそうではあるが、
「この道も、高部徹心の異界へと繋がる入り口の位置も、それらの条件を全て飲んだ上での配置だ。
――仕掛けにかかってもらうぞ、≪神智学協会≫」
一網打尽に罠にかけるのにこれほど最適な布陣もなかった。
Tさんはタイミングを見計らって手を振り上げる。
「破っ!」
Tさんの手から放たれた閃光を合図に、配置に付いていた≪夢の国≫の住人が応じた。
進軍してくる≪神智学協会≫の両側にある建物が爆発によって倒壊する。
火薬による爆発だ。
量と配置を計算されて積まれた爆薬の爆発は、建物の倒壊する方向を正確に道の内側、侵攻してくる≪神智学協会≫の軍勢へと向けた。
-
倒壊してくる建物に対する≪神智学協会≫側の反応は率直だった。
軍勢の先頭に立って全体を牽引していた≪テンプル騎士団≫の騎士達が総長ユーグと共に即座に戦列の側面へと移動してバフォメットの加護を展開し、
各々の武器を振るって倒壊してくる建物を弾き飛ばしたのだ。
被害無しとはいかないが、それでも彼等の進軍を止める程の被害を与える事は出来ていない。
≪テンプル騎士団≫が倒壊した建物を防いでいる横を大して速度を落とす事無く突き進んでくる軍勢を見据えてTさんは呟いた。
「そう簡単にはいかないか……」
手を再度振り上げる。
「第二陣、――今だ!」
二回目の閃光に応えて再度爆発が発生した。
今度は≪テンプル騎士団≫が先程の爆発への対応で手が回せない、先行した軍勢の本隊の半ばにあたる位置での爆発だ。
建物の爆発と呼応するように、同時に道そのものに仕掛けられた爆薬も爆発する。
倒壊した建物と道は、そのまま軍勢を半ばから分断するような形で道を埋めた。
爆音の耳を害するような残響、瓦礫と埃、大量の土砂によって分断された道のありさまを確認してTさんは苦笑する。
「夢子ちゃんに怒られそうだ」
背後にはいくつもの気配がある。それらに対してTさんは語りかけた。
「王の意志の下、俺の指示を聞いてくれる事を感謝する。いくら死が遠いとはいえ、俺達の相手は≪テンプル騎士団≫だ。
呪詛に耐えられなくなったらすぐに退いてくれ。くれぐれも無茶な真似は慎むように、でないと王が悲しむ」
無言のうちに了解の意を受け取って、Tさんは三度手を振り上げた。
「態勢を立て直される前に行くとしようか。これをもって敵を完全に分断するぞ!」
気配の群れ――先程まで≪神智学協会≫へと射撃を浴びせていた異形の≪夢の国≫の住人達を率いて、
Tさんは分断された道に取り残されたユーグが率いる≪テンプル騎士団≫と、≪冬将軍≫が喚び出した凍死兵の集団の方へと移動を始めた。
-
あー、どうも、こんにちは。魔法少女アカリちゃんです
嘘ですけどね
さすがにこの歳で魔法少女を名乗るのは、いえ、どこかの白い魔王さんよりは若いですが
そんな話はその辺に置いておいて
今は綺龍君の物語の話ですよぉ
要望があったんで、トゥルーエンドの為にちょおっと時間を巻き戻しますよぉ
私はあのエンドでも全然問題ないんですけどね
それじゃ、ええと、どのセーブデータでしたっけ
たしか、バレンタインの後、D-No.813が綺龍君を捜しているとこでしたね
覚えてる人なんているんですかね?
あぁ、これだこれ
それじゃ、始めますよぉ
-
「リュウくん、どこ……?」
黒服の少女、D-No.813は走っていた。
綺龍に会いたい。話し合いたい。
過激派の黒服に何か危ない任務をさせられているのではないか。そんな不安が足を動かす。
早く何とかしないと、綺龍が錆びない鉄柱に飲み込まれてしまう。そんな危機感が足を速める。
気がつけば、辺りは田園風景。学校町の北区にいるようだった。
ふと、山の中の工場が目についた。
どうせ、あてなど無い。なら、あんな人目につきそうにない場所も調べてみよう。そんな事を考え、少女はその山を目指して走りだした。
終
-
「私、きれい?」
突然、マスクをした女にそんな事を尋ねられたら、普通なら驚くだろう。中には、あの都市伝説を思いだし怖がる人もいるかもしれない。
「マスクしてて分かるわけないだろ。馬鹿かお前」
けれどその少年は、臆する事なくそう答えた。
少年はその口裂け女を全く怖がっていなかった。なぜなら、少年はその口裂け女の契約者だからだ。
「違いますよ。ぜんっぜん違います。Not契約者、Yes恋人です!」
「地の文に嘘を教えるな、アホ女」
「もうっ、カズ君ったら照れちゃっtいてててて、痛い!痛いです!カズ君!?痛い!和成さん!足踏んでます!!」
とにかく、愉快な関係だった。
「和成さん!お迎えにあがりました!」
学校も終わり、鞍馬和成が校門をでると、マスクの女が話しかけてきた、
のを無視して和成は歩きだした。
「和成さん!?なんで無視するんですか!?……ハッ、これが放置プレイ!?あぁカズ君、でもでも私にはマゾちっくな趣味は無いですよぅ」
「お前、少しは静かにできないのか。つか、なんでいるんだよ」
速足で歩きながら、和成は口を開いた。このまま無視し続けると往来のど真ん中で何を言いだすか分からないからだ。
「なんでって、契約者の身辺警護は都市伝説の義務!そして、一緒に下校という甘酸っぱい青春の1ページを実行sああっ!!何故逃げるんですか!?」
逃げると言っても、口裂け女は100mを10秒で走る。人間である和成がいくら走っても逃げれる相手ではない。
-
不意に、和成が走るのを止め、自分の足を口裂け女の足に引っかけた。
「うえぁ!?」
急に立ち止まる事などできず、口裂け女はそのまま、転んだ。そして、地面には、犬の糞があった。
「っづおおぉぉぉぉぉぉ!!!」
女性としてどうなのかと言いたくなる奇声を発しながら、口裂け女は身体を強引に曲げ、糞を避ける事に成功した。
「か、和成さん!?危ないじゃないですか!?」
「…………チッ」
「舌打ち!?舌打ちしました!?」
口裂け女は立ち上がり、和成に近寄った。
「……もしかして、和成さんは私の事が……ありえないとは思いますが…………嫌い?……なんて」
「言わなきゃ分からないのか?」
「そうですよね!愛する二人の間に言葉など不要!」
「嫌いだ」
「……………………カズ君たっらぁ、ツンデレさんなんですからぁ」
「……どこまでも前向きな奴だなぁ。……なんでこんなのと契約したんだ俺は」
和成の呟きに、口裂け女はすぐに答えた。
「二人の馴れ初めはですね。都市伝説に襲われていたのを、私が助けた事に始まります。そこから始まる二人のラブロマンス!」
「赤い紙が欲しいか?青い紙が欲しいか?」
「そうそう、カズ君がこんな風に声をかけられて…………おや?」「お?」
二人が声の方向を向くと、赤と青の奇妙な恰好をした男が、都市伝説「赤い紙、青い紙」が立っていた。
-
「和成さん」
「なんだ?」
「私、この戦いに勝ったら、和成さんにプロポーズするんです」
「断る」
「赤い紙が欲しいか?青い紙が欲しいか?」
「あぁん、そんな冷たい事言わないでくださいよぉ。じゃあじゃあ、『愛してる(はぁと)』って言ってください。それだけで私頑張れますから」
「知るか」
「赤い紙が欲しいか?青い紙が欲しいか?」
「うぅ〜、じゃあ良いですよっ。言うまで和成の事守ってあげませんっ」
「つまり、お前は自分の我が儘の為に俺を危険に晒すんだな?うっすい愛だなぁ」
「なっ!?そんなわけないでしょう!!」
「赤い紙が欲しいか?青いk」ガスッ
赤い紙、青い紙が途中まで言って、止まる。その顔面には、包丁、鋏、メス、鉈が刺さっていた。
「どうですか!私のカズ君への愛なら、こんな敵瞬殺ですよ!さぁ、和成さん!私に『愛してる(はぁと)』と……あれ?」
気がつけば、和成がいない。
「帰るぞー」
その時、すでに和成は、ずいぶん遠くまで歩いて言っていた。
「あぁ!待ってください!」
そんなこんなで、二人の恋人は日々を過ごしている。
「待て!誰が恋人だ!!Not恋人Yes契約者だ!」
「んもぅ、ダメですよカズ君。地の文に嘘教えたら」
「黙れあんぽんたん女ぁ!!」
終
-
……正直、自分には勿体ない彼女だと思う
青年、鈴村 賢一は、彼女の手料理を食べながら、そんな事を考える
「ん〜?どうしたの?」
「いや、なんでもないよ」
可愛らしく小首をかしげた彼女に、賢一は笑った
それに釣られるように、彼女、別部 蘭も微笑む
相変わらずきれいな笑顔だな、と、賢一は見とれそうになってしまう
「どう?美味しい?」
「うん、美味しいよ。蘭は、料理が上手だね」
…彼女と付き合うようになったのは、ただの偶然
不良に絡まれていた彼女を助けたのが、キッカケだった
それ以来、付き合いが始まって
今ではこうやって、彼女の家に招かれるようにまでなった
蘭には、両親がいない
仕事で外国に行っているのだと、彼女は言っていた
寂しくない?と聞いたら、ちょっと、と寂しそうな笑顔を浮かべてきて
できる事ならば、ずっとそばにいてあげたい
そう、願う
「ふふ、褒めてもらえて、うれしいな」
賢一の褒め言葉に、蘭は笑う
幸せそうに笑う
「じっくり、味わって食べてね」
-
「うん、もちろん。蘭が作ってくれた料理だからね」
ぱく、と、彼女の手料理をじっくりと味わっていく賢一
少し味が濃いかな、とも思ったが、濃い目の味の方が好みだから問題ない
賢一は、幸せな気持ちに包まれていた
だから、気づかなかった
「…………あ、れ?」
−−−−−−命が消える、その瞬間まで
料理に入れられていたそれに、気づけなかった
よいしょ、と
蘭は、賢一の死体を背負って、地下室へと向かう
うんしょ、よいしょ、と扉を開けた、その先
地下室には、棺が置かれていた
一つじゃない
二つ、三つ、四つ…………全部で、35個くらいはあるだろうか
「よいしょ、と」
その一つの蓋を開けて、蘭は賢一の死体をそこに横たえた
うん、と満足げに笑って、棺に賢一の名前と年齢を書きこんでいく
-
周りの棺も、全て同じ
誰かの名前と年齢が書きこまれている
その内の二つには、「別部」と言う苗字が
「別部 正人」と「別部 清美」
蘭の、両親だ
二人も、棺に納められているのだろう
今まさに、棺に納められていっている賢一のように
「これで、賢一君は、私のものだよね」
眠るように死んでいる賢一
それを見下ろして、蘭は幸せに幸せに笑う
「これで、賢一君は私以外の女の子と話さないもんね。私以外の女の子に笑いかけないもんね。これでずっとずっと、私のものだよね」
自分に笑いかける笑顔は、自分だけのもの
自分にかけてくれる声も言葉も、自分だけのもの
自分の頭を撫でてくれる手だって、自分だけのもの
その手で他の誰かをなでるなんて、許さない
その手で、他の誰かに触れるなんて、耐えられない
だから、殺した
「ふふ、便利な能力、手に入れちゃった。これで、賢一君も甫君も毅君も直弥君も丈君も誠一君も、みんなみんな、永遠に私のものだねっ」
蘭は、都市伝説契約者だ
契約しているのは、「ベラ・レンツィ」
……彼女を都市伝説と呼んでいいかどうかは、微妙である
-
ただ、できる事ならば「都市伝説だと思いたい」存在ではあるだろう
実の息子を含め35人もの男をヒ素で殺し、今、蘭がしているように、その死体を棺に入れて
そして、毎晩のようにローソクで照らしながら、棺の一つ一つを開け、殺した男たちの死体を見るのを毎晩の楽しみにしていたという………まさしく、狂気にとらわれた女
たまたま、それと契約した、その瞬間から
蘭の精神構造はそれに乗っ取られてしまったのかもしれない
ヒ素を生み出す能力を手に入れて、ベラ・レンツィがしたように、愛する相手を殺し続けるのだ
賢一を含め、全員の死体を確認していって、蘭は微笑む
幸せそうに、幸せそうに笑い続ける
いつか、誰かがとめるまで
彼女は、同じ殺人を繰り返して
この地下室には、棺桶が増え続けるのだろう
fin
-
−−−−何が、いけなかったのだろうか?
それは爆風で吹き飛ばされながら、そんな事を考えた
ヴァレンタインが、子飼いを率いて襲撃しようとしていた古ぼけた教会
明らかに人外の気配がするそこに、一応、彼らは警戒して近づいていたのだ
ただ
教会の入り口に設置されていた監視カメラ
それが、彼らの姿を捕えた時には、もう、遅かったと言うしかない
電子音が鳴り響いた
それは、子飼いの数人が所持していた携帯電話から鳴り響いた音
彼らの携帯電話の液晶画面は、異常な光を発していて
直後、それは爆発した
「っち…どこで察知されたのかしら?」
その身を石のガーゴイルに変え、たまたま傍にいた子飼いの一人を爆風の盾にしたヴァレンタインは毒づいた
爆風の盾にされたその子飼いは、はて、何の契約者だったか……まぁ、どうでもいい
どちらにせよ、この状態では使い物になるまい
即座に、教会へと視線を向ける
何かが飛び出してくる様子はない
…遠見系の能力か何かでこちらを見て、敵対者と判断したのだろうか
「どちらにせよ、野蛮だこと」
-
自分達がしようとしていた事を棚に上げ、ヴァレンタインはぼやいた
…まさかの、先制攻撃
出鼻をくじかれた
だが、全員やられた訳でもない
攻撃してきたのはあちらからなのだ
……反撃しても、何の問題も生じない
子飼いの一人が、体を変化させながら教会へと突撃していく
あれは、確かワーウルフか何かの類だったはず
めきめきとその身を獣の体毛で覆っていきながら、教会の入口の階段を、一っ跳びに跳び越えていこうとしていた
だが
「引きずり込め、「13階段」」
その声は、恐らくは教会の中から聞こえてきた、声
その瞬間、教会入口前の、その小さな階段から……ぬぅ、と腕が伸びて
血塗れのその腕はワーウルフに変化した子飼いの足を掴んで、階段の中へと引きずり込んだ
そして、教会から、何かが飛び出してくる
それは、階段に飲み込まれていこうとするワーウルフを踏み台にして跳びあがり
その牙と爪を、ヴァレンタインに向けてきた
実のところ、学校町 北区の古ぼけた教会を拠点兼住居にしているマッドガッサー一味は、この数日間、ずっと警戒を続けていた
キッカケは、誠の師である禰門 樹が、何者かとの戦いで意識不明の重体に陥った事実と、真夜中、空中散歩を楽しんでいたロレーヌが「教会」メンバーを目撃した事だ
魔女の一撃……すなわち「魔女」であるロレーヌと、「教会」と敵対を続けているマリ・ヴェリテのベート
この二人を擁している彼らは、酷く警戒した
たとえ、ロレーヌやマリを襲撃するためにやってきた相手ではなかったとしても、火の粉が降り注ぐ可能性は十二分にあるからだ
-
学校町にやってきた「教会」メンバーの情報が、誠の友人である直希からもたらされた事で、警戒はさらに強まる
故に、彼らは待ち構えていたのだ
監視カメラにさえ移れば、スーパーハカーによって電話番号は調べ上げられる
そうすれば、恵の「爆発する携帯電話」の能力はいつでも発動できるのだ
明らかな殺意を滲ませて近づいてきた、その相手に
彼らはただ、それ相応の対応をしただけの事だったのだ
牙と爪での攻撃をヴァレンタインは体を石に変える事で受け止めた
…が、ピシッ、と
小さな音を立てて、体の表面にヒビが入る
舌打ちして、ヴァレンタインはマリ・ヴェリテから距離を取った
子飼いに指示を出そうとしたが、そちらにはマリ。ヴェリテの後を追って教会から飛び出してきた青年が一人で相手をしており、こちらへのサポート指示など無理だろう
「ずいぶん乱暴だこと、ヴァタシ達が何かしたかしら?」
「これからしようとしてたんだろ」
それに、と
マリ・ヴェリテは牙をむきだし、笑う
「俺はお前らに、散々な目に合わされてきたしなっ!!」
地がえぐれるほどの力で地を蹴り、マリ・ヴェリテは再びヴァレンタインに飛び掛かってくる
…あの力で再び突撃されては、不味い
背中から生えている石の翼で飛びあがる
-
他の子飼い連中は、青年の相手にならずに叩きのめされているように見えた
まったく、役立たず共め
「空なら、ヴァナタの攻撃だって………っ!?」
「届かない、か?」
何を、踏み台にしたと言うのか
察するに、樹木か、電柱か
三角跳びでもするように、ヴァレンタインが飛びあがったその位置まで……マリ・ヴェリテは軽々跳びあがってきて
そして、拳が合わせられ………ヴァレンタインの翼へと、叩きつけられる
「っが!?」
バキィッ!!と
響いた、鈍い音
この一撃で、ヴァレンタインの片翼は打ち砕かれて
その体は、地面へと落下していった
to be … ?
-
うめ
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