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「都市伝説と戦う為に、(ry 代理投下スレ
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規制中・本スレが落ちている、など本スレに書き込む事ができなかったり
ちょっと、みんなの反応伺いたいな〜…って時は、こちらにゆっくりと書き込んでいってね!
手の空いている人は、本スレへの転載をお願いいたします
ぶっちゃけ、百レス以上溜まる前に転載できる状況にしないときついと思うんだぜー
ってか、50レス超えただけでもきっついです、マジで
規制されていない人は、そろそろヤバそうだと思ったら積極的に本スレ立ててね!
盟主様との約束だよ!!
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そして地獄が―――1日の授業が終わって、俺は家路についていた
(清太>あぁ、やっと解放された・・・も、もう来ないよな!?
キョロキョロと辺りを警戒しながら歩く
何で俺がこんなことを・・・
(セキエ>姉ヲ好クヨリ遥カニマトモダト思ウガ
(清太>うるさい! 俺にだって選択権はあるんだぞ!?
(セキエ>法律的ニハ『姉妹』トイウ選択肢ハ無イ
(清太>ちくしょう! 愛に兄弟も姉妹も関係ないのに!
姉ちゃんとなら一生2人で仲良く暮らせる自信があるのに!!
(セキエ>駄目ダコイツ、モウ如何ニモナラン・・・
叫びながら歩いていたら
(清太>――――――――おわっとぉ!?
後ろから邪気を感じて、反射的に横へ跳んだ
今立っていた場所に、大きくて真っ赤な鉄の塊が落ちてきた
これは・・・金槌?
(セキエ>清太、コレハ「赤ハンマー」ダ!
(清太>「赤ハンマー」?
距離を取って振り向くと、確かに赤く巨大なハンマーを持った男が立っていた
と、次の瞬間
(赤ハンマー>ア゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ァァァァァァァァァ!!
(清太>っ!? な、何だ何だ??
-
(セキエ>「赤ハンマー」ハ極度ノ恥ずかしがり屋デナ
己ノ存在ニ気ヅカレルト、顔ヲ真ッ赤ニシテ・・・
ハンマーが頭上から振り下ろされる
右手を水晶にして、その衝撃から免れた
(セキエ>[相手モ同ジ目ニ、ツマリ、ハンマーデ殴ラレテ血塗レニサレル]
(清太>早く言えよっ!? かなり厄介じゃねぇか、よぉ!
『クォーツキック』を喰らわせようとするが、デカいハンマーを持ってる割に軽く避けられ、反撃を狙ってくる
が、難なくそれも右手で防ぐ
(清太>っへへ、お前の攻撃なんて効かないzうわっ!?
振り下ろされるハンマー
何度も、何度も、何度も何度も何度も―――――これ、って・・・
(セキエ>[マズイ、邪気ガ溜マッテシマウゾ!]
(清太>「鬼」の時の二の舞かよ・・・!
何とか受け流して間を取ったけど、「赤ハンマー」の動きが早すぎて、また同じ状況を作り出す
段々、痛みを感じるようになってきた
邪気を、吸い過ぎてる
(清太>くっ、そぉ・・・! どうすれば・・・!?
さっきよりも高く振り上げられたハンマーが、
俺に向けて力強く下ろされた―――――
-
「超級!!覇王!!電・影・だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!」
叫び声と共に突然飛んできた電気の塊が、「赤ハンマー」を吹き飛ばした
その光弾は、人の形となって、俺の目の前に立った
あまりに驚いて、喉が詰まりそうになった
(清太>・・・み、実?
(実>無事だったか清太ぁ!! 愛してる!!
(清太>いやだからやめろっての!? ってか、あんなこと出来たのかお前!?
(実>出来ない!
(清太>・・・へ? ちょ、嘘言うなよ、たったいm
(実>俺は清太に嘘なんて吐かん!!
(清太>よ、余計意味分かんない・・・
と、「赤ハンマー」が立ち上がり、こちらに歩み寄ってきた
俺が前に出ようとしたが、実がそれを止めた
(清太>お、おい、実・・・
(実>誓って嘘は吐かん! ただ・・・嘘がホントになるだけだ!!
と、やっぱり意味不明なことを言って、実は「赤ハンマー」に向かっていった
(実>ばぁぁぁぁぁぁくねつ! ゴッドゥ!! スラァッシュ!!
どういう原理か分からないが、彼女の手からライトセイバーのようなものが伸びて、
真っ赤なハンマーに叩きつける
それらは火花を散らしながらぶつかり合ったが、
ハンマーは真っ二つになって、鈍い音を立てて地面に落ちた
-
(実>俺のこの手が真っ赤に燃えるぅ!!
実が出した右手から、本当に炎が燃え上がった
(実>勝利を掴めと轟き叫ぶぅ!!
「勝利を掴めぇぇぇぇぇぇ!!!」と叫び声が響いた
(実>ばぁぁぁぁぁぁぁくねつっ!! ゴォォォォォッドゥ!! フィンガァァァァァァァァァァ!!!
燃え上がる右手は、武器を失った「赤ハンマー」の顔面を捉え、鷲掴みにした
ところで、思い出した事が1つだけある
(実>ヒィィィィィィィィト・・・・・
彼女――空出 実の最高握力は
(実>エンドォォォォォォォォ!!!!
――――――――200kgだ
ぐちゃり、血と肉と骨を撒き散らし、「赤ハンマー」は自身が真っ赤になってそのまま消滅した
言葉が、全然出てこなかった
(清太>す・・・すげぇ・・・
-
ただ、これだけしか思い浮かばなかった
(実>清太ぁ!!怪我は無いか!?歩けないなら俺がお前を背負っていくぞぉ!!
(清太>実・・・お前、契約者だったのか?
(実>あぁ!俺は「嘘から出た実」と契約した!!
マジかよ・・・そ、そういや、何時だったか師匠が『都市伝説と契約者は引かれやすい』とか言ってたような・・・
今になって初めて理解したよ
(実>それより無事そうで何よりだ!!結婚しよう!!
(清太>だから唐突過ぎるし、出来ないしする気もないからな!?
ったく、やっぱりしつこいな、こいつは・・・でも
(清太>ま、まぁ、一応助けてくれたしな
・・・サンキューな、実
言った直後に、彼女は大粒の涙を流して、大きな声で泣き出した
(清太>ッハァ!? っちょ、ど、どうしたんだよいきなり!?
(実>うおぉぉぉぉぉぉぉ!!! 清太に感謝されたぁぁぁぁぁぁぁx!!!
やっぱりお前が好きだぁぁぁぁぁぁぁ!!お前が欲しいぃぃぃぃぃぃぃぃ!!清太ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!
(清太>・・・・・・あ、そぅ・・・
・・・感謝して後悔した・・・かも?
これは、純粋に仲間が出来た、ってことで、いいのか?
(セキエ>[イッソ嫁ニ貰ッテシマエ、妾ハ祝ウゾ2人ノ仲ヲ]
(清太>黙ってろ!?
...see you NEXT
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気が付けば、見知らぬ和室にぽつんと立っていた。
正面には障子があり、他はふすまで仕切られていた。
ふすまの奥には、仕切られた部屋が延々と続いていることも何故かわかった。
障子には中庭にある竹笹の影が揺れていた。
さらさらと、葉の擦れる音が聞こえる。
遠くからターン、ターンと襖を勢いよく開く音が聞こえる。
徐々に大きくなっている。
次々とふすまを開け、何かがこちらへ全速力で駆けてくるのだ。
ケラケラと愉しそうな男の笑い声が聞こえる。
身体は凍りついたように動かない。
絶対に振り向いて見てはいけないと、そう感じていた。
背後のふすまが開く。
何かが首筋に生暖かい吐息をかける。
何かが耳元でボソボソと呟い――
目を醒ました。
薄暗い部屋だ。
「ん? もう起きたのか。まだ3分も経ってないぞ」
若い女の声がした。
姿は見えない。
「まだ眠っとけ」
意識が落ちる。
-
さきほどと同じ場所に立っていた。
ターン、ターンとふすまを開ける音がした。
気付いた瞬間、横へとかけ出しふすまを開けた。
同じような、四方をふすまで仕切られた部屋があった。
さらに奥のふすまを開けて走りだすと、ふすまを開く音も追ってきた。
しかし、走っても、音との距離はだんだん近くなっていく。
もう少しで音に追いつかれそうになったとき、ふすまではなくドアが現れた。
迷わずにそのドアを開け入った。
ドアを閉める音と、最後のふすまを開く音がするのは同時だった。
視界が真っ赤に染まる。
窓から夕陽の差しこむ小さな部屋だった。
部屋の中央には大きな巾着袋があった。
子供くらいなら隠れられそうな、大きな袋。
まるで魅入られたように、袋から目を逸らせない。
わずかに開いている袋の口の陰。
それを、恐怖と期待の混じった目で見つめてしまう。
早く、早く夢から覚めないと
夕陽が陰ると袋が開いていくような気がして。
早く。早く。
終
-
●
モニカは寝台に拘束されたまま、ウィリアムの≪心霊手術≫を受け続けていた。
腹に手を差し入れられてそのまま中をかき回される不快感と、手と腹の接合部から溢れて来る血液の生暖かい感触に苛まれて嫌な汗をかいていると、不意にウィリアムが歓喜の声を上げた。
「見つけたぞ!」
その言葉と共に、モニカは自分の中の形の無い何かがウィリアムの手によって一つにまとめられ、固まって行くのを感じた。
な、なに、これ……?
得体のしれない不安に唇を堅く引き結ぶ。
固形物のように体内で形を得たそソレは、ウィリアムの手によって握りつぶされ、モニカの中で弾けた。
「――ッ!」
モニカが上げる短い苦悶の声を合図にするかのように、ウィリアムは宣言した。
「術式終了だ」
-
そうして、長らくモニカに不快感を与えていたウィリアムの手が引き抜かれた。
粘性を持つ液体から両手を抜きとる水音を一際大きく響かせ、ウィリアムの両手がモニカの中からずるりと抜けだす。
身構えをする間も無い突然の動作に、モニカはえずいて身を捻った。
「手こずらせてくれた……しかし流石に根が深いね。契約解除でなく封印という形でしかこれを隠蔽できないわけだ。ともあれ、これで封印は解けたよ」
寝台の上で苦しそうにえずくモニカを特に問題は無いと無視して、ウィリアムは大儀そうに息を吐く。
「まったく、追われている最中の短い時間の中で施したにしては大した封印だ。≪悪魔の密輸≫と言ったかね、レニーとトリシアの都市伝説は。
元々は体内に麻薬を埋めて密輸を行う都市伝説だったと記憶しているが、本来形を持たないモニカ嬢の都市伝説を体内という異界の中に封じ込んでしまうのだから恐れ入る。
彼等は普段、穏便に事を運ぼうとしていたものだが、いざという時は思い切りが利く……惜しい人材だったのだがね」
ガラスを連ねたような形状をした、妙な機材をいじりながらモニカの上半身と腕を拘束していた器具を外すと、
ウィリアムは≪心霊手術≫で溢れた血液を拭くためのタオルと替えの簡素な衣服をモニカに放り投げた。
「さて、体に問題は無いかね? モニカ嬢」
モニカは自分の身体に何か変化が起こっていないかを探りながら服を着ていく。その間中決してウィリアムの方を見ようとはしない。完全にコミュニケーションを拒否する構えだ。
ウィリアムは反応を示さないモニカから早々に機材へと目を移して計器類を確認し、大丈夫だろうと判断を下す。さあ、と前置きを入れて、
「モニカ嬢。これで君は君の本分を果たす事が出来るぞ!」
「本分……」
その言葉にモニカは内心首を傾げた。
-
封印が解かれたとは言っても何を封印していたものなのかが分からない。
先日からのウィリアムの話から想像するに、封印を施したのが両親であり、その封印されていたものこそがその都市伝説なのだろうが、
そもそもモニカには都市伝説と契約した記憶などないのだ。
謎はあり、何がウィリアムの手によって起ころうとしているのか気になりはするが、今モニカにはそれ以上の心配事があった。
「……フィラちゃんたちはどうなったの?」
先程ウィリアムは、培養器の中から幾体もの異形の怪物達を由実達へと差し向けていた。
そのすぐ後にウィリアムがマイクを通して話していた内容を聞きとると、どうやら怪物達と由実達は遭遇してしまったようだった。
無事ならいい。そう思いながらの問いかけに、ウィリアムは頷きを作った。
「彼女等は今は生きているよ。うん、よく粘る。しかし囲まれているね、このままではいずれ押しつぶされることだろう」
「そんな……!」
悲鳴のように上ずった声が漏れ、未だ拘束されたままの下半身が寝台の上で窮屈に動きを制限された。
その不自由な状態が、とにかく行動を起こそうとするモニカの気を加速度的に焦らせる。
このよく分からない施設に攫われてしまったのは自分が迂闊だったせいだ。この上、自分をこの施設から助け出そうとしてくれている優しい人達にひどい事が起ころうとしている。
その事にモニカは焼けつくような焦燥を覚えて、その原因であるウィリアムを睨み上げ、
対するウィリアムはふむ、と興味深げに訊ねてきた。
「君は、自分が何故こうして助けられようとしているのか、知っているかね?」
-
●
無言を返事とするモニカへと、ウィリアムは更に言葉を連ねてきた。
「モニカ嬢、君の身体は都市伝説との親和性を高める為に様々な手を尽くしてあると以前話したね?
生まれる前からこちらで手を加えて都市伝説との親和性を高めて誕生した君は、≪神智学協会≫という組織の研究の集大成であり、
オルコットが目指す目的の為の、二つの都市伝説を収めるための器だ」
そう言ってウィリアムは慈しむ、という表現が当てはまるような、完成された芸術品を愛でるかのような手つきでモニカの頬に触れる。
「君は気付いているかい? 今回君や君が姉と呼んだ女も。今こうして駆けつけている者達も。倒れて行った、あるいは倒れていく者達も。そして君の両親も――」
ここから先の言葉を聞いてはいけない。何故か本能的にそう思ったモニカは手で耳を塞ごうとし、しかしその手はウィリアムに抑えつけられてしまった。
ウィリアムの言葉が妨げられる事なく、耳から心へと侵入する。
「君を人として見ていない。君は誰かにとっての争いの火種で誰かにとっての悲願成就の為の道具で、そして誰かにとっての疫病神だ」
「――ちが」
「違いなどしないよ」
反射的に発されようとしていた反駁の言葉はウィリアムにその出鼻をくじかれる。
「むしろ君にそれだけの価値が付属していない限り誰も君を助けに等来るはずが無いだろう?
実の家族や家族のように親しかった存在が争い合う火種になったような君の存在を、本当に愛する者などいると思うかね?」
耳に飛び込んでくる言葉にただモニカは首を横に振って拒否を示す。
しかし疲労とストレスに思考力は削ぎ取られ、心理的な防壁はもろくも崩れ去る。
そうしてウィリアムの言葉は否応なしに受け入れられていく。
口角をつり上げた笑みで、ウィリアムは断じた。
「君は人ではない、道具だ。それも、とてもとても貴重で危険な最高の逸品だよ!」
-
言葉は刃となってモニカの心を抉った。
実の両親と祖父の死。親しかった騎士が行った凶行。
いつの間にか操られ、姉と慕う女性を危機に晒した事実。
複数の組織間の抗争。その過程で失われていった多くの命……。
この数日で見て来て、知らされてきた事が脳裏を埋め尽くす。
わたしは……疫病神……皆を不幸にする、危険物で……わたしは……。
この数日でじっくりと悩む間もほとんどなく、様々な事実を突きつけられてきたモニカには、ウィリアムの発言は反論のしようのない事実に思えた。
「君はとても我慢強い。ワタシにもそれがよく分かる……。
そしてね、モニカ嬢、ワタシには君が我慢して溜めこんでしまっているモノが見えるようだよ。精神の奥に凝り固まった膿がね」
強烈な自己否定と自己に対する忌避感が一挙に襲いかかる。
既にウィリアムによって意図的に均衡を崩されかけていたモニカの精神は、臨界点を迎え、
「そしてその膿こそが君の振りまく厄病の正体だ」
――越えた。
モニカの中で、封印を解かれた強力な力が胎動する。
胎動が一拍を刻むごとに彼女の視界は霞み、意識が形を失って行く。その力に衝き動かされる形で、モニカは天を見上げた。
口を大きく開け、
「あ! あ……ッ、あ、ああ! あああああああああああ――――――ッ!!」
喉を自ら破壊しようとでもいうかのように暴力的な、自己を否定する嘆きの声がモニカの口から迸り始めた。
そして、
「ふ……っ! ははは! 成功だ! 本分を果たすと良いモニカ嬢! ワタシの望む結果を見せてくれ!!」
モニカの中に永らく封印されていた都市伝説が、彼女の嘆きに呼応するかのように暴発した。
-
握ってきた手は、暖かった
すがるものを求めるように、こちらの手をつかんできた小さな手
ぬくもりなど存在しないこの手をつかんでくるなど愚かしいと感じた
振り払うのも、面倒で放置したら、結局、目を覚ますまで放してこなかった
目を覚ました瞬間に「冷たい」と文句を言ってきた
知るか、自業自得だ
「クロ兄」
その呼び方を止めろ
無視して目を閉じると、のし、と俺の体の上に座ってきた
重たい、やめろ
「なぁ、クロ兄。この城の風呂の温泉、クロ兄が沸かしたって、本当か?」
「………誰から聞きやがった」
「マルファスとハルファスから」
あの鳥共
今度、羽をむしってやろうか
「…沸かしたんじゃない。見つけたんだ」
「見つけた?」
俺に乗ったまま首をかしげるな
まずは、降りろ
「クロ兄の能力って、氷雪系じゃなかったか?」
「水も、俺の能力圏内だ。洪水を起こす、大波を鎮める、どちらも可能だ」
-
……いい加減、重たい
首根っこつかんで、傍らに卸す
「……そして。源泉を見つけ出す。それも俺の能力だ」
「…源泉………眠れる才能の暗喩、か?」
「聴いてばかりいないで、自分で考えて判断しろ」
……正解だ
人間の才能を発掘するのも、俺の能力の一つ
面倒だから、ほとんど使った事はないが
「もう聞くことはないだろ?さっさと消えろ」
「やだ。遊ぼう」
圧し掛かるな、重い
何故、この子供は俺に懐くんだ
「坊やを好いている悪魔共と遊んでくりゃいいだろうが」
「やだ、クロ兄がいい」
鬱陶しい
さっさと、どこかに行ってしまえ
諦めずに呼びかけてくる声を無視して、目を閉じる
不満そうな声をだし、だが、子供は離れない
馬鹿な子供だ
他の悪魔に愛されているのだから、そちらとだけ行動すればいいだろうに
あぁ、馬鹿で、愚かだ
-
(……だから、こそ)
あの馬鹿な悪魔達は、この子供を愛おしく感じるとでも言うのか?
いつの間に眠っていたのか
この街で活動する間の拠点内の、テレビが置いてあるリビングルーム
餓鬼共に付き合わされて、ソファーに座ってテレビを見ていたはずだったのだが
テレビは消されていて、部屋の明かりも消えている
時計を見れば、そろそろ日付が変わる時刻だ
部屋に戻ろうと立ち上がると同時に、扉が開いた
…カイザーが、少し驚いた表情でこちらを見てくる
「…あぁ、目を覚ましましたか」
「餓鬼共は?」
「先ほど、寝かしつけましたよ」
ため息をついてくるカイザーに、そうか、と短く答えた
相変わらず、ご苦労なこった
「ご苦労さん。そろそろ、目標の居場所は絞り込めてきているんだ………体調は整えておけよ?お前には、重要な役割があるんだからな?」
「………わかっています」
俯いて答えてくる声
迷いがにじみ出ているのを感じる
-
あぁ、そうだ、迷え
そして、こちらに堕ちてきてしまえ
「……わかっているな?エイブラハム様の言葉は、絶対だ」
「……………わかって、います」
「その時がきたら、お前は役割に集中しろ。餓鬼相手に手助けしようとは思うなよ?あいつらがこの任務でどうなろうと、自己責任なんだからな」
こちらの言葉に、カイザーの体が小さくはねた
睨みあげてくる視線
まだあきらめず、反抗してくるから
いい加減、諦めてしまえ
「何だよ」
「…っあなたは……あの子達を相手に、情を感じてはいないのですか?」
「……はぁ?」
何を馬鹿を言っているんだ、こいつは
こちらの正体を知っているくせに
「俺は、餓鬼は嫌いだよ」
鋭く睨み付けてくる視線を無視して、部屋を出る
あいつがどう反抗しようが、もう遅い
俺とエイブラハム様に、あいつは逆らうことなどできないのだから、放置しても構うまい
「………あぁ、そうだ、餓鬼なんて嫌いだよ」
この氷の悪魔に、子供の暖かさなど不要なのだ
悪魔は悪魔らしく、ぬくもりとは無縁に生きる
ただ、それだけだ to be … ?
-
【上田明也の探偵倶楽部after.act25〜そうだ、京都に行こう〜】
「あの……上田さん?」
「なんだ彼方?」
「最近顔色悪いですよ?」
「そうか、最近ちょっとスケジュールがハードだったのかなあ?
仕事は何時も通りのマイペースでやっているつもりだったけど……。」
ことの始まりは、彼方が何気なく言っていた一言だった。
別に体調が悪いとかまったく無かったというのにゾロゾロと皆が集まって来て人の顔を覗き込む。
「あ、本当だ。ちょっとブルー入ってる。」
「お兄ちゃん大丈夫?」
「あら、心配ですね……。」
「ななな、なんだお前ら急に……?」
「ああこれは大変だ、医者に診せないと。」
「でもこんな時間にお医者さんなんて居ますかね?」
「それなら丁度書類仕事と人体錬成で忙殺されている医者が居たはずだ。
ちょっと電話かけてみる。」
「おにいちゃん私のおかしあげようか?」
「急に心配されると怖いんだけど、何これマジで新手の契約者の攻撃じゃなかろうな。」
ここまでいきなり群がられると恐怖である。
皆の優しい態度が怖い。
-
まあ体調が悪くなった理由に覚えがないかというとそう言うわけでもない。
ここ最近、学校町で時間のループが起きていて、俺はそれに記憶を一部保ったまま巻き込まれたのだ。
どうせ誰かが解決するだろうと思っていたら……そう、二三年くらい続いたのだ。
これだけ異常な事態に巻き込まれれば体調も崩れるだろう。
まあおかげでゆっくりと頭の異常を治せたのだけど……。
「よし!医者に通じたぞ!今すぐ来るそうだ!」
「さすが橙さんです!」
「お姉ちゃんすごーい!」
「レモンちゃん偉いですよ!」
なんだこの濃厚な茶番臭。
「呼ばれて飛び出て来ました医者です!
おおこれはなんて重病なんでしょう!
すぐにでも温泉かどこかで湯治をする必要があります!
ちなみに私の出番は以上です!」
「あっ、ちょ、待てサ……」
「なんてことだ!偶然だが私は福引きで登別の温泉宿の無料宿泊券を手に入れてしまっていたぞ!
しかしこまったなー!二人分しかないや!
これでは全員行けないな!」
「仕方がありませんね橙さん!ここは上田さんと茜さんに行って頂くしかありません!」
「そうだな!」
「吉静もお兄ちゃんとママの二人に行って欲しいな!」
「吉静ちゃんは茜さんだけママかー、俺はパパとして役不足なのかなー」
茶番がどうでも良いレベルで泣けてきた。
泣けてきた。
-
「皆さん良いんですか?折角だから彼方さんと橙さんで行って頂いても……」
「いえいえ良いんですよ、お二人ともゆっくりと羽を伸ばしてください!」
「いやでも大人も居ないと……」
そう言った瞬間、いきなり事務所の扉が開いた。
「事務所の留守番は任せろー!」
「あれ……癸酉兄さんじゃないすか。
なにしてんすか、仕事どうしたんですか。
ついに首にされましたか。」
「ひ、ひどい!僕は単に長期休暇の間くらい学校町に滞在しようと……」
扉の向こうには親戚のお兄さんが立っていた。
河伯癸酉という製薬会社にコネで勤める愉快なお兄さんである。
俺に様々な悪い、というか女遊びを教えた張本人でもある。
「よく取れましたね長期休暇。忙しいものだとばかり……。」
「ところがどっこい!お見合いが嫌で逃げてきたのさ!」
「…………。」
「まだ独身で居たい。」
「…………。」
「さっさと新婚旅行とやらに行ってこいよー。
つうか式もあんな地味にしちゃってさあ。
勘当喰らってるって言ってももうちょっと派手にして良いだろ。
気になったから調べたけどお前相当溜めてるじゃないか。
これ以上溜めてどうするんだよ、金は天下の回り物だよ?
経済活動の血液だよ?」
-
「いやだっていつ何があるか解らないんで……。
せめてこいつらが成人して立派にやっていくまでは……。」
「あらやだいかにも家族居ますからみたいな思考しやがって。
いつからそんな小さい男になった!
お兄さんは大空を飛ぶことを夢見ていたお前が好きだったぞ!」
「うぅ……。」
「でも良いさ。お前は今此処にある幸せを守っている。
それは僕にはできない立派なことだ。
偉いよ、うん。
だからとりあえず新婚旅行だかなんだか行ってこい!」
癸酉兄さんがドヤッて顔をしている。
だが彼方とレモンと吉静がうわぁ……って目で奴を見ていた。
茜さんは苦笑いだった。
「あくまで湯治ってことで送り出す予定だったんだけどなあ……」
「癸酉さん話に聞くより遙かにうっかり屋さんですね……。」
「駄目だよ癸酉さん!」
「え、あ、いや……ごめん。と、とにかく行ってこい!」
「兄さんの命令なら仕方ない、仕事休んで行きますよええ。
そもそも俺だって茜さんと一緒に旅行には行って上げたかったしね。
……というわけで来てくれるか?」
「はい、電車の予約はもう出来ているので駅まで急いでください。」
「えっ」
俺抜きで話はそこまで進んでいたのか……。
もうやだこいつらの計画性。あと二十年したら引退しよう。
あと二十年と言ったら俺は四十代だろ……、多分あの人の言うとおり、俺は戦えなくなってるだろうし。
-
「ほら行きますよ明也さん。」
「え、あ、はーい。」
素直に手を引かれて事務所を出る。
「じゃあ行ってくるからな。お土産買ってくるからそこそこ楽しみにしていろ。」
「はーい」
「はーい」
「はーい」
「はーい!」
「なんで兄さんが一番ハイテンションなんですか。」
「家帰りたくないからお前ら長めに逗留してくれよ!マジあの不細工ありえないんだけど!」
「兄さん、貴方みたいな残念な人に縁談が持ち上がることが奇跡なんですから自覚してください。」
「うわあああああああ!残念っていうなあ!」
さて、兄さんが死にたそうな顔し始めたところでさっさと駅まで行くか。
地下鉄に乗って駅まで直行する。
新婚旅行とか言われるとなんていうかこう、妙に緊張するなあ。
そもそも何気ない旅行は茜さんが前から言っていたから行くつもりだったが
新婚旅行と言うのが気になる。
これはあれだろうか、改めて二人の関係を見直すべきなのだろうか。
思えば今まで迷惑かけっぱなしだったな……。
自分のことばかり考えて二人で、というかあいつらも含めた家族で過ごすことを考えてなかったな。
思い出せば思い出すほどに申し訳がない気持ちが湧いてくる。
そう、俺は昔から自分のことしか興味無い人間だった。
やっぱりこういうのは良くないな、せめてこれからは家族に迷惑かけないで生きていこう。
色々生き方を省みた結果、下らないと思っていた所謂「倫理的な物の考え方」に落ち着くなんて。
我ながら馬鹿げている。だがしかしそれが一番正しいことだったのか……。
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「明也さん。」
「え?」
「何を難しい顔しているんですか。」
「いや、これからはもっと皆のことを考えて生きていこうかなと考えてたり……」
「もう……だから湯治とか温泉旅行って名目にしたかったのに……。」
「いや、やっぱり家族のことを見直す機会かなあと……」
「良いんですよ、貴方はそのままで。私がそれを支えますから。
何のために私は貴方の命を助けたと思っているのですか。」
「え、あ、はぁ……ごめんなさい。」
「解ればよろしい。それじゃあこれから長い電車の旅です。
一週間か二週間か知らないけどとにかく楽しみますよ!」
まるで子供みたいに無邪気に笑う茜さん。
そうだな、面倒なことは考えないで少しゆっくりするとしようか。
地下鉄が学校町の駅につく。
地下鉄の車両から降りて駅へと続く階段に脚をかけた時、突然後ろから悲鳴が上がった。
「……あれ?」
足下がふらつく。
何かが刺さっている?
俺の身体に、何かが刺さっている。
「おっかしいなあ、生きてるよ。急所を貫いた筈なのに。
あ、どうもこんにちわ。俺、桐咲筑紫って言います。何処にでも居る普通の刺客です。」
俺の背中を、“シャーペン”で少年が刺している。
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「ま、待て……!」
「まだ生きていたのか。」
「明也さん何する気ですか?」
「とりあえずこうした後に……。」
サンジェルマンからガメていた記憶消去装置を起動させる。
これでとりあえず契約者以外の周囲の人間の記憶は消せたはずだ。
「お前、赤い部屋は好きか?」
首筋に手刀を決める。
よし、気絶した。
「成る程、返事がない。じゃあ大丈夫だな。」
意識のなくなっている襲撃者を赤い部屋に無理矢理拉致すると
俺は茜さんの手を引いて電車に向けて走り出した。
【上田明也の探偵倶楽部after.act25〜そうだ、京都に行こう〜】
-
【愛の力】
(実>うぉぉぉぉぉぉぉぉ!!清太ぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!
(清太>っちょ、実!?
(実>おはよぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!(バキベキボキッ
(清太>ギャアアアアアアアアアアア!?
翌日――
(実>清太ぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!
(清太>へへっ、『イーヴィルブレイカー』!
(実>捕まえたぞぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!(バキベキボキッ
(清太>何でだぁぁぁぁぁぁぁぁ!?
(セキエ>(邪気ガ一切無イカラナ・・・)
――――――――
【無欲】
(清太>なぁ、「嘘から出た実」って『嘘が本当になる』って能力なんだろ?
(実>まぁな!!
(清太>じゃあさ、『100万円拾ったぞ』って言ったらその通りになるのか?
(実>あぁ、勿論だ!!
(実>だが俺は言った事無いがな!!
(清太>何で? 大金持ちになれんのに
(実>俺が欲しいのは金じゃない!!お前だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!
(清太>お断りだぁぁぁぁぁぁぁ!?
-
【愛が生んだ奇跡】
(先生>では昨日宿題にしていた俳句を読んでもらうぞー
(一同>え〜!?
(清太>(てかあんな面倒なもん誰が真面目に書くんだよ・・・五七五とか季語とか・・・)
(実>先生!! 俺に行かせてくれ!!
(清太>(何ぃ!?)
(先生>よし、言ってみろ空出!
(実>“水無月に”ぃ!! “出会ってずっと”ぉ!! “恋時雨”ぇぇぇぇぇぇぇ!!!
(一同>おぉ〜・・・
(先生>ただの告白・・・でも6月と雨だから地味にあってる・・・
(清太>突っ込め!? 頼むから誰か突っ込んで!?
――――――――
【傍から見れば】
(実>一緒に帰るぞぉぉぉぉぉぉ!! 清太ぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!
(清太>1人で帰れよ・・・
(実>愛する男と帰るのは当然だろぉぉぉぉぉ!!
(清太>俺はお前が嫌いなんだよ!?
(実>そんな冷たいお前も好きだぁぁぁぁぁぁぁ!!!
(清太>あぁ、もうヤダ・・・
(少年>あんなにかぁいいロリっ子の真っ直ぐな想いを踏み躙るとは・・・見損なったわ馬鹿弟子がぁ!?
(黒い影>ソコソコト何ヲシテイル・・・?
...fin
-
「新聞部の活動5」
今日もまた、新聞部部員達は集まり、都市伝説を広めるため、『都市伝説は実在する』を作るため、事件を追う
真「さて、突然だが…今日は新入部員を紹介する」
文子「楽しみですねー」
一「あれ、でも僕ら歳とらないんじゃありませんでしたっけ?」
真「いや、今まで部活に入ってなかったらしい。一年だとよ」
文子「そうですかー。いやぁ、部員が増えて嬉しいです」
真「じゃ、紹介するぞ。おい、入ってきていいぞー」
ガラ、と扉を開け、一年の男子が入ってくる
「神田 郵記(かんだ ゆうき)なんですよね。宜しくお願いするんですよね」
真「神田郵記君だ。みんな、よろしく頼むぞ?」
一「何故繰り返したんです!? ああ、神田さん。僕は一 一と申します。以後お見知り置きを」
文子「あたしは小宮山 文子よ。よろしくね」
お互い自己紹介する郵記、一、文子
真「さて…早速だが…お前等、CoAって知ってるか?」
一「ええ。大人気のネットゲームですよね」
真「その通り。さて、そのゲームを話題を出した理由だがな…。最近、このゲームをプレイした人間が多数行方不明になってるんだ。それはもう、まさに神隠しのように」郵記「…ね」
真「ん? どうしたんだ郵記?」
郵記「事件の…匂いがするんですよね。そのCoAから…
僕の契約都市伝説『記者の勘』。事件や事故を感じ取れるんですよね」
真「何っ? でかしたぞ郵記! やはりお前を入部させたのは正しかったみたいだ。
…さて、問題は『どうやって中に入るか』だな…。ちなみにボクの『天狗の新聞』にはそんな能力はない」
文子「私の『千里眼』でも無理です…」
一「そもそも僕は契約してません」
郵記「僕の『記者の勘』でも無理なんですよね…」
CoAの中の世界で事件が起きていることは分かったが、誰一人侵入する術を持たない新聞部
-
真「さて、どうしたものか…」
一「………そうだ!」
真「一、何か案があるのか?」
一「ええ。簡単な話です。二次元研究部の皆さんに協力してもらえば良いんですよ。
実は僕、二次元研究部の江本君と友達でして。新聞部と二次研の同盟を結ぶことに成功したんですよ。
…前にも言いましたよね?」
真「………ああ! そういえば! よし、そうと決まれば行くとしよう。お前達、カメラと筆記用具は忘れるなよ!」
「「「了解です(よね)!!」」」
こうして、二次元研究部の部室に行くことにした新聞部
-
…そして、二次研部室に到着した
真「失礼しまーす」
吉夫「おっ! 真(まこ)っちゃんじゃないか! 僕達に頼みたいことでもあるのかい?」
真「(真っちゃんって…)ああ、その通りだ。実は――」
説明する真
真「――と、言うわけなんだ。協力してくれるか?」
吉夫「なーんだ、そんなことか! お安い御用だよっ! 実は僕らもこれからCoAに入るところだたんだよ」
真「ありがとう、恩に着る」
吉夫「ほいっ、じゃあこれ『二次元への切符』。3人分でいいかい?」
真「いや、4枚にしてくれ。さっき新入部員が入ったんだ」
吉夫「おっけー!」
真は吉夫から『二次元への切符』を受け取り、一達に配る
吉夫「よし、皆持ったな! じゃ、二次元への切符…行き先はCoA! 発車しまーす」
こうして、切符を持った者は全員、CoAの世界に入っていった
真「着いたか…? それじゃあ早速…取材するとしようか!」
一・文子・郵記「「「了解です(よね)!」」」
そんなこんなで、二次元研究部と新聞部もCoA事件に巻き込まれることになったのである
…まだやってるよね?
まぁ、やってなかったらそれはそれとして。取り合えず…
続く…
-
●
二度三度と千勢の≪壇ノ浦に没した宝剣≫が宙空を斬る。
それによって発生し、連続で押し寄せる草薙の名を冠する風と斬撃波、そしてそれに巻き込まれて押し寄せる瓦礫の波濤に押され、エレナは防戦を強いられていた。
≪聖痕≫で引き上げられた身体能力を最大限に用い、≪デリーの鉄柱≫で飛来する直撃コースの攻撃を辛うじて防ぐ。
……っ、捌くのがやっと……!
飛来物に対する防衛行動に気を取られていたエレナは、攻撃に紛れて接近して来ていた千勢に気付かなかった。
「――!」
視界に千勢の姿を捉えた時には、千勢は草薙の斬撃が引き起こす一連の破壊の波に乗っているかのように勢いの乗った突進でエレナの数歩先にまで迫っていた。
エレナの対応は間に合わない。
千勢の足がエレナの胴へと着弾する。
「――ッ!?」
妙に生々しい激突音と共に砲弾のような蹴りに弾き飛ばされたエレナは、施設の壁の残骸へと背中を打ちつけ、残骸を破壊しがてら地面に倒れ伏した。
≪聖痕≫の加護によって致命となる負傷は無い。それを無意識のうちに感じとりながら、エレナは衝撃に肺から強制的に吐かされた空気を必死に吸い込む。
その行動と平行して地面に倒れ伏せた際に取り落とした≪デリーの鉄柱≫を拾い上げた。
そして≪デリーの鉄柱≫を構えるまでの間に、千勢が再接近していた。
振るわれる一撃は≪壇ノ浦に没した宝剣≫の刃。
エレナは横薙ぎに迫って来る宝剣の刃を視界に映して、半ば覚悟を決めながら痛む身体を押して≪聖痕≫の力任せに身体を持ち上げる。
≪デリーの鉄柱≫をなんとか宝剣の刃を受ける構えにし、二つの武器がぶつかり合う瞬間――地面から突き出してきた柱が二人の激突を妨害した。
-
「何……!?」
「――え?」
地下から出現した幾本もの、一本ずつの直径は数メートルはあろうかという半透明の円柱は、壁のように隙間なく出現して互いに驚愕している千勢とエレナの間を完全に別った。
これは……!
千勢の攻撃が偶然にも妨害され、首の皮一枚で生命が繋がった事に冷や汗をかきながら、エレナは周囲に生じた異変を分析する。
状況は、モニカの内部に封印処理されていた都市伝説の能力エフェクトの初期段階を示していた。
「――モニカの封印が解けたのね」
「封印だと?」
千勢の言葉を気にしている余裕は無い。頭上ではいくつも突き出た円柱の上に、円柱と同じような質感を持つ半透明の天蓋が出現している。
それらを見て、エレナは違和感を覚えていたのだ。
……様子がおかしい。
地上から天へと聳えている円柱にはところどころ罅が入っている。
そして、それは徐々にではあるが円柱全体に広がっていた。いずれこのままではこの罅が全体に達してしまうだろう事は容易に想像がつく。
そしてそれは、エレナが知るモニカの都市伝説の情報とは食い違いがあった。
……モニカ嬢に何か問題が起きたの?
もし何かしらの問題が起きたのならばその原因はおそらく、
ウィリアム……!
「――っく!」
そう思うと同時、エレナは事態の把握に努めているらしい千勢に背を向け、軋みを上げる身体を引きずりながら崩れた地面から地下へと飛び下りた。
-
●
Tさんはユーグとの戦いを続けながら、自身の不利を悟っていた。
理由は単純明快、彼我の戦力数の差だ。
……数が多い、質も揃っていては風向きは変わらんか。
現在Tさんが相手にしているのは全員が≪テンプル騎士団≫として武勇を誇る者達だ。
様々な逸話と史実の下に存在する彼等はそう易々と打ち破れるものでもなく、
「――ッ!」
≪ケサランパサラン≫の加護を抜いて斬撃が来た。
加護を貫いて左腕に裂傷を与えてきた刃の担い手は騎士達の長、ユーグだ。
麾下の騎士達と共に騎兵の突撃を行ってはTさんに手傷を負わせ、Tさんが騎士達を一人一人討ち取ろうとするのを巧みにフォローしては邪魔をしてくる。
……流石は≪テンプル騎士団≫総長。
戦ったのはこれで三度目、それでもまだ底が窺い知れない相手にTさんは腑に重いものを感じる。
数の差だけでなく、加えてTさんとユーグ達が戦闘を行っている場所も悪かった。
いくら広いとはいってもここは地下施設の通路、立ち回るにしても制限がかかり、騎士団は槍襖を展開してはTさんを追いたてるのだ。
しかしその一方でこの地形はこちらに有利に働きもする……。
ユーグが所有する騎兵は一隊総勢200騎、しかしそれだけの兵員を展開するには通路はやはり狭すぎる。
故に、
「破ぁ!」
光弾がTさんの手から発射され、それは≪ケサランパサラン≫へと祈祷された幸せを受けて騎士一人の前進を妨げる光の壁となった。
防壁の出現に騎士の動きが一瞬止まる。
その一瞬の間に、Tさんは壁の隙間から騎士の死角へと潜り込んだ。
「ッ!」
ユーグがバフォメットの加護を纏った短剣を投擲してくるが、展開した光の壁が相殺されるのみだ。追撃が来る前にTさんの掌が騎士の首を捕らえ、
「砕けろ!」
ゼロ距離で光が炸裂した。
-
頭部を失った騎士が黒い影となってユーグの影へと吸い込まれていく。
Tさんは息を整えながら、倒した騎士の数を数え上げる。
……これで30人目、師匠から伝え聞いた≪テンプル騎士団≫の情報や倒した騎士が例外なくあの影に吸い込まれていく事から考えて、
倒した騎士達が復活出来ないという事はないだろう。ユーグが総長として存在している以上は再生してくる筈だ……。
徒に時間をかければ騎兵はまた復活する。そう考えて軽い焦りを得はするが、あれだけ完全に屠った騎士達の復活が数分で完成するものとも思えない。
それが可能ならば≪神智学協会≫の内紛時に彼等が一か所に集中して展開している意味が無いからだ。
一度砕かれても即座に再生するのならば、一つの戦場に十騎も≪テンプル騎士団≫を配置して特攻を繰り返させれば事足りる。
……しかし、それを楽観する材料にするには少々心もとないか……。
そう言葉を内心に作って先程斬られた左腕の傷を見る。≪ケサランパサラン≫へと傷の治癒を幸福として祈祷し続けているその傷はしかし、
……治りが遅い……。
≪ケサランパサラン≫に祈祷する肉体の再生がなかなか効果を示さないのだ。
原因は彼等が纏っているバフォメット――悪魔の加護か……。
彼等の持つ悪魔の因子が治療術を、ひいては≪ケサランパサラン≫がもたらす幸運を喰っているのだろう。
あまり戦いが長引くのは好ましくない。そう理解してはいるのだが、Tさんとユーグの戦況は持久戦の様相を呈していた。
……このままの状態が続けば、いずれ俺の体力の方が底を尽く。どこかで展開を変えなければまずい……。
そう思って息を整えた矢先、突然の震動が地階を襲った。
-
「!?」
「これは……?」
続いて、通路の中央を貫いて半透明な円柱が出現した。
それはいくらかの距離を置いて通路を塞ぐように突き出て、Tさんと騎士達の間も壁のように貫き分断する。
「何だ……これは?」
「これは……!」
Tさんが突然出現した柱に唖然とし、同時に感じられる強い都市伝説の気配に警戒を強めていると、
同じように柱を見て瞠目していたユーグが半透明の壁の向こうで突然身を翻した。
そのまま騎士達を自身のバフォメットの影の中に溶け込ませるようにして収め、代わりに黒い馬を喚びだして通路を向こう側へと駆けていく。
鮮やかな引きに戸惑いながら、Tさんも思考する。
……ユーグにとっても不測の事態……ウィリアムが何らかの手を打ったのか?
円柱を下から見上げると、半透明の柱越しにわずかに地上らしき光景が見える。おそらくこの柱は地上部まで突き抜けているのだろう。
地上部には眼前に聳え立つ柱と似たような柱を幾つも確認する事ができた。
……この柱、この施設の至るところから出現しているのか。
地階を襲った突然の震動もこの柱の出現が原因なのだろう。そう思いながらTさんは柱に手を触れる。
そしてその正体を確認しようとするが、柱から読み取れる情報は断片的に過ぎ、正体を見極める事が出来なかった。
早々に正体看破に見切りをつけ、Tさんはこれからの行動を思案する。
……もしそうだとしたら、舞達にも何か問題が起きている可能性がある……。
決断は迅速。
Tさんもまた身を翻し、ユーグが駆けて行ったのとは逆の方向へと通路を走りだした。
-
●
弘蔵はウィリアムが派兵してきた都市伝説群を相手にしながら、彼等の密度が濃くなる場所を探り当てていた。
「この扉の向こうか……〝北谷菜切〟」
壁の一面全てを扉に置き換えたような巨大な扉を前にそう呟く。
光を放ち続けて刀身を補修している〝蛍丸〟を休め、懐から取り出した〝北谷菜切〟を、閉ざされている巨大な扉に向けて数度振った。
ひどく傷んだ包丁のようなその刃から不可視の斬撃が放たれ、扉が裁断される。
この場に至るまでに都市伝説群相手に酷使され続けてきた〝北谷菜切〟は、扉が斬り開かれると同時、まるで勤めを果たし終えたかのように崩壊した。
血濡れの柄だけを残して崩壊した〝北谷菜切〟をその場に横たえ、弘蔵は室内へと足を踏み入れた。
広い空間の中にまず音が聞こえた。高い、ひび割れのような音だ。
その正体は部屋の中、寝台に拘束されているモニカのものだった。
上体を起こしたモニカは顔を天井へと向けて口を開き、音としか表現のしようが無い悲鳴を上げていた。
……これは……。
人の身体の構造上有り得ない、途切れる事の無い悲鳴を上げ続けるモニカの脇で裁断された扉を面白そうに眺めているウィリアムの姿を認め、
次いで部屋の中に幾本か存在する半透明の円柱へと目を向ける。今頃この円柱の頂点では巨大な天蓋が出来ているだろうと思いながら、弘蔵はウィリアムへと聞くともなしに言う。
「封印を解いて、解放したのか」
「その通りだよアキヅキ。この通り、モニカ嬢はしっかりと能力が発現していて、現状こうして暴走していながらも都市伝説に飲まれてはいない。
いや、この娘は飲まれる事が無い。そのようにワタシが調整したのだからね」
そう言うと気分よさげにウィリアムは両手を広げた。
「実験は成功だ! 喜んでくれるかねアキヅキ?」
「おめでとう。とでも言っておこうか」
淡々と言って、弘蔵は大太刀の切っ先をウィリアムへと向けた。
「モニカ嬢を返してもらおう」
-
「もう少し劇的な反応をしてくれも良いのだがね。何せアキヅキ、君もまたワタシの研究成果の一つの極み、傑作の一つなのだから」
ウィリアムはモニカを紹介するように掌で示す。
「モニカ嬢の調整には君の実験データも活かされているのだよ? ワタシは今、君に感謝しても良いくらいの気分だ」
「その言葉は儂と似た実験で使い潰されていった者達にでもかけておくといい」
「一考しよう。しかし、あの実験で死んだ者達は今もこうして使っていてね? 労をねぎらうにはまだ少し活躍してもらわなければならないんだ」
そう言ってウィリアムは周囲の培養器を見る。培養器の内、半分程は開かれて中に入っていたであろうものが無くなっているが、
残りの半分程にはまだ中に先程この部屋に辿りつくまでに戦っていた都市伝説と同種の存在が入っていた。
「いやいや、どうしてなかなか……彼等の体を使って作成した自信作たちだったのだけどね、君の足を止めるには力不足だったようだ」
弘蔵は培養器を見る。
その中には眠るようにして目を閉じている異形の怪物達がいて、確かに生命活動を行っている事を示すかのように時折気泡が培養液の中に漏れ出ていた。
「実験で死んだ者達の屍肉を使ったか……相も変わらず狂気の沙汰だな」
目をそこから逸らし、弘蔵は歩みをウィリアムとモニカの方へと進める。
「……モニカ嬢の様子がおかしいようだが?」
「ああ、少し精神の均衡を崩してみたのだ」
こともなげに答えたウィリアムへと弘蔵は鋭い視線を向ける。ウィリアムの近くにガラスを連ねたような妙な機材があるのを発見して、彼は堅い声を発した。
「貴様、もしや――」
「君達相手に使用したような薬物も、精神破壊用の都市伝説も使ってはいないよ。
これを使用して、何かの手違いで殺してしまってはワタシとしても面白くは無いからね」
弘蔵が警戒した、コンソールの傍に置かれている複数のガラスを連ねたような装置に触れながらウィリアムは言葉を繋ぐ。
「ワタシに捕まって≪心霊手術≫を受けていた時にすら、悲鳴の一つも発しまいと我慢していた彼女も、少し興味をそそる話をしてやって背を押してやれば、
あとは坂道を転がるように崩れていったよ。容易いものだね?」
「……そうして故意に暴走を起こしたのか」
-
弘蔵が低く言った時、切り刻まれた扉から新たな影が現れた。黒い靄のような加護を纏った剣を携えたユーグだ。
彼の姿を認めたウィリアムは、歓迎するように手を軽く上げた。
「君が進んだ道の方がこの部屋への近道ではあったのだけど、それにしたってお早いお着きだね、ユーグ総長」
「弘蔵が持つ剣が放つ光で道標を残しておいてくれた。それを辿って来ただけだ」
ウィリアムは弘蔵の大太刀へと目をやってああ、と得心したように頷いた。
「そのカタナ、アキヅキの都市伝説の能力を付与した物だね? 君が極めた能力はどうやら役に立っているようで能力の覚醒の手伝いをした者としては嬉しい限りだよ」
「そうだな、これで貴様を討てる」
「ふむ、そう言えばワタシは≪神智学協会≫……いや、オルコットに対する裏切り者だったね。モニカ嬢の封印も解けてしまった今となってはワタシを生かしておく必要も無いわけだ」
ウィリアムはなるほどなるほど、としきりに頷いてコンソールのボタンを押した。
すると部屋の周囲に配されていた培養器が起動し、部屋に残っていた都市伝説群が這い出てきた。
それぞれ独特な、人に嫌悪感をもたらすような鳴き声を上げながら起き上った怪物達を横目にしながら、ウィリアムは寝台に拘束されたままの能力を暴走させて喉から悲鳴を上げているモニカの背後に立つ。
人質にするかのような構図だ。
その立ち位置の意味と意図を正確に把握したユーグと弘蔵に殊更嫌な笑みを見せて、ウィリアムは言う。
「なら裏切り者らしく、ワタシはワタシで楽しませてもらうとするよ」
培養器から出てきた都市伝説群に周囲を守るように指示を出し、ウィリアムは二人に見せびらかすかのように、天井へと向かって反らされたモニカの白いのどへと指を滑らす。
「今、モニカ嬢はトリシアとレニーの≪悪魔の密輸≫の封印を解かれて解放した都市伝説を暴走させているところだ。
加えて彼女はテンプル騎士団の血と、ワタシの調整とで都市伝説に対して飲まれる事が無いという特殊な状況になっている」
ウィリアムは二人に説明するような口調で言いながら、周囲に突き立つ柱群を両の手で示す。
「オルコットが目的の為に探し当てた都市伝説二つ。それの意味を知っているね? 片方は破壊を、片方は恵と維持を司る。
これらは二つ揃って初めて世界の在り方の書き換えとその維持を果たすわけだけど、現在モニカ嬢の中にあるのは前者の方、モニカ嬢は飲まれることは無いためにこの暴走はどこまでも続く。
この都市伝説を限界まで暴走させたならばどうなるのか? モニカ嬢という器の完成を見てしまったワタシはその果てを見てみたくなったのだよ」
「モニカお嬢様を弄ぶか……」
「ユーグ総長、君達のやっている事も似たような事だと思うがね。
世界の理を改めて書き換えるということを成す為に、モニカ嬢を都市伝説の器にしてしまうのと、ワタシが好奇心からモニカ嬢の肉体ごとこの世界を壊してみようと思うのと……
どうだい? この暴走で都市伝説通り、世界が天の崩壊に巻き込まれてしまうと思うかね?」
ユーグは返答の代わりに騎兵を喚び出した。弘蔵も大太刀を構える。ウィリアムは肩をすくめて都市伝説の怪物達に警戒するよう指示を出した。
異形の都市伝説群がウィリアムの指示に応えて蠢く。彼は周囲の柱へと目を移して、悲鳴を上げ続けるモニカを撫でる。
-
「モニカ嬢はいろいろと憂う事があったようだよ? 精神の膿となる程にね。
まあ、そのおかげで今の状態へと彼女を持って来やすくなっていたのだから、ワタシにとっては幸運な事に、というところなのだけどね。
特にユーグ総長、君の事はモニカ嬢にとって大きな憂いだったようだ。感謝するよ?
憂いに起因するこの都市伝説の暴走を引き起こすには、またとない起爆剤だったのだから」
そう、とウィリアムは愉快げに言う。
「この都市伝説、――≪杞憂≫にはね」
-
「ふむ……」
ばさり
学校町を、小さなフクロウが飛ぶ
……ソロモン王の悪魔 序列第三十六位、「鴉公子」の二つ名を持つストラス
召喚権をカラミティより貸し与えられた少年との取引成功により、彼は学校町を飛び回っていた
「…なるほど。ずいぶんと人外の気配の濃い街だね」
ばさばさと、飛び回りながら呟くストラス
…カラミティ郷が、この街に興味を持つ理由は、大体知っていた
友人になったと言う、人間の女が、この街に住んでいるからだ
だが、アモン卿の方はわからなかった
半分は、カラミティ卿がこの街に興味を持っているせいだろうとは思ったが
「もう半分は、この現状、か。人とそうではないものが、まじりあって生活しているような場所。興味を持つ訳だ」
……その内、またここで子供を拾ってこないだろうな
ストラスは、そんな予感を覚えたが……まぁいいか、と、流した
拾ってきたとしても、自分は深くかかわる事はあるまい
関わることがあったら、その時はその時だし
「……それにしても」
カラミティ卿やアモン卿の興味の対象を調べようか、そう思って外に出たのだが
…それ以上に、引っかかるものを感じるとは
「この気配……あいつだよなぁ」
もう何百年も姿を見ていない、同じソロモン王72柱の悪魔の一体
-
その気配を、確かに感じ取る
傍に、天使共の気配も感じ取れるのを見ると………
「うまく潜りこんでいた、か。顔合わせたら文句の一つでも言いたいけど、僕の実力じゃあいつには勝てないんだよね。どうしようか……」
飛び回りながら、考え込み…
…やはり、まぁいいか、と、流した
顔を合わせる事になるかどうかも、わからないし
「……あぁ、でも、カラミティ卿と顔合わせる事になったら…どうするんだか、あいつは」
誰とも馴れ合わず、他のソロモン王の72柱の悪魔達と距離を保ち続けていた、あの凍れる心の悪魔
あの男が何を考えていたのか、ストラスにはわからない
あの悪魔と親しかった者などいなかったはずだし、きっと、誰にもわからないのだろう
ただ
「悪いことにならないといいんだけどね」
あの悪魔、普段は執着心と無縁な失せに、一度執着すると、その執着心はかなりのものだ
何百年も悪魔達の異界に戻らず、現実にとどまり続けるその目的
その目的の為ならば、手段を選んでいない可能性もある
……カラミティ卿の目的と対立するようなことになれば厄介だな、と
ストラスは小さく、ため息をついたのだった
to be … ?
-
【電話】
(実>今日は学校は休みだが・・・俺の恋路は阻まれない!!
(実>電話で!!俺の想いを!! 清太にぃ!!!
ピッポッパッ
(清太>《もしm》
(実>もしもぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉし!!!!
(藍那>どうしたの清太? そんなところで寝たりして
(清太>ね、姉ちゃん、テロだ、電話を使った新手のテロだ・・・
――――――――
【雨】
(清太>げっ、雨かよ!?
(清太>参ったなぁ、傘持ってきてないよ・・・
(実>(こ、これは・・・チャンスだ!!)
(実>清太ぁぁぁぁぁぁ!! 俺と一緒に相合傘で帰ろう―――――――
(藍那>清太ー、傘持ってきたよー!
(清太>ありがとう姉ちゃん愛してるぅ!!
(実>・・・ぐすん
...fin
-
「おはようございます。綺龍君」
「……今は夜だ」
「知ってますよそんな事」
綺龍が街を歩いていると、尼崎と出会った。
尼崎は「偶然ですね」という顔をしているが、綺龍に用があって会いにきたのは明白だった。
「……何の用だ」
「一つ注意を、と思いまして」
立ち止まらずに尋ねる綺龍の横にならびながら、尼崎は答えた。
「?」
「D-No.813が貴方を探しています」
「Dの……?」
「貴方を前に担当していた黒服ですよぉ」
綺龍の横を歩きながら、尼崎は言った。
「黒服さんが……」
「ええ、以前催眠術の話をしたでしょう?また会った時に恋愛感情を植え付けられると面倒なので、先に注意しておこうかと」
「……尼崎」
「はい?」
「……俺は嘘が嫌いだ」
-
「………………」
尼崎は何も言わず、綺龍の隣を歩く。
「……俺が黒服さんを好きだったのは、催眠術でも記憶操作でもない。あの時は惑わされたが、間違いない。
黒服さんがどう思っていたかは知らないが、俺が黒服さんを好きだったのは、本心だった」
「ふぅむ」
断言する綺龍に、尼崎は何かを考えこむように唸る。
「私が嘘を吐いていた事がばれた訳ですが、どうします?任務やめてD-No.813の所へ戻ります?」
「……いや、任務は続ける」
「なぜ?」
「……黒服さんの、やり方には賛同できないし、組織を変えた方が良いと思ってる。
それだけだ。あんた達を裏切ったりはしないよ」
そう言って、綺龍は足を速める。
もう用はないのか、尼崎はそれを追う事もなく、逆に立ち止まる。
「嘘は嫌い、ですか
………………………………私もですよ、綺龍君?」
その言葉は、誰にも聞かれる事なく、夜の闇に消えていった。
§
-
「リュウくんっ…………リュウくん…………どこ?……リュウくん!」
黒服の少女、D-No.813はひたすら走る。
今の綺龍の担当に会おうとしたら、断られた。綺龍の居場所を調べたが、分からなかった。
だから会えると信じて、あてもなく走り回るしか、少女にはできなかった。
そんな時、少女の携帯電話が持ち主を呼んだ。
「ハッ……ハッ…………ハァ……。はい……もしもし」
息を整え、電話にでる。はたして、電話の相手は随分前に別れた同僚の黒服だった。
「あー、えと、担当の子、見つかりました?」
「……いえ、まだ」
「そうですか……。えっとですね。ちょっと、戻って来てくれませんか」
「ですが……」
「できるだけ早くお願いします。これ、ちょっとマズイですよ」
そう呟いた黒服。その黒服は電話を片手にパソコンの画面を見つめていた。
USBメモリーの刺さったパソコンが映し出す、組織の黒服を暗殺する任務の概要、暗殺される黒服の一覧、そして、それに参加している三人の契約者の情報を見ながら、
このデータをどうすべきか、その黒服は悩むのだった。
終
-
【上田明也の探偵倶楽部after.act26〜上田明也の〜】
電車が揺れる、僕らを乗せて。
電車が揺れる、僕らの重みに耐えかねて。
自意識過剰で重たすぎるから電車は僕らを投げ捨てた。
「良いなあー電車の旅。」
「うっぷ……。エ、エチケット袋……。」
「え?」
「あ、ごめんなさい、もう限界……」
「うわああああああああ!」
※少々お待ちください
「……本当に、ごめんなさい。」
「いや、良いんだ……、誰が悪かったわけでもない。
事故だったんだよ、事故だったんだ……。
個室で良かった……、個室で本当に良かった……!」
「これ普通の席でやってたら大惨事でしたね。」
「ていうか大惨事だよ。どうするんだよこれ。」
「ひぃ、ごめんなさい!」
「いや別に良いんだけどさ、綺麗にもしたし。」
なんていうかこう、漫画やアニメで言えば黒く反転するレベルの大惨事である。
-
地下鉄のホームで俺を襲った謎の刺客を赤い部屋の異空間に監禁したまま、俺と茜さんの度は続いていた。
各駅停車の超豪華な寝台列車でいく優雅な旅である。
部屋が少々駅弁と胃散の混じったあれな匂いがしているが……
まあ茜さんに汚いところなんて無いよチュッチュくらいのことを言わねば男が廃れるという物だ。
先ほどのことについては気にしない方針で行こう。
「うぅ……旅の初っぱなからこんなことになるなんて……。」
さて、どうやって話を切り替えた物か。
あいにく風景は山の中、トンネルを抜けたりなんかしているところだ。
とくに盛り上がる要素もない。
駅弁の話題とか今はアウトだ。
美味しかったね、けど吐いちゃったね、とか洒落にならない。
そうだな、とりあえず……
「茜さん」
「はい」
「俺ってさ、人間としてかなり最低な部類に入ると思うのですよ。」
「でも私は貴方が好きですよ。」
真面目な話をし始めてみた。
「そう言ってくれるのは茜さんくらいだ。
子供の頃から悪い事しては説教されたり殴られたりしてたんだけどさ。
そうされればされるほど反発する気持ちばかりが強くなって行ってさ。
そんな気持ちだけに身を任せて俺は取り返しのつかないことをしたわけです。」
真面目な話と言ってもあれである。子供の教育方針である。
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「だから俺は子供を殴ることだけは絶対するまいと思っているのですよ。
暴力を振るうのは仕事だけで充分です。
殴らなきゃ駄目だ、なんて痛みの押しつけあいだよ。
親に怒られて殴られる痛みを知れば自分の子供なんてとてもじゃないが殴れない。
痛い目に遭うのは俺で終わりにしたいんだ。」
「そういえば探偵業ってあんな荒っぽいものだっけ?って言いたくなるほど荒事多いですからね。」
「……探偵小説って知っているか?」
すぐに脇道に逸れる。
「なんですそれ?推理小説じゃないんですか?」
「それの原型さ。
推理小説はこの探偵小説の推理ギミックのみを抜き出した物。
探偵小説は純粋に“推理も含めた”探偵の活躍を描くわけだよ。」
「ほうほう。」
「探偵小説なら、謎の探偵が出てきて悪い奴をぶっ飛ばすだけでも良いのさ。
月光仮面だって探偵だし、それこそ怪人二十面相が出てくる明智小五郎の話とかも推理より明智小五郎の格好良さを描くのがメインだ。
明智さんは大人向けの作品だと真面目に探偵やってるよな。
でもD坂は理不尽すぎると思うの。」
「つまり探偵という職業は……」
「冒険活劇の主人公に丁度良い仕事ってこと。
自由業だしね。」
「なるほど!」
よし、話題が切り替わった。車内販売のカートが来る。
320円の海鞘の燻製を買った。
一緒に日本酒も買おう……かと思ったけど茜さんの前で酒飲むのもあれだな。
素直にお茶にしよう。
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「そういえば気になってたんですけど、明也さんの能力の使い方って偏りがありますよね。」
「しかたあるまい、それしかできないんだし。」
「不便じゃないんですか?自分の身体の脆弱さとか。」
「俺も後から勉強して強化系に死ぬほどなりたいと思ったけどね。
それでも操作能力にピンポイントに偏ってなければ俺は死んでいたと思うよ。」
「そうなんですか?」
「だってさ、出せる場面が限定されていても100の力が最初から使えればさ。
それを出せる場面にさえ持っていけば勝てる訳よ。
ところがどんな場面でも10の力を出せるだけじゃ絶対に勝てない相手が居る。」
「ほうほう。」
「それに、どんな能力も極めれば全部同じさ。」
「と、言いますと?」
「身体能力を強化すれば早く動けるよね?」
「ええ。」
「じゃあ重力操作能力を最高出力と最高精度で絞って発動させて、光を屈折させてみよう。
そうすると時間の歪みが生じるんだよ。
まあ俺はまだ出来ないけれど出来れば身体能力の強化は要らなくなるよね?」
「いやまあ……。でもそんなの」
「俺はやってきたんだよ。やって、それでも駄目な時は必死に逃げて、それで生き残ってきた。」
やらなきゃ殺される。
契約者を見たら全部敵だと思え。
誰一人として信用するな。
使える物は何でも使え。
たった一つ、自分の欲望を満たすために。
それの為に払った代償は右目一つどころじゃなかったけど。
見合う物はきっと得られた。
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「…………。」
「そうやって生きていく日々の中で、あの赤い部屋だけは安らげる場所だった。
あの真っ赤な部屋で落ち着ける時点でもうどうかしてるけど、
それは生まれつきなんだろうな。」
「それなら良かった。」
「ん?」
「明也さんが辛い時に、私はそれを知らなかったけれども、
そんな私でも貴方の居場所になれたのならば、それは素敵なことだと思うんです。」
「ああ、そうだな。単に『何かをしたい』っていう欲望を満たしていくだけじゃ満足できなくてさ。
なんていうかそこに居るだけで良い居場所っていうか。
ただ包まれている安堵だけを感じていられるのって人間には一番大事なことだと思うんだよね。」
「そうなんですか?」
「人間には都市伝説と違って存在意義となるプログラムが無い。
強いて言えば繁殖と個体の維持か。
でもそれは都市伝説だって似たような物だしねえ。
人間は自分で『誰々は何処何処でどうするもの』っていうのを決めなくちゃいけない。」
「でもそれって素敵ですよ。
都市伝説みたく契約しなくても自分のありようが自由に決められる。」
「そうかな?その自由に耐えかねる人の方が多い。
封建制度は決して古くて愚かな制度だとは言えないよね。」
「折角人間に生まれたのに勿体ない話ですね。」
「人間なんて偉い物じゃない。駄目で馬鹿でどうしようもなく自分勝手。
期待なんてどう間違っても出来る物じゃない。
俺は人間一般については絶望しているよ。
固有名詞の茜さんとか、彼方とか、素敵な人は沢山居るけどね。
全部混ぜれば結局黒さ。
俺はその中の綺麗な物だけすくい取りながら辺りにちりばめて生きていく。
その為だから努力するし、強くなれるし、優しくなれる。
そして得た幸せがまた俺を本当の意味で優しく強くしてくれる。」
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「まあ我ながら、恵まれた人間の戯れ言にしか聞こえないがね。」
「……辛かったんじゃないですか?世の中最低だって思いながら過ごすなんて。」
「うん、辛かった。でも自殺とかするのは間違ってる気がした。
自分の物語をバッドエンドにしたくなかった。
誰もが理不尽でねたまれるくらい幸せになりたかった。
でも一生懸命何かを続けるって辛いんだよね。
それにさ、俺がハッピーエンドにたどり着けたなら他の人だってたどり着けるよ。
バッドエンドにハッピーってラベル貼ってお終いにするようなことしないで済む。
そう考えれば俺みたいな奴でも希望になれるんて思ってみたりね。
俺みたいな悪人にも来るんだからハッピーエンドはある。
それにたどり着けるかは解らないけど。
ま、俺に言わせれば世の中に善も悪も無くて、夜の星のように人々が集まって居るだけだと思うんだ。
それを誰かが勝手に星座みたく善悪で区切ったんだ。」
「わーハズカシイ。」
「でしょ?」
「でもまあそんなもんですかね?」
「そうだよ。」
「簡単にまとめてくださいよ。」
「貴方が私のハッピーエンド。」
ふふふ、恥ずかしくなってきた。
でもこういうのもなんだか悪くないのかも知れない。
【上田明也の探偵倶楽部after.act26〜上田明也の〜fin】
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そして梅
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